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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】車両用雨よけ装置
(51)【国際特許分類】
   B60J 7/00 20060101AFI20220315BHJP
【FI】
B60J7/00 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018018104
(22)【出願日】2018-02-05
(65)【公開番号】P2019135113
(43)【公開日】2019-08-15
【審査請求日】2021-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】516324733
【氏名又は名称】株式会社リコプロ
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人英知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 靖典
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-157516(JP,U)
【文献】実公昭10-015786(JP,Y1)
【文献】特許第5976975(JP,B1)
【文献】実開平05-063934(JP,U)
【文献】特開2008-056150(JP,A)
【文献】米国特許第07604281(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前後方向に間隔を置いて車両の屋根に装着され車幅方向へ延設される一対のガイドレールと、これらガイドレール間を覆う収納位置とこれらガイドレールからその延長方向へ突出した防雨位置との間でスライドするようにこれらガイドレールに嵌り合うスライドパネルとを備え、前記スライドパネルは、車幅方向の中央部に近づくにしたがって厚み方向の一方へ徐々に突出する湾曲状に形成されており、
前記スライドパネルを前記収納位置と前記防雨位置との間で移動させる駆動機構を備え、
前記駆動機構は、前記一対のガイドレールのうち、その一方のガイドレールにおける車幅方向の一方側に支持されたモータと、このモータの出力回転軸に固定された駆動回転体と、前記一方のガイドレールにおける車幅方向の他方側に支持された第1の従動回転体と、前記駆動回転体及び前記第1の従動回転体に巻かれた第1の無端輪状部材と、前記第1の従動回転体に同軸状に連結されるとともに他方のガイドレールに支持された第2の従動回転体と、前記他方のガイドレールにおける車幅方向の前記一方側に支持された第3の従動回転体と、前記第2の従動回転体及び前記第3の従動回転体に巻かれた第2の無端輪状部材とを備え、
前記第1の無端輪状部材と前記第2の無端輪状部材が、それぞれ、前記スライドパネルに止着されていることを特徴とする車両用雨よけ装置。
【請求項2】
前記スライドパネルは、車幅方向の略全長にわたって湾曲するとともに、その湾曲状の断面形状を車両前後方向の略全長にわたって連続しており、
前記各ガイドレールには、前記スライドパネルの車両前後方向の端部に嵌り合う湾曲状のガイド溝が設けられていることを特徴とする請求項1記載の車両用雨よけ装置。
【請求項3】
前記スライドパネルは、車幅方向の一方側に位置する第1のパネルと他方側に位置する第2のパネルに分割され、これら二つのパネルは、それぞれ、前記収納位置と前記防雨位置との間をスライドすることを特徴とする請求項1又は2記載の車両用雨よけ装置。
【請求項4】
前記スライドパネルは、車幅方向の中央部に近づくにしたがって下方へ徐々に突出する湾曲状に形成され、
前記ガイドレールは、その上面を前記スライドパネルの湾曲に沿う凹状に形成していることを特徴とする請求項1乃至3何れか1項記載の車両用雨よけ装置。
【請求項5】
前記スライドパネルは、車幅方向の中央部に近づくにしたがって上方へ徐々に突出する湾曲状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至3何れか1項記載の車両用雨よけ装置。
【請求項6】
