(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】鳥獣捕獲装置
(51)【国際特許分類】
A01M 23/00 20060101AFI20220315BHJP
【FI】
A01M23/00 Z
(21)【出願番号】P 2019043757
(22)【出願日】2019-03-11
【審査請求日】2021-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】513296682
【氏名又は名称】株式会社テーエムテクノ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】田中 愼
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0081322(US,A1)
【文献】米国特許第2728164(US,A)
【文献】米国特許第3903637(US,A)
【文献】米国特許第6247264(US,B1)
【文献】国際公開第87/07818(WO,A1)
【文献】実開平01-009579(JP,U)
【文献】特開2014-000036(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面上に広げられた鳥獣捕獲用の網と、
前記網の上に載置されたベース板及び該ベース板に支持され上下方向へ伸びる支柱と、
前記網の周縁部にその周方向へ互いに間隔をおいて配置されかつ前記網の周縁部に接続された一端部を有する複数の索及び該複数の索の他端部に接続された紐と、
前記支柱に設けられ前記紐を上方に向けて引き上げる引上げ機構とを備える、鳥獣捕獲装置。
【請求項2】
前記引上げ機構は、
前記支柱の上部に取り付けられ前記紐をその伸長方向へ移動可能に拘束する拘束部材と、
前記支柱の上部に取り付けられた永電磁石と、
前記拘束部材に拘束された前記紐に連結された磁性片であって非通電状態におかれた前記永電磁石に磁気吸着された磁性片と、
緊張状態におかれ前記支柱に沿って上下方向へ伸びるばね部材であって前記磁性片に連結された上端部及び前記ベース板又は前記支柱の下部に連結された下端部を有するばね部材とからなり、
前記引上げ機構は前記永電磁石を通電状態とすることにより作動する、請求項1に記載の鳥獣捕獲装置。
【請求項3】
さらに、前記ベース板の上方に配置されかつ前記支柱に取り付けられた、前記複数の索及び前記ばね部材の通過を許す複数の孔を有する板状部材を備える、請求項2に記載の鳥獣捕獲装置。
【請求項4】
前記拘束部材は滑車からなる、請求項2又は3に記載の鳥獣捕獲装置。
【請求項5】
前記引上げ機構は、前記支柱の上部に設けられ前記紐を巻き上げる電動モータからなり、
前記引上げ機構は前記電動モータへの通電により作動する、請求項1に記載の鳥獣捕獲装置。
【請求項6】
さらに、前記支柱に設けられ前記網の上への侵入物を検知する熱型赤外線センサと、
前記熱型赤外線センサの検知信号を受けて前記引上げ機構を作動させる作動機構とを備える、請求項1~5のいずれか1項に記載の鳥獣捕獲装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鳥獣、特に有害な鳥獣の捕獲に供される鳥獣捕獲装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、害獣の捕獲を目的として、害獣を誘い込む開口を有する檻と、檻の内部に配置された捕獲用の網と、網の周縁部に連結された複数のロープを介して網を引き上げる引上げ機構とを備える害獣捕獲装置が提案されている。檻は複数の横材及び縦材を直方体の辺上に配置してなり、網は檻の底面上に広げた状態におかれ、また、引上げ機構は檻頂部に支持されている。これによれば、害獣が檻の内部に侵入し網の上に到達すると、引上げ機構の作動により網が引き上げられ、これにより網が巾着状にされ、網の中に害獣が捕獲される。
【0003】
ところで、前記従来の捕獲装置にあっては、捕獲に当たり、害獣を檻の中に誘い込む必要があるところ、檻は害獣の警戒心を生じさせるおそれがある。また、捕獲装置は平地や野山を問わず、様々な地形の場所に設置されるため、その運搬や組み立て上、比較的容易であることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記従来の事情に鑑み、鳥獣の警戒心を軽減し得る鳥獣捕獲装置を提供する。また、本発明は、運搬や組み立ての困難を軽減し得る鳥獣捕獲装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る鳥獣捕獲装置は、地面上に広げられた鳥獣捕獲用の網と、該網の上に載置されたベース板及び該ベース板に支持され上下方向へ伸びる支柱と、前記網の周縁部にその周方向へ互いに間隔をおいて配置されかつ前記網の周縁部に接続された一端部を有する複数の索及び該複数の索の他端部に接続された紐と、前記支柱に設けられ前記紐を上方に向けて引き上げる引上げ機構とを備える。
【0007】
