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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】建設現場管理装置
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/08 20120101AFI20220315BHJP
   G06Q 10/06 20120101ALI20220315BHJP
【FI】
G06Q50/08
G06Q10/06
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020050002
(22)【出願日】2020-03-19
(65)【公開番号】P2021149654
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2020-05-11
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518239994
【氏名又は名称】TOTALMASTERS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102886
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 光夫
(72)【発明者】
【氏名】玉里 芳直
【審査官】津熊 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-132912(JP,A)
【文献】特開2019-056562(JP,A)
【文献】特開2017-013653(JP,A)
【文献】特開2016-225983(JP,A)
【文献】特開2016-058767(JP,A)
【文献】特開平11-126211(JP,A)
【文献】特開2019-206865(JP,A)
【文献】特開2013-002161(JP,A)
【文献】特開平06-028030(JP,A)
【文献】特開2019-169016(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0134237(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 50/08
G06Q 10/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車位置を測位する測量機を搭載して移動する遠隔制御車両と無線通信可能に接続された建設現場管理システムであって、
作業現場に設定された座標系による位置情報を基に、前記作業現場の地表面の3次元CADツールによって、予め前記作業現場の前記地表面に前記遠隔制御車両のための走行ルートを設定し、
前記遠隔制御車両に対して、前記遠隔制御車両のための前記走行ルートと、前記走行ルートに基づいた走行指示と、走行に伴って行う所定の機能の実行の指示と
を送信し、
前記測量機で測位された自車位置を把握し、その位置を基に前記走行ルートの近傍に沿って走行し前記所定の機能の実行をすることにより得られたデータを前記遠隔制御車両から受信し、
前記作業現場の工事進捗に応じて前記走行ルートの前記地表面が変化したときは、その変化に即して更新された前記走行ルートを適宜前記遠隔制御車両に送信して忠実に走行させ、及び/若しくは、適宜UAV(無人航空機)による再測量を行って地表面点群データを更新し、更新されたデータに基づき前記走行ルートを更新して、
前記受信したデータに基づいて前記作業現場の管理を繰り返し行うこと
に特徴を有する建設現場管理システム
【請求項2】
前記走行ルートは、前記UAV(無人航空機)測量及び世界測地系の座標に基づき作成された作業現場の地表面の点群データの点列によって予め設定された走行ルートであること
に特徴を有する請求項1に記載の建設現場管理システム
【請求項3】
前記遠隔制御車両は更に撮影機を搭載し、前記所定の機能の一つは前記撮影機による撮影であり、
撮影データを前記遠隔制御車両から受信し、前記走行ルートを走行及び停止したときに撮影された撮影画像を確認し、予め規定された写真管理情報基準に規定された工種、種別、細別の工種区分及びファイル規則管理項目と整合された撮影データとして記録保存すること
に特徴を有する請求項1乃至2のいずれか1項に記載の建設現場管理システム
【請求項4】
前記建設現場管理システムは、更に前記遠隔制御車両による前記走行ルート近傍の地表撮影画像を認識することにより地形三次元測量データを作成すること
