(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】展開可能な支柱構造体
(51)【国際特許分類】
B64G 1/22 20060101AFI20220315BHJP
B64G 1/66 20060101ALI20220315BHJP
H01Q 1/08 20060101ALI20220315BHJP
H01Q 19/10 20060101ALI20220315BHJP
G02B 23/20 20060101ALI20220315BHJP
【FI】
B64G1/22
B64G1/66 A
B64G1/66 C
H01Q1/08
H01Q19/10
G02B23/20
(21)【出願番号】P 2019546101
(86)(22)【出願日】2017-11-08
(86)【国際出願番号】 GB2017053359
(87)【国際公開番号】W WO2018087538
(87)【国際公開日】2018-05-17
【審査請求日】2020-11-05
(32)【優先日】2016-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】519164127
【氏名又は名称】オックスフォード スペース システムズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】リヴェレス、フアン
(72)【発明者】
【氏名】フラウ、ヴィンセント
(72)【発明者】
【氏名】荻 芳郎
【審査官】米澤 篤
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-198558(JP,A)
【文献】特表2005-531706(JP,A)
【文献】特表2012-530017(JP,A)
【文献】特開2016-56947(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64G 1/22
B64G 1/66
H01Q 1/08
H01Q 19/10
G02B 23/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支柱構造体が展開構成にあるとき管状形状を採るように構成された本体と、
前記本体の壁に複数の一体型テープスプリングヒンジを画定するために前記本体の前記壁に形成された複数の開口部であって、前記複数の一体型テープスプリングヒンジが座屈したとき前記本体が前記本体の長手方向軸に沿って折り畳まれて収納構成になることを可能にするように構成された複数の開口部と
を備え、
前記収納構成では、前記複数の一体型テープスプリングヒンジは、前記支柱構造体を前記展開構成に向けて付勢する力を及ぼすように構成され、
前記複数の開口部は、前記複数の開口部によって画定された前記複数の一体型テープスプリングヒンジがそれぞれの端部でより狭くなるように構成されて
おり、
前記本体は、前記展開構成にあるとき、前記長手方向軸に垂直な平面内に円形断面を有するように構成されている
展開可能な支柱構造体。
【請求項2】
前記複数の開口部が、前記本体の前記長手方向軸に沿って離間した複数のグループに配置されることで、開口部の各グループは前記長手方向軸の周りに配置された複数のテープスプリングヒンジを含むヒンジ部分を画定し、隣接するヒンジ部分は、テープスプリングヒンジが形成されていない前記壁の部分によって接続されている、請求項1に記載の展開可能な支柱構造体。
【請求項3】
テープスプリングヒンジが形成されていない前記壁の前記部分のうちの1つを補強するようにそれぞれ構成された複数の補強部材をさらに備える、請求項2に記載の展開可能な支柱構造体。
【請求項4】
前記本体の前記壁が層状の複合材料から形成され、前記複数の補強部材の各々が前記複合材料の1つまたは複数の追加の層を含むことで、テープスプリングヒンジが形成されていない前記壁の前記部分は、前記ヒンジ部分よりも高い剛性を有する、請求項3に記載の展開可能な支柱構造体。
【請求項5】
前記本体の特定の部分における前記複数の開口部の各々の長さは、前記支柱構造体が前記収納構成にあるとき、前記特定の部分における前記複数の一体型テープスプリングヒンジを前記本体の中心に向かって内側に折り曲げることができるように選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の展開可能な支柱構造体。