前記スライドパネルにおける前記防雨位置寄りの上面には、該上面を流れる水を導く排水ガイド部が設けられ、この排水ガイド部は、該上面から上方へ突出するとともに前記防雨位置側へ向かいながら車両前方又は車両後方へ傾斜して延設されていることを特徴とする請求項5記載の車両用雨よけ装置。
【請求項7】
前記スライドパネルの防雨位置側に物体が存在することを感知するセンサを備え、該センサによる感知信号に応じて前記モータを制御するようにしたことを特徴とする請求項1乃至6何れか1項記載の車両用雨よけ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の屋根に装着されて、乗降者を雨や雪、みぞれ、あられ、ひょう等から保護する車両用雨よけ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の発明には、車両の屋根に装着可能な枠体と、この枠体に取り付けられてスライドする平板状の防雨板とを備え、降雨時等に、防雨板を車幅方向の外側へ突出させて、乗降者の上方を覆うようにした自動車用雨よけ装置がある(例えば特許文献1及び2参照)。
この従来技術によれば、貨物配送車の配送作業者が雨の中で荷物の積み卸しをする際には防雨板を引きだしておくことで作業者は雨に濡れず、貨物も雨に濡れるのを防ぐことができる。また、車椅子に乗った障害者、高齢者、幼児を抱えた人等が自動車に乗降する際も雨に濡れずに済む利点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5976975号公報
【文献】特開平11-129762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記従来技術によれば、防雨板を車両の屋根上面側へ収納するようにした自動車用雨よけ装置では、車両を走行させると、走行時に受ける風や気流等によって平板状の防雨板が上下に弓型に撓むようにしてばたつき、振動や騒音を発生する可能性がある。
そこで、前者従来技術では、防雨板を貼り合わせられた2枚の薄板から形成し、これら2枚の薄板の間に複数の補強リブを挟み込み、強度を確保するように工夫している。また、後者従来技術でも、防雨板(雨よけ板)の中央側の平坦状部分を、L形部材及びスライドレール等によって支持するようにしている。
しかしながら、このような従来構造では、部品点数が多く、構造が複雑になるため、改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題に鑑みて、本発明は、以下の構成を具備するものである。
車両前後方向に間隔を置いて車両の屋根に装着され車幅方向へ延設される一対のガイドレールと、これらガイドレール間を覆う収納位置とこれらガイドレールからその延長方向へ突出した防雨位置との間でスライドするようにこれらガイドレールに嵌り合うスライドパネルとを備え、前記スライドパネルは、車幅方向の中央部に近づくにしたがって厚み方向の一方へ徐々に突出する湾曲状に形成されており、前記スライドパネルを前記収納位置と前記防雨位置との間で移動させる駆動機構を備え、前記駆動機構は、前記一対のガイドレールのうち、その一方のガイドレールにおける車幅方向の一方側に支持されたモータと、このモータの出力回転軸に固定された駆動回転体と、前記一方のガイドレールにおける車幅方向の他方側に支持された第1の従動回転体と、前記駆動回転体及び前記第1の従動回転体に巻かれた第1の無端輪状部材と、前記第1の従動回転体に同軸状に連結されるとともに他方のガイドレールに支持された第2の従動回転体と、前記他方のガイドレールにおける車幅方向の前記一方側に支持された第3の従動回転体と、前記第2の従動回転体及び前記第3の従動回転体に巻かれた第2の無端輪状部材とを備え、前記第1の無端輪状部材と前記第2の無端輪状部材が、それぞれ、前記スライドパネルに止着されていることを特徴とする車両用雨よけ装置。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明に係る車両用雨よけ装置の一例を装着した車両を正面から視た図である。
図2】同車両用雨よけ装置について、(a)は平面図、(b)は側面図である。
図3】(a)はガイドレールの要部を内側から視た図、(b)は(a)におけるb-b線に沿う断面図である。
