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特許7040898加水分解卵殻膜成分を有効成分とするIII型コラーゲン生成促進用経口組成物
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  • 特許-加水分解卵殻膜成分を有効成分とするIII型コラーゲン生成促進用経口組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】加水分解卵殻膜成分を有効成分とするIII型コラーゲン生成促進用経口組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/57 20150101AFI20220315BHJP
   A61K 35/60 20060101ALI20220315BHJP
   A61K 38/01 20060101ALI20220315BHJP
   A61K 38/39 20060101ALI20220315BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220315BHJP
   A23L 33/18 20160101ALI20220315BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20220315BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20220315BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20220315BHJP
   A61P 17/14 20060101ALN20220315BHJP
【FI】
A61K35/57
A61K35/60
A61K38/01
A61K38/39
A61P17/00
A23L33/18
A61K9/16
A61K9/48
A61K9/20
A61P17/14
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017072108
(22)【出願日】2017-03-31
(65)【公開番号】P2018172345
(43)【公開日】2018-11-08
【審査請求日】2020-01-28
(73)【特許権者】
【識別番号】501303046
【氏名又は名称】株式会社 アルマード
(74)【代理人】
【識別番号】100102314
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 阿佐子
(74)【代理人】
【識別番号】100123984
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 晃伸
(74)【代理人】
【識別番号】100159178
【弁理士】
【氏名又は名称】榛葉 貴宏
(74)【代理人】
【識別番号】100206689
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 恵理子
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 由紀夫
【審査官】長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-040402(JP,A)
【文献】特開2014-231487(JP,A)
【文献】特開2013-216652(JP,A)
【文献】特開2012-153614(JP,A)
【文献】特開2003-246741(JP,A)
【文献】特開2018-052854(JP,A)
【文献】お菓子フォーラム,2016年,No.132,pp.1-11
【文献】跡見順子他,第23回日本未病システム学会学術総会抄録集,2016年,p.95、P1-15
【文献】アミノ酸研究,Vol.3, No.1,2009年,pp.79-83
【文献】フレグランスジャーナル,2007年,Vol.35, No.5,pp.75-79
