(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】電動パワーステアリング装置
(51)【国際特許分類】
B62D 5/04 20060101AFI20220315BHJP
【FI】
B62D5/04
(21)【出願番号】P 2021564644
(86)(22)【出願日】2021-08-31
(86)【国際出願番号】 JP2021031923
【審査請求日】2021-10-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】篠原 茂雄
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-200912(JP,A)
【文献】特開2020-199926(JP,A)
【文献】特開2019-089355(JP,A)
【文献】特開2006-076443(JP,A)
【文献】国際公開第2020/157861(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に延び、且つ、外周にラック歯を有するラック軸と、
前記第1方向と交差する第2方向に延び、且つ、当該第2方向の一方側の外周に前記ラック歯と噛み合うピニオン歯を有するアシストピニオン軸と、
前記アシストピニオン軸の前記第2方向の他方側の端部に取り付けられ、且つ、外周にホイール歯部が設けられるウォームホイールと、
前記ホイール歯部と噛み合うシャフト歯部を有し、且つ、電動モータの駆動力によって回転するウォームシャフトと、
前記ウォームシャフトおよび前記ウォームホイールを収容し、且つ、前記第2方向の他方側の筐体端部の内周側に開口部が設けられる筐体と、を備え、
前記ホイール歯部の部位のうち前記シャフト歯部と噛み合っている部位が第1部位であり、前記ホイール歯部の部位のうち前記アシストピニオン軸の中心軸を挟んで前記第1部位の反対側に位置する部位が第2部位であり、
前記アシストピニオン軸の中心軸と、前記第1部位と、前記第2部位と、を含む断面において、
前記第1部位における前記第2方向の他方側の端面から、前記アシストピニオン軸の中心軸に対して前記第1部位側に位置する前記筐体端部の先端までの第1距離は、
前記第2部位の前記第2方向の他方側の端面から、前記アシストピニオン軸の中心軸に対して前記第2部位側に位置する前記筐体端部の先端までの第2距離よりも大き
く、
前記筐体の前記筐体端部には、前記開口部を覆う蓋部材が設けられ、
前記筐体の前記筐体端部は、
前記アシストピニオン軸の中心軸の軸回り方向に沿って延びる環状部と、当該環状部から径方向外側に突出するフランジと、を備え、当該フランジに、前記蓋部材が取り付け可能であり、
前記フランジは、前記環状部の部位のうち、第3部位と、第4部位と、第5部位と、第6部位と、を除く部位に配置され、
前記第2方向から見た場合に、
前記第3部位および前記第4部位は、前記アシストピニオン軸の中心軸を通って前記第1方向に延びる第1直線と前記環状部との交差部であり、前記第5部位は前記第1部位と重なり、前記第6部位は前記第2部位と重なる、
電動パワーステアリング装置。
【請求項2】
前記蓋部材は、前記開口部を覆う蓋本体部と、当該蓋本体部の周縁部から前記第2方向の一方側に突出する環状の突出部と、を備え、前記突出部は、前記筐体端部の内周側に配置され、
前記突出部の外周と、前記筐体端部との間に、周方向に延びる環状のOリングが設けられる、
請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項3】
前記第1方向から見た場合に、前記突出部における前記第2方向の一方側の端は、前記アシストピニオン軸における前記第2方向の他方側の端面と交差する、
請求項2に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項4】
前記ウォームシャフトは、前記アシストピニオン軸を挟んで、前記ラック軸の反対側に位置する、
請求項1から
3のいずれか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の電動パワーステアリング装置は、ピニオンシャフトと、ウォームホイールと、ウォームシャフトと、ハウジングと、蓋部材(カバー部材)と、を備える。具体的には、ピニオンシャフトの軸方向の端部にウォームホイールが取り付けられ、ウォームホイールはウォームシャフトに噛み合う。ハウジングには、ピニオンシャフト、ウォームホイールおよびウォームシャフトを収容する収容空間が設けられる。また、ハウジングの端部は開口しており、当該開口は蓋部材(カバー部材)で覆われる。具体的には、ハウジングの端部に取付部が設けられ、当該取付部に蓋部材が取り付けられることによって、開口は蓋部材(カバー部材)で覆われる。