図4】本発明に係る車両用雨よけ装置の他例を装着した車両を正面から視た図である。
図5】本発明に係る車両用雨よけ装置の他例を装着した車両を正面から視た図である。
図6図5の車両用雨よけ装置の要部を示す下面図であり、エアロカバーは省略している。
図7】(a)は図6のa-a線に沿う断面図、(b)は図6のb-b線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
次に、上記特徴を有する具体的な実施態様について、図面に基づいて詳細に説明する。
なお、以下の説明では、一対のガイドレール10,10からスライドパネル20を突出させる方向を、「前」又は「手前」と称し、その逆側を「後」と称する場合がある。
【0008】
<第1の実施態様>
図1図2は、本発明に係る車両用雨よけ装置の一例を示している。
この車両用雨よけ装置1は、車両前後方向に略平行に間隔を置いて車両Aの屋根に装着され車幅方向へ延設された一対のガイドレール10,10と、これら一対のガイドレール10,10に嵌り合ってこれら一対のガイドレール10,10間を覆う収納位置とこれら一対のガイドレール10,10からその延長方向へ突出した防雨位置との間でスライドするスライドパネル20とを備える。
【0009】
そして、この車両用雨よけ装置1は、図1に示すように、自動車等の車両Aの屋根の上面側に、ブラケットa1等を介して不動に固定される。
【0010】
各ガイドレール10は、スライドパネル20のスライド方向へ連続する長尺状の部材であり、その長手方向(車幅方向)の略全長にわたって略同じ曲率でカーブし、その上面をスライドパネル20の湾曲に沿う凹状(換言すれば、アーチ状もしくは弓形状)に形成している。
各ガイドレール10は、他方のガイドレール10に対向する内側の側面に、ガイド溝11を有する。
二つのガイドレール10,10は、これらの間にわたる中間支持部材12及び端部側支持部材13,13によって接続される。これらガイドレール10、中間支持部材12及び端部側支持部材13,13は、金属や合成樹脂材料等の硬質材料によって形成される。
【0011】
ガイド溝11は、ガイドレール10,10の各内側面において、中間支持部材12を境にした一方側と他方側にそれぞれ設けられる(図3参照)。各ガイド溝11は、スライドパネル20の車両前後方向(図示のY方向)の端部に嵌り合う断面凹状(図3(b)参照)の溝であり、その長手方向(車幅方向)の中央側を、溝幅方向の一方(図3によれば下方)へ突出させた湾曲状に形成される。
【0012】
中間支持部材12は、両ガイドレール10,10の長手方向の中央部間にわたる断面T字状の部材であり、その一端側と他端側を、それぞれ、ガイドレール10に接続している。
【0013】
端部側支持部材13は、両ガイドレール10,10の端部間にわたる部材であり、その一端側と他端側を、それぞれ、ガイドレール10の端部に接続している。
この端部側支持部材13は、車両前後方向(図示のY方向)へ長尺な貫通孔を有する枠状に形成され、前記貫通孔に、スライドパネル20をスライド自在に挿通する。
【0014】
スライドパネル20は、その車幅方向(図示のX方向)の全体が、車幅方向の中央部に近づくにしたがって厚み方向の一方(図1の一例によれば下方)へ徐々に突出する湾曲状に形成される。
このスライドパネル20は、図示する好ましい一例によれば、車幅方向の一方側に位置する第1のパネル20aと他方側に位置する第2のパネル20bに分割され、これら二つのパネルは、それぞれ、収納位置と防雨位置との間をスライドする(図1参照)。
【0015】
第1のパネル20aは、防雨板本体21と、この防雨板本体21の周縁に嵌め合わせられた枠部材22と、枠部材22の前端側に固定された前フレーム23とを一体的に具備し、平面視矩形状且つ側面視凹湾曲状(換言すれば、上側を凹部としたアーチ状もしくは弓形状)に構成される(図2参照)。
【0016】
防雨板本体21は、車幅方向の中央部に近づくにしたがって厚み方向の一方へ徐々に突出するアーチ状(もしくは弓型状)の湾曲断面を、車両前後方向へ直線状に連続した湾曲板状に形成される。
防雨板本体21の湾曲の曲率は、図示例によれば、スライドパネル20のスライド方向にわたって略一定である。
