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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】管路更生部材の製造装置及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 63/26 20060101AFI20220315BHJP
   F16L 1/00 20060101ALI20220315BHJP
【FI】
B29C63/26
F16L1/00 J
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017026232
(22)【出願日】2017-02-15
(65)【公開番号】P2018130891
(43)【公開日】2018-08-23
【審査請求日】2019-10-15
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(72)【発明者】
【氏名】吉永 明智
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-051597(JP,A)
【文献】特開平09-152059(JP,A)
【文献】特開2012-250414(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 63/26-63/36
F16L 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状に形成された基板、及び前記基板の表面に、当該基板の延びる方向に沿って平行に設けられた複数のリブ、を有する帯状部材、における少なくとも1組の隣接する前記リブの間に、
帯状に延びる一対の側板部、及び前記一対の側板部を連結する連結部、を有する金属製の補強部材、を嵌め込むことで、管路更生部材を形成するための製造装置であって、
前記帯状部材を繰り出すための第1繰り出し部と、
前記補強部材を繰り出すための第2繰り出し部と、
前記第1繰り出し部から繰り出された前記帯状部材における隣接する前記リブの間に、前記第2繰り出し部から繰り出された補強部材を嵌め込み、管路更生部材を形成する嵌合部と、
前記嵌合部を通過した前記管路更生部材を巻き取る巻き取りロールを有する、巻き取り部と、
を備え、
前記第2繰り出し部から前記補強部材を直線状に繰り出して、前記嵌合部へ供給するとともに、前記第1繰り出し部から繰り出された前記帯状部材を、前記補強部材の下方から前記嵌合部へ供給するように構成されており、
前記第2繰り出し部から繰り出された前記補強部材に対し、前記巻き取りロールの周方向に沿うように巻き癖を付与するベンディング部をさらに備え、
前記ベンディング部を通過した前記補強部材の延長上に前記嵌合部が配置されている、管路更生部材の製造装置。
【請求項2】
前記ベンディング部は、
前記補強部材の上側に配置される少なくとも1つの上側ローラと、
前記補強部材の下側に配置される少なくとも1つの下側ローラと、
前記上側ローラの下流側に配置され、最下流にある前記上側ローラよりも下方に配置され、前記補強部材を上から押圧する、少なくとも1つの曲げローラと、
を備えている、請求項に記載の管路更生部材の製造装置。
【請求項3】
前記ベンディング部に配置される前記上側ローラ、下側ローラ、及び曲げローラは、前記巻き取りロールに巻き取られている前記管路更生部材の巻き取り量に応じて、前記巻き取りロールの径方向に対し近接離間可能に構成されている、請求項1または2に記載の管路更生部材の製造装置。
【請求項4】
帯状に形成された基板、及び前記基板の表面に、当該基板の延びる方向に沿って平行に設けられた複数のリブ、を有する帯状部材、における少なくとも1組の隣接する前記リブの間に、
帯状に延びる一対の側板部、及び前記一対の側板部を連結する連結部、を有する金属製の補強部材、を嵌め込むことで、管路更生部材を形成するための製造装置であって、
前記帯状部材を繰り出すための第1繰り出し部と、
前記補強部材を繰り出すための第2繰り出し部と、
前記第1繰り出し部から繰り出された前記帯状部材における隣接する前記リブの間に、前記第2繰り出し部から繰り出された補強部材を嵌め込み、管路更生部材を形成する嵌合部と、
前記嵌合部を通過した前記管路更生部材を巻き取る巻き取りロールを有する、巻き取り部と、
を備え、
前記第2繰り出し部から前記補強部材を直線状に繰り出して、前記嵌合部へ供給するとともに、前記第1繰り出し部から繰り出された前記帯状部材を、前記補強部材の下方から前記嵌合部へ供給するように構成されており、
前記嵌合部は、
前記補強部材の上側に配置される少なくとも1つの上側ローラと、
