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  • 特許-シリコーン吸着フィルム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】シリコーン吸着フィルム
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/22 20180101AFI20220315BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20220315BHJP
   C09J 7/29 20180101ALI20220315BHJP
   C09J 183/04 20060101ALI20220315BHJP
   B32B 25/08 20060101ALI20220315BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220315BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20220315BHJP
   C09D 175/16 20060101ALI20220315BHJP
【FI】
C09J7/22
C09J7/38
C09J7/29
C09J183/04
B32B25/08
B32B27/00 101
B32B27/40
C09D175/16
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017203666
(22)【出願日】2017-10-20
(65)【公開番号】P2019077750
(43)【公開日】2019-05-23
【審査請求日】2020-10-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000237237
【氏名又は名称】フジコピアン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】新村 朱加
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 教一
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-074701(JP,A)
【文献】特開2012-144701(JP,A)
【文献】特開2005-75959(JP,A)
【文献】特開2004-225005(JP,A)
【文献】国際公開第2016/159023(WO,A1)
【文献】特開2017-115077(JP,A)
【文献】特開2015-117348(JP,A)
【文献】国際公開第2012/160894(WO,A1)
【文献】特開2014-234414(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00- 5/10
7/00- 7/50
9/00-201/10
B32B 1/00- 43/00
C09D 1/00- 10/00
101/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ウレタンエラストマー基材上に直接又は他の層を介してシリコーン吸着層を積層したシリコーン吸着フィルムであって、前記シリコーン吸着層が、1分子中に2個以上のアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンからなるシリコーン組成物を、付加反応により硬化してなるものであり、前記シリコーン吸着層はさらにMQレジンを前記シリコーン吸着層の固形分中の37重量%以上52重量%以下含有し、前記熱可塑性ウレタンエラストマー基材の引張強度が56MPa以上71MPa以下であり、前記ウレタンエラストマー基材の前記シリコーン吸着層を積層した面の反対側の面に直接又は他の層を介してハードコート層が積層され、前記ハードコート層はウレタンアクリレートを主成分とし、前記ハードコート層の厚みが0.5μm以上5.0μm以下であるシリコーン吸着フィルム。
【請求項2】
前記ジオルガノポリシロキサンが、両末端にのみビニル基を有する直鎖状ジオルガノポリシロキサン、両末端及び側鎖にビニル基を有する直鎖状ジオルガノポリシロキサン、末端にのみビニル基を有する分岐状ジオルガノポリシロキサン、末端及び側鎖にビニル基を有する分岐状ジオルガノポリシロキサンから選ばれる少なくとも1種以上である請求項1に記載のシリコーン吸着フィルム
【請求項3】
前記熱可塑性ウレタンエラストマー基材の厚みが50μm以上150μm以下である請求項1又は2に記載のシリコーン吸着フィルム。
【請求項4】
前記シリコーン吸着層のゲル分率が45%以上62%以下である請求項1~請求項3のいずれかに記載のシリコーン吸着フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネルなどの画面の表面に貼り付けて、当該画面を保護するために使用される保護フィルム用のシリコーン吸着フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、基材シートにシリコーン吸着層を積層し、基材シートを含むシリコーン吸着シートを被着体に貼り付けて使用するシリコーン吸着フィルムが、特許文献1などで開示されている。
【0003】
シリコーン吸着層を被着体に貼り付けて使用するシリコーン吸着フィルムは、貼着後に吸着力が上昇しないため、貼着後に剥がして貼り直しが容易である性質、すなわち良好なリワーク性を有している。また、シリコーン吸着フィルムは、貼り付け時に被着体との間に空気が入り難く、また、仮に被着体との間に空気が入ったとしても、この空気を容易取り除くことができる性質、すなわち良好なエア抜け性を有している。
【0004】
このように、シリコーン吸着フィルムは、被着体への良好なリワーク性とエア抜け性を有しているため、貼り間違えた場合の貼り直しや、フィルムが劣化した場合の貼り替えが必要で、しかも、被着体との間に空気が入ってはいけない用途に好適に使用されている。このような用途としては、画像表示装置の画面の保護フィルムや、店頭や車窓のガラス面に貼り付ける広告用フィルムなどがある。
【0005】
ところで、シリコーン吸着フィルムのシリコーン吸着層は、上記のような被着体に対するリワーク性とともに、被着体に対する密着性を有している。特に、被着体が画像表示装置の画面などの平滑面の場合、シリコーン吸着層の密着性はより顕著となる。したがって、平滑な被着体にシリコーン吸着層を貼り付けると、被着体とシリコーン吸着層が密着して、シリコーン吸着フィルムは被着体上を滑らせて移動させることが困難となる。
【0006】