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/57
A61K 35/60
A61K 38/01
A61K 38/39
A61P 17/00
A61P 17/14
A23L 33/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加水分解卵殻膜成分と魚コラーゲンを含むことを特徴とする経口美肌用組成物。
【請求項2】
加水分解卵殻膜成分:魚コラーゲンを10~90:90~10重量部の割合で含む、請求項1に記載の経口美肌用組成物。
【請求項3】
加水分解卵殻膜成分が加水分解卵殻膜粉末である、請求項1または2に記載の経口美肌用組成物。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の経口美肌用組成物を含む経口美肌用飲食品、サプリメント、または医薬品。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれかに記載の経口美肌用組成物を含む経口美肌用顆粒剤、カプセル剤、または錠剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加水分解卵殻膜成分を有効成分とするIII型コラーゲンの生成を促進するための経口組成物に関する。さらに、加水分解卵殻膜成分と魚コラーゲンを含む、III型コラーゲンとI型コラーゲンの相乗的作用で美肌効果を有する経口美肌用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
卵殻膜は、鶏卵などの鳥類の卵の卵殻の内側にある膜で、内外2枚からなり、外卵殻膜は卵殻内面に密着し、内卵殻膜は卵白を包んでおり、抗菌性を有し、発生中の胚を感染から保護している。卵殻膜(以下、「ESM」ともいう。)は、I型、V型およびX型コラーゲン、グルコサミン、デスモシンおよびヒアルロン酸を主成分とした強靭な繊維性のタンパク質等からなる網目状の構造を有し、これらのタンパク質はシステインを含むものが多く、酸、アルカリ、プロテアーゼに対して比較的安定で、水に不溶性である。以前は食品産業の廃棄物として利用されていなかったが、皮膚の再生を促進する効果があるため、化粧品や栄養剤としての開発が進められ実用化されている。
【0003】
たとえば、卵殻膜成分の消化吸収効率を高めるために、体積平均粒子径を6μm(800メッシュ)以下となるように微粉末化する(特許文献1)ことや、不溶性の卵殻膜を水に可溶性にするためにタンパク質を、酸またはアルカリ水溶液中で加水分解すること(特許文献2)やタンパク質分解酵素で分解すること(特許文献3)、アルカリ性含水有機溶媒中で加水分解した卵殻膜を陰イオン交換樹脂と接触させた後乾燥粉末化した加水分解卵殻膜粉末(特許文献4)や、アルカリ性である加水分解卵殻膜粉末をpH3~6にして、水溶時に弱酸性を呈するようにすること(特許文献5)が提案されている。
【0004】
一方、魚コラーゲンは、牛由来のコラーゲンの代替品として注目されたもので、カツオ、マグロ、ヒラメ、タイ、サケ、サメなど魚の皮や鱗を原料として安価な材料で製造することができ、経口摂取により美肌効果のあるものも報告されている(特許文献6)。また、低分子化(特許文献7)や可溶性にする(特許文献8)ことにより、骨再生剤や化粧料として利用することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-216652号公報
【文献】特公昭54-23975号公報
【文献】特公平7-110210号公報
【文献】特許第5179847号明細書
【文献】特開2016-98206号公報
【文献】特開2016-195599号公報
【文献】特開2009-1002239号公報
【文献】特開2005-343853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、安全性が高く、飲食品、サプリメント、医薬品として日常的に簡便な方法で利用することのできるIII型コラーゲン生成促進用経口組成物を提供することを課題とする。