前記帯状部材の下側に配置される少なくとも1つの下側ローラと、
を備え、
前記上側ローラ及び下側ローラは、前記巻き取りロールに巻き取られている前記管路更生部材の巻き取り量に応じて、前記巻き取りロールの径方向に対し、近接離間可能に構成されている、管路更生部材の製造装置。
【請求項5】
帯状に形成された基板、及び前記基板の表面に、当該基板の延びる方向に沿って平行に設けられた複数のリブ、を有する帯状部材、における隣接する前記リブの間に、
帯状に延びる一対の側板部、及び前記一対の側板部を連結する連結部、を有する金属製の補強部材、を嵌め込むことで、管路更生部材を製造するための製造方法であって、
前記帯状部材を繰り出すステップと、
前記補強部材を直線状に繰り出すステップと、
直線状に繰り出された前記補強部材の下側に向けて、前記帯状部材を繰り出し、当該帯状部材における隣接する前記リブの間に、前記補強部材を嵌め込み、管路更生部材を形成するステップと、
前記管路更生部材を巻き取りロールに巻き取るステップと、
前記補強部材を前記帯状部材の隣接する前記リブの間に嵌め込む前に、前記補強部材に対し、前記巻き取りロールの周方向に沿うように巻き癖を付与するステップと、
を備えている、管路更生部材の製造方法。
【請求項6】
前記巻き取りロールに巻き取られている前記管路更生部材の巻き取り量に応じて、前記巻き癖を付与する位置を、前記巻き取りロールの径方向に移動させる、請求項に記載の管路更生部材の製造方法。
【請求項7】
帯状に形成された基板、及び前記基板の表面に、当該基板の延びる方向に沿って平行に設けられた複数のリブ、を有する帯状部材、における隣接する前記リブの間に、
帯状に延びる一対の側板部、及び前記一対の側板部を連結する連結部、を有する金属製の補強部材、を嵌め込むことで、管路更生部材を製造するための製造方法であって、
前記帯状部材を繰り出すステップと、
前記補強部材を直線状に繰り出すステップと、
直線状に繰り出された前記補強部材の下側に向けて、前記帯状部材を繰り出し、当該帯状部材における隣接する前記リブの間に、前記補強部材を嵌め込み、管路更生部材を形成するステップと、
前記管路更生部材を巻き取りロールに巻き取るステップと、
を備え、
前記巻き取りロールに巻き取られている前記管路更生部材の巻き取り量に応じて、前記帯状部材への前記補強部材の嵌め込み位置を、前記巻き取りロールの径方向に移動させる、管路更生部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管路更生部材の製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、老朽化した下水管路、上水管路、農業用水路、ガス管路などの既設管を更生する種々の方法が提案されている。その1つとして、次のような方法が提案されている。すなわち、既設管内において帯状の管路更生部材を螺旋状に供給し、先行する管路更生部材の一側縁部と周回遅れで後続する管路更生部材の他側縁部とを順次接合することにより、既設管の管路内に円筒状の更生管を形成する方法が提案されている。
【0003】
このような管路更生部材は、複数のリブが平行に形成された樹脂製の帯状部材に対し、隣接するリブの間に金属製の補強部材を取り付けることで構成されている。例えば、特許文献1には、このような管路更生部材の製造装置が開示されている。より詳細に説明すると、特許文献1では、帯状部材を成形した後、これを繰り出すとともに、ロールに巻き取られた補強部材を繰り出し、これらを合流させる。その後で、隣接するリブの間に補強部材を嵌め込み、管路更生部材を形成する。こうして形成された管路更生部材は、巻き取りロールに巻き取られて保管される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-250414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記製造装置では、金属材料で形成された補強部材の重量が重く、高剛性であるため、帯状部材との合流位置まで、補強部材を安定的に搬送するのが難しいという問題があった。