(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】波力発電装置
(51)【国際特許分類】
F03B 13/14 20060101AFI20220315BHJP
【FI】
F03B13/14
(21)【出願番号】P 2021101492
(22)【出願日】2021-06-18
【審査請求日】2021-12-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】593214501
【氏名又は名称】株式会社ナカムラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 富市
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】特開昭54-036435(JP,A)
【文献】特開平07-279817(JP,A)
【文献】特開2013-002354(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0110767(US,A1)
【文献】特開昭52-029548(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 13/00-13/26
F03B 17/00-17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水面に配置され、波の影響により鉛直方向に沿った第1方向および前記第1方向とは反対側の第2方向に揺動する浮体と、
前記浮体と接続されて前記浮体と一体に前記第1方向および前記第2方向に揺動する軸部材と、
前記軸部材に接続され、前記軸部材の回転により発電する発電装置とを備え、
前記軸部材は、
円筒状とされた第1軸部と、
前記第1軸部の内周側に配置される第2軸部と、
前記第1軸部および前記第2軸部に接続されて前記第1軸部および前記第2軸部と連動して回転可能に構成され、かつ、前記発電装置に接続される基部と、
前記第1軸部の先端部に配置され、前記第1方向に沿った前記第1軸部の揺動に伴って、前記第1軸部とともに第1回転方向に回転する第1羽根車と、
前記第2軸部の先端部に配置され、前記第2方向に沿った前記第2軸部の揺動に伴って、前記第2軸部とともに前記第1回転方向に回転する第2羽根車と、
前記第1回転方向の前記第1軸部の回転を前記基部に伝達するとともに、前記第1回転方向とは反対向きの第2回転方向への前記第1軸部の回転を前記基部に対して遮断する第1回転伝達部と、
前記第1回転方向の前記第2軸部の回転を前記基部に伝達するとともに、前記第2回転方向への前記第2軸部の回転を前記基部に対して遮断する第2回転伝達部と、を有する
ことを特徴とする波力発電装置。
【請求項2】
請求項1に記載の波力発電装置において、
前記第1回転伝達部および前記第2回転伝達部は、クラッチ機構により構成される
ことを特徴とする波力発電装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の波力発電装置において、
前記浮体は、前記浮体の前記第1回転方向の回転を抑制する回転防止板を備える
ことを特徴とする波力発電装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の波力発電装置において、
前記浮体は、前記軸部材を回転可能に支持する軸受部を備える
ことを特徴とする波力発電装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の波力発電装置において、
前記浮体は、前記発電装置を支持する支持部を有する
ことを特徴とする波力発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波力発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、波のエネルギーを利用して発電する波力発電装置が知られている(例えば、特許文献1など)。