この防雨板本体21は、透明、透光性又は不透明の硬質合成樹脂材料(例えばポリカーボネート等)や金属(例えばステンレスやアルミニウム合金)等からなる硬質板材によって形成され、予め湾曲成形されて枠部材22に嵌め合わせられた態様や、あるいは平板状の板材を弾性的に湾曲させて枠部材22に嵌め合わせた態様等とすることが可能である。
【0017】
また、枠部材22は、平面視矩形枠状であって、且つ側面視が上方を凹部とした湾曲状に構成され、その枠内側に、防雨板本体21の周縁部を嵌め合わせている(図2参照)。
この枠部材22は、本実施態様の図面上では一体枠状に表現しているが、複数の部材を接合することで構成すればよい。
この枠部材22は、その幅方向(図示のY方向)の両側が、それぞれ、ガイドレール10のガイド溝11(図3(b))に嵌り合っている。
【0018】
前フレーム23は、枠部材22の前端部に接続固定された長尺状の部材であり、例えば、円柱状や、その他の形状に形成される。
【0019】
第2のパネル20bは、上記構成の第1のパネル20aを車両前方から診て左右対称に構成したものである。
【0020】
また、車両用雨よけ装置1には、必要に応じて、第1のパネル20a又は第2のパネル20bとガイドレール10の間の摩擦を適宜に調整する構造や、引き出された第1のパネル20a又は第2のパネル20bを所望とする位置で係止する係止機構等が具備される。
【0021】
次に、上記構成の車両用雨よけ装置1について、その特徴的な作用効果を詳細に説明する。
この車両用雨よけ装置1は、図1に示すように、各ガイドレール10の部分が、ブラケットa1等を介して、車両Aの屋根の上面側に不動に装着される。
この装着状態において、一対のガイドレール10,10に対しスライドパネル20(詳細には第1のパネル20a又は第2のパネル20b)を手前側へ引き出して防雨位置(図1参照)にすれば、荷物の積み下ろしをする配送作業者や、車椅子に乗った障害者、高齢者、幼児を抱えた人等、車両Aの乗降者Bが雨等に濡れるのを防ぐことができる。
【0022】
第1のパネル20a又は第2のパネル20bを引き出す操作は、前フレーム23を手前方向へ引っ張ればよい。
また、引き出された第1のパネル20a又は第2のパネル20bを後方へ戻す操作は、前フレーム23を後方へ押し戻せばよい。
【0023】
また、第1のパネル20a及び第2のパネル20bを一対のガイドレール10,10間に収納した状態で、車両Aを走行させた場合、第1のパネル20a及び第2のパネル20bには、風や気流等によって上下方向へばたつくようにして撓もうとする力が作用する。
しかしながら、上記構成によれば、第1のパネル20a及び第2のパネル20bのそれぞれが車幅方向において湾曲状にカーブしているため、例えば湾曲部のない平坦状のパネルを用いた場合(図示せず)と比較し、風や気流等による厚み方向のばたつきを抑制することができる。
なお、仮に、スライドパネルを車両前後方向において湾曲状にカーブする構造とした場合には、その湾曲した突出部分が、車両Aの走行時に前方から風を強く受けてばたつき易くなり、前述したばたつき抑制の効果が低減する。そこで、本願発明者は、上記したように、スライドパネル20について、車幅方向において湾曲状にカーブする構造とし、本願発明を完成させた。
【0024】
また、本実施態様の車両用雨よけ装置1によれば、図1に示すように、スライドパネル20(詳細には第1のパネル20a又は第2のパネル20b)が手前斜め上方へ突出するため、乗降者Bの上側に空間を広く確保することができ、乗降者Bの頭がスライドパネル20に接触するようなことを防ぐことができる上、このような効果を、比較的全高の低い車両に装着した場合でも得ることができる。
さらに、同車両用雨よけ装置1によれば、図1に示すように、ガイドレール10の上面に荷物Cを載置することができる上、この荷物Cが車幅方向へずれるようなことを、ガイドレール10上面の湾曲状の凹部によって防ぐことができる。なお、図示しない他例としては、載置される荷物Cをより安定させるために、適宜形状(例えば、平坦板状や、荷物Cの下部側に嵌り合う凹状等)等のアタッチメントをガイドレール10上部に固定し、このアタッチメント上に荷物Cを載置して止着固定するようにしてもよい。
