(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】色ずれのない多層構造体及びその構造体上の保護コーティング
(51)【国際特許分類】
C09C 3/06 20060101AFI20220315BHJP
【FI】
C09C3/06
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2015160731
(22)【出願日】2015-08-17
【審査請求日】2018-07-24
【審判番号】
【審判請求日】2020-06-18
(32)【優先日】2014-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507342261
【氏名又は名称】トヨタ モーター エンジニアリング アンド マニュファクチャリング ノース アメリカ,インコーポレイティド
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(72)【発明者】
【氏名】ウ ソンタオ
(72)【発明者】
【氏名】コア ボ
(72)【発明者】
【氏名】デバシッシュ バネルジー
(72)【発明者】
【氏名】石井 正彦
【合議体】
【審判長】亀ヶ谷 明久
【審判官】川端 修
【審判官】瀬下 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-258579(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0211303(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0265668(US,A1)
【文献】特表2008-510866(JP,A)
【文献】特表2013-518946(JP,A)
【文献】特開平7-268241(JP,A)
【文献】特表2009-511725(JP,A)
【文献】特表2010-526015(JP,A)
【文献】特表2008-508404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09C 1/00-3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射体層と、前記反射体層にわたって延在する誘電体層と、前記誘電体層にわたって延在する吸収体層とを含み、前記反射体層、誘電体層及び吸収体層が実質的に平坦な層であり、広帯域電磁放射に曝し、かつ0°~45°の間の角度から観察したときに、200nmより小さい所与の半値幅(FWMH)及びCIELAB色空間において30°より小さい所与の色ずれを有する可視電磁放射の1つの帯域を反射する顔料、及び
前記顔料の外表面を被覆している酸化物層を含む耐候性コーティングであって、かつ前記顔料の光触媒活性を、前記耐候性コーティングを有しない前記顔料と比較して、少なくとも50%減少させる耐候性コーティング、
を有
し、
前記耐候性コーティングが、第1の酸化物層及び第2の酸化物層を有し、前記第1の酸化物層が、酸化ケイ素であり、かつ前記第2の酸化物層が、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、及び酸化セリウムからなる群のうちの少なくとも2つの組み合わせである混合酸化物層である、
全方向構造色顔料。
【請求項2】
前記耐候性コーティングを除いた前記顔料が酸化物層を含まない、請求項1に記載の全方向構造色顔料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護コーティングを有する多層薄膜構造体、及び特に、広帯域電磁放射に曝され、様々な角度から観察した場合に最小又は認識不能な色ずれを呈し、保護コーティングを有する多層薄膜構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
<関連出願の相互参照>
本願は、2014年4月1日出願の米国特許出願第14/242,429号の一部継続出願(CIP)であり、これは更に、2013年12月23日出願の米国特許出願第14/138,499号のCIPであり、これは更に、2013年6月8日出願の米国特許出願第13/913,402号のCIPであり、これは更に、2013年2月6日出願の米国特許出願第13/760,699号のCIPであり、これは更に、2012年8月10日出願の米国特許出願第13/572,071号のCIPであり、これは更に、2012年2月5日出願の米国特許出願第13/021,730号のCIPであり、これは更に、2010年6月4日出願の米国特許出願第112/793,772号(米国特許第8,736,959号)のCIPであり、これは更に、2009年2月18日出願の米国特許出願第12/388,395号(米国特許第8,749,881号)のCIPであり、これは更に、2007年8月12日出願の米国特許出願第11/837,529号(米国特許第7,903,339号)のCIPである。2013年6月8日出願の米国特許出願第13/913,402号は、2011年1月26日出願の米国特許第13/014,398号のCIPであり、これは更に2010年6月4日出願の米国特許第12/793,772号のCIPである。2011年1月26日出願の米国特許出願第13/014,398号は、2010年1月13日出願の米国特許第12/686,861のCIPであり、これは更に2009年2月19日出願の米国特許第12/389,256号(米国特許第8,329,247号)のCIPであり、これらのすべては、それらの全体が参照により援用される。
【0003】
多層積層体から作られる顔料が知られている。さらに、高彩度全方向構造色を呈し、又はもたらす顔料も知られている。しかしながら、これらのような公知技術の顔料は、所望の色特性を得るために、39もの薄膜層を必要としていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
薄膜多層顔料の製造に関する費用は、必要とされる層の数に比例すると理解されたい。そのため、誘電体材料の多層積層体を使用した高彩度全方向構造色顔料の製造に関する費用は、非常に高額になりうる。それゆえ、最小限の薄膜層を必要とする高彩度全方向構造色顔料が望ましい。
【0005】
上記に加えて、太陽光、及び特に紫外光に曝すと、顔料は色あせ、変色などを呈することがあると理解されたい。そのため、耐候性のある高彩度全方向構造色顔料がさらに要求されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
保護コーティングを有する全方向構造色顔料を提供する。この顔料は、第1の材料の第1層と、第2の材料の第2層を有し、第2層は第1層にわたって延在している。加えて、この顔料を広帯域電磁放射に曝し、0°~45°の間の角度から観察したとき、この顔料は300nmより小さい所与の半値幅(FWHM)、及び30°より小さい所与の色ずれを有する電磁放射の帯域を反射する。さらに、この顔料は、その外表面を被覆し、かつこの顔料の相対的な光触媒活性を少なくとも50%減少させる、耐候性コーティングを有する。
【0007】
この耐候性コーティングは、酸化物層を含むことができ、またこの酸化物層は、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、及び/又は酸化セリウムから選択することができる。加えて、耐候性コーティングは、第一の酸化物層及び第二の酸化物層を含むことができ、第二の酸化物層は第一の酸化物層と異なる。さらに、第二の酸化物層は、少なくとも2つの異なる酸化物の組み合わせである混合酸化物層であってよい。最後に、この顔料そのもの、即ち、保護コーティングを除いたこの顔料は、酸化物層を有しない。
【0008】
保護コーティングを有する全方向構造色顔料を製造する方法を、さらに公開する。この方法は、上記の構造と特性を有する複数の顔料粒子を供給すること、及びこの複数の顔料粒子を第一の液体に懸濁して顔料懸濁液を形成することを含む。加えて、第二の液体、及び酸化物構成元素、例えばケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、又はセリウムを含んでいる酸化物前駆体を供給する。この顔料懸濁液と、酸化物前駆体を混合すると、耐候性のある酸化物コーティングが施された複数の顔料粒子の沈殿物となり、このコーティングは、この顔料の相対的な光触媒活性を少なくとも50%減少させる。
【0009】
いくつかの例において、第一の液体は、第一の有機溶媒であり、第二の液体は第二の有機溶媒である。さらに、第一及び第二の有機溶媒は、有機極性溶媒、例えばn-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、エタノール、n-ブタノール、及びアセトンであってよい。他の例において、第一の有機溶媒及び第二の有機溶媒は極性プロトン性有機溶媒であってよい。
【0010】
酸化物前駆体に関して、この酸化物構成元素であるケイ素は、テトラエトキシシランの形態であってよく、この酸化物構成元素であるアルミニウムは、硫酸アルミニウム、及びアルミニウム-トリ-sec-ブトキシドのうち少なくとも一つの形態であってよく、この酸化物構成元素であるジルコニウムは、ジルコニウムブトキシドの形態であってよく、この酸化物構成元素であるセリウムは、硝酸セリウム六水和物、及び硫酸セリウムのうち少なくとも一つの形態であってよく、かつこの酸化物構成元素であるチタンは、チタンエトキシド、チタンイソプロポキシド、及びチタンブトキシドのうち少なくとも一つの形態であってよい。
【0011】
