(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】ウレタン(メタ)アクリレート、その中和物、光硬化性樹脂組成物及び液状組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 18/67 20060101AFI20220315BHJP
C08G 18/28 20060101ALI20220315BHJP
C08G 18/73 20060101ALI20220315BHJP
C08G 18/75 20060101ALI20220315BHJP
C08G 18/76 20060101ALI20220315BHJP
C08G 18/79 20060101ALI20220315BHJP
C08G 18/08 20060101ALI20220315BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20220315BHJP
【FI】
C08G18/67 050
C08G18/28 050
C08G18/73
C08G18/75
C08G18/76
C08G18/79
C08G18/08 019
C08F290/06
(21)【出願番号】P 2021537237
(86)(22)【出願日】2020-07-28
(86)【国際出願番号】 JP2020028805
(87)【国際公開番号】W WO2021024845
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2021-10-15
(31)【優先権主張番号】P 2019142964
(32)【優先日】2019-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390028048
【氏名又は名称】根上工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】石田 久憲
(72)【発明者】
【氏名】畠中 瑞生
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/106939(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/161607(WO,A1)
【文献】特開2010-202777(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00- 18/87
C08F 290/00-290/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1個の水酸基と1個以上の第3級アミノ基とを有するアミノアルコール成分(A)と、ジイソシアネート成分(B)と、1個以上の水酸基を有する(メタ)アクリレート成分(C)との反応物であり、
前記アミノアルコール成分(A)が、(R
1
)
2
-N-R
2
で表される化合物であり、R
1
は炭素数1~4のアルキル基を示し、2個のR
1
は同一でも異なってもよく、R
2
は炭素数1~4のヒドロキシアルキル基を示し、
前記ジイソシアネート成分(B)が、脂肪族ジイソシアネート化合物、脂環式ジイソシアネート化合物及び芳香族ジイソシアネート化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、前記脂肪族ジイソシアネート化合物が、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、オクタデシレンジイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,10-デカメチレンジイソシアネート及びそれらのアロファネート体からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、前記脂環式ジイソシアネート化合物が、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン-2,4(又は2,6)-ジイソシアネート、1,3-(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート、4,4’-メチレン-ビス(シクロヘキシルイソシアネート)及びそれらのアロファネート体からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、前記芳香族ジイソシアネート化合物が、トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、フェニルジイソシアネート、ハロゲン化フェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、3-フェニル-2-エチレンジイソシアネート、クメン-2,4-ジイソシアネート、4-メトキシ-1,3-フェニレンジイソシアネート、4-エトキシ-1,3-フェニレンジイソシアネート、2,4’-ジイソシアネートジフェニルエーテル、5,6-ジメチル-1,3-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジイソシアネートジフェニルエーテル、ベンジジンジイソシアネート、9,10-アンスラセンジイソシアネート、4,4’-ジイソシアネートベンジル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアネートジフェニルメタン、2,6-ジメチル-4,4’-ジイソシアネートジフェニル、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジイソシアネートジフェニル、1,4-アンスラセンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート及びそれらのアロファネート体からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、