特許文献1では、海面に配置された浮き体が受けた波のエネルギーを空気ポンプに伝達させ、伝達された波のエネルギーにより空気ポンプを作動させて圧縮空気を発生させている。そして、当該圧縮空気により発電装置を作動させて発電している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、波のエネルギーを受ける浮き体に接続されるラインを、海底に設けられる案内車に連絡させる必要がある。すなわち、浮き体が受けたエネルギーを伝達するために、海底に構造物を設ける必要がある。そうすると、水深が深い場所では、このような海底構造物を設けることが困難であるので、波力発電装置を設置できる場所が制限されてしまうといった問題があった。
【0005】
本発明の目的は、設置場所の自由度を高くできる波力発電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の波力発電装置は、水面に配置され、波の影響により鉛直方向に沿った第1方向および前記第1方向とは反対側の第2方向に揺動する浮体と、前記浮体と接続されて前記浮体と一体に前記第1方向および前記第2方向に揺動する軸部材と、前記軸部材に接続され、前記軸部材の回転により発電する発電装置とを備え、前記軸部材は、円筒状とされた第1軸部と、前記第1軸部の内周側に配置される第2軸部と、前記第1軸部および前記第2軸部に接続されて前記第1軸部および前記第2軸部と連動して回転可能に構成され、かつ、前記発電装置に接続される基部と、前記第1軸部の先端部に配置され、前記第1方向に沿った前記第1軸部の揺動に伴って、前記第1軸部とともに第1回転方向に回転する第1羽根車と、前記第2軸部の先端部に配置され、前記第2方向に沿った前記第2軸部の揺動に伴って、前記第2軸部とともに前記第1回転方向に回転する第2羽根車と、前記第1回転方向の前記第1軸部の回転を前記基部に伝達するとともに、前記第1回転方向とは反対向きの第2回転方向への前記第1軸部の回転を前記基部に対して遮断する第1回転伝達部と、前記第1回転方向の前記第2軸部の回転を前記基部に伝達するとともに、前記第2回転方向への前記第2軸部の回転を前記基部に対して遮断する第2回転伝達部と、を有することを特徴とする波力発電装置。
【0007】
本発明では、波の影響によって鉛直方向に沿った第1方向および第2方向に浮体が揺動し、これに伴って第1羽根車および第2羽根車が回転することで軸部材が回転する。そして、当該軸部材の回転のエネルギーにより発電装置が発電する。すなわち、本発明では、波のエネルギーを第1羽根車および第2羽根車により回転エネルギーに変換し、当該回転エネルギーを電力に変換する。この際、水の底に構造物を設けなくても浮体や軸部材を配置することができるので、波力発電装置の設置場所の自由度を高くすることができる。
【0008】
ここで、本発明では、波の影響により鉛直方向に沿った第1方向に浮体が揺動した際に、その波力により第1羽根車が第1回転方向に回転する。これにより、第1羽根車とともに第1軸部が第1回転方向に回転し、その回転が第1回転伝達部を介して基部に伝達される。この際、仮に、第2羽根車および第2軸部が第2回転方向に回転したとしても、第2軸部の第2回転方向の回転は第2回転伝達部が遮断するので、基部に伝達されることはない。そのため、基部が第1回転方向に回転し、その回転を発電装置に伝達して、発電装置によって発電することができる。
【0009】
また、波の影響により鉛直方向に沿った第2方向に浮体が揺動した際に、その波力により第2羽根車が第1回転方向に回転する。これにより、第2羽根車とともに第2軸部が回転し、その回転が基部を介して発電装置に伝達される。この際、仮に、第1羽根車および第1軸部が第2回転方向に回転したとしても、第1軸部の第2回転方向の回転は第1回転伝達部が遮断するので、基部に伝達されることはない。そのため、基部が第1回転方向に回転し、その回転を発電装置に伝達して、発電装置によって発電することができる。
したがって、第1羽根車の回転と、第2羽根車の回転とが干渉することがなく、基部は第1回転方向にのみ回転するので、波のエネルギーを効率的に電力に変換することができる。
【0010】
本発明の波力発電装置において、前記第1回転伝達部および前記第2回転伝達部は、クラッチ機構により構成されることが好ましい。
この構成では、第1回転伝達部および第2回転伝達部は、クラッチ機構により構成されるので、簡素な構成で第1軸部および第2軸部の第2回転方向の回転を、基部に対して遮断することができる。
【0011】
