(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】二官能性ヒドロキシメチル基を有するフランモノマー及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 307/44 20060101AFI20220315BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20220315BHJP
【FI】
C07D307/44
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2019566551
(86)(22)【出願日】2018-01-18
(86)【国際出願番号】 KR2018000865
(87)【国際公開番号】W WO2018174396
(87)【国際公開日】2018-09-27
【審査請求日】2019-08-16
(31)【優先権主張番号】10-2017-0034795
(32)【優先日】2017-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519298592
【氏名又は名称】クッド ケミカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】イ、シン ヨプ
(72)【発明者】
【氏名】パク、チャン ホ
【審査官】中島 芳人
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-095859(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0062276(US,A1)
【文献】特開昭60-223858(JP,A)
【文献】特開2002-080408(JP,A)
【文献】特表平08-506374(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 307/44
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二官能性ヒドロキシメチル基を有するフランモノマー(2,5-Bis(hydroxymethyl)furan,BHMF)の製造方法であって、
フルフリルアルコール(Furfuryl alcohol)を用いて全混合物に対して51wt%又はそれ以上の量のBHMFを含む低分子量フラン混合物を合成する段階;及び上記低分子量フラン混合物から二官能性ヒドロキシメチル基(bifunctionalhydroxymethyl group)を有するBHMFを抽出及び高純度化する段階;を含む二官能性ヒドロキシメチル基を有するフランモノマー(2,5-Bis(hydroxymethyl)furan,BHMF)の製造方法であって、
上記低分子量フラン混合物を合成する段階は、
上記フルフリルアルコール、固相のホルムアルデヒド(formaldehyde)及び
酸触媒を混合して、上記フルフリルアルコールをヒドロキシメチル化(Hydroxymethylation)する段階を含み、
上記フルフリルアルコールは、上記ホルムアルデヒドに対して6倍~15倍のモル比で
混合され、
上記ヒドロキシメチル化が行われなかった未反応フルフリルアルコールを回収する段階
をさらに含み、
上記抽出及び高純度化する段階は、
上記低分子量フラン混合物を、水を用いて分液し、水溶液に溶解されたBHMFを回収する段階;上記低分子量フラン混合物に有機溶媒を追加して不溶性塩成分を取り除く段階;及び上記低分子量フラン混合物を有機溶媒に溶解してから冷却して結晶化する段階を含むことを特徴とする、BHMFの製造方法。
【請求項2】
上記固相のホルムアルデヒドはパラホルムアルデヒド(paraformaldehyde)を含むことを特徴とする請求項1に記載のBHMFの製造方法。
【請求項3】
上記フルフリルアルコールをヒドロキシメチル化する段階は、
上記パラホルムアルデヒドの熱分解により生成された単分子ホルムアルデヒドが上記フル
フリルアルコールと結合することを特徴とする請求項2に記載のBHMFの製造方法。
【請求項4】
上記フルフリルアルコールをヒドロキシメチル化する段階は、100℃~150℃の温
度で行われることを特徴とする請求項1に記載のBHMFの製造方法。
【請求項5】
上記酸触媒は、上記フルフリルアルコールに対して0.05phr~0.3phrで混
合されることを特徴とする請求項1に記載のBHMFの製造方法。
【請求項6】
上記酸触媒は、pKa3.0~6.4を有する有機酸であり、
酢酸(Acetic acid
)、
アセト酢酸(Acetoacetic acid
)、
アジピン酸(Adipic acid
)、
アゼライン酸(Azelaic acid
)、
安息香酸(Benzoic acid
)、
クエン酸(Citric acid
)、
シクロヘキサンカルボン酸(Cyclohexanecarboxylic acid
)、
エノールピルビン酸(Enolpyruvic acid
)、
ギ酸(Formic acid
)、
フマル酸(Fumaric acid
)、
ガラクタル酸(Galactaric acid
)、
ガラクトン酸(Galactonic acid
)、
グルカル酸(Glucaric acid
)、
グルコン酸(Gluconic acid
)、
グルタル酸(Glutaric acid
)、
グリセリン酸(Glyceric acid
)、
2-ホスホグリセリン酸(Glyceric acid 2-phosphate
)、
グリコール酸(Glycolic acid
)、
グリオキシル酸(Glyoxylic acid
)、
ヒドロキシ酪酸(Hydroxybutyric acid
)、
イソ酪酸(Isobutyric acid
)、
イソフタル酸(Isophthalic acid
)、
イタコン酸(Itaconic acid
)、
乳酸(Lactic acid
)、
レブリン酸(Levulinic acid
)、
リンゴ酸(Malic acid)、
メチルマロン酸(Methyl malonic acid
)、
ピメリン酸(Pimelic acid
)、
コハク酸(Succinic acid
)、
スベリン酸(Suberic acid
)、
タルタル酸(Tartaric acid
)、
テレフタル酸(Terephthalic acid
)、
コハク酸一ナトリウム(Monosodium succinate
)及び
クエン酸二ナトリウム(Disodium citrate
