(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】開閉装置
(51)【国際特許分類】
E06B 9/68 20060101AFI20220315BHJP
【FI】
E06B9/68 A
(21)【出願番号】P 2017207833
(22)【出願日】2017-10-27
【審査請求日】2020-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】594142311
【氏名又は名称】株式会社ティアンドデイ
(74)【代理人】
【識別番号】100102934
【氏名又は名称】今井 彰
(72)【発明者】
【氏名】両角 章夫
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2017-0060767(KR,A)
【文献】韓国登録特許第10-1306721(KR,B1)
【文献】特表2012-527548(JP,A)
【文献】特開2000-054766(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2002-0028701(KR,A)
【文献】特開2009-299406(JP,A)
【文献】実開平2-112898(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 9/00-9/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻き上げ式のブラインドを操作するチェーンに吊り下げられた状態で着脱可能に装着される開閉装置であって、
前記チェーン
の下端のU字状になった部分に係合するスプロケットと、
前記スプロケットを回転駆動する駆動ユニットと、
前記スプロケットの鉛直下方に当該開閉装置の重心を設定する重りと
、
前記駆動ユニットの負荷が当該開閉装置自身を前記チェーンに沿って上昇させるための第1の負荷に達すると前記駆動ユニットを停止する第1の機能を含む制御ユニットとを有する開閉装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記重りは、前記駆動ユニット用の電池を含む、開閉装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記制御ユニットは、前記駆動ユニットを制御する信号を、無線を介して受信する
機能を含む、開閉装置。
【請求項4】
請求項1または2において、
前記制御ユニットは、前記駆動ユニットを制御する信号を、光、音、温度および時間の少なくともいずれかの検出結果に連動して出力する
機能を含む、開閉装置。
【請求項5】
請求項
1ないし4のいずれかにおいて、
前記制御ユニットは、前記スプロケットの回転方向ごとに、前記駆動ユニットの負荷が前記第1の負荷に達した第1の回転角度を記憶し、前記スプロケットの回転角度が前記第1の回転角度に達する前に前記駆動ユニットの速度を制御する第2の機能を含む、開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロールスクリーンと称される巻き上げ式のブラインド(カーテン)を開閉する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、スクリーンの自動下降動作や位置決め動作を確実に行うことができるロールスクリーン装置を提供することが記載されている。このロールスクリーン装置は、スクリーンと、スクリーンの上辺部が取り付けられる巻取りパイプと、スクリーンの下辺部に取り付けられて、スクリーンを下方に延ばすウエイト体と、操作用チェーンと、第1および第2の支持部と、第1の支持部と巻取りパイプの一端部との間に配設され、操作用チェーンが両側から垂れ下がる状態で掛けられるクラッチユニットと、を備える。クラッチユニットは、巻取りパイプと一体的に回転するパイプ回転体と、操作用チェーンに係合して回転される駆動回転体と、駆動回転体と係合離脱可能な従動回転体と、を有する。
【0003】
支持部材からスクリーンが吊り下げられるとともに、支持部材からスクリーンを操作可能なボールチェーンが垂下するブラインドが知られている。このような巻き上げ式のスクリーン(ブラインド、カーテン)はロールスクリーンと呼ばれ、ロールブラインド、ロールカーテンと呼ばれることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
駆動装置を内蔵したロールスクリーンは公知であるが、後付けが可能で、手動のロールスクリーンの構造を変えずに、ロールスクリーンを遠隔操作で上げ下げできる装置が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、巻き上げ式のブラインドを操作するチェーンに吊り下げられた状態で着脱可能に装着される開閉装置である。この開閉装置は、チェーンに係合するスプロケットと、スプロケットを回転駆動する駆動ユニットと、スプロケットの鉛直下方に開閉装置の重心を設定する重りとを有する。この開閉装置は、巻き上げ式のブラインド(ロールスクリーン)を手動で操作するためのチェーン(ボールチェーン)に、チェーンの駆動手段であるスプロケットを介して吊り下げて(ぶら下げて)装着することが可能である。したがって、ロールスクリーンの構造を変えずに、自動でロールスクリーンを開閉する装置を、後付けで簡単に装着できる。
【0007】
