(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】複数歯ドグを持つリールロック
(51)【国際特許分類】
B60R 22/38 20060101AFI20220315BHJP
B60R 22/28 20060101ALI20220315BHJP
B60R 22/32 20060101ALI20220315BHJP
【FI】
B60R22/38
B60R22/28 105
B60R22/32 102
(21)【出願番号】P 2018510121
(86)(22)【出願日】2016-08-19
(86)【国際出願番号】 US2016047695
(87)【国際公開番号】W WO2017034945
(87)【国際公開日】2017-03-02
【審査請求日】2019-07-16
(32)【優先日】2015-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505340881
【氏名又は名称】コブハム・ミッション・システムズ・ダベンポート・エルエスエス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100096725
【氏名又は名称】堀 明▲ひこ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100171697
【氏名又は名称】原口 尚子
(72)【発明者】
【氏名】フォード、ブライアン
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0321550(US,A1)
【文献】米国特許第06267315(US,B1)
【文献】特開平11-321555(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0160948(US,A1)
【文献】特開2009-214693(JP,A)
【文献】特表2010-506773(JP,A)
【文献】実開平06-022122(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 22/00 - 22/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェビングの変位を制御するためのリールアセンブリであって、
ギア付きエンドプレートを備える、ウェビングが周りに巻き付けられるウェビングシャフトであって、該ウェビングシャフトの回転によりウェビングの変位を制御する、ウェビングシャフトと、
前記ギア付きエンドプレートに枢着される、枢動された姿勢及び枢動されない姿勢を有する、少なくとも一つのロッキング爪と、
該ロッキング爪に固定される較正ばねであって、前記ロッキング爪を、前記枢動されない姿勢に付勢するが、前記ウェビングシャフトが第1の大きさを持つ力を受けたときに前記枢動された姿勢に移すバイアスをもつ、較正ばねと、
前記ギア付きエンドプレートの周囲に位置し、それに独立して回転可能であるが、摩擦力又はばねにより前記ウェビングシャフトに対して回転制限を受けるロッキングリングであって、前記枢動された姿勢にある前記ロッキング爪と係合するギアを内周囲にそって有するロッキングリングと、
前記ウェビングの変位を防ぐために前記ギア付きエンドプレート上の第1及び第2のロッキング表面のそれぞれと順にロックし、係合する第1及び第2のロッキング歯を持つロッキングドグと、
前記ロッキングドグと係合する、前記ウェビングシャフトに隣接して配置されるロッキングボルトであって、前記ロッキングドグを前記ギア付きエンドプレートと係合させる係合位置と、その係合を解除する係合解除位置と有し、前記ウェビングの変位を防ぐために前記係合位置へと移動する前記ロッキングボルトと、
を含み、
前記ウェビングシャフトが前記第1の大きさを持つ力を受けるとき、前記ウェビングシャフトの回転が、前記枢動された姿勢の前記それぞれのロッキング爪と前記ロッキングリングの内周囲にそって有する前記ギアとの係合により阻止され、
及び、前記ウェビングシャフトが第2の大きさを持つ力を受けるとき、前記ウェビングシャフトの回転が、前記ロッキングドグの前記第1のロッキング歯が前記ギア付きエンドプレート上の前記第1のロッキング表面と係合することにより初め部分的に阻止され、その後前記第1及び第2のロッキング歯がそれぞれ第1及び第2のロッキング表面に組合せ係合することにより完全に阻止され、
前記第2の大きさは前記第1の大きさよりも大きく、
前記第1の大きさを持つ力は、前記ロッキングリングの回転制限を与える摩擦力又はばね力より小さく、前記第2の大きさを持つ力は前記ロッキングリングの回転制限を与える摩擦力又はばね力より大きく、