他の例において、第1の液体は、第1の水性液体であり、第2の液体は第2の水性液体である。さらに、この酸化物構成元素であるケイ素は、ケイ酸ナトリウムの形態であってよく、この酸化物構成元素であるアルミニウムは硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウム水和物、アルミン酸ナトリウムのうち少なくとも一つの形態であってよく、この酸化物構成元素であるジルコニウムは、塩化ジルコニウム八水和物の形態であってよく、この酸化物構成元素であるセリウムは、硝酸セリウム六水和物の形態であってよく、この酸化物構成元素であるチタンは、四塩化チタンの形態であってよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】
図1Aは、入射する電磁放射を反射、又は透過している誘電体層(DL)の略図である。
【
図1B】
図1Bは、入射する電磁放射を反射している反射体層(RL)の略図である。
【
図1C】
図1Cは、入射する電磁放射を吸収している吸収体層(AL)の略図である。
【
図1D】
図1Dは、入射する電磁放射を反射、吸収、及び透過している選択的吸収体層(SAL)の略図である。
【
図2】
図2は、複数の誘電体層から作られた第1世代の全方向構造色多層薄膜による入射電磁放射の反射及び透過の略図である。
【
図3】
図3は、複数の誘電体層から作られた第1世代の全方向構造色多層薄膜の略図である。
【
図4】
図4は、電磁放射のTMモードとTEモードについての0.2%のレンジ対ミッドレンジ百分率の比較を表すグラフである。
【
図5】
図5は、
図4に示されるケース2についての波長の関数としての反射率グラフである。
【
図6】
図6は、
図4に示されるケース1、2、及び3における中心波長の散乱を表すグラフである。
【
図7】
図7は複数の誘電体層及び一つの吸収体層から作られた第2世代の全方向構造色多層薄膜による入射電磁放射の反射及び吸収の略図である。
【
図8】
図8は、複数の誘電体層、一つの吸収体層、及び/又は反射体層から作られた第2世代の全方向構造色多層薄膜の略図である。
【
図9A】
図9Aは、彩度(C*)が100であり、かつ反射率(最大反射率)が60%である複数の誘電体層及び吸収体層/反射体層から作られた第2世代の5層全方向構造色多層薄膜の略図である。
【
図9B】
図9Bは、0°~45°の間の角度から観察された、第1世代の11層全方向構造色多層薄膜と比較した、
図9Aにおいて示される第2世代の5層全方向構造色多層薄膜の反射率対波長のグラフである。
【
図10】
図10は、誘電体層、選択的吸収体層(SAL)、及び反射体層から作られた第3世代の全方向構造色多層薄膜の略図である。
【
図11A】
図11Aは、500nmの波長を有する電磁放射(EMR)に曝されたZnS誘電体層内の、ゼロ又はほぼゼロの電場点の略図である。
【
図11B】
図11Bは、300nm、400nm、500nm、600nm、及び700nmの波長を有するEMRに曝されたときの、電場の二乗の絶対値(|E|
2)対
図1Aに示されるZnS誘電体層の厚さのグラフである。
【
図12】
図12は、基盤又は反射体層にわたって延在しており、かつ誘電体層の外表面の垂直方向から角度θで電磁放射に曝されたときの誘電体層の略図である。
【
図13】
図13は、434nmの波長を有するEMRに対するZnS誘電体層内のゼロ又はほぼゼロの電場点に、Cr吸収体層が配置された、ZnS誘電体層の略図である。
【
図14】
図14は、Cr吸収体層を有しない多層積層体(例えば
図1A)、及びCr吸収体層を有する多層積層体(例えば
図3A)が白色光に曝されたときの、反射百分率対反射EMR波長のグラフである。
【
図15A】
図15Aは、Al反射体層にわたって延在するZnS誘電体層(例えば
図4A)が表す第1の高調波、及び第2の高調波のグラフである。
【
図15B】
図15Bは、Al反射体層にわたってZnS誘電体層が延在し、かつ
図8Aにおいて示されるこの第2の高調波が吸収されるようにCr吸収体層がZnS誘電体層内に配置されている、多層積層体についての、反射百分率対EMR波長のグラフである。
【
図15C】
図15CはAl反射体層にわたってZnS誘電体層が延在し、かつ
図8Aにおいて示されるこの第1の高調波が吸収されるようにCr吸収体層がZnS誘電体層内に配置されている、多層積層体についての、反射百分率対EMR波長のグラフである。
【
図16A】
図16Aは0°~45°の間の角度からの入射光の曝露に対するCr吸収体層の電場の角度依存性を示す、電場の二乗対誘電体層の厚さのグラフである。
【
図16B】
図16Bは外表面に対する垂線(表面に対する垂線に対して0°)に対して0°~45°の間の角度から白色光に曝されたときのCr吸収体層による吸収率%対反射EMR波長のグラフである。
【
図17A】
図17Aは、本発明の実施形態に基づく、赤色全方向構造色多層積層体の略図である。
【
図17B】
図17Bは、
図10Aに示されるCu吸収体層の吸収率%対
図10Aに示される多層積層体に対する0°~45°の間の角度からの白色光の曝露についての反射EMR波長のグラフである。
【
図18】
図18は、0°の角度から白色光を曝したときの赤色全方向構造色多層積層体の概念の証明のため計算値/シミュレーション値のデータ及び実験データ間の反射率%対反射EMR波長を比較したグラフである。
【
図19】
図19は、本発明の実施形態に基づく全方向構造色多層積層体についての反射率%対波長のグラフである。
【
図20】
図20は、本発明の実施形態に基づく全方向構造色多層積層体についての反射率%対波長のグラフである。
【
図21】
図21は、本発明の実施形態に基づく全方向構造色多層積層体についての反射率%対波長のグラフである。
【
図22】
図22は、本発明の実施形態に基づく全方向構造色多層積層体についての反射率%対波長のグラフである。
【
図23】
図23は、彩度及び色相シフトを、従来の塗料と本発明の実施形態に基づく顔料から作成された塗料(試料(b))との間で比較した、CIELAB色空間を用いたa*b*カラーマップの一部を示すグラフである。
【
図24】
図24は、本発明の実施形態に基づく全方向構造色多層積層体の略図である。
【
図25】
図25は、本発明の実施形態に基づく全方向構造色多層積層体の略図である。
【
図26】
図26は、本発明の実施形態に基づく全方向構造色多層積層体の略図である。
【
図27】
図27は、本発明の実施形態に基づく4層全方向構造色顔料の略図である。
【
図28】
図28は、本発明の実施形態に基づく7層全方向構造色顔料の略図である。
【
図29】
図29は、本発明の実施形態に基づく、保護コーティングを有する11層全方向構造色顔料の略図である。
【
図30】
図30は、本発明の実施形態に基づく、2又はそれ以上の層を含む保護コーティングの略図である。
【
図31】
図31は、いくつかの保護コーティングを有する全方向構造色顔料の、正常化された相対的な光触媒活性のプロットグラフである。
【
図32A】
図32Aは、保護コーティングを有しない、複数の七層全方向構造色顔料についての、一対の走査型電子顕微鏡(SEM)画像のうちの一つである。
【
図32B】
図32Bは、酸化ケイ素及び酸化ジルコニウム‐酸化アルミニウムの保護コーティングを有する複数の七層全方向構造色顔料についての、一対の走査型電子顕微鏡(SEM)画像のうちの一つである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
全方向構造色顔料を提供する。この全方向構造色顔料は、0°~45°の間の角度から観察した場合に、可視スペクトルにおいて電磁放射の狭帯域を反射し、かつ小さい又は識別不能な色ずれを有する多層薄膜(また、本明細書において多層積層体とも呼ばれる)の形態を有している。この多層薄膜は、塗料組成中の顔料、構造体上の連続的な薄膜、及びその他同種のものに使用することができる。
【0014】
この多層薄膜は、第1の層及び第1の層にわたって延在する第2の層を有する多層積層体含んでいる。ある例において、この多層積層体は、300nmより小さい、より好ましくは200nmより小さい、いくつかの例においては150nmより小さいFWMHを有する電磁放射の狭帯域を反射する。この多層薄膜を広帯域電磁放射、例えば白色光に曝し、かつ0°~45°の間の角度から観察したときに、この多層薄膜は、50nmより小さく、より好ましくは40nmより小さく、さらに好ましくは30nmより小さい色ずれをさらに有している。さらに、多層積層体はUV領域及び/又はIR領域に電磁放射の個別の反射帯域を有していてよく、有していなくてもよい。
【0015】
この多層積層体の全厚は、2μmより小さく、好ましくは1.5μmより小さく、さらにより好ましくは1.0μmより小さい。したがって、多層積層体は薄層塗料コーティングの塗料顔料として利用することができる。
【0016】
第1、及び第2の層は誘電体材料から作ることができ、代替的に、第1及び/又は第2の層は吸収体材料から作ることができる。吸収体材料は、選択的吸収体材料、例えばCu、Au、Zn、Sn、これらの合金、及び同種のもの、又は代替的に、有色誘電体材料、例えばFe2O3、Cu2O、これらの組み合わせ、及び同種のものを含んでいる。この吸収体材料は、さらに、非選択吸収材料、例えばCr、Ta、W、Mo、Ti、窒化Ti、Nb、Co、Si、Ge、Ni、Pd、V、酸化第二鉄、これらの組み合わせ又は合金、並びに同種のものであってよい。選択的吸収体材料から作られるこの吸収体層の厚さが20~80nmの間であるのに対して、非選択的吸収体材料から作られる吸収体層の厚さは5~30nmである。
【0017】
この多層積層体はさらに、第1の層及びそれにわたって第2の層が延在する反射体層を含んでおり、この反射体層は、例えばAl、Ag、Pt、Cr、Cu、Zn、Au、Sn、これらの合金及び同種のもののような材料から作られる。この反射体層は通常30~200nmの間の厚さを有している。