開閉装置は、駆動ユニットを制御する信号を、無線を介して受信する制御ユニットを備えていてもよい。無線を介して、専用の操作端末、またはスマートホンのような汎用端末上で稼働するアプリケーション(アプリ)を介して、ロールスクリーンを遠隔で開閉できる。また、開閉装置は、駆動ユニットを制御する信号を、光、音、温度および時間の少なくともいずれかの検出結果に連動して出力する制御ユニットを有していてもよい。重りは、駆動ユニット用の電池を含んでもよい。
【0008】
開閉装置のスプロケットはチェーンの下端のU字状になった部分に係合され、制御ユニットは、駆動ユニットの負荷が当該開閉装置自身をチェーンに沿って上昇させるための第1の負荷に達すると駆動ユニットを停止する第1の機能を含む。この開閉装置は、ボールチェーンにぶら下がり、その自重に対抗するスプロケットの力(負荷)でボールチェーンを回転する。したがって、スクリーンが巻き下げの限界または巻き上げの限界に達し、上げ下げ用のローラ(パイプ、支持部材)が停止すると、ボールチェーンが回転しない。このため、さらにスプロケットを回転しようとすると、スプロケットが開閉装置をボールチェーンに沿って登らせようとする。したがって、スプロケットには開閉装置の自重が負荷として加わり、スプロケットの負荷を検出することによりロールスクリーンの開閉の限界を検出できる。
【0009】
さらに、制御ユニットは、スプロケットの回転方向ごとに、駆動ユニットの負荷が第1の負荷に達した第1の回転角度を記憶し、スプロケットの回転角度が第1の回転角度に達する前に駆動ユニットの速度を制御する第2の機能を含んでもよい。ロールスクリーンが完全に上昇あるいは下降する前に、スプロケットを停止したり、回転速度を下げることにより、ボールチェーン、上げ下げ用のローラなどのロールスクリーンの昇降用の機構への負荷を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】ロールスクリーンに開閉装置を取り付けた状態を示す図。
【
図2】
図2(a)は開閉装置の外観を示す図、
図2(b)は開閉装置の概略構成を示す断面図。
【
図3】開閉装置の制御の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に、巻き上げ式のブラインドであるロールスクリーン1に開閉装置10を装着した様子を示している。ロールスクリーン1は、巻き上げ用のローラ9から下方(鉛直方向下側)に延びた布製のスクリーン(ブラインド、カーテン)2と、ローラ9を回転駆動してスクリーン2を巻き上げたり、下げたりするためのチェーン(ボールチェーン)3とを含む。開閉装置10は、駆動機構などを内蔵したハウジング17と、ハウジング17の外側に露出するように設けられたスプロケット11とを有する。開閉装置10は、スプロケット11をボールチェーン3の下端のU字状になった部分に噛み合わせるように(係合するように)取り付けることにより、ボールチェーン3の下端に吊り下げて(ぶら下げて)、ロールスクリーン1に着脱可能に装着できる。
【0012】
図2(a)に、開閉装置10を抜き出して示し、
図2(b)に、開閉装置10の概略構成を、断面を用いて示している。開閉装置10は、複数のボール3aがワイヤー3bで接続されたボールチェーン3にかみ合うスプロケット11と、スプロケット11と駆動軸12を介して繋がったハウジング17とを含む。ハウジング17は、スプロケット11を、駆動軸12を介して回転駆動する駆動ユニット13と、駆動ユニット13を制御する制御ユニット20と、駆動ユニット13および制御ユニット20の駆動用の電源となるバッテリー(電池)16と、重り(錘)15とを含む。駆動ユニット13の一例は、ギアドモーターであり、内蔵されたステッピングモーターにより、スプロケット11を所定の方向に所定角度(回転角度)だけ旋回させることができる。さらに、電流監視あるいは電流制御を行うことによりトルク監視をしたり、トルク制御したりすることができる。
【0013】
重り15は、バッテリー16とともに、開閉装置10の重心19がスプロケット11の鉛直方向18の下側に設定されるように配置されている。重心19をスプロケット11の鉛直方向18に設定することにより、開閉装置10をボールチェーン3に安定して装着でき、スプロケット11を回転駆動することでボールチェーン3を上下に動かしてスクリーン2を開閉できる。
【0014】
また、重り15は、バッテリー16とともに、開閉装置10の自重Wを決定する機能を含む。開閉装置10の自重Wは、ボールチェーン3に無理なく吊り下げることができる範囲で、スプロケット11がボールチェーン3に吊り下がった状態で、開閉装置10がアンカーとして、ボールチェーン3を操作(駆動)するために十分な範囲で設定される。例えば、開閉装置10の自重Wは、1kg以上、3kg以下であることが望ましく、1.5kg以上、2.5kg以下であってもよい。
【0015】
スプロケット11は、ボールチェーン3のボール3aのピッチに合致した歯形状を備えた歯車であり、直径は5cm以上、15cm以下であることが望ましく、8cm以上、12cm以下であってもよい。スプロケット11は、ボールチェーン3がスプロケット11から外れにくくなるように、スプロケット11の周り(回り)のボールチェーン3の動きをガイドする部分またはプレートなどを備えたものであってもよい。
【0016】