保護フィルムを画像表示装置の画面に貼り付ける際、貼り付けたい位置に対してズレた位置に誤って貼り付けることがある。このようにズレた位置に貼り付けた場合、保護フィルムを剥がして、再度貼り付けることによって、位置ズレを修正することができる。しかしながら、保護フィルムを剥がして貼りなおすと、シリコーン吸着層にゴミが付着することがある。また微小な位置ズレの場合には、貼りなおすことによって、当初よりも位置ズレが大きくなることがあり、簡単に保護フィルムの位置ズレを修正することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-120646公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記例示した事情に鑑みてなされたものであり、被着体への貼り付け時のリワーク性とエア抜け性、及び耐傷性とともに、被着体への貼り付け後に、被着体上を伸び縮みさせながら滑らすことによって、保護フィルムを被着体から剥がさなくても、保護フィルムを指等で押すだけで、被着体に対する保護フィルムの位置ズレ修正が可能な保護フィルムの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1発明は、熱可塑性ウレタンエラストマー基材上に直接又は他の層を介してシリコーン吸着層を積層したシリコーン吸着フィルムであって、前記シリコーン吸着層が、1分子中に2個以上のアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンからなるシリコーン組成物を、付加反応により硬化してなるものであり、前記シリコーン吸着層はさらにMQレジンを前記シリコーン吸着層の固形分中の37重量%以上52重量%以下含有し、前記熱可塑性ウレタンエラストマー基材の引張強度が56MPa以上71MPa以下であり、前記ウレタンエラストマー基材の前記シリコーン吸着層を積層した面の反対側の面に直接又は他の層を介してハードコート層が積層され、前記ハードコート層はウレタンアクリレートを主成分とし、前記ハードコート層の厚みが0.5μm以上5.0μm以下であるシリコーン吸着フィルムである。
【0010】
第2発明は、前記ジオルガノポリシロキサンが、両末端にのみビニル基を有する直鎖状ジオルガノポリシロキサン、両末端及び側鎖にビニル基を有する直鎖状ジオルガノポリシロキサン、末端にのみビニル基を有する分岐状ジオルガノポリシロキサン、末端及び側鎖にビニル基を有する分岐状ジオルガノポリシロキサンから選ばれる少なくとも1種以上である第1発明に記載のシリコーン吸着フィルムである。
【0011】
第3発明は、前記熱可塑性ウレタンエラストマー基材の厚みが50μm以上150μm以下である第1又は第2発明に記載のシリコーン吸着フィルムである。
【0012】
第4発明は、前記シリコーン吸着層のゲル分率が45%以上62%以下である第1~第3発明のいずれかに記載のシリコーン吸着フィルムである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の保護フィルムは、基材に熱可塑性ウレタンエラストマーを使用し基材の一方の面にシリコーン吸着層を有し、シリコーン吸着層とは反対側の基材面上にハードコート層を有するものとした。また、本発明の保護フィルムでは、基材の引張強度を56MPa以上71MPa以下とし、シリコーン吸着層はその固形分中の37重量%以上52重量%以下の割合でMQレジンを含有し、ハードコート層を厚み0.5μm以上5.0μm以下のウレタンアクリレートを主成分とするものとした。このような構成とすることで、本発明の保護フィルムでは、シリコーン吸着層を介して被着体に貼り付けられたまま、保護フィルムを指等で押すだけで、保護フィルムを伸び縮みさせながら被着体上を滑らせて、被着体に対する保護フィルムの位置ズレを修正することができる。したがって、本発明により、良好なリワーク性、エア抜け性、及びハードコート層による耐傷性とともに、剥がして貼り直さなくても、貼り付け位置のズレを修正できる性能を合わせ持つ保護フィルムを提供することができる。また、本発明の保護フィルムは、被着体に貼り付けたままで位置ズレを修正できるので、微小な位置ズレも容易に修正することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の保護フィルム(シリコーン吸着フィルム)を、さらに詳しく説明する。
【0015】
(保護フィルム)
本発明の第1実施形態である保護フィルムXの層構成の模式図を図1に示す。保護フィルムXは、熱可塑性ウレタンエラストマー基材3(以下、TPU基材3と言う)の一方の面に、アンカー層2A、シリコーン吸着層2、セパレーターA1の3層が、TPU基材3側からこの順で積層され、TPU基材3のもう一方の面に、アンカー層4A、ハードコート層4が、TPU基材3側から、この順で積層された構成となっている。
【0016】
(熱可塑性ウレタンエラストマー基材:TPU基材3)
本発明におけるTPU基材3は、酸化防止剤、帯電防止剤、防黴・防菌剤などの薬剤を含有していてもよい。TPU基材3は、従来公知の方法で、すなわち押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどに熱可塑性ウレタンエラストマー及びその他の成分を投入し溶融混練して混練物(マスターバッチ)を作成し、当該混練物をカレンダー、Tダイなどを通過させることでシート状及至板状に成形したものを使用することができる。
【0017】
なお、保護フィルムXにおいては、TPU基材3はPETフィルムなどの仮支持体上に形成するか、又は仮支持体上に設けられたTPU基材の市販品を使用することが好ましい。なぜなら、TPU基材3単体では引張強度が小さく、TPU基材3にアンカー層4A又はアンカー層2Aを積層する際にTPU基材3が伸びたり切れたりすることがある。このため、仮支持体に積層した状態のTPU基材3にアンカー層4Aを積層することが好ましい。TPU基材3の厚みは50μm以上150μm以下であることが好ましく、70μm以上100μm以下であることがより好ましい。TPU基材3の厚みが150μmよりも大きくなると、被着体上に貼り付けたままで、保護フィルムの位置ズレを修正することが困難になる。一方、TPU基材の厚みが50μm未満になると、へこみキズが生じ易くなる。TPU基材3の物理的な性質としては、引張強度が56MPa以上71MPa以下であることが好ましい。引張強度が71MPaを超えると、保護フィルムの柔軟性がなくなり、被着体上に貼り付けたままで、保護フィルムの位置ズレを修正することが困難になる。一方、引張強度が56MPaを下回ると、TPU基材が塑性変形しやすくなり、破断し易くなる。
【0018】
TPU基材3を積層する仮支持体としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ウレタン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニルなどからなる1層または多層構造のフィルムを使用することができる。仮支持体の厚みは、通常10~300μmであり、好ましくは25~200μmである。
【0019】
仮支持体上に熱可塑性ウレタンエラストマーを溶融した混練物(マスターバッチ)を塗工又は積層する方法としては、3本オフセットグラビアコーターや5本ロールコーターに代表される多段ロールコーター、ダイレクトグラビアコーター、バーコーター、エアナイフコーター、Tダイ等公知の方法が適宜使用される。
【0020】
(熱可塑性ウレタンエラストマー)
熱可塑性ウレタンエラストマー(TPU)としては、以下のハードセグメント及びソフトセグメントから構成されたものが挙げられるが、保護フィルムXの被着体へ貼り付けた状態での位置ズレの修正を容易にする点から、イソシアネートとポリオール成分の配合量を適宜調節して、TPU基材3の引張強度と破断時伸び率を、適切な値に調節することができる。
【0021】
ハードセグメントとしては、ジイソシアネート及び1,9ノナンジオール、1,4‐ブタンジオールやジエチレングリコールなどのアルカンジオール又はポリテトラメチレンエーテルグリコールなどのジアルキレングリコールからなるものなどが挙げられる。