【請求項6】
前記本体は、前記長手方向軸に沿って幅がテーパ状である、請求項1から5のいずれか一項に記載の展開可能な支柱構造体。
【請求項7】
前記テーパの角度は、前記支柱構造体が前記収納構成にあるとき、前記複数の一体型テープスプリングヒンジのうちの1つの一端における前記壁の特定の部分が、前記複数の一体型テープスプリングヒンジの前記1つの反対側の端部における前記壁の特定の部分の内側に格納されることを可能にするように選択される、請求項6に記載の展開可能な支柱構造体。
【請求項8】
拘束力が取り除かれると前記支柱構造体が前記収納構成から展開する速度を制御するように構成される制御機構をさらに備え、前記制御機構は、前記複数の一体型テープスプリングヒンジによって及ぼされる前記力をある程度相殺する制動力を及ぼすように構成される、請求項1から7のいずれか一項に記載の展開可能な支柱構造体。
【請求項9】
前記制御機構は、少なくとも1本のファイバによって前記支柱構造体の一端に接続された渦電流ダンパを備え、前記渦電流ダンパは、前記複数の一体型テープスプリングヒンジによって及ぼされる前記力に比例する減衰力を生成するように構成されている、請求項8に記載の展開可能な支柱構造体。
【請求項10】
前記一体型テープスプリングヒンジが前記本体の隣接部分と交わるところの前記一体型テープスプリングヒンジの各々の前記端部に丸みを形成するように、前記複数の開口部が構成されている、請求項1から9のいずれか一項に記載の展開可能な支柱構造体。
【請求項11】
請求項1から
10のいずれか一項に記載の展開可能な支柱構造体を備える展開式アンテナアセンブリであって、
前記展開可能な支柱構造体の一端に配置された一次反射器と、
前記一次反射器に対して、前記展開可能な支柱構造体の反対側の端部に配置された二次反射器と
をさらに備える、展開式アンテナアセンブリ。
【請求項12】
請求項1から
10のいずれか一項に記載の展開可能な支柱構造体を備える展開式望遠鏡アセンブリであって、
前記展開可能な支柱構造体の一端に配置されたセンサと、
前記展開可能な支柱構造体に沿って配置された1つまたは複数の光学素子と
をさらに備える、展開式望遠鏡アセンブリ。
【請求項13】
第1の本体を第2の本体から切り離すための分離機構であって、請求項1から
10のいずれか一項に記載の展開可能な支柱構造体を備え、前記展開可能な支柱構造体は、前記支柱構造体を前記収納構成に保持している拘束力の解放時に、前記第1の本体を前記第2の本体から離れるように付勢するように構成される、分離機構。
【請求項14】
請求項1から
10のいずれか一項に記載の展開可能な支柱構造体と、
拘束力を加えることで、前記支柱構造体を前記収納構成に保持するように構成された保持および解放機構と
を備えるシステム。
【請求項15】
請求項1に記載の展開可能な支柱構造体を製造する方法であって、
1つまたは複数の複合層に前記複数の開口部を形成するステップと、
前記本体の前記壁を画定するように成形された湾曲したマンドレルの周りに前記1つまたは複数の複合層を配置するステップと、
前記1つまたは複数の複合層を硬化させて前記本体の前記壁を形成するステップと、
前記マンドレルを取り外すステップと
を備える、方法。
【請求項16】
テープスプリングヒンジが形成されていない前記壁の特定の部分を補強するように構成された補強部材を形成するために、前記本体の前記長手方向軸に沿って間隔を置いて前記マンドレルの周りに1つまたは複数の追加の層を配置するステップをさらに備える、請求項
15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は展開可能な支柱構造体に関する。より詳細には、本発明は、管状本体と、複数のテープスプリングヒンジとを備える展開可能な支柱構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
