(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】天井照明システム
(51)【国際特許分類】
F21S 8/04 20060101AFI20220315BHJP
F21V 21/096 20060101ALI20220315BHJP
F21V 21/03 20060101ALI20220315BHJP
E04B 9/00 20060101ALI20220315BHJP
F21Y 101/00 20160101ALN20220315BHJP
【FI】
F21S8/04 110
F21V21/096
F21V21/03 451
E04B9/00 G
F21Y101:00 100
(21)【出願番号】P 2017164886
(22)【出願日】2017-08-29
【審査請求日】2020-08-27
(73)【特許権者】
【識別番号】598158635
【氏名又は名称】株式会社日建ハウジングシステム
(74)【代理人】
【識別番号】100103399
【氏名又は名称】橋本 清
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 いづみ
(72)【発明者】
【氏名】青木 理
【審査官】坂口 達紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-159683(JP,A)
【文献】特開2011-151901(JP,A)
【文献】特開昭56-147380(JP,A)
【文献】特開2014-236634(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 8/04
F21V 23/00
H02J 50/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井板の裏面側に、1次コイルを内蔵した給電ユニットを複数配設し、天井板の表面側に、帯状切欠溝部を穿設した矩形状を呈する金属製プレートを、帯状切欠溝部の位置が給電ユニットの位置に対応するように、貼着して配置すると共に、天井板の表面側に、2次コイルを内蔵した受電ユニットと、永久磁石とを内部に配設したシーリングと、このシーリングに装着自在とした照明器具とを、前記金属製プレートに前記永久磁石を吸着させることによって、設置自在としたことを特徴とする天井照明システム。
【請求項2】
前記シーリングと前記照明器具とを一体化したことを特徴とする請求項1に記載の天井照明システム。
【請求項3】
前記給電ユニットは、天井板の裏面側に、直線状又は曲線状に適宜間隔をおいて配設したことを特徴とする請求項1又は2に記載の天井照明システム。
【請求項4】
天井板の表面側であって、前記給電ユニット及び前記金属製プレートが配置されている位置に対応する位置に、貼着自在としたシールを貼着し、又は、図形、
図案を描写したことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の天井照明システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅の天井に設置する照明器具を適宜位置に設置自在とした天井照明システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、住宅に居住する者において、子供の誕生、成長等の事情によって、寝室、居室、リビング、ダイニング、キッチン等の区画を変更したいという要望が高まってきた。
このような場合、従来は、寝室、居室、リビング等の区画を変更するには、これら空間を区画する間仕切壁を一旦破壊して、変更したい区画に沿うように、再度、間仕切壁を構築する必要があった。
【0003】
しかし、このように、間仕切壁を一旦破壊し、再度、構築する方法では、改修工事をする間は、居住者は他の住宅に引っ越していなければならず、改修費用及び引越費用が係る上、改修には長期間を要した。
【0004】
そこで、最近では、寝室、居室、リビング等を区画する間仕切壁を居住者自身が移動できるようにして、改修費用、引越費用が係らず、又、改修にも長期間を要せず、寝室、居室、リビング等の区画を容易に変更できるようにした住宅も開発されている。
【0005】
しかし、間仕切壁を再構築する方法によっても、間仕切壁を移動できる住宅構造であっても、区画された空間を照明する天井照明器具は、当初から、その空間を良好に照明できるように、天井の適宜位置に固定して設置されている。
【0006】
このため、寝室、居室、リビング等の区画を希望通り変更したとしても、天井照明器具は適宜位置に固定して設置してあるから、その区画された空間を良好に照明することができないという問題が生じた。
【0007】
このような問題を解決するためには、天井照明器具も設置する位置を移動できるようにすればよく、天井照明器具の設置位置を容易に移動できるように、種々の手段が提案されている(例えば、特許文献1及び2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2003-247295号公報