本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、金属製の補強部材を安定的に搬送して、帯状部材に取り付けることができる、管路更生部材の製造装置及び製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る管路更生部材の製造装置は、帯状に形成された基板、及び前記基板の表面に、当該基板の延びる方向に沿って平行に設けられた複数のリブ、を有する帯状部材、における少なくとも1つの隣接する前記リブの間に、帯状に延びる一対の側板部、及び前記一対の側板部を連結する連結部、を有する金属製の補強部材、を嵌め込み、管路更生部材を形成するための製造装置であって、前記帯状部材を繰り出すための第1繰り出し部と、前記補強部材を繰り出すための第2繰り出し部と、前記第1繰り出し部から繰り出された前記帯状部材における隣接する前記リブの間に、第2繰り出し部から繰り出された補強部材を嵌め込み、管路更生部材を形成する嵌合部と、前記嵌合部を通過した前記管路更生部材を巻き取る巻き取りロールを有する、巻き取り部と、を備え、前記第2繰り出し部から前記補強部材を直線状に繰り出して、前記嵌合部へ供給するとともに、前記第1繰り出し部から繰り出された前記帯状部材を、前記補強部材の下方から前記嵌合部へ供給するように構成されている。
【0007】
この構成によれば、補強部材を直線状に繰り出して嵌合部へ搬送し、帯状部材のリブの間に嵌め込んでいるため、搬送中に補強部材の向きが変わらず、補強部材を安定的に搬送することができる。すなわち、補強部材は金属材料で形成されているため、重量が重く、高剛性であるが、直線状に繰り出すことで、安定的に搬送することができる。例えば、補強部材を曲線状の経路に沿って搬送すると、補強部材が経路からずれたり、搬送速度がばらついたりするくなどの不具合が生じ得るが、上記のように構成することで、このような問題の発生を防止することができる。
【0008】
上記製造装置においては、前記第2繰り出し部から繰り出された前記補強部材に対し、前記巻き取りロールの周方向に沿うように巻き癖を付与するベンディング部をさらに備えることができ、前記ベンディング部を通過した前記補強部材の延長上に前記嵌合部を配置することができる。
【0009】
この構成によれば、次の効果を得ることができる。補強部材は、帯状部材に嵌め込まれた後、巻き取りロールに巻き取られるが、補強部材は金属材料で形成され、補強部材と帯状部材とは剛性が相違するため、補強部材を帯状部材にスムーズに嵌め込むことは容易ではない。そこで、上記のように、補強部材を帯状部材に嵌め込む前に、補強部材に巻き癖を付与すれば、補強部材を帯状部材にスムーズに嵌め込むことができる。
【0010】
上記製造装置において、ベンディング部の構成は、特には限定されないが、例えば、以下のように構成することができる。すなわち、前記ベンディング部は、前記補強部材の上側に配置される少なくとも1つの上側ローラと、前記補強部材の下側に配置される少なくとも1つの下側ローラと、前記上側ローラの下流側に配置され、最下流にある前記上側ローラよりも下方に配置され、補強部材を上から押圧する、少なくとも1つの曲げローラと、を備えることができる。
【0011】
上記各製造装置においては、前記ベンディング部に配置される前記上側ローラ、下側ローラ、及び曲げローラは、前記巻き取りロールに巻き取られている前記管路更生部材の巻き取り量に応じて、前記巻き取りロールの径方向に対し近接離間可能に構成することができる。
【0012】
これにより、例えば、管路更生部材の巻き取りが進んで、巻き取りロールの径が大きくなったとき、ベンディング部の径方向の位置を移動させることができるため、ベンディング部と巻き取りロールとが干渉するのを防止することができる。
【0013】
上記各製造装置においては、前記嵌合部は、前記補強部材の上側に配置される少なくとも1つの上側ローラと、前記帯状部材の下側に配置される少なくとも1つの下側ローラと、を備えることができ、前記上側ローラ及び下側ローラは、前記巻き取りロールに巻き取られている前記管路更生部材の巻き取り量に応じて、前記巻き取りロールの径方向に対し、近接離間可能に構成することができる。
【0014】
これにより、例えば、管路更生部材の巻き取りが進んで、巻き取りロールの径が大きくなったとき、嵌合部の径方向の位置を移動させることができるため、嵌合部と巻き取りロールとが干渉するのを防止することができる。
【0015】
本発明に係る管路更生部材の製造方法は、帯状に形成された基板、及び前記基板の表面に、当該基板の延びる方向に沿って平行に設けられた複数のリブ、を有する帯状部材、における隣接する前記リブの間に、帯状に延びる一対の側板部、及び前記一対の側板部を連結する連結部、を有する金属製の補強部材、を嵌め込み、管路更生部材を製造するための製造方法であって、前記帯状部材を繰り出すステップと、前記補強部材を直線状に繰り出すステップと、直線状に繰り出された前記補強部材の下側に向けて、前記帯状部材を繰り出し、当該帯状部材における隣接する前記リブの間に、前記補強部材を嵌め込み、管路更生部材を形成するステップと、前記管路更生部材を巻き取りロールに巻き取るステップと、を備えている。
【0016】
上記製造方法においては、前記補強部材を前記帯状部材の隣接する前記リブの間に嵌め込む前に、前記補強部材に対し、前記巻き取りロールの周方向に沿うように巻き癖を付与するステップ、をさらに備えることができる。