さらに、III型コラーゲンの生成促進機能に加え、I型コラーゲンを併用することにより、さらに美肌効果が高まる経口美肌用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
卵殻膜または加水分解卵殻膜は、美肌化、皮膚再生、育毛発毛促進、脱毛防止などの作用の他に、肩凝りの解消、食欲増進、疲労回復等の日常的な健康増進、健康維持に有効であるとされてきた。本発明では、卵殻膜含有微粉末や加水分解卵殻膜粉末(特許文献2、3)が体内で消化吸収されると、体内のIII型コラーゲンの生成を促進する機能を有することを見出した。特に、加水分解卵殻膜粉末等の加水分解卵殻膜成分が、卵殻膜含有微粉末よりもさらに優れたIII型コラーゲンの生成促進機能を有することを確認して、本発明を完成するに至った。
【0008】
また、加水分解卵殻膜成分とI型コラーゲンである魚コラーゲンとを併用することにより、III型コラーゲンの生成促進機能とI型コラーゲンとが相乗的に作用して、美肌効果が高まった経口美肌用組成物を完成するに至った。
【0009】
本発明は、以下の技術的事項から構成される。
(1)加水分解卵殻膜成分と魚コラーゲンを含むことを特徴とする経口美肌用組成物。
(2)加水分解卵殻膜成分:魚コラーゲンを10~90:90~10重量部の割合で含む、上記(1)に記載の経口美肌用組成物。
(3)加水分解卵殻膜成分が加水分解卵殻膜粉末である、上記(1)または(2)に記載の経口美肌用組成物。
(4)上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の経口美肌用組成物を含む経口美肌用飲食品、サプリメント、または医薬品。
(5)上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の経口美肌用組成物を含む経口美肌用顆粒剤、カプセル剤、または錠剤。
【発明の効果】
【0010】
加水分解卵殻膜成分は、ほぼ100%が消化吸収され、血液中に取り込まれた卵殻膜成分により、皮膚におけるIII型コラーゲンの生成を促進するだけでなく、血管でもIII型コラーゲンの生成を促進して血管全体の弾性を増すことができる。本発明によれば、食品添加剤、飲食品、サプリメント、可食性美容剤、医薬品等のさまざまな用途で、日常的に簡単に摂取できる経口美肌用組成物を提供できる。本発明の経口美肌用組成物は、刺激性がなく、様々な形態で種々の成分と併用することができ、さらなる全身効果を得るために、栄養、美容成分と併用することもできる。加水分解卵殻膜成分として加水分解卵殻膜粉末を用いれば、錠剤化も簡単に行うことができる。
【0011】
特に、加水分解卵殻膜成分を魚コラーゲンと併用すると、III型コラーゲンの生成促進機能と、魚コラーゲンのI型コラーゲンが相乗的に作用して、皮膚におけるIII型コラーゲンの生成促進とI型コラーゲンによる美肌効果がさらに高められた経口美肌用組成物となり、この組成物も、食品添加剤、飲食品、サプリメント、可食性美容剤、医薬品等の様々な形態で利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】マウスを用いた加水分解卵殻膜粉末の経口摂取実験による17日後の結果。リアルタイムPCRによるIII型コラーゲン遺伝子の皮膚における発現量を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明で使用される卵殻膜は、陸生の卵生動物すべての卵、特に鳥類の卵の卵殻の内側にある膜であればいずれも使用できる。特に鶏卵の卵殻膜が、入手の容易性、コストの点から好ましい。
【0014】
加水分解卵殻膜成分は、卵殻膜あるいは卵殻膜含有粉末を、酸水溶液、アルカリ水溶液、アルカリ性有機溶媒溶液、およびタンパク質分解酵素含有液などのタンパク質の分解作用を有する液中で加水分解することによって得られる(特許文献2~5)。本発明で使用される加水分解卵殻膜成分は,いずれの方法によって製造された加水分解卵殻膜成分を用いることができる。水溶液、エキスとしても使用できるが、取扱性や保存安定性のため、噴霧乾燥、凍結乾燥等の乾燥手段により得られる粉末形態のものが好ましい。
【0015】