)で構成された群から選択された有機酸を1種単独又は2種以上の混合で使用することを特徴とする請求項1に記載のBHMFの製造方法。
【請求項7】
上記水を用いて分液することは、低分子量フラン混合物に1~10重量比の水を投入し
た後、上層部に形成されたBHMF水溶液層を回収することを特徴とする請求項1に記
載のBHMFの製造方法。
【請求項8】
上記有機溶媒は、BHMFを選択的に溶解することができる極性溶媒であって、メタノ
ール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール及びブタノールからなる低分子量ア
ルコール系溶媒群、又はアセトン、ブタノン、ペンタノン及びメチルイソブチルケトンか
らなる低分子量ケトン系溶媒群から選択された溶媒を1種単独又は2種以上の混合で使用
することを特徴とする請求項1に記載のBHMFの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二官能性ヒドロキシメチル基(bifunctional hydroxymethyl group)を有するフランモノマー及びその製造方法に関する。より詳しくは、バイオマス由来フルフリルアルコール(Furfuryl alcohol)から製造された、高分子原料及びその他フランモノマー前駆体として活用可能な二官能性ヒドロキシメチル基を有するフランモノマー、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石油資源の有限性が明らかになり、これを使用する過程で派生する環境問題が深刻化するにつれてバイオマス資源の持続可能性と環境にやさしい長所がより浮き彫りになっている。このような観点からバイオマス基盤モノマー及びポリマー生産技術開発は学界と産業界のいずれにおいても重要な問題として扱われている。
【0003】
多様なバイオ由来素材のうちフラン高分子は、耐熱性、耐酸性及び接着性の面で優れた素材として鋳物産業や接着分野で熱硬化及び酸硬化性樹脂に使用されている。フラン構造は五炭糖又は六炭糖に酸と熱を加えるときに生成される構造であり、五炭糖はFurfuralに転換され、六炭糖はHydroxymethyl furfural(HMF)に転換されることで知られている。
【0004】
現在産業的に活用されているフラン素材の大部分は高分子に限定されているが、その代表的な理由は、フランモノマーの高い反応性により高分子化を起こして (Resinification)モノマーの形態で製造するのが容易ではないためである。また、その活用的側面において、主な使用先である鋳物産業の耐熱性バインダー素材に適用するためには、架橋密度が高く、高分子化が進んだフラン素材が必要であるため、高分子量のフランポリマー合成法の研究が集中的に行われた。これに反して、低分子形態のフランモノマーの開発は商業的関心を受けることができなかった。
【0005】
最近、モノマー水準のフランモノマーの重要性が再注目されて、米国、欧州など先進国を中心に研究が進められている。バイオマス由来フラン化合物は、既存の石油由来芳香族化合物と差別化される多様な特性と物性を提供し、精製された形態のフランモノマーの生産を通して規格化された多様なフランポリマーを合成することができる。
【0006】
代表的な研究としては、オランダのアバンティウム(Avantium)社の2,5-Furandicarboxylic acid(FDCA)モノマーの開発がある。同社は、既存のPolyethylene terephthalate(PET)素材の代替を目標としてFDCA基盤ポリエステルであるPolyethylene furanoate(PEF)を開発した。PEF素材は、PETに比べて気体遮断性が6倍まで高いことで知られている。
【0007】
一方、エポキシなどの高分子原料として適用が可能な二官能性ヒドロキシメチル基 (Bifunctional hydroxymethyl group)を有する2,5-Bis(hydroxymethyl)furan(BHMF)モノマーの生産技術も研究されている。しかし、BHMFは生産単価が高くて商業的に適用が不可能な水準であり、現在は試薬水準で高価に販売されている(>10$/g)。
【0008】
現在、BHMFの生産単価が高い理由は、次の通りである。既存のBHMFモノマーは、グルコース、フルクトースなどの六炭糖由来のHMFを前駆体としてこれを還元させることにより獲得することができた。しかし、HMFは、水溶液上で熱的及び化学的安定性が低くてレブリン酸(levulinic acid)、フミン(humin)などの副産物に転換され易いなど保存性に劣る。また、常圧で沸点が摂氏291℃~292℃と高くて蒸留時に変形が起き易いなど高濃度/大量生産に不利である。よって、六炭糖基盤のHMFを高純度に分離した後、これを再び還元する方式の現在のBHMF生産法は、効率性、経済性の面で不利である。このような副反応物生成問題を克服するために二相性反応系(biphasic reaction system)などの方法が考案されたが(Nature、2007、447:982)、収率低下、触媒使用の制限性、工程の複雑性などによって商業化に多くの制約がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のような問題点を解決するために、本発明者等は、経済的、効率的なBHMFモノマー合成方法について持続的に研究努力した結果、既存のHMFではないフルフリルアルコール(Furfuryl alcohol)を前駆体としてBHMFを生産することができるという事実に着眼して、フルフリルアルコールのヒドロキシメチル化 (Hydroxymethylation)工程とBHMFの高純度化工程で構成された製造方法を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の多様な実施例による二官能性ヒドロキシメチル基を有するフランモノマー (2,5-Bis(hydroxymethyl)furan,BHMF)製造方法は、フルフリルアルコール(Furfuryl alcohol)を用いて低分子量フラン混合物を合成する段階;及び、上記低分子量フラン混合物から二官能性ヒドロキシメチル基(bifunctional hydroxymethyl group)を有するフランモノマーを抽出及び高純度化する段階;を含むことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の多様な実施例により、バイオマス由来五炭糖基盤のフルフリルアルコールを用いてBHMFのような二官能性ヒドロキシメチル基を有するフランモノマーを非常に容易に合成することができる。本発明の多様な実施例によるBHMF製造方法は、産業的に有用性の高い原料を用いてBHMFを効率的に生産することができるため産業的価値が非常に高く、以後、BHMFを原料として利用する多様な派生フラン製品の商用化に決定的な役割を果たすことができる。非食用バイオマス又は廃バイオマス基盤のBHMF生産法という点で石油使用量を減縮する環境的な効果も期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の多様な実施例によるBHMF製造方法の流れ図である。