前記第1のロッキング歯が前記第1のロッキング表面に係合した当初は前記第2のロッキング歯と前記第2のロッキング表面の間にギャップが形成され、
その後前記ギャップは、
a)前記第1のロッキング歯と前記第1のロッキング表面との係合により前記第1のロッキング表面が歪んで前記第2のロッキング歯が前記第2のロッキング表面に係合すること、又は
b)前記第1のロッキング歯と前記第1のロッキング表面と係合により前記第1のロッキング歯が歪んで前記第2のロッキング歯が前記第2のロッキング表面に係合すること
のいずれかにより閉じられる、リールアセンブリ。
【請求項2】
前記ギャップは、約0.1インチ~0.001インチ(0.254cm~0.00254cm)の間にあるように選択される、請求項1に記載のリールアセンブリ。
【請求項3】
前記ロッキングボルトが細長い切欠きを含み、前記ロッキングドグが前記細長い切欠き内に重なる先端を含み、前記ロッキングボルトが前記係合位置にあるときに、前記細長い切欠きの幾何学的形状が、前記ロッキングドグを前記ギア付きエンドプレートと係合させる、請求項1に記載のリールアセンブリ。
【請求項4】
さらに、
前記ロッキングリングの内側面上に配置されたランプと、
前記ウェビングシャフトが前記第2の大きさを持つ力を受けるとき前記ロッキングリングの回転により、前記ランプと係合し、前記ロッキングボルトを前記係合位置に移動させるためのトリガと、を含む請求項3に記載のリールアセンブリ。
【請求項5】
さらに、
前記ロッキングボルトを前記係合位置に移動させるためのトリガと、
前記第2の大きさを持つ力を受けるときに前記トリガを始動する加速度計と、をさらに含む請求項3に記載のリールアセンブリ。
【請求項6】
前記ロッキングドグは前記ギア付きエンドプレートに隣接して枢着され、
前記ロッキングボルトが前記係合解除位置にあるとき
前記ロッキングドグが前記ギア付きエンドプレートから解除され、
前記ロッキングボルトが前記係合位置にあるとき
前記ロッキングドグが前記ギア付きエンドプレートと係合し、前記ギア付きエンドプレートに係合する前記ロッキングドグにより前記ウェビングの前記ウェビングシャフトからの変位が防止される、請求項3に記載されたリールアセンブリ。
【請求項7】
前記第2のロッキング歯が前記第1のロッキング歯に対して角度を成す、請求項1に記載のリールアセンブリ。
【請求項8】
ウェビングの変位を制御するリールアセンブリであって、
エンドプレートを備え、ウェビングが巻回されるウェビングシャフトと、
ロック姿勢とロック解除姿勢とを持つ、前記エンドプレートに枢着される爪であって、前記ウェビングシャフトが第1の大きさを持つ力を受けると前記ロック姿勢になる爪と、
前記エンドプレートの周囲に配置され、摩擦力又はばねにより前記ウェビングシャフトに対して回転制限を受ける、内周囲部を有するロッキングリングであって、前記ウェビングシャフトが前記第1の大きさを持つ力を受け、前記爪が前記ロック姿勢になると、前記爪が前記ロッキングリングの前記内周囲部に係合することにより、前記ウェビングシャフトの回転を阻止する、ロッキングリングと、
第1及び第2のロッキング歯を有するロッキングドグであって、前記ウェビングシャフトが第2の大きさを持つ力を受けるときに前記ロッキングリングの回転時のウェビングの変位を防止するために、前記第1及び第2のロッキング歯が前記エンドプレート上のそれぞれの第1及び第2のロッキング表面に順にロックし係合する、ロッキングドグと、
を含み、
前記ウェビングシャフトが第2の大きさを持つ力を受けるとき、前記ウェビングシャフトの回転が、前記ロッキングドグの前記第1のロッキング歯が前記エンドプレート上の前記第1のロッキング表面と係合することにより初め部分的に阻止され、その後前記第1及び第2のロッキング歯がそれぞれ第1及び第2のロッキング表面に組合せ係合することにより完全に阻止され、
前記第2の大きさは前記第1の大きさよりも大きく、
前記第1の大きさを持つ力は、前記ロッキングリングの回転制限を与える摩擦力又はばね力より小さく、前記第2の大きさを持つ力は前記ロッキングリングの回転制限を与える摩擦力又はばね力より大きく、
前記第1のロッキング歯が前記第1のロッキング表面に係合した当初は前記第2のロッキング歯と前記第2のロッキング表面の間にギャップが形成され、
その後前記ギャップは、
a)前記第1のロッキング歯と前記第1のロッキング表面との係合により前記第1のロッキング表面が歪んで前記第2のロッキング歯が前記第2のロッキング表面に係合すること、又は
b)前記第1のロッキング歯と前記第1のロッキング表面との係合により前記第1のロッキング歯が歪んで前記第2のロッキング歯が前記第2のロッキング表面に係合すること
のいずれかにより閉じられる、リールアセンブリ。
【請求項9】
前記エンドプレートと前記ロッキングリングの両方がギア付きであり、