【0017】
上記各製造方法においては、前記巻き取りロールに巻き取られている前記管路更生部材の巻き取り量に応じて、前記巻き癖を付与する位置を、前記巻き取りロールの径方向に移動させることができる。
【0018】
上記各製造方法においては、前記巻き取りロールに巻き取られている前記管路更生部材の巻き取り量に応じて、前記帯状部材への前記補強部材の嵌め込み位置を、前記巻き取りロールの径方向に移動させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、金属製の補強部材を安定的に搬送して、帯状部材に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る管路更生部材の断面図である。
図2】帯状部材の断面図である。
図3】補強部材の断面図である。
図4】管路更生部材の製造装置の側面図である。
図5】ベンディング部の側面図である。
図6】嵌合部の側面図である。
図7】嵌合部のローラの断面図である。
図8】補強部材の他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る管路更生部材の製造装置及び製造方法の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。まず、管路更生部材について説明し、その後、管路更生部材の製造装置及び製造方法について説明する。
【0022】
<1.管路更生部材>
図1は管路更生部材の断面図である。図1に示すように、管路更生部材100は、樹脂材料で形成された帯状部材1に、金属製の補強部材2を嵌め込むことで、形成される。以下、帯状部材1と補強部材2について詳細に説明する。
【0023】
<1-1.帯状部材>
図2は帯状部材の断面図である。図2に示すように、帯状部材1は、第1面111、及びこの第1面111の反対側の第2面112を有する帯状の基板11を有しており、これが後述するように第1ロール31に巻き取られている。以下では、第1ロール31への巻き取り方向を長手方向、これとは直交する方向を幅方向と称する。また、幅方向の両端部を第1端部101及び第2端部102と称することとする。
【0024】
基板11の第1面111には、長手方向に沿って平行に並ぶ複数(本実施形態では3個)のリブ12が形成されている。各リブ12は、基板11の第1面111から起立する板状に形成されており、各リブ12の先端部には、基板11と平行に延びる抜け止め部13が形成されている。各抜け止め部13は、リブ12の幅よりもやや広い幅の板状に形成されており、後述するように、隣接するリブ12の間に嵌め込まれた補強部材2の抜け止めの役割を果たす。
【0025】
また、基板11の第1端部101には、突部材14が形成されている。この突部材14は、長手方向に延び、基板11の第1面111から突出する基部141と、この基部141の先端に設けられ、基部141よりも幅の広い断面半円状の係止部142とを備えている。一方、基板11の第2端部102には、突部材14が嵌まる係止溝15が形成されている。この係止溝15は、基板11の第2面112側に開放するように断面円形状に形成されており、長手方向に延びている。また、基板11の第1面111には、係止溝15と対応するように断面円形状の凸部16が形成されている。そして、この凸部16には断面T字状の抜け止め部17が形成されている。この抜け止め部17は、リブ12に設けられた抜け止め部13と概ね同じ高さに形成されている。
【0026】
以上のように形成された帯状部材1は、上述した基板11、リブ12、抜け止め部13,17、突部材14が樹脂材料によって一体的に形成されている。樹脂材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、及びこれらの混合物を用いることができる。
【0027】
<1-2.補強部材>
図3は補強部材の断面図である。図3に示すように、補強部材2は、金属材料で形成され、長手方向に延び、断面W字状に形成されている。ここでは、帯状部材1に嵌め込まれたときの基板11側を下端側、それとは反対側を上端側と称することとする。補強部材2の断面形状をより詳細に説明すると、長手方向に帯状に延びる一対の側板部21、22と、この側板部21、22の下端同士を連結し、上端側に凸の断面山型に形成された連結部23と、を備え、これらが一体的に形成されている。そして、この補強部材2は、幅方向に弾性変形可能となっており、これによって、帯状部材1の隣接するリブ12の間に嵌め込まれる。
【0028】
<2.管路更生部材の製造装置>
次に、上記のように形成された帯状部材1に、補強部材2を嵌め込み、管路更生部材100を製造するための製造装置について説明する。図4は、この製造装置の側面図である。
