(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】コイルユニット及びそれを備えたソレノイド
(51)【国際特許分類】
H01F 7/18 20060101AFI20220315BHJP
【FI】
H01F7/18 K
(21)【出願番号】P 2018064436
(22)【出願日】2018-03-29
【審査請求日】2021-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】302038741
【氏名又は名称】新電元メカトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111899
【氏名又は名称】永山 陽二
(72)【発明者】
【氏名】岡田 信秀
【審査官】後藤 嘉宏
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-180881(JP,A)
【文献】実開昭58-008910(JP,U)
【文献】特開平06-132116(JP,A)
【文献】特開2000-323324(JP,A)
【文献】実開平04-019650(JP,U)
【文献】特開2019-129234(JP,A)
【文献】特開2012-015290(JP,A)
【文献】実開平06-055224(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 7/16-7/18
H01F 7/06
F16K 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器に実装されるコイルユニットであって、
コイル用線条を第1層から第n(n≧2)層までn個の線条層をなすように巻回して形成されたコイルと、
互いに直列接続されたダイオードと抵抗とを1群とし、かつ、前記第1層から前記第n層までの前記線条層に対してそれぞれ並列接続された第1群から第n群までのn群の動作設定素子群と、
前記第1層から前記第n層までの前記線条層に対して、それぞれ並列接続され、かつ、ベース電極が前記第1群から前記第n群までの前記動作設定素子群を構成する前記ダイオードと前記抵抗との中点にそれぞれ接続された第1から第nまでのn個のバイポーラトランジスタと、
発光ダイオードとフォトトランジスタとを備え、前記フォトトランジスタのコレクタ電極とエミッタ電極とが前記第1群から前記第n群までの前記動作設定素子群の前記ダイオードに対してそれぞれ並列接続された第1から第nまでのn個のフォトカプラと、
前記第1から前記第nまでの前記フォトカプラの前記発光ダイオードと、第1の電源とに接続されると共に、前記第1から前記第nまでの前記フォトカプラの前記発光ダイオードのうち、任意のm(n>m≧1)個、又は、全部を前記第1の電源に対して接続可能な選択スイッチを有し、
前記第1群から前記n群までの前記動作設定素子群は、前記ダイオードが第2の電源の
電流供給側に、前記抵抗が前記第2の電源の電流帰還側になるように配置されると共に、前記ダイオードが前記第2の電源の前記電流供給側から前記電流帰還側に向う方向に対して順方向となるように配置され、
前記第1から前記第nまでの前記バイポーラトランジスタは、前記第1の前記バイポーラトランジスタのコレクタ電極が前記第2の電源の前記電流供給側に接続されると共に、第2から前記第nまでの前記バイポーラトランジスタのコレクタ電極が前記第1から第n-1の前記バイポーラトランジスタのエミッタ電極に対してそれぞれ接続され、前記第nの前記バイポーラトランジスタのエミッタ電極が前記第2の電源の前記電流帰還側に接続されると共に、並列接続された前記線条層が断線していないときに前記第2の電源から印加される電圧によってオンせず、かつ、並列接続された前記線条層に断線が発生したときに前記第2の電源から印加される電圧によってオンするようになされ、
前記第1から前記第nまでの前記フォトカプラは、前記発光ダイオードが前記第1の電源から供給された電流によって発光し、前記フォトトランジスタが前記発光ダイオードの発光によってオンして前記第2の電源からの電流を増幅し、並列接続されている前記ダイオードを備えている前記動作設定素子群を構成する前記ダイオードと前記抵抗との中点に前記ベース電極が接続されている前記バイポーラトランジスタをオンさせるようになされたことを特徴とするコイルユニット。
【請求項2】
機器に実装されるコイルユニットであって、
コイル用線条を第1層から第n(n≧4)層までn個の線条層をなすように巻回して形成されたコイルと、
前記第1層から第j(n>j≧1)層までの前記線条層において隣り合うl(2≦l≦n/2、かつ、lは整数)層の前記線条層を第1群から第k(k=n/m、かつ、kは端数を切り捨てた整数)群までのk個の線条層群とし、これらk個の前記線条層群にそれぞれ並列接続され、かつ、互いに直列接続されたダイオードと抵抗とを1群とする第1群から第k群までのk群の動作設定素子群と、
前記第1群から前記第k群までの前記線条層群に対してそれぞれ並列接続され、かつ、ベース電極が前記第1群から前記第k群までの前記動作設定素子群を構成する前記ダイオードと前記抵抗との中点にそれぞれ接続された第1から第kまでのk個のバイポーラトランジスタと、
発光ダイオードとフォトトランジスタとを備え、前記フォトトランジスタのコレクタ電極とエミッタ電極とが前記第1群から前記第k群までの前記動作設定素子群の前記ダイオードに対してそれぞれ並列接続された第1から第kまでのk個のフォトカプラと、
前記第1から前記第kまでの前記フォトカプラの前記発光ダイオードと、第1の電源とに接続されると共に、前記第1から前記第kまでの前記フォトカプラの前記発光ダイオードのうち、任意のm(k>m≧1)個、又は、全部を前記第1の電源に対して接続可能な選択スイッチを有し、
前記第1群から前記k群までの前記動作設定素子群は、前記ダイオードが第2の電源の電流供給側に、前記抵抗が前記第2の電源の電流帰還側になるように配置されると共に、前記ダイオードが前記第2の電源の前記電流供給側から前記電流帰還側に向う方向に対して順方向となるように配置され、
前記第1から前記第kまでの前記バイポーラトランジスタは、前記第1の前記バイポーラトランジスタのコレクタ電極が前記第2の電源の前記電流供給側に接続されると共に、第2から前記第kまでの前記バイポーラトランジスタのコレクタ電極が前記第1から第k-1の前記バイポーラトランジスタのエミッタ電極に対してそれぞれ接続され、前記第kの前記バイポーラトランジスタのエミッタ電極が前記第2の電源の前記電流帰還側に接続されると共に、並列接続された前記線条層が断線していないときに前記第2の電源から印加される電圧によってオンせず、かつ、並列接続された前記線条層に断線が発生したときに前記第2の電源から印加される電圧によってオンするようになされ、
前記第1から前記第kまでの前記フォトカプラは、前記発光ダイオードが前記第1の電源から供給された電流によって発光し、前記フォトトランジスタが前記発光ダイオードの発光によってオンして前記第2の電源からの電流を増幅し、並列接続されている前記ダイオードを備えている前記動作設定素子群を構成する前記ダイオードと前記抵抗との中点に前記ベース電極が接続されている前記バイポーラトランジスタをオンさせるようになされたことを特徴とするコイルユニット。
【請求項3】
機器に実装されるコイルユニットであって、
コイル用線条を第1層から第n(n≧2)層までn個の線条層をなすように巻回して形成されたコイルと、
互いに直列接続されたダイオードと抵抗とを1群とし、かつ、前記第1層から前記第n層までの前記線条層に対してそれぞれ並列接続された第1群から第n群までのn群の動作設定素子群と、
前記第1層から前記第n層までの前記線条層に対して、それぞれ並列接続され、かつ、ベース電極が前記第1群から前記第n群までの前記動作設定素子群を構成する前記ダイオードと前記抵抗との中点にそれぞれ接続された第1から第nまでのn個のバイポーラトランジスタと、
発光ダイオードとフォトトランジスタとを備え、前記フォトトランジスタのコレクタ電極とエミッタ電極とが前記第1群から第h(n>h≧2)群までの前記動作設定素子群の前記ダイオードに対してそれぞれ並列接続された第1から第hまでのh個のフォトカプラと、
前記第1から前記第hまでの前記フォトカプラの前記発光ダイオードと、第1の電源とに接続されると共に、前記第1から前記第hまでの前記フォトカプラの前記発光ダイオードのうち、任意のm(h>m≧1)個、又は、全部を前記第1の電源に対して接続可能な選択スイッチを有し、