【0018】
この多層積層体は、可視スペクトルにおいて対称的なピークの形態を有する電磁放射の反射狭帯域を有していてよい。代替的に、可視スペクトルにおける電磁放射の反射狭帯域は、UV領域に隣接していることができ、これにより、電磁放射の反射帯域の一部、即ちUV部分は、人の目には見えない。代替的に、電磁放射の反射帯域は、IR領域にその一部を有していることができ、これにより、IR部分は、同様に人の目には見えない。
【0019】
可視スペクトルにおけるこの電磁放射の反射帯域がUV領域、IR領域に隣接していようと、可視スペクトルにおいて対称的なピークを有していようとを問わず、本明細書により開示される多層薄膜は、低く、小さい又は認識できない色ずれを有する、可視スペクトル内の電磁放射の反射狭帯域を有する。この低い又は認識できない色ずれは、電磁放射の反射狭帯域の中心波長の小さいシフトの形態であってよい。代替的に、低い又は認識不能な色ずれは、それぞれ、IR領域又はUV領域に隣接する電磁放射の反射帯域のUV側端又はIR側端の小さいシフトの形態であってよい。0°~45°の間の角度から多層薄膜を観察したとき、中心波長、UV側端、及び/又はIR側端のこのような小さいシフトは、通常は50nm未満であり、いくつかの例においては40nmより小さく、また他の例においては30nmより小さい。
【0020】
上記に加えて、多層薄膜の形態であるこの全方向構造色顔料は、保護コーティングが施された複数の顔料粒子の形態であってよい。これにより、耐候性のある顔料を提供できる。保護コーティングは、顔料粒子の相対的な光触媒活性を減少させる、一つ又はそれ以上の酸化物層を含んでいることができる。この酸化物層は、当業者にとって公知であるいかなる酸化物層であってよく、実例として酸化ケイ素層、酸化アルミニウム層、酸化ジルコニウム層、酸化チタン層、酸化セリウム層、これらの組み合わせ、及び同種のものを含んでいることができる。いくつかの例において、保護コーティングは第1の酸化物層及び第2の酸化物層を含んでいる。さらに、第1の酸化物層及び/又は第2の酸化物層は、混合酸化物層、即ち2種類の酸化物の組み合わせである酸化物層であってよい。さらに、また上述のとおり、顔料そのものは酸化物層を含まない多層薄膜の形態であってよい。
【0021】
全方向構造色顔料を製造する方法は、酸、酸性化合物、酸性溶媒、及び同種のものを利用することを含んでいてよく、含んでいなくてもよい。言い換えると、複数の全方向構造色顔料粒子は、酸性溶媒による処理がされることもされないこともできる。全方向構造色顔料及び、この顔料の製造方法のさらなる教示および詳細を本明細書において後述する。
【0022】
図1を参照すると、
図1A~Dは全方向構造色設計の基本的な構成要素を表している。特に、
図1Aは入射電磁放射に曝された誘電体層を示している。さらに、誘電体層(DL)は入射電磁放射の一部を反射し、その他の部分を透過する。加えて、入射電磁放射は、透過した部分及び反射された部分に等しく、通常、透過した部分は反射された部分よりも十分に大きい。誘電体層は誘電体材料、例えばSiO
2,TiO
2、ZnS、MgF
2、及び同種のものから作られる。
【0023】
明確な対称として、
図1Bは、全ての入射電磁放射が反射され、本質的に透過率がゼロである反射体層(RL)を表している。反射体層は通常、アルミニウム、金、及びその他同種のもののような材料から作られる。
【0024】
図1Cは、入射電磁放射がこの層によって吸収され、かつ反射又は透過しない、吸収体層(AL)を示している。このような吸収体層は、例えばグラファイトから作られる。さらに、全入射電磁放射が吸収され、そして透過及び反射は約ゼロである。
図1Dは、入射電磁放射の一部がこの層により吸収され、一部が透過し、一部が反射される、選択的吸収体層(SAL)を表している。したがって、透過し、吸収され、及び反射される電磁放射の量は、入射電磁放射の量と等しい。加えて、このような選択的吸収体層は、クロムの薄層、銅、真鍮、及び青銅の層、並びに同種のもののような材料から作ることができる。
【0025】
本発明について、全方向構造色の薄層の3つの世代の設計及び製造を開示する。
【0026】
<第1世代>
図2を参照すると、複数の誘電体層を有する多層薄膜の略図が示されている。加えて、入射電磁放射の反射及び透過が模式的に示されている。上記のとおり、入射電磁放射の通常の透過は、それについての反射よりも非常に大きく、したがって多くの層が要求される。
【0027】
図3は、第1の屈折率(DL
1)及び第2の屈折率(DL
2)を有する誘電体層から作られている多層薄膜の一部分を示している。層間の二重線は、異なる層間の境界を単に示しているに過ぎないと理解されたい。
【0028】
原理によって限定されるものではないが、所望の多層積層体を得るための、ある設計及び製造方法又は手段は下記のとおりである。
【0029】
電磁放射が材料の表面に衝突したとき、この放射の波は材料から反射され、又は透過される。さらに、電磁放射が多層積層体10の第1の終端12に、角度θ
0で衝突したとき、この電磁波が屈折率の高い層及び低い層の表面に対する反射角は、それぞれθ
H及びθ
Lである。スネルの法則を利用して、
【数1】
屈折率n
H及びn
Lが既知であれば、この角度θ
H及びθ
Lを決めることができる。
【0030】
全方向性反射率について、電磁放射のTEモード及びTMモードの必要であるが不十分である条件として、第1層内の最大屈折角度(θ
H,Max)が、第1の層及び第2の層の間の境界面のブルースター角(θ
B)よりも小さいことが必要である。この条件が満たされない場合、電磁放射のTMモードは第2及びそれに引き続く境界面で反射せず、したがってこの構造体を透過する。
この考察を用いると、
【数2】
及び
【数3】
それゆえに、次のことが必要である:
【数4】
【0031】
式4により表現される必要条件に加えて、波長λの電磁波が角度θ0で多層構造に向かい、かつ多層構造の個々の二重層が、それぞれ屈折率n
H及びn
Lを伴う厚さd
H及びd
Lを有する場合、特性変換マトリクス(F
T)は、以下のように表現される。
【数5】
これは次のようにも表現可能であり:
【数6】
ここで:
【数7】
【数8】
【数9】
及び
【数10】
である。
さらに、
【数11】
ここで、
【数12】
及び
【数13】
である。
TE及びTMについて明確にρ
Tを解くと:
【数14】
及び
【数15】
【0032】
観測角度に依存する帯域構造は、全反射領域の、帯域端としても知られている、端部についての境界条件から得ることが可能である。本発明の目的のため、帯域端は、所与の帯域構造について全反射領域と透過領域とを分ける線(ライン)の方程式として定義される。
【0033】
高反射バンドのバンド周波数を決定する境界条件は、以下の条件によって与えられる。
【数16】
したがって、式3から:
【数17】
又は別の表現で:
【数18】
式15及び7を結合すると、以下のバンド端の式が得られる:
【数19】
ここで:
【数20】
及び:
【数21】
上記のバンド端の式の+の記号は、長波長(λ
long)の場合のバンド端を表し、及び-の記号は、短波長(λ
short)の場合のバンド端を表す。
式20及び21を再編すると:
TEモードについて:
【数22】
及び、
TMモードについて:
【数23】
である。
【0034】
バンド端の近似解は、以下の表現により確定することができる:
【数24】
4分の1波長の設計(以下でより詳細に記載される)、及び互いに等しくなるように選択された交互の層の光学的な厚さを考慮すれば、この近似解は妥当である。さらに、交互の層の光学的な厚さが比較的小さいと、コサインは1に近づく。このようにして、式23及び24は近似的なバンド端の式をもたらす:
TEモードについて:
【数25】
及び、TMモードについて:
【数26】
【0035】
入射角の関数としてのL+及びpTMの値は、式7,8,14,15,20、及び21から得ることができ、それによって入射角の関数としてのTE及びTMモードにおけるλlong及びλshortについての計算が可能となる。
【0036】
全方向反射体の中心波長(λc)は:
【数27】
の関係式により確定することができる。
中心波長は重要なパラメーターとなる場合があり、というはその値が反射される電磁波長い及び/又は色スペクトルの近似範囲を示唆するからである。反射帯域の幅に関する示唆をもたらすことのできる、もう一つの重要なパラメーターは、全方向性反射帯域内の波長のレンジ対全方向性反射帯域内の波長のミッドレンジ比として定義される。この「レンジ対ミッドレンジ比」(η)は数学的に以下のように表現される:
TEモードについて、
【数28】
TMモードについて:
【数29】
レンジ対ミッドレンジ比は百分率として表現することができ、本発明の目的に関して、この用語「レンジ対ミッドレンジ比」と「レンジ対ミッドレンジ比百分率」は同義的に使用されると理解されたい。さらに、「%」記号を伴って提示される「レンジ対ミッドレンジ比」の値は、「レンジ対ミッドレンジ比」の百分率の値であると理解されたい。TMモード及びTEモードの「レンジ対ミッドレンジ比」の値は、式28及び29から数値的に計算可能であり、高屈折率及び低屈折率の関数としてプロットすることができる。
【0037】
狭い全方向性バンドを得るためには、中心波長の分散を最小限にしなければならないと理解されたい。
【0038】
したがって、式27から、中心波長の分散は:
【数30】
と表現することができ:
ここで:
【数31】
中心波長分散ファクターF
cは、次のように表現可能である:
【数32】
【0039】