【0029】
図4に示すように、この製造装置は、帯状部材1を繰り出す第1繰り出し部3、補強部材2を繰り出す第2繰り出し部4、補強部材2に巻き癖を付与するベンディング部5、帯状部材1に補強部材2を嵌め込み、管路更生部材100を形成する嵌合部6、及び管路更生部材100を巻き取る巻き取り部7、を備えている。以下では、図4の右側を上流側、左側を下流側と称することとする。
【0030】
この装置は、平面視において、上流側から下流側に向かって、第2繰り出し部4、第1繰り出し部3、ベンディング部5、及び嵌合部6が、この順で概ね直線上に並んでいる。また、巻き取り部7は、後述するように巻き取りロール71を備えており、この巻き取りロール71の上方に、ベンディング部5及び嵌合部6が配置されている。より詳細には、ベンディング部5及び嵌合部6は、巻き取りロール71の周方向に沿うように配置されている。すなわち、ベンディング部5が、巻き取りロール71の上方に配置され、嵌合部6がベンディング部5よりも上流側で、且つベンディング部5よりもやや下方に配置されている。以下、各部について、詳細に説明する。
【0031】
<2-1.第1繰り出し部及び第2繰り出し部>
第1繰り出し部3は、帯状部材1が巻き取られた第1ロール31と、この第1ロール31を回転駆動するモータ等の駆動部(図示省略)と、を備えている。帯状部材1は、第1面111が径方向外方を向くように第1ロール31に巻き取られている。同様に、第2繰り出し部4も、補強部材2が巻き取られた第2ロール41と、この第2ロール41を回転駆動するモータ等の駆動部(図示省略)と、を備えている。また、補強部材2は、上端側が径方向外方を向くように第2ロール41に巻き取られている。
【0032】
そして、第2繰り出し部4からは、補強部材2が下流側に向かって直線状に繰り出され、ベンディング部5へねじられることなく供給されるようになっている。一方、第1繰り出し部3からも帯状部材1が下流側に直線状に繰り出されるようになっているが、帯状部材1は、補強部材2の下側を通過し、後述するガイド部8を介して、嵌合部6に向かってねじられることなく繰り出される。
【0033】
<2-2.ベンディング部>
図5はベンディング部の側面図である。図5に示すように、ベンディング部5は、筐体50と、この筐体50の内部に収容される、2個の上側ローラ51,52と、これら上側ローラ51,52の下側に配置される下側ローラ53と、上側ローラ51,52の下流側に配置される曲げローラ54とを備えている。これら4つのローラ51~54は、補強部材2の繰り出し方向に直交する方向に水平に延びる回転軸回りに回転可能に支持されている。
【0034】
2個の上側ローラ51,52は、上流側に配置される第1上側ローラ51、及び下流側に配置される第2上側ローラ52により構成され、これら2つの上側ローラ51,52は、同じ高さに配置されている。下側ローラ53は、第2上側ローラ52の下側に配置され、これら第2上側ローラ52及び下側ローラ53の間を補強部材2が通過するようになっている。したがって、これら第2上側ローラ52及び下側ローラ53の上下方向の隙間は、補強部材2の上下方向の高さと概ね同じか、やや広くなっている。また、これら3つのローラ51~53によって、補強部材2は、下流側へ水平に案内される。
【0035】
そして、曲げローラ54は、第2上側ローラ52の下流側に配置され、且つ第2上側ローラ52よりもやや下側に配置されている。これにより、第2上側ローラ52及び下側ローラ53の間を水平に通過した補強部材2は、曲げローラ54によって上側から押圧され、下側に曲げ癖をつけられるようになっている。
【0036】
また、ベンディング部5の下方には、帯状部材1を嵌合部6側へ案内する一対のガイド部、つまり第1ガイド部81及び第2ガイド部82が設けられている。第1ガイド部81は、ベンディング部5の上流側の端部と対応する位置に設けられ、第1上側ガイドローラ811及び第1下側ガイドローラ812を備えている。第1上側ガイドローラ811及び第1下側ガイドローラ812は、上下方向に並び、これらの間を帯状部材1が通過する。一方、第2ガイド部は、ベンディング部5の下流側の端部と対応する位置に設けられ、第2上側ガイドローラ821及び第2下側ガイドローラ822を備えている。そして、第2上側ガイドローラ821及び第2下側ガイドローラ822も、上下方向に並び、第1ガイド部81を通過した帯状部材1が、これらの間を通過する。
【0037】
そして、ベンディング部5を通過した補強部材2と、その下方のガイド部8を通過した帯状部材1が、これらの上流側に配置された嵌合部6において合流する。
【0038】
<2-3.嵌合部>