本発明の波力発電装置において、前記浮体は、前記浮体の前記第1回転方向の回転を抑制する回転防止板を備えることが好ましい。
この構成では、浮体の第1回転方向の回転を回転防止板により抑制できるので、軸部材の回転を効率的に発電装置に伝達することができる。
【0012】
本発明の波力発電装置において、前記浮体は、前記軸部材を回転可能に支持する軸受部を備えることが好ましい。
この構成では、浮体が軸受部を備えるので、軸部材の回転が浮体に伝達されることを抑制できる。そのため、軸部材の回転を効率的に発電装置に伝達することができる。さらに、軸部材の軸方向に作用する力を軸受部にて受けることができるので、発電装置に軸方向の力が作用することを抑制することができる。そのため、軸方向の力が発電装置に作用することで、発電装置に不具合を生じることを抑制することができる。
【0013】
本発明の波力発電装置において、前記浮体は、前記発電装置を支持する支持部を有することが好ましい。
この構成では、浮体が支持部を有するので、浮体によって発電装置を確実に支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】一実施形態に係る波力発電装置の概略構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[実施形態]
本発明の一実施形態に係る波力発電装置1を図面に基づいて説明する。なお、本実施形態の波力発電装置1は、例えば、海上等に設置され、波のエネルギーを回転エネルギーに変換させて発電を行う装置である。
【0016】
図1は、本実施形態の波力発電装置1の概略構成を示す図であり、
図2は、
図1におけるII-IIに沿った断面図である。
図1、2に示すように、波力発電装置1は、浮体2と、軸部材3と、発電装置4とを備える。
【0017】
[浮体2]
浮体2は、軸部材3に連結され、海面(水面)に浮上可能に構成される部材である。本実施形態では、浮体2は、浮体部21と、浮体板22と、支持部23と、軸受部24と、回転防止板25とを有する。
浮体部21は、内部が中空とされたドーナツ状に形成され、海面に浮上可能に構成される。これにより、浮体部21は、波の影響を受けて揺動可能とされている。具体的には、浮体部21は、波の影響により鉛直方向に沿った第1方向V1(
図1中の上向き方向)および第1方向V1とは反対側の第2方向V2(
図1中の下向き方向)に揺動可能に構成されている。なお、このような浮体部21は、例えば、ゴム部材や樹脂部材により形成されていてもよく、あるいは、金属により形成されていてもよく、海面に浮上して波の影響を受けて揺動可能に構成されていればよい。
【0018】
浮体板22は、浮体部21と支持部23との間に配置される板状の部材であり、浮体部21と支持部23とを接続させる部材である。また、浮体板22には、中央部に孔部22Aが形成されている。
【0019】
支持部23は、発電装置4を支持する部材である。具体的には、支持部23は、棒状の部材であり、一方の端部が後述する発電装置4のベース部材42に連結されて、発電装置4を支持している。また、支持部23は、他方の端部に回転防止板25が配置されている。なお、このような支持部23は、樹脂部材により形成されていてもよく、あるいは、金属により形成されていてもよく、発電装置4を支持可能に構成されていればよい。
なお、上記構成に限られるものではなく、例えば、浮体部21の端部に海面に向かって延出されるアーム部を設け、当該アーム部の先端に回転防止板25を配置してもよい。
【0020】
軸受部24は、軸部材3を回転可能に支持する部材である。具体的には、軸受部24は、浮体板22の孔部22Aの開口に沿って、浮体板22に配置されている。本実施形態では、軸受部24は、所謂ボールベアリングにより構成される。これにより、軸受部24は、軸部材3を回転可能に支持することができるように構成されている。
回転防止板25は、板状に形成され、前述したように支持部23の他方の端部に配置されている。これにより、波の影響や軸部材3の回転によって浮体2および発電装置4が回転することを抑制できる。
【0021】
[軸部材3]
軸部材3は、浮体2と接続されて当該浮体2と一体に第1方向V1および第2方向V2に揺動可能に構成されている。本実施形態では、軸部材3は、第1軸部31と、第2軸部32と、基部33と、第1羽根車34と、第2羽根車35と、第1回転伝達部36と、第2回転伝達部37とを有する。