展開可能な構造体は、例えば保管または輸送目的のために装置の物理的サイズを一時的に縮小する必要がある場合に様々な用途で使用される。展開可能な構造体が広く使用されているそのような分野の1つは、宇宙ベース用途のものであり、とりわけ宇宙に打ち上げられる衛星および他の宇宙船のロケットフェアリング内で用途のものである。フェアリング内では利用可能なスペースが限られているため、打ち上げ前には小さい体積で収納することができる展開可能な構造体が使用される。
【0003】
テープスプリングヒンジによって長い剛性の支柱部分が接合されている展開可能な支柱が開発されてきた。そのような支柱は、テープスプリングヒンジを座屈させることで、剛性の支柱部分が折り曲げられて互いに横並びに位置することによって収納することができる。テープスプリングヒンジは、拘束力が取り除かれると構造体を自動的に展開させる弾性ひずみエネルギーを蓄えている。この折り曲げ配置は完全に展開された支柱の長さと比較して構造体の全長を縮小させるが、サイズの全体的な縮小は剛性の支柱部分の長さによって制限される。例えば、支柱がテープスプリングヒンジによって接続された等しい長さの3つの剛性の部分を含む場合、折り畳まれた構造体の全長は、完全に伸張した構造体の全長のおおよそ3分の1になるであろう。したがって、よりコンパクトな形態の展開可能な支柱構造体を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0004】
本発明はこれに関連してなされている。
【0005】
本発明の第1の態様によれば、支柱構造体が展開構成にあるとき管状形状を採るように構成された本体と、本体の壁に複数の一体型テープスプリングヒンジを画定するために本体の壁に形成された複数の開口部であって、テープスプリングヒンジが座屈したとき本体がその長手方向軸に沿って折り畳まれて収納構成になることを可能にするように構成された複数の開口部とを備える展開可能な支柱構造体であって、収納構成では、一体型テープスプリングヒンジは構造体を展開構成に向けて付勢する力を及ぼすように構成される、展開可能な支柱構造体が提供される。
【0006】
第1の態様によるいくつかの実施形態では、複数の開口部は本体の長手方向軸に沿って離間した複数のグループに配置され、そのため開口部の各グループは長手方向軸の周りに配置された複数のテープスプリングヒンジを含むヒンジ部分を画定し、隣接するヒンジ部分は、テープスプリングヒンジが形成されていない壁の部分によって接続されている。そのような実施形態では、展開可能な支柱構造体は、テープスプリングヒンジが形成されていない壁の部分のうちの1つを補強するようにそれぞれ構成された複数の補強部材をさらに備えてよい。例えば、第1の態様によるいくつかの実施形態では、本体の壁は層状の複合材料から形成されてよく、複数の補強部材の各々は、複合材料の1つまたは複数の追加の層を含んでよく、その結果、テープスプリングヒンジが形成されていない壁の部分は、ヒンジ部分よりも高い剛性を有する。
【0007】
第1の態様によるいくつかの実施形態では、本体の特定の部分における複数の開口部のそれぞれの長さは、構造体が収納構成にあるとき、該部分におけるテープスプリングヒンジを本体の中心に向かって内側に折り曲げることができるように選択される。
【0008】
第1の態様によるいくつかの実施形態では、複数の開口部は、開口部によって画定されたテープスプリングヒンジがそれぞれの端部でより狭くなるように構成されている。
【0009】
第1の態様によるいくつかの実施形態では、本体は長手方向軸に沿って幅がテーパ状である。テーパの角度は、支柱構造体が収納構成にあるとき、テープスプリングヒンジのうちの1つの一端における壁の特定の部分が、テープスプリングヒンジの該1つの反対側の端部における壁の特定の部分の内側に格納されるように選択されてよい。
【0010】
第1の態様によるいくつかの実施形態では、展開可能な支柱構造体は、ひとたび拘束力が取り除かれると支柱構造体が収納構成から展開する速度を制御するように構成される制御機構をさらに備え、該制御機構は、テープスプリングヒンジによって及ぼされる力をある程度相殺する制動力を及ぼすように構成されている。制御機構は、少なくとも1つのファイバによって支柱構造体の一端に接続された渦電流ダンパを含むことができ、渦電流ダンパは展開速度に比例する減衰力を発生するように構成されている。
【0011】