【0022】
ソフトセグメントとしては、ジイソシアネート又はジイソシアネートに1,3ブタンジオールなどのアルカンジオールを配合したアダクト体、及びポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレン、ポリオキシブチレン、ポリオキシブチレン-ポリオキシエチレン、ポリテトラメチレン、又はポリオキシブチレン-ポリオキシエチレン-グリコールなどのポリエーテル系、又はアルカンジオール-ポリアジペートなどのポリエステル系からなるものや、ポリカーボネートジオールなどが挙げられる。ここで、ジイソシアネートとしては、4,4’-ジフェニルメタン-ジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレン-ジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0023】
保護フィルムXのTPU基材3には、保護フィルムXの被着体上に貼り付けたままで、位置ズレ修正可能な性質を満足するための柔軟性を損なわない範囲で、熱可塑性ウレタンエラストマー成分以外に他の成分を含めることができる。その他の成分の例としては、改質剤(加工助剤)、可塑剤、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、難燃助剤、ブロッキング防止剤などが挙げられ、これらは必要に応じて単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0024】
(シリコーン吸着層)
本発明の保護フィルムXは、TPU基材3の一方の面に、画面等の被着体上へ貼り付けるためのシリコーン吸着層を設ける。本発明の吸着層は、画面用保護フィルムとして使用することを考慮し、透明性を有するものが好ましく、高価な機器の画面に貼り付けて使用することを考慮し、保護フィルムのみが傷ついた場合などには、貼り直しが容易であることが好ましい。これらの性能を満足するために、本発明の吸着層に用いる吸着剤は、多種の吸着剤の中でも、シリコーン系吸着剤が好ましい。保護フィルムXの被着体上に貼り付けたままで、位置ズレを修正可能な性質を満足するための柔軟性を確保する点から、シリコーン系吸着剤のなかでも、MQレジンを含有する吸着剤が特に好ましく、保護フィルムXでは、MQレジンを含有したシリコーン系吸着剤を使用したシリコーン吸着層2を設ける。
【0025】
(アンカー層2A)
本発明に係る保護フィルムXでは、TPU基材3とシリコーン吸着層2の間にアンカー層2Aを設けることが好ましい。アンカー層2Aを設ける目的は、TPU基材3とシリコーン吸着層2との接着力の向上、および、特に被着体がガラスである場合のガラス面とシリコーンオリゴマーとの反応による密着力の経時上昇を防ぎ、保護フィルムXを剥離する際に、スムーズに剥離でき被着体であるガラス面上にシリコーン残りを発生させないことである。
【0026】
アンカー層2Aに用いる樹脂としては、酸価7~100mgKOH/gの範囲にあるポリエステル系樹脂を用いることが好ましい。
【0027】
ポリエステル系樹脂の酸価が7mgKOH/g未満であると、アンカー層2Aとシリコーン吸着層2、アンカー層2AとTPU基材3の接着力が弱く、特に、経時等によりシリコーン吸着層2がTPU基材3から離脱しやすくなる。また被着体への保護フィルムXの貼着後、保護フィルムXを剥離する際に、被着体上にシリコーン残りが発生しやすくなる。酸価が100mgKOH/gを超えると樹脂皮膜の耐水性が不足する。
【0028】
アンカー層2A塗工液は従来公知の方法により作製可能である。
【0029】
アンカー層2Aの厚みは0.1~5μmが好ましく、より好ましくは0.15~3μmである。アンカー層2Aの厚みが、0.1μm未満であると熱架橋されたシリコーン吸着層2がアンカー層2Aから離脱し易くなるとともに、アンカー層2AもTPU基材3から離脱し易くなる。一方、アンカー層2Aの厚みが、5μmを超えることは無駄であるし、保護フィルムX全体の柔軟性が失われて、被着体上に貼り付けたままで位置ズレ修正可能な性質が低下する。
【0030】
保護フィルムXのアンカー層2A用塗工液には、前記の樹脂成分の他、TPU基材3への濡れ性を改善するために、塗工液の分散性を阻害しない範囲内において水と混和性のアルコール等の有機溶媒を添加してもよい。また、その他の方法として、前記付加反応型シリコーン樹脂の架橋反応に対して触媒毒にならない範囲で濡れ性改善剤を添加することができる。また、必要に応じて、加硫剤、加硫促進剤など、この種の組成物に通常添加されるものを本発明の効果が低下しない範囲で加えることができる。
【0031】
(シリコーン吸着層2)
保護フィルムXのシリコーン吸着層2に用いるシリコーンの性状としては、透明性が高く、ゴムのような柔軟性を持っていていることが求められる。そして、シリコーン吸着層2の性能としては、表面が被着体表面に追従し、被着体からの剥離の際には小さい剥離力で被着体表面から容易に剥離できることが求められる。また、シリコーン吸着層2に用いるシリコーンの加工上の性能としては、少なくとも膜厚10μm以上で、目付け加工の方法を用いることなく塗工及び加熱処理だけで、架橋したシリコーン吸着層2を設けられることが求められる。このようなシリコーンとしては、硬化反応に際して150℃以下の低温短時間で深部まで架橋し、透明で耐熱性、圧縮永久歪み特性に優れかつ低粘度で液状タイプのものである付加型液状シリコーン樹脂の使用が好ましい。付加型液状シリコーン樹脂は、白金触媒等のもと、1分子中に2個以上のビニル基などのアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンと架橋剤としてSiH基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンとのヒドロキシル反応により熱架橋することができる。
【0032】
このようなジオルガノポリシロキサンとしては、両末端にのみビニル基を有する直鎖状ジオルガノポリシロキサン、両末端及び側鎖にビニル基を有する直鎖状ジオルガノポリシロキサン、末端にのみビニル基を有する分岐状ジオルガノポリシロキサン、末端及び側鎖にビニル基を有する分岐状ジオルガノポリシロキサンから選ばれる少なくとも1種以上を用いると良い。
【0033】
これらのジオルガノポリシロキサンの1形態である、両末端にのみビニル基を有する直鎖状ジオルガノポリシロキサンは、下記一般式(化1)で表せられる。
【0034】
【化1】
【0035】
(式中Rは下記有機基、nは整数を表す)
【0036】
【化2】
【0037】
(式中Rは下記有機基、m、nは整数を表す)
【0038】
このビニル基以外のケイ素原子に結合した有機基(R)は異種でも同種でもよいが、具体例としてはメチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基、フェニル基、トリル基、などのアリール基、又はこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、シアノ基などで置換した同種又は異種の非置換又は置換の脂肪族不飽和基を除く1価炭化水素基で、好ましくはその少なくとも50モル%がメチル基であるものなどが挙げられるが、このジオルガノポリシロキサンは単独でも2種以上の混合物であってもよい。
【0039】