に特徴を有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の建設現場管理システム
【請求項5】
前記遠隔制御車両は更に散乱型RI(ラジオアイソトープ)計器を具備し、前記所定の機能の一つはRIによる放射線量の測定であり、
当該RI計器からのデータを前記遠隔制御車両から受信することにより地盤密度及び地中水分量を計測し、地表締固め度分布データを作成すること
に特徴を有する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の建設現場管理システム
【請求項6】
前記遠隔制御車両は更にUAV(無人航空機)を搭載し、前記所定の機能の一つは搭載された前記UAVの運搬走行と飛行指示を出すことであり、
前記UAVが撮影した撮影データを前記遠隔制御車両から受信することにより航空測量及び撮影を行うこと
に特徴を有する請求項1乃至5のいずれか1項に記載の建設現場管理システム
【請求項7】
自車位置を測位する測量機を搭載して移動する遠隔制御車両と無線通信可能に接続された建設現場管理システムを用い、
作業現場に設定された座標系による位置情報を基に、前記作業現場の地表面の3次元CADツールによって、予め前記作業現場の前記地表面に前記遠隔制御車両のための走行ルートを設定
前記遠隔制御車両に対して、前記遠隔制御車両のための前記走行ルートと、前記走行ルートに基づいた走行指示と、走行に伴って行う所定の機能の実行の指示と
を送信し、
前記測量機で測位された自車位置に基づいて前記遠隔制御車両は、前記走行ルートの近傍に沿って走行し、前記所定の機能を実行することによって得られたデータを前記建設現場管理システムへ送信し、
前記作業現場の工事進捗に応じて前記走行ルートの前記地表面が変化したときは、その変化に即して更新された前記走行ルートを適宜前記遠隔制御車両に送信して忠実に走行させ、及び/若しくは、適宜UAV(無人航空機)による再測量を行って地表面点群データを更新し、更新されたデータに基づき前記走行ルートを更新して、
前記建設現場管理システムは前記受信したデータに基づいて建設現場の管理を繰り返し行うこと、
に特徴を有する建設現場管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工事現場の状況を記録するために用いられる工事記録用写真およびこの工事記録方法に係り、特に、自動ロボットを利用した建設現場管理装置及びそのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工事現場において、工事が適正に行われたことを確認するための記録写真撮影が行われている。この際、写真には、工事の対象物に併せて、工事の件名、日付、施工者などの情報を記載した黒板や、対象物の大きさを表すためのスケール(物差し、メジャー)を写し込むことが一般的である。
【0003】
しかしながら、このように黒板やスケールを設置して撮影を行うことは、手間と時間がかかる煩雑な作業であった。また、工事完了後には、写真に写った黒板の記載内容を読み取って報告書に転記しなければならない。また黒板などを運搬したり撮影時に保持したりすることは、労力を要するものであった。このような課題を解決するために従来から様々な技術検討が成されており、下記に挙げるような先行文献によって各種提案が成されてきた。
【0004】
例えば、特許文献1では、建物又は所定の場所等の撮影対象物を空中から撮影する無人飛行体に、前記無人飛行体を安定に自律飛行させる自律制御装置と、前記撮影対象物を撮影する撮影用カメラと、前記無人飛行体を前記撮影対象物の位置まで飛行させ、該撮影対象物の上空において撮影飛行させるようにその飛行ルートを誘導するためのルート誘導用カメラと、前記無人飛行体を所定の飛行ルートで飛行させるための飛行プログラムと、その飛行ルートに沿って前記撮影対象物を、前記撮影用カメラで所定の撮影手法で撮影するための撮影プログラムを格納する記憶部とを備え、前記ルート誘導用カメラで撮影した画像情報と、前記飛行プログラムにより、前記無人飛行体を所定の飛行ルートに沿って自動飛行させ、かつ前記撮影プログラムにより前記撮影対象物を自動撮影するように構成したことを特徴とする無人飛行体を利用した空中撮影システムの技術思想が開示されている。
【0005】
しかし、この例では、無人飛行体を用いた地上物の空中撮影に限定しており、建設現場等の建設管理システムとの整合については一切言及されていない。また、建設現場管理における経済性の問題に対しての解決策を提示するには至っていない。
【0006】