第1の態様によるいくつかの実施形態では、本体は、展開構成にあるとき、長手方向軸に対して垂直な平面内に円形断面を有するように構成されている。
【0012】
第1の態様によるいくつかの実施形態では、管状構造は、長手方向軸に垂直な断面が1つまたは複数の直線縁部の部分を含み、テープスプリングヒンジが形成される複数の湾曲した縁部の部分をさらに含むように構成される。
【0013】
第1の態様によるいくつかの実施形態では、展開可能な支柱構造体は、展開可能な支柱構造体の一端に配置された一次反射器と、一次反射器に対して、展開可能な支柱構造体の反対側の端部に配置された2次反射器とを備える展開式アンテナアセンブリに含まれる。
【0014】
第1の態様によるいくつかの実施形態では、展開可能な支柱構造体は、展開可能な支柱構造体の一端に配置されたセンサと、展開可能な支柱構造体に沿って配置された1つまたは複数の光学素子とを備える展開式望遠鏡アセンブリに含まれる。
【0015】
第1の態様によるいくつかの実施形態では、展開可能な支柱構造体は、第1の本体(例えば宇宙船)を第2の本体(例えばペイロード)から切り離すための分離機構の一部として使用することができ、この場合、展開可能な支柱構造体は、展開可能な支柱構造体を収納構成に保持している拘束力を解放すると、第1の本体を第2の本体から離れるように付勢するように構成される。
【0016】
第1の態様によるいくつかの実施形態では、システムは、展開可能な支柱構造体と、その構造を収納構成に保持するために拘束力を加えるように構成された保持および解放機構とを備える。
【0017】
本発明の第2の態様によれば、第1の態様による展開可能な支柱構造体を製造する方法が提供され、この方法は、以下の、1つまたは複数の複合層に複数の開口部を形成するステップと、本体の壁を画定するように成形された湾曲したマンドレルの周りに1つまたは複数の複合層を配置するステップと、1つまたは複数の複合層を硬化させて本体の壁を形成するステップと、マンドレルを取り外すステップとを含む。
【0018】
第2の態様によるいくつかの実施形態では、方法は、テープスプリングヒンジが形成されていない壁の部分を補強するように構成された補強部材を形成するために、本体の長手方向軸に沿って間隔を置いてマンドレルの周りに1つまたは複数の追加の層を配置するステップをさらに含む。
【0019】
本発明の実施形態は、添付の図面を参照して、単なる一例として説明される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態による展開可能な支柱構造体の斜視図である。
【
図2】頂部のテープスプリング部分が折り畳み構成にある、
図1の展開可能な支柱構造体の斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態による、
図1に示すものと同様の展開可能な支柱を製造する方法を示す流れ図である。
【
図4】本発明の一実施形態による展開可能な支柱構造体の平面図である。
【
図5】
図4の展開可能な支柱構造体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下の詳細な説明では、単なる例示として、本発明の特定の例示的実施形態のみを示し説明した。当業者が理解するように、記載された実施形態は、全て本発明の範囲から逸脱することなく、様々な異なる方法で修正されてもよい。したがって、図面および説明は、本質的に例示と見なされるべきであり、限定と見なされるべきではない。本明細書を通して、同じ参照番号は同じ要素を示す。
【0022】
ここで
図1および
図2を参照すると、本発明の一実施形態による展開可能な支柱構造体100が示されている。
図1では、支柱構造体100は展開構成で示されている。支柱構造体100は、構造体100が展開構成よりも小さい体積を占める収納構成になるように折り畳むことが可能であり、その後構造体100を
図1に示す構成になるように伸張させることによって展開させることができる。収納構成は折り畳み構成とも呼ばれてよく、展開構成は伸張構成と呼ばれてよい。
【0023】
本実施形態の展開可能な支柱構造体100は、薄壁の本体101を備える。本体101は、