両末端および側鎖にビニル基を有する直鎖状ジオルガノポリシロキサンは、上記一般式(化1)中のRの一部がビニル基であるジオルガノポリシロキサンである。末端にのみビニル基を有する分岐上ジオルガノポリシロキサンは、上記一般式(化2)で表せられるジオルガノポリシロキサンである。末端及び側鎖にビニル基を有する分岐上ジオルガノポリシロキサンは、上記一般式(化2)中のRの一部がビニル基であるジオルガノポリシロキサンである。
【0040】
(MQレジン)
本発明のシリコーン吸着層2を構成するシリコーン組成物は、上記の成分に加え、さらに、M単位(RSiO1/2:Rはメチル基、フェニル基などの1価の有機基)とQ単位(SiO1/2)からなるMQレジンを必須成分として含有するものである。MQレジンは非反応性、又は反応性のどちらでもよく、非反応性と反応性の両方を含有してもよい。
【0041】
MQレジンはシリコーン吸着層2の固形分中に対して37重量%以上52重量%以下含有
させることが好ましい。MQレジンのシリコーン吸着層2の固形分中の含有割合が37重量%を下回ると、保護フィルムX全体の柔軟性が失われて、被着体上に貼り付けたままで位置ズレ修正可能な性質が低下し、52重量%を超えると、シリコーン吸着層2が塑性変形しやすくなり、へこみキズが発生しやすくなる。
【0042】
非反応性のMQレジンを使用する場合には、M単位(RSiO1/2)/Q単位(SiO4・1/2)のモル比は、0.6~1.8が好ましい。M単位/Q単位のモル比が0.6未満では密着力やタックが低下することがあり、1.8を超えると密着力や保持力が低下することがある。
【0043】
また、非反応性のMQレジンの重量平均分子量(Mw)は、100,000~300,000のものが好ましく用いられる。非反応性のMQレジンの重量平均分子量(Mw)が前記範囲未満であると、所望の吸着力が得られなくなる。一方非反応性のMQレジンの重量平均分子量(Mw)が前記範囲を超えると、吸着層が塑性変形しやすくなり、へこみキズが発生しやすくなる。
【0044】
また、反応性MQレジンは、(R1)(OH)SiO1/2単位、(R1)SiO1/2単位及びSiO単位からなり、1分子中に1以上のシラノール基(OH基)を有するオルガノポリシロキサンレジンである。本発明のシリコーン吸着層2については、低シリコーン移行性の見地から、反応性MQレジンに含まれる全ての官能基、すなわち、官能基OHおよび官能基(R1)3の総和のうち、0.5~10モル%がシラノール基(OH基)であることが好ましい。
【0045】
反応性MQレジンを構成するSiO単位に対する(R1)(OH)SiO1/2単位および(R1)SiO1/2単位のモル比の和は0.5~1.2であることが好ましい。(R1)(OH)SiO1/2単位および(R1)SiO1/2単位のSiO単位に対するモル比の和が0.5未満では吸着力が低下する場合があり、前記モル比が1.2を超えると得られるシリコーン吸着層2の密着力(保持力)が低下する傾向がある。
【0046】
R1は、独立に炭素原子数1~10の非置換もしくは置換の一価炭化水素基であり、具体的にはアルキル基、アリール基、シクロアルキル基、アルケニル基、およびこれらの一価の炭化水素基の一個以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、シアノ基などで置換された基などが挙げられる。工業的には、メチル基が好ましく、反応性MQレジンに含まれる全ての官能基、すなわち、前記のシラノール基(OH基)および前記の官能基R1の総和のうち、90~99.5モル%がメチル基であることが好ましい。
【0047】
ここでシリコーン吸着層2を構成する組成物の架橋反応に用いる架橋剤は公知のものでよい。架橋剤の例として、オルガノハイドロジェンポリシロキサンが挙げられる。オルガノハイドロジェンポリシロキサンは1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも3個有するものであるが、実用上からは分子中に2個の≡SiH結合を有するものをその全量の50重量%までとし、残余を分子中に少なくとも3個の≡SiH結合を含むものとすることがよい。
【0048】
架橋反応に用いる白金系触媒は公知のものでよく、これには塩化第一白金酸、塩化第二白金酸などの塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール化合物、アルデヒド化合物あるいは塩化白金酸と各種オレフィンとの鎖塩などがあげられる。架橋反応したシリコーン層は、シリコーンゴムのような柔軟性を持ったものとなり、この柔軟性が被着体との密着を容易にさせるものである。
【0049】
本発明に係るシリコーンの市販品の形状は、無溶剤型、溶剤型、エマルション型があるが、いずれの型も使用できる。なかでも、無溶剤型は、溶剤を使用しないため、安全性、衛生性、大気汚染の面で非常に利点がある。但し、無溶剤型であっても、所望の膜厚を得るために粘度調節のために、必要に応じてトルエン等の有機溶剤を添加することができる。
【0050】
前述のごとく、シリコーン吸着層の性状としては、ゴムのような柔軟性を持っていて被着体への貼着時に被着体の表面の凹凸に追従して密着力を確保することが求められる。画面用保護フィルムとして使用する場合、シリコーン吸着層の膜厚は、被着体に対するシリコーン吸着層の密着面方向の剪断力を確保するために少なくとも10μm以上、通常は15~50μmが必要となる。10μm以下であると被着体に対する保護フィルムの密着力が確保できず、特に長期貼りつけ時には、保護フィルムが被着体から剥がれ易い。
【0051】
保護フィルムXの被着体上に貼り付けたままで位置ズレ修正可能な性質を確保するためには、シリコーン吸着層2のゲル分率が、45%~62%の範囲となることが好ましい。ゲル分率が45%を下回ると、保護フィルムX全体の柔軟性が失われて、被着体上に貼り付けたままで位置ズレ修正可能な性質が低下する。また、シリコーン吸着層2のゲル分率が、62%を超えても位置ズレ修正可能な性質は確保できるが、62%を超えると、シリコーン吸着層2が塑性変形しやすくなり、へこみキズが発生しやすくなるため、62%以下が好ましい。
【0052】
本発明者らは鋭意努力の結果、保護フィルムXでは、特定の物理的性質を有する基材と特定の吸着層の組み合わせによって、被着体上に貼り付けたままで位置ズレ修正可能な性質を有するものとすることができることを見出した。また、特定のハードコート層であれば、保護フィルムXを被着体に貼り付けた際の最外層に、該ハードコート層を設けても、被着体上に貼り付けたままで位置ズレ修正可能な性質を維持することができることを見出した。すなわち、引張強度が56MPa以上71MPa以下であるTPU基材3と、MQレジンをシリコーン吸着層固形分中の37重量%以上52重量%以下含有するシリコーン吸着層を組み合わせることによって、被着体上に貼り付けたままで位置ズレ修正可能な性質を有するものとすることができることを、見出した。また、ウレタンアクリレートを主成分とし厚みが0.5μm以上5.0μm以下であるハードコート層であれば、前記のTPU基材とシリコーン吸着層を積層した保護フィルムを被着体に貼り付けた際の最外層に、該ハードコート層を設けても、被着体上に貼り付けたままで位置ズレ修正可能な性質を維持できることを見出した。
【0053】