また特許文献2では、工事現場の状況を記録するために用いられるものであって、工事の対象物を撮影する撮影部と、該撮影部により撮影された画像を表示する表示部と、操作入力を受け付ける入力部と、を有する携帯端末に、工事についての情報の入力を受け付ける工事情報入力受付ステップと、前記入力部への操作入力に応じて、前記撮影部により対象物を撮影して画像を取得し前記表示部に表示する撮影ステップと、前記画像内にARマーカが存在するか否かを検出するマーカ検出ステップと、前記ARマーカが存在する場合にその位置および姿勢を算出する算出ステップと、前記ARマーカの位置および姿勢に応じて前記画像にスケールを重ねて前記表示部に表示するスケール表示ステップを実行させることを特徴とする工事記録用プログラムの技術思想が開示されている。
【0007】
しかし、この例においても、建設工事現場での工事記録用プログラムを有する携帯端末機器等を携帯した作業者等の人間が、逐次建設現場を回って撮影等の対応をする技術思想にすぎない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2005-269413号公報
【文献】特開2020-21403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のような造成現場の工事進捗は、殆どが属人的に行われている。例えば、工事記録写真は、専任者が時々車から降りて撮影している非効率な作業であるが、記録写真は、撮るべき被写体とその撮り方に所定の規則があり、専任者が必要となっている。高齢化問題で人手不足などの人材枯渇の不安が絶えないにもかかわらず、記録写真は、工事の必須要件であるので外すことができない。また一方、電子黒板を重畳させたり、撮影写真をクラウド化させたりといった複数の工事アプリなどによって効率化は図られてはいるが、撮るべきものと撮り方は、属人のままである。
【0010】
以上のような課題に対して、本発明の目的は、従来の専任者が遠隔オフィスから複数の造成現場を現場のロボット車両を通して管理し、工事写真の撮影をその専門知識に従って行うことを目論んでいる。そして、現場の進捗遅れの把握、危険物の放置の発見、作業員と建設機械との接触可能性の発見など、従来属人的に扱われているものを、それらの法則や事前知識を盛り込んで把握することで、移動車両による監視によって扱っていけることを目的としている。
【0011】
例えば、自動走行車の走行では、事前に人が車両やロボットを直接操縦して走行路を学習させる事前学習によって学習した走行路を、自律走行する自動走行車が可能である。これらは、障害物を探知して止まる、あるいは最善策で避けて通るといった処理を追加することもできる。
またこれらは、本願のようにCADで設定することもできる。
【0012】
最近の技術では、空間センシングして空間地図を作っていきながら、自己位置を推定して、移動できる場所や経路を認識していく方法であるSLAMによる方法(Simultaneous Localization and Mapping)なども存在する。ただしSLAMは、高度で適応性の高い方法であるが、試行錯誤して動き回る必要があるため、造成地のような走行可否が場所によって不確かなところには不向きな場合もある。
【0013】
ただし、本発明は、当該地の地形の形状と、管理のための移動経路を、事前に適切に設定しておくことを前提にしており、ロボット車両は、決定的に移動すればよいので、上記従来のような課題を有効に回避できることを目的としている。
【0014】
つまり本発明の具体的な目的は、造成工事現場の所定の場所の工事作業進捗を自動的に管理し、特に工事記録写真を自動制御システムで撮影したい。つまり、当該場所を自律移動するロボット車両を使って、管理を行うことにある。移動車両については、自ら障害を乗り越えていくといった高度な自律走行の導入は避けることができる。つまり当該場所は、測量され、地形が把握されているため、所定の管理をするための移動経路および経路終端としての移動目的地は予め指定できる。また、ロボット車両の現在位置は、衛星測位等で把握できる。衛星測位等で把握した自車位置を基に、与えられた経路に沿って移動させることで、所望の走行制御を実現することができるのが目的である。
【0015】
移動車両は、特に造成地のような予め地形が把握され、走行に適した経路が用意されているところでの移動を対象とするのである。地形の把握は、典型的にはUAV測量(無人航空機測量)によって詳細に把握できる。移動経路の指定は、典型的にはUAV測量データを使った三次元CADツールによればよい。移動目的地は、特に工事記録写真撮影地点であり、撮影地点では、撮影に適したアングルとなるように、ロボット車両位置を調整すればよい。
【0016】