図1に示すように、支柱構造体100が展開構成にあるとき管状形状を採るように構成される。本実施形態では、本体101は、展開構成にあるとき、長手方向軸に垂直な平面内で円形断面を有するように構成される。しかしながら、他の実施形態では、異なる断面形状、例えば楕円形または多角形の断面が使用されてもよい。
【0024】
支柱構造体100は、本体101の壁に形成された複数の開口部102をさらに含む。複数の開口部102は、本体101の壁に複数の一体型テープスプリングヒンジ103を画定するように構成されている。複数の開口部102は、テープスプリングヒンジ103を座屈させたとき本体101がその長手方向軸に沿って折り畳まれて折り畳み構成になることを可能にするように構成される。折り畳み構成では、一体型テープスプリングヒンジ103は、構造体100を展開構成に向けて付勢する展開力を及ぼすように構成される。
【0025】
本実施形態では、複数の開口部102が、本体101の長手方向軸に沿って離間した複数のグループに配置され、そのため各グループの開口部102は、長手方向軸の周りに配置された複数のテープスプリングヒンジ103を含むヒンジ部分111、112、113を画定する。本実施形態では、各ヒンジ部分111、112、113は4つの開口部102を含んでおり、これらの開口部102は協働して中央の長手方向軸の周りに配置された4つのテープスプリングヒンジ103を画定する。他の実施形態では、適切な数の開口部を形成することによって、任意の数のテープスプリングヒンジを1つのヒンジ部分に設けることができる。
【0026】
隣接するグループの開口部102、すなわち長手方向軸に沿って互いに隣接するヒンジ部分111、112、113は、テープスプリングヒンジが形成されていない壁の部分によって接続されている。本実施形態では、管状本体101は円形の断面を有するので、これらの部分はリング形状であり、以後「リング部分」と呼ぶ。
【0027】
このように開口部をグループに配置することによって、交互に並ぶヒンジ部分111、112、113と、リング部分121、122、123、124とを備える展開可能な支柱構造体100が形成される。本実施形態では、純粋に一例として3段構造が示されており、両端部でリング部分121、122、123、124のうちの1つに接続された3つのヒンジ部分111、112、113を含む。しかしながら、他の実施形態では、任意の数の段が提供されてもよい。例えば、一実施形態では、展開可能な支柱構造体は、両端にリング部分を有する単一のヒンジ部分のみを含む場合もある。
【0028】
次に、
図1の支柱構造体を折り畳み、展開させることができる機構の一例を、
図2を参照して説明するが、
図2は、頂部ヒンジ部分111内のテープスプリングヒンジ103が半ば折り畳まれた状態の展開可能な支柱構造体100を示す。
【0029】
本実施形態では、各ヒンジ部分111、112、113内の開口部102の長さは、
図2に示すように、構造体が折り畳み構成にあるとき、互いに干渉することなく各ヒンジ部分111、112、113におけるテープスプリングヒンジ103を本体101の中心に向かって内側に折り曲げることができるように選択される。例えば、いくつかの実施形態では、開口部102の長さは、
図2に示すようにテープスプリングヒンジ103が内側に折り曲げられる際、同一ヒンジ部分における他のテープスプリングヒンジのいずれとも接触することなく、完全に折り畳まれた構成で各テープスプリングヒンジ103が、構造体100の中心軸に向かって内側に突出するように選択されてよい。他の実施形態では、1つの部分内のテープスプリングヒンジは、収納構成では互いに接触し得るが、構造体が伸張する際、テープスプリングヒンジは、互いが広がるのを妨げないように配置されてよい。例えば、いくつかの実施形態では、折り曲げられたテープスプリングヒンジは、収納構成において、構造体の中心付近で互いに重なり合ってもよい。
【0030】
テープスプリングヒンジ103を内側に折り曲げることは、各ヒンジがヒンジの曲率半径とは反対方向に折り曲げられることを意味する。これは、本実施形態のテープスプリングヒンジ103が外側に折り曲げられた場合に生じるであろう「同方向」の座屈とは対照的に、テープスプリングヒンジの「反対方向の」座屈と呼ばれる。他の実施形態では、テープスプリングヒンジは、構造体が収納構成になるように折り畳まれる際、外側に折り畳まれる場合もある。