前記第1群から前記n群までの前記動作設定素子群は、前記ダイオードが第2の電源の電流供給側に、前記抵抗が前記第2の電源の電流帰還側になるように配置されると共に、前記ダイオードが前記第2の電源の前記電流供給側から前記電流帰還側に向う方向に対して順方向となるように配置され、
前記第1から前記第nまでの前記バイポーラトランジスタは、前記第1の前記バイポーラトランジスタのコレクタ電極が前記第2の電源の前記電流供給側に接続されると共に、
第2から前記第nまでの前記バイポーラトランジスタのコレクタ電極が前記第1から第n-1の前記バイポーラトランジスタのエミッタ電極に対してそれぞれ接続され、前記第nの前記バイポーラトランジスタのエミッタ電極が前記第2の電源の前記電流帰還側に接続されると共に、並列接続された前記線条層が断線していないときに前記第2の電源から印加される電圧によってオンせず、かつ、並列接続された前記線条層に断線が発生したときに前記第2の電源から印加される電圧によってオンするようになされ、
前記第1から前記第hまでの前記フォトカプラは、前記発光ダイオードが前記第1の電源から供給された電流によって発光し、前記フォトトランジスタが前記発光ダイオードの発光によってオンして前記第2の電源からの電流を増幅し、並列接続されている前記ダイオードを備えている前記動作設定素子群を構成する前記ダイオードと前記抵抗との中点に前記ベース電極が接続されている前記バイポーラトランジスタをオンさせるようになされたことを特徴とするコイルユニット。
【請求項4】
機器に実装されるコイルユニットであって、
コイル用線条を第1層から第n(n≧4)層までn個の線条層をなすように巻回して形成されたコイルと、
前記第1層から第j(n>j≧1)層までの前記線条層において隣り合うl(2≦l≦n/2、かつ、lは整数)層の前記線条層を第1群から第k(k=n/m、かつ、kは端数を切り捨てた整数)群までのk個の線条層群とし、これらk個の前記線条層群にそれぞれ並列接続され、かつ、互いに直列接続されたダイオードと抵抗とを1群とする第1群から第k群までのk群の動作設定素子群と、
前記第1群から前記第k群までの前記線条層群に対してそれぞれ並列接続され、かつ、ベース電極が
前記第1群から
前記第k群までの前記動作設定素子群を構成する前記ダイオードと前記抵抗との中点にそれぞれ接続された第1から第kまでのk個のバイポーラトランジスタと、
発光ダイオードとフォトトランジスタとを備え、前記フォトトランジスタのコレクタ電極とエミッタ電極とが前記第1群から
第g(k>g≧2)群までの前記動作設定素子群の前記ダイオードに対してそれぞれ並列接続された第1から第gまでのg個のフォトカプラと、
前記第1から
前記第gまでの前記フォトカプラの前記発光ダイオードと、第1の電源とに接続されると共に、前記第1から
前記第gまでの前記フォトカプラの前記発光ダイオードのうち、任意のm(g>m≧1)個、又は、全部を前記第1の電源に対して接続可能な選択スイッチを有し、
前記第1群から前記k群までの前記動作設定素子群は、前記ダイオードが第2の電源の電流供給側に、前記抵抗が前記第2の電源の電流帰還側になるように配置されると共に、前記ダイオードが前記第2の電源の前記電流供給側から前記電流帰還側に向う方向に対して順方向となるように配置され、
前記第1から前記第kまでの前記バイポーラトランジスタは、前記第1の前記バイポーラトランジスタのコレクタ電極が前記第2の電源の前記電流供給側に接続されると共に、第2から前記第kまでの前記バイポーラトランジスタのコレクタ電極が前記第1から第k-1の前記バイポーラトランジスタのエミッタ電極に対してそれぞれ接続され、前記第kの前記バイポーラトランジスタのエミッタ電極が前記第2の電源の前記電流帰還側に接続されると共に、並列接続された前記線条層が断線していないときに前記第2の電源から印加される電圧によってオンせず、かつ、並列接続された前記線条層に断線が発生したときに前記第2の電源から印加される電圧によってオンするようになされ、
前記第1から前記第gまでの前記フォトカプラは、前記発光ダイオードが前記第1の電源から供給された電流によって発光し、前記フォトトランジスタが前記発光ダイオードの発光によってオンして前記第2の電源からの電流を増幅し、並列接続されている前記ダイオードを備えている前記動作設定素子群を構成する前記ダイオードと前記抵抗との中点に前記ベース電極が接続されている前記バイポーラトランジスタをオンさせるようになされたことを特徴とするコイルユニット。
【請求項5】
さらに、略筒状に形成された巻胴部と、この巻胴部の両端部又はその近傍部分に設けられた第1のフランジ部及び第2のフランジ部とを備えたコイルボビンを有し、
前記第1のフランジ部と前記第2のフランジ部とのいずれか一方又は両方は、縁辺部から前記巻胴部又は前記近傍部分に至るスリットが形成され、
前記コイルは、前記巻胴部に巻回され、前記第1層から前記第n層までの前記線条層のうち、いずれかの前記線条層とこの前記線条層と隣り合う前記線条層を構成する前記コイル用線条の両端部及びその近傍部分が前記第1のフランジ部又は前記第2のフランジ部の前記スリットを介して前記巻胴部と反対側にそれぞれ導出されて、互いに結線されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のコイルユニット。
【請求項6】
請求項5に記載のコイルユニットを備えたことを特徴とするソレノイド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイルユニット及びそれを備えたソレノイドに関し、特に、コイル用線条の断線に対応することが可能な構成を有するコイルユニット及びそれを備えたソレノイドに関する。
【背景技術】
【0002】
コイルユニットを実装し、コイルが生成する磁界によって作動力や、熱を得るために利用される機器、例えばリニアソレノイドや、ロータリソレノイド、ボイスコイルモータ、リニアモータ、高周波誘導加熱器、電磁バルブなどの各種機器においては、外部から伝わる、あるいは、その機器自体が生成する振動や衝撃によって、コイルに断線を生じる場合がある。
【0003】
図11は、従来技術に係るコイルユニットを実装したソレノイドを示す断面図である。
図11において、70はソレノイド、80はコイル、81はコイルボビン、82は第1のフランジ部、83は巻胴部、84は第2のフランジ部、85は第1の配線孔、86は第2の配線孔、87は第1の端部領域、88は第2の端部領域、89は端子部、90は固定磁極、91は可動磁極、92は補助磁極、93は対向部、94はケース、95は固定用板材、96はシャフト、97はスリーブ、98はコネクタ、99は挿入部である。
【0004】
図11は、特開2017-69301号公報で開示された発明を表したものである。
図11に示すように、ソレノイド70は、ケース94の一方の開口部にコネクタ98を設けており、図示していない実装される機器のコネクタに対して挿入部99を直接に接続できるダイレクトカプラ型に構成されている。ダイレクトカプラ型のソレノイドは、油圧機器などおいて使用されることが多い。ケース94の他方の開口部には、実装される機器に固定される固定用板材95を設けており、さらに固定用板材95には固定磁極90が嵌合されている。ケース94の内部には、コイル80が設けられており、さらにコイル80の内部には、補助磁極92の対向部93が設けられている。くわえて、対向部93の内部には、スリーブ97が設けられている。コイル80は、コイルボビン81の巻胴部83にコイル用線条を巻回して形成したものである。コイル80の第1の端部領域87と第2の端部領域88とは、コイルボビン81の第2のフランジ部84に形成した第1の配線孔85と第2の配線孔86を介して、端子部89と図示していないもう一つの端子部とにそれぞれ接続されている。よって、端子部89と図示していないもう一つの端子部とに実装される機器のコネクタを電気的に接続することによって、コイル80に対して電流を供給することが可能である。また、特に図示しないが、組立工程における配線ミスなどによって、電源に対してコイル80が逆接続されることを防止するために、第2のフランジ部84に逆
接防止ダイオードを設けたコイルユニットとすることも珍しくない。
【0005】
また、コイルボビン81は、第1のフランジ部82が固定用板材95に、第2のフランジ部84が補助磁極92に接した状態で設けされており、ケース94、補助磁極92の対向部93及び固定用板材95に囲まれた状態で保持されている。可動磁極91は、固定用板材95側に開口しているスリーブ97の内部に設けられている。さらに、可動磁極91は、その中心軸に沿った貫通孔にシャフト96が嵌合されている。スリーブ97は、可動磁極91の摺動を案内する。以上の構成において、コイル80に電流が供給されると、可動磁極91、固定磁極90、ケース94及び補助磁極92を巡る磁気回路が生成され、可動磁極91が固定磁極90に吸引されて固定磁極90側に摺動し、シャフト96も同時に摺動する。