本発明に係る鳥獣捕獲装置にあっては、引上げ機構を作動させて紐を上方に向けて引き上げると、前記紐に接続された複数の索及び該索に接続された前記網の周縁部が上方に向けて順次に引き上げられる。その結果、前記網の周縁部が窄められた状態におかれ、前記網上のベース板と前記網の周縁部との間において前記支柱の周囲を取り巻く囲いが形成される。これによれば、地面上に広げられた網の上に鳥獣が乗ったときに前記引上げ機構を作動させることにより、鳥獣を前記囲いの中に閉じ込め、捕獲することができる。このため、鳥獣の警戒心を比較的小さい状態下において鳥獣の捕獲を行うことができる。
【0008】
また、本発明に係る鳥獣捕獲装置は、地面上に前記網を広げ、その上にベース板及び支柱を載置することにより比較的容易に設置することができ、また、前記網を支持する前記ベース板及び支柱は持ち運びが比較的容易である。
【0009】
前記引上げ機構は、前記支柱の上部に取り付けられ前記紐をその伸長方向へ移動可能に拘束する拘束部材と、前記支柱の上部に取り付けられた永電磁石と、前記拘束部材に拘束された前記紐に連結された磁性片であって非通電状態におかれた前記永電磁石に磁気吸着された磁性片と、緊張状態におかれ前記支柱に沿って上下方向へ伸びるばね部材であって前記磁性片に連結された上端部及び前記ベース板又は前記支柱の下部に連結された下端部を有するばね部材とからなるものとすることができる。ここにおいて、前記引上げ機構は前記永電磁石を通電状態とすることにより作動する。これによれば、前記緊張状態におかれたばね部材の弾性復帰により、前記紐が引張力を受け、上方に向けて引き上げられる。
【0010】
前記鳥獣捕獲装置は、さらに、前記ベース板の上方に配置されかつ前記支柱に取り付けられ前記複数の索及び前記ばね部材の通過を許す複数の孔を有する板状部材を備えるものとすることができる。これによれば、前記網の周縁部が前記板状部材に当接するとき、前記紐の引上げが止められる。このとき、前記板状部材は窄んだ状態にある前記網の口を塞ぐ働きをなす。
【0011】
前記拘束部材は滑車からなるものとすることができる。
【0012】
前記引上げ機構は、前記支柱の上部に設けられ前記紐を巻き上げる電動モータからなるものとすることができる。ここにおいて、前記引上げ機構は前記電動モータへの通電により作動する。
【0013】
前記鳥獣捕獲装置は、さらに、前記支柱に設けられ前記網の上への侵入物を検知する熱型赤外線センサと、該熱型赤外線センサの検知信号を受けて前記引上げ機構を作動させる作動機構とを備えるものとすることができる。これによれば、前記引上げ機構の作動を自動的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】引上げ機構の作動前における鳥獣捕獲装置の側面図である。
【
図2】引上げ機構の作動後における鳥獣捕獲装置の側面図である。
【
図3】
図1に示す鳥獣捕獲装置の網の平面形状を示す図である。
【
図4】
図2に示す鳥獣捕獲装置の網の平面形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1を参照すると、本発明に係る鳥獣捕獲装置が全体に符号10で示されている。
【0016】
鳥獣捕獲装置10は、鳥獣捕獲用の網12と、ベース板14と、支柱16と、複数(図示の例では8本)の索18と、紐20と、引上げ機構22とを備える。
【0017】
網12は、地面Gに配置され、広げられた状態にある。網12は、例えばポリエステル繊維のような合成樹脂製の繊維からなる。図示の網12は全体に円形の平面形状を有し、捕獲対象とされる鳥獣を包み込むことができる大きさを有する。網12は、図示の例に代えて、円形以外の例えば正八角形のような多角形の平面形状を有するものとすることができる。
【0018】
図示のベース板14は全体に円形の平面形状を有する。ベース板14の平面形状は、図示の円形以外の他の形状、例えば矩形からなるものとすることができる。ベース板14は広げられた網12の大きさより小さく、広げられた網12の上の好ましくは網12の中心部に載置される。
【0019】
支柱16はベース板14に支持され上下方向へ伸びている。支柱16は、鳥獣捕獲装置10の設置場所への持ち運びの便を考慮して、好ましくは、ベース板14に対して分離可能に接続されている。
【0020】
索18はワイヤ、ロープ又はワイヤロープからなる。複数の索18はその一端部24において網12の周縁部12aに接続されている。複数の索18の一端部24は、網12の周縁部12aにその周方向へ互いに間隔をおいて、好ましくは等間隔をおいて配置されている。
【0021】
図示の紐20も、また、ワイヤ、ロープ又はワイヤロープからなる。紐20は、複数の索18の他端部26に接続されている。より詳細には、紐20は、その一端部20aにおいて、複数の索18の束ねられた状態におかれた他端部26に接続されている。
【0022】
引上げ機構22は支柱16に設けられている。引上げ機構22は、紐20に対してこれを上方に向けて引き上げる働きをなす。
【0023】
図示の引上げ機構22は、支柱16の上部16aに取り付けられた拘束部材28を有する。拘束部材28は、支柱16の上部16aにおいて、紐20をその伸長方向へ移動可能に拘束する働きをなす。図示の拘束部材28はその一例としての滑車からなり、これに紐20が掛けられている。拘束部材28は前記滑車に代えて、例えば、支柱16の上部16aに固定され紐20が通されたリング部を有するアイボルト(図示せず)からなるものとすることができる。また、図示の例にあっては、支柱16の側部に互いに間隔おいて配置、固定された2つのアイボルト29のリング部に紐20が通されている。各アイボルト29のリング部は、複数の索18の他端部26の束の通過を許す直径を有する。