【
図2】本発明の多様な実施例によるBHMF製造方法で低分子量フラン混合物を合成する段階の詳細流れ図である。
【
図3】本発明の多様な実施例によるBHMF製造方法でBHMFを抽出及び高純度化する段階の詳細流れ図である。
【
図4】本発明の比較例1によって製造された低分子量フラン混合物のGPC データである。
【
図5】本発明の実施例1によって製造された低分子量フラン混合物のGPC データである。
【
図6】本発明の実施例2によって製造されたBHMFのGPC データである。
【
図7】本発明の実施例3によって製造された高純度BHMFのGPC データである。
【
図8】本発明の実施例3によって製造された高純度BHMFのFT-IR データである。
【
図9】本発明の実施例3によって製造された高純度BHMFの
1H NMR データである。
【
図10】本発明の実施例3によって製造された高純度BHMFのGC-MS データである。
【
図11】反応温度による副産物生成量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の多様な実施例による二官能性ヒドロキシメチル基を有するフランモノマー(2,5-Bis(hydroxymethyl)furan,BHMF)製造方法は、フルフリルアルコール(Furfuryl alcohol)を用いて低分子量フラン混合物を合成する段階;及び、上記低分子量フラン混合物から二官能性ヒドロキシメチル基(bifunctional hydroxymethyl group)を有するフランモノマーを抽出及び高純度化する段階;を含むことができる。
【0014】
以下、本発明によるBHMF製造方法を下記の具体的な例を参照して詳しく説明する。このとき、以下の内容は、本発明の特定の実施例の形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれるすべての変更、均等物乃至代替物を含むことと理解されなければならない。また、詳細な説明で使用される多様な構成要素は、記載の用語によって限定されてはならない。また、詳細な説明で使用される用語は、異なって定義されない限り、技術的又は科学的な用語を含み本発明の属する技術分野において通常の知識を有する者によって一般的に理解されるものと同一の意味を有している。
【0015】
以下、添付図面を参照して本発明の実施例を詳しく説明すると、次の通りである。
【0016】
図1は、本発明の多様な実施例によるBHMF製造方法の流れ図である。
図1を参照すると、本発明の多様な実施例によるBHMF製造方法は、低分子量フラン混合物を合成する段階(S100)及びBHMFを抽出及び高純度化する段階(S200)を含むことができる。
【0017】
低分子量フラン混合物を合成する段階(S100)では、フルフリルアルコール (Furfuryl alcohol)を用いて低分子量フラン混合物を合成することができる。原料前駆体であるフルフリルアルコールは、通常、フルフラール (Furfural)を還元して得ることができる。既存のBHMF製造方法の原料である高価なHMFと異なり、本発明の原料前駆体であるフルフラール及びフルフリルアルコールは産業的規模で低価格で生産されている(1,000$/ton~1,500$/ton)。
【0018】
フルフラールはリグノセルロース系バイオマス(Lignocellulosic biomass)を酸加水分解する時に生成される物質であり、主にキシロース (Xylose)のような五炭糖アルドペントース(Aldopentose)の脱水反応 (Dehydration reaction)を通して生成される。このような側面で最終的に製造されるBHMFはバイオマス基盤のフランモノマーと言え、このような方法でバイオ由来高分子を生産することができる。
バイオマス → フルフラール → フルフリルアルコール → BHMF → 高分子
【0019】
主原料であるフルフリルアルコール及びその前駆体であるフルフラールは商用化された製品であり(全世界年間40万トン生産)、これらを生産するための原料バイオマスは、トウモロコシの穂軸(Corncob)やサトウキビの絞りかす (Sugarcane bagasse)のような農業副産物である。これは、既存のBHMFの製造方法の主原料であるHMFは、主に食用作物(トウモロコシ、ジャガイモなど)から生産されるという点で差別化される側面である。このような側面で、本発明のように非食用バイオマスを出発原料として用いてフランモノマーを生産する技術は環境親和的な技術と言える。
【0020】
現段階でフルフリルアルコールの商業的活用は高分子フラン樹脂に限定されている。フラン樹脂は、フルフリルアルコール/ユリア-ホルムアルデヒド樹脂、フルフリルアルコール/ホルムアルデヒド樹脂、フルフリルアルコール/フェノール/ホルムアルデヒド樹脂など多様な形態で活用されており、用途によって単独で使用されたり充填材/補強材と共に使用される。従来のフラン樹脂は、耐食性、耐化学性、耐熱性の付与が主な目的であったため、高分子量のフランポリマー合成法が集中的に開発されてきた。一部、低分子量含量の高いフラン樹脂の開発例が存在するが、高分子量フラン樹脂に溶解性を付与して他の樹脂との相溶性を提供するための用途に局限されており、本発明のようにフルフリルアルコール由来BHMFモノマーのみを生産/精製した例はない。
【0021】
本発明の多様な実施例は、経済的、効率的なBHMFモノマー合成方法として、既存のHMFではない非食用バイオマス或いは廃バイオマス由来フルフリルアルコール(Furfuryl alcohol)を前駆体としてBHMFを生産することができる。
【0022】
図2は、本発明の多様な実施例によるBHMF製造方法で低分子量フラン混合物を合成する段階の詳細流れ図である。