図6は嵌合部の側面図、図7は嵌合部のローラの断面図である。図6に示すように、嵌合部6は、ベンディング部5よりも上流側で且つ、ベンディング部5よりも下方に配置されている。すなわち、上述したように、巻き取りロール71の外周面よりも径方向外方において、この外周面に沿うように、ベンディング部5及び嵌合部6がこの順で配置されている。
【0039】
嵌合部6は、筐体61と、この筐体61に収容される複数のローラ62~65と、これらローラ62~65を移動させる移動機構66と、を備えている。筐体61は、巻き取りロール71を基準として径方向外方に延びるように形成されている。以下、特に断りのない限り、径方向及び周方向との文言は、巻き取りロール71を基準としたものとする。
【0040】
そして、この筐体61の内部には、上流側に配置される一対の第1大ローラ62と第1小ローラ63とが配置されており、第1大ローラ62が、第1小ローラ63よりも径方向外方に配置されている。図7に示すように、各第1大ローラは、所定間隔をおいて配置され、回転軸69によって連結されている。各第1大ローラ62は、補強部材2の側板部21,22と連結部23との間に挿入され、補強部材2を径方向外方から押圧するようになっている。一方、第1小ローラ63の軸方向の長さは、帯状部材1を径方向内方側で支持するように、リブ12間の幅よりも大きく形成されている。
【0041】
そして、これら第1大ローラ62と第1小ローラ63との間を帯状部材1及び補強部材2が通過するように構成されている。これにより、帯状部材1及び補強部材2が両ローラ62,63によって押圧され、帯状部材1のリブ12間に補強部材2が嵌め込まれる。したがって、両ローラ62,63の外周面の距離は、概ね帯状部材1が通過できる程度になっている。
【0042】
そして、筐体61の内部において、これら第1大ローラ62及び第1大ローラの下流側には、第2大ローラ64及び第2小ローラ65が配置されている。第2大ローラ64は、第2小ローラ65よりも径方向外方に配置されており、これらローラ64,65の間を、第1大ローラ62及び第1小ローラ63を通過した帯状部材1及び補強部材2が通過し、これらが押圧される。
【0043】
次に、移動機構66について説明する。上記4つのローラ62~65は、支持部材661によって回転自在に支持されており、この支持部材661は、筐体61の内部で径方向に移動可能に支持されている。また、筐体61の内部には、径方向に延びるボールネジ662が配置されており、ボールネジ662の一端部は、支持部材661において、第1ローラ62,63と第2ローラ64,65との間にねじ込まれている。一方、ボールネジ662の他端部は、筐体61の径方向外方に配置されたサーボモータ663に連結されている。これにより、サーボモータ663が回転すると、支持部材661は、筐体61内で4つのローラ62~65とともに径方向に移動する。したがって、帯状部材1と補強部材2とが嵌合する位置を径方向に移動させることができる。
【0044】
<2-4.巻き取り部>
次に、巻き取り部7について説明する。図4に示すように、巻き取り部7は、管路更生部材100を巻き取る巻き取りロール71と、この巻き取りロール71を回転駆動するモータ等の駆動部(図示省略)とを備えている。この巻き取りロール71には、嵌合部6を通過した管路更生部材100が巻き取られる。
【0045】
<3.管路更生部材の製造方法>
次に、上記のように構成された管路更生部材100の製造装置の動作、つまり管路更生部材100の製造方法について説明する。
【0046】
まず、第1ロール31を回転駆動して帯状部材1を繰り出すとともに、第2ロール41も回転駆動して補強部材2を繰り出す。そして、第2ロール41から繰り出された補強部材2は、直線状にベンディング部5まで搬送され、ベンディング部5において、曲げ癖が付与される。すなわち、補強部材2は、ベンディング部5の第1及び第2上側ローラ51,52と、下側ローラ53とによってガイドされることで、水平方向に直進するが、その下流側に配置された曲げローラ54により、下側に押圧され、下側に曲げられる。これにより、金属製の補強部材2は、長手方向に沿って円弧を描くように曲げられ、嵌合部6に搬送される。
【0047】
一方、第1繰り出しロールから繰り出された帯状部材1は、補強部材2の下方を直線状に通過し、ベンディング部5の下方のガイド部8にガイドされながら、補強部材2の下端部側に接触する。そして、補強部材2と帯状部材1とは、接触した状態で、嵌合部6へ案内される。そして、嵌合部6においては、補強部材2と帯状部材1とが、大ローラ62,64と小ローラ63,65との間で径方向の内方及び外方から押圧される。これにより、帯状部材1の一の隣接するリブ12間に補強部材2が嵌め込まれ、管路更生部材100が形成される。このとき、補強部材2は幅方向に押圧されながらリブ12間に押し込まれる。そして、図1に示すように、補強部材2の各側板部21、22の上端部が、リブ12の先端に設けられた抜け止め部13に下側から係止し、これによって、補強部材2が帯状部材1から抜け出るのを防止される。