上記から、所望の低中心波長シフト(Δλc)を有する多層積層体は、nLの屈折率を有し、かつ一又は複数の層が厚さdLを有する低屈折率材料、及びnHの屈折率を有し、かつ一又は複数の層が厚さdHを有する高屈折率材料から設計することができる。
【0040】
特に、
図4は電磁放射のTMモードとTEモードについての0.2%のレンジ対ミッドレンジ比を、高屈折率対低屈折率の関数としてプロットしたものを比較したグラフである。図において示されるとおり、3つのケースが示されており、ケースIはTMモードとTEモード間の大きな違いに関しており、ケースIIはTMモードとTEモード間の差が小さい場合に関しており、ケースIIIはTMモードとTEモード間の差が非常に小さい場合に関している。さらに、
図5は、ケースIIの類似ケースについての反射された電磁放射の反射率パーセント対波長を表している。
【0041】
図5において示されるとおり、ケースIIIに対応する多層薄膜についての中心波長の小さい散乱が示されている。加えて、
図6についての参照と合わせて、多層薄膜を0°~45°の間の角度から観察したときに、ケース2は中心波長の50nm(ケースII)より小さい色ずれをもたらし、かつ多層薄膜を0°~45°の間の角度から観察したときに、ケースIIIは中心波長の25nm(ケースIII)より小さい色ずれをもたらす。
【0042】
<第2世代>
図7を参照すると、第2世代に基づく、例示的な構造/設計が示されている。
図7に示されている多層積層体は、複数の誘電体層及び、その下にある吸収体層を有している。加えて、入射電磁放射のうち、この構造体を透過するものはなく、即ち、全ての入射電磁放射は反射又は吸収される。
図7に示されるようなこのような構造体は、十分な量の反射を得るために必要な誘電体層の数を減少することを可能にする。
【0043】
例えば、
図8は、多層積層体が、Crから作られている中央の吸収体層、Cr吸収体層にわたって延在する第1の誘電体材料層(DL
1)、DL
1層にわたって延在する第2の誘電体材料層(DL
2)、及びそしてDL
2層にわたって延在するDL
1層を有する、このような構造の略図をもたらしている。このような設計において、第1の誘電体層第3の誘電体層の厚さは同じ又は異なっていてよい。
【0044】
特に、
図9Aは、中心のCr層が2つのTiO
2層に結合され、これが更に2つのSiO
2層によって結合されている構造のグラフ表示を示している。プロットによって示されるとおり、TiO
2及びSiO
2の層の厚さは互いに等しくない。さらに、
図9Bは、
図9Aに示される5層構造及び第1世代の設計に基づく13層構造体を比較した、反射率対波長スペクトルを示している。
図9Bに示されるとおり、この構造を0°~45°の間の角度から観察したときに、50nmより小さく、好ましくは25nmより小さい中心波長のシフトがもたらされる。第2世代に基づく5層構造が第1世代の13層構造と基本的に同等にふるまうという事実が、
図9Bにおいて、さらに示されている。
【0045】
<第3世代>
図10を参照すると、下部の反射体層(RL)が、これにわたって延在する第1の誘電体材料層DL
1、及びDL
1層にわたって延在する選択的吸収体層SALを有している、第3世代の設計が示されている。加えて、もう一つのDL1層は提供されても、されなくてもよく、かつ選択的吸収体層にわたって延在していても、していなくてもよい。入射する全ての電磁放射が多層積層体によって反射され、又は選択的に吸収されている図が、さらに図において示されている。
【0046】
図10に示されるようなこのような設計は、所望の多層積層体を設計及び製造するために利用される、異なる方式に対応している。特に、誘電体層の、ゼロ又はほぼゼロの電場点の厚さを下記において利用し、論じる。
【0047】
例えば、
図11Aは、Al反射体層にわたって延在するZnS誘電体層の略図である。このZnS誘電体層は、143nmの全厚を有し、かつ500nmの波長を有する入射電磁放射について、77nmの位置にゼロ又はほぼゼロの電場点を有する。言い換えると、ZnS誘電体層は500nmの波長を有する入射EMRについて、Al反射体層から77nmの距離にゼロ又はほぼゼロの電場点を有する。加えて、
図11Bは、異なるEMR波長について、ZnS誘電体層にわたる電場のグラフを提供している。グラフにおいて示されるように、誘電体層は500nmの波長を有する入射EMRについて、77nmの厚さにおいてゼロ又はほぼゼロの電場点を有するが、しかし400nm、600nm、及び700nmの波長を有する入射EMRについて、ゼロ又はほぼゼロの電場点を有しない。
【0048】
ゼロ又はほぼゼロの電場点の計算について言及すると、
図12は反射率n
sを有する基盤又は中心層2上の、全厚
「D」、増分の厚さ「d」、及び反射率「n」を有する誘電体層4を表している。入射光は誘電体層4の外表面5を、外表面5に対して垂直な線6に対して角度θで当たり、そして同じ角度で外表面5から反射する。入射光は外表面5を透過して、線6に対して角度θ
Fで誘電体層4に入り、基盤層の表面3に角度θ
sで当たる。
【0049】
一つの誘電体層について、θs=θ
F
かつ電場/電界(E)はz=dのとき、E(z)と表現することができる。
マクスウェルの方程式から、電場は、s偏光について:
【数33】
及びp偏光について:
【数34】
したがって、s偏光について、
【数35】
及びp偏光について
【数36】
である。
【0050】
誘電体層4のz軸方向の電場の変化は、下記のように表現される、未知のパラメーターu(z)及びv(z)を計算することにより概算することができると理解されたい。
【数37】
s偏光についてq
s=n
scosθ
s(39)
p偏光についてq
s=n
s/cosθ
s(40)
s偏光についてq=ncosθ
F (41)
p偏光についてq=n/cosθ
F (42)
φ=k・n・dcos(θ
F)(43)
u(z)及びv(z)は、下記のように表現することができる:
【数38】
及び
【数39】
【数40】
及びp偏光について
【数41】
ここで、
【数42】
【数43】
及び
【数44】
【0051】
したがって、θ
F=0又は垂直な入射であり、φ=k・n・d、及びα=0である
単純な状況において:
【数45】
これにより
厚さ「d」を、即ち、誘電体層中の電場が
ほぼゼロ
又は最小値である場所を解くことができる。
【0052】
図13を参照すると、434nmの波長を有するEMRに曝したときの
図11Aに示されるZnS誘電体層のゼロ又はほぼゼロの電場点が、70nm(500nmの波長について77nmである代わりに)にあることを計算するために、方程式52が使用された。加えて、15nmの厚さのCr吸収体層が、Al反射体層から70nmの厚さに挿入され、これによりゼロ又はほぼゼロの電場のZnS-Cr境界が得られる。このようは発明の構造は、434nmの波長を有する光がCr-ZnS境界を通過させるが、しかし434nmの波長を有しない光を吸収する。言い換えると、このCr-ZnS境界は434nmの波長を有する光に関してゼロ又はほぼゼロの電場を有し、これにより434nmの光はこの境界を通過する。しかしながら、Cr-ZnS境界は434nmの波長を有しない光についてはゼロ又はほぼゼロの電場を有しないため、このような光はCr吸収体層及び/又はCr-ZnS境界によって吸収され、Al反射体層によって反射されない。
【0053】
所望の434nmの+/-10nm以内の光の数パーセントは、Cr-ZnS境界を通過することを理解されたい。しかしながら、このような反射光の狭帯域、例えば434+/-10nmは、それでも人の目には鮮明な構造色をもたらすことを、さらに理解されたい。
【0054】
図13の多層積層体中のCr吸収体層があることによる結果が、反射率パーセント対反射EMRの波長が示されている
図14において示されている。
図13に示されるZnS誘電体層であってCr吸収体層を有しないものに対応する、この点線で示されるとおり、狭い反射ピークが約400nmに存在するが、しかしより広いピークが約500+nmにおいて存在する。加えて、500nmの波長の領域において、未だ多量の光が反射される。したがって、多層積層体が構造色をもたらすことを妨げる、二つのピークが存在する。
【0055】
対照的に、
図14の実線は、Cr吸収体層が存在する、
図13に示される構造体に対応している。図において示されるとおり、約434nmにおいて鋭いピークが存在し、434nmより大きい波長に関する反射率の鋭い降下が、Cr吸収体層によってもたらされる。実線により示される鋭いピークは、視覚的に鮮明な/構造色として見えると理解されたい。さらに、
図14は、反射されたピーク又は帯域の幅が測定される場所を示しており、即ち、帯域の幅は、さらに半値幅(FWHM)として知られる、最大反射波長の50%の反射率の部分で測定される。
【0056】
図13に示される多層積層体の全方向作用について言及すると、このZnS誘電体層のこの厚さを設計し、又は定めることができ、これより反射光の第一高調波のみがもたらされる。これは「青」色には十分であるが、しかし「赤」色をもたらすためにはさらなる考慮が必要であると理解されたい。例えば、赤色について、非角度依存性の調整は困難であり、これは、より厚い誘電体層を要するためであり、これにより、高い調和設計をもたらし、即ち、第2及びあるべき第3の高調波が不可避となってしまう。さらに、暗褐色色空間は非常に狭い。したがって、赤色多層積層体は高い角度変化を有する。
【0057】
赤色のこの高い角度変化を克服するため、本出願は、独特かつ新規な、角度非依存性の赤色をもたらす設計/構造を開示する。例えば、
図15Aは、0°~45°の角度から観察した時にこの誘電体層の外表を観察したときに、入射白色光について第1及び第2の高調波を呈する誘電体層を表している。このグラフに示されるように、低い角度依存性(小さいΔλ