図2を参照すれば、BHMF製造方法で低分子量フラン混合物を合成する段階 (S100)は、フルフリルアルコールをヒドロキシメチル化 (Hydroxymethylation)する段階(S110)及び未反応フルフリルアルコールを回収する段階(S120)を含むことができる。
【0023】
低分子量フラン混合物を合成する段階(S100)では、i)レブリン酸生成 (Formation of levulinic acid)、ii)ディールス・アルダー反応(Diels-Alder reaction)、及びiii)自己縮合(Self condensation)の3つの副反応を制御することができる。すなわち、低分子量フラン混合物を合成する段階(S100)は、3つの副反応を最小化しながらBHMF含量を最大化することができる。具体的に、低分子量フラン混合物を合成する段階(S100)では、i)レブリン酸生成を抑制するための反応器内の水分含量の最小化、ii)ディールス・アルダー反応を最小化するための反応温度範囲の調節、及びiii)自己縮合を最小化するための酸触媒選別及び原料配合比制御を通して副反応を最小化しながらもBHMF含量を最大化することができる。詳しく説明すると、次の通りである。
【0024】
フルフリルアルコールをヒドロキシメチル化する段階(S110)では、原料物質であるフルフリルアルコール、固相のホルムアルデヒド(formaldehyde)及び酸触媒を混合することができる。固相のホルムアルデヒドは、例えば、パラホルムアルデヒド(paraformaldehyde)であり得る。フルフリルアルコールをヒドロキシメチル化する段階(S110)では、パラホルムアルデヒドの熱分解によって生成された単分子ホルムアルデヒドがフルフリルアルコールと結合することができる。本発明の多様な実施例では、ヒドロキシメチル化原料としてパラホルムアルデヒドを使用することにより反応器内の水分含量を最小化することができ、レブリン酸生成を抑制することができる。よって、BHMFの収率を向上することができ、以後の工程でフランモノマーの分離効率性を高めることができる。
【0025】
通常、ヒドロキシメチル化反応は、ホルマリン(formalin)という水溶液状態のホルムアルデヒドを原料として使用する。商用化されたホルマリンは、30%~35%重量部の低分子ホルムアルデヒドが溶解された水溶液を主な構成物とする。ホルマリンの使用は、原料制御及び投入においては長所を有するが、反応器内の水分含量が高くなってヒドロキシメチル化反応時に相当量のレブリン酸を副産物として生成することになり、反応収率及びフランモノマー分離効率性の低下を引き起こす。
【0026】
本発明ではパラホルムアルデヒドという固形の高分子化されたホルムアルデヒドを原料として投入し、反応温度の調節を通してパラホルムアルデヒドの熱分解によるモノマーホルムアルデヒドの生成とフルフリルアルコールのヒドロキシメチル化がほぼ同時に起こるようにすることにより反応器内の水分含量を最小化することができる。
【0027】
フルフリルアルコールをヒドロキシメチル化する段階(S110)は、100℃~150℃の温度で行われることができる。より望ましくは、100℃~120℃の温度で行われることができる。これを通してディールス・アルダー反応を最小化することができ、BHMFの収率を向上させることができる。具体的に、工程温度が150℃を超過する場合、フルフリルアルコールを用いたBHMF合成時にディールス・アルダー反応が急激に起き触媒適用条件によって水分内にゲル化(Gelation)現象が現われて追加的な反応及び回収が不可能になり得る。フルフリルアルコールは高温でディールス・アルダー反応が起き、酸触媒下でこの反応がより促進される。また、フルフリルアルコールの自己縮合反応とディールス・アルダー反応が同時に起こる場合、急速なゲル化と共に発熱が起きて正常なBHMF製造が不可能である。一方、工程温度が100℃未満の場合、パラホルムアルデヒドの熱分解及びヒドロキシメチル化反応が阻害されて生産効率性が非常に低減し得る。
【0028】
フルフリルアルコールをヒドロキシメチル化する段階(S110)で原料物質である酸触媒は、pKa3.0~6.4を有する有機酸であり、Acetic acid、Acetoacetic acid、Adipic acid、Azelaic acid、Benzoic acid、Citric acid、Cyclohexanecarboxylic acid、Enolpyruvic acid、Formic acid、Fumaric acid、Galactaric acid、Galactonic acid、Glucaric acid、Gluconic acid、Glutaric acid、Glyceric acid、Glyceric acid 2-phosphate、Glycolic acid、Glyoxylic acid、Hydroxybutyric acid、Isobutyric acid、Isophthalic acid、Itaconic acid、Lactic acid、Levulinic acid、Malic acid、Methyl malonic acid、Pimelic acid、Succinic acid、Suberic acid、Tartaric acid、Terephthalic acid、Monosodium succinate及び Disodium citrateで構成された群から選択された1種以上を単独又は混合で使用することができる。より望ましくは、酸触媒はpKa3.5~4.5を有する酸を使用することができる。例えば、酸触媒としてコハク酸を使用することができる。本発明の多様な実施例によれば、酸触媒のpKaを3.0~6.4に制限することにより、ヒドロキシメチル化を行うことができる十分な酸度を提供すると共に不要な自己縮合を抑制することができる。反応メカニズム上、ヒドロキシメチル化反応と自己縮合反応がいずれも酸触媒によって活性化されるため自己縮合の完全な排除(副反応の完全除去)は不可能である。本発明の多様な実施例では酸触媒の適正な水準の酸度を維持してヒドロキシメチル化反応が自己縮合に比べて相対的に優位性を有するように調節することができる。
【0029】
具体的に、2.0又はそれよりも低いpKa値の酸触媒の場合、自己縮合及びディールス・アルダー反応が非常に速く起きて合成物の大部分が高分子化されるため低分子量のフランモノマー生産には適さないことがある。一方、pKaが6.4よりも高い酸の場合、ヒドロキシメチル化を行うには十分ではない酸度を提供して反応効率性が低下し、投入された原料及び副産物に対して生成されたBHMF量が非常に少なくなり得る。