制御ユニット20は、CPUおよびメモリと、近距離無線通信機能とを含むマイコンであってもよい。制御ユニット20は、無線通信機能21と、開閉装置10の動きを初期設定する機能(第1の機能)22と、無線通信機能21を介して受信した信号(コマンド)によりスプロケット11を動かしてロールスクリーン1(スクリーン2)を開閉する機能(第2の機能)23とを含む。
【0017】
無線通信機能21の一例は、Bluetooth(登録商標)であり、WiFi(登録商標)であってもよく、無線LANであってもよく、赤外線通信ユニットなどであってもよい。無線通信機能21を介して制御ユニット20は、スマートホン(不図示)などの端末と通信し、スマートホンからの信号を受けてロールスクリーン1を開閉できる。したがって、ユーザーはスマートホンに所定のアプリをダウンロードし、そのアプリにより遠隔で、開閉装置10を介してロールスクリーン1を開閉できる。
【0018】
制御ユニット20は、さらに、自律的にロールスクリーン1を開閉する自動制御機能24を含む。自動制御機能24は、駆動ユニット13を制御する信号を、光、音および温度の少なくともいずれかを検出するセンサー25の検出結果に連動して出力する。自動制御機能24の一例は、照度センサー25との組み合わせにより屋外の明るさ、所定の波長の光強度、屋内外の明るさの比などにより昼夜を判断したり、西日などの眩しさを判断したりしてロールスクリーン1を開閉する機能である。自動制御機能24の他の例は、タイマーにより、予めセットされた時刻にロールスクリーン1を開閉する機能である。自動制御機能24は、温度センサーと連動して室内温度によりロールスクリーン1を開閉する機能を備えていてもよい。自動制御機能24は、空調システムと連動する制御機能を備えていてもよい。また、自動制御機能24は、音声その他の音をセンサー25により認識してロールスクリーン1を制御する機能を備えていてもよい。
【0019】
また、開閉装置10を制御するスマートホンのアプリが、他のアプリと連携する機能を含んでいてもよい。例えば、スマートホンの他のアプリで起床時間などをセットすると、設定時間に、自動的に、開閉装置10にロールスクリーン1を開閉するコマンドが送信されてもよい。
【0020】
図3に、開閉装置10の動作の一例をフローチャートにより示している。ステップ51において、無線通信機能21がスマートホンからの通信(コマンド)を受信する。ステップ52において、コマンドが初期設定であれば、ステップ53において、第1の機能22により開閉装置10の初期設定を行う。初期設定では、例えば、スプロケット11の上げ下げ方向(開閉方向)の設定と、ロールスクリーン1の全開・全閉の位置(回転角度、回転数)とを設定することができる。スクリーン2の上げ下げ方向は、左右のいずれかのチェーン3が設けられている位置により変わってもよく、ユーザーがマニュアルでスマートホンのアプリに設定してもよい。
【0021】
全開・全閉の位置(スプロケット11の総回転角度など)をユーザーがマニュアルでアプリに設定してもよい。本例においては、開閉装置10が、自重Wを錘(アンカー)としてボールチェーン3を操作する装置であることを利用して、駆動ユニット13の負荷(トルク)が自重Wを上昇させることができる値(第1の負荷)に達すると、制御ユニット20の第1の機能22が駆動ユニット13を停止するとともに、その停止した位置(過負荷位置、回転角度、第1の回転角度)を上げ方向(開方向)または下げ方向(閉方向)の限界値(全開位置または全閉位置)としてメモリに記憶する。例えば、
図2(a)において、スプロケット11を反時計方向5に回転したときの過負荷位置を全開位置として記憶し、スプロケット11を時計方向6に回転したときの過負荷位置を全閉位置として記憶する。
【0022】
ステップ54において、スマートホンからスクリーン2を上げる(開にする)コマンドを受信すると、制御ユニット20の開閉機能(第2の機能)23は、ステップ55において、駆動ユニット13を介してスプロケット11を開方向に全開位置またはその手前の上限位置まで回転する。上限位置は、ロールスクリーン1の回転機構に無理がかからないように、駆動ユニット13に過負荷がかかる位置(全開位置)の直前の位置(回転角度)であることが望ましい。開閉機能23は、全開位置のある程度前の位置(回転角度)からモーターの回転速度を下げて停止位置を精度よく制御したり、ロールスクリーン1の回転機構の負荷あるいは停止時の衝撃などを軽減することができる。
【0023】
ステップ56において、スマートホンからスクリーン2を下げる(閉にする)コマンドを受信すると、制御ユニット20の開閉機能23は、ステップ57において、駆動ユニット13を介してスプロケット11を閉方向に全閉位置またはその手前の下限位置まで回転する。下限位置は、上限位置と同様に、ロールスクリーン1の回転機構に無理がかからないように、駆動ユニット13に過負荷がかかる位置(全閉位置)の直前の位置(回転角度)であることが望ましい。
【0024】
以上に示したように、本発明の開閉装置10は、ロールスクリーン1のチェーン3に吊り下げるように取り付けることが可能であり、その後、スマートホンのアプリにより遠隔でロールスクリーン1の開閉を操作することができる。したがって、この開閉装置10により、既存のロールスクリーン1に取り付けて遠隔操作したり、マニュアルタイプのロールスクリーン1に遠隔機能を追加したり、壁や天井の高所や手の届きにくい窓にロールスクリーン1を取り付けて遠隔開閉することが可能となる。
【符号の説明】
【0025】
1 ロールスクリーン、 10 開閉装置、 11 スプロケット