【0031】
反対方向の座屈は、同方向の座屈が利用される場合よりテープスプリングヒンジに蓄えられる弾性エネルギーが大きくなる結果となる。したがって、
図2に示すように、支柱構造体が収納構成に折り畳まれたとき、テープスプリングヒンジ103を内側に折り曲げることによって、より多くの量のエネルギーが蓄えられる。これにより、支柱構造体100が折り畳み構成にあるときテープスプリングヒンジ103によって構造体に及ぼされるピーク力が増大し、その結果、構造体100をより迅速に展開させることができ、および/またはテープスプリングヒンジ103が外側に折り畳まれた場合よりも、より大きな質量を移動させることができる。テープスプリングヒンジ103を内側に折り曲げることの別の利点は、構造体100が、テープスプリングヒンジ103が外側に曲げられた場合よりも、折り畳み構成においてより小さな体積を占めることになることである。
【0032】
図2に示すように、支柱構造体100は、1つのヒンジ部分111、112、113内のテープスプリングヒンジ103が座屈するにつれて、その長手方向軸に沿って折り畳まれる。構造体100は長手方向軸に沿って折り畳まれるため、折り畳み構成において結果として生じる構造体の体積は、従来技術の構造と比較して減少する。したがって、
図2に示す折り畳み/展開機構は、非常にコンパクトな展開可能な支柱構造体を提供する。
【0033】
いくつかの実施形態において、リング部分121、122、123、124は、1つまたは複数の補強部材によって補強されてもよく、その結果、リング部分121、122、123、124における壁の剛性は、ヒンジ部分111、112、113における壁剛性よりも高い。補強部材は、構造体が折り畳まれる際にリング部分がねじれおよび/または座屈に抵抗するのを助けることができる。リング部分121、122、123、124の補強は、リング部分121、122、123、124がヒンジ部分111、112、113と比較して比較的短い高さである実施形態において特に有利であり得る。
【0034】
本実施形態では、本体101の壁は、層状の複合材料、例えばエポキシ-炭素繊維複合材料から形成され、複数の補強部材のそれぞれは、複合材料の1つまたは複数の追加の層を含む。その結果、テープスプリングヒンジが形成されていない壁の部分、すなわちリング部分121、122、123、124は、ヒンジ部分111、112、113よりも高い剛性を有する。他の実施形態では、異なる形態の補強材、例えば、リング部分の内面または外面に接着された、あるいは壁自体の中に埋め込まれた金属またはセラミックのストリップまたは輪を使用することができる。さらに、いくつかの実施形態では、補強部材は省略されてもよい。
【0035】
図1および
図2に示すように、本実施形態では、複数の開口部102は、開口部102によって画定されるテープスプリングヒンジ103の端部が狭くなるように構成される。結果として、構造体100が折り畳まれる際、テープスプリングヒンジ103は、それらがリング部分121、122、123、124と交わる点の近くで座屈する傾向があり、その結果、構造体は均一かつ予測可能な様式で折り畳まれる。本実施形態では、これは、テープスプリングヒンジ103がリング部分121、122、123、124と交わる各角に丸みを形成することによって達成される。この丸みは、応力集中部として作用する鋭い角を避けることによって、テープスプリングとリング部分との間の接合部における破断の可能性を低下させる。他の実施形態では、同様の結果を達成するために異なる形状の開口部が使用される場合もある。さらに、他の実施形態では、テープスプリングヒンジ103は、それらの長さに沿って均一な幅を有するように形成することができる。すなわち、いくつかの実施形態では、テープスプリングヒンジの各角の丸みは省略されてもよい。
【0036】
次に、
図1および
図2に示す展開可能な支柱構造体の製造方法を、
図3を参照しながら説明する。まず、ステップS301において、複数の開口部が1つまたは複数の複合層に形成される。支柱構造体は、任意の適切な材料から形成され得る。例えば、支柱構造体は、エポキシ-炭素繊維複合材などの、高強度の/剛性の繊維と、低剛性の/準拠した樹脂母材とを含む複合材料から形成することができる。