さらに、本発明者らは、引張強度が56MPa以上71MPa以下であるTPU基材3に組み合わせるシリコーン吸着層としては、ゲル分率が45~62%の範囲にあるものが、被着体上に貼り付けたままで位置ズレ修正可能な性質に対してより有効であることも合わせて、見出した。
【0054】
このようなTPU基材3とシリコーン吸着層2を組み合わせることにより、被着体上に貼り付けた保護フィルムXを被着体上を滑るように指などで押すと、TPU基材3とシリコーン吸着層2は、ほぼ同じ方向に変形し始め、この変形が起点となって、シリコーン吸着層2が被着体に対して滑り始める。シリコーン吸着層中のMQレジンの含有量が多くなると、シリコーン吸着層の粘着力が大きくなり、シリコーン吸着層2は被着体に対して、滑り難くなるが、MQレジンの含有量がシリコーン吸着層固形分中の52重量%以下であれば、TPU基材3とシリコーン吸着層2が変形することによって発生する内部応力が働き、シリコーン吸着層2が被着体に対して滑ることができる。保護フィルムXは、被着体がガラスやプラスチックなどの表面が平滑なものでも、被着体上に貼り付けたままで位置ズレ修正可能であるが、これらの中でも特にフッ素ガラスに対しては滑り安く、被着体がフッ素ガラスの場合に特に好適に用いることができる。
【0055】
TPU基材3とシリコーン吸着層2の一方が前記範囲外、すなわち、TPU基材3の引張強度が56MPa以上71MPa以下でないか、或いは、シリコーン吸着層固形分中のMQレジンが37重量%以上52重量%以下でなければ、TPU基材3とシリコーン吸着層2はバランスよく同じような割合で変形することはないので、被着体上に貼り付けた保護フィルムを被着体上を滑るように指などで押しても、保護フィルムを被着体上に貼り付けたままで位置ズレ修正することはできない。例えば、シリコーン吸着層固形分中のMQレジンが37重量%以上52重量%以下であるが、TPU基材3の引張強度が71MPaを超える場合には、被着体上に貼り付けた保護フィルムを被着体上を滑るように指などで押しても、TPU基材3は変形しない。TPU基材3の方がシリコーン吸着層2よりも、被着体に対して上層にあるので、TPU基材3が変形しなければ、シリコーン吸着層2が変形することはなく、保護フィルムの位置ズレを修正することはできない。また、TPU基材3の引張強度が56MPa以上71MPa以下の範囲内であるが、シリコーン吸着層固形分中のMQレジンが52重量%を超える場合も同様で、シリコーン吸着層2に対してTPU基材3が変形し難いため、被着体上に貼り付けた保護フィルムを被着体上を滑るように指などで押しても、TPU基材3は変形せず、この結果、保護フィルムの位置ズレを修正することはできない。
【0056】
シリコーン吸着層固形分中のMQレジンが37重量%を下回り、かつ、TPU基材3の引張強度が71MPaを超える場合には、保護フィルム全体が硬くなるので、被着体上に貼り付けた保護フィルムを被着体上を滑るように指などで押しても、保護フィルムの位置ズレを修正することはできない。一方、シリコーン吸着層固形分中のMQレジンが52重量%を超え、かつ、TPU基材3の引張強度が56MPaを下回る場合には、保護フィルム全体が軟らかくなり過ぎ、被着体上に貼り付けた保護フィルムを被着体上を滑るように指などで押すと、保護フィルムがしわになり、意図したように位置ズレを修正することができない。
【0057】
保護フィルムXは、数mm程度の位置ズレ修正に、特に好適である。前記のように、TPU基材3とシリコーン吸着層2がほぼ同じような割合で変形し始め、この変形が起点となって、シリコーン吸着層2が被着体に対して滑って、保護フィルムXの位置ズレは修正される。したがって、面積が大きな保護フィルムの一部分を指などで押して、位置ズレ修正する場合には、指で押した部分の保護フィルムのみが伸びるか、或いは縮むことによって位置ズレが修正される。このような状態で位置ズレ修正された保護フィルムXも、白化などの見た目の不具合が発生することはない。一方、数mm程度の位置ズレを修正するのに、一端剥がして貼り直す方法では位置ズレを修正することは困難であるので、保護フィルムXはこのような数mm程度の位置ズレ修正に、特に好適に用いることができる。
【0058】
保護フィルムXは、10mm以上の位置ズレ、或いは保護フィルム全体を移動させる位置ズレ修正も可能である。例えば、保護フィルムの形状とほぼ同形状の平面を有する治具などを用い、保護フィルムX全体を押圧しながら、保護フィルムを移動させれば、保護フィルムXが部分的に変形するのではなく、保護フィルム全体を移動させることができる。しかしながら、保護フィルムXは、このような位置ズレ修正可能な性質とともに、良好なリワーク性、エア抜け性を有するものであるので、大きな位置ズレを修正するのであれば、貼って貼り直し、その結果、数mm程度の位置ズレが残れば、被着体上に貼り付けたままで位置ズレ修正することもできる。
【0059】
アンカー層2A塗工液、シリコーン吸着層2塗工液の塗工方法としては、3本オフセットグラビアコーターや5本ロールコーターに代表される多段ロールコーター、ダイレクトグラビアコーター、バーコーター、エアナイフコーター等公知の方法が適宜使用される。
【0060】
(セパレーターA1)
セパレーターA1は、シリコーン吸着層2の表面の汚れや異物付着を防いだり、保護フィルムXのハンドリングを向上させるための樹脂フィルム製のセパレーターである。セパレーターA1は、シリコーン吸着層2の表面に貼り合わされて使用される。セパレーターA1としては、ポリエチレンテレフタレートや、ポリエチレン、ポリプロピレン等よりなる剥離性の高い樹脂フィルムよりなり、所望により、表面にシリコーン系材料等の剥離剤を塗工したものが使用される。
【0061】
(アンカー層4A)
本発明に係る保護フィルムXでは、シリコーン吸着層2を設けたTPU基材3の反対側の面にハードコート層4を設けることが好ましい。TPU基材3は軟らかいため、TPU基材3が露出した状態で、保護フィルムXを使用すると、保護フィルムXの表面が傷つき易いためである。ハードコート層4は、TPU基材3上にアンカー層4Aを設け、アンカー層4A上に積層することが好ましい。アンカー層4Aを設ける目的は、薄いハードコート層4をムラなく塗工して、硬化時のカールの発生を防止するとともに、ハードコート層4とTPU基材3との接着性を向上することである。
【0062】
アンカー層4Aは、ポリオールを主成分とすることが好ましく、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、エポキシポリオール他が使用可能であるが、アンカー層4A上に溶剤系ハードコート層塗工液を塗工した場合のTPU基材3の白化防止の点では、ポリエステルポリオールがより好ましい。
【0063】
本発明において、アンカー層4Aは、ポリエステルポリオール100重量部に対して、架橋剤として、カルボジイミド化合物を0.1重量部以上100重量部以下配合されたものが好ましい。カルボジイミド化合物の配合量が0.1重量部を下回ると、アンカー層4Aの塗工液が十分に架橋しない。また、カルボジイミド化合物の配合量が100重量部を上回ると、アンカー層4Aが白化する。保護フィルムXでは、このようなアンカー層4Aを用いることで、ハードコート層4のTPU基材3への良好な接着性を確保することができる。
【0064】