c)が誘電体層の厚さによりもたらされるが、しかしこのような多層積層体は青色(第1の高調波)と赤色(第2の高調波)の組み合わせを有しており、ゆえに所望の「赤のみ」の色には適さない。ゆえに、吸収体層を利用して所望でない高調波の群を吸収する、この理論/構造が発展してきた。
図15Aは、所与の反射ピークに関する反射帯域の中心波長(λ
c)の位置、及びこの試料を0°~45°の間の角度から観察した場合のこの中心波長の分散又はシフト(Δλ
c)を更に表している。
【0058】
図15Bについて言及すると、
図15Aにおいて示される第2の高調波が、Cr吸収体層によって、適切な誘電体層の厚さ(例えば72nm)において吸収され、そして鮮明な青色がもたらされる。さらに本発明において重要なことに、
図15Cは、第1の高調波をCr吸収体層によって異なる誘電体層の厚さ(例えば125nm)において吸収することにより,赤色がもたらされる。しかしながら、
図15Cは、Cr吸収体層の使用は、この多層積層体の所望のものよりも高い角度依存性、即ち、所望のΔλ
cよりも大きくなることを、さらに表している。
【0059】
青色と比較した赤色に関する相対的に大きいシフトは、この暗赤色の色空間が非常に狭いことと、Cr吸収体層がゼロでない、又はほぼゼロでない電場に対応する色を吸収すること、即ちこの電場がゼロ又はほぼゼロのときに、光を吸収しないという事実によると理解されたい。したがって、
図16Aは、異なる入射角度によって、光波長に対するこのゼロ又はほぼゼロの電場点が異なることを示している。この様な要因は、
図16Bに示される角度非依存吸収性、即ち、0°及び45°における吸収率曲線の違いをもたらす。したがって、多層積層体の設計及び角度非依存性の性能をさらに向上させるため、電場がゼロか否かによらずに、例えば青色光を吸収する吸収体層を使用する。
【0060】
特に、
図17Aは、Cr吸収体層の代わりにCu吸収体層がZnS層にわたって延在している多層積層体を示している。このような「有色」又は「選択的な」吸収体層を使用した結果が
図17Bにおいて示され、これは
図17Aに示される多層積層体の0°及び45°の吸収率線の、より「厳しい」組み分けを表している。したがって、
図16B及び
図16Bとの間の比較は、非選択的吸収体層の代わりに選択的吸収体層を使用することにより、吸収率の角度非依存性の顕著な向上があることを示している。
【0061】
上記に基づいて、概念を証明するための多層積層体構造を設計し、作製した。加えて、概念を証明するための試料についての計算/シミュレーション結果、及び実際の実験データを比較した。特に、また
図18のグラフプロットにおいて示すように、鮮明な赤色がもたらされ(700nmより大きい波長は通常人の目には見えない)、また、計算/シミュレーション及び実際の試料から得られた実験の光のデータとの間で、非常に良好な一致が得られた。言い換えると、計算/シミュレーションは、本発明の一つ又はそれ以上実施形態及び/又は公知の多層積層体の多層積層体設計の結果をシミュレートし、又はシミュレートするために使用することができる。
【0062】
シミュレートし、及び/又は実際に作製した多層積層体の試料の目録を、下記の表1において提供する。表において示すとおり、本明細書で開示されるこの発明の設計は、少なくとも5層の異なる層構造を含んでいる。加えて、この試料は、広い領域の材料からシミュレートし、及び/又は作製した。高い彩度、低い色ずれ、完全な反射率を呈した試料をもたらした。さらに、この3及び5層の試料は120~200nmの間の全厚を有し;この7層の試料は350~600nmの全厚を有し;この9層の試料は440~500nmの全厚を有し、この11層の試料は600~660nmの全厚を有していた。
【0063】
【0064】
図19について言及すると、反射体の表面に対して0°及び45°の角度から白色光に曝したときの全方向反射体についての、反射率パーセント対反射EMR波長のプロットを示している。プロットで示すように、0°及び45°の曲線は、500nmより大きい波長について全方向反射体がもたらす、非常に低い反射率、例えば20%より小さい反射率を表している。しかしながら、この反射体は、曲線によって示すように、400~500nmの間の波長において反射率の鋭い増加をもたらし、かつ450nmにおいて約90%の最大値に到達する。この曲線の左手側(UV側)にある、グラフの部分又は領域は、この反射体によりもたらされる反射帯域のUV部分を表していることを理解されたい。
【0065】
この全方向反射体によってもたらされる反射率のこの鋭い増加は、500nmより大きい波長にある低反射率部分から高反射率部分、例えば>70%の部分まで延長する各曲線のIR側端によって特徴づけられる。IR端側の直線部分200は、x軸に関して60°より大きい角度(β)に傾いており、反射率軸上の約50の長さL及び1.2の傾きを有している。ある例において、直線部分はx軸に関して70°より大きい角度に傾いており、他方、他の例ではβは75°よりも大きい。さらに、反射帯域は200nmより小さい可視FWMHを有しており、ある例において、150nmより小さい可視FWMHを、他の例において100nmより小さい可視FWMHを有する。加えて、
図19で表すような可視反射帯域の中心波長λ
cは、反射帯域のIR側端と可視FWHMのUVスペクトルのUV端から等距離にある波長として定義される。
【0066】
用語「可視FWHM」は、この曲線のIR端側と、これを超えると全方向反射体によって供給される反射は人の目には見えないUVスペクトル領域の端部との間の反射帯域の幅を言及していると理解されたい。このように、本明細書で開示される本発明の設計品及び多層積層体は、鮮明な構造色をもたらすために、電磁放射の不可視UV部分を使用する。言い換えると、反射体が、UV領域に延在するさらに広い電磁放射の帯域を反射するという事実にかかわらず、本明細書が開示する全方向反射体は、反射される可視光の狭帯域を提供するために、電磁放射スペクトルの不可視UV部分を利用している。
【0067】
図20を参照すると、本発明の実施形態に基づく多層積層体を0°及び45°から観察した時にもたらされる、全体的に対照的な反射帯域を示している。図において表すとおり、本発明の実施形態に基づく多層積層体を0°から観察した時にもたらされる反射帯域は、多層積層体を45°(λ
c(45
o))から観察した時に、50nmより小さい中心波長(λ
c(0
o))の色ずれ、即ち、Δλ
c(0-45
o)<50nmを有する。加えて、この0度の反射帯域及び45°の反射帯域のFWMHは200nmより小さい。
【0068】
図21は、この反射体の表面に対して0°及び45°の角度から白色光に曝したときの、もう一つの全方向反射体設計についての反射率パーセント対反射EMR波長のプロットを示している。
図19と同様に、またプロットにおいて示されるように、0°及び45°の曲線は、550nmより小さい波長についてこの全方向反射体がもたらす、非常に低い反射率、例えば10%より小さい反射率を示している。しかしながら、この反射体は、曲線によって示されるように、560~570nmの間の波長において反射率の鋭い増加をもたらし、かつ700nmにおいて約90%の最大値に到達する。この曲線の右手側(IR側)にある、グラフの部分又は領域は、この反射体によりもたらされる反射帯域のIR部分を表していることを理解されたい。
【0069】
この全方向反射体によってもたらされる反射率のこの鋭い増加は、550nmより小さい波長にある低反射率部分から高反射率部分、例えば>70%の部分まで延長する各曲線のUV側端によって特徴づけられる。UV端側の直線部分200は、x軸に関して60°より大きい角度(β)に傾いており、反射率軸上の約40の長さL及び1.4の傾きを有している。ある例において、直線部分はx軸に関して70°より大きい角度に傾いており、他方、他の例ではβは75°よりも大きい。さらに、反射帯域は200nmより小さい可視FWMHを有しており、ある例において、150nmより小さい可視FWMHを、他の例において100nmより小さい可視FWMHを有する。さらに、
図18において表すこの可視反射帯域の中心波長λ
cは、反射帯域のUV側端と可視FWHMのIRスペクトルのIR端から等距離にある波長として定義される。
【0070】
用語「可視FWHM」は、この曲線のUV端側と、これを超えると全方向反射体によって供給される反射は人の目には見えないIRスペクトル領域の端部との間の反射帯域の幅を言及していると理解されたい。このように、本明細書で開示される本発明の設計品及び多層積層体は、鮮明な構造色をもたらすために、電磁放射の不可視IR部分を使用する。言い換えると、反射体が、IR領域に延在するさらに広い電磁放射の帯域を反射するという事実にかかわらず、本明細書が開示する全方向反射体は、反射される可視光の狭帯域を提供するために、電磁放射スペクトルの不可視IR部分を利用している。
【0071】
図22について言及すると、この反射体の表面に対して0°及び45°の角度から白色光に曝してときの、もう一つの7層設計の全方向反射体についての反射率パーセント対波長を示している。加えて、本明細書により開示する全方向反射体によってもたらされる全方向特性の定義又は評価を示している。特に、また本発明の反射体によりもたらされる反射帯域が最大、即ち図に示されるようなピークを持つとき、各曲線は最大反射率を呈し又は経験する波長として定義される中心波長(λ
c)を有する。最大反射波長の用語はλ
cとしても使用される。
【0073】
図22において示されるように、この表面を角度0°((λ
c
(0
o
))、即ち表面に垂直に観察したときと比較して、全方向反射体の外表面を角度45°(λ
c
(45
o
))、例えばこの外表が、この表面を見る人の目からは相対的に45°に傾いて見える角度から観察したときにλ