本発明の加水分解卵殻膜成分の製造に用いられる卵殻膜含有粉末は、少なくとも卵殻膜を含む粉末であれば特に制限はなく、粉末とは粒子サイズにかかわらず、あらゆる粉体をいう。剥離された卵殻膜または卵殻に卵殻膜が付着した状態の原料を使用して、公知のいずれの方法で粉末化してもよい。また、市販の卵殻膜含有粉末を用いてもよい。
【0016】
本発明で使用される魚コラーゲンは、カツオ、マグロ、ヒラメ、タイ、サケ、サメなど魚の皮や鱗を原料とするもので、安価な原料から製造することができる。原料から周知の種々の方法(特許文献6~8)により製造することができ、また、魚コラーゲンまたはフィッシュコラーゲンとして市販されているものを用いてもよい。
【0017】
本発明で使用される魚コラーゲンは、周知の方法により化学修飾されたコラーゲン誘導体(サクシニル化コラーゲン、フタル化コラーゲン、マレイン化コラーゲン、ミリスチル-サクシニル化コラーゲンなど)や酸、アルカリ、酵素等により加水分解して低分子化されたコラーゲンを用いてもよい。コラーゲンまたはコラーゲン誘導体は、取扱性や保存安定性のため、噴霧乾燥、凍結乾燥等の乾燥手段により得られる粉末形態のものが好ましい。
【0018】
魚コラーゲンを構成するI型コラーゲンは、一般的に分子量が10万程度である。I型コラーゲンのコラーゲン領域のアミノ酸組成はグリシンが1/3を占め、プロリンおよびヒドロキシプロリンを合わせて21%、アラニンが11%とかなり偏った構成となっている。また、コラーゲンに特有のアミノ酸残基として、3-および4-ヒドロキシプロリン、5-ヒドロキシリジンなどがある。これらは通常のプロリン・リジンに水酸基が小胞体内での酵素によって翻訳後に修飾されたもので、他のタンパク中にはほとんど含まれない。
【0019】
ヒトの皮膚は表面にある上皮層とその下の結合組織性の真皮層からなっており、真皮層を構成するタンパク質は主としてコラーゲンであり、他にエラスチン、アルブミン、グロブリン、ムチンよりなっている。真皮層を構成するコラーゲンは、主としてα1(I)型コラーゲンおよびα1(III)型コラーゲン(以下、「III型コラーゲン」という。)であり、I型コラーゲンは主として皮膚の構造維持、III型コラーゲンは主として皮膚の柔軟性の付与とそれぞれ異なる機能を果たしている。
【0020】
皮膚におけるI型コラーゲンとIII型コラーゲンの割合は、加齢に伴って変化する。III型コラーゲンは胎児性コラーゲンとも呼ばれるように、胎児のときに最も多く、胎児の皮膚ではIII型コラーゲンの方が多いが、10代から減りはじめ、そのまま減少していくので、皮膚におけるIII型コラーゲンの割合を増加することができれば、加齢による皮膚の老化を止め、皮膚をなめらかでしっとりさせることができる。また、III型コラーゲンは皮膚以外にも、血管、肺、肝臓等の結合組織中に含まれている。
【0021】
加水分解卵殻膜成分はほぼ100%が消化吸収され、血液中に取り込まれた卵殻膜成分により、皮膚におけるIII型コラーゲンの生成を促進するだけでなく、血管でもIII型コラーゲンの生成を促進して血管全体の弾性を増すことができる。本発明で使用する加水分解卵殻膜成分は、III型コラーゲンの生成を促進する機能を有し、卵殻膜成分含有粉末よりその促進効果が高いことがわかった。
【0022】
また、加水分解卵殻膜成分と魚コラーゲンを併用すると、III型コラーゲンの生成促進効果と魚コラーゲンのI型コラーゲンにより、I型コラーゲンの皮膚の構造維持およびIII型コラーゲンの皮膚の柔軟性の付与というそれぞれ異なる機能により、相乗的に美肌効果を高めることのできる経口美肌用組成物が提供できる。その組成物は、加水分解卵殻膜成分:魚コラーゲンを10~90:90~10重量部の割合で含有することが好ましい。
【0023】
本発明の組成物は、錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、液剤などの経口用組成物とすることができる。刺激性がないために剤型に特に制限はなく、種々の剤型の経口用組成物を製造するための各種成分および製造法は、サプリメント、医薬品等の製造分野で公知な成分から適宜選択することができる。保存、流通に適し、服用時に変形、崩壊が生じず、経口で簡単に服用できる観点から、錠剤に用いることが好ましい。