前記(メタ)アクリレート成分(C)が、1個以上の水酸基を有するジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート(C1)を含み、
重量平均分子量が1000以上であるウレタン(メタ)アクリレート。
【請求項2】
前記アミノアルコール成分(A)が、2-(ジメチルアミノ)エタノール、2-(ジエチルアミノ)エタノール及び2-(ジブチルアミノ)エタノールからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載のウレタン(メタ)アクリレート。
【請求項3】
前記ジイソシアネート成分(B)が、
前記脂環式ジイソシアネート化合物及び
前記脂肪族ジイソシアネート化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1又は2に記載のウレタン(メタ)アクリレート。
【請求項4】
前記ジイソシアネート成分(B)が、イソホロンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ヘキサメチレンジイソシアネート及びトリメチルヘキサメチレンジイソシアナートからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1又は2に記載のウレタン(メタ)アクリレート。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のウレタン(メタ)アクリレート中の前記アミノアルコール成分(A)に基づく第3級アミノ基がカルボン酸で中和された中和物。
【請求項6】
請求項5に記載の中和物と、光重合開始剤とを含む光硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
重合性不飽和結合を有するモノマーをさらに含む、請求項6に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
前記モノマーが、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートを含む、請求項7に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
前記ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート(C1)と前記ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートとの混合物の水酸基価が80mgKOH/g以上である、請求項8に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
請求項6~9のいずれか一項に記載の光硬化性樹脂組成物と水とを含む液状組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタン(メタ)アクリレート、その中和物、光硬化性樹脂組成物及び液状組成物に関する。
本願は、2019年8月2日に、日本に出願された特願2019-142964号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
光硬化性樹脂として、ウレタン結合及び(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレートが知られている。ウレタン(メタ)アクリレートの使用に際しては一般に、ウレタン(メタ)アクリレートを有機溶剤や反応性希釈剤により希釈する。近年、ウレタン(メタ)アクリレートを水で希釈して水系化することが検討されている。
【0003】
ウレタン(メタ)アクリレートを含む水系の組成物として、以下のものが提案されている。
(1)モノ又はポリペンタエリスリトールの(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも一種の単量体、1分子中に少なくとも2個のラジカル重合性不飽和二重結合を有するウレタンポリ(メタ)アクリレート化合物、光重合開始剤、ラジカル重合反応性界面活性剤、水を配合したエマルジョン被覆材組成物(特許文献1)。
(2)オキシアルキレン基及びアミノ化合物で中和されたカルボキシル基を有する多官能ウレタンアクリレート、光重合開始剤、及び水を含んでなる光硬化性樹脂組成物(特許文献2)。
(3)カルボキシル基含有ウレタン(メタ)アクリレートを、水混和率が100重量%以上の水溶性反応性希釈剤の存在下で製造するとともに、当該ポリウレタン(メタ)アクリレートのカルボキシル基をアミン塩とした後、さらに水を加え、乳化して得られる水性活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(特許文献3)。
(4)ウレタンアクリレート、エポキシアクリレートから選ばれる硬化性オリゴマーの少なくとも1種を反応性乳化剤の存在下に、水溶媒中に分散させてなる水分散型硬化性樹脂組成物(特許文献4)。
(5)ラジカル重合性不飽和基を3~30個有する多官能オリゴマーが、ポリアルキレングリコール誘導体を用いたウレタン(メタ)アクリレート系化合物である多官能性反応性界面活性剤の存在下に、水性溶媒中で分散され、エチレン性不飽和モノマーを含有する活性エネルギー線硬化型エマルジョン組成物(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】日本国特開平9-137081号公報
【文献】日本国特開平11-209448号公報