【0022】
第1軸部31は、金属製で円筒状に形成されている。本実施形態では、第1軸部31は、基部33の内周側に配置され、第1回転伝達部36を介して基部33と接続されている。なお、第1軸部31は、上記構成に限られるものではなく、例えば、樹脂部材等により形成されていてもよい。
【0023】
第2軸部32は、金属製で棒状に形成されている。本実施形態では、第2軸部32は、第1軸部31の内周側に配置され、第2回転伝達部37を介して基部33と接続されている。なお、第2軸部32は、上記構成に限られるものではなく、例えば、樹脂部材等により形成されていてもよい。
【0024】
基部33は、金属製で円筒状に形成されており、浮体2の軸受部24に回転可能に支持されている。本実施形態では、基部33は、前述したように、第1回転伝達部36を介して第1軸部31に接続されるとともに、第2回転伝達部37を介して第2軸部32に接続されている。これにより、基部33は、第1軸部31および第2軸部32と連動して回転可能に構成されている。また、基部33は、後述する発電装置4の発電部41に接続されている。なお、基部33は、上記構成に限られるものではなく、例えば、樹脂部材等により形成されていてもよい。
【0025】
第1羽根車34は、金属製で第1軸部31の先端部に配置されている。本実施形態では、第1羽根車34は、第1方向V1に沿った第1軸部31の揺動に伴って、第1軸部31とともに第1回転方向R1に回転するように構成されている。なお、第1羽根車34は、上記構成に限られるものではなく、例えば、樹脂部材等により形成されていてもよい。
【0026】
第2羽根車35は、金属製で第2軸部32の先端部に配置されている。本実施形態では、第2羽根車35は、第2方向V2に沿った第2軸部32の揺動に伴って、第2軸部32とともに第1回転方向R1に回転するように構成されている。なお、第2羽根車35は、上記構成に限られるものではなく、例えば、樹脂部材等により形成されていてもよい。
【0027】
第1回転伝達部36は、所謂クラッチ機構により構成され、第1軸部31と基部33との間に介挿されている。そして、第1回転伝達部36は、第1回転方向R1の第1軸部31の回転を基部33に伝達するとともに、第1回転方向R1とは反対向きの第2回転方向R2の第1軸部31の回転を基部33に対して遮断するように構成されている。すなわち、第1回転伝達部36は、第1軸部31の一方向の回転のみを基部33に伝達するように構成されている。
【0028】
第2回転伝達部37は、所謂クラッチ機構により構成され、第2軸部32と基部33との間に介挿されている。そして、第2回転伝達部37は、第1回転方向R1の第2軸部32の回転を基部33に伝達するとともに、第2回転方向R2の第2軸部32の回転を基部33に対して遮断するように構成されている。すなわち、第2回転伝達部37は、第2軸部32の一方向の回転のみを基部33に伝達するように構成されている。
【0029】
[発電装置4]
発電装置4は、前述したように軸部材3の基部33に接続され、基部33の回転によって発電するように構成されている。本実施形態では、発電装置4は、発電部41と、ベース部材42とを有している。
【0030】
発電部41は、軸部材3の基部33の回転を電力に変換する装置である。本実施形態では、発電部41は、一般的な発電機と同様に、ロータ、ステータ、永久磁石、発電コイル等を備え、基部33の回転によりロータの永久磁石を回転させて、発電コイルにより発電を行う。
【0031】
ベース部材42は、金属製で板状に形成され、前述したように浮体2の支持部23に支持されるとともに、発電部41を支持する。本実施形態では、ベース部材42には、軸部材3の基部33が挿通される挿通孔42Aが形成されている。なお、ベース部材42は、上記構成に限られるものではなく、例えば、樹脂部材等により形成されていてもよい。
【0032】
[発電方法について]
次に、波力発電装置1による発電方法について説明する。
図3および
図4は、波力発電装置1による発電方法を示す図である。なお、
図3は、波の山部分に波力発電装置1の浮体部21が位置する場合を示しており、
図4は、波の谷部分に波力発電装置1の浮体部21が位置する場合を示している。
【0033】