cのシフト又は置換がある。このλ
c(Δλc)のシフトは、この全方向反射体の全方向特性の尺度をもたらす。当然に、ゼロシフト、即ちシフトが全くないとき、完全な全方向反射体となる。しかしながら、本明細書で開示する全方向反射体は、反射体の表面の色が変わっていないかのように人の目に映り、これにより、実用的見地から反射体が全方向性である、50nm未満のΔλ
cを提供することができる。いくつかの例において、本明細書で開示する全方向反射体は40nm未満のΔλ
cを提供することができ、他の例では30nm未満のΔλ
cを、さらに他の例においては20nm未満のΔλ
cを、さらにより他の例においては15nm未満のΔλ
cを提供することができる。このようなΔλ
cのシフトは、反射体の実際の反射率対波長のプロット、及び/又は代替的に、材料及び層の厚さが既知であれば、反射体のモデリングをすることにより測定することができる。
【0074】
反射体の全方向特性のもう一つの定義又は特性評価は、所与の一連の角度反射帯域の側辺のシフトによって測定することができる。例えば、また
図19の参照により、45°(S
IR(45
o))から観察した同じ反射体からの反射に対するIR-側端と比較した、0°(S
IR(0
o))から観察した全方向反射体からの反射に対するIR-側端のシフト又は置換(ΔS
IR)は、全方向反射体の全方向特性の度合いを提供する。加えて、Δλ
c、例えば、
図19に示されるうちの一つに似た反射帯域を供給する反射体のΔλ
c、即ち、可視領域にない最大反射波長に対応するピークのある反射バンド(
図19及び21参照)を使用するために、ΔS
IRを全方向反射性の尺度として使用することが好ましい。IR側端の(ΔS
IR)シフトは、可視FWHMにおいて測定され、及び/又はされることができると理解されたい。
【0075】
図21の参照により、45°(S
UV(45
o))から観察された同じ反射体からの反射に対するIR-側端と比較した、0°(S
UV(0
o))から観察された全方向反射体からの反射に対するIR-側端のシフト又は置換(ΔS
IR)は、全方向反射体の全方向特性の度合いを提供する。UV側端の(ΔS
UV)シフトは、可視FWHMにおいて測定され、及び/又はされることができると理解されたい。
【0076】
当然に、ゼロシフト、即ちまったくシフトがない(ΔSi=0nm;i=IR,UV)ことは、完全な全方向反射体を特徴づけている。しかしながら、本明細書が開示する全方向反射体は、人の目にはあたかも反射体の表面の色が変わらないかのように見え、そのため、実用的見地からこの反射体は全方向性である、50nm未満のΔSLを提供することができる。いくつかの例において、本明細書が開示する全方向反射体は40nm未満のΔSiを提供することができ、他の例において30nm未満のΔSiを提供することができ,さらに他の例において、20nm未満のΔSiを提供することができ,さらにいっそう他の例において、15nm未満のΔSLを提供することができる。この様なΔSiのシフトは、反射体の実際の反射率対波長のプロット、及び/又は代替的に、材料及び層の厚さが既知であれば、反射体のモデリングによって測定することができる。
【0077】
全方向反射体のこのシフトは、低い色ずれによってさらに測定することができる。例えば、本発明の実施形態に基づく多層積層体から作製された顔料の色ずれは、
図23に示されるように30°以下であり(Δθ
1参照)、いくつかの例においてこの色ずれは25°以下であり、好ましくは20°より小さく、さらに好ましくは15°より小さく、さらにより好ましくは10°より小さい。対照的に、従前の顔料は45°又はそれより大きい色ずれ(Δθ
2参照)を呈する。
【0078】
まとめると、第1の層110がこれにわたって延在する第2の層120を有する、本発明の実施態様に基づく全方向多層薄膜の略図が、
図24に示されている。随意の反射体層100が含まれていてもよい。さらに、対称的な一対の層が反射体層100を挟んでいることができ、即ち、反射体層100は図において示される層110の反対側に配置される、第1の層110を有していることができ、これにより反射体層100は一対の第1の層110の間に挟まれる。加えて、第2の層120は反射体層100の反対側に配置されていることができ、これによって5層構造がもたらされる。それゆえに、本明細書においてもたらされる多層薄膜の議論は、一つ以上の中心層に関する鏡構造の可能性も含んでいると理解されたい。したがって、
図24は5層多層積層体の半分を表している。
【0079】
この第1の層110及び第2の層120は誘電体層であってよく、即ち誘電体材料から作られていてよい。代替的に、この層の一つは吸収体層、例えば選択的吸収体層又は非選択的吸収体層であってよい。例えば、第1の層110は誘電体層であってよく、第2の層120は吸収体層であってよい。
【0080】
図25は、参照番号20により、7層設計の半分を表している。この多層積層体20は、第2の層120にわたって延在する追加の層130を有している。例えば、この追加の層130は吸収体層110にわたって延在する誘電体層であってよい。この層130は層110の材料と同じ又は異なるものであってよいと理解されたい。加えて、層100、110及び/又は120を積層する方法、例えばゾル・ゲル法と同様又は異なる方法によって、層130を多層積層体20上に加えることができる。
【0081】
図26は、参照番号24により9層設計を表しており、これは追加の層105が、随意の反射体層100と第1の層110との間に配置されている。例えば、この追加の層105は、反射体層100及び誘電体層110との間に延在する吸収体層105であってよい。完全に網羅されているわけではないが、多様な層を作ることができる材料の一覧を下記の表2に示す。
【0082】
【0083】
本明細書において開示される多層積層体を作製する方法は、当業者において知られているいかなる方法又は工程であってよく、又は当業者に未だ知られていない方法であってよい。通常の知られている方法は、湿系方法、例えばゾル‐ゲル法、レイヤー‐バイ‐レイヤー法、スピンコーティング法及び同種のものを含む。他の知られている乾式方法は、化学気相成長法、及び物理気相成長法、例えばスパッタリング法、電子ビーム蒸着法、及び同種のものを含む。
【0084】
本明細書により開示するこの多層積層体は、いかなる塗装材、例えば塗料用の顔料、表面にほどこされる薄膜、及び同種のものにも使用することができる。
【0085】
上述のとおり、保護/環境耐性コーティングを有する全方向構造色顔料をもたらす。例えば、
図28及び28を参照すると、コーティングできる例示的な顔料を示している。特に、
図27は、中心層100、第1の非酸化物層112、選択的吸収体層114、及び選択的吸収体層にわたって延在する追加の非酸化物層116のある3層顔料12の略図である。
図28は、顔料12aの略図であり、これは
図28Aのように、追加の層112a、114a、及び追加の非酸化物層116aがあることを除いて、顔料12と同様である。層112‐112a、114-114、及び/又は116-116aは、同種の材料から作られていてもいなくてもよく、同じ厚さを持っていてもいなくてもよいことを理解されたい。
【0086】
図29は、顔料22の概略図を示しており、これは保護コーティング200を有する顔料12aを示している。加えて、
図30は保護コーティング200が単層又は代替的に2以上の層、例えば第1の層202及び第2の層204で得有ってよいことを表している。第1の層202及び/又は第2の層204は、単一の酸化物による層、又は代替的に、2以上の酸化物から作られ、又は含んでいる混合酸化物の層であることができることを理解されたい。例えば、保護コーティング200は、単一の酸化物の層、例えば酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、又は酸化セリウムの単一の層であることができる。代替的に、保護コーティング200は、第1の層202及び第2の層204を含むことができ、かつこの第1の層202及び第2の層204はそれぞれ酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン又は酸化セリウムの単一の層であることができる。もう一つの代替として、この第1の層202は単一の酸化物の層であってよく、かつこの第2の礎204は、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン又は酸化セリウムのうち少なくとも2つの組み合わせである混合酸化物の層であってよい。さらにもう一つの代替として、この第2の層204は単一の酸化物層であってよく、かつこの第1の層204は酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン又は酸化セリウムのうち少なくとも2つの組み合わせである混合酸化物の層であってよい。
【0087】
本発明をより説明するため、しかしいかなる方法によってもその範囲を限定するものではないものとして、耐候性のある全方向構造色顔料、及びこのような顔料を製造するための作製工程を下記において論じる。
【0088】
<手順1>リン酸を用いてエッチングを行い、かつSiO2層によってコーティングした7層顔料
【0089】
110mlのアセトンに分散した、10gの7層設計顔料を含む懸濁液に、0.13mlのリン酸(85%)を加え、室温で30分間かき混ぜた。この懸濁液をその後ろ過し、2回アセトンで洗浄した。固体粒子をろ過することにより、リン酸処理した7層顔料を得た。この7層顔料は、
図28Bに表現されるような構造を有しており、Alの中心層、このAl層に結合している一対のZnS層、この一対のZnS層に結合している一対のCr選択的吸収体層、及びこのCr吸収体層に結合しているもう一つのZnS層を有する。