【0030】
一方、pKa3.0~6.4を有する酸触媒は、フルフリルアルコールに対して0.05phr~0.3phr含まれることができる。pKa3.0~6.4を有する酸触媒がフルフリルアルコールに対して0.05phr未満で含まれる場合、低分子量フラン混合物の製造時、ヒドロキシメチル化反応が非常に遅くなり得る。また、pKa3.0~6.4を有する酸触媒がフルフリルアルコールに対して0.3phrを超過して含まれる場合、副産物の含量が増加し得る。
【0031】
フルフリルアルコールをヒドロキシメチル化する段階(S110)で、フルフリルアルコールはホルムアルデヒドに対して2倍~30倍のモル比で混合されることができる。望ましくは、フルフリルアルコールはホルムアルデヒドに対して6倍~15倍のモル比で混合されることができる。これを通してフラン高分子量体に対してBHMF生成量を極大化できる環境を調整することができる。本発明の多様な実施例では反応温度と触媒の酸度の側面でヒドロキシメチル化反応が可能な最小水準を適用することにより高分子量体の生成量を最小化できる。一方、反応時間が長くなりすぎる場合、副反応物も相当量生成され、反応器内に既に生成されたBHMFさえ追加的な高分子化に関与してモノマーとして存在しなくなる。このような問題を解決するために、本発明の多様な実施例では、ホルムアルデヒドに対してフルフリルアルコールを過量投入することにより、最大限短い反応時間内にBHMFが生成され、それによる副反応物生成量を減らすことができる。また、反応に関与しなかったフルフリルアルコールは減圧蒸留を通して簡単に回収が可能であり再使用が可能である。
【0032】
具体的に、フルフリルアルコールが2モル比未満で投入される場合、反応時間内にヒドロキシメチル化が十分になされず残存ホルムアルデヒドが相当量存在して収率低下問題が起こり、このホルムアルデヒドが全て反応に関与するために過酷な反応条件を適用する場合、高分子部の増加が不可避であり得る。フルフリルアルコールが30モル比を超過して投入される場合、BHMF生産効率性は増加し得るが、生産物に対して反応器の嵩増加が不可避で未反応フルフリルアルコールの回収工程に多くのエネルギと時間が消耗されるため商業的に有益であるとは言い難い。
【0033】
フルフリルアルコールをヒドロキシメチル化する段階(S110)は、例えば、上記のような工程条件で2時間~8時間進められることができる。工程時間が2時間未満の場合、フルフリルアルコールのヒドロキシメチル化が十分になされず残存ホルムアルデヒドが相当量存在しBHMF収率が低下し得る。工程時間が8時間を超過する場合、副反応によるレブリン酸生成、ディールス・アルダー反応によるゲル化現象又は不要な自己縮合による副反応物などが増加し得る。
【0034】
フルフリルアルコールをヒドロキシメチル化する段階(S110)は、中和工程を含むことができる。適正な工程時間、例えば2時間~8時間の工程時間が経った後、酸触媒を中和するための中和工程を進めることができる。中和工程のための中和剤としては、例えば、NaOHなどを使用することができる。中和剤は、酸触媒の投入量によって異なる量で投入されることができる。
【0035】
未反応フルフリルアルコールを回収する段階(S120)では、フルフリルアルコールをヒドロキシメチル化する段階(S110)の後、反応に関与しなかったフルフリルアルコールを回収することができる。例えば、未反応フルフリルアルコールを回収する段階(S120)は、中和工程以後の反応液を冷却して脱水を行った後、100℃~150℃の温度で減圧蒸留して進められることができる。本発明の多様な実施例によれば、副反応物生成量を減らすことにより、反応に関与しなかったフルフリルアルコールを減圧蒸留を通して簡単に回収することができ再使用が可能である。
【0036】
低分子量フラン混合物を合成する段階(S100)を通して合成された低分子量フラン混合物は、BHMFを含んで5以下のフラン環(Furan ring)繰り返し単位を有するフラン重合体が50%以上であり得る。また、BHMFを抽出及び高純度化する段階(S200)を通して合成されたBHMFは、2以下のフラン環繰り返し単位を有し、両末端にヒドロキシメチル基を有するフラン重合体が50%以上であり得る。
【0037】
図3は、本発明の多様な実施例によるBHMF製造方法でBHMFを抽出及び高純度化する段階の詳細流れ図である。
BHMFを抽出及び高純度化する段階(S200)では、低分子量フラン混合物を合成する段階(S100)で得られた低分子量フラン混合物から高純度のフランモノマーを分離することができる。低分子量フラン混合物を合成する段階(S100)で得られた低分子量フラン混合物には目標物質であるBHMFの他にも酸触媒の中和後に残存する触媒酸塩、レブリン酸塩及び微量の残存フルフリルアルコール、相当量のフランオリゴマー(n=1,2,3…)が共存する。大概の場合、このような不純物の含量が10%~50%と多様に存在し、反応条件によって不純物の総含量及びそれぞれの存在比を調節することができる。BHMFを抽出及び高純度化する段階(S200)でこのような不純物を取り除いてBHMFを高純度化することができる。
【0038】
図3を参照すると、BHMFを抽出及び高純度化する段階(S200)は、低分子量フラン混合物を水を用いて分液し、水溶液に溶解されたBHMFを回収する段階(S210)、有機溶媒を追加して不溶性塩成分を取り除く段階(S220)及び有機溶媒に溶解してから冷却して結晶化する段階(S230)のうち少なくともいずれか一つを含むことができる。上述の3つの段階が単独で活用されても有益な効果を現わすことができ、2つ以上の段階を共に適用する場合、高純度化の効率がより増大し得る。また、上述の3つの段階が順次適用されてもよいが、実施例がこれに限定されるわけではない。
【0039】
低分子量フラン混合物を水を用いて分液し、水溶液に溶解されたBHMFを回収する段階 (S210)では、フランオリゴマーのうち相対的に高い分子量を有する非水溶性部を取り除くために水を用いた分液法を適用することができる。この方法を適用すると、BHMF及び低分子量のフランオリゴマーの大部分が水に溶解及び分液されて上層に位置し、高分子部はレジンの形態で下層に分液される。水に溶解されたBHMF及び低分子量のフランオリゴマーは水溶液層の脱水工程を通して回収が可能であり、脱水工程で回収された水は再使用が可能である。このときに投入される水の量は、低分子量フラン混合物を合成する段階(S100)から収得した低分子量フラン混合物の重量部に対して1倍~10倍が望ましく、より望ましくは2倍~5倍を投入することができる。低分子量フラン混合物に対して水を1倍未満投入する場合、BHMFの抽出及び分液性の低下が現われて、水を用いた分液が有益な成果を提供できないことがある。低分子量フラン混合物に対して水を10倍超過して投入する場合、低分子部の分離効率は増加し得るが分液槽の嵩増加が不可避で脱水工程に多くのエネルギと時間が消耗されるため商業的に有益とは言い難い。