【文献】日本国特開平11-279242号公報
【文献】日本国特開2000-159847号公報
【文献】日本国特開2008-303258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1~5の組成物はいずれも、水溶液ではなく水分散液であり、均質性が充分ではない。
【0006】
本発明は、中和したときに水溶性を示すウレタン(メタ)アクリレート及びその中和物を提供することを目的とする。
また、本発明は、水溶性のウレタン(メタ)アクリレートを含み、水溶液化が可能な光硬化性樹脂組成物及びこれを用いた液状組成物を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は下記の態様を有する。
[1]1個の水酸基と1個以上の第3級アミノ基とを有するアミノアルコール成分(A)と、ジイソシアネート成分(B)と、1個以上の水酸基を有する(メタ)アクリレート成分(C)との反応物であり、
前記(メタ)アクリレート成分(C)が、1個以上の水酸基を有するジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート(C1)を含み、
重量平均分子量が1000以上であるウレタン(メタ)アクリレート。
[2]前記アミノアルコール成分(A)が、2-(ジメチルアミノ)エタノール、2-(ジエチルアミノ)エタノール及び2-(ジブチルアミノ)エタノールからなる群から選ばれる少なくとも1種である、前記[1]のウレタン(メタ)アクリレート。
[3]前記ジイソシアネート成分(B)が、脂環式ジイソシアネート化合物及び脂肪族ジイソシアネート化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である、前記[1]又は[2]のウレタン(メタ)アクリレート。
[4]前記ジイソシアネート成分(B)が、イソホロンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ヘキサメチレンジイソシアネート及びトリメチルヘキサメチレンジイソシアナートからなる群から選ばれる少なくとも1種である、前記[1]~[3]のいずれかのウレタン(メタ)アクリレート。
[5]前記[1]~[4]のいずれかのウレタン(メタ)アクリレート中の前記アミノアルコール成分(A)に基づく第3級アミノ基がカルボン酸で中和された中和物。
[6]前記[5]の中和物と、光重合開始剤とを含む光硬化性樹脂組成物。
[7]重合性不飽和結合を有するモノマーをさらに含む、前記[6]の光硬化性樹脂組成物。
[8]前記モノマーが、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートを含む、前記[7]の光硬化性樹脂組成物。
[9]前記ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート(C1)と前記ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートとの混合物の水酸基価が80mgKOH/g以上である、前記[8]の光硬化性樹脂組成物。
[10]前記[6]~[9]のいずれかの光硬化性樹脂組成物と水とを含む液状組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、中和したときに水溶性を示すウレタン(メタ)アクリレート及びその中和物を提供できる。
また、本発明によれば、水溶性のウレタン(メタ)アクリレートを含み、水溶液化が可能な光硬化性樹脂組成物及びこれを用いた液状組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において、「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基とメタクリロイル基の総称である。
「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートの総称である。
「ウレタン(メタ)アクリレート」は、ウレタン結合を有する(メタ)アクリレートである。
「ポリ(メタ)アクリレート」は、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートである。
「重量平均分子量」(以下、「Mw」とも記す。)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定される標準ポリスチレン換算の値である。
「水酸基価」は、試料中の水酸基をアセチル化して、アセチル化に使用した酢酸を中和するのに必要な水酸化カリウムの量を、前記試料1.0gに対するmg数で表したものであり、試料中の水酸基の含有量を示す尺度となる。水酸基価は、JIS K 0070:1992に規定されている中和滴定法を用いて測定される。
以下、本発明の好適な実施形態について説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0010】
〔ウレタン(メタ)アクリレート〕
本発明の一実施形態に係るウレタン(メタ)アクリレート(以下、「本ウレタン(メタ)アクリレート」とも記す。)は、アミノアルコール成分(A)(以下、「(A)成分」とも記す。)と、ジイソシアネート成分(B)(以下、「(B)成分」とも記す。)と、1個以上の水酸基を有する(メタ)アクリレート成分(C)(以下、「(C)成分」とも記す。)との反応物である。
この反応物は、(A)成分に基づく単位と(B)成分に基づく単位と(C)成分に基づく単位とから構成されている。
【0011】
<(A)成分>
(A)成分は、分子内に1個の水酸基と1個以上の第3級アミノ基とを有する。
(A)成分が有する第3級アミノ基の数は、水溶性の観点から、1個が好ましい。