【0003】
なお、蓋部材(カバー部材)は、ウォームホイールに対向し、且つ、ウォームホイールと略平行に配置される。以下、その理由を簡単に説明する。ハウジングの収容空間および取付部は、例えば、工作機械を用いた加工(例えば、切削加工)で形成する場合がある。この場合、蓋部材をウォームホイールと略平行に配置すれば、ハウジングに対する工作機械の姿勢が、収容空間を加工する際の姿勢と取付部を加工する際の姿勢とで同じになり、機械加工の作業が容易になるためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
より小型化された、電動パワーステアリング装置が望まれる。
【0006】
本開示は、前述の課題に鑑みてなされたものであって、より小型化された、電動パワーステアリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するため、一態様に係る電動パワーステアリング装置は、第1方向に延び、且つ、外周にラック歯を有するラック軸と、前記第1方向と交差する第2方向に延び、且つ、当該第2方向の一方側の外周に前記ラック歯と噛み合うピニオン歯を有するアシストピニオン軸と、前記アシストピニオン軸の前記第2方向の他方側の端部に取り付けられ、且つ、外周にホイール歯部が設けられるウォームホイールと、前記ホイール歯部と噛み合うシャフト歯部を有し、且つ、電動モータの駆動力によって回転するウォームシャフトと、前記ウォームシャフトおよび前記ウォームホイールを収容し、且つ、筐体端部の内周側に開口部が設けられる筐体と、を備え、前記ホイール歯部の部位のうち前記シャフト歯部と噛み合っている部位が第1部位であり、前記ホイール歯部の部位のうち前記アシストピニオン軸の中心軸を挟んで前記第1部位の反対側に位置する部位が第2部位であり、前記アシストピニオン軸の中心軸と、前記第1部位と、前記第2部位と、を含む断面において、前記第1部位における前記第2方向の他方側の端面から、前記アシストピニオン軸の中心軸に対して前記第1部位側に位置する前記筐体端部の先端までの第1距離は、前記第2部位の前記第2方向の他方側の端面から、前記アシストピニオン軸の中心軸に対して前記第2部位側に位置する前記筐体端部の先端までの第2距離よりも大きい。
【0008】
このように、本開示の電動パワーステアリング装置では、第1距離は第2距離よりも大きい。換言すれば、第2距離は第1距離よりも小さい。これに対して、特許文献1では、第2距離と第1距離とが同一である。電動パワーステアリング装置の大きさを小さくするためには、筐体端部の先端を、より下側(第2方向の一方側)に配置することが望ましい。しかし、特許文献1では、蓋部材(カバー部材)をウォームホイールと略平行に配置し、且つ、蓋部材(カバー部材)をウォームホイールに可能な限り近づけているため、特許文献1では、これ以上ハウジングの高さを低くすることが困難である。ここで、第1方向および第2方向に交差する方向を第3方向とすると、本開示では、第2部位側の筐体端部の先端の高さを第1部位側の筐体端部の先端よりも低くして、第3方向から見た場合に開口部が斜めになるように配置しているため、特許文献1よりも筐体の高さを低くすることができる。なお、このように、本開示では、より小型化された、電動パワーステアリング装置を提供することができる。
【0009】
望ましい態様として、前記筐体の前記筐体端部には、前記開口部を覆う蓋部材が設けられ、前記筐体の前記筐体端部は、前記アシストピニオン軸の中心軸の軸回り方向に沿って延びる環状部と、当該環状部から径方向外側に突出するフランジと、を備え、当該フランジに、前記蓋部材が取り付け可能であり、前記フランジは、前記環状部の部位のうち、第3部位と、第4部位と、第5部位と、第6部位と、を除く部位に配置され、前記第2方向から見た場合に、前記第3部位および前記第4部位は、前記アシストピニオン軸の中心軸を通って前記第1方向に延びる第1直線と前記環状部との交差部であり、前記第5部位は前記第1部位と重なり、前記第6部位は前記第2部位と重なる。
【0010】
このように、本開示では、筐体の環状部に設けられるフランジは、環状部の部位のうち、第3部位と、第4部位と、第5部位と、第6部位と、を除く部位に配置される。
【0011】
ここで、蓋部材をフランジに取り付ける際に、例えば締結部材を用いることが想定される。即ち、締結部材を、例えば蓋部材の上側(第2方向の他方側)から蓋部材の貫通孔を通したのちにフランジに締結することにより、締結部材を用いて蓋部材をフランジに取り付ける。