【0040】
有機溶媒を追加して不溶性塩成分を取り除く段階(S220)では、触媒酸塩及びレブリン酸塩の除去のために溶解度の差を利用した選択的溶解及び濾過法を適用することができる。BHMF及びフランオリゴマーは極性の有機溶媒に溶解度が高いのに対して、触媒酸塩及びレブリン酸塩は溶解度が非常に低くて固相として存在する。よって、混合物を有機溶媒に溶解してから濾過法を用いて固相として存在する塩(Salt)部の効果的な分離を行うことができる。有機溶媒に溶解されたBHMF及びフランオリゴマーは水溶液層の減圧蒸留工程を通して有機溶媒を取り除くことにより回収が可能であり、蒸留された有機溶媒は再使用が可能である。このときに使われる有機溶媒は極性溶媒であり、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール及びブタノールからなる低分子量アルコール系溶媒群又はアセトン、ブタノン、ペンタノン及びメチルイソブチルケトンからなる低分子量ケトン系溶媒群から選択された1種以上の溶媒を単独又は混合使用することが望ましい。
【0041】
有機溶媒に溶解してから冷却して結晶化する段階(S230)では、BHMF純度向上のための結晶化工程を適用することができる。先に説明した2つの段階(S210及びS220)の高純度化工程を適用して80%以上の純度を有するBHMFモノマー生産が可能であり、20%以下の不純物もヒドロキシメチル基を有するフランオリゴマーの形態であるためエポキシなどの高分子原料として使用可能である。しかし、必要によって90%以上の純度を有する高純度BHMFモノマーを生産しなければならない場合、結晶化工程を追加的に適用することができる。
【0042】
BHMFとフランオリゴマーは繰り返し単位の数のみ異なるだけでフラン環とヒドロキシメチル基を主要構造とするため、BHMFのみを選択的に結晶化するのは容易ではない。よって、結晶化の基本原理である溶解選択度において、BHMFには溶解度が低く、フランオリゴマーには溶解度が高い適切な溶媒を選択することが結晶化効率に決定的な影響を及ぼす。本発明者等は商業的に有用可能な多様な溶媒に対する検討を行い、ケトン系及びアルコール系溶媒のうち一部がこのような溶解選択度で強みを有することを確認した。上記有機溶媒にBHMFとフランオリゴマーの混合物を投入した後、40℃以上の中温条件でBHMF飽和溶液を生成する。溶媒の種類によってBHMFの融点である76℃以上に加熱する時、BHMFと有機溶媒が液相の混合液の状態で存在することができる。以後、飽和溶液又は液相混合液を冷却するとBHMFモノマーの結晶を得ることができ、これらの純度は結晶化以前に比べて上昇する。このときに使用する有機溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、ブタノン、ペンタノン、メチルイソブチルケトンからなる群から選択された1種単独又は2種以上の混合の溶媒が望ましく、より望ましくは、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、ブタノンからなる群から選択された1種単独又は2種以上の混合の溶媒を使用することができる。通常、固相分に対して溶媒の投入量が増加するほど結晶化後のBHMF純度は増加するが回収率は減少する。溶媒の投入量が減少すると、その反対の効果を期待することができる。
【0043】
以下、下記比較例及び実施例を参照して本発明のBHMF製造方法をより詳しく説明する。
比較例1
下記表1に示された投入原料の相対重量比によって、反応器内にフルフリルアルコール、ホルマリン、コハク酸を一括投入した後、温度を80℃に維持し常圧下で4時間反応した。以後、コハク酸投入量に対して2モル比の液相NaOHを投入して反応液を中和した。反応液を冷却した後60℃を維持し100torrに減圧して脱水を行った。
【0044】
実施例1(低分子量フラン混合物の合成)
下記表1に示された投入原料の相対重量比によって、反応器内にフルフリルアルコール、パラホルムアルデヒド、コハク酸を一括投入した後、温度を120℃に維持し常圧下で4時間反応した。以後、コハク酸投入量に対して2モル比の液相NaOHを投入して反応液を中和した。反応液を冷却した後60℃を維持し100torrに減圧して脱水を行った。反応終結後、未反応フルフリルアルコールの回収のために120℃を維持し100torrに減圧してフルフリルアルコールの回収を行った。最終的に赤褐色の粘性液相部を回収した。本来、BHMFは常温で固相として存在するが、フラン構造基盤の液相不純物がBHMF溶解性を有するため低分子量フラン混合物が液相として回収された。
【0045】
【表1】
図4は、本発明の比較例1によって製造された低分子量フラン混合物のGPC データである。
図5は、本発明の実施例1によって製造された低分子量フラン混合物のGPC データである。比較例1及び実施例1による反応生成物をサンプリングし、2.5wt%でTHFに溶かしてGPC機器分析(Shimadzu,Gel Permeation Chromatography Systems;Shodex,KF-801、802、803、805 Columns)した。分析温度は40℃であり、移動相はTetrahydrofuran(HPLC grade)を1ml/min流した。
【0046】
図4及び上記表1を参照すると、比較例1によって製造された低分子量フラン混合物の分析の結果、サンプル内にレブリン酸の濃度が相当高く(RT=39.5min、40.4area%)、目標物質であるBHMFの含量は相対的に少量であることを確認することができた(RT=38.9min、16.6area%)。これは、ホルマリンを原料として使用する場合、水との接触により目標とするヒドロキシメチル化反応よりもフルフリルアルコールのレブリン酸化反応がより優勢であることが分かる。比較例1では未反応フルフリルアルコールの回収をしなかったため、残存フルフリルアルコールも相当量検出された(RT=40.4min、36.7area%)。
【0047】
一方、