【0024】
引上げ機構22は、さらに、支柱16の上部16aに取り付けられた永電磁石30と、磁性片32と、緊張状態におかれたばね部材34とを有する。
【0025】
永電磁石30は、図示の例にあっては、拘束部材28の取り付け位置の下方に配置されている。図示の永電磁石30は筒状を呈し、運搬可能のバッテリー(図示せず)に電気的に接続されている。前記バッテリーは、例えば網12の周囲の地面G上に置かれる。
【0026】
磁性片32は、拘束部材28に拘束された紐20に連結されている。図示の例にあっては、前記滑車を巡り、永電磁石30を経て伸びる紐20にその他端部20bにおいて連結されている。磁性片32は、非通電状態におかれた永電磁石30に磁気吸着されている。引上げ機構22は、永電磁石30を通電状態とすることにより作動する。より詳細には、永電磁石30を通電状態とすることにより、磁性片32に対する磁気吸着力が消失し、磁性片32が、緊張状態にあるばね部材34の弾性復帰力を受けて永電磁石30を離れ、下降する。
【0027】
図示のばね部材34は、支柱16に沿って上下方向へ伸びるコイルばねからなる。ばね部材34は、磁性片32に連結された上端部34aと支柱16の下部16bに連結された下端部34bとを有し、図示の例においては引張状態におかれている。ばね部材34の下端部34bは、図示の例に代えて、ベース板14に連結することができる。
【0028】
引上げ機構22の作動は、磁性片32の下降に伴う紐20の他端部20bの下降及びその一端部20aの上昇と、複数の索18の上昇と、網12の周縁部12aの上昇とを順次に生じさせる(
図2)。
【0029】
ところで、複数の索18の他端部18bは、紐20の一端部20aに接続されている。このため、束ねられた状態にある。このことから、複数の索18の上昇に伴って、これらの索18に接続された網12の周縁部12aが地上での広がった状態から、支柱16の周りに次第に窄まる状態におかれる。その結果、網12上のベース板14と網12の周縁部12aとの間において、網12が、支柱16の周囲を取り巻く円錐状の囲い36(
図2)を形成する。
【0030】
鳥獣捕獲装置10は、好ましくは、さらに、ベース板14の上方に水平に配置され、支柱16に取り付けられ、また、複数の索18及びばね部材34の通過を許す複数の孔を有する板状部材38を備える。図示の板状部材38は矩形状の金網(
図3及び
図4参照)からなり、複数の索18及びばね部材34は、前記複数の孔を規定する前記金網の複数の目にそれぞれ通されている。図示の例では、支柱16は前記金網の中央部において前記金網の目を貫通し、また、前記金網がブラケットのような取付具(図示せず)を介して支柱16に解除可能に固定されている。
【0031】
これによれば、網12の周縁部12aが板状部材38に当接するとき、紐20の引上げが止められる。このとき、板状部材38は、窄んだ状態にある網12の周縁部12aの口、すなわち囲い36の口を塞ぐ働きをなす。
【0032】
鳥獣捕獲装置10によれば、地面G上に広げられた網12の上に鳥獣が乗ったときに引上げ機構22を作動させ、網12の周縁部12aを上方へ引き上げることにより、鳥獣の周囲を囲い36で取り囲み、鳥獣を捕獲することができる。地面Gの上に広げられた網12及び該網を支持するベース板14及び支柱16は、従来の檻のように鳥獣を誘い込むものではなく、また、その設置形態から、鳥獣に対しては警戒心を起こさせにくい。
【0033】
引上げ機構22は、支柱16の上部16aに設けられ紐20を巻き上げる電動モータ(図示せず)からなるものとすることができる。前記電動モータは前記バッテリーに電気的に接続されている。これによれば、前記電動モータへの通電によりこれを作動させ、紐20を上方に向けて引き上げることができる。
【0034】
引上げ機構22を作動させるための永電磁石30への通電及び前記電動モータへの通電の開始は、手動にてあるいは自動で行うことができる。
【0035】
引上げ機構22の自動的な作動のために、鳥獣捕獲装置10が、さらに、支柱16に設けられ網12の上への侵入物である前記鳥獣を検知する熱型赤外線センサ40と、該熱型赤外線センサの検知信号を受けて引上げ機構22を作動させるリレーのような作動機構(図示せず)とを備えるものとすることができる。図示の例では、前記作動機構は前記バッテリーと、永電磁石30のオンオフ切替スイッチ(図示せず)とに電気的に接続されている。前記作動機構は、
図1及び
図2に示すボックス42に収納されている。
【0036】
これによれば、前記作動機構が、網12の上の鳥獣を検知した熱型赤外線センサ40が発する検知信号を受信すると、永電磁石30の前記オンオフ切替スイッチに切替信号を出力し、これを受けて、前記切替スイッチが永電磁石30に対する通電動作を行う。これにより、自動的に鳥獣の捕獲が行われる。
【符号の説明】
【0037】
10 鳥獣捕獲装置
12 網
14 ベース板
16 支柱
18 索
20 紐
22 引上げ機構
24、26 索の一端部及び他端部
28 拘束部材(滑車)
30 永電磁石
32 磁性片
34 ばね部材
36 囲い
38 板状部材
40 熱型赤外線センサ