また、車両用雨よけ装置1によれば、車幅方向の両側にある第1のパネル20aと第2のパネル20bを選択的に引き出すことができ、利便性に優れている。
【0025】
<第2の実施態様>
次に、本発明に係る他の実施態様について説明する。なお、以下に示す実施態様は、上述した車両用雨よけ装置1の一部を変更したものであるため、主にその変更部分について詳述し、略同様の部分は同一の符号を付け、重複する詳細説明を適宜省略する。
【0026】
図4に示す車両用雨よけ装置2は、上述した構成の車両用雨よけ装置1のガイドレール10及びスライドパネル20を上下逆にして用いたものである。
すなわち、車両用雨よけ装置2は、車両用雨よけ装置1と略同一の構成を備え、スライドパネル20中央側の凸曲状部分を上方へ向けて、ブラケットa1によって車両Aの屋根に装着される。
この車両用雨よけ装置2によれば、車両用雨よけ装置1と同様に、車両Aの走行時にスライドパネル20(詳細には第1のパネル20a及び第2のパネル20b)が上下にばたつくのを、当該スライドパネル20の湾曲形状によって防ぐことができる。さらに、この車両用雨よけ装置2によれば、上面側が凸曲状に形成されるため、スライドパネル20の上面に溜まる雨水等を速やかに流し落とすことができる。
【0027】
<第3の実施態様>
図5図7に示す車両用雨よけ装置3は、一対のガイドレール10,10、中間支持部材12及び端部側支持部材13と、一対のガイドレール10,10間を覆う収納位置と一対のガイドレール10,10からその延長方向へ突出した防雨位置との間でスライドするスライドパネル20’と、スライドパネル20’を収納位置と防雨位置との間で駆動する駆動機構Dと、駆動機構Dを制御する制御部50と、これらを覆うエアロカバー60と、制御部50を遠隔操作するリモコン70とを備え、スライドパネル20’の防雨位置側に物体(障害物)が存在することをセンサ40により感知して、モータ30の駆動を停止するようにしている。
なお、ガイドレール10,10間には、中間支持部材12及び端部側支持部材13以外に、必要に応じて、図示しない補強部材が設けられる。
【0028】
スライドパネル20’は、その車幅方向(図示のX方向)の全体が、車幅方向の中央部に近づくにしたがって厚み方向の一方(図5の一例によれば上方)へ徐々に突出する湾曲状に形成される。
図示例のスライドパネル20’は、車幅方向の一方側に位置する第1のパネル20a’と他方側に位置する第2のパネル20b’とを具備し、これら二つのパネルは、それぞれ、収納位置と防雨位置との間をスライドする(図5参照)。
【0029】
第1のパネル20a’と第2のパネル20b’の各々は、上記防雨板本体21と同様の硬質材料により上向きに突出する凸湾曲板状に形成された防雨板本体21’と、防雨板本体21’の突出方向の端部に設けられた前フレーム23及びセンサ24と、スライドパネル20’の防雨位置寄りの上面に重ね合わせられた排水板25とを一体的に備える。
【0030】
センサ24は、スライドパネル20’の防雨位置側に物体が存在することを感知する単数もしくは複数のセンサであり、例えば、焦電センサ等の非接触の人感知センサにより構成される。
なお、他例としては、このセンサ24をガイドレール10やその他の部位に設けることも可能である。
【0031】
排水板25は、防雨板本体21’の防雨位置側の上面から上方へ若干突出するように該上面に重ね合わせられた平面視三角形状の板状部材であり、防雨位置側(図6の右)へ向かいながら車両前方へ傾斜する直線状の端縁25aと、スライドパネル突出方向へ向かいながら車両後方へ傾斜する直線状の端縁25bとを有する。
前記端縁25a,25bは、防雨板本体21’上の雨水を、スライドパネル20’上で前後方向へ導く排水ガイド部として機能する。
なお、排水板25の他例としては、スライドパネル20の車両前後方向の全長にわたって傾斜する端縁(排水ガイド部)を有する板状に形成してもよい。
【0032】
第2のパネル20b’は、上記構成の第1のパネル20a’を車両前方から診て左右対称に構成したものである。
【0033】
ガイドレール10,10及びスライドパネル20’の下面側には、図6に示すように、スライドパネル20’を移動させる駆動機構Dが設けられる。