本発明はこうした従来技術上の問題点を解決することを企図したものであり、建設現場の安全性と作業性を格段に向上させつつ、経済効率も格段に向上させることの可能な建設現場管理システムを提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
かかる課題を解決するため、本発明に係る建設現場管理システムは、自車位置を測位する測量機を搭載して移動する遠隔制御車両と無線通信可能に接続された建設現場管理システムであって、作業現場に設定された座標系による位置情報を基に、前記作業現場の地表面の3次元CADツールによって、予め前記作業現場の前記地表面に前記遠隔制御車両のための走行ルートを設定し、前記遠隔制御車両に対して、前記遠隔制御車両のための前記走行ルートと、前記走行ルートに基づいた走行指示と、走行に伴って行う所定の機能の実行の指示とを送信し、前記測量機で測位された自車位置を把握し、その位置を基に前記走行ルートの近傍に沿って走行し前記所定の機能の実行をすることにより得られたデータを前記遠隔制御車両から受信し、前記作業現場の工事進捗に応じて前記走行ルートの前記地表面が変化したときは、その変化に即して更新された前記走行ルートを適宜前記遠隔制御車両に送信して忠実に走行させ、及び/若しくは、適宜UAV(無人航空機)による再測量を行って地表面点群データを更新し、更新されたデータに基づき前記走行ルートを更新して、前記受信したデータに基づいて前記作業現場の管理を繰り返し行うことに特徴を有する。
【0018】
また、本発明に係る建設現場管理システムの前記走行ルートは、前記UAV(無人航空機)測量及び世界測地系の座標に基づき作成された作業現場の地表面の点群データの点列によって予め設定された走行ルートであることにも特徴を有する。つまり、UAV(無人航空機)測量及び世界測系の座標に基づき作成された作業現場の地表面の点群データの点列によって予め設定された走行ルートであり、前記遠隔制御車両は更に撮影機を搭載し、撮影機による撮影データを前記遠隔制御車両から受信することで、前記走行ルート及び走行を停止したときの撮影画像を確認することもできる。
【0019】
本発明は更に遠隔制御車両を提供するもので、前記遠隔制御車両は更に撮影機を搭載し、前記所定の機能の一つは前記撮影機による撮影であり、撮影データを前記遠隔制御車両から受信、前記走行ルートを走行及び停止したときに撮影された撮影画像を確認し、予め規定された写真管理情報基準に規定された工種、種別、細別の工種区分及びファイル規則管理項目と整合された撮影データとして記録保存される態様をとることができる。
【0020】
つまり、本発明に係る建設現場管理システムは、例えば世界測地系位置を計測する測量装置と、作業現場を撮影する位置移動可能な撮影機と、その撮影機を搭載する遠隔移動車両と、前記遠隔制御車両及び前記撮影機による撮影を制御する制御装置とを具備する建設全体作業管理システムと連動した建設現場管理システムであってもよい。建設現場管理システムの指示によって遠隔制御車両は、作業現場に設定された座標系による位置情報を基に指定された走行ルートを、測量装置によって測量された車両の現在位置を確認走行しつつ、且つ撮影機による画像撮影をし、加えて撮影機の撮影画像を介して建設現場の情報を受信し、解析し、建設現場の管理に供することができる。
【0021】
本発明に係る建設現場管理システムは、更に前記遠隔制御車両による前記走行ルート近傍の地表撮影画像を認識することにより地形三次元測量データを作成することもできる。
【0022】
前記遠隔制御車両は更に散乱型RI(ラジオアイソトープ)計器を具備し、前記所定の機能の一つはRIによる放射線量の測定であり、当該RI計器からのデータを前記遠隔制御車両から受信することにより地盤密度及び地中水分量を計測し、地表締固め度分布データを作成することもできる。
【0023】
そして、前記遠隔制御車両は更にUAV(無人航空機)を搭載し、前記所定の機能の一つは前記UAVの運搬走行と飛行指示を出すことであり、前記UAVが撮影した撮影データを前記遠隔制御車両から受信することにより航空測量及び撮影を行うこともできる。
【0024】
また、本発明に係る建設現場管理システムに配置されるユーザインタフェースであって、前記ユーザインタフェースの表示画面は、前記遠隔制御車両からの俯瞰画像及び/若しくは現場俯瞰図に表示される走行経路及び/若しくは走行に伴って行う前記所定の機能に関わる情報表示とで構成され、前記現場俯瞰図に表示される走行経路に従った走行と走行に伴って行う前記所定の機能の実行を指示し、前記所定の機能の実行に伴って生成される情報を蓄積し、若しくは蓄積した情報を表示することもできる。
【0025】