(A)成分としては、例えば、(R1)2-N-R2で表される化合物が挙げられる。ここで、R1はアルキル基を示し、R2はヒドロキシアルキル基を示す。式中の2個のR1は同一でも異なってもよい。
R1は直鎖状でも分岐状でもよい。R1の炭素数は、水溶性の観点から、1~4が好ましい。
R2は直鎖状でも分岐状でもよい。R2の炭素数は、水溶性の観点から、1~4が好ましい。
(A)成分としては、水溶性の観点から、2-(ジメチルアミノ)エタノール、2-(ジエチルアミノ)エタノール及び2-(ジブチルアミノ)エタノールからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
(A)成分は1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0012】
<(B)成分>
(B)成分としては、分子内に2個のイソシアネート基(-N=C=O)を有する化合物であればよく、例えば、脂肪族ジイソシアネート化合物、脂環族ジイソシアネート化合物、芳香族ジイソシアネート化合物が挙げられる。
【0013】
脂肪族ジイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、オクタデシレンジイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,10-デカメチレンジイソシアネートが挙げられる。
【0014】
脂環族ジイソシアネート化合物としては、例えば、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン-2,4(又は2,6)-ジイソシアネート、1,3-(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート、4,4’-メチレン-ビス(シクロヘキシルイソシアネート)が挙げられる。
【0015】
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、フェニルジイソシアネート、ハロゲン化フェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、3-フェニル-2-エチレンジイソシアネート、クメン-2,4-ジイソシアネート、4-メトキシ-1,3-フェニレンジイソシアネート、4-エトキシ-1,3-フェニレンジイソシアネート、2,4’-ジイソシアネートジフェニルエーテル、5,6-ジメチル-1,3-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジイソシアネートジフェニルエーテル、ベンジジンジイソシアネート、9,10-アンスラセンジイソシアネート、4,4’-ジイソシアネートベンジル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアネートジフェニルメタン、2,6-ジメチル-4,4’-ジイソシアネートジフェニル、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジイソシアネートジフェニル、1,4-アンスラセンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネートが挙げられる。
以上のジイソシアネート化合物はそれぞれビウレット体、ヌレート体、アダクト体、アロファネート体であってもよい。
【0016】
(B)成分としては、黄変抑制の観点から、脂環式ジイソシアネート化合物及び脂肪族ジイソシアネート化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
上記の中でも、イソホロンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ヘキサメチレンジイソシアネート及びトリメチルヘキサメチレンジイソシアナートからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
(B)成分は、1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
<(C)成分>
(C)成分は、1個以上の水酸基を有するジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート(C1)(以下、「化合物(C1)」とも記す。)を含む。
化合物(C1)は、ジペンタエリスリトールの6個の水酸基のうち2個以上5個以下が(メタ)アクリロイルオキシ基で置換された化合物である。具体的には、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが挙げられる。これら化合物(C1)は、1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
(C)成分は、本ウレタン(メタ)アクリレートの中和物の水溶性の観点から、化合物(C1)として、2個以上の水酸基を有するもの、つまりジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。水酸基の数が多いほど、本ウレタン(メタ)アクリレート1分子あたりの第3級アミノ基の導入量が増え、中和物の水溶性が高まる。
化合物(C1)として、2個以上の水酸基を有するものと、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートとを併用してもよい。
(C)成分は、化合物(C1)以外の、1個以上の水酸基を有する(メタ)アクリレートをさらに含んでいてもよい。かかる(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、ペンタエリスリトールジ又はトリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