【0006】
以上の構成によれば、ソレノイド70を実装される機器のコネクタに直接に接続できることから、ソレノイドの小型化が実現できる上に、コイル80を実装される機器に電気的に接続するための作業負担が軽減できるという利点がある。ところで、ソレノイド70においては、コネクタ98を実装される機器のコネクタに対して直接的に接続しているので、実装される機器からの振動や衝撃は、固定用板材95と共にコネクタ98からも伝わるようになる。コイル80に対して実装される機器からの振動や衝撃が長期間に渡って多数加わると、コイル80の断線がより発生しやすくなる。コイルが断線すると機器としての機能の少なくとも一部が失われるので、特に安全確保が求められる機器においては、断線対策が大きな課題となる。
【0007】
そこで、フェイルセーフの観点から、例えばソレノイドを1個だけ設けるのではなく、複数個設けた集合型ソレノイドとし、この集合型ソレノイドを実装される機器に接続するなどの対策を講じる必要がある。しかし、集合型ソレノイドは、安全性を確保することが可能であるが、ソレノイドが大型化する上に、実装される機器においてはソレノイドからの作動力を受ける部分などが大型化するので、好ましい解決策とは言えない。くわえて、他の断線対策を講じた場合であっても、ソレノイドの販売価格が大きく変動することがないように、コスト面における配慮も必然的な課題になってくる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述の課題を解決するために、機器の小型化を妨げることなく、コイルの断線による機能喪失を防止することが可能であり、かつ、販売価格が大きく変動することがないような構成を有しているコイルユニット及びそれを備えたソレノイドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、機器に実装されるコイルユニットであって、 コイル用線条を第1層から第n(n≧2)層までn個の線条層をなすように巻回して形成されたコイルと、互いに直列接続されたダイオードと抵抗とを1群とし、かつ、前記第1層から前記第n層までの前記線条層に対してそれぞれ並列接続された第1群から第n群までのn群の動作設定素子群と、前記第1層から前記第n層までの前記線条層に対して、それぞれ並列接続され、かつ、ベース電極が前記第1群から前記第n群までの前記動作設定素子群を構成する前記ダイオードと前記抵抗との中点にそれぞれ接続された第1から第nまでのn個のバイポーラトランジスタと、発光ダイオードとフォトトランジスタとを備え、前記フォトトランジスタのコレクタ電極とエミッタ電極とが前記第1群から前記第n群までの前記動作設定素子群の前記ダイオードに対してそれぞれ並列接続された第1から第nまでのn個のフォトカプラと、前記第1から前記第nまでの前記フォトカプラの前記発光ダイオードと、第1の電源とに接続されると共に、前記第1から前記第nまでの前記フォトカプラの前記発光ダイオードのうち、任意のm(n>m≧1)個、又は、全部を前記第1の電源に対して接続可能な選択スイッチを有し、前記第1群から前記n群までの前記動作設定素子群は、前記ダイオードが第2の電源の電流供給側に、前記抵抗が前記第2の電源の電流帰還側になるように配置されると共に、前記ダイオードが前記第2の電源の前記電流供給側から前記電流帰還側に向う方向に対して順方向となるように配置され、前記第1から前記第nまでの前記バイポーラトランジスタは、前記第1の前記バイポーラトランジスタのコレクタ電極が前記第2の電源の前記電流供給側に接続されると共に、第2から前記第nまでの前記バイポーラトランジスタのコレクタ電極が前記第1から第n-1の前記バイポーラトランジスタのエミッタ電極に対してそれぞれ接続され、前記第nの前記バイポーラトランジスタのエミッタ電極が前記第2の電源の前記電流帰還側に接続されると共に、並列接続された前記線条層が断線していないときに前記第2の電源から印加される電圧によってオンせず、かつ、並列接続された前記線条層に断線が発生したときに前記第2の電源から印加される電圧によってオンするようになされ、前記第1から前記第nまでの前記フォトカプラは、前記発光ダイオードが前記第1の電源から供給された電流によって発光し、前記フォトトランジスタが前記発光ダイオードの発光によってオンして前記第2の電源からの電流を増幅し、並列接続されている前記ダイオードを備えている前記動作設定素子群を構成する前記ダイオードと前記抵抗との中点に前記ベース電極が接続されている前記バイポーラトランジスタをオンさせるようになされたことを特徴とするコイルユニットである。
【0011】
請求項2に記載の発明は、機器に実装されるコイルユニットであって、コイル用線条を第1層から第n(n≧4)層までn個の線条層をなすように巻回して形成されたコイルと、前記第1層から第j(n>j≧1)層までの前記線条層において隣り合うl(2≦l≦n/2、かつ、lは整数)層の前記線条層を第1群から第k(k=n/m、かつ、kは端数を切り捨てた整数)群までのk個の線条層群とし、これらk個の前記線条層群にそれぞれ並列接続され、かつ、互いに直列接続されたダイオードと抵抗とを1群とする第1群から第k群までのk群の動作設定素子群と、前記第1群から前記第k群までの前記線条層群に対してそれぞれ並列接続され、かつ、ベース電極が前記第1群から前記第k群までの前記動作設定素子群を構成する前記ダイオードと前記抵抗との中点にそれぞれ接続された第1から第kまでのk個のバイポーラトランジスタと、発光ダイオードとフォトトランジスタとを備え、前記フォトトランジスタのコレクタ電極とエミッタ電極とが前記第1群から前記第k群までの前記動作設定素子群の前記ダイオードに対してそれぞれ並列接続された第1から第kまでのk個のフォトカプラと、前記第1から前記第kまでの前記フォトカプラの前記発光ダイオードと、第1の電源とに接続されると共に、前記第1から前記第kまでの前記フォトカプラの前記発光ダイオードのうち、任意のm(k>m≧1)個、又は、全部を前記第1の電源に対して接続可能な選択スイッチを有し、前記第1群から前記k群までの前記動作設定素子群は、前記ダイオードが第2の電源の電流供給側に、前記抵抗が前記第2の電源の電流帰還側になるように配置されると共に、前記ダイオードが前記第2の電源の前記電流供給側から前記電流帰還側に向う方向に対して順方向となるように配置され、前記第1から前記第kまでの前記バイポーラトランジスタは、前記第1の前記バイポーラトランジスタのコレクタ電極が前記第2の電源の前記電流供給側に接続されると共に、第2から前記第kまでの前記バイポーラトランジスタのコレクタ電極が前記第1から第k-1の前記バイポーラトランジスタのエミッタ電極に対してそれぞれ接続され、前記第kの前記バイポーラトランジスタのエミッタ電極が前記第2の電源の前記電流帰還側に接続されると共に、並列接続された前記線条層が断線していないときに前記第2の電源から印加される電圧によってオンせず、かつ、並列接続された前記線条層に断線が発生したときに前記第2の電源から印加される電圧によってオンするようになされ、前記第1から前記第kまでの前記フォトカプラは、前記発光ダイオードが前記第1の電源から供給された電流によって発光し、前記フォトトランジスタが前記発光ダイオードの発光によってオンして前記第2の電源からの電流を増幅し、並列接続されている前記ダイオードを備えている前記動作設定素子群を構成する前記ダイオードと前記抵抗との中点に前記ベース電極が接続されている前記バイポーラトランジスタをオンさせるようになされたことを特徴とするコイルユニットである。
【0012】