この駆動機構Dは、一対のガイドレール10,10のうち、その一方(図6の上側)のガイドレール10における車幅方向の一方側(図6の左側)に支持されたモータ30と、このモータ30の出力回転軸に固定された駆動回転体31と、前記一方のガイドレール10における車幅方向の他方側(図6の右側)に回転自在に支持された第1の従動回転体32と、駆動回転体31及び第1の従動回転体32に巻かれた第1の無端輪状部材33と、第1の従動回転体32に同軸状に連結されるとともに他方(図6の下側)のガイドレール10に回転自在に支持された第2の従動回転体34と、前記他方のガイドレール10における車幅方向の前記一方側(図6の左側)に回転自在に支持された第3の従動回転体35と、第2の従動回転体34及び第3の従動回転体35に巻かれた第2の無端輪状部材36と、第1の無端輪状部材33と第2の無端輪状部材36をそれぞれ延設方向へ案内する複数のガイド回転体37と、第1の無端輪状部材33と第2の無端輪状部材36をそれぞれ適宜な張力に保持するテンショナー38とを備える。
【0034】
モータ30は、車幅方向両側の第1のパネル20a’と第2のパネル20b’にそれぞれ対応するように、二つ設けられる(図6参照)。
各モータ30は、車両Aからの電源供給により出力軸を回転させる直流モータであり、図示例によれば、一方(図6の上側)のガイドレール10における収納方向側(図6の左側)に中間支持部材12を介して支持されている。
【0035】
駆動回転体31及び第1の従動回転体32と、これら回転体に巻かれた第1の無端輪状部材33は、ベルトと複数のプーリ、あるいはチェーンと複数のスプロケット等によって構成される。
また、第2の従動回転体34及び第3の従動回転体35と、これら回転体に巻かれた第2の無端輪状部材36も同様に構成される。
【0036】
そして、第1の無端輪状部材33と第2の無端輪状部材36は、それぞれ、その一部分である止着部33a,36aを、第1のパネル20a(又は第2のパネル20b)に止着している。
【0037】
第1の従動回転体32と第2の従動回転体34は、車両前後方向へ連続する長尺状の連結軸39によって一体回転可能に連結されている。
【0038】
ガイド回転体37は、第1の無端輪状部材33と第2の無端輪状部材36のそれぞれに対し、複数(図示例によれば二つずつ)設けられる。
これらガイド回転体37は、その外周部を、第1の無端輪状部材33(又は第2の無端輪状部材36)に接触させて、第1の無端輪状部材33(又は第2の無端輪状部材36)の延設方向を適宜に調整する。
【0039】
テンショナー38は、回転自在な回転体を弾性部材により支持するようにした周知の装置であり、第1の無端輪状部材33と第2の無端輪状部材36にそれぞれ対応するように、二つ設けられる。各テンショナー38は、第1の無端輪状部材33(又は第2の無端輪状部材36)に接触するようにして、ガイドレール10に支持されている。
これら二つのテンショナー38は、第1の無端輪状部材33と第2の無端輪状部材36の張力を略均等に保持するように、弾発力が適宜に調整されている。
【0040】
よって、上記構成の駆動機構Dによれば、制御部50によりモータ30を一方へ回転させれば、その回転に連動して、第1の無端輪状部材33及び第2の無端輪状部材36も回転し、これら無端輪状部材に牽引されて、第1のパネル20a(又は第2のパネル20b)が、収納位置側又は防雨位置側へ移動する。
【0041】
また、制御部50は、無線受信モジュールを備えた電子回路基板やマイコン等から構成され、センサ24の感知信号や、モータ30の回転位置信号、車両Aからの信号(例えば、車両走行開始を示す信号やドアの開閉状態を示す信号)、リモコン70からの遠隔操作信号等に応じてモータ30の回転を制御する。リモコン70は、赤外線や電波等により無線信号を発信する装置であり、乗降者Bの手動操作に応じて、スライドパネル20’を移動するための信号を発信するように構成される。
詳細に説明すれば、制御部50は、モータ30の回転位置信号に基づきスライドパネル20が収納位置にあることを認識し、車両Aからの信号に基づき車両Aが停止中であることを認識し、かつ、センサ24の感知信号を受けていない状態で、リモコン70からの操作信号を受けた場合には、モータ30を一方へ回転させて、スライドパネル20を収納位置から防雨位置へ移動する。そして、同制御部50は、前記移動中に、センサ24の感知信号を受けた場合には、モータ30を停止又は逆回転させて、スライドパネル20が人や障害物等に当接するのを防ぐ。