【0048】
こうして、嵌合部6を通過した管路更生部材100は、下側に引っ張られながら、回転駆動する巻き取りロール71に巻き取られる。
【0049】
以上のように製造された管路更生部材100は、次のように既設管に施工される。すなわち、巻き取りロール71から繰り出されながら、既設管内において螺旋状に供給される。そして、先行する管路更生部材100の第1端部101の突部材14と周回遅れで後続する管路更生部材100の第2端部112の係止溝15とを順次接合することにより、既設管の管路内に円筒状の更生管が形成される。
【0050】
<4.特徴>
(1)補強部材2を直線状に繰り出して嵌合部6へ搬送し、帯状部材1のリブ12の間に嵌め込んでいるため、搬送中に補強部材2の向きが変わることがない。したがって、重量が重く、高剛性である補強部材2を安定的に搬送することができる。例えば、補強部材2を曲線状の経路に沿って搬送すると、補強部材2が経路からずれたり、搬送速度がばらつくなどの不具合が生じ得るが、上記のように構成することで、このような問題の発生を防止することができる。
【0051】
(2)補強部材2は金属材料で形成され、補強部材2と帯状部材1とは剛性が相違するため、補強部材2を帯状部材1にスムーズに嵌め込むことは容易ではない。これに対して、本実施形態においては、補強部材2を帯状部材1に嵌め込む前に、補強部材2に円弧状に曲がる巻き癖を付与するようにしている。これにより、補強部材2を帯状部材1にスムーズに嵌め込むことができる。
【0052】
(3)嵌合部6においては、ローラ62~65を径方向に移動可能としているため、例えば、巻き取りロール71における管路更生部材100の巻き取りが進み、巻き取りロール71の径が大きくなったときには、嵌合部6のローラ62~65を径方向外方に移動させ、巻き取りロールとの干渉を防止するようにしている。このようなローラ62~65の移動は、種々の制御が可能であり、例えば、巻き取りロール71の径を測定し、これに応じて自動でローラ62~65を移動させることができる。あるいは、手動でローラ62~65を移動させることもできる。
【0053】
<5.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。以下、変形例について説明する。但し、以下の変形例は適宜組合せ可能である。
【0054】
<5-1>
上記実施形態では、帯状部材1及び補強部材2をロールから繰り出しているが、これに限定されない。例えば、帯状部材1を樹脂により成形後、そのまま繰り出すこともできる。そして、補強部材2も同様にロールを用いずに、繰り出すことができる。
【0055】
<5-2>
帯状部材1及び補強部材2の形態は、特には限定されない。例えば、帯状部材1については、基板11の一方の面に、少なくとも補強部材2が嵌まり込む一対のリブ12が形成されていればよい。したがって、リブ12の数や抜け止め部13、17のほか、連結のための突部材14や係止溝15の構成については、必要に応じて適宜設定することができる。
【0056】
また、補強部材2については、少なくとも、リブ12に当接する一対の側板部21と、これら側板部21,22を連結する連結部23で構成されていればよい。したがって、連結部23の構成は、適宜変更可能であり、例えば、図8に示すように、断面U字型の連結部にすることができる。
【0057】
<5-3>
ベンディング部5は、補強部材2に曲げ癖を付与できるのであれば、種々の構成が可能であり、ロールの数、特には限定されない。また、上記実施形態のような、ロールによって押圧するのは一例であり、ロール以外で押圧してもよい。また、ベンディング部5も、嵌合部6と同様に、ロールを径方向に移動可能に構成することもでき、移動の制御も嵌合部6と同様にすることができる。
【0058】
<5-4>
嵌合部6の構成も特には限定されず、ロールなどで帯状部材1と補強部材2を挟み、補強部材2をリブ12の間に押し込めるように構成されていればよい。したがって、ロールの形状、数は特には限定されず、補強部材2の断面形状に合わせて、適宜変更することができる。また、嵌合部6を径方向に移動させる構成も特には限定されず、種々の構成が可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 帯状部材
2 補強部材
5 ベンディング部
6 嵌合部
71 巻き取りロール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8