(C)成分の総質量に対する化合物(C1)の割合は、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、100質量%であってもよい。
【0019】
本ウレタン(メタ)アクリレートは、(A)成分に由来して、第3級アミノ基を有する。
本ウレタン(メタ)アクリレート中の第3級アミノ基の含有量は、本ウレタン(メタ)アクリレートの総質量に対する第3級アミノ基中の窒素原子の割合として、0.1~6質量%が好ましく、0.2~3質量%がより好ましい。前記窒素原子の割合が上記下限値以上であれば、本ウレタン(メタ)アクリレートの中和物の水溶性がより優れる。前記窒素原子の割合が上記上限値以下であれば、表面硬度が高く耐擦り傷性、ハードコート性に優れる硬化物を得やすい。前記窒素原子の割合は、仕込み比の計算により求められる。
【0020】
本ウレタン(メタ)アクリレートは、(C)成分に由来して、(メタ)アクリロイル基を有し、したがって、重合性不飽和結合(炭素-炭素二重結合)を有する。
本ウレタン(メタ)アクリレートの二重結合当量は、125~250g/molが好ましく、130~200g/molがより好ましい。二重結合当量が上記下限値以上であれば、表面硬度が高く耐擦り傷性、ハードコート性に優れる硬化物を得やすい。二重結合当量が上記上限値以下であれば、可トウ性がより優れる。
「二重結合当量」とは、化合物における二重結合1モル当たりの質量である。
本ウレタン(メタ)アクリレート1gを製造するにあたって必要な(C)成分のモル数をαmolとし、(C)成分1分子中に含まれる重合性不飽和結合の数をβ個とした場合、二重結合当量は1/(α×β)により算出される。
(C)成分として、重合性不飽和結合の数((メタ)アクリロイル基の数)が異なる複数の化合物を併用する場合、βは、各化合物が有する重合性不飽和結合の数と各化合物の存在比(モル比)から算出される加重平均値である。各化合物の存在比は、仕込み比により求められる。
【0021】
本ウレタン(メタ)アクリレートのMwは、1000以上であり、1500以上が好ましい。
本ウレタン(メタ)アクリレートのMwは、10000以下が好ましく、2500以下がより好ましい。
本ウレタン(メタ)アクリレートのMwは、1000以上10000以下が好ましく、1500以上2500以下がより好ましい。
【0022】
<ウレタン(メタ)アクリレートの製造方法>
本ウレタン(メタ)アクリレートは、(A)成分と(B)成分と(C)成分とを反応(ウレタン化反応)させることにより製造できる。これら各成分を反応させると、(A)成分及び(C)成分の水酸基と(B)成分のイソシアネート基とがウレタン結合を形成して本ウレタン(メタ)アクリレートが生成する。
【0023】
ウレタン化反応の反応温度は、例えば50~150℃、さらには60~100℃である。
ウレタン化反応の反応時間は、反応温度、触媒の有無や種類によって異なるが、例えば6~48時間、さらには12~36時間である。
【0024】
上記ウレタン化反応において各成分の割合は、(A)成分及び(C)成分が有する水酸基の数、合成後の物性等を考慮して適宜選定できる。
(A)成分の水酸基と(C)成分の水酸基との合計数に対する(B)成分のイソシアネート基の数の割合(NCO/OH)は、例えば0.5~2である。
(A)成分と(B)成分と(C)成分との合計質量に対する(A)成分の割合は、3~30質量%が好ましく、3~15質量%がより好ましい。
(A)成分と(B)成分と(C)成分との合計質量に対する(B)成分の割合は、7~40質量%が好ましく、10~30質量%がより好ましい。
(A)成分と(B)成分と(C)成分との合計質量に対する(C)成分の割合は、60~90質量%が好ましく、65~85質量%がより好ましい。
(A)成分と(C)成分との合計質量に対する(A)成分の割合は、3~40質量%が好ましく、5~20質量%がより好ましい。
【0025】
上記ウレタン化反応は、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(以下、「DPH(M)A」とも記す。)の存在下で行うことができる。
化合物(C1)は一般に、ジペンタエリスリトールと(メタ)アクリル酸とをエステル化反応させることにより製造され、DPH(M)Aとの混合物として生成する。この混合物は、(メタ)アクリロイル基数が異なる複数の化合物(C1)を含み得る。
化合物(C1)とDPH(M)Aとの混合物を用いて上記ウレタン化反応を行うと、水酸基を有さないDPH(M)Aは(B)成分と反応せずにそのまま残存し、本ウレタン(メタ)アクリレートとDPH(M)Aとの混合物が得られる。混合物中のDPH(M)Aは、混合物中の本ウレタン(メタ)アクリレートを中和する際にも反応せずにそのまま残存するので、光硬化性樹脂組成物のモノマーとして利用できる。
【0026】
化合物(C1)とDPH(M)Aとの混合物の水酸基価は、80mgKOH/g以上が好ましい。混合物の水酸基価が大きいほどDPH(M)Aの割合が少ない傾向がある。DPH(M)Aは単独では非水溶性であるが、化合物(C1)とDPH(M)Aとの混合物の水酸基価が80mgKOH/g以上であれば、前記混合物から本ウレタン(メタ)アクリレートとDPH(M)Aとの混合物を得て、前記混合物中の本ウレタン(メタ)アクリレートを中和して得られる、本ウレタン(メタ)アクリレートとDPH(M)Aとの混合物が、水溶性となりやすい。
化合物(C1)とDPH(M)Aとの混合物の水酸基価の上限は、特に限定されないが、例えば130mgKOH/gである。
【0027】