アンカー層4Aの主成分であるポリエステルポリオールは、多価カルボン酸と多価アルコールを縮重合したものである。多価カルボン酸としては、マロン酸、グルタール酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバチン酸、ドデカンジカルボン酸などの脂肪族多価カルボン酸、フマル酸、無水マレイン酸などの不飽和多価カルボン酸、フタル酸、ジメチルフタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ジメチルテレフタル酸、5-ソジウムスルホイソフタル酸などの芳香族多価カルボン酸などが挙げられる。
【0065】
多価アルコールとしては、脂肪族グリコール、脂環グリコール、芳香族グリコール、脂肪族トリオールなどを挙げることができる。これらの組み合わせによる各種の公知のポリエステルポリオールを用いることができるが、数平均分子量として1000~40000の範囲のものが好ましく、水酸基価としては1~30mgKOH/gのものを用いることができる。数平均分子量が1000未満であると接着力が不十分であり、40000を越えると加工性、塗膜外観、溶解性が劣ることがある。
【0066】
カルボジイミド化合物としては任意のものが使用可能であるが、なかでも反応性、安定性の観点からビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド、2,6,2’,6’-テトライソプロピルジフェニルカルボジイミドが好ましい。さらに、上記カルボジイミド化合物として、市販のカルボジイミド化合物は、合成する必要もなく好適に使用することができる。かかる市販のカルボジイミド化合物としては例えば日清紡ケミカル(株)より“カルボジライト”(登録商標)の商品名で販売されている各種グレードのものが使用できる。
【0067】
カルボジイミド化合物は、カルボジイミド当量(分子量/分子に含まれるカルボジイミド基数)が100~1000のものである。
【0068】
アンカー層4Aの厚みは0.2μm以上5μm以下であることが好ましい、より好ましくは0.3μm以上2μm以下である。アンカー層4Aの厚みが0.2μm未満になると、ハードコート層4とTPU基材3の接着性が不十分となる場合がある。一方、5μmを超えると、保護フィルムXの被着体上に貼り付けたままで、位置ズレを修正可能な性質が低下する。
【0069】
(ハードコート層4)
ハードコート層4は、保護フィルムXの被着体上に貼り付けたままでの位置ズレを修正可能な性質を確保するために、柔軟性を有するものでなければならない。ハードコート層4の柔軟性を確保するためには、ハードコート層4を薄くする必要がある。したがって、本発明に適するハードコート層4は、薄くても十分な耐傷性を有し、クラックが入り難い性質を有するものが好ましい。このようなハードコート層4としては、ウレタンアクリレートを主成分とするハードコート層塗工液を塗工後に熱又は光硬化させることにより得られるものが好ましい。ウレタンアクリレートを主成分とする塗工液は、溶剤系の塗工液であることが好ましい。無溶剤系の塗工液は低粘度にすることが困難で、塗工ムラが発生しやすいため、本発明のように薄いハードコート層の塗工には適さず、また、塗工ムラが発生しやすいことにより、硬化時のカールも発生し易くなるからである。
【0070】
本発明において使用されるウレタンアクリレートは、1種または2種以上を併用したポリオール、ジイソシアネート、ヒドロキシ(メタ)アクリレートを使用し、公知の方法で作られる。
【0071】
上記ポリオールとしては、例えば、スピログリコール、エトキシ化ビスフェノールA、エトキシ化ビスフェノールS、ポリテトラメチレンオキサイドジオール、ポリテトラメチレンオキサイドトリオール、ポリプロピレンオキサイドジオール、ポリプロピレンオキサイドトリオール等が挙げられる。
【0072】
上記ジイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、2, 4-トリレンジイソシアネート、4, 4' -ジフェニルジイソシアネート、1, 5-ナフタレンジイソシアネート、3, 3' -ジメチル-4, 4-ジフェニルジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4, 4-ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0073】
上記ヒドロキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、2、2-ビス〔4-(3-アクリロキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕プロパン、ビス〔4-(3-アクリロキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4-(3-アクリロキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4-(3-アクリロキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕エーテル、4, 4-ビス〔4-(3-アクリロキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕シクロヘキサン、9, 9-ビス〔4-(3-アクリロキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕フルオレン、9, 9-ビス〔4-(3-アクリロキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕アントラキノン、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、グリシドールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等が挙げられる。
【0074】
本発明において使用されるウレタンアクリレートの電離放射線重合反応に用いられる光重合開始剤としては、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-プロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-2(ヒドロキシ-2-プロプル)ケトン、ベンゾフェノン、p-フェニルベンゾフェノン、4,4'-ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-ターシャリ-ブチルアントラキノン、2-アミノアントラキノン、2-メチルチオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p-ジメチルアミン安息香酸エステルなどが挙げられる。これらは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、また、その配合量は、ウレタンアクリレート100重量部に対して、通常0.2~15重量部の範囲で選ばれる
【0075】
従来から、ハードコート層4に低屈折率層を積層することによって、反射防止性能を持たせた反射防止フィルムが提案されているが、本発明の保護フィルムXは、ハードコート層4に反射防止性能を持たせることが好ましい。ハードコート層4とは別に低屈折率層等を設けると、保護フィルムX全体が厚くなり、保護フィルムXの被着体上に貼り付けたままで、位置ズレを修正可能な性質が低下するほか、保護フィルムXが必要以上に高価になるからである。
【0076】