【0012】
まず、第2方向から見た場合に、第5部位は第1部位と重なり、第6部位は第2部位と重なる。第6部位にフランジを設けると、蓋部材の上面の部位のうち第6部位に対応する部位から締結部材が上側に突出するため、第6部位側および第2部位側の筐体の高さが、締結部材の突出部分だけ高くなる。従って、フランジを配置する部位として、第5部位および第6部位は望ましくない。
【0013】
また、第3部位および第4部位の近傍には、例えば電動モータの取付部材等の種々の部材が配置される。従って、フランジを第3部位または第4部位に設けると、フランジが取付部材等に干渉する可能性があるため、フランジを配置する部位として、第3部位および第4部位は望ましくない。以上より、フランジを配置する部位は、第3部位、第4部位、第5部位および第6部位以外の部位が望ましい。
【0014】
望ましい態様として、前記蓋部材は、前記開口部を覆う蓋本体部と、当該蓋本体部の周縁部から前記第2方向の一方側に突出する環状の突出部と、を備え、前記突出部は、前記筐体の前記筐体端部の内周側に配置され、前記突出部の外周と、前記筐体における前記筐体端部との間に、周方向に延びる環状のOリングが設けられる。
【0015】
このように、筐体端部の内周側に突出部が挿入された状態で、突出部と筐体の内周との間にOリングを設けている。即ち、筐体の内周と突出部とは、Oリングによる軸シールによって封止される。ここで、筐体端部の上面と蓋部材との間にOリングを設ける面シールを適用することも考えられる。しかし、蓋部材に対して例えば上側(第2方向の他方側)に向かう力が入力されると、蓋部材が筐体の上端部から僅かに上側に離れるため、面シールによる封止効果が低下する。以上より、本開示のように、筐体の内周と突出部との間をOリングの軸シールによって封止することが望ましい。
【0016】
望ましい態様として、前記第1方向から見た場合に、前記突出部における前記第2方向の一方側の端は、前記アシストピニオン軸における前記第2方向の他方側の端面と交差する。
【0017】
電動パワーステアリング装置を小型化する場合、蓋部材をより下側(第2方向の一方側)に配置することが望ましい。従って、第1方向から見た場合に、突出部における下端(第2方向の一方側の端)がアシストピニオン軸の上側の端面(第2方向の他方側の端面)と交差しない場合よりも、本開示のように、突出部における下端がアシストピニオン軸の上側の端面と交差する方が、電動パワーステアリング装置をより小型化することができる。
【0018】
望ましい態様として、前記ウォームシャフトは、前記アシストピニオン軸を挟んで、前記ラック軸の反対側に位置することが望ましい。仮に、ウォームシャフトを、前記アシストピニオン軸に対して、前記ラック軸側に位置した場合、ラック軸側に多くの部品が集中して配置されるため、電動パワーステアリング装置が大型化する可能性がある。従って、アシストピニオン軸を挟んだ一方側にラック軸を配置し、他方側にウォームシャフトを配置することにより、電動パワーステアリング装置をより小型化することができる。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、より小型化された、電動パワーステアリング装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、実施形態に係る電動パワーステアリング装置の模式図である。
【
図7】
図7は、
図6の一部を示し、且つ、蓋部材を外した状態の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、同一構造の部位には同一符号を付けて、説明を省略する。なお、本実施形態において、X方向を第1方向とし、Z方向を第2方向とし、Y方向を第3方向とする。Z方向は、X方向と交差する。Y方向は、X方向およびZ方向と交差する。Y方向(第3方向)は、具体的には、後述する蓋部材424の上面424c(
図5参照)と平行な方向である。
【0022】
なお、X方向とZ方向のなす角は、任意に決定することができる。例えば、X方向とZ方向のなす角は直角であってもよいし、鋭角または鈍角であってもよい。
【0023】
実施形態に係る電動パワーステアリング装置について説明する。
図1は、実施形態に係る電動パワーステアリング装置の模式図である。
図2は、
図1の一部を示す斜視図である。
図3は、
図2をX1側から見た模式図である。
図4は、
図2のIV-IV線による断面図である。
図5は、
図4の一部を拡大した断面図である。