前記ウェビングシャフトが前記第1の大きさを持つ力を受け、前記爪が前記ロック姿勢になると、前記爪が前記ロッキングリングの前記ギアに係合し、
前記ウェビングシャフトが第2の大きさを持つ力を受けるとき、前記ロッキングドグの前記第1および2のロッキング歯が前記エンドプレートの前記ギアの上の前記第1および2のロッキング表面に順に係合する、
請求項8に記載のリールアセンブリ。
【請求項10】
前記エンドプレート及び前記ロッキングリングは、互いに独立して回転する、請求項9に記載のリールアセンブリ。
【請求項11】
前記爪に固定された較正ばねをさらに備え、
該較正ばねは、前記爪をロック解除姿勢に付勢するが、前記ウェビングシャフトが前記第1の大きさを持つ力を受けたとき、前記爪をロック姿勢に移すバイアスをもつ、請求項8に記載のリールアセンブリ。
【請求項12】
前記ロッキングドグをトリガするのに使用される加速度計をさらに備える、請求項8に記載のリールアセンブリ。
【請求項13】
前記ギャップが、約0.1インチ~0.001インチ(0.254cm~0.00254cm)の間にあるように選択される、請求項8に記載のリールアセンブリ。
【請求項14】
ウェビングの変位を制御するリールアセンブリであって、
エンドプレートを備え、ウェビングが巻回されるウェビングシャフトと、
第1及び第2のロッキング歯を有するロッキングドグであって、前記ウェビングシャフトが所定の大きさの力を受けるときにロッキングリングの回転時のウェビングの変位を防止するために、前記第1及び第2の各ロッキング歯が前記エンドプレート上のそれぞれの第1及び第2のロッキング表面に順にロックし係合するように構成される、ロッキングドグと、
を含み、
前記ウェビングシャフトが前記所定の大きさの力を受けるとき、前記ウェビングシャフトの回転が、前記ロッキングドグの前記第1のロッキング歯が前記エンドプレート上の前記第1のロッキング表面と係合することにより初め部分的に阻止され、その後前記第1及び第2のロッキング歯がそれぞれ第1及び第2のロッキング表面に組合せ係合することにより完全に阻止され、
前記第1のロッキング歯が前記第1のロッキング表面に係合した当初は前記第2のロッキング歯と前記第2のロッキング表面の間にギャップが形成され、
その後前記ギャップは、
a)前記第1のロッキング歯と前記第1のロッキング表面との係合により前記第1のロッキング表面が歪んで前記第2のロッキング歯が前記第2のロッキング表面に係合すること、又は
b)前記第1のロッキング歯と前記第1のロッキング表面との係合により前記第1のロッキング歯が歪んで前記第2のロッキング歯が前記第2のロッキング表面に係合すること
のいずれかにより閉じられる、リールアセンブリ。
【請求項15】
前記ロッキングドグをトリガする際に使用される加速度計をさらに備える、請求項14に記載のリールアセンブリ。
【請求項16】
前記ギャップが、約0.1インチ~0.001インチ(0.254cm~0.00254cm)の間にあるように選択される、請求項14に記載のリールアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.技術分野
【0002】
本発明は、乗員拘束システムと共に使用するためのリールロックに関する。より詳細には、本発明は、二重ロッキング機構を有するリールアセンブリ内で使用するための改良されたロッキングドグに関し、重大ではない事象中に不要な「煩わしいロッキング」を引き起こすことなく、主要な事象中に乗員を拘束することができる。
【背景技術】
【0003】
2.背景技術の説明
【0004】
ハーネスリールの使用が、背景技術において知られている。例えば、Friskの米国特許第4,801,105号は、ショルダーハーネスを引き込んで係止するためのリールアセンブリを開示している。アセンブリは、爪車に取り付けられたストラップ支持スプールを含む。ストラップがリールから急速に引き出されると、慣性質量がリールに対して回転する。これにより、慣性質量が軸方向に前方に移動し、リールを係止するドグを動かす。
【0005】
同様に、Warrickの米国特許第5,636,807号は、慣性ウェイトを使用する航空機用の加速度センサを開示している。慣性ウェイトは、リンク機構を介してチャンバ内で移動可能である。リンク機構は、航空機の複数の方向への移動に応答して同じ出力を提供するようなものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらの発明はそれぞれの目的を達成しているが、異なるイベントに応答して独立にトリガ及び解除することができる別個のロッキング機構を備えたリールアセンブリの必要性が当該分野で依然として存在する。さらに、リールに提供される任意の長さのウェビングについて、スプール上のウェビングの90%で少なくとも5,000重量ポンドを保持することができる改良されたロッキングドグが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って、本発明の目的の1つは、別個のロッキング機構を備えたリールアセンブリを提供することである。