図5及び上記表1を参照すると、実施例1によって製造された低分子量フラン混合物の分析の結果、サンプル内に目標物質であるBHMFの含量が過半であることを確認することができた(RT=39.1min、51.0area%)。比較例1で相当量検出されたレブリン酸の含量が本実施例では大幅に減少した(RT=39.8min、5.1%)。これは、パラホルムアルデヒドを原料として使用する場合、水との接触が最小化されて目標のヒドロキシメチル化反応がフルフリルアルコールのレブリン酸化反応よりも優勢であることが分かる。本実施例では未反応フルフリルアルコールの回収を行ったため、残存フルフリルアルコールの含量が減少した(RT=40.6min、11.5area%)。
【0048】
実施例2(低分子量フラン混合物内の不純物除去)
上記実施例1によって合成された低分子量フラン混合物内に存在する不純物を下記の方法で取り除いた。先ず、高い分子量を有する非水溶性部を取り除くために水を用いた分液法を適用した。上記混合物の重量部に対して4倍の水を一括投入した後、常温で15分間撹拌して混合物内のBHMFが水に溶けることができる環境にした。以後、上記混合液を分液漏斗に一括投入した後、30分間静置して分液を行った。分液漏斗の上部には黄色のBHMF水溶液が、下部には赤褐色の非水溶性高分子フラン混合液が存在した。上層と下層を別に分離した後、上層のBHMF水溶液層のみを以後の工程に使った。
【0049】
引き続いて上記回収されたBHMF水溶液の脱水を行った。反応器内のBHMF水溶液を撹拌し、60℃、100torrの条件で脱水工程を行い、脱水後半部で30分以内の短時間の間に80℃、30torrの条件を適用して微量の水分を最大限取り除いた。脱水後に回収したBHMFモノマーは融点である76℃以下に冷却されるにつれて徐々に結晶化されて常温で固相として存在した。
【0050】
追加的に、微量存在する触媒酸塩及びレブリン酸塩を完全に取り除くために上記BHMFモノマーを3重量比のアセトンに溶解した。30℃程度の微温で30分間撹拌すると、BHMFモノマーは全て溶解され、触媒酸塩及びレブリン酸塩は浮遊物として存在した。ブフナー漏斗(Buchner funnel)に濾紙をのせ減圧濾過して上記浮遊物を取り除き、アセトンに溶解されたBHMFモノマー部を回収した。回収された溶液はアセトンの蒸留を通して完全に乾燥され、最終的に明るい黄色の固相のBHMFモノマーを回収した。
【0051】
図6は、本発明の実施例2によって製造されたBHMFのGPC データである。実施例2によって回収されたBHMFを2.5wt%でTHFに溶かしてGPC機器分析(Shimadzu,Gel Permeation Chromatography Systems;Shodex,KF-801、802、803、805 Columns)した。分析温度は40℃であり、移動相はTetrahydrofuran (HPLC grade)を1ml/min流した。
【0052】
図6を参照すると、実施例2によって回収されたBHMF分析の結果、サンプル内に目標物質であるBHMFの含量が大多数であることを確認することができた(RT=39.2min、82.4area%)。ほぼ全ての高分子量体は除去され、低分子量フラン混合物に残存していた未反応フルフリルアルコールも分液及び脱水過程で共に除去されて1%未満存在することを確認した。
【0053】
実施例3(BHMF結晶化)
上記実施例2によって収得されたBHMFモノマーの結晶化を通してBHMF純度をさらに向上させた。BHMFモノマーに対して0.5重量比のアセトンを投入した後、55℃で30分間撹拌した。撹拌後、液相のBHMF-アセトン溶液が回収され、この溶液を撹拌し、25℃まで冷却してから温度を維持し、6時間撹拌した。溶液が冷却されるにつれて粉末タイプの高純度BHMFが析出され、撹拌が持続されるにつれてその生成量が増加した。以後、ブフナー漏斗(Buchner funnel)に濾紙をのせ減圧濾過して上記粉末タイプの高純度BHMFを回収し、濾紙を通過したアセトン溶液は再使用を目的として別に分離した。上記BHMF粉末の減圧濾過状態で少量のアセトンを塗布して短時間露出させることにより1次洗浄を行った。次いで、BHMF粉末の表面のアセトン溶液を取り除くためにヘキサン (n-hexane)で表面洗浄して最終的にオフホワイト(off-white)色の高純度BHMF粉末を収得し、60℃のオーブンで1時間乾燥した後、機器分析した。
【0054】
図7は、本発明の実施例3によって製造された高純度BHMFのGPC データである。実施例3によって回収された高純度BHMFを2.5wt%でTHFに溶かしてGPC機器分析(Shimadzu,Gel Permeation Chromatography Systems;Shodex,KF-801、802、803、805 Columns)した。分析温度は40℃であり、移動相はTetrahydrofuran(HPLC grade)を1ml/min流した。
【0055】
図7を参照すると、実施例3によって製造された高純度BHMF分析の結果、BHMFが高純度化されたことを確認することができた(RT=39.2min、99.7area%)。
【0056】
図8は、本発明の実施例3によって製造された高純度BHMFのFT-IR データである。
図8を参照すると、高純度BHMFのFT-IR機器分析(Jasco,FT/IR-4100)を実施した結果は、下の通りである。
FT-IR(equipped with ATR accessory):3318、3224、2943、1561、1453、1398cm
-1
【0057】
図9は、本発明の実施例3によって製造された高純度BHMFの
1H NMRデータである。
図9を参照すると、高純度BHMFの
1H NMR機器分析を実施した結果は、下の通りである。
1H NMR(400MHz,D2O):δ 6.31(s,2H)、4.51(s,4H);
【0058】
図10は、本発明の実施例3によって製造された高純度BHMFのGC-MS データである。実施例3によって回収された高純度BHMFを0.2wt%でTHFに溶かしてGC-MS機器分析(Shimadzu,GCMS-QP5050;SGE Analytical Science,BP5 Column)した。
図10を参照すると、高純度BHMFのGC/MS機器分析の結果、実施例3によって製造した高純度BHMFの分子量が文献として知られている値と同じ128であることを確認することができる。
【0059】