図3に示すように、浮体部21が波の山部分に位置する場合、浮体部21が波によって第1方向V1に揺動されている。そうすると、軸受部24を介して浮体部21と接続されている軸部材3が第1方向V1に揺動される。これにより、第1軸部31が第1方向V1に揺動されるので、第1羽根車34が第1回転方向R1に回転する。そのため、当該第1羽根車34とともに第1軸部31が第1回転方向R1に回転し、その回転が第1回転伝達部36を介して基部33に伝達される。
【0034】
ここで、第2羽根車35および第2軸部32が第2回転方向R2に回転したとしても、第2軸部32の第2回転方向R2の回転は第2回転伝達部37が遮断するので、基部33に伝達されることはない。そのため、基部33が第1回転方向R1に回転し、その回転を発電装置4の発電部41に伝達して、当該発電部41により発電することができる。
この際、本実施形態では、浮体2は回転防止板25を備えるので、軸部材3とともに浮体2が第1回転方向R1に回転することを抑制することができる。さらに、本実施形態では、浮体2は軸受部24により軸部材3を支持するので、軸部材3の回転が浮体2に伝達されることを抑制できる。そのため、基部33の第1回転方向R1の回転を発電装置4に効率的に伝達することができる。
【0035】
次に、
図3に示す状態から、
図4に示すように、浮体部21が波の谷部分に位置した場合、浮体部21が波によって第2方向V2に揺動される。そうすると、軸受部24を介して浮体部21と接続されている軸部材3が第2方向V2に揺動される。これにより、第2軸部32が第2方向V2に揺動されるので、第2羽根車35が第1回転方向R1に回転する。そのため、当該第2羽根車35とともに第2軸部32が第1回転方向R1に回転し、その回転が第2回転伝達部37を介して基部33に伝達される。
【0036】
ここで、第1羽根車34および第1軸部31が第2回転方向R2に回転したとしても、第1軸部31の第2回転方向R2の回転は第1回転伝達部36が遮断するので、基部33に伝達されることはない。そのため、基部33が第1回転方向R1に回転し、その回転を発電装置4の発電部41に伝達して、当該発電部41により発電することができる。
この際、前述したように、浮体2は回転防止板25を備えるので、軸部材3とともに浮体2が第1回転方向R1に回転することを抑制することができる。さらに、本実施形態では、浮体2は軸受部24により軸部材3を支持するので、軸部材3の回転が浮体2に伝達されることを抑制できる。そのため、基部33の第1回転方向R1の回転を発電装置4に効率的に伝達することができる。
【0037】
このように、本実施形態では、波のエネルギーを第1羽根車34および第2羽根車35により回転エネルギーに変換し、当該回転エネルギーを発電装置4により電力に変換する。この際、水の底に構造物を設けなくても浮体2や軸部材3を配置することができるので、波力発電装置1の設置場所の自由度を高くすることができる。
【0038】
以上のような本実施形態では、次の効果を奏することができる。
(1)本実施形態では、波の影響によって鉛直方向に沿った第1方向V1および第2方向V2に浮体2が揺動し、これに伴って第1羽根車34および第2羽根車35が回転することで軸部材3が回転する。そして、当該軸部材3の回転のエネルギーにより発電装置4が発電する。この際、水の底に構造物を設けなくても浮体2や軸部材3を配置することができるので、波力発電装置1の設置場所の自由度を高くすることができる。
ここで、本実施形態では、波の影響により鉛直方向に沿った第1方向V1に浮体2が揺動した際に、その波力により第1羽根車34が第1回転方向R1に回転する。これにより、第1羽根車34とともに第1軸部31が第1回転方向R1に回転し、その回転が第1回転伝達部36を介して基部33に伝達される。この際、第2羽根車35および第2軸部32が第2回転方向R2に回転したとしても、第2軸部32の第2回転方向R2の回転は第2回転伝達部37が遮断するので、基部33に伝達されることはない。そのため、基部33が第1回転方向R1に回転し、その回転を発電装置4に伝達して、発電装置4により発電することができる。