【0024】
図1に示すように、電動パワーステアリング装置80は、ステアリングホイール81と、第1ステアリングシャフト82と、第2ステアリングシャフト83と、操舵ピニオン軸84と、ラック軸85と、タイロッド86と、アシストピニオン軸1と、ウォームホイール2と、ウォームシャフト3と、電動モータ100と、第1ハウジング41と、第2ハウジング42と、を備える。電動パワーステアリング装置80は、例えばいわゆるデュアルピニオンタイプのステアリング装置である。
【0025】
図1に示すように、ステアリングホイール81は、第1ステアリングシャフト82に連結され、第1ステアリングシャフト82は、ユニバーサルジョイント821を介して第2ステアリングシャフト83に連結される。第2ステアリングシャフト83は、ユニバーサルジョイント831を介して操舵ピニオン軸84に連結される。操舵ピニオン軸84の下端部の外周には、ピニオン歯841が形成される。
【0026】
図1に示すように、ラック軸85は、X方向(第1方向)に延びる。ここで、ラック軸85の中心軸を中心軸AX2とすると、中心軸AX2の軸方向は、X方向(第1方向)に沿っている。即ち、ラック軸85は、中心軸AX2の軸方向に延び、且つ、中心軸AX2の軸回り方向に回転可能である。X方向(第1方向)は、例えば車両の車幅方向である。ラック軸85の部位のうちX2側の外周には、ラック歯851が設けられる。ラック歯851は、操舵ピニオン軸84のピニオン歯841と噛み合う。ラック軸85の部位のうちX1側の外周には、ラック歯852が設けられる。ラック歯852は、アシストピニオン軸1のピニオン歯1aと噛み合う。ラック軸85のX1側およびX2側の両端部は、タイロッド86を介して車輪101に連結される。
【0027】
以上説明したように、ステアリングホイール81は、第1ステアリングシャフト82、第2ステアリングシャフト83を介して操舵ピニオン軸84に連結される。従って、運転者がステアリングホイール81に対して、左または右方向に操舵トルクを付与することにより、第1ステアリングシャフト82と第2ステアリングシャフト83とを介して操舵ピニオン軸84に操舵トルクが伝達される。そして、操舵ピニオン軸84のピニオン歯841は、ラック歯851と噛み合うため、操舵トルクは、ラック軸85がX方向に移動する力に変換される。
【0028】
また、図示しない操舵トルクセンサにより、ステアリングホイール81に付与された操舵トルクを検出し、検出した操舵トルクに応じて、図示しないコントローラが電動モータ100に電流を供給する。電動モータ100に電流が供給されると、電動モータ100にウォームホイール2とウォームシャフト3とを介して接続されたアシストピニオン軸1に、電動モータ100が発生させたアシストトルクが伝達され、アシストピニオン軸1に接続されたラック軸85がX方向に移動するアシスト力が発生する。
【0029】
すなわち、ステアリングホイール81を操舵することにより生じる操舵トルクに応じて電動モータ100を駆動することにより、ラック軸85がX方向に移動することを補助することができる。
【0030】
図1および
図2に示すように、ラック軸85、操舵ピニオン軸84、アシストピニオン軸1、ウォームホイール2、ウォームシャフト3、電動モータ100は、第1ハウジング41および第2ハウジング42に収容される。第1ハウジング41はX2側に位置し、第2ハウジング42はX1側に位置する。第1ハウジング41のX1側の端部には、フランジ411が設けられ、第2ハウジング42のX2側の端部には、フランジ421が設けられる。フランジ411とフランジ421とが固定されることにより、第1ハウジング41と第2ハウジング42とが連結される。また、
図2に示すように、第1ハウジング41のX2側の端部および第2ハウジング42のX1側の端部には、それぞれ車体取付部材103が取り付けられる。車体取付部材103には、貫通孔103aが設けられ、貫通孔103aに締結部材(例えばボルト)が挿入される。即ち、締結部材を貫通孔103aに貫通させたのち車体に締結することにより、第1ハウジング41および第2ハウジング42が車体に取り付けられる。
図1に示すように、第2ハウジング42の一部である減速機収容部423の内方には、ウォームホイール2およびウォームシャフト3を含む減速機構200が収容される。
【0031】
図2および
図3に示すように、第2ハウジング42のうちラック軸収容部422の内側には、ラック軸85が収容される。ラック軸収容部422からZ1側に延びる減速機収容部423の内方には、