【0024】
本発明の顆粒剤、カプセル剤、または錠剤に含まれる加水分解卵殻膜粉末の含有量または加水分解卵殻膜粉末と魚コラーゲン粉末の合計の含有量は、特に制限されないが、粒子への造粒と打錠が円滑に行え、かつ顆粒剤、カプセル剤、または錠剤を摂取した際のIII型コラーゲン生成促進効果とI型コラーゲン補充効果がより増強されるなどの観点から、全重量に対して5~45重量%の割合、より好ましくは10~40重量%の割合で含有するのが好ましい。含有量を5重量%以上とすることにより、多量の錠剤を摂取する必要がなくなり、一方、45重量%以下とすることにより造粒および打錠が容易となり、錠剤を製造しやすくなる。
【0025】
本実施形態の顆粒剤、カプセル剤、または錠剤には、顆粒剤、カプセル剤、または錠剤を形成するための各種の公知の添加剤を添加することができ、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、その他の栄養素等を添加することができる。
賦形剤としては、公知の賦形剤が適宜使用できるが、化工澱粉および乳糖の少なくとも1種を、賦形性の観点から卵殻膜成分の重量に対して0.3~3倍用いることが好ましく、1~2.5倍であることがより好ましい。化工澱粉としては、焙焼デキストリンなどのデキストリン、酸化澱粉、低粘性変性澱粉などの1種または2種以上を用いることができる。賦形剤として化工澱粉と乳糖を併用する場合は、使用割合(重量比)が、1:5~5:1であることが好ましい。
結合剤としては、公知の結合剤が適宜使用できるが、たとえば、デンプン糊、アラビアゴム糊、ヒドロキシプロピルセルロースなどが挙げられる。
崩壊剤としては、公知の崩壊剤が適宜使用できるが、たとえば、セルロース類などを用いることができる。
滑沢剤としては、公知の滑沢剤が適宜使用できるが、たとえば、ステアリン酸マグネシウム、ショ糖脂肪酸エステル、ワックス類、タルク、ビタミンCなどが挙げられる。
【0026】
また、本実施形態の錠剤は、錠剤の硬度を高くして、変形や傷つきを防止し、取扱性を向上させるため、硬度向上剤として卵殻カルシウムを含有することが好ましい。卵殻カルシウムは、鶏卵などの鳥類の卵の殻を粉砕・乾燥した微粉末であり、錠剤に含まれる卵殻カルシウムの含有量は、好ましくは0.1~20重量%、より好ましくは0.5~15重量%である。
さらに、本実施形態の錠剤は、錠剤中に含まれる成分の変質や分解を防止し、かつ、錠剤表面の耐傷つき性を向上させるため、コーティング皮膜で覆うことが好ましい。コーティング皮膜は、公知のコーティング皮膜が適宜使用できるが、たとえば、商品名「セラック」(岐阜セラック株式会社製)を用いることができる。本実施形態の錠剤は、糖衣で覆われていてもよく、着色してもよく、着色後に艶出し処理を施してもよい。
【0027】
本実施形態の錠剤の大きさは特に制限されないが、一般には直径が約7~10mm程度の円形や楕円形とするのが、取扱性、服用のし易さから好ましい。錠剤の1個の重さは、約350~600mg程度であり、有効成分が好ましくは約10~240mg、より好ましは約20~150mg含まれるようにする。有効成分が約10~240mgの量で含有されるとすれば、成人では当錠剤を1日当たり1~200個(1日当たりの有効成分で10~48,000mg)摂取することができる。
【0028】
本実施形態の錠剤は、加水分解卵殻膜粉末または加水分解卵殻膜粉末と魚コラーゲン粉末を少なくとも含む打錠用原料を用いて、公知の錠剤製造方法により製造することができる。たとえば、打錠用原料を打錠して裸錠を形成する打錠工程を経て、必要に応じて、造粒工程、保護コーティング工程、糖衣コーティング工程等を行い、さらに着色、艶出しを行ってもよい。
【0029】
また、本発明のIII型コラーゲン生成促進用組成物としての医薬品の有効投与量は、治療もしくは予防すべき症状の程度、投与対象の状態(年齢、性別を含む)、剤型などによって異なる。このような医薬品のヒト(体重60kgの成人)に対する経口投与量は、加水分解卵殻膜成分に換算して、好ましくは1日当たり1~100,000mgである。たとえば、有効投与量は、1日当たり加水分解卵殻膜成分を合計で10~48,000mgとすることができ、好ましくは、20~3,500mgとすることができる。本発明の加水分解卵殻膜含有成分は、安全性が高く副作用の心配がないので、他の成分を適切に選択する限りにおいて、摂取量または適用量が上記の範囲を超えても問題はない。