加えて、本発明に係る建設現場管理システムに関し、無線通信可能に接続された建設現場管理システムから遠隔で指示を受ける遠隔制御車両であって、自車位置を測位する測量機、撮影を行う撮影機、車輪、モータ、バッテリおよび各種センサを具備し、遠隔操作によって作業現場を無人自律走行することができ、前記建設現場管理システムから遠隔制御車両が走行する走行ルートと、前記走行ルートに基づいた走行指示を受信して、前記測量機で測位された自車位置に基づいて前記走行ルートの近傍に沿って走行し、更に走行に伴って行う所定の機能を有する機能装置を具備し、建設現場管理システムから前記所定の機能の実行の指示を受信して、走行に伴って前記所定の機能を実行する遠隔制御車両をも技術思想に包含する。
(0025ー1)
本発明は建設現場管理方法を提供するものでもあり、前記建設現場管理方法は、自車位置を測位する測量機を搭載して移動する遠隔制御車両と無線通信可能に接続された建設現場管理システムを用い、作業現場に設定された座標系による位置情報を基に、前記作業現場の地表面の3次元CADツールによって、予め前記作業現場の前記地表面に前記遠隔制御車両のための走行ルートを設定、前記遠隔制御車両に対して、前記遠隔制御車両のための前記走行ルートと、前記走行ルートに基づいた走行指示と、走行に伴って行う所定の機能の実行の指示と
を送信し、前記測量機で測位された自車位置に基づいて前記遠隔制御車両は、前記走行ルートの近傍に沿って走行し、前記所定の機能を実行することによって得られたデータを前記建設現場管理システムへ送信し、前記作業現場の工事進捗に応じて前記走行ルートの前記地表面が変化したときは、その変化に即して更新された前記走行ルートを適宜前記遠隔制御車両に送信して忠実に走行させ、及び/若しくは、適宜UAV(無人航空機)による再測量を行って地表面点群データを更新し、更新されたデータに基づき前記走行ルートを更新して、
前記建設現場管理システムは前記受信したデータに基づいて建設現場の管理を繰り返し行うこと、に特徴を有する建設現場管理方法を特徴とする。
【0026】
ただし、前記ユーザインタフェースである表示画面には、その他の必要情報を表示することについては何も否定しない。また、本発明に係る遠隔制御車両による建設現場管理システムのユーザインタフェースである表示画面は、上記必須事項をのみ表示内容として限定するものでもない。そして、本発明に係る建設現場管理システムの制御装置は、前記測量装置及び/若しくは前記遠隔制御車両及び/若しくは前記撮影機及び/若しくは前記散乱型RI及び/若しくは前記UAVを建設現場管理システムの指示によってコントロール制御する。
【0027】
本発明は上述した形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。そして上述形態に係る均等的対応も含め、これらはすべて本技術思想の一部であることを主張する。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、従来属人的に行われている現場管理をシステム化でき、特に工事記録写真の撮影には大きな効果を発揮する。また、システムをオンライン化(クラウド化)することにより、従来属人的に現場に駐在した専門家を、遠隔オフィスに所在させ、同時に複数の現場に対して専門性を活かした管理を行えることから、省人化及び作業能率の向上が図れる。加えて本発明によれば、建設現場の地表面と移動経路等が対象地の地表面に関する設計ツールによって現場の設計段階で用意できるため、現場管理で使用する遠隔走行車両は、車両自体に移動経路を学習させる必要がなく、予め決定された経路を与えて走らせることができる。そして走行路の地表面が変化したときでも、その変化に即した経路を適宜与えて、忠実に走行させることができる。移動経路を設定するためのデータは、UAV測量により、対象地の状況に合わせて簡易にかつ正確に取得できる。
【0029】
本発明によれば、専任者が遠隔オフィスから複数の造成現場を、ロボット車両を通して管理し、工事写真の撮影をその専門知識に従って行うこと。そして現場の進捗遅れの把握、危険物の放置の発見、作業員と建設機械との接触可能性の発見など、従来属人的に扱われているものを、それらの法則や事前知識を盛り込んでシステム的に把握することで、移動車両による監視によって扱うことが可能となる。そして、建設現場の安全性と作業性を格段に向上させつつ、経済効率も格段に向上させることの可能な建設現場管理システムを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の一実施形態に係る遠隔制御車両による建設現場管理システムの全体イメージを示した概念図である。