図4に示すように、アシストピニオン軸1およびウォームホイール2が収容される。アシストピニオン軸1およびウォームホイール2に対してY1側にウォームシャフト3および電動モータ100が配置される。以下、アシストピニオン軸1、ウォームホイール2およびウォームシャフト3について詳細に説明する。
【0032】
図4および
図5に示すように、アシストピニオン軸1は、中心軸AX1の軸方向(第2方向、Z方向)に延びる。第2方向(Z方向)は、第1方向(X方向)に交差する方向である。アシストピニオン軸1は、中心軸AX1の軸回り方向に回転可能である。アシストピニオン軸1における軸方向(第2方向、Z方向)の一方側(Z2側)の外周にピニオン歯1aを有する。アシストピニオン軸1の軸方向の一方側(Z2側)は、軸受110を介して、減速機収容部423(筐体)に回転可能に支持される。アシストピニオン軸1の軸方向の他方側(Z1側)は、軸受111を介して、減速機収容部423(筐体)に回転可能に支持される。
【0033】
図4および
図5に示すように、アシストピニオン軸1における軸方向の他方側(Z1側)には、軸受111よりもZ1側にウォームホイール2が取り付けられる。即ち、ウォームホイール2は、アシストピニオン軸1の第2方向の他方側の端部1bに取り付けられる。ウォームホイール2は、芯金部21と、ホイール歯部22と、を有する。芯金部21は、例えば金属で形成され、中心軸AX1の軸回り方向に沿って環状の形状を有する。ホイール歯部22は、芯金部21の外周側に設けられる。ホイール歯部22は、例えば樹脂で形成される。ホイール歯部22は、中心軸AX1の軸回り方向に沿って環状の形状を有する。
【0034】
図4および
図5に示すように、ウォームシャフト3は、ウォームホイール2に対してY方向(第3方向)の一方側であるY1側に配置される。即ち、アシストピニオン軸1を挟んで、ウォームシャフト3は、ラック軸85の反対側に位置する。ウォームシャフト3は、ホイール歯部22と噛み合うシャフト歯部31を有する。ウォームシャフト3は、中心軸AX3の軸方向に延び、且つ、中心軸AX3の軸回り方向に回転可能である。ウォームシャフト3は、電動モータ100の駆動力によって回転する。
【0035】
図4および
図5に示すように、減速機収容部423(筐体)は、ウォームシャフト3、ウォームホイール2およびアシストピニオン軸1を収容する。減速機収容部423(筐体)における第2方向(Z方向)の他方側(Z1側)の筐体端部427の内周側に開口部104が設けられる。
【0036】
具体的には、
図5に示すように、減速機収容部423(筐体)におけるZ1側の筐体端部427は、環状部420を有する。環状部420は、中心軸AX1の軸回り方向に沿って環状の形状を有する(
図7参照)。なお、開口部104は、蓋部材424で覆われる。
【0037】
ここで、
図5に示すように、ホイール歯部22の部位のうちシャフト歯部31と噛み合っている部位が第1部位P1である。ホイール歯部22の部位のうち中心軸AX1を挟んで第1部位P1の反対側に位置する部位が第2部位P2である。また、減速機収容部423(筐体)において、中心軸AX1に対してY1側(第1部位P1側)に位置する部位をモータ側ハウジング部44と呼ぶ。減速機収容部423(筐体)において、中心軸AX1に対してY2側(第2部位P2側)に位置する部位を反モータ側ハウジング部43と呼ぶ。また、第1部位P1におけるZ1側の端には、端面22aが設けられる。端面22aは、中心軸AX1と直交して延びる。第2部位P2におけるZ1側の端には、端面22bが設けられる。端面22bは、中心軸AX1と直交して延びる。
【0038】
そして、
図5に示すように、端面22aと、モータ側ハウジング部44における筐体端部427のZ1側の先端44aとのZ方向に沿った距離は、第1距離D1である。端面22bと、反モータ側ハウジング部43における筐体端部427のZ1側の先端43aとのZ方向に沿った距離は、第2距離D2である。第1距離D1は、第2距離D2よりも大きい。換言すると、第2距離D2は、第1距離D1よりも小さい。
【0039】
また、
図5に示すように、蓋部材424は、蓋本体部425と、突出部426と、を備える。蓋本体部425は、開口部104を覆う円板形状を有する。突出部426は、蓋本体部425の周縁部からZ2側に突出する環状形状を有する。突出部426は、環状部420の内周側に配置される。突出部426の外周と、環状部420との間に、周方向に延びる環状のOリング102が設けられる。具体的には、突出部426の外周に、径方向内側(内周側)に凹む凹溝が設けられ、当該凹溝にOリング102が収容される。なお、