【0008】
本発明の別の目的は、第1及び第2のロッキング機構を備えたリールを提供することであり、第1の機構は大きなインシデントに応答してトリガされ、第2の機構は小さなインシデントに応答してトリガされる。
【0009】
本発明の別の目的は、大きなインシデントの後にリールをリセットするためにリセットボタンにアクセスすることをユーザに要求することである。
【0010】
本発明のさらなる目的は、ハーネスウェビングにカウンタテンションを加えることにより軽微なインシデントの後にリールアセンブリをリセットすることを可能にすることである。
【0011】
本発明のさらなる目的は、MIL‐R‐8236Fの要求に従ってスプール上のウェビングの90%で最低限5,000重量ポンドをリールアセンブリが保持できるようにすることである。
【0012】
前述のことは、以下の本発明の詳細な説明がよりよく理解されるように、本発明のより適切かつ重要な特徴をある程度広範に概説しているので、当該技術への現在の貢献がより十分に理解され得る。本発明の追加の特徴が以下に記載され、本発明の特許請求の範囲の目的を形成する。当業者は、開示された概念及び特定の実施形態が、本発明の同じ目的を実行するための他の構造を修正又は設計するための基礎として容易に利用され得ることを理解するであろう。また、当業者は、そのような均等な構成が、添付の特許請求の範囲に記載された本発明の思想及び範囲から逸脱しないことも理解するであろう。
【0013】
本発明の性質および目的をより十分に理解するために、添付の図面に関連して以下の詳細な説明が参照されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明のリールアセンブリの斜視図である。
【
図2】
図2は、ロック解除姿勢のリールアセンブリの第1のロッキング機構を示す断面図である。
【
図3】
図3は、ロック姿勢のリールアセンブリの第1のロッキング機構の断面図である。
【
図4】
図4は、ロック解除姿勢のリールアセンブリの第2ロッキング機構の断面図である。
【
図5】
図5は、ロック姿勢のリールアセンブリの第2ロッキング機構の断面図である。
【
図6】
図6は、第1及び第2のロッキング機構の両方を示すリールアセンブリの部分分解図である。
【
図7】
図7は、ロック解除姿勢の第1のロッキング機構アセンブリの斜視破断図である。
【
図8】
図8は、ロック姿勢の第1のロックキング機構の斜視破断図である。
【
図9】
図9は、本発明の別の態様による二重歯のあるドグの斜視図である。
【
図10】
図10は、
図9の線10‐10沿って一様に取られた二重歯のあるドグの断面図である。
【
図11】
図11は、本発明のさらなる態様に従って、ギア付きエンドプレートと係合した、
図9に示された二重歯ドグの断面分離図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
同様の参照符号は、図面のいくつかの図を通して同様の部分を指す。
【0016】
本発明は、乗物の乗員拘束システムと連結して使用するための改良されたリールアセンブリに関する。このアセンブリは、重大インシデントおよび軽微インシデントの両方で乗員を拘束することができる二重ロッキング構成を採用する。衝突のような大きなインシデントの後、リールアセンブリは、乗員がプッシュボタンにアクセスしてリールを係合解除するまで、ロックされたままである。倒れ込みのような軽微なインシデントの後、プッシュボタンにアクセスする必要なく、拘束ウェビングにカウンタテンションを加えることによって、リールアセンブリを容易にロック解除することができる。以下、本発明の詳細をさらに十分に説明する。
【0017】
図1を参照すると、本発明の改良されたリールアセンブリが示されている。リールアセンブリ20は、ある長さのウェビング24及び関連するロッキング及び巻取り機構を含むハウジング22を含む。これらの機構は、ウェビング24の引き出し及び収縮を制御し、以下により詳細に説明される。クリップ、留め具又はカラビナのような取付け具26をウェビング24の端部に取付け、腰ベルト又はボディハーネスのような乗員拘束具にウェビング24を固定するのに使用することができる。
【0018】