【0030】
さらに、本発明の組成物は、菓子類、飲料、健康食品、保存食品、加工食品などの食品添加剤とすることができる。ここで、「医薬品」および「飲食品」の対象はヒトに限定されるのもではなく、ペットや家畜のような哺乳動物用の医薬品および飼料も包含する。また、「飲食品」の概念には、通常の飲食品の他、経腸栄養食品、栄養機能食品、機能性表示食品、特定保健用食品などが包含される。
【0031】
以下に、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【実施例1】
【0032】
[加水分解卵殻膜粉末のIII型コラーゲン生成促進機能]
卵殻膜含有粉末サンプルとして、商品名「EMパウダー300」(キユーピー株式会社製)を用いた。
ジェットミルとして、シングルトラックジェットミル(株式会社セイシン製、FS-4)を用いて、風量:1.2m/min、動力:11kwにて、体積最大粒子径が800メッシュ(目開きで約20μm)程度となるまで微粉砕を実施した。レーザー回折式粒度分布測定機(株式会社セイシン製、LMS-30)を用いて粉砕後の粒径を測定したところ、体積最大粒子径は19.6μm、体積平均粒子径は5.8μm(以下、「卵殻膜800メッシュ微粉末」という。)であった。
また、同じ卵殻膜含有粉末サンプルから、特許文献5に記載の方法にしたがってpHが3~6である加水分解卵殻膜粉末を製造した。
【0033】
卵殻膜800メッシュ微粉末と加水分解卵殻膜粉末のそれぞれを、1日1回、17日間マウスに経口摂取させて、サプリメント経口摂取実験を行った。
8週齢のヘアレスマウスに対して、加水分解卵殻膜粉末をMediGelに混合し、サプリメントとして1日1回、17日間、動物の活動期に自主的に摂取させた。ヒト1日摂取量の1/2、1倍、2倍換算の量を与え(各々n=6)、また、卵殻膜800メッシュ微粉末をヒト1日摂取量の1倍換算の量として同様に摂取させた(n=6)。対照として、サプリメントを与えないヘアレスマウスを用いた。17日後のそれぞれのマウスの皮膚と肝臓におけるIII型コラーゲン遺伝子発現を定量的リアルタイムPCRで調べた。
【0034】
定量的リアルタイムPCR解析は、以下のように行った。
各マウスから背部皮膚および肝臓サンプルを採取し、液体窒素中で粉砕した。全皮膚組織または全肝臓組織のホモジナイス後、総RNAを単離し、商品名「Takara PrimeScript RT reagent kit」を用いてcDNA合成を行った。リアルタイムPCR法は商品名「SYBR Premix Ex TaqTM II(Takara) on Thermal Cycler Dice Real Time System」(Takara)を用いて行った。プライマーとしてCol3a1(III型コラーゲン)をコードする遺伝子の増幅用に設計されたプライマーを用いた。内部標準として、ハウスキーピング遺伝子であるグリセルアルデヒド-3-ホスフェートデヒドロゲナーゼ(GAPDH)mRNAを同様に増幅した。PCRサイクルは、最初の変性を95℃で30秒、40サイクル(95℃で5秒の変性、60℃で1分のアニーリングおよび伸長反応)行った。
【0035】
皮膚におけるIII型コラーゲン遺伝子の発現量を図1に示す。
経口で加水分解卵殻膜粉末(図1では「ECエキスサプリメント」と表示)を摂取したマウスの背部皮膚において、III型コラーゲンをコードする遺伝子の発現が量依存的に上昇する(p=0.08)ことが示された。経口で卵殻膜800メッシュ微粉末を摂取したマウスよりも効果的に、III型コラーゲンをコードする遺伝子の発現を上昇させた。
【0036】