図5に示すように、X方向から見た場合に、突出部426のZ2側の先端426aは、Y方向に延びる直線となる。アシストピニオン軸1におけるZ1側の端面1cは、中心軸AX1と直交して延びる。また、突出部426のZ2側の先端426aは、端面1cと交差する。
【0040】
図6は、
図2の一部をZ1側から見た模式図である。
図7は、
図6の一部を示し、且つ、蓋部材を外した状態の模式図である。なお、
図6において、中心軸AX1の軸方向は、Z方向(第2方向)に対して、僅かにずれている。即ち、中心軸AX1は、
図6の紙面に対して完全には直交せず、
図6においては、中心軸AX1と蓋部材424の上面との交点をAX1の点として記載している。
【0041】
図7に示すように、減速機収容部423(筐体)のZ1側の筐体端部427は、環状部420と、フランジ420a、420bと、を備える。環状部420は、中心軸AX1の軸回り方向に沿って環状に延びる。フランジ420a、420bは、環状部420から径方向外側に突出する。フランジ420a、420bには、蓋部材424が取り付け可能である。フランジ420aには、ボルト孔420cが設けられ、フランジ420bには、ボルト孔420dが設けられる。フランジ420a、420bは、環状部420の部位のうち、第3部位P3と、第4部位P4と、第5部位P5と、第6部位P6と、を除く部位に配置される。第3部位P3から第6部位P6までの位置を
図6を用いて説明する。
【0042】
図6では、
図7の環状部420およびフランジ420a、420bの上側に蓋部材424を取り付けている。蓋部材424には、フランジ424a、424bが設けられる。フランジ424aは、フランジ420aの上にボルトBLを介して締結される。フランジ424bは、フランジ420bの上にボルトBLを介して締結される。
【0043】
図6に示すように、中心軸AX1を通ってX方向(第1方向)に延びる直線を第1直線L1とする。中心軸AX1を通ってY方向(第3方向)に延びる直線を第2直線L2とする。第3部位P3および第4部位P4は、Z方向から見た場合の第1直線L1と環状部420との交差部である。第3部位P3は、中心軸AX1に対してX2側であり、第4部位P4は、中心軸AX1に対してX1側である。なお、フランジ424aとフランジ420aとを締結するボルトBLの中心と、フランジ424bとフランジ420bとを締結するボルトBLの中心と、を結ぶ直線を第3直線L3とする。第5部位P5および第6部位P6は、Z方向から見た場合の第2直線L2と環状部420との交差部である。第5部位P5は、中心軸AX1に対してY1側であり、第6部位P6は、中心軸AX1に対してY2側である。なお、Z方向(第2方向)から見た場合に、第5部位P5は第1部位P1と重なり、第6部位P6は第2部位P2と重なる。
【0044】
従って、フランジ420a、420bは、環状部420の周方向に沿って、第3部位P3から第6部位P6までの範囲と、第6部位P6から第4部位P4までの範囲と、第4部位P4から第5部位P5までの範囲と、第5部位P5から第3部位P3までの範囲と、に配置される。換言すると、蓋部材424の表面から見た場合、第1直線L1と、第3直線L3とは、所定の角度をもって交差する。
【0045】
また、
図6に示すように、モータ収容ハウジング428は、モータ取付板45に固定される。電動モータ100は、モータ取付板45に取り付けられるとともにモータ収容ハウジング428の内側に収容される。モータ取付板45は、Y方向に延びる。ここで、仮に、フランジ420aを第3部位P3に配置すると、フランジ420aがモータ取付板45に近接するため、環状部420とモータ取付板45との離隔距離を大きくする必要がある。
【0046】
以上説明したように、本実施形態に係る電動パワーステアリング装置80は、X方向(第1方向)に延び、且つ、外周にラック歯852を有するラック軸85と、Z方向(第2方向)のZ2側(一方側)の外周にピニオン歯1aを有するアシストピニオン軸1と、アシストピニオン軸1のZ2側の端部に取り付けられ、且つ、外周にホイール歯部22が設けられるウォームホイール2と、ホイール歯部22と噛み合うシャフト歯部31を有し、且つ、電動モータ100の駆動力によって回転するウォームシャフト3と、ウォームシャフト3およびウォームホイール2を収容し、且つ、Z1側の端部の内周側に開口部104が設けられる減速機収容部423(筐体)と、を備える。ホイール歯部22の部位のうちシャフト歯部31と噛み合っている部位が第1部位P1であり、ホイール歯部22の部位のうちアシストピニオン軸1の中心軸AX1を挟んで第1部位P1の反対側に位置する部位が第2部位P2である。アシストピニオン軸1の中心軸AX1と、第1部位P1と、第2部位P2と、を含む断面において、第1部位P1におけるZ1側の端面22aから、中心軸AX1に対して第1部位P1側に位置する筐体端部427の先端44aまでの第1距離D1は、第2部位P2のZ1側の端面22bから、中心軸AX1に対して第2部位P2側に位置する筐体端部427の先端43aまでの第2距離D2よりも大きい。