【文献】特開2008-261100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載された発明は、引掛シーリングに引出自在とした電気ケーブルを接続しておき、この電気ケーブルを適宜引き出し、引掛シーリングを天井面に沿って移動させることによって、照明器具を適宜位置に設定できるようにしたものである。
【0010】
又、特許文献2に記載された発明は、天井に構成した物理的な移動動線に沿ってダウンライトを移動できるようにすることによって、ダウンライトを天井の適宜位置に設定できるようにしたものである。
【0011】
しかし、特許文献1及び特許文献2に記載された発明は、何れも、照明器具を物理的に天井面に沿って移動させることによって、照明器具を天井の適宜位置に設定するものであるから、照明器具を移動させる経路に間仕切壁を構築又は設定することができず、照明器具を設定する位置の自由度は限定されたものであった。
又、特許文献2に記載された発明にあっては、天井板の下面にレール等を設置するものであるから、天井面が平滑状態とはならず、天井の美観を損ねるものであった。
【0012】
本発明は、かかる問題点を解決するために為されたものであって、照明器具を物理的に天井面に沿って移動させることなく、天井の適宜位置に設定できるようにして、間仕切壁の構築又は設定の自由度、及び、照明器具の設定の自由度を大幅に高めることができるようにすると共に、天井面を平滑状態に保持するようにして、天井の美観を損ねることがないようにすることを目的とする。
【0013】
又、本発明は、照明器具を極めて簡単な操作で設置、固定することができ、又、離脱も容易にできるようにすることをも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の天井照明システムは、天井板の裏面側に、1次コイルを内蔵した給電ユニットを複数配設し、天井板の表面側に、帯状切欠溝部を穿設した矩形状を呈する金属製プレートを、帯状切欠溝部の位置が給電ユニットの位置に対応するように、貼着して配置すると共に、天井板の表面側に、2次コイルを内蔵した受電ユニットと、永久磁石とを内部に配設したシーリングと、このシーリングに装着自在とした照明器具とを、前記金属製プレートに前記永久磁石を吸着させることによって、設置自在としたことを特徴とする。
【0015】
ここで、前記シーリングと前記照明器具とを一体化してもよい。
【0016】
又、前記給電ユニットは、天井板の裏面側に、直線状又は曲線状に適宜間隔をおいて配設するのが好ましい。
【0017】
さらに、天井板のどの位置に前記給電ユニットが配設されているかを居住者が容易に視認できるように、天井板の表面側であって、前記給電ユニット及び前記金属製プレートが配置されている位置に対応する位置に、貼着自在としたシールを貼着し、又は、図形、図案を描写するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の天井照明システムによれば、間仕切壁の構築又は設定の自由度、及び、照明器具の設定の自由度を大幅に高めることができる。
又、照明器具を極めて簡単な操作で設置、固定することができ、又、離脱することもできる。
【0019】
又、本発明の天井照明システムによれば、受電ユニットへの給電状態を保持しつつ、照明器具を給電ユニットに沿って、又は、帯状切欠溝部に沿って適宜距離移動させ、寝室、居室等の区画変更の際に、天井照明器具の設置位置を適宜移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】電磁誘導方式を適用した非接触給電の原理図である。
【
図2】本発明の天井照明システムの一実施形態における各要素を説明する分解断面図である。
【
図3】
図2に示す天井照明システムにおける給電ユニット設置位置近傍の天井板の(A)は上面図、(B)は断面図、(C)は下面図である。
【
図4】
図2に示す天井照明システムにおける受電側装置を構成するシーリングの(A)は上面図、(B)は断面図である。
【
図5】
図2に示す天井照明システムの使用状態断面図である。
【
図6】
図2に示す天井照明システムの回路構成図である。
【
図7】本発明の天井照明システムの他実施形態における各要素を説明する分解断面図である。
【
図8】
図7に示す天井照明システムの使用状態断面図である。
【
図9】本発明の天井照明システムを設置した集合住宅の一実施例を示す平面図である。
【
図10】本発明の天井照明システムを設置した集合住宅の他実施例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
先ず、本発明の天井照明システムにおける、電磁誘導方式を適用した非接触給電の原理について、
図1を参照して説明する。
【0022】
図1に示すように、1次コイル101と2次コイル102とを対向させ、1次コイル101の両端部に交流電源103から交流電圧を印加すれば、1次コイル101の周囲には磁界Hが生成する。
一方、この磁界Hの中に2次コイル102を位置させると、電磁誘導によって、2次コイル102に電流が流れ、2次コイル102の両端部には交流電圧が生じることになり、非接触で給電することが可能になる。
【0023】