また、制御部50は、モータ30の回転位置信号に基づきスライドパネル20が収納位置にないことを認識した状態で、リモコン70からの操作信号を受けた場合には、モータ30を逆方向へ回転させて、スライドパネル20を収納位置側へ移動する。
【0042】
また、エアロカバー60は、ガイドレール10及びスライドパネル20の上方、車両前後方向、車両幅方向の両側を覆うとともに、車両幅方向の両側においてはスライドパネル20を出没可能に開口したカバー部材であり、車両Aの走行時の空気抵抗を低減する形状に構成される。
【0043】
よって、上記構成の車両用雨よけ装置3によれば、上述した車両用雨よけ装置1,2同様に、車両Aの走行時にスライドパネル20’(詳細には第1のパネル20a’及び第2のパネル20b’)が上下にばたつくのを、当該スライドパネル20’の湾曲形状及びエアロカバー60等によって、より効果的に防ぐことができる。
【0044】
さらに、この車両用雨よけ装置3によれば、人等の障害物を感知してスライドパネル20’の防雨位置側への移動を停止することができる。
しかも、この車両用雨よけ装置3によれば、スライドパネル20’上の雨水を、スライドパネル20’の湾曲形状によって速やかに排水することができる上、この雨水が乗降者Bに滴るのを、排水板25の端縁25a,25b(排水ガイド部)によって防ぐことができる。
【0045】
また、この車両用雨よけ装置3によれば、前記出没の際、第1のパネル20a’(又は第2のパネル20b’)が、その車両前後方向の両側で、第1の無端輪状部材33の張力と第2の無端輪状部材36の張力とを略均等に受ける。このため、第1のパネル20a(又は第2のパネル20b)を、車両前後方向へがたつかないように、車両幅方向へスムーズにスライドさせることができる。
【0046】
<他の変形例>
なお、上記実施態様のスライドパネル20(図1~4参照)によれば、特に好ましい具体例として、防雨板本体21及び枠部材22を含む各パネル20a(又は20b)の略全領域を湾曲状に形成したが、他例としては、防雨板本体21のみを湾曲状に形成し、枠部材22を湾曲のない直線状の部材とすることも可能である。この場合、ガイドレール10のガイド溝11も枠部材22の幅方向端部に沿う直線状に形成する。
【0047】
また、上記実施態様によれば、ガイドレール10をスライドパネルに沿う湾曲状に形成したが、他例としては、ガイドレール10を車幅方向へ直線状に形成するとともに、このガイドレール10のガイド溝11をスライドパネルに沿う湾曲状に形成した態様とすることも可能である。
【0048】
また、上記実施態様によれば、特に好ましい一例として、スライドパネルを車幅方向の一方側の第1のパネル20a,20a’と他方側の第2のパネル20b,20b’に分割したが、他例としては、その何れか一方のパネルを省いたり、二つのパネルを連結したりして、スライドパネルを単数のパネルとすることも可能である。
【0049】
以上、本発明の実施態様について詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施態様に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施態様は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0050】
1,2,3:車両用雨よけ装置
10:ガイドレール
11:ガイド溝
20,20’:スライドパネル
20a,20a’:第1のパネル
20b,20b’:第2のパネル
21:防雨板本体
22:枠部材
23:前フレーム
25:排水板
25a,25b:端縁(排水ガイド部)
30:モータ
31:駆動回転体
32:第1の従動回転体
33:第1の無端輪状部材
34:第2の従動回転体
35:第3の従動回転体
36:第2の無端輪状部材
37:ガイド回転体
38:テンショナー
39:連結軸
40:センサ
A:車両
B:乗降者
C:荷物
D:駆動機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7