肝臓における、加水分解卵殻膜粉末を摂取したマウスのIII型コラーゲン遺伝子の発現量については、サプリメントとしてヒトが摂取する1倍換算の量を与えたマウスでは、対照群と変化がなかったが、2倍換算量を与えた場合に、III型コラーゲン遺伝子の発現が有意(p=0.007)に上昇した。肝臓におけるIII型コラーゲン遺伝子の発現の上昇により、肝臓線維化抑制および血管の環境改善効果が期待される。
【実施例2】
【0037】
[錠剤の製造]
実施例1で使用した加水分解卵殻膜粉末と市販の魚コラーゲン粉末(商品名「ニッピペプタイド FCP」(株式会社ニッピ製))を、それぞれ20.0重量部、商品名「ワキシa」(日食株式会社製)10.0重量部、商品名「パインファイバー」(松谷化学株式会社製)20.0重量部、乳糖(メグレ社製)25.9重量部、卵殻カルシウム 商品名「カルホープ」(キユーピー株式会社製)10.0重量部、β-カロチン5.0重量部、ビタミンB2 0.05重量部、ビタミンE0.05重量部、およびナイアシン2.0重量部を、V型混合機を用いて混合することにより、原料混合物を調製した。この原料混合物93重量部に対して、エチルアルコール15重量部を混合し、得られた混合物を湿式造粒装置を用いて造粒してから、温度50℃で約16時間乾燥して、打錠用の顆粒を製造した。
【0038】
打錠用の顆粒100重量部に対して、ビタミンCを9重量部およびショ糖脂肪酸エステルを1重量部の割合で混合し、得られた混合物を打錠装置を使用して、1粒が200mgの裸錠を製造した。裸錠の表面に、コーティング装置を使用して商品名「セラック」(岐阜セラック株式会社製)の水溶液を塗布し、温度40℃で2時間乾燥して保護コーティングされた錠剤を得た。十分に乾燥させた保護コーティングされた錠剤の表面に、糖衣被覆装置を使用して、糖衣用ペーストA(グラニュー糖70重量部、アラビアガム3重量部、ゼラチン4重量部、卵殻カルシウム3重量部および水65重量部を混合したペースト)を被覆した後、温度40℃で約4時間乾燥した。その後、糖衣用ペーストAを水で希釈した糖衣用ペーストBを糖衣被覆装置を使用して被覆した後、温度40℃で4時間乾燥し、糖衣コーティング錠を得た。
【0039】
糖衣コーティング錠の表面に、商品名「SRレッドK3」(三栄源社製)を含む着色料を塗布した後、40~50℃で乾燥して、赤色に着色した錠剤を製造し、その表面にカルナウバロウを用いて艶出しを行った。これにより得られた錠剤1個の重量は400mgであり、錠剤1個当たり卵殻膜成分を約80mgの割合で含有していた。艶出し処理を行った錠剤を選別して不良品を除き、製品検査後に計量し、乾燥剤を同封した二重袋で包装した。錠剤は十分な硬度および形状保形性を有しており、選別、検査、包装時に変形したり、崩壊するとはなく、取扱性に優れていた。
【実施例3】
【0040】
[経口試験]
加水分解卵殻膜粉末と魚コラーゲン粉末の併用効果に関して、一般女性21 名(20代から50代)による経口試験を実施した。0.5gの加水分解卵殻膜(商品名「ESMプロテイン」(株式会社アルマード社製))と0.5gの魚コラーゲン(商品名「フィッシュコラーゲンリッチ500-F」(株式会社ラビジェ製))を市販のリンゴジュースに混合し、このドリンクを1日1本、5日間継続して経口投与してもらい、各被験者の投与前後における肌の状態変化について調査した。
【0041】
肌の状態の各項目について、改善を実感した項目を複数回答してもらった。結果は表1のとおりであり、肌の状態について変化が無いと答えたのは、7名であり、その他の2/3の被験者が、肌の状態の改善に効果があると評価した。
【0042】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明によれば、刺激性がなく、様々な形態で種々の成分と併用することができる、加水分解卵殻膜粉末を有効成分とするIII型コラーゲン生成促進用経口組成物を提供することができる。
そして、魚コラーゲンと併用すれば、III型コラーゲンの生成促進機能と、魚コラーゲンのI型コラーゲンが相乗的に作用して、皮膚におけるIII型コラーゲンの生成促進とI型コラーゲンによる美肌効果がさらに高められた経口美肌用組成物となる。この組成物は、食品添加剤、飲食品、サプリメント、可食性美容剤、医薬品等の様々な用途、形態で利用することができ、日常的に簡単に摂取することができる。


図1