リールアセンブリ20は、多種多様な乗物拘束システムのいずれかとともに使用することができる。例えば、リールアセンブリ20は、Van Druffらの米国特許第7,275,710号(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている航空機乗務員拘束システムに関連して使用することができる。この点に関して、リールアセンブリ20は、アセンブリを航空機乗務員室の内側に固定するための1つ以上の取り付け開口部を含む。リールは、同様に、自動車又はボート等の他の乗物内に容易に固定することができる。
【0019】
拘束システムに関連して使用されるとき、リールアセンブリ20は、大きなインシデント及び小さなインシデントの両方で乗員を拘束する働きをする。「大きなインシデント」は、一般に、ウェビング24に100ポンド以上の力が加えられるような事象として定義される。例えば、大きなインシデントは、ハーネスをつけた乗務員が高度の急激な変化又は過剰なG力に遭遇したときに発生し得る。対照的に、「小さなインシデント」は、一般に、100ポンド未満の力がウェビング24に加えられるような事象として定義される。例えば、小さなインシデントは、ハーネスをつけた乗務員が乗務員室内で動く又は倒れ込むときに発生する場合がある。リールアセンブリ20は、小さなインシデント及び大きなインシデントに対して2つの異なるロッキング機構を使用する。
【0020】
大きなインシデントによって作動する第1のロッキング機構は、
図2及び
図3の断面図に示されている。図示されているように、アセンブリは、ウェビング24を巻き付けたり解いたりすることができるシャフト28を含む。シャフト28は、ギア付きエンドプレート32を含む。
図4及び
図5に示すように、エンドプレート32は、周縁ロッキングリング34に対面する関係で固定される。大きなインシデントがない場合、ウェビング24がシャフト28から引き出されたり収縮されるのに従って、エンドプレート32はロッキングリング34とともに回転する。しかしながら、大きなインシデントの間、ロッキングリング34は、シャフト28及びエンドプレート32とは独立に回転可能である。言い換えると、100ポンドを超える力がウェビング24に加えられると、ロッキングリング34はエンドプレート32の面に沿って並ぶ。この点について、リング34及びエンドプレート32は、ウェビング24のあまり強力でない引き出しの間、リング34及びプレート32と係合させる摩擦クラッチを介して接続され得る。適切な接続を提供するためにばねを使用することもできる。そのような接続の1つがFriskの米国特許第4,955,556号に記載され、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。これらの機構のいずれを採用しても、ウェビング24の迅速な引き出しは、ロッキングリング34をシャフト28の回転よりもわずかに遅れて回転させる。理想的には、この機構は、リング34の独立した回転を引き起こすのに必要な力が調節可能であるようなものである。このようにして、大きなインシデントをトリガするのに必要な閾値を調整することができる。
【0021】
第1のロッキング機構は、トリガ38と、リング34とシャフト28との間に配置されたトリガレバー52を含む相互接続されたロックシリンダをさらに含む。ロッキングリング34をシャフト28に対して回転させると、トリガ38がリング34の内側面の傾斜ランプ36に係合する。
図6は、リング34の相対回転中にランプ36に係合するトリガ38を示す。これは、ハウジング20の長さに平行な方向にトリガ38と接続されたトリガレバー52との両方を移動させる結果となる。トリガレバー52は、さらに、ロッキングボルト42に接続される。トリガレバー52の動きによって、ロッキングボルト42が下方に摺動することができる。
図7及び
図8に示すように、ボルト42は、切欠き44を含み、ハウジング46内に収容される。
【0022】
続けて
図7及び
図8を参照し、ボルト42は、概して矢印43で示す方向にばね50によってハウジング46の外部に向かって付勢される。従って、大きなインシデントの間に、トリガ38がランプ40に係合すると、トリガレバー52がボルト42に関して軸方向に移動される。これは、次に、ボルトがばね50の付勢によりハウジング46内で外向きに移動できるようにする。ボルト42の摺動運動は、主ロッキングドグ48の枢動をトリガする。より具体的には、ボルト42が外方にスライドすると、ロッキングドグ48の一部が切欠き44の拡張部分と対面する。これは、次に、ドグの
先端がギア付きエンドプレート32の歯と係合するように、ばねがロッキングドグ48を枢動できるようにする。
【0023】
さらに、
図7及び