請求項3に記載の発明は、機器に実装されるコイルユニットであって、コイル用線条を第1層から第n(n≧2)層までn個の線条層をなすように巻回して形成されたコイルと、互いに直列接続されたダイオードと抵抗とを1群とし、かつ、前記第1層から前記第n層までの前記線条層に対してそれぞれ並列接続された第1群から第n群までのn群の動作設定素子群と、前記第1層から前記第n層までの前記線条層に対して、それぞれ並列接続され、かつ、ベース電極が前記第1群から前記第n群までの前記動作設定素子群を構成する前記ダイオードと前記抵抗との中点にそれぞれ接続された第1から第nまでのn個のバイポーラトランジスタと、発光ダイオードとフォトトランジスタとを備え、前記フォトトランジスタのコレクタ電極とエミッタ電極とが前記第1群から第h(n>h≧2)群までの前記動作設定素子群の前記ダイオードに対してそれぞれ並列接続された第1から第hまでのh個のフォトカプラと、前記第1から前記第hまでの前記フォトカプラの前記発光ダイオードと、第1の電源とに接続されると共に、前記第1から前記第hまでの前記フォトカプラの前記発光ダイオードのうち、任意のm(h>m≧1)個、又は、全部を前記第1の電源に対して接続可能な選択スイッチを有し、前記第1群から前記n群までの前記動作設定素子群は、前記ダイオードが第2の電源の電流供給側に、前記抵抗が前記第2の電源の電流帰還側になるように配置されると共に、前記ダイオードが前記第2の電源の前記電流供給側から前記電流帰還側に向う方向に対して順方向となるように配置され、前記第1から前記第nまでの前記バイポーラトランジスタは、前記第1の前記バイポーラトランジスタのコレクタ電極が前記第2の電源の前記電流供給側に接続されると共に、第2から前記第nまでの前記バイポーラトランジスタのコレクタ電極が前記第1から第n-1の前記バイポーラトランジスタのエミッタ電極に対してそれぞれ接続され、前記第nの前記バイポーラトランジスタのエミッタ電極が前記第2の電源の前記電流帰還側に接続されると共に、 並列接続された前記線条層が断線していないときに前記第2の電源から印加される電圧によってオンせず、かつ、並列接続された前記線条層に断線が発生したときに前記第2の電源から印加される電圧によってオンするようになされ、前記第1から前記第hまでの前記フォトカプラは、前記発光ダイオードが前記第1の電源から供給された電流によって発光し、前記フォトトランジスタが前記発光ダイオードの発光によってオンして前記第2の電源からの電流を増幅し、並列接続されている前記ダイオードを備えている前記動作設定素子群を構成する前記ダイオードと前記抵抗との中点に前記ベース電極が接続されている前記バイポーラトランジスタをオンさせるようになされたことを特徴とするコイルユニットである。
【0013】
請求項4に記載の発明は、機器に実装されるコイルユニットであって、コイル用線条を第1層から第n(n≧4)層までn個の線条層をなすように巻回して形成されたコイルと、前記第1層から第j(n>j≧1)層までの前記線条層において隣り合うl(2≦l≦n/2、かつ、lは整数)層の前記線条層を第1群から第k(k=n/m、かつ、kは端数を切り捨てた整数)群までのk個の線条層群とし、これらk個の前記線条層群にそれぞれ並列接続され、かつ、互いに直列接続されたダイオードと抵抗とを1群とする第1群から第k群までのk群の動作設定素子群と、前記第1群から前記第k群までの前記線条層群に対してそれぞれ並列接続され、かつ、ベース電極が前記第1群から前記第k群までの前記動作設定素子群を構成する前記ダイオードと前記抵抗との中点にそれぞれ接続された第1から第kまでのk個のバイポーラトランジスタと、発光ダイオードとフォトトランジスタとを備え、前記フォトトランジスタのコレクタ電極とエミッタ電極とが前記第1群から第g(k>g≧2)群までの前記動作設定素子群の前記ダイオードに対してそれぞれ並列接続された第1から第gまでのg個のフォトカプラと、前記第1から前記第gまでの前記フォトカプラの前記発光ダイオードと、第1の電源とに接続されると共に、前記第1から前記第gまでの前記フォトカプラの前記発光ダイオードのうち、任意のm(g>m≧1)個、又は、全部を前記第1の電源に対して接続可能な選択スイッチを有し、前記第1群から前記k群までの前記動作設定素子群は、前記ダイオードが第2の電源の電流供給側に、前記抵抗が前記第2の電源の電流帰還側になるように配置されると共に、前記ダイオードが前記第2の電源の前記電流供給側から前記電流帰還側に向う方向に対して順方向となるように配置され、前記第1から前記第kまでの前記バイポーラトランジスタは、前記第1の前記バイポーラトランジスタのコレクタ電極が前記第2の電源の前記電流供給側に接続されると共に、第2から前記第kまでの前記バイポーラトランジスタのコレクタ電極が前記第1から第k-1の前記バイポーラトランジスタのエミッタ電極に対してそれぞれ接続され、前記第kの前記バイポーラトランジスタのエミッタ電極が前記第2の電源の前記電流帰還側に接続されると共に、並列接続された前記線条層が断線していないときに前記第2の電源から印加される電圧によってオンせず、かつ、並列接続された前記線条層に断線が発生したときに前記第2の電源から印加される電圧によってオンするようになされ、前記第1から前記第gまでの前記フォトカプラは、前記発光ダイオードが前記第1の電源から供給された電流によって発光し、前記フォトトランジスタが前記発光ダイオードの発光によってオンして前記第2の電源からの電流を増幅し、並列接続されている前記ダイオードを備えている前記動作設定素子群を構成する前記ダイオードと前記抵抗との中点に前記ベース電極が接続されている前記バイポーラトランジスタをオンさせるようになされたことを特徴とするコイルユニットである。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の発明において、さらに、略筒状に形成された巻胴部と、この巻胴部の両端部又はその近傍部分に設けられた第1のフランジ部及び第2のフランジ部とを備えたコイルボビンを有し、前記第1のフランジ部と前記第2のフランジ部とのいずれか一方又は両方は、縁辺部から前記巻胴部又は前記近傍部分に至るスリットが形成され、前記コイルは、前記巻胴部に巻回され、前記第1層から前記第n層までの前記線条層のうち、いずれかの前記線条層とこの前記線条層と隣り合う前記線条層を構成する前記コイル用線条の両端部及びその近傍部分が前記第1のフランジ部又は前記第2のフランジ部の前記スリットを介して前記巻胴部と反対側にそれぞれ導出されて、互いに結線されていることを特徴とするコイルユニットである。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のコイルユニットを備えたことを特徴とするソレノイドである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、第1層から第n層までの線条層が正常であれば、第1から第nまでのバイポーラトランジスタはいずれもオンしないが、第1層から第n層までの線条層のうちのいずれか1層、又は、複数層において断線が発生すると、断線が発生した線条層に対応するバイポーラトランジスタがオンし、次の線条層に断線がなければこの線条層に電流が流れ、さらにこの線条層も断線している場合には次のバイポーラトランジスタに電流が流れる。また、これ以降についても断線が発生していれば、同様に動作する。すなわち、いずれかの線条層に断線が発生すると、その線条層に対応するバイポーラトランジスタがバイパスとして機能し、電流が流れ続けるので、コイルとしての機能が多少低下しても、機能が完全に失われることを防止できるようになる。さらに、選択スイッチを操作することによって任意のバイポーラトランジスタをオンさせることができるので、実装対象の機器に応じた磁力を生成するように調整することが可能となる。ひいては、同一構成のコイルユニットを多様な機器に装着できるので、同一構成のコイルユニットを大量生産することによって製造コストを低減し、販売価格の上昇を抑えることも可能となる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、第1群から第k群までの線条層群が正常であれば、第1から第kまでのバイポーラトランジスタはいずれもオンしないが、第1群から第k群までの線条層群のうちのいずれか1群、又は、複数群において断線が発生すると、断線が発生した線条層群に対応するバイポーラトランジスタがオンし、次の線条層群に断線がなければこの線条層群に電流が流れ、さらにこの線条層群も断線している場合には次のバイポーラトランジスタに電流が流れる。また、これ以降についても断線が発生していれば、同様に動作する。すなわち、いずれかの線条層に断線が発生すると、その線条層に対応するバイポーラトランジスタがバイパスとして機能し、電流が流れ続けるので、コイルとしての機能が多少低下しても、機能が完全に失われることを防止できるようになる。さらに、選択スイッチを操作することによって任意のバイポーラトランジスタをオンさせることができるので、実装対象の機器に応じた磁力を生成するように調整することが可能となる。