【0037】
次に、ステップS302において、本体の壁を画定するように成形された湾曲したマンドレルの周りに複合層が配置され、正確な形状および厚さを有する積層体を形成する。マンドレルの表面の曲率は、テープスプリングヒンジの曲率を規定する。リング部分に補強が必要な場合、ステップS302で補強部材を形成するために、本体の長手方向軸に沿って間隔を置いてマンドレルの周りに1つまたは複数の追加の層を配置することができる。
【0038】
次に、ステップS303において、複合材料を硬化させて本体の壁を形成するために複合層が硬化される。複合層は、オートクレーブ内などの制御された温度および圧力環境で硬化され、必要に応じて後硬化されてもよい。最後に、ステップS304において、完成した支柱構造体をマンドレルから取り外す。支柱構造体はこのとき使用するための準備ができており、テープスプリングヒンジを座屈させることによって、その長手方向軸に沿って折り畳まれて折り畳み構成にすることができる。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態では、拘束力が取り除かれたとき支柱構造体が折り畳み構成から展開する速度を制御するために制御機構が設けられてもよい。制御機構は、テープスプリングヒンジによって及ぼされる力をある程度相殺する制動力を及ぼすことによって展開速度を制御するように構成することができる。いくつかの実施形態では、制御機構は、1つまたは複数のファイバによって支柱構造体の一端に接続された渦電流ダンパを備えることができ、渦電流ダンパは、テープスプリングヒンジによって及ばされる力から生じる展開速度に比例する減衰力を生成するように構成される。他の実施形態では、異なる減衰機構が使用される場合もある。
【0040】
渦電流ダンパによって提供される散逸性の減衰モーメント/力は展開速度に正比例する。したがって、テープスプリングヒンジは、構造体の急速な展開をもたらすことになる大きな展開力を及ぼす場合、渦電流ダンパは比例式に高い散逸性の減衰モーメント/力を加えることになる。逆に、展開力、したがって展開速度が低い場合、渦電流ダンパは展開中に比例式により低いモーメント/力を加えることになる。
【0041】
制御機構の使用は、展開中のエネルギーの放出を制御することによって、支柱構造体およびそれに取り付けられた装置に発生する衝撃および構造的損傷を回避するために展開速度を調整することを可能にする。
【0042】
上述の実施形態では、支柱構造体はその長さに沿って均一な直径を有する。しかしながら、他の実施形態では、支柱構造体は、長手方向軸に沿って幅がテーパ状になっていてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、テーパの角度は、テープスプリングヒンジのうちの1つの一端における壁の特定の部分が、支柱構造体が折り畳まれた構成にあるとき、テープスプリングヒンジの該1つの反対側の端部における壁の特定の部分の内側に格納されることを可能にするように選択することができる。このような構成は、折り畳み構成において支柱構造体が占める体積をさらに減少させることができる。
【0043】
本発明の実施形態は、以下の
・四重線またはヘリカルアンテナの展開
・展開式アンテナ用の二次反射鏡の展開
・宇宙望遠鏡用の光学系の展開
・ホストプラットフォームから離れたデリケートな科学機器の展開、および
・ある物体を他の物体から切り離すための分離機構を含めた、様々な用途における用途を見出すことができるが、これらに限定されることはない。
【0044】
例えば、一実施形態では、展開可能な支柱構造体は、展開可能な支柱構造体の一端に配置された一次反射器と、一次反射器に対して、展開可能な支柱構造体の反対側の端部に配置された二次反射器とを備える展開式アンテナアセンブリに含めることができる。このようにして、支柱構造体が折り畳み構成にあるとき、アンテナアセンブリのサイズを縮小することができる。
【0045】