また、波の影響により鉛直方向に沿った第2方向V2に浮体2が揺動した際に、その波力により第2羽根車35が第1回転方向R1に回転する。これにより、第2羽根車35とともに第2軸部32が回転し、その回転が基部33を介して発電装置4に伝達される。この際、第1羽根車34および第1軸部31が第2回転方向R2に回転したとしても、第1軸部31の第2回転方向R2の回転は第1回転伝達部36が遮断するので、基部33に伝達されることはない。そのため、基部33が第1回転方向R1に回転し、その回転を発電装置4に伝達して、発電装置4により発電することができる。
したがって、第1羽根車34の回転と、第2羽根車35の回転とが干渉することがなく、基部33は第1回転方向R1のみに回転するので、波のエネルギーを効率的に電力に変換することができる。
【0039】
(2)本実施形態では、第1回転伝達部36および第2回転伝達部37は、クラッチ機構により構成されるので、簡素な構成で第1軸部31および第2軸部32の第2回転方向R2の回転を、基部33に対して遮断することができる。
【0040】
(3)本実施形態では、浮体2の第1回転方向R1の回転を回転防止板25により抑制できるので、軸部材3の回転を効率的に発電装置4に伝達することができる。
【0041】
(4)本実施形態では、浮体2が軸受部24を備えるので、軸部材3の回転が浮体2に伝達されることを抑制できる。そのため、軸部材3の回転を効率的に発電装置4に伝達することができる。さらに、軸部材3の軸方向に作用する力を軸受部24にて受けることができるので、発電装置4に軸方向の力が作用することを抑制することができる。そのため、軸方向の力が発電装置4に作用することで、発電装置4に不具合を生じることを抑制することができる。
【0042】
(5)本実施形態では、浮体2が支持部23を有するので、浮体2によって発電装置4を確実に支持することができる。
【0043】
[変形例]
なお、本発明は前述の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0044】
図5は、変形例の波力発電装置1Aの概略構成を示す図である。
図5に示すように、波力発電装置1Aは、基部33に配置されるフライホイール部38Aを備えていてもよい。このような波力発電装置1Aでは、フライホイール部38Aにて基部33の回転を平準化させることができるので、波の影響が不安定な場合でも、発電装置4に軸部材3の回転を安定的に伝達することができる。そのため、発電装置4による発電を安定化させることができる。
【0045】
前記実施形態では、波力発電装置1は、軸部材3および発電装置4を1つずつ備えていたが、これに限定されない。例えば、波力発電装置は、軸部材および発電装置を複数備えていてもよい。
【0046】
前記実施形態では、波力発電装置1は、海上に設置されていたが、これに限定されない。例えば、波力発電装置は、波が発生する湖上に設置されていてもよく、波の影響を受けることができる位置であればよい。
【0047】
前記実施形態では、波力発電装置1は、ドーナツ状の浮体部21を1つ有していたが、これに限定されない。例えば、波力発電装置は、任意の形状の浮体を複数個有していてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1,1A…波力発電装置、2…浮体、3…軸部材、4…発電装置、21…浮体部、22…浮体板、22A…孔部、23…支持部、24…軸受部、25…回転防止板、31…第1軸部、32…第2軸部、33…基部、34…第1羽根車、35…第2羽根車、36…第1回転伝達部、37…第2回転伝達部、38A…フライホイール部、41…発電部、42…ベース部材、42A…挿通孔。
【要約】
【課題】設置場所の自由度を高くできる波力発電装置を提供すること。
【解決手段】本発明の波力発電装置1は、浮体2と、浮体2と接続されて浮体2と一体に第1方向V1および第2方向V2に揺動する軸部材3と、軸部材3に接続され、軸部材3の回転により発電する発電装置4とを備える。そして、軸部材3は、第1軸部31と、第2軸部32と、基部33と、第1羽根車34と、第2羽根車35と、第1回転伝達部36と、第2回転伝達部37とを有する。第1回転伝達部36は、第1回転方向R1の第1軸部31の回転を基部33に伝達するとともに、第2回転方向R2への第1軸部31の回転を基部33に対して遮断する。第2回転伝達部37は、第1回転方向R1の第2軸部32の回転を基部33に伝達するとともに、第2回転方向R2への第2軸部32の回転を基部33に対して遮断する。
【選択図】
図1