ひいては、同一構成のコイルユニットを多様な機器に装着できるので、同一構成のコイルユニットを大量生産することによって製造コストを低減し、販売価格の上昇を抑えることも可能となる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、第1層から第n層までの線条層が正常であれば、第1から第nまでのバイポーラトランジスタはいずれもオンしないが、第1層から第n層までの線条層のうちのいずれか1層、又は、複数層において断線が発生すると、断線が発生した線条層に対応するバイポーラトランジスタがオンし、次の線条層に断線がなければこの線条層に電流が流れ、さらにこの線条層も断線している場合には次のバイポーラトランジスタに電流が流れる。また、これ以降についても断線が発生していれば、同様に動作する。すなわち、いずれかの線条層に断線が発生すると、その線条層に対応するバイポーラトランジスタがバイパスとして機能し、電流が流れ続けるので、コイルとしての機能が多少低下しても、機能が完全に失われることを防止できるようになる。さらに、選択スイッチを操作することによって任意のバイポーラトランジスタをオンさせることができるので、実装対象の機器に応じた磁力を生成するように調整することが可能となる。ひいては、同一構成のコイルユニットを多様な機器に装着できるので、同一構成のコイルユニットを大量生産することによって製造コストを低減し、販売価格の上昇を抑えることも可能となる。くわえて、フォトカプラをバイポーラトランジスタよりも少なく設けることによって、一部のバイポーラトランジスタを任意にオンする対象から除外でき、コイルユニットの部品点数を削減することができる。ひいては、コイルユニットの販売価格の上昇をさらに抑えることも可能となる。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、第g+1群から第k群までの線条層群が正常であれば、第g+1から第kまでのバイポーラトランジスタはオンしないが、第g+1群から第k群までの線条層群のうちのいずれか1群、又は、複数層群おいて断線が発生すると、断線が発生した線条層群に対応するバイポーラトランジスタがオンし、次の線条層群に断線がなければこの線条層群に電流が流れ、さらにこの線条層群も断線している場合には次のダバイポーラトランジスタに電流が流れる。また、これ以降についても断線が発生していれば、同様に動作する。すなわち、いずれかの線条層群に断線が発生すると、その線条層群に対応するバイポーラトランジスタがバイパスとして機能し、電流が流れ続けるので、コイルとしての機能が多少低下しても、機能が完全に失われることを防止できるようになる。同様に、第1群から第g群までの線条層群のうちのいずれか1群、又は、複数群において断線が発生すると、断線が発生した線条層群に対応するバイポーラトランジスタがオンし、次の線条層群に断線がなければこの線条層群に電流が流れ、さらにこの線条層群も断線している場合には次のバイポーラトランジスタに電流が流れる。また、これ以降についても断線が発生していれば、同様に動作する。すなわち、いずれかの線条層群に断線が発生すると、その線条層に対応するバイポーラトランジスタがバイパスとして機能し、電流が流れ続けるので、コイルとしての機能が多少低下しても、機能が完全に失われることを防止できるようになる。また、フォトカプラをバイポーラトランジスタよりも少なく設けることによって、一部のバイポーラトランジスタを任意にオンする対象から除外でき、コイルユニットの部品点数を削減することができる。ひいては、コイルユニットの販売価格の上昇をさらに抑えることも可能となる。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、第1のフランジ部又は第2のフランジ部の巻胴部とは反対側にコイル用線条の両端部及びその近傍部分を導出するので、第1のフランジ部又は第2のフランジ部の巻胴部とは反対側の面上にダイオードや、バイポーラトランジスタ又は抵抗を配置することができる。
【0021】
請求項6に記載の発明によれば、機器の小型化を妨げることなく、コイルの断線による機能喪失の防止することが可能なソレノイドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係るコイルユニットの回路図である。
【
図2】本発明の第1の実施の形態に係るコイルユニットの一実施例を示す回路図(1)である。
【
図3】本発明の第1の実施の形態に係るコイルユニットの一実施例を示す回路図(2)である。
【
図4】本発明の第1の実施の形態に係るコイルユニットの一実施例を示す回路図(3)である。
【
図5】本発明の第1の実施の形態に係るコイルユニットの一実施例を示す回路図(4)である。
【
図6】本発明の第2の実施の形態に係るコイルユニットの一実施例を示す回路図である。
【
図7】本発明の第3の実施の形態に係るコイルユニットの一実施例を示す回路図である。
【
図8】本発明の各実施の形態に係るコイルユニットのコイルボビンにおける共通構成部分を示し、(a)は断面図、(b)は側面図である。
【
図9】本発明の第1の実施の形態に係るコイルユニットのコイルボビンの断面図である。
【
図10】本発明の第2の実施の形態に係るコイルユニットのコイルボビンの断面図である。
【
図11】従来技術に係るコイルユニットを実装したレノイドを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
まず、本件の
図8乃至
図10に記載されているコイル用線条は、記載内容の理解を容易にするために、コイルボビンの径や長さに対して相当太いものに強調して記載している。なお、本件の各実施の形態のコイルユニットにおいては、コイルボビンを設けてもよく、逆にコイルボビンを設けない、いわゆる空芯コイルやボビンレスコイルであってもよい。くわえて、コイル用線条の全部又は一部を樹脂中に封止するモールドコイルであってもよい。さらに、本件の各図に記載されているコイル用線条は、断面形状を円形のものとして記載しているが、いわゆる平角線や、角線、六角線などいずれの形状であってもよい。さらに、例えばフレキシブル基板にプリントした配線を円筒状にまるめて複数枚重ね合わせてコイルとするなど、コイル用線条として利用できるのであれば、断面形状や製造方法はいずれのものであってもよい。また、以下の説明において、「線条層」とは、コイル用線条(コイルワイヤと称されることもある)をらせん状に所定のターン数巻回した形成された円形状や円筒形状(角筒形状などに形成されることもある)の層のことであり、「レア」、「レイヤ」と称されることもある。さらに、線条層は、コイル用線条を数十ターン程度巻回して形成されることが多いが、1ターンのみであってもよい。また、この明細書及び本願の特許請求の範囲において、「隣り合うl(2≦l≦n/2、かつ、lは整数)層」など「隣り合う」と記述している部分があるが、これらにおける「隣り合う」は、線条層が互いに接していることを意味する。例えば、lが2である場合には、第1層の線条層及び第2層の線条層、第3層の線条層及び第4層の線条層、第5層の線条層及び第6層の線条層、あるいは、mが4である場合には、第1層から第4層までの線条層、第5層から第8層までの線条層、第9層から第12層までの線条層、のような関係になる一連の層を「隣り合う(線条層)」とする。言い換えるならば、「隣り合う」は、例えばm=4のときには、ある線条層に対して、1つ上側(外側)の2番目の線条層、さらにその上側(外側)の3番目の線条層、さらにその上側(外側)の4番目の線条層、というように、コイル用線条を巻回し、さらにその上に巻回することを繰り返して形成した連続する4層の線条層の状態を指すものと定義できる。くわえて、以下の各実施例に係るコイルユニットにおいては、7層の線条層を有するコイルユニットについて説明しているが、20層や30層、あるいはそれ以上の層を有していてもよい。また、以下の各実施の形態に係るコイルユニットは、特に用途が限定されるものではないが、リニアソレノイド、ボイスコイルモータや、ヒータなどに特に好適である。
【0024】
本発明の第1の実施の形態に係るコイルユニットについて説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るコイルユニットの回路図である。
図1において、10はコイルユニット、20は駆動線条層選択部、21はコイル部、D1~Dnはダイオード、Is1及びIs2は定電流電源、L1~Lnは線条層、LED1~LEDnは発光ダイオード、PC1~PCnはフォトカプラ、PTR1~PTRnはフォトトランジスタ、R1~Rnは抵抗、SWは選択スイッチ、TR1~TRnはバイポーラトランジスタである。
【0025】