一方、上記実施例1の低分子量フラン混合物の合成において反応温度範囲設定の重要性を示すための実施例を行った。すなわち、上述したようにフルフリルアルコールをヒドロキシメチル化する段階(S110)は、100℃~150 ℃の温度で行われることができるが、温度による原料フルフリルアルコールの安定性を確認し、副産物生成量を効果的に制御することができる温度範囲を検証するための実験を行った。フルフリルアルコールのヒドロキシメチル化反応は100℃以上の温度を要するため、いくらかの高分子量フランポリマーなどの副産物生成を伴う。
【0060】
実施例4(反応温度による副産物生成)
反応器内にフルフリルアルコール及びコハク酸3phr(part per hundred resin)を一括投入した後、撹拌し、反応器内の温度を20℃/hrの速度で昇温させた。昇温されるにつれて自己縮合による高分子化反応が起きてフルフリルアルコールの色相が徐々に暗くなることが確認された。
【0061】
図11は、反応温度による副産物生成量を示すグラフである。すなわち、
図11は、反応温度がフルフリルアルコールの安定性に及ぶ影響を表わす。実施例4による物質を80℃から160℃までの温度区間において10℃間隔でサンプリングし、各サンプルに対してGPC分析して副産物生成量を測定した。GPC分析は、2.5wt%でTHFに溶かしてGPC機器分析(Shimadzu,Gel Permeation Chromatography Systems;Shodex,KF-801、802、803、805 Columns)した。分析温度は40℃であり、移動相はTetrahydrofuran(HPLC grade)を1ml/min流した。
【0062】
図11を参照すると、100℃~150℃の温度では副産物生成量が投入したフルフリルアルコールに対して20%以内であることが確認されて副産物生成量を効果的に制御することができる温度範囲であることを確認した。特に、100℃~120℃の区間では副産物生成量が投入したフルフリルアルコールに対して5%以内であることが確認されて副産物生成量が非常に効果的に制御されることを確認した。しかし、160℃から副産物生成量が20%を超過することが確認された。すなわち、150℃を超過する温度で通常のフルフリルアルコールのヒドロキシメチル化反応時間に該当する2時間以上維持される場合、粘度及び温度の急激な上昇と共にゲル化(Gelation)されて回収不可能な固相に変形した。
【0063】
一方、上記実施例1の低分子量フラン混合物の合成において選別される酸触媒のpKa範囲設定の重要性を示すための実施例を行った。上述のようにフルフリルアルコールのヒドロキシメチル化反応は酸触媒を要するため、いくらかの高分子量フランポリマーなどの副産物生成を伴う。下記実施例5は酸触媒による原料フルフリルアルコールの安定性を確認したもので、副産物生成量を効果的に制御することができる触媒のpKa範囲を示している。
【0064】
実施例5(酸触媒による副産物生成量の測定)
ガラス容器にフルフリルアルコール(Furfuryl alcohol、以下表2で“FA”と言う)及び下記表2による物質の酸触媒3phrを一括投入した後、密封して90℃のオーブンに90分間露出させた。酸触媒に露出されることにより高分子化反応が起きてフルフリルアルコールの色相が徐々に暗くなるのが確認され、一部はゲル化されて固体になった。
【0065】
サンプルを常温まで冷却した後、各サンプルに対してGPC分析して副産物生成量を測定した。GPC分析は、2.5wt%でTHFに溶かしてGPC機器分析 (Shimadzu,Gel Permeation Chromatography Systems;Shodex,KF-801、802、803、805 Columns)した。分析温度は40℃であり、移動相はTetrahydrofuran(HPLC grade)を1ml/min流した。
【0066】
一方、上述の実施例5は酸触媒のpKaによる副産物生成量及び安定性を確認するために実施例1での酸触媒よりも多い量である3phrの酸触媒を投入して実験したが、実際、低分子量フラン混合物製造時には上述のようにフルフリルアルコールに対して0.05phr~0.3phrの酸触媒が投入されることができる。
【0067】
下記表2を参照すると、pKa4.0以上の酸触媒では副産物生成量が投入したフルフリルアルコールに対して10%以内と僅かであった。また、pKa3.13のクエン酸3phr適用サンプルで副産物生成量が増加したが、本発明による低分子量フラン混合物製造時、酸触媒はフルフリルアルコールに対して0.05phr~0.3phr含まれるため、26.8%の副産物含量よりは少ないのが当然である。したがって、クエン酸も本発明による酸触媒として使用可能であることを確認することができる。一方、その以下のpKaを有するリン酸及びシュウ酸触媒適用時、完全にゲル化されて回収及びGPC分析が不可能であった(副産物含量~100%)。
【0068】
【表2】
上述の実施例に説明された特徴、構造、効果などは、本発明の少なくとも一つの実施例に含まれ、必ずしも一つの実施例にのみ限定されるものではない。さらに、各実施例で例示された特徴、構造、効果などは、実施例の属する分野の通常の知識を有する者によって他の実施例に対しても組み合わせ又は変形されて実施可能である。よって、このような組み合わせと変形に係る内容は、本発明の範囲に含まれるものとして解釈されなければならない。
【0069】
以上、実施例を中心に説明したが、これは単に例示であるだけであって本発明を限定するものではなく、本発明の属する分野の通常の知識を有する者であれば本実施例の本質的な特性を逸脱しない範囲で以上に例示されていない様々な変形と応用が可能であることが分かるはずである。例えば、実施例に具体的に示された各構成要素は変形して実施可能なものである。そして、このような変形と応用に関係する差異点は、添付の請求範囲で規定する本発明の範囲に含まれるものと解釈されなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の多様な実施例により、バイオマス由来五炭糖基盤のフルフリルアルコールを用いてBHMFのような二官能性ヒドロキシメチル基を有するフランモノマーを非常に容易に合成することができる。本発明の多様な実施例によるBHMF製造方法は、産業的に有用性の高い原料を用いてBHMFを効率的に生産することができるため産業的価値が非常に高く、以後、BHMFを原料として利用する多様な派生フラン製品の商用化に決定的な役割を果たす。非食用バイオマス又は廃バイオマス基盤のBHMF生産法という点で石油使用量を減縮する環境的な効果も期待することができる。