【0090】
このリン酸処理した7層顔料を、その後環流冷却器を備える丸底フラスコ中の160mlのエタノールに懸濁した。この懸濁液に35gの水及び3.5gの28%アンモニア水溶液を加えて、65℃に加熱した。次に、10gのテトラエトキシシランを13mlのエタノールで希釈した溶剤を、この加熱した懸濁液に少量ずつかき混ぜながら加えた。この反応混合物を65℃で14時間かき混ぜ、その後、液体から固体粒子をろ過し、エタノールで洗浄し、そしてイソプロパノール(IPA)で洗浄した。固体粒子を100℃で24時間乾燥して、SiO2コートされた7層顔料を得た。
【0091】
<手順1A>SiO2層でコートされた7層顔料
10gの量の7層顔料を、手順1のようなリン酸による処理を行わずに、環流冷却器を備える丸底フラスコ中の160mlのエタノールに懸濁した。この懸濁液に35gの水及び3.5gの28%アンモニア水溶液を加えた後、65℃で加熱した。次に、10gのテトラエトキシシランを13mlのエタノールで希釈した溶剤を、この加熱した懸濁液に少量ずつかき混ぜながら加えた。この反応混合物を65℃で14時間かき混ぜ、その後、液体から固体粒子をろ過し、エタノールで洗浄し、そしてイソプロパノール(IPA)で洗浄した。固体粒子を100℃で24時間乾燥して、SiO2コートされた7層顔料を得た。
【0092】
<手順2>水溶液を使用した、SiO2のコートがされた7層顔料
15gの7層顔料を250ml3つ口フラスコ内に入れた。そして、100mlのDI水を加え、この溶液を80℃に加熱したエチレングリコールバス内で撹拌した。この溶液に数滴の1MのNaOH溶液を加えてpHを7.5に調整した。次に、20mlのNa2SiO3(13wt%SiO2)を、シリンジポンプを使用して定流量0.1ml/minでの溶液に加えた。Na2SiO3を加える際に、自動pH調節装置を使用して、1MのHCl水溶液をさらに加えてpHを7.5に維持した。この混合物を室温まで冷却し、ろ過し、IPAで洗浄し、そして100℃で24時間乾燥させた。このコートされた材料は、さらに200℃で24時間アニールしてもよい。
【0093】
<手順3>Si2O層及び混合Si2O-Al2O3層でコートした7層顔料
手順1又は1-AのSiO2でコートされた顔料2gを水20mlに懸濁し、pHを約10にした(希釈NaOH溶液により調節)。この懸濁液を100ml丸底フラスコ内で撹拌しつつ60℃で加熱した。そして、18wt%Na2Si03溶液0.5ml及び0.5MAl2(SO4)3溶液1mlを、この顔料懸濁液に定流量で1時間以内に、同時に滴定した。このスラリーのpHは調整しなかった。滴定後、この懸濁液を撹拌しつつ30分間放置した。この混合物をろ過して、残留した固体粒子をDI水で洗浄し、その後IPAで洗浄した。残留した固体粒子を100℃で24時間乾燥することにより、SiO2層及びAl2O3層を有する7層顔料を得た。
【0094】
<手順4>SiO2層及びZrO2+Al2O3混合層のコートを有する7層顔料
手順1又は1-AのSiO2でコートされた顔料3gを100mlの丸底フラスコ内のエタノール20mlに懸濁し、室温で撹拌した。さらに、アルミニウム-トリ-sec-ブトキシド0.66g及びジルコニウムブトキシド2.47mlをIPA15mlに溶解した。アルミニウム-トリ-sec-ブトキシド+ジルコニウムブトキシド混合物を、この顔料懸濁液に一定流量で2時間以内に滴定した。同時に、エタノール2mlに希釈したDI水0.66mlを適量投与した。滴定後、この懸濁液をさらに30分撹拌した。この混合物をろ過して、残留した固体粒子をDI水で洗浄し、その後IPAで洗浄した。残留した固体粒子を100℃で24時間乾燥することにより、又は代替的にさらに200℃で24時間アニールすることにより、SiO2層及びZrO2+Al2O3混合層を有する7層顔料を得た。
【0095】
<手順5>SiO2層及びZrO2+Al2O3混合層のコートを有する7層顔料
手順1又は1-AのSiO2でコートされた顔料3gを100mlの丸底フラスコ内のエタノール20mlに懸濁し、50℃に加熱しつつ撹拌した。その後、5wt%NaAlO2溶液0.5ml及びZrOCl210wt%溶液0.5mlをこの顔料懸濁液に定流量で30分以内に、同時に滴定した。スラリーのpHは希釈したHCl又はNaOHを加えることで8に調整した。滴定後、この懸濁液を撹拌しつつ30分間放置した。この混合物をろ過し、DI水で洗浄し、その後IPAで洗浄した。残留した固体粒子を100℃で24時間乾燥し、又は代替的にさらに200℃で24時間アニールした。
【0096】
<手順6>SiO2層、CeO2層及びZrO2+Al2O3混合層のコートを有する7層顔料
手順1又は1-Aの酸化ケイ素(SiO2)でコートされた顔料(3.5g)を100mlの丸底フラスコ内のエタノール26.83mlに懸濁し、70℃に加熱しつつ20分間撹拌した。その後、H2O1.18ml中のCe(NO3)3・6H2O0.33gをこの顔料懸濁液に2mL/hrの定流量で滴定し、この混合物を滴定後からさらに1.5時間撹拌した。この反応において、希釈NaOHを使用してこの溶液のpHを7.0に維持した。この混合物の残留した固体粒子をろ過し、水で3回洗浄し、その後IPAで3回洗浄した。残留した固体粒子を100℃で24時間乾燥して、SiO2層及びCeO2層を有する7層顔料を得た。
【0097】
次に、このコートされた顔料3gを100ml丸底フラスコ内のエタノール20mlに希釈して、室温で撹拌した。アルミニウム-トリ-sec-ブトキシド0.66g及びジルコニウムブトキシド2.47mlをIPA15mlに溶解した混合物を、一定流量で2時間以内にこの顔料懸濁液に加えた。同時に、エタノール2mlに希釈したDI水0.66mlを適量投与した。滴定後、この懸濁液をさらに30分撹拌した。この混合物をろ過して、残留した固体粒子をDI水で洗浄し、その後IPAで洗浄した。残留した固体粒子を100℃で24時間乾燥することにより、又は代替的にさらに200℃で24時間アニールすることにより、SiO2層、CeO2層及びZrO2+Al2O3混合層を有する7層顔料を得た。
【0098】
<手順7>CeO2層及びZrO2+Al2O3混合層によりコートされた7層顔料
【0099】
7層設計顔料3gを100ml丸底フラスコ中のIPA20mlに懸濁して、75℃で撹拌した。Ce(NO3)3・6H2O0.44gをIPA20mlに溶解した溶液を、1時間、定流量で滴定した。同時に、DI水0.9mlに希釈したエチレンジアミン(EDA)0.15mlを秤量した。さらなるDI水0.9mlに希釈したEDA0.15mlを秤量した。滴定後、この懸濁液をさらに15分間撹拌した。この混合液をろ過し、残留した固体粒子をIPAで洗浄した。残留した固体粒子を100℃で5時間乾燥することにより、CeO2層を有する7層顔料を得た。
【0100】
その後、CeO2によりコートされた顔料を100ml丸底フラスコ内のエタノール20mlに希釈して、室温で撹拌した。次に、アルミニウム-トリ-sec-ブトキシド0.66g及びジルコニウムブトキシド2.47mlをIPA15mlに希釈した混合物を、2時間レートで顔料懸濁液に滴定した。同時に、エタノール2mlに希釈したDI水0.66mlを秤量した。滴定後、この懸濁液をさらに30分間撹拌した。この混合液をろ過し、残留した固体粒子をエタノールで洗浄し、その後IPAで洗浄した。残留した固体粒子を100℃で24時間乾燥し、又は代替的にさらに200℃で24時間アニールして、CeO2層及びのZrO2+Al2O3混合層を有する7層顔料を得た。
【0101】
<手順8>ZrO2層を有する7層顔料
7層設計顔料2gを、100ml丸底フラスコ内のエタノール30mlに懸濁して、室温で撹拌した。ジルコニウムブトキシド(1-ブタノール中80%)2.75mlをエタノール10mlに溶解した溶液を1時間レートで滴定した。同時に、エタノール3mlに希釈したDI水1mlを秤量した。滴定後、この懸濁液をさらに15分間撹拌した。残留固体粒子を溶液からろ過し、エタノールで洗浄しそして100℃で5時間乾燥して、又は代替的にさらに200℃で24時間アニールして、ZrO2層を有する7層顔料を得た。
<手順9>SiO2層及びAl2O3層でコートされた7層顔料
手順1又は1AのSiO2コートされた顔料2gを、100ml丸底フラスコ内の約8のpHを有する(希釈NaOH溶液で調整された)水20mlに懸濁し、50℃に加熱して継続的に撹拌した。その後、5wt%NaAlO2溶液0.5mlをこの顔料懸濁液に30分レートで滴定した。このスラリーのpHは1MのHCl溶液を用いて8に調整した。滴定後、この懸濁液を撹拌しつつ30分間放置した。この混合物をろ過し、DI水で洗浄し、その後IPAで洗浄した。100℃で24時間乾燥して、コートされた顔料を得た。
【0102】
<手順10>SiO2層及びTiO2層でコートされた7層顔料
250ml3口丸底フラスコをエチレングリコールオイルバスに設置して、温度を80℃に設定した。その後、手順1又は1AのSiO2コートがされた小片15g及びDI水100mlをフラスコに入れ、400rpmで撹拌した。この溶液を数滴の濃縮HCl溶液を滴下してpH2に調節した。その後、事前に希釈した35%TiCl4溶液をシリンジポンプによって0.1ml/minでこの混合物に滴定した。pHを一定に維持するため、ベース溶液であるNaOH溶液(8M)を児童pH調整装置によってフラスコ内に滴定した。析出中、層厚を測定するために、特定の時間間隔で小片試料を摘出した。この混合物を室温まで冷却し、その後ろ過し、IPAで洗浄し、100℃で24時間乾燥し、又は代替的にさらに200℃で24時間アニールした。
【0103】