図1に示すように、第1の実施の形態に係るコイルユニット10は、駆動線条層選択部20及びコイル部21を備えている。駆動線条層選択部20とコイル部21は、フェイルセーフの観点から、発光ダイオードLED1~LEDnとフォトトランジスタPTR1~PTRnとをそれぞれ備えたフォトカプラPC1~PCnによって電気的に絶縁されている。また、駆動線条層選択部20は定電流電源Is1を電源とし、コイル部21は定電流電源Is2を電源としており、互いに異なる系統の回路を構成している。また、コイル部21の線条層L1~Lnは、後述するように。1個のコイルにおける線条層である。1個のコイルにおいて、各線条層を構成するコイル用線条の長さは、下側(内側)の層から上側(外側)の層に向かって少しずつ長くなる。したがって、各線条層が生成する磁界の強さも、下側(内側)の層から上側(外側)の層に向かって少しずつ強くなる。なお、定電流電源Is1と定電流電源Is2とは、コイルユニット10を構成するものではない。なお、駆動線条層選択部20は、後述するようなコイル部21を構成するコイルボビンに組み込まれて、駆動線条層選択部20とコイル部21とが一体であることが望ましいが、フォトカプラPC1~PCnをそれぞれ別体の発光ダイオードとフォトトランジスタからなるものとし、駆動線条層選択部20とコイル部21とが物理的に完全に分離された上で互いに近接して配置されたものであってもよい。
【0026】
定電流電源Is1と定電流電源Is2とは、駆動線条層選択部20とコイル部21とに一定値の電流を供給する。なお、コイル部21の電源については、線条層L1~Lnにおける自己誘導などを抑制する観点から定電流電源であることが特に望ましく、駆動線条層選択部20の電源についても、回路構成を簡素化できることから定電流電源が望ましいと言える。また、この実施の形態においては、定電流電源Is1と定電流電源Is2との2つの電源を設けることによって、一方の電源に異変が発生したときに、他方に対応する回路に影響が及ぶことを防止できる構成としている。なお、一つの定電流電源を設けることも可能であるが、フェイルセーフの観点から別個に設けることが望ましい。さらに、定電流電源Is1は、実装される機器に制御用電源があるときにはこれと共用してもよい。また、定電流電源Is2は、実装される機器に動力(駆動)用電源があるときにはこれと共用してもよい。
【0027】
駆動線条層選択部20は、選択スイッチSWとフォトカプラPC1~PCnの発光ダイオードLED1~LEDnとを備えている。選択スイッチSWは、0~nまでの機械的接点を備えたスイッチである。選択スイッチSWにおいて、0を選択しているときには、定電流電源Is1からの電流がフォトカプラPC1~PCnのいずれにも流れないので、全ての発光ダイオードLED1~LEDnが発光せず、ひいては全てのフォトカプラPC1~PCnのフォトトランジスタPTR1~PTRnがオフ状態のまま変化しない。したがって、バイポーラトランジスタTR1~TRnのいずれもオンしないので、線条層L1~Lnの全てに電流が流れる。この状態において、選択スイッチSWにおいてn-mを選択すると、定電流電源Is1からフォトカプラPC1~PCn-mに電流が流れ、発光ダイオードLED1~LEDn-mが発光し、これらのフォトトランジスタPTR1~PTRn-mがオンする。これによって、バイポーラトランジスタTR1~TRn-mもオンするので、線条層L1~Ln-mには電流が流れず、バイポーラトランジスタTR1~TRn-mに流れる。すなわち、選択スイッチSWにおいて、n-mを選択すると、n-mに対応する線条層Ln-mに留まらず、線条層L1から線条層Ln-mまでの全ての線条層に対して電流が流れないように動作する。以上の動作をまとめたものが
図1の下部に記載した表である。
【0028】
なお、選択スイッチSWは、機械的なものではなく、スイッチ用ICやMOSFETなどを組み合わせて選択スイッチを構成してもよい。この場合、任意の1個又は複数個のフォトカプラPC1~PCnに電流が流れる、例えば、PC3のみ、あるいは、PC1、PC2、PC5に選択的に電流が流れるようにしてもよい。このように構成すると、前述のように、コイルの線条層L1~Lnが生成する磁界の強さは異なっているので、必要となるコイルユニット10の磁界の大きさ(例えばリニアソレノイドやボイスコイルモータであれば推力)に応じて機器の制御部において電流を流す線条層の組み合わせを選択しておき、コイルユニット10の作動時にこの選択結果を駆動線条層選択部20に入力することも可能となる。別の観点から述べるならば、コイルユニット10に対して一定の強さの磁界を生成することが求められる場合は、機械的接点を備えたスイッチを設けて、コイルユニット10の製造時に特定の接点を選択するものとし、負荷の大きさや雰囲気温度の変化に合わせてコイルユニット10が生成する時間を変化させることが求められる場合は、スイッチ用ICやMOSFETなどを組み合わせて選択スイッチを設けて、機器の制御部からスイッチを随時切り替えられるようにすることが好ましいと言える。
【0029】
コイル部21は、後述するように、1個のコイルボビンにコイル用線条を巻回して形成された1個のコイルを備えており、線条層L1~Lnはこのコイルの線条層を構成していると。くわえて、線条層L1~Lnは、線条層毎に分割した上で、相互に接続されている。また、後述するように、隣り合う所定数の線条層を1つの線条層群とし、この線条層群毎に分割した上で、相互に接続することも可能である。なお、線条層L1が最も上側(外側)の層で、線条層L2、線条層L3の順に下側(内側)の層になり、線条層Lnが最も下側(内側)の層となる構成であってもよく、逆に、線条層Lnが最も上(外側)の層で、線条層Ln-1、線条層Ln-2の順に下側(内側)の層になり、線条層L1が最も下側(内側)の層となる構成であってもよい。いずれの順序であっても、線条層L1~Lnは、必ず直列に接続された構成となる。また、このコイルは、定電流電源Is2に接続されており、定電流電源Is2から電流が供給されたときに磁界を生成する。
【0030】
また、線条層L1~Lnに対しては、バイポーラトランジスタTR1~TRnのコレクタ電極-エミッタ電極間と、ダイオードD1~Dn及び抵抗R1~Rnからなる動作設定素子群がそれぞれ並列に接続されている。さらに、バイポーラトランジスタTR1~TRnのベース電極は、それぞれダイオードD1~Dnと抵抗R1~Rnとの中点に接続されている。くわえて、バイポーラトランジスタTR1~TRnは、それぞれ並列に接続されている線条層L1~Lnが断線したときに、ダイオードD1~Dn及び抵抗R1~Rnからなる動作設定素子群に印加される電圧が上昇してベース電極-エミッタ電極間の電圧も上昇し、コレクタ電極-エミッタ電極間に電流が流れる、言い換えると、断線した線条層に対応するバイポーラトランジスタがオンするように構成されている。すなわち、線条層L1~Lnからなるコイルや、バイポーラトランジスタTR1~TRnの特性や雰囲気温度によって異なるが、例えば10層の線条層L1~L10に対して、バイポーラトランジスタTR1~TR10と、ダイオードD1~D10及び抵抗R1~R10からなる動作設定素子群をそれぞれ並列に設けた場合において、断線前の印加電圧は約0.1Vであり、断線後にはこの印加電圧が約0.6Vに上昇する。このように、断線した線条層に対応するバイポーラトランジスタへの印加電圧が大きく上昇するので、バイポーラトランジスタがオン状態となり、そのバイポーラトランジスタがコイルに代わる電流路となる。
【0031】
ダイオードD1~Dnと抵抗R1~Rnからなる動作設定素子群は、それぞれ互いに直列に、かつ、定電流電源Is2の電流供給側にダイオードD1~Dn、電流帰還側に抵抗R1~Rnが配置されている。抵抗R1~Rnは、並列に接続されている線条層L1~Lnが断線したときに、バイポーラトランジスタTR1~TRnがオンするような順方向特性を持っている。また、線条層L1~Lnの自己誘導などにより逆電流が流れることを防止する。抵抗R1~Rnは、ダイオードD1~Dnを介して電流が流れることのない抵抗値を有している。すなわち、ダイオードD1~Dnと抵抗R1~Rnからなる動作設定素子群は、コイル部21の動作を設定する機能を持っている。線条層L1~Lnのいずれかが断線していない状態において、並列に接続されているバイポーラトランジスタがオンする抵抗値をそれぞれ有している。なお、ダイオードD1~Dnは、いずれも抵抗とする、つまり、動作設定素子群を直列接続した2個の抵抗によって構成することも可能であるが、フォトトランジスタPTR1~PTRnの特性や、線条層L1~Lnの自己誘導による逆電流が流れることを防止する観点からダイオードと抵抗とを直列接続した構成が非常に望ましい。