図2】本発明の一実施形態に係る遠隔制御車両による建設現場管理システムの遠隔制御車両のイメージを示した概念図である。
図3】本発明の一実施形態に係る遠隔制御車両による建設現場管理システムの遠隔制御車両の制御システムの機能ブロック図である。
図4】本発明の一実施形態に係る遠隔制御車両による建設現場管理システムの遠隔制御車両のインタフェース例を示した写真図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。なお、以下では本発明の目的を達成するための説明に必要な範囲を模式的に示し、本発明の該当部分の説明に必要な範囲を主に説明することとし、説明を省略する箇所については公知技術によるものとする。
【0032】
図1は、本発明の一実施形態に係る遠隔制御車両による建設現場管理システムの全体イメージを示した概念図である。同図に示すように、遠隔制御車両(ロボット車両)10は、現場管理システム(建設現場管理システム)14によって操作制御される。無人航空機(UAV:Unmanned aerial vehicle)11によって測量された造成現場の地表面点群データ12が、CADツール13を介して例えば走行ルートとして管理データ15に蓄積されている。
【0033】
図1に示すように、例えば現場管理システム14とのやりとりとして、管理データ15からは、工事現場情報(名称、場所、工事期間、施工管理者など)、作業者情報(氏名、IDなど)、作業日報(現場、作業者、作業履歴)等の情報が提供される。
【0034】
同様に、図1に示すように、現場管理システムとして、記録写真台帳(当該現場での撮影履歴)、記録写真データ(電子黒板、位置情報等メタデータ付き)等が作成され、管理データとして保存される。
【0035】
図1に示すように、CADツール13からは、工事現場俯瞰図(オルソ画像または地図、世界測地系の座標付き)、ロボット(遠隔走行車両)走行路(予め決められた移動経路、世界測地系の点列で与えられる。)、写真撮影地点情報(世界測地系の点、および、撮影方向)等の情報が提供される。
【0036】
図2は、本発明の一実施形態に係る遠隔制御車両による建設現場管理システムの遠隔制御車両のイメージを示した概念図である。同図に示すように遠隔制御車両10は、撮影機(カメラ)16、エレベータリフト17、そして走行機構として例えばバッテリ18、制御PC19、モータ・ギア20、タイヤ(車輪)等を具備する。つまり遠隔走行を可能とする車両であればよい。
【0037】
図2には記載を割愛しているが、転倒検知用の傾斜センサやモータ加熱用の温度センサ等の感知センサ機能や、その他の走行車両に必要な機能を備えていてもよいことは言うまでもない。
【0038】
図3は、本発明の一実施形態に係る遠隔制御車両による建設現場管理システムの遠隔制御車両の制御システムの機能ブロック図である。建設現場管理システムの遠隔制御車両の制御システムは、同図に示すような機能を構成している。SBC(Single Board Computer)とは、基板単体で動くコンピュータRaspberry Piなどを示している。
【0039】
つまりSBCとは、単体基板上にCPU (Central Processing Unit)、MPU (Micro-Processing Unit)といった制御機能素子、作業用メモリ(メインメモリ)、入出力端子および入出力処理機能素子を実装した小型コンピュータのことである。入出力処理機能素子はチップセットという言い方もする。特に、入出力端子に接続された装置の制御に用いられる。本件では、SPIとI2Cにつながったものである。
【0040】
SPI(Serial Peripheral Interface)とは、CPUやMPUと入出力端子に接続された装置との間で、通信対象選択信号で選択された装置に対し、通信同期クロックを用いた同期式シリアル通信によってデータ通信を行うための規格およびインタフェースのことである。
【0041】
I2C(Inter-Integrated Circuit)とは、CPUやMPUと入出力端子に接続された装置との間で、通信同期クロックを用いた同期式シリアル通信によってデータ通信を行うための規格およびインタフェースである。通信対象の装置も同通信を用いて特定し、通信する。いずれもシリアル通信の方式である。
【0042】
VRS(Virtual Reference Station)とは、GNSS受信機の位置精度を高めるために設置される基準局の一種であり、基準局は既知の座標に設置され、基準局でのGNSS測位と既知座標との差分情報を把握し、GNSS受信機に差分情報を提供することで、GNSS受信機は差分情報を用いて測位精度を高めることができる。基準局は一般RTK (Real-Time Kinematic)局と称され、そのうち特にネットワークを介してGNSSに情報を提供するものをVRSと称する。