上記ウレタン化反応は、反応時間の短縮の観点から、触媒の存在下で行うことが好ましい。触媒としては、公知のウレタン化触媒を用いることができ、例えばジブチルスズアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート等の有機金属化合物、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン等の塩基性化合物が挙げられる。
【0028】
触媒の使用量は、用いる触媒の活性によって適宜調整することが可能であるが、(A)成分と(C)成分との合計質量に対し、0.01~0.50質量%が好ましく、0.03~0.30質量%がより好ましく、0.05~0.25質量%がさらに好ましい。
【0029】
上記ウレタン化反応は、(メタ)アクリロイル基が反応することを抑制する観点から、熱重合禁止剤の存在下で行うことが好ましい。熱重合禁止剤としては、公知の熱重合禁止剤を用いることができ、例えば2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、4-メトキシフェノールが挙げられる。
【0030】
熱重合禁止剤の使用量は、用いる熱重合禁止剤の活性によって適宜調整することが可能であるが、反応性生成物100質量%に対し、0.01~1.5質量%が好ましく、0.03~1.0質量%がより好ましく、0.03~0.8質量%がさらに好ましい。
【0031】
ウレタン化反応においては、(B)成分中のイソシアネート基の実質的に全てが(A)成分又は(C)成分と反応することが好ましい。
反応物の赤外線吸収スペクトルを測定し、イソシアネート残基に由来する波長2200~2300cm-1の吸収が観察されなくなったことをもって、(B)成分中のイソシアネート基の実質的に全てが(A)成分又は(C)成分と反応したと判断することができる。
【0032】
〔ウレタン(メタ)アクリレートの中和物〕
本発明の一実施形態に係る中和物(以下、「本中和物」とも記す。)は、本ウレタン(メタ)アクリレート中の(A)成分に基づく第3級アミノ基がカルボン酸で中和されたものである。第3級アミノ基がカルボン酸で中和されることで、水溶性が発現する。
【0033】
本中和物においては、第3級アミノ基の全部が中和されていてもよく、一部が中和されていてもよい。水溶性の観点から、本中和物中の全ての第3級アミノ基100モル%に対し、カルボン酸で中和された第3級アミノ基の割合は、80モル%以上が好ましく、95モル%以上がより好ましく、100モル%であってもよい。カルボン酸で中和された第3級アミノ基の割合が高いほど、水溶性に優れる傾向がある。
本中和物中の全ての第3級アミノ基は、カルボン酸で中和された第3級アミノ基と、カルボン酸で中和されていない第3級アミノ基との合計である。
【0034】
カルボン酸としては、カルボキシル基を有し、第3級アミノ基を中和可能なものであればよく、例えば酢酸、アクリル酸が挙げられる。これらのカルボン酸は、1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。カルボン酸としては、水への溶解性の観点から、酢酸、アクリル酸が好ましい。
【0035】
本中和物は、例えば、本ウレタン(メタ)アクリレートとカルボン酸水溶液とを接触させることにより製造できる。
接触時の温度は、例えば20~70℃である。接触時間は、例えば10~60分間である。
本ウレタン(メタ)アクリレートの代わりに本ウレタン(メタ)アクリレートとDPH(M)Aとの混合物を用いてもよい。この場合、本中和物とDPH(M)Aとの混合物が得られる。
【0036】
〔光硬化性樹脂組成物〕
本発明の一実施形態に係る光硬化性樹脂組成物(以下、「本樹脂組成物」とも記す。)は、本中和物と光重合開始剤とを含む。
本樹脂組成物は、重合性不飽和結合を有するモノマーをさらに含むことが好ましい。 本樹脂組成物は、必要に応じて、他の成分をさらに含んでいてもよい。
【0037】
本樹脂組成物に光が照射されると、光重合開始剤の分子内開裂や水素移動により活性種(ラジカルやカチオン)が生成し、前記活性種が本ウレタン(メタ)アクリレートやモノマーに作用して重合又は架橋反応が起こり、本樹脂組成物が硬化する。
【0038】
<光重合開始剤>
光重合開始剤としては、公知の光重合開始剤を用いることができ、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、α-ヒドロキシアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン、2-メチル-2-モルフォリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルエトキシフォスフィンオキサイド、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、ヒドロキシベンゾフェノン、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-S-トリアジン、2-メチル-4,6-ビス(トリクロロ)-S-トリアジン、2-(4-メトキシフェニル)-4、6-ビス(トリクロロメチル)-S-トリアジン、鉄-アレン錯体、チタノセン化合物が挙げられる。これらの光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
<モノマー>
モノマーは、重合性不飽和結合を1個有する単官能モノマーでもよく、重合性不飽和結合を2個以上有する多官能モノマーでもよい。単官能モノマーと多官能モノマーとを併用してもよい。
モノマーは、水溶性モノマーでもよく、非水溶性モノマーでもよい。水溶性モノマーと非水溶性モノマーとを併用してもよい。「水溶性モノマー」とは、水と混和して均一な溶液となるモノマーを示す。
【0040】