図8に示すように、ボルト42の外側への移動はまた、プッシュボタン54を保護ハウジング56内でアクセス可能にする。従って、大きなインシデントが発生した後、ウェビングシャフト32はロッキングドグ48によってロックされたままであり、それによりシャフト28の回転及びウェビング24のさらなる引き出しを制止することができる。これは、関連するハーネス内の乗員の動きを抑制するのに役立つ。ウェビングシャフト28は、乗員がボタン54にアクセスして押すまでロックされたままである。ボタン54を押圧することにより、ボルト42は、矢印43で示されるのと反対の方向にスライドされ、それにより、ロッキングドグ48及びトリガ38を係合解除することができる。その結果、第1のロッキング機構がリセットされ、ウェビング24は、上述のように再び引き出され、又は引き込まれることができる。
【0024】
小さなインシデントによって起動される第2のロッキング機構が次に、
図4及び
図5とともに説明される。これらの図は、ギア付きエンドプレート32の面に枢着される一連の爪58を示す。プレート32に連結されているが、爪58の
先端は、ロッキングリング34の内周に周状に配置された凹部64に係合するように適合されている。爪58は、較正ばね62を介して係合解除状態に維持される。これらのばね62は、エンドプレート32と爪58の
先端との間に相互接続される。ばねの力は、所定の求心力に遭遇するまで(すなわち、小さなインシデントの発生により)、爪58が係合解除姿勢に維持されるようなものである。このような力に遭遇すると、爪58は外方向に枢動して凹部64に係合する。これにより、シャフト28の回転、ひいてはウェビング24のさらなる移動が防止されるであろう。この姿勢において、乗員は拘束される。
【0025】
小さなインシデントが発生した後、爪58は、ウェビング24に単にカウンタテンションを加えることによってリセットされ得る。すなわち、ウェビング24を引き戻すことによって、爪58の先端が凹部64から取り外され、その後、ばね62は、爪58を係合解除された姿勢に回転させる働きをする。そしてウェビングシャフト32は自由に回転し、乗員は航空機内を自由に移動することができる。
【0026】
代替的な実施形態
【0027】
次に、本発明の具体的な実装について、
図1~8を参照して説明される。主な実施形態の場合と同様に、この実装は、大きなインシデント及び小さなインシデントの両方において、ある長さのウェビング24の変位を制御することにより乗物の乗員を拘束するための二重ロッキング機構を含む。従来のように、ウェビング24は、その
先端に、ハーネス又は他の拘束システムに解除可能に固定され得るウェビング留め具26を含む。
【0028】
ウェビング24は、リールアセンブリ20の内部のウェビングシャフト28に巻かれる。
図2に示すように、シャフト28は一端にギア付きプレート32を含む。拘束された乗員が乗物において移動できるように、十分な長さのウェビング24が含まれる。第1の意義におけるシャフト28の回転は、ウェビング24の変位と、乗物内の乗員の自由な移動を可能にするのに十分な弛緩の生成とをもたらす。同様に、反対の意義におけるシャフト28の回転は、乗員の移動を制限するように弛みを取り除く。以下により詳細に説明するように、2つの別個の機構がシャフト28の回転の防止にかかわる。これらのメカニズムは、乗員が倒れ込む事象(小さなインシデント)、又は乗物が事故に関わる事象(大きなインシデント)におけるいずれの移動からも乗員を効果的に拘束する。
【0029】
図4及び
図5に示すように、一対のロッキング爪58がギア付きエンドプレート32に枢着される。
図4は、枢動されない姿勢の爪58を示しており、
図5は、枢動された姿勢の爪58を示している。較正ばね62が各ロッキング爪58に固定され、爪58を非枢動姿勢に付勢する働きをする。ウェビングシャフト28が所定の速度で回転されと、これらのばねの付勢に求心加速度が打ち勝ち得る。このような力が生ずると、爪58は、枢動姿勢へ外方向に押しやられ、それによって爪58の少なくとも1つが周囲のロッキングリング34に係合する(
図5参照)。
【0030】
図示されているように、ロッキングリング34は、爪58の1つと係合するように適合されたギア付き内周を含む。ロッキングリング34はまた、関連するランプ36を有する外側表面を含む(
図6参照)。このランプの機能は、以下でより詳細に説明される。ロッキングリング34は、ギア付きエンドプレート32の周りに配置され、それに対して独立して回転可能である。しかしながら、ロッキングリング34とロッキング爪58とは、ロッキング爪58の一つがロッキングリング34のギア付き内周に係合されると一緒に回転する。これが起こると、ウェビングシャフト28の回転は、ロッキングリング34の対応する回転を引き起こす。ロッキングリング34の回転に抵抗するために、ばね区画40及び内部ばねが含まれている。
【0031】
次に、ロッキングボルト42の動作について、
図7及び