さらなる例として、別の実施形態では、展開可能な支柱構造体は、展開可能な支柱構造体の一端に配置されたセンサと、展開可能な支柱構造体に沿って配置された1つまたは複数の光学素子とを備える展開式望遠鏡アセンブリに含めることができる。このようにして、支柱構造体が折り畳み構成にあるとき、展開式望遠鏡アセンブリのサイズを縮小することができる。
【0046】
さらなる例として、別の実施形態では、展開可能な支柱構造体は、第1の本体(例えば宇宙船)を第2の本体(例えばペイロード)から切り離すための分離機構として作用するように構成することができる。分離機構として使用されるとき、展開可能な支柱構造体は、その構造を収納構成に保持する拘束力が解放されたとき第1の本体を第2の本体から離れるように付勢するように構成される。
【0047】
展開可能な支柱構造体の本体が、その長手方向軸に沿って折り畳まれて折り畳み構成になるように構成される本発明の実施形態を説明してきた。これは、テープスプリングヒンジが互いに干渉することなく、構造体を長手方向軸に沿って折り畳むことができるように適切な寸法のテープスプリングヒンジおよび接続用の壁部分を提供するように複数の開口部を構成することによって達成することができる。構造体はその長手方向軸に沿って折り畳まれるため、コンパクトな折り畳み構成が実現される。展開中、支柱構造体はその長手方向軸に沿って伸張する。これは、剛性部分が互いに枢動して折り返す従来技術の構造とは対照的に、直線運動を実現する。また本発明の実施形態では、いったん構造体が展開されると、テープスプリングヒンジがロックされて支柱の壁の一部になり、展開された構造体の全体的な剛性をさらに高める。
【0048】
本発明の実施形態では、開口部が形成されている本体は、展開構成において管状形状を採るように構成されている。「管状」という用語は、本明細書では、閉じた外周を有する任意の薄壁の中空構造を指すために使用されており、円形断面を有する構造に限定されない。本発明の別の実施形態による、非円形断面を有する管状構造の一例が
図4および
図5に示されている。この実施形態では、断面はほぼ正方形の形状であり、正方形の各辺に沿ってテープスプリングヒンジを形成する凹状部分を有する。
図4および
図5に示す実施形態では、反対方向の座屈が使用された場合テープスプリングヒンジは外側に折り曲げられ、同方向の座屈が使用された場合テープスプリングヒンジは内側に折り曲げられる。正方形の断面が
図4に示されているが、他の実施形態では、断面は任意の規則的または不規則的な多角形に基づいてもよい。多角形に基づく断面が使用されるとき、その断面は、1つまたは複数の直線縁部の部分と、テープスプリングヒンジが形成される複数の湾曲した縁部の部分とを含み得る。
【0049】
本発明の実施形態は、管状構造体をその長手方向軸に沿って折り畳むことによって収納構成になるように配置することができることを説明してきた。この折り曲げ機構は、収納構成における構造体の高さの大幅な減少を可能にする。接続リング部分は収納構成では実質的に変形しないままであるため、収納構成における構造体の高さの全体的な縮小は、リング部分に対するテープスプリング部分の相対的な高さと、各テープスプリングヒンジを折り畳むことができる範囲とに依存する。いくつかの実施形態では、各テープスプリング部分の高さは接続部分の高さを超える、またはそれと等しくなり得ることから、約50%以上の高さの全体的な縮小を実現することができる。さらに、いくつかの実施形態では、各テープスプリング部分の高さは、接続リング部分の高さよりもかなり大きい場合もあり、構造体の高さのかなりの縮小を可能にする。
【0050】
さらに、いくつかの実施形態では、展開可能な支柱構造体と、その構造体を、本体がその長手方向軸に沿って折り畳まれる収納構成に保持するために拘束力を加えるように構成された保持解放機構(HDRM)とを備えるシステムが提供されてよい。このシステムは、拘束力を解放することによって支柱構造体を自動的に展開することができ、拘束力を解放すると、収納構成にある変形したテープスプリングヒンジに蓄えられた弾性エネルギーは、構造体を展開構成に向けて付勢する力を及ぼす。
【0051】
本発明の特定の実施形態が図面を参照して本明細書に記載されているが、添付の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲から逸脱することなく多くの変形および修正が可能である。