【0032】
フォトカプラPC1~PCnのフォトトランジスタPTR1~PTRnは、前述のように、ダイオードD1~Dnに並列接続されている。さらに、フォトトランジスタPTR1~PTRnは、発光ダイオードLED1~LEDnが発光したときにオン状態となり、さらにバイポーラトランジスタTR1~TRnをオンさせる。したがって、フォトカプラPC1~PCnが動作すると、バイポーラトランジスタTR1~TRnは線条層L1~Lnの断線の有無に関わらずオンすることになる。このように構成すると、選択スイッチSWを操作することによってバイポーラトランジスタTR1~TRnのうち、任意のものをオンさせることができるので、コイルユニット10が実装対象の機器に応じた磁力を生成するように調整することが可能となる。ひいては、同一構成のコイルユニットを多様な機器に装着できるので、同一構成のコイルユニットを大量生産することによって製造コストを低減し、販売価格の上昇を抑えることも可能となる。くわえて、本来必要となる線条層の層数を超えた、つまり、過剰な線条層を有するコイルユニットを実装することによって、コイルユニットに冗長性を持たせることができる。事例を挙げて説明すると、本来26層の線条層を持つコイルが必要なところ、敢えて30層の線条層を持つコイルを有するコイルユニットを実装した上で、26層の線条層にのみ電流を流して使用する。そして、4層に断線を生じた場合には、使用していない4層にも電流を流すことによって必要な強さの磁界を得ることができる上に、正常時には必要となる層数の線条層にのみ電流を流すことによって、必要な強さの磁界を得ることと過剰な強さの磁界を発生させないことを同時に実現できる。
【0033】
続けて、本発明の第1の実施の形態に係るコイルユニットの一つの実施例について説明する。
図2は、本発明の第1の実施の形態に係るコイルユニットの一実施例を示す回路図(1)である。
図2において、11はコイルユニット、22は駆動線条層選択部、23はコイル部、D5~D7はダイオード、L5~L7は線条層、LED5~LED7は発光ダイオード、PC5~PC7はフォトカプラ、PTR5~PTR7はフォトトランジスタ、R5~R7は抵抗、SWは選択スイッチ、TR5~TR7はバイポーラトランジスタであり、その他の符号は
図1と同じものを示す。また、
図3は、本発明の第1の実施の形態に係るコイルユニットの一実施例を示す回路図(2)である。
図3において用いた符号は、全て
図2と同じものを示す。さらに、
図4は、本発明の第1の実施の形態に係るコイルユニットの一実施例を示す回路図(3)である。
図4において用いた符号は、全て
図2と同じものを示す。くわえて、
図5は、本発明の第1の実施の形態に係るコイルユニットの一実施例を示す回路図(4)である。
図5において用いた符号は、全て
図2と同じものを示す。さらに、
図8は、本発明の各実施の形態に係るコイルユニットのコイルボビンにおける共通構成部分を示し、(a)は断面図、(b)は側面図である。
図8において、40はコイルボビン、41は第1のフランジ部、42は第2のフランジ部、43は巻胴部、44は第1のスリット、45は第2のスリット、46は第3のスリット、47は第4のスリット、48は中空部、49はコイルであり、その他の符号は
図2と同じものを示す。また、
図9は、本発明の第1の実施の形態に係るコイルユニットのコイルボビンの断面図である。
図9において、50はコイル、51は第1の線条層の第1導出部、52は第2の線条層の第1導出部、53は第3の線条層の第1導出部、54は第4の線条層の第1導出部、55は第5の線条層の第1導出部、56は第6の線条層の第1導出部、57は第7の線条層の第1導出部、61は第1の線条層の第2導出部、62は第2の線条層の第2導出部、63は第3の線条層の第2導出部、64は第4の線条層の第2導出部、65は第5の線条層の第2導出部、66は第6の線条層の第2導出部、67は第7の線条層の第2導出部であり、その他の符号は
図2と同じものを示す。
【0034】
第1の実施の形態に係るコイルユニットの実施例であるコイルユニット11は、
図2に示すように、コイル部23の7層の線条層L1~L7に対して、断線時の迂回路を形成するために、バイポーラトランジスタTR1~TR7と、ダイオードD1~D7及び抵抗R1~R7からなる動作設定素子群を設けている。さらに、線条層L1~L7の通電する層数を調整するために、発光ダイオードLED1~LED7及びフォトトランジスタPTR1~PTR7を備えたフォトカプラPC1~PC7を設け、さらに駆動線条層選択部22に選択スイッチSWを設けている。なお、以上の構成は第1の実施の形態に係るコイルユニットの1つの実施例に過ぎず、例えばリニアソレノイドやボイスコイルモータのコイルの場合は、コイルの線条層を20層や30層、あるいはこれ以上の層数とすることも少なくない。また、誘導加熱装置(IH)のコイルであれば、駆動線条層選択部22又はコイル部23に共振回路を構成する素子を設けてもよい。
【0035】
本発明の実施の形態に係るコイルユニットのコイルに共通する構成について説明する。
図8に示すように、コイル用線条をコイルボビン40の第1のフランジ部41と第2のフランジ部42との間に互いに接するように巻胴部43に巻回して、コイル49の第1の線条層L1、第2の線条層L2、第3の線条層L3、第4の線条層L4、第5の線条層L5、第6の線条層L6及び第7の線条層L7を積層するように形成している。また、第1のフランジ部41と第2のフランジ部42とには、第1のスリット44及び第2のスリット45と、第3のスリット46及び第4のスリット47とが形成されている。第1のスリット44及び第2のスリット45と、第3のスリット46及び第4のスリット47とは、中空部48を介して互いに対向するような位置に、かつ、巻胴部43まで切れ込むように形成されている。また、巻胴部43の中空部48には、例えば可動磁極、永久磁石、回転子、加熱ターゲットなど実装する機器に応じたものが配置される。なお、以上の構成は、以下に説明する他の実施の形態においても同様である。
【0036】
このように、第1のスリット44及び第2のスリット45と、第3のスリット46及び第4のスリット47とは、巻胴部43まで達するように深く切れ込んでいるので、以下に説明する構成が容易に実現できている。すなわち、
図9に示すように、コイルユニット11のコイル50は、第1の線条層L1、第2の線条層L2、第3の線条層L3、第4の線条層L4、第5の線条層L5、第6の線条層L6及び第7の線条層L7の一方の端部及びその近傍部分である第1の線条層の第1導出部51、は第2の線条層の第1導出部52、第3の線条層の第1導出部53、第4の線条層の第1導出部54、第5の線条層の第1導出部55、第6の線条層の第1導出部56及び第7の線条層の第1導出部57が第2のフランジ部42の第3のスリット46を介してそれぞれ外側に導出されている。同様に、第1の線条層L1、第2の線条層L2、第3の線条層L3、第4の線条層L4、第5の線条層L5、第6の線条層L6及び第7の線条層L7の他方の端部及びその近傍部分である第1の線条層の第2導出部61、第2の線条層の第2導出部62、第3の線条層の第2導出部63、第4の線条層の第2導出部64、第5の線条層の第2導出部65、第6の線条層の第2導出部66及び第7の線条層の第2導出部67が第1のフランジ部41の第1のスリット44を介してそれぞれ外側に導出されている。したがって、特に図示しないが、これらの導出部に対して、バイポーラトランジスタTR1~TR7と、ダイオードD1~D7及び抵抗R5~R7などを接続することが容易に実現できる。ひいては、第1のフランジ部41と第2のフランジ部42とのいずれか一方又は両方に小型の基板を貼り付け、この基板上にフォトカプラPC1~PC7や選択スイッチSWなどコイルユニット11が有する全ての素子をコイルボビン40に付設することが容易に実現できる。
【0037】
さらに、この実施例の動作について説明する。以上説明した構成において、
図2に示すように、選択スイッチSWの接点0を選択した場合には、最も下側(内側)のL1から最も上側(外側)のL7までの全ての線条層に電流が流れる。また、
図3に示すように、選択スイッチSWの接点1を選択した場合には、最も下側(内側)のL1以外の線条層に電流が流れる。また、