ハードコート層4に反射防止性能を持たせる方法としては、ハードコート層4に粒子を含有する方法が最も好ましい。ハードコート層4中に粒子を含有することにより、ハードコート層4に反射防止性能を付加し、薄いハードコート層4のみで耐傷性と反射防止性能を賄うことができるので、保護フィルムX全体が厚くならず、保護フィルムXの被着体上に貼り付けたままで、位置ズレを修正可能な性質が、ほとんど低下しない。
【0077】
(粒子)
ハードコート層4に含有する粒子は、ハードコート層4に要求される透明性を満足できるものであれば、任意の粒子が使用可能であるが、反射防止性能とハードコート層の透明性の両立の点で、アクリル粒子、シリカ粒子のいずれか、又は、これらを併用することが好ましい。ハードコート層4に含有する粒子の平均粒子径は1μm以上5μm以下が好ましい。平均粒子径が1μmより小さくなると反射防止の効果が低下する。また5μmを超えるとハードコート層4が十分な透明度を得られなくなる。ハードコート層4の100重量部中の粒子含有量は、5重量部以上14重量部以下が好ましい。5重量部を下回ると、十分な反射防止性能が得られず、14重量部を超えるとハードコート層4の十分な透明度が得られない。
【0078】
ハードコート層4にはハードコート性を大きく損なわない範囲で熱可塑性ポリマー、消泡剤、塗工性改良剤、増粘剤、界面活性剤、有機系潤滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発泡剤、染料、顔料、帯電防止剤などを含有していてもよい。
【0079】
保護フィルムXをタッチパネルなどに貼り付ける際には、セパレーターA1をシリコーン吸着層2から剥がして、シリコーン吸着層2をタッチパネルなどの表面に貼り付ける。
【実施例
【0080】
以下、実施例と比較例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、各実施例、比較例中の「部」は特に断ることのない限り重量部を示したものである。
【0081】
TPU基材3として、日本マタイ株式会社製エスマー(登録商標)URS PX98の厚み60μmの基材A、厚み80μmの基材B、厚み100μmの基材C、シーダム株式会社製、ハイグレス(登録商標)DUS451の厚み100μmの基材D、シーダム株式会社製、ハイグレス(登録商標)DUS501の厚み50μmの基材E、下記方法により作製した厚み150μmの基材F、及び下記方法により作製した厚み160μmの基材Gを準備した。
【0082】
(高分子ポリオールH)
高分子ポリオールHとして、3メチル1,5ペンタンジオールとジエトキシカーボネートとの脱エタノール反応(縮合反応)により、数平均分子量1,000のポリカーボネートジオール(水酸基価=112.2mgKOH/g)を得た。
【0083】
(ジオールJ)
ジオールJとして、1,9-ノナンジオールを準備した。
【0084】
(有機ジイソシアネートK1、K2)
有機ジイソシアネートK1として、ヘキサメチレンジイソシアネートを、K2として、ヘキサメチレンジイソシアネートに1,3ブタンジオールを配合したアダクト体(モル比が、ヘキサメチレンジイソシアネート/1,3ブタンジオール=2/1となるように、配合したもの)を準備した。
【0085】
(TPU基材F)
70℃に加熱した高分子ポリオールH(501.90kg)とアセチルアセトンジルコニウム触媒(0.03kg)を均一に混合し、これと60℃に加熱したジオールJ(201.07kg)、および60℃に加熱した有機ジイソシアネートK1(289.59kg)とK2(7.42kg)の均一混合物とを、混合吐出装置を用いて上記括弧内の重量比で撹拌混合し、この混合液をステンレス製の容器に流し込んだ。その後、85℃の雰囲気下で16時間キュアし、常温まで放冷後、塊状の熱可塑性ポリウレタン樹脂を得た。粉砕機を用いてこの塊状物をフレーク状に粉砕し、単軸押出機にてペレット形状に加工した。得られたペレットを脱水し乾燥させ、別の単軸押出機に供給して溶融混練し、押出機先端のTダイでシート状に押し出し、表面温度30℃の冷却ロールに接触させて冷却した後、TPU基材の露出面を保護するため、TPU基材の露出面に、PETフィルム(東レ製、ルミラー(登録商標)50μ厚)を貼り合わせながら巻き取って、150μm厚のTPU基材Fを作製した。
【0086】
(TPU基材G)
70℃に加熱した高分子ポリオールH(402.18kg)とアセチルアセトンジルコニウム触媒(0.03kg)を均一に混合し、これと60℃に加熱したジオールJ(257.80kg)、および60℃に加熱した有機ジイソシアネートK1(331.50kg)とK2(8.49kg)の均一混合物とを、混合吐出装置を用いて上記括弧内の重量比で撹拌混合し、この混合液をステンレス製の容器に流し込んだ。その後、85℃の雰囲気下で16時間キュアし、常温まで放冷後、塊状の熱可塑性ポリウレタン樹脂を得た。粉砕機を用いてこの塊状物をフレーク状に粉砕し、単軸押出機にてペレット形状に加工した。得られたペレットを脱水し乾燥させ、別の単軸押出機に供給して溶融混練し、押出機先端のTダイでシート状に押し出し、表面温度30℃の冷却ロールに接触させて冷却した後、TPU基材の露出面を保護するため、TPU基材の露出面に、PETフィルム(東レ製、ルミラー(登録商標)50μ厚)を貼り合わせながら巻き取って、160μm厚のTPU基材Gを作製した。
【0087】
(アンカー層4A)
表1に示す材料を表1に示す量で混合、撹拌し、アンカ-層4A塗工液を作製した。表3~5に示す各実施例、比較例のTPU基材へ、乾燥後厚みが1.0μmとなるように、アンカー層4A塗工液を、塗工、乾燥して、TPU基材3上にアンカー層4Aを積層した。両面にPETフィルムが貼り付けられたTPU基材3については、アンカー層4Aを塗工する側のPETフィルムのみを剥離した状態で、塗工機へ通紙した。TPU基材単体では強度が弱く、塗工機での走行時に伸びるおそれがあるためである。
【0088】
【表1】
【0089】
(ポリエステルポリオールAの水分散液)
アンカー層4A塗工液に用いるポリエステルポリオールAの水分散液を、以下に示す方法で作製した。
【0090】
留出管、窒素導入管、温度計、撹拌機を備えた四つ口フラスコにテレフタル酸ジメチル854部、5-ソジウムスルホイソフタル酸355部、エチレングリコール186部、ジエチレングリコール742部及び、反応触媒として、酢酸亜鉛1部を仕込み、130℃から170℃まで2時間かけて昇温し、エステル交換反応した後、イソフタル酸730部、三酸化アンチモン1部を添加し、170℃から200℃まで2時間かけて昇温し、エステル化反応を行った。次いで徐々に昇温、減圧し、最終的に反応温度を250℃、真空度5mmHg以下で1時間重縮合反応を行ない、ポリエステルポリオールAを得た。
【0091】
得られたポリエステルポリオールA25部をイソプロパノール15部、イオン交換水60部の混合溶液に仕込み、70~80℃で3時間撹拌を行い、固形分濃度25%のポリエステルポリオールAの水分散液を得た。
【0092】
(ハードコート層4)
表2に示すウレタンアクリレートと粒子を用いて、ハードコート層の固形分比率として表2に示す配合比率となるようハードコート塗工液を調整し、表3~5に示す各実施例、比較例のTPU基材に塗工したアンカー層4A上に表2のハードコート塗工液を塗工、乾燥した後、積算光量500mj/cm2の紫外線を照射し、塗膜を硬化させて、それぞれ表3~5に示す厚みのハードコート層 を形成した。
【0093】
【表2】