【0043】
次に、本発明の一実施形態に係る遠隔制御車両による建設現場管理システムの遠隔制御車両の走行制御の全体の流れについて説明する。
【0044】
1、UAV測量により、地表面点群データ(PCD: Point Cloud Data)を作成する。
2、点群データをCADツール(ex. AutoCAD)に取り込み、造成設計をする。これにより工事記録写真の撮影地点を決める。また撮影地点間の車両移動経路(走行ルート)を決める。障害物等なく登坂斜度限界内の経路を決めることになる。
3、車両移動(走行)用のデータをCADから出力する。出力内容は、造成地のオルソ画像およびその座標情報あるいは、造成地の点群データでもよい。オルソ画像とは、空中から地表を俯瞰した歪みのない画像で、画像のいずれの点もその天頂から俯瞰した画像となっているもので、斜めからの視角がない。同様に移動経路(走行ルート)の点群データである経路の点列も出力される。
4、車両制御インタフェース(現場管理システム)で上記データを受け、管理する。
5、ある地点の車両に対し、その地点を端点とする移動経路(走行ルート)を指定し、他の端点への移動(走行)を指示する。
6、移動(走行)指示を受けた車両は、GNSS測位により自車の位置を把握し、その位置を基に移動経路(走行ルート)の近傍に沿って進む。複数のWi-Fi基地局による測位でもよい。目標端点に到達したら、移動完了を車両制御インタフェースに報告する。
7、車両制御インタフェースでは、車両に装着したカメラからの画像を受け、工事記録写真の被写体を確認する。被写体に対する画角を確認し、画角がずれている場合、所望の画角に合うように、車両に対して移動(走行)を指示する。車両は、指示に従って移動し、位置を調整する。
8、被写体とその画角が確認されたら、車両に対し、車両制御インタフェースから撮影を指示する。
9、撮影画像を受信し、電子黒板情報を重畳して、工事記録写真として保存する。写真を管理する際の管理情報基準が、国土交通省により、写真を電子媒体で提出する場合の標準仕様として定められている。
【0045】
以上が、本発明の一実施形態に係る遠隔制御車両による建設現場管理システムの遠隔制御車両の走行制御の全体の流れとなり、上記5からは、繰り返しの操作となる。
【0046】
次に、本発明の一実施形態に係る遠隔制御車両による建設現場管理システムの遠隔制御車両の走行制御の全体の流れにおいて、変更への対処について説明する。
【0047】
工事進捗に応じて、造成面が変化したときは、適宜UAVによる再測量を行って地表面点群データを更新する。更新されたデータに基づき移動経路も更新する。造成現場での設置物等の影響等により移動経路を変える必要のあるときは、CADツール上で再度移動経路を設定すればよい。これらは、適宜車両制御インタフェースに送り、車両に対して更新された経路で遠隔走行制御することができる。
【0048】
障害物による車両の転倒など移動不能となったときは、その旨を車両制御インタフェースに伝える。車両制御インタフェースから、現場係員に伝えて、現場にて車両を移動可能な位置と姿勢に戻すことができる。
【0049】
図4は、本発明の一実施形態に係る遠隔制御車両による建設現場管理システムの遠隔制御車両のインタフェースの例を示した写真である。これは画面インタフェースの一例である。画面の上段は、車両からの俯瞰画像で例えば走行中のモニタでもある。画面の中段左は、現場俯瞰図と走行経路を示している。画面の中段右は、実際の撮影画像を示す。下段は、工事記録写真の撮影履歴を表示している。これは画面インタフェースの基本事項の例である。この他に表示すべきものを排除しているわけではない。
【0050】
また、変形例として、本発明の一実施形態に係る遠隔制御車両による建設現場管理システムによれば、ロボットである遠隔制御車両が測量することもできる。移動車両が対象域を移動して、地形を三次元化することができる。例えば、対象域はUAV測量あるいは既存地図等から把握し予めロボット車両に与えられる。これは、経路まで指定せず境界又は範囲だけでもよい。
【0051】
具体的には、車両の自車移動に基づいて、自車が捉えたGNSS座標により、地形を三次元化する。つまり、Lidarで周辺を測量しながら、自車のGNSS座標を基に、地形を三次元化するのである。これにより、UAV測量ではできない詳細な三次元測量データを得ることができるようになる。例えば、草木があって、UAVではその上面だけを捉えてしまうものでも、地面の詳細データを得られるようになる。地形の張り出し(オーバハング)や、隘路などがあり、上空からのUAV測量では捉えることのできない地形を詳細に把握できるようになる。