図4に示すように、選択スイッチSWの接点4を選択した場合には、線条層L1~L4には電流が流れず、線条層L5~L7のみに電流が流れる。なお、これとは逆に、上(外側)から下(内側)に向かって、第1の線条層L1から第7の線条層L7としてもよい。この場合には、選択スイッチSWを創始したときに電流が流れる線条層は、例えば接点1を選択したときには最も上側(外側)の第7の線条層L7以外の線条層に電流が流れるなど、選択スイッチSWで選択される線条層が逆になる。くわえて、
図5に示すように、線条層L3に断線が発生した場合には、直ちにバイポーラトランジスタTR3がオンして電流の迂回路となる。なお、以上の説明にない選択スイッチSWの接点2、3、5~7についても同様に電流を流す線条層を選択でき、線条層L1、L2、L4~L7が断線した場合においても、バイポーラトランジスタTR1、TR2、TR4~TR7がオンして電流の迂回路となる。また、前述したように、負荷の大きさや雰囲気温度の変化に合わせてコイルユニット10が生成する時間を変化させることが求められる場合は、選択スイッチSWに代えて、スイッチ用ICやMOSFETなどを組み合わせて選択スイッチを設けて、機器の制御部からスイッチを随時切り替えられるようにすることも可能である。
【0038】
以上の構成において、コイル50の線条層L1から線条層Lnまでが正常であれば、バイポーラトランジスタTR1~TR7はいずれもオンしないが、線条層L1から線条層Lnまでの線条層のうちのいずれか1層、又は、複数層において断線が発生すると、バイポーラトランジスタTR1~TR7のうち断線が発生した線条層に対応するものがオンし、次の線条層に断線がなければこの線条層に電流が流れ、さらにこの線条層も断線している場合には次のバイポーラトランジスタに電流が流れる。また、これ以降についても断線が発生していれば、同様に動作する。すなわち、いずれかの線条層に断線が発生すると、その線条層に対応するバイポーラトランジスタがバイパスとして機能し、電流が流れ続けるので、コイルとしての機能が多少低下しても、機能が完全に失われることを防止できるようになる。さらに、選択スイッチSWを操作することによってバイポーラトランジスタTR1~TR7のうち任意のものをオンさせることができるので、実装対象の機器に応じた磁力を生成するように調整することが可能となる。ひいては、同一構成のコイルユニット11を多様な機器に装着できるので、同一構成のコイルユニット11大量生産することによって製造コストを低減し、販売価格の上昇を抑えることも可能となる。
【0039】
次に、本発明の第2の実施の形態に係るコイルユニットついて説明する。
図6は、本発明の第2の実施の形態に係るコイルユニットの一実施例を示す回路図である。
図6において、12はコイルユニット、24は駆動線条層選択部、25はコイル部、L1~L8は線条層、SWは選択スイッチ、であり、その他の符号は
図2と同じものを示す。また、
図10は、本発明の第2の実施の形態に係るコイルユニットのコイルボビンの断面図である。
図10において、30はコイル、31は第1の線条層の導出部、32は第2の線条層の導出部、33は第3の線条層の導出部、34は第4の線条層の導出部、35は第5の線条層の導出部、36は第6の線条層の導出部、37は第7の線条層の導出部、38は第8の線条層の導出部であり、その他の符号は
図8と同じものを示す。
【0040】
本発明の第2の実施の形態に係るコイルユニット12は、
図6に示すように、コイル部25に14層の線条層L1~L8を備えており、線条層L1及びL2、線条層L3及びL4、線条層L5及びL6、線条層L7及びL8をそれぞれ1群の線条群とし、これら4群の線条層群に対して、断線時の迂回路を形成するためのバイポーラトランジスタTR1~TR4と、ダイオードD1~D4及び抵抗R1~R4からなる動作設定素子群を設けている。さらに、4群の線条層群の通電する群数を調整するために、発光ダイオードLED1~LED4及びフォトトランジスタPTR1~PTR4を備えたフォトカプラPC1~PC4を設け、さらに駆動線条層選択部22に選択スイッチSWを設けている。また、
図10に示すように、コイル30は、第1の線条層の導出部31、第2の線条層の導出部32、第3の線条層の導出部33、第4の線条層の導出部34、第5の線条層の導出部35、第6の線条層の導出部36、第7の線条層の導出部37及び第8の線条層の導出部38が第2のフランジ部42側から外側に導出されている。コイル30は、2層の線条層を1群としているので、第1のフランジ部41側から導出する必要はない。なお、駆動線条層選択部24及びコイル部25のその他の構成は、コイルユニット11と同様である。
【0041】
以上のように、本発明の第2の実施の形態に係るコイルユニット12は、2層の線条層を1群とし、4群の線条層群に対して、バイポーラトランジスタTR1~TR4と、ダイオードD1~D4及び抵抗R1~R4からなる動作設定素子群、発光ダイオードLED1~LED4及びフォトトランジスタPTR1~PTR4を備えたフォトカプラPC1~PC4を設けているので、電流の迂回路が2層に対して1つ設けることになり、コイルユニットとしての信頼性が若干低下するが、部品点数を大幅に削減することができるので、小型化が特に求められる用途に好適な構成である。
【0042】
さらに、本発明の第3の実施の形態に係るコイルユニットついて説明する。
図7は、本発明の第3の実施の形態に係るコイルユニットの一実施例を示す回路図である。
図7において、13はコイルユニット、26は駆動線条層選択部、27はコイル部、SWは選択スイッチであり、その他の符号は
図2と同じものを示す。
【0043】
第3の実施の形態に係るコイルユニット13は、コイルユニット11から、フォトカプラPC6及びPC7を除外した構成となっている。例えば、最低でも線条層L6及びL7によって生成される磁界の強さが必要な場合には、フォトカプラPC6及びPC7を設けないことによって設ける部品点数を削減することが可能となる。その一方、ダイオードD6及びD7、抵抗R6及びR7、バイポーラトランジスタTR6及びTR7は、コイルユニット11と同様の構成で設けているので、線条層L6及びL7の断線時には電流の迂回路が確保される。なお、駆動線条層選択部26及びコイル部27のその他の構成は、コイルユニット11と同様である。
【0044】
本発明の第3の実施の形態に係るコイルユニット13は、フォトカプラPC6及びPC7を設けないことによって設ける部品点数を削減できる上に、線条層L1~L7のうち、いずれか1層又は複数層に電線を生じても機能を完全に失うことがないという利点はコイルユニット11と同様に得られる。したがって、コイルユニットとしての信頼性が若干低下するが、部品点数を大幅に削減することができるので、小型化が特に求められる用途に好適な構成である。
【0045】
本発明は以上に説明した内容に限定されるものではなく、例えば、
図7(a)に示したコイルユニットのボビンに
図8(b)のコイルボビンを適用するなど、各請求項に記載した範囲を逸脱しない限りにおいて種々のソレノイドに適用することが可能である。
【符号の説明】
【0046】
10 コイルユニット
11 コイルユニット
12 コイルユニット
13 コイルユニット
20 駆動線条層選択部
21 コイル部
22 駆動線条層選択部
23 コイル部
24 駆動線条層選択部
25 コイル部
26 駆動線条層選択部
27 コイル部
30 コイル
31 第1の線条層の導出部
32 第2の線条層の導出部
33 第3の線条層の導出部
34 第4の線条層の導出部
35 第5の線条層の導出部
36 第6の線条層の導出部
37 第7の線条層の導出部
38 第8の線条層の導出部
40 コイルボビン
41 第1のフランジ部
42 第2のフランジ部
43 巻胴部
44 第1のスリット
45 第2のスリット
46 第3のスリット
47 第4のスリット
48 中空部
49 コイル
50 コイル
51 第1の線条層の第1導出部
52 第2の線条層の第1導出部
53 第3の線条層の第1導出部
54 第4の線条層の第1導出部
55 第5の線条層の第1導出部
56 第6の線条層の第1導出部
57 第7の線条層の第1導出部
61 第1の線条層の第2導出部
62 第2の線条層の第2導出部
63 第3の線条層の第2導出部
64 第4の線条層の第2導出部
65 第5の線条層の第2導出部
66 第6の線条層の第2導出部
67 第7の線条層の第2導出部
70 ソレノイド
80 コイル
81 コイルボビン
82 第1のフランジ部
83 巻胴部
84 第2のフランジ部
85 第1の配線孔
86 第2の配線孔
87 第1の端部領域
88 第2の端部領域
89 端子部
90 固定磁極
91 可動磁極
92 補助磁極
93 対向部
94 ケース
95 固定用板材
96 シャフト
97 スリーブ
98 コネクタ
99 挿入部