図8に関連して説明される。ロッキングボルト42は、その長さに沿って細長い切欠き44を含み、ウェビングシャフト28に隣接して配置される。ロッキングボルト42は、係合位置と係合解除位置との両方を有する。ばね50は、ロッキングボルト42を係合位置に付勢するために使用される。引き続き
図7及び
図8を参照して、トリガ38及びトリガレバー52は、ロッキングボルト42に作動的に連結され、ロッキングボルト42をその係合解除姿勢又はその係合姿勢のいずれかに保持するように動作する。より具体的に、トリガレバー52は、ロッキングボルト42の下側の範囲に係合し、それをばね50の付勢に抗して係合解除位置に維持する。
【0032】
図6を参照すると、トリガ38は、ロッキングリング34の延長した回転の間、ロッキングリング34の外側表面上のランプ36と係合するように適合されていることが分かる。すなわち、トリガ38は、ロッキングリング34が45度を超えて回転するとランプ36に係合する。これが起こると、トリガレバー52が一時的にロッキングボルト42を係合解除するように、トリガ38とトリガレバー52の両方が枢動する。トリガレバー52のこの変位は、ばね50がロッキングボルト42を係合位置に押し込むことを可能にする。このロッキングボルト42の移動は、次に、ロッキングドグ48がギア付きエンドプレート32と係合して、ウェビング24の更なる変位を禁止することを可能にする。
【0033】
ロッキングドグ48は、ギア付きエンドプレート32に隣接して枢着され、ロッキングボルト42の細長い切欠き44内に重なる
先端を有する。
図7に示されるように、細長い切り欠き44は、ロッキングボルト42が係合解除位置にあるときに、ロッキングドグ48がギア付きエンドプレート32に係合するのを防止する。しかしながら、ロッキングボルト42が係合位置にあるとき、細長い切欠き44の幾何学的形状は、ロッキングドグ48がギア付きエンドプレート32に係合することを可能にする(
図8に示す)。ロッキングドグ48がそのように係合されることにより、ウェビング24がウェビングシャフト28からずれることが防止され、乗員が効果的に拘束される。
【0034】
動作中、ウェビングシャフト28が所定の速度で回転すると、ロッキング爪58が枢動された姿勢に移り、ロッキングリング34に係合する。これにより、ウェビング24のウェビングシャフト28に対する変位が規制され、乗員が拘束される。このレベルの拘束は、乗客が転ぶ、又は倒れるような小さなインシデントの際にトリガされる。ロッキング爪58は、張力がウェビング内に残っている限り、ロッキングリング34内に係合したままである。ロッキング爪58は、アセンブリをリセットするためにウェビング24にカウンタテンションを加えることによって係合解除することができる。
【0035】
車両事故のような大きなインシデントの際、ウェビング24にかかる力は、ロッキング爪58をロッキングリング34に係合させ、さらに、ロッキングリング34を45度以上回転させるであろう。この回転は、順次トリガ38をランプ36に係合させ、それによってトリガレバー52が変位するであろう。
図8に示すように、その後、ばね50がロッキングボルト42を係合位置に移すことが可能になり、ロッキングドグ48がギア付きエンドプレート32に係合することができるであろう。ロッキングドグ48が完全に係合すると、ウェビング24の更なる変位が防止され、乗員が完全に拘束される。従って、大きなインシデントの際に、乗員は完全に拘束される。ユーザは、その後、ロッキングボルト42の端部の押しボタンを介してロッキングドグ48を解除することができる。上記に加えて、トリガ38は、別個の加速度計64によって始動されてもよい。この加速度計64は、ロッキングドグ48をトリガし、及び大きなインシデントの際にウェビングシャフト28の回転を防止する別の独立した手段を提供する。
【0036】
図9~11を参照すると、改善されたロッキングドグ70が示されている。ロッキングドグ70は、上述したロッキングドグ48と同様であるが、第1のロッキング歯74及び第2のロッキング歯76を画成する段付きロッキング面72を含む。ロッキングドグ70は、ロッキングドグ48に取って代わることができ、以下に詳細に説明するように、段付きロッキング面72によってもたらされる改善された係止性能を除いて、ロッキングドグ48と実質的に同じように動作するように構成されてよい。この目的のために、ロッキングドグ70はエルボ部分78のような作動面をさらに含み得、それは大きなインシデントの発生により枢動ロッキングドグ70をロック解除された姿勢からロックされた姿勢へトリガするように、上述のトリガ機構によって係合され得る。
【0037】