【0094】
(アンカー層2A)
(ポリエステル系樹脂)
多価カルボン酸成分としてテレフタル酸(TPA)36.0モル部、アジピン酸(ADA)4.0モル部、多価アルコール成分としてエチレングリコール(EG)36.0モル部、ネオペンチルグリコ-ル(NPG)11.5モル部、ビスフェノールA・エチレンオキサイド付加体6.0モル部を原料成分として反応容器に仕込み、窒素雰囲気下、圧力0.3MPa、温度260℃で、3.5時間エステル化反応を行った。得られたエステル化物に、三酸化アンチモンを2.5×10-4モル/多価カルボン酸成分1モル添加し、0.5hPaに減圧し、280℃で3時間重縮合反応させポリエステル樹脂を得た。次いで、解重合剤として、無水トリメリット酸(TMA)5.5モル部、イソフタル酸(IPA)1.0モル部を添加し、常圧下、250℃で2時間解重合を行い、テレフタル酸(TPA)/アジピン酸(ADA)/無水トリメリット酸(TMA)/イソフタル酸(IPA)/エチレングリコール(EG)/ネオペンチルグリコ-ル(NPG)/ビスフェノールA・エチレンオキサイド付加体=36.0/4/5.5/1.0/36.0/11.5/6.0(モル比)のポリエステル樹脂を得た。上記のポリエステル樹脂をその酸価と当量のアンモニア水及びブチルセロソルブ5%を含む水に溶解して、ポリエステル樹脂20%濃度の水溶液を調製し、回転速度7,000rpmで撹拌した。次いで、撹拌機のジャケットに熱水を通して加熱し、系内温度を73~75℃に保って、60分間撹拌した。その後、ジャケット内に冷水を流し、撹拌翼の回転速度を5,000rpmに下げて撹拌しつつ、室温(約25℃)まで冷却し、ポリエステル樹脂水性液(固形分20重量%)を得た。該ポリエステル樹脂の酸価は99mgKOH/gであった。なお、樹脂の酸価の測定は、酸価ポリマーの水性液を1/10規定のKOH水溶液により、指示薬としてとしてフェノールフタレンを用いて滴定し、ポリマー1gを中和するのに要したKOHのmg数を求めた。
【0095】
水90重量部、前記製造例のポリエステル樹脂溶液(固形分20重量%)50重量部を加え、ハイスピードミキサーにより充分に攪拌混合した後、攪拌しながらメタノール50重量部を徐々に添加しアンカー層2A塗工液とした。前記のハードコート層4を塗工した各実施例、比較例のTPU基材から残りのPETフィルムを剥離し、PETフィルムを剥離したTPU基材3の表面上に、アンカー層2A塗工液を塗工、乾燥して、厚み0.4μmのアンカー層2Aを形成した。
【0096】
(シリコーン吸着層2)
前記のアンカー層2Aの上に、23℃50%RHの環境下で、表3~5に示すシリコーン吸着層塗工液を塗工厚み20μm(乾燥後)で塗工後、オーブンにて150℃、100秒で架橋させて、シリコーン吸着層2を得た。
【0097】
【表3】
【0098】
【表4】
【0099】
【表5】
【0100】
(セパレーターA1)
前記のシリコーン吸着層に対して、表面を保護するためにPETフィルム(東レ製、ルミラー(登録商標)50μ厚)をセパレーターA1として貼り合わせた。
【0101】
各実施例、比較例の評価結果を表3~5、6及び7に、各評価方法を下記に示す。
【0102】
(評価方法)
(吸着層のゲル分率の測定方法)
本発明の保護フィルムを構成するシリコーン吸着層のゲル分率を、以下の手順で測定する。まず、各実施例と比較例のシリコーン吸着層塗工液の成分を50μm厚のPETシート上に塗工厚み20μm(乾燥後)で塗工後、オーブンにて150℃、100秒で架橋させて、シリコーン吸着層サンプルを得る。得られたシリコーン吸着層サンプルを所定の大きさにカットし試験片とし、その試験片に積層されている吸着層の重量を測定する(その重量をG1とする)。次に、その試験片を50mlのトルエンに浸漬した後、25℃で1日放置する。続いて、試験片及びトルエン溶液を濾過した残渣を105℃で2時間乾燥させ、試験片に積層された吸着層の乾燥後の重量、及びトルエン溶液を濾過した残渣の乾燥後の重量を測定する(その合算重量をG2とする)。その後、ゲル分率=(G2/G1)×100により算出する。測定結果を、表3~表5に示す。
【0103】
(TPU、熱可塑性ウレタンエラストマー基材の引張強度)
JIS K 7161に準拠して、各TPU基材から試験片を打抜き、引張試験機(型式 オートグラフ DCS-500、株式会社島津製作所製)を用いて、引張強度を測定した。測定結果を、表3~表5に示す。
【0104】
(位置ズレ調整)
各実施例、比較例の保護フィルムを、長さ100mm×幅25mmの形状にカットし試料とした。23℃50%RH環境下にて前記試料からセパレータA1を剥がし、露出したシリコーン吸着層をフッソガラスへ、空気が入らないようにして貼付け、2kgロ-ルで1往復して圧着した。次いで試料を貼り付けたフッソガラスを、23℃50%RH雰囲気下24時間放置した後に、位置ズレ調整評価を実施した。図2に示すように、試料の角部分を、試料の角を構成する2辺の中間方向内側に指で30秒間押して、試料の角部分が移動した距離を測定した。測定は、移動前の試料の角部分のフッソガラス表面にマーキングをしておき、移動後の試料角部と、このマーキングされた位置との距離を測る。距離の測定には、株式会社ニコン製測定顕微鏡MM-800を使用した。測定は、実施例1から実施例10に続き、比較例1から比較例5の順に1回目を実施した後、2回目は1回目とは逆に比較例5から比較例1、実施例10から実施例1の順番に実施し、2回の平均値で評価した。評価結果を、表6と表7に示す。
◎:2mm以上位置ずれを調整できた。
○:1mm以上2mm未満の位置ズレを調整できた。
×:位置ズレ調整は1mm未満であった。
【0105】
(再剥離性)
各実施例、比較例の保護フィルムを長さ100mm×幅25mmの形状にカットし試料とした。23℃50%RH環境下にて前記試料からセパレータA1を剥がし、露出したシリコーン吸着層2の表面を研磨したステンレス鋼板(SUS板)に貼付け、2kgロ-ルで1往復して圧着した。試料をSUS板に貼り付けた状態で、120℃雰囲気下24時間放置後さらに23℃雰囲気下で1時間放置した後、次の手順で試料を剥離した。試料の長手方向の端部を剥がして180度折り返し、前記端部を折り返した方向に、試料を毎分300mmの速さで引き剥がし、SUS板表面の汚染を目視により下記の基準で評価した。評価結果を表6と表7に示す。
◎:SUS板に汚染が全く確認できない。特に良好
○:SUS板にほとんど汚染が確認できない。良好
△:SUS板をわずかに汚染した。実用上問題ない
×:SUS板に顕著な汚染が残った。実用不可
【0106】
(へこみキズ)
鉛筆硬度試験機を用いて試験を行った。具体的には、当該試験機が水平に位置する場合において、鉛筆硬度が「H」である鉛筆の先に対して1000gの荷重を与えるように試験機を設定した以外は、JIS K5600-5-4に準拠して試験を行った。試験後において、目立ったへこみキズのないものを◎、へこみキズのあるものを○、へこみキズが著しく目立つものを×と評価した。評価結果を表6と7に示す。
【0107】
【表6】
【0108】
【表7】
【図面の簡単な説明】
【0109】
図1】本発明の実施形態の保護フィルムXの層構成を示す模式図である。
図2】本発明の位置ズレ調整評価の方法を表す模式図である。
【符号の説明】
【0110】
X:保護フィルム
1:セパレーターA
2:シリコーン吸着層
2A:アンカー層
3:TPU基材
4A:アンカー層
4:ハードコート層
図1
図2