【0047】
このように、本実施形態の電動パワーステアリング装置80では、第1距離D1は第2距離D2よりも大きい。換言すれば、第2距離D2は第1距離D1よりも小さい。これに対して、特許文献1では、第2距離と第1距離とが同一である。ここで、電動パワーステアリング装置80の大きさを小さくするためには、筐体端部427の先端43a、44aを、より下側(Z2側)に配置することが望ましい。しかし、特許文献1では、蓋部材(カバー部材)をウォームホイールと略平行に配置しているため、特許文献1では、蓋部材をウォームホイールに近づけることができず、ハウジングの高さを低くすることが困難である。この点、本実施形態では、ウォームシャフト3から遠い位置における減速機収容部423(筐体)の開口部104の壁面の高さ(ホイール歯部22を基準とした第2距離D2)を、ウォームシャフト3に近い位置における減速機収容部423(筐体)の開口部104の壁面の高さ(ホイール歯部22を基準とした第1距離D1)よりも低くしている。すなわち、本実施形態によれば、ウォームシャフト3から遠い位置において、減速機収容部423(筐体)が上側(Z1側)に突出することを抑制することができる。
【0048】
換言すると、先端43aの高さを先端44aよりも低くして、Y方向から見た場合に開口部104が斜めになるように配置しているため、特許文献1よりも減速機収容部423(筐体)の高さを低くすることができる。このように、本実施形態では、より小型化された、電動パワーステアリング装置80を提供することができる。
【0049】
減速機収容部423(筐体)の筐体端部427には、開口部104を覆う蓋部材424が設けられる。筐体端部427は、中心軸AX1の軸回り方向に沿って延びる環状部420と、環状部420から径方向外側に突出するフランジ420a、420bと、を備え、フランジ420a、420bに、蓋部材424が取り付け可能である。フランジ420a、420bは、環状部420の部位のうち、第3部位P3と、第4部位P4と、第5部位P5と、第6部位P6と、を除く部位に配置される。Z方向(第2方向)から見た場合に、第3部位P3および第4部位P4は、中心軸AX1を通ってX方向(第1方向)に延びる第1直線L1と環状部420との交差部であり、第5部位P5および第6部位P6は、中心軸AX1を通ってY方向(第3方向)に延びる第2直線L2と環状部420との交差部であり、第5部位P5は第1部位P1と重なり、第6部位P6は第2部位P2と重なる。
【0050】
このように、本実施形態では、減速機収容部423(筐体)の環状部420に設けられるフランジ420a、420bは、環状部420の部位のうち、第3部位P3と、第4部位P4と、第5部位P5と、第6部位P6と、を除く部位に配置される。
【0051】
ここで、蓋部材424をフランジ420a、420bに取り付ける際に、例えばボルトBL(締結部材)を用いることが想定される。即ち、ボルトBLを、例えば蓋部材424の上側(第2方向の他方側)から蓋部材424の貫通孔を通したのちにフランジ420a、420bに締結することにより、ボルトBLを用いて蓋部材424をフランジ420a、420bに取り付ける。
【0052】
まず、上下方向(Z方向、第2方向)から見た場合に、第5部位P5は第1部位P1と重なり、第6部位P6は第2部位P2と重なる。第6部位P6にフランジ420a、420bを設けると、蓋部材424の上面の部位のうち第6部位P6に対応する部位からボルトBLが上側に突出するため、第6部位P6側および第2部位P2側の減速機収容部423(筐体)の高さが、ボルトBLの突出部分だけ高くなる。従って、フランジ420a、420bを配置する部位として、第5部位P5および第6部位P6は望ましくない。
【0053】
また、第3部位P3および第4部位P4の近傍には、例えば電動モータ100のモータ取付板45を含む部材が配置される。従って、フランジ420a、420bを第3部位P3または第4部位P4に設けると、フランジ420a、420bがモータ取付板45に干渉する可能性があるため、フランジ420a、420bを配置する部位として、第3部位P3および第4部位P4は望ましくない。以上より、フランジ420a、420bを配置する部位は、第3部位P3、第4部位P4、第5部位P5および第6部位P6以外の部位が望ましい。