【0052】
加えて、対象域指定について地表状態を詳細に把握することができるようになる。ロボット(遠隔制御車両)が捉えた地表画像を画像認識し、そしてその場の走行抵抗および走行挙動から、地面状態を把握することができる。例えば、地表が乾いている、湿っている、ぬかるんで動けない等を判断することで、車が走れる状態か、現場で土砂を扱う工事(掘削、土留など)が可能かどうかといった判断が、現場に人が行かなくても現場管理システム上でできるようになる。
【0053】
また、本発明の一実施形態に係る遠隔制御車両による建設現場管理システムは、変形例として散乱型RI計器などを用いて、RI(ラジオアイソトープ)による放射線量を測定することができる。
【0054】
これにより、対象域指定について更に詳細な地盤構造を把握することができるようになる。つまり、対象地を移動しながら、所定地点ごとに、次のような所定の探索を行う。例えば、造成地の締固めのための転圧作業では、ローラ転圧機などの転圧作業の回数のみで管理しており、必ずしも正確な締固めとはなっていない。散乱型RI計器などを用いて、RI(ラジオアイソトープ)による放射線量を測定することで、地盤密度や地中水分を計り、締固め度を正確に把握することができる。従来は、専ら人手によるため、その実施は現実的ではなかった。
【0055】
遠隔制御車両ロボットに、散乱型RI計器を搭載し、指定地点ごとに地中RIを測
定して回らせることで、効果的に地盤密度や地中水分を計り、締固め度を把握できる
ようになる。締固め度の確認によって、過不足のない正確な転圧作業ができるように
なる。
【0056】
更に、本発明の一実施形態に係る遠隔制御車両による建設現場管理システムは、変形例としてUAVを運搬し、所定地においてUAVが測量等を行うこともできるようになる。遠隔制御車両ロボットがUAV基地となり、所定の場所に移動してから、建設現場管理システムによってUAVに必要な行動をさせることができる。
【0057】
例えば、対象域指定について飛行規制がある、騒音等の環境事情がある、河川敷など突風領域が間にあって飛行移動できないといったUAVの飛行が困難な場所からの、UAV観測や測量を行いたい場合でも、飛行可能な場所まで遠隔制御車両に搭載して運ぶことで、目的の運用が可能となる。目的地では、測量、画像処理による地表状態の認識、リモートセンシングによる地中状態の把握といったことができるようになる。
【0058】
上述の説明と同じ構造であって本形態の説明に特に必要となるものではない要素については図示及び説明を省略している。しかし、いずれの形態も本技術思想の範囲内のものである。
【0059】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。これらはすべて、本技術思想の一部である。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明によれば、専任者が遠隔オフィスから複数の造成現場を、ロボット車両を通して管理し、工事写真の撮影をその専門知識に従って行うことができる。そして現場の進捗遅れの把握、危険物の放置の発見、作業員と建設機械との接触可能性の発見など、従来属人的に扱われているものを、それらの法則や事前知識を盛り込んでシステム的に把握することで、移動車両による監視によって扱うことが可能になる。
【0061】
加えて、本発明によれば、詳細な三次元測量データを得ること、地表面の詳細データを得ること、地盤密度や地中水分計測により締固め度を把握できること、撮影困難なUAVを遠隔操作で移動させることなどが可能となる。
【0062】
このように、本願に係る発明によれば、建設現場の安全性と作業性を格段に向上させつつ、経済効率も格段に向上させることの可能な建設現場管理システムを提供することができ、建設現場の遠隔管理が実現される。
【0063】
したがって、本発明は、建設現場に限定されることなく、あらゆる用途に対しても利用・適用可能である。よって本願は、土木建設業の他、各種産業に対して大きな有益性をもたらすものである。
【符号の説明】
【0064】
10 遠隔制御車両(ロボット車両)
11 UAV測量(無人航空機測量)
12 点群データ
13 CADツール
14 現場管理システム
15 管理データ
16 撮影機(カメラ)
17 エレベータリフト
18 バッテリ
19 制御PC
20 モータ、ギア
21 現場作業者
22 クラウド
23 センターエキスパート

図1
図2
図3
図4