単官能モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート等の水酸基含有単官能(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、ジメチルアクリルアミド、イソボルニルアクリレートが挙げられる。
多官能モノマーとしては、例えば、ペンタエリスリトールジ又はトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ、トリ、テトラ又はペンタ(メタ)アクリレート等の水酸基含有多官能(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、DPH(M)A、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートが挙げられる。
これらのモノマーは、1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
モノマーは、表面硬度に優れた硬化膜を形成する観点では、多官能モノマーを含むことが好ましい。多官能モノマーとしては、重合性不飽和結合を3個以上有するモノマーが好ましく、硬度の観点から、DPH(M)Aが特に好ましい。
【0042】
<他の成分>
他の成分としては、熱重合禁止剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、老化防止剤、抗菌剤、防黴剤、消泡剤、レベリング剤、フィラー、増粘剤、密着性付与剤、チキソ性付与剤、光輝材等の添加剤が挙げられる。
【0043】
<各成分の含有量>
本ウレタン(メタ)アクリレート及びモノマーの合計の含有量は、本樹脂組成物の総質量に対し、20~70質量%が好ましく、30~60質量%がより好ましい。
【0044】
本ウレタン(メタ)アクリレート及びモノマーの合計の含有量に対する本ウレタン(メタ)アクリレートの割合は、1~30質量%が好ましく、1~20質量%がより好ましい。本ウレタン(メタ)アクリレートの割合が前記下限値以上であれば、モノマーとして非水溶性モノマー(DPH(M)A等)を含んでいても、本樹脂組成物が水溶性を示しやすい。
【0045】
モノマーがDPH(M)Aを含む場合、DPH(M)Aの含有量は、本樹脂組成物中の本ウレタン(メタ)アクリレートを形成する化合物(C1)と、DPH(M)Aとの混合物の水酸基価が80mgKOH/g以上となる量が好ましい。混合物の水酸基価が大きいほどDPH(M)Aの割合が少ない傾向がある。DPH(M)Aは単独では非水溶性であるが、化合物(C1)とDPH(M)Aとの混合物の水酸基価が80mgKOH/g以上であれば、本樹脂組成物が水溶性を示しやすい。
化合物(C1)とDPH(M)Aとの混合物の水酸基価の上限は、特に限定されないが、例えば130mgKOH/gである。
【0046】
光重合開始剤の含有量は、本樹脂組成物の総質量に対し、0.5~7.0質量%が好ましく、1~5質量%がより好ましい。光重合開始剤の含有量が前記下限値以上であれば、本樹脂組成物の光硬化性がより優れ、前記上限値以下であれば、本樹脂組成物の保存安定性がより優れる。
【0047】
本樹脂組成物は、本ウレタン(メタ)アクリレートと、光重合開始剤と、必要に応じてモノマー及び他の成分を混合することにより製造できる。各成分の混合順序は特に限定されない。モノマーがDPH(M)Aを含む場合、本ウレタン(メタ)アクリレートとDPH(M)Aとの混合物を用いて本樹脂組成物を製造してもよい。
【0048】
本樹脂組成物は、光を照射することで硬化させて硬化物とすることができる。
光としては、可視光線、紫外線、プラズマ、赤外線、電離放射線等が挙げられる。これらの中では、照射装置が広く普及している観点から、紫外線が好ましい。
光の照射条件は、使用する光源に応じて適宜選定できる。紫外線を照射する場合の積算光量は、例えば50~1000mJ/cm2である。
【0049】
〔液状組成物〕
本発明の一実施形態に係る液状組成物(以下、「本液状組成物」とも記す。)は、本樹脂組成物と水とを含む。本液状組成物は典型的には水溶液状である。
本液状組成物中の本樹脂組成物の含有量は、例えば、本液状組成物の総質量に対し、10~60質量%である。
【0050】
本液状組成物は、必要に応じて、水以外の他の非反応性希釈剤をさらに含んでいてもよい。非反応性希釈剤は、重合性不飽和結合を有さず、常温で液状の化合物である。他の非反応性希釈剤としては、水と相溶可能なものが好ましく、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテルが挙げられる。
水系の概念を考慮すると、本液状組成物100質量%中の他の非反応性希釈剤の含有量は、15質量%以下が好ましく、0質量%が特に好ましい。
【0051】
本液状組成物は、例えば、本樹脂組成物の硬化物からなる塗膜の形成に用いることができる。任意の基材の表面に本液状組成物を塗布し、乾燥することで本樹脂組成物からなる塗膜を形成し、前記塗膜に光を照射して硬化させることで、本樹脂組成物の硬化物からなる塗膜(硬化塗膜)が得られる。
基材としては、例えば樹脂、フィルム、シート、成型物が挙げられる。樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂が挙げられる。
塗布方法としては、公知の塗布方法を適宜採用でき、例えばスプレーコート、スピンコート、グラビヤコートが挙げられる。
乾燥条件としては、水等の非反応性希釈剤を除去できればよく、例えば60~110℃で0.5~10分間の条件が挙げられる。
光の照射条件は前記と同様である。
塗膜の厚さ(乾燥後)は、例えば1~10μmとすることができる。
【実施例】
【0052】
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明する。
以下において「部」は「質量部」、「%」は「質量%」を示す。