【0054】
蓋部材424は、開口部104を覆う蓋本体部425と、蓋本体部425の周縁部からZ2側に突出する環状の突出部426と、を備える。突出部426は、筐体端部427の内周側に配置される。突出部426の外周と、筐体端部427との間に、周方向に延びる環状のOリング102が設けられる。
【0055】
このように、減速機収容部423(筐体)の筐体端部427の内周側に突出部426が挿入された状態で、突出部426と筐体端部427の内周との間にOリング102を設けている。即ち、筐体端部427の内周と突出部426とは、Oリング102による軸シールによって封止される。ここで、筐体端部427の上面と蓋部材424との間にOリング102を設ける面シールを適用することも考えられる。しかし、蓋部材424に対して例えば上側(第2方向の他方側)に向かう力が入力されると、蓋部材424が筐体端部427から僅かに上側に離れるため、面シールによる封止効果が低下する。以上より、本実施形態のように、減速機収容部423(筐体)の内周と突出部426との間をOリング102の軸シールによって封止することが望ましい。
【0056】
X方向(第1方向)から見た場合に、突出部426におけるZ2側の先端426aは、アシストピニオン軸1におけるZ1側の端面1cと交差する。
【0057】
電動パワーステアリング装置80を小型化する場合、蓋部材424をより下側(第2方向の一方側)に配置することが望ましい。従って、X方向(第1方向)から見た場合に、突出部426の下端(先端426a)がアシストピニオン軸1の上側の端面1c(第2方向の他方側の端面)と交差しない場合よりも、本実施形態のように、突出部426における下端(先端426a)がアシストピニオン軸1の上側の端面1cと交差する方が、電動パワーステアリング装置80をより小型化することができる。
【0058】
ウォームシャフト3は、アシストピニオン軸1を挟んで、ラック軸85の反対側に位置することが望ましい。仮に、ウォームシャフト3を、アシストピニオン軸1に対して、ラック軸85側に位置した場合、ラック軸85側に多くの部品が集中して配置されるため、電動パワーステアリング装置80が大型化する可能性がある。従って、アシストピニオン軸1を挟んだ一方側にラック軸85を配置し、他方側にウォームシャフト3を配置することにより、電動パワーステアリング装置80をより小型化することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 アシストピニオン軸
1a ピニオン歯
1b 端部
1c 端面
2 ウォームホイール
3 ウォームシャフト
21 芯金部
22 ホイール歯部
22a、22b 端面
31 シャフト歯部
41 第1ハウジング
42 第2ハウジング
43 反モータ側ハウジング部
43a 先端
44 モータ側ハウジング部
44a 先端
45 モータ取付板
80 電動パワーステアリング装置
81 ステアリングホイール
82 第1ステアリングシャフト
83 第2ステアリングシャフト
84 操舵ピニオン軸
85 ラック軸
86 タイロッド
100 電動モータ
101 車輪
102 Oリング
103 車体取付部材
103a 貫通孔
104 開口部
200 減速機構
411 フランジ
420 環状部
420a、420b フランジ
420c、420d ボルト孔
421 フランジ
422 ラック軸収容部
423 減速機収容部
424 蓋部材
424a、424b フランジ
424c 上面
425 蓋本体部
426 突出部
426a 先端
427 筐体端部
428 モータ収容ハウジング
821 ユニバーサルジョイント
831 ユニバーサルジョイント
841 ピニオン歯
851 ラック歯
852 ラック歯
AX1 中心軸
AX2 中心軸
AX3 中心軸
BL ボルト
D1 第1距離
D2 第2距離
L1 第1直線
L2 第2直線
L3 第3直線
P1 第1部位
P2 第2部位
P3 第3部位
P4 第4部位
P5 第5部位
P6 第6部位
【要約】
電動パワーステアリング装置は、アシストピニオン軸と、アシストピニオン軸のZ2側の端部に取り付けられるウォームホイールと、ホイール歯部と噛み合うシャフト歯部を有するウォームシャフトと、ウォームシャフトおよびウォームホイールを収容する筐体と、を備える。ホイール歯部の部位のうちシャフト歯部と噛み合っている部位が第1部位であり、中心軸を挟んで第1部位の反対側に位置する部位が第2部位である。第1部位におけるZ1側の端面から筐体端部の先端までの第1距離は、第2部位のZ1側の端面から筐体端部の先端までの第2距離よりも大きい。