コートされた顔料の耐候性特性を、下記の方法によって試験した。7つの円柱状の耐熱ガラスフラスコ(容量120ml)を光反応容器として使用した。各フラスコは蛍光赤色染料(エオシンB)溶液(1x10-5M)40mlを含んでおり、顔料13.3mgを試験した。この顔料‐エオシンB溶液を30分暗条件で電磁的に撹拌し、その後ソーラーシミュレーター(オリオル社Sol2A クラスABA ソーラーシミュレータ)の光に曝した。各顔料について、同種の顔料をアルミニウムフォイルで包んだものを、直接標準対照として用いた。さらに、商用TiO2(デグサP25)を同様の実験条件下における光触媒活性を比較するための参照として用いた。各試料の光触媒活性を検出するために、65時間光に曝した後のUV/Vis吸収スペクトルを記録した。
【0104】
図31に示すように試験の結果を、相対的光触媒活性対顔料タイプとしてプロットした。加えて、保護コーティングを有しない7層顔料を100%の光触媒活性を表すものとして設定し、コートのある顔料試料との比較として用いた。
図31に示されるように、全てのコートされた顔料試料は、コートされていない試料と比較して光触媒活性の減少を表した。加えて、SiO
2コーティングを有する7層顔料(P/Sで標識される)、SiO
2コーティング層及びZrO
2+Al2O
3混合コーティング層を有する7層顔料(P/S/Z-Aで標識される)、SiO
2コーティング層、CeO
2コーティング層及びZrO
2+Al2O
3混合コーティング層を有する7層顔料(P/S/C/Z-Aで標識される)、及びCeO
2コーティング層及びZrO
2+Al2O
3混合コーティング層を有する7層顔料(P/C/Z-Aで標識される)は、コートされていない顔料と比較して、少なくとも50%の光触媒活性の減少を表した。対照的に、SiO
2コーティング層を有する7層顔料、及びSiO
2+Al
2O
3コーティング層を有する7層顔料は、わずか33.8%の光触媒活性の減少しかあらわさなかった。
【0105】
SiO
2層及びZrO
2-Al
2O
3層(手順4)によるコーティングがされる前後の7層顔料の走査電子顕微鏡画像を、それぞれ
図32A及び32Bにおいて示した。画像において示すとおり、顔料の表面はなめらかであり、コートされた後の物理的形状及び構造保存性はコートされる前の顔料と同様である。加えて、外表のZnS層が第1のSiO
2層及び第2のZrO
2-Al
2O
3(手順4)混合層保護コーティングによりコートされている7層全方向構造色顔料のEDXドットマップ画像は、コーティング構造においてZn、S、Si、Zr、及びAlが相対的に高く集中していることを示している。
【0106】
コーティングの要約として、コーティングを作製するために使用した工程、コーティングの厚さ、コーティングの厚さの均一性、及び光触媒活性を下記の表3に示す。
【0107】
【0108】
上述から、表4は本教示における、様々な酸化物層、コートすることのできる基盤、コーティングの厚さの範囲を提供する。
【0109】
【0110】
上記に加えて、保護コーティングを有する全方向構造色顔料は、オルガノシラン表面処理を施してもよい。例えば、ある例示的なオルガノシラン工程処理では、上述の一つ以上の保護層を有する顔料0.5gを、100ml丸底フラスコ内の約5.0(希釈した酢酸溶液により調整した)のpHを有するEtOH/水(4:1)10mlに懸濁した。このスラリーを20秒間超音波処理し、500rpmで15分撹拌した。次に0.1~0.5vol%のオルガノシランが薬品をスラリーに加え、溶液を500rpmでさらに2時間撹拌した。このスラリーを、DI水を使用して遠心分離し、又はろ過し、そして残留顔料をEtOH/水(4:1)溶液10mlに再分散した。この顔料‐EtOH/水スラリーを還流下で65℃に加熱し、500rpmで30分撹拌した。そしてこのスラリーを、DI水、その後IPAを使用して遠心分離し、又はろ過して、顔料粒子のケーキを得た。最後に、このケーキを100℃で12時間乾燥した。
【0111】
オルガノシラン工程は、当業者にとって公知であるいかなるオルガノシランカップリング剤を使用することもでき、例えばN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(APTMS)、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン3-メソアルキルオキシプロピルトリメトキシ‐シラン(MAPTMS)、N-[2(ビニルベンジルアミノ)-エチル]-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-グリシド-オキシプロピルトリメトキシシラン及び同種のものを含む。
【0112】
上述の例及び実施形態は、説明のみを目的とし、当業者にとって明らかな変更、修正、及び同種のものは本発明の範囲に含まれる。したがって、本発明の範囲は請求項及びこれと同等な全てものによって定義される。
【0113】
本発明はさらに下記の実施形態も含む:
1.第1の材料の第1の層及び第2の材料の第2の層を有する顔料であって、前記第2の層は前記第1の層にわたって延在し、前記顔料を広帯域電磁放射に曝し、かつ0°~45°の間の角度から観察したときに、前記顔料が300nmより小さい所与の半値幅(FWMH)及び30°より小さい所与の色ずれを有する電磁放射の帯域を反射する顔料、及び前記顔料の外表面を被覆している耐候性コーティングであって、かつ前記顔料の光触媒活性を、前記耐候性コーティングを有しない前記顔料と比較して、少なくとも50%減少させる耐候性コーティングを有する、保護コーティングを有する全方向構造色顔料。
2.前記耐候性コーティングが酸化物層を有する、前記1に記載の、保護コーティングを有する全方向構造色顔料。
3.前記酸化物層が、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、及び酸化セリウムからなる群より選択される、前記2に記載の、保護コーティングを有する全方向構造色顔料。
4.前記耐候性コーティングが、第1の酸化物層及び第2の酸化物層を有し、前記第2の酸化物層が、前記第1の酸化物層と異なる、前記3に記載の、保護コーティングを有する全方向構造色顔料。
5.前記第2の酸化物層が、2つの異なる酸化物の組み合わせである混合酸化物層である、前記4に記載の、保護コーティングを有する全方向構造色顔料。
6.前記第1の酸化物層が、酸化ケイ素であり、かつ前記第2の酸化物層が、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、及び酸化セリウムからなる群の少なくとも2つである、前記5に記載の、保護コーティングを有する全方向構造色顔料。
7.前記顔料が酸化物層を含まない、前記1に記載の、保護コーティングを有する全方向構造色顔料。
8.複数の顔料粒子を供給すること、ここで、各前記顔料粒子は第1の材料の第1の層、及び第2の材料の第2の層を有し、前記第2の層は前記第1の層にわたって延在し、前記顔料は、広帯域電磁放射に曝らされ、かつ0°~45°の間の角度から観察したときに、300nmより小さい所与の半値幅(FWMH)、及び30°より小さい所与の色ずれを有する電磁放射の帯域を反射する複数の前記顔料粒子を第1の液体に懸濁して顔料懸濁液を形成すること、第2の液体、並びにケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、セリウム及びチタンから選択される酸化物構成元素を有する酸化物前駆体を供給すること、顔料懸濁液及び酸化物前駆体を混合すること、ここで、この混合は複数の前記顔料粒子の上に耐候性酸化物コーティングを堆積させ、耐候性コーティングを有する複数の顔料粒子と比較して、複数の前記顔料粒子の光触媒活性を少なくとも50%減少させることを含む、保護コーティングを有する全方向構造色顔料の製造方法。
9.第1の液体が第1の有機溶媒であり、かつ第2の液体が第2の有機溶媒である、前記8に記載の方法。
10.第1の有機溶媒及び第2の有機溶媒が有機極性溶媒である、前記9に記載の方法。
11.第1の有機溶媒及び第2の有機溶媒がn-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、エタノール、n-ブタノール、及びアセトンからなる群より選択される、前記10に記載方法。
12.第1の有機溶媒及び第2の有機溶媒がプロトン性有機極性溶媒である、前記11に記載方法。
13.第1の有機溶媒及び第2の有機溶媒が同じプロトン性有機極性溶媒である、前記12に記載の方法。
14.酸化物構成元素であるケイ素がテトラエトキシシランの形態であり、酸化物構成元素であるアルミニウムが、硫酸アルミニウム及びアルミニウム-トリ-sec-ブトキシドのうち少なくとも一つの形態であり、酸化物構成元素であるジルコニウムが、ジルコニウムブトキシドの形態であり、酸化物構成元素であるセリウムが、硝酸セリウム六水和物、硫酸セリウムのうち少なくとも一つの形態であり、また酸化物構成元素であるチタンが、チタンエトキシド、チタンイソプロポキシド、及びチタン‐n‐ブトキシドのうち少なくとも一つの形態であってよい、前記13に記載の方法。
15.第1の液体が第1の水性液体であり、第2の液体が第2の水性液体である、前記8に記載の方法。
16.酸化物構成元素が、ケイ酸ナトリウムの形態であり、酸化物構成元素であるアルミニウムが、硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウム水和物、及びアルミン酸ナトリウムのうち少なくとも一つの形態であり、酸化物構成元素であるジルコニウムが、塩化ジルコニウム八水和物の形態であり、酸化物構成元素であるセリウムが、硝酸セリウム六水和物の形態であり、酸化物構成元素であるチタンが、四塩化チタンの形態である、前記15に記載の方法。