「ジペンタエリスリトールアクリレート混合物」は、アクリロイル基の数が異なる複数のジペンタエリスリトールアクリレートの混合物であり、水酸基を有するジペンタエリスリトールポリアクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)を含み、水酸基価が80mgKOH/gのものを用いた。
ウレタンアクリレート・DPHA含有混合物におけるウレタンアクリレートとDPHAとの比率は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)の面積比である。
【0053】
[製造例1]
温度計、冷却管、攪拌装置を備えた4口フラスコに、ジペンタエリスリトールアクリレート混合物の640部と、2-(ジメチルアミノ)エタノール42部と、ジブチルスズジラウレート0.2部と、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール0.8部と、ヘキサメチレンジイソシアネート136部とを投入し、充分に攪拌した後、70℃に昇温し、約24時間攪拌加熱して反応させた。反応後、赤外線吸収スペクトル測定によりイソシアネート残基が観測されなくなったのを確認した。このようにして、ウレタンアクリレートとDPHAとを含む混合物(以下、「ウレタンアクリレート・DPHA含有混合物」とも記す。)を得た。ウレタンアクリレート・DPHA含有混合物におけるウレタンアクリレートとDPHAとの比率は、ウレタンアクリレート:DPHA=55:45であった。
【0054】
[製造例2、比較製造例1~4]
4口フラスコに投入する材料の種類及び量を表1に示す配合に従って変更した以外は製造例1と同様にしてウレタンアクリレート・DPHA含有混合物を得た。ただし、比較製造例2~3では、(C)成分の代わりに比較品を用いたので、得られた混合物はDPHAを含まない。表1に、各製造例のウレタンアクリレート・DPHA含有混合物におけるウレタンアクリレートとDPHAとの比率を示す。
【0055】
[実施例1]
攪拌装置を備えたフラスコに、製造例1で得たウレタンアクリレート・DPHA含有混合物の35部と、光重合開始剤(2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン、IGM Resins B.V.社製品名「Omnirad 2959」)(以下、単に「Omnirad 2959」と記す。)の1.1部と、80%酢酸の1.8部と、水の66部とを投入し、約1時間攪拌して液状組成物を得た。攪拌後の液状組成物は淡黄色透明であった。
得られた液状組成物を、厚さ100μmのフィルム状の易接着PETに、乾燥後の膜厚が5μmになるように塗布し、100℃で乾燥して塗膜を形成した。その後、塗膜に対して紫外線を、積算光量が500mJ/cm2となるように照射して硬化塗膜を得た。
【0056】
[実施例2~3]
フラスコに投入する材料の種類及び量を表2に示す配合に従って変更した以外は実施例1と同様にして液状組成物を得た。表2中、「ACMO」は、アクリロイルモルフォリンを示す。攪拌後の液状組成物はいずれも淡黄色透明であった。
得られた液状組成物を、厚さ100μmのフィルム状の易接着PETに、乾燥後の膜厚が5μmになるように塗布し、100℃で乾燥して塗膜を形成した。その後、塗膜に対して紫外線を、積算光量が500mJ/cm2となるように照射して硬化塗膜を得た。
【0057】
[比較例1~4]
フラスコに投入する材料の種類及び量を表2に示す配合に従って変更した以外は実施例1と同様にして液状組成物を得た。液状組成物はいずれも、撹拌後も相分離を起こしたままで、透明にはならなかった。
【0058】
[評価]
各例の液状組成物及び硬化塗膜について、以下の評価を行った。結果を表2に示す。なお、水溶性の評価がBであった比較例1~4については、水溶性以外の評価は行わなかった。
【0059】
<水溶性>
光硬化性樹脂組成物(各例の液状組成物から水を除いた残部)の水溶性を以下の基準で評価した。
A:液状組成物が約1時間の攪拌後に透明になっており、その後、7日間放置しても分離等の現象が発生しなかった。
B:液状組成物が約1時間の攪拌後に透明になっていなかった。
【0060】
<硬化性>
光硬化性樹脂組成物の硬化性を以下の基準で評価した。
A:積算光量500mJ/cm2の紫外線の照射で塗膜が硬化した。
B:積算光量500mJ/cm2の紫外線の照射で塗膜が硬化しなかった。
ここで、塗膜が硬化したことは、指触タックの喪失により確認した。
【0061】
<鉛筆硬度>
硬化塗膜の表面の鉛筆硬度をJIS K 5600-5-4に従って測定した。
【0062】
<レベリング性>
液状組成物のレベリング性を以下の基準で評価した。
A:液状組成物を易接着PETに塗布したときに、ハジキ等が発生せず、表面の平滑な硬化塗膜が得られた。
B:液状組成物を易接着PETに塗布したときに、ハジキ等が発生し、表面の平滑な硬化塗膜が得られなかった。
【0063】
【0064】
【0065】
製造例1~2で得たウレタンアクリレート・DPHA含有混合物を用いた実施例1~3では、光硬化性樹脂組成物が水溶性を示した。また、光硬化性樹脂組成物の硬化性、硬化塗膜の表面硬度、液状組成物のレベリング性に優れていた。
比較製造例1~4で得たウレタンアクリレート・DPHA含有混合物を用いた比較例1~4では、光硬化性樹脂組成物が水溶性を示さなかった。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明のウレタン(メタ)アクリレートは、中和したときに水溶性を示し、水溶液化が可能である。水溶液化することで、水分散液の場合に比べて、レベリング性が向上し、塗膜の表面平滑性及び硬化後の塗膜物性(表面硬度等)の向上が期待できる。
本発明のウレタン(メタ)アクリレートは、ハードコート剤、架橋剤等として利用できる。