従来技術において見られた1つの欠点は、十分な荷重(大きなインシデントの間のロッキング事象の間に経験するような)を経験すると、ロッキングドグによって係合されたギア付きエンドプレート32上のロッキング面が切れる場合がある。従って、ギア付きエンドプレート32の剪断及びそれに続くリールアセンブリの故障を回避するために、ロッキングドグ70は、第1及び第2のロッキング歯74、76を含み、ギア付きエンドプレート32の2つのロッキング歯及び2つのロッキング表面にわたって荷重を分配する。例として、これに特に限定されないが、以前のリールアセンブリは、ギア付きエンドプレートが90%のWOS(合計72インチのウェビング)で約4,000重量ポンド(lbf)に曝されるとき、剪断破壊を被り得る。ロッキングドグ70を組み込んだリールアセンブリは、リールアセンブリの故障なしに長期間にわたり90%WOSで5,000lbfを超える静荷重を保持することができることが分かっている。
【0038】
上述したように、ロッキングドグ70は、2つのロッキング歯/ギアエンドプレート表面にわたって荷重を分配することによって、保持強度を改善し、剪断破壊を最小にすることができる。段付きの第1及び第2のロッキング歯74、76の間の立ち上り部分は第1の係合表面80を形成し、第2のロッキング歯76とロッキングドグ70の後面82との間の立ち上り部分は第2の係合表面84を形成する。
図10に最も明確に示されるように、第2係合表面84は、第1係合表面80の面に対して角度Aで位置するように構成される。第2の係合表面84の角を成す姿勢は、第2のロッキング歯がギア付きエンドプレートと平行であることを確実にし、係合するとギア歯に対して平坦な表面を提供することができる。第2のロッキング歯76は、ノッチ部又は凹部90をさらに含むことができる。本発明の一態様によれば、凹部90は、第2のロッキング歯76上、及び拡張してロッキングドグ70上の負荷を分散する(すなわち、応力を低減する)ことを容易にし得る。
【0039】
図11に示すように、第1のロッキング歯74は、第1の係合表面80がギア付きエンドプレート32の第1のロッキング表面86に係合する間、第2のロッキング歯76が初め第2のロッキング表面88からギャップGだけわずかに離れるように、枢動される場合がある。本発明の一態様によれば、ギャップGによって
形成される距離は、約0.1~約0.001インチの間、より具体的には約0.01~約0.001インチの間であってもよい。極端な負荷(例えば、約3,000lbfより大きい負荷)の下では、ギア付きエンドプレート32上の第1のロッキング表面86が
歪み始める場合がある。本発明の一態様によれば、第1のロッキング表面86の
歪みは、ロッキングドグ70及びギア付きプレート32の材料特性及び形状の注意深い選択によって達成され、第1のロッキング表面86が、第1のロッキング歯
74より前に歪み始めることを確実にするだろう。また、当業者であれば分かるように、材料及び形状の選択によって、ギア付きプレート32
より前に
第1のロッキング歯74を
歪ませることが可能であろう。第1のロッキング表面86(又は第1のロッキング歯74)の
歪みの最大の度合いは、ギャップGによって
形成される距離を介して最初に選択される。極端な負荷の下で第1のロッキング表面86(または第1のロッキング歯74)が
歪み続けると、ギャップ距離は、第2のロッキング歯76が第2の
ロッキング表面88に係合するまで低減される。この時点で、荷重は、第1のロッキング歯74/第1の
ロッキング表面86と第2のロッキング歯76/第2の
ロッキング表面88とにわたって分散される。この荷重の分散は、ギア付きエンドプレートの剪断の可能性を低減させ、リールの破損前にリールアセンブリによって保持され得る最大荷重を増加させる。
【0040】
当業者であれば、リールアセンブリ内の所望の保持力及び/又は空間制限に応じて、複数の歯のロッキングドグの代替実施形態が使用され得ることが理解されるであろう。すなわち、3つ以上のロッキング歯を持つロッキングドグを使用することができ、そのような代替のロッキングドグは、本開示内に含まれるとみなされるべきである。追加的又は代替的に、二重歯ロッキングドグの上の記載は、第1のロッキング歯が第2のロッキング歯の前にギア付きエンドプレートと係合するシーケンスを開示するが、当業者であれば、このシーケンスが、第2のロッキング歯が第1のロッキング歯の前にギア付きエンドプレートと係合するように、及びそのようなシーケンスが本教示内で考慮されるべきであるように、逆さにされ得ることをさらに理解すべきである。
【0041】
本開示は、添付の特許請求の範囲に含まれるもの、および前述の記載のものを含む。本発明は、ある程度の具体性を有する好適な形態で記載されているが、好適な形態の本開示は単なる例示としてなされたものであり、本発明の思想及び範囲から逸脱することなく、構成の詳細及び部品の組み合わせ並びに配置における多くの変更が可能であることが理解される。