以下、本発明の天井照明システムの好適な実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
尚、本発明においては、電磁誘導方式による非接触給電を適用するため、天井板51の材料としては、無垢板、合板等の木質系、又はロツクウール板、石膏ボード等の無機質系のもの等、少なくとも、磁束が通過できる材料を使用する。
【0024】
本発明の天井照明システム1は、
図2に示すように、給電ユニット3と、金属製プレート4と、から成る給電側装置2と、受電ユニット6と、永久磁石7と、シーリング8と、照明器具9と、から成る受電側装置5と、から構成される。
【0025】
給電ユニット3は、
図2に示すように、天井板51の上面(裏側面)の適宜個所に当接させ、かつ、
図9及び10に示すように、天井板51の上面において所定間隔で、整列状に配設してある。
【0026】
そして、給電ユニット3は、
図6に示すように、1次コイル11と、駆動回路12とを内蔵したものであって、1次コイル11は長尺とし、その軸心を天井板51に沿う方向に配置してある。
この駆動回路12は、交流電源から供給される交流電圧を所定電圧及び所定周波数に変換する電圧・周波数変換回路、1次コイル11を駆動制御する駆動制御回路等から成っている。
【0027】
金属製プレート4は、肉厚を0.6mm程度とした、矩形状を呈する薄肉金属板から成るものであって、
図2及び
図3に示すように、長さ方向中央部に帯状切欠溝部4aを穿設してある。
そして、金属製プレート4は、帯状切欠溝部4aの位置が給電ユニット3の位置に対応するように、天井板51の下面(表側面)に貼着して、
図9又は
図10に示すように、天井板51の下面に所定間隔をおいて配設してある。
【0028】
金属製プレート4の材料としては、導電性を有し、磁性体である金属であればよいが、長期に亘って腐食しないように、又、美観性を考慮して、スチール(鋼)、特には、ステンレス鋼であることが好ましい。
【0029】
シーリング8は、
図2及び
図4に示すように、照明器具9の上端部を引掛けて、吊下する通常のシーリングと同様の構成のものである。
そして、このシーリング8のケース8a内に、受電ユニット6と、永久磁石7とを配置してある。
【0030】
受電ユニット6は、
図2及び
図3に示すように、シーリングケース8a内の上端部の中央部に配設、固定してある。
【0031】
そして、受電ユニット6は、
図6に示すように、2次コイル13と、制御回路14とを内蔵したものであって、2次コイル13は短尺とし、天井板51に設置した状態で、その軸心が天井板51に沿う方向に配置するようにしてある。
この制御回路14は、2次コイル13に印加される交流電圧を所定電圧に変換する電圧変換回路等から成っている。
【0032】
永久磁石7は、矩形状又は円環状を呈する塊状磁石体から成るものであって、
図2及び
図4に示すように、シーリングケース8a内の上端部の周辺部に配設、固定してある。
【0033】
永久磁石7の材料としては、保磁力及び残留磁気の数値が大きい、ネオジム磁石等の強磁性材料を使用することが好ましい。
【0034】
照明器具9は、通常に市販される天井照明器具であって、前記シーリング8に上端部を引掛けて、吊下できるものであればよい。
【0035】
本発明の天井照明システム1は、以上のような構成であって、次のように設置し、操作して、天井から居室を照明することができる。
【0036】
先ず、居住者は、シーリング8の上端面を天井板51の下面の所定位置に当接させ、永久磁石7が金属製プレート4を吸引することによって、シーリング8が天井板51の下面に確実に吸着したかを確認する。
【0037】
次に、照明器具9の上端部をシーリング8に引掛けて、装着することによって、
図5に示すように、シーリング8を介して、照明器具9を天井板51に吊下させる。
この時、
図5に示すように、給電ユニット3と受電ユニット6とは、天井板51を介して対向する。
【0038】
そして、電源スイッチを押下すれば、上記に説明したように、給電ユニット3内の1次コイル11に交流電圧が印加され、電磁誘導によって受電ユニット6内の2次コイル13に誘導電流が流れる。
これによって、非接触給電が実行され、シーリング8を介して照明器具9に所定の電圧が供給されて、照明器具9を点灯することができる。
【0039】
本発明の天井照明システム1は、
図3に示すように、受電ユニット6を給電ユニット3より短尺としてあるから、シーリング8を介して照明器具9を天井板51に吊下させた際に、受電ユニット6への給電状態を保持しつつ、照明器具9を給電ユニット3に沿って、又は、帯状切欠溝部4aに沿って適宜距離移動させることができる。
【0040】
よって、本発明の天井照明システム1によれば、寝室、居室等の区画変更の際に、天井照明器具9の設置位置を適宜移動させることができる。
【0041】
上記実施形態では、受電ユニット6と、永久磁石7と、シーリング8と、照明器具9と、から受電側装置5を構成したが、
図7に示すように、シーリング8と、照明器具9とを一体化させて、受電側装置35を構成してもよい。
【0042】
この場合には、本発明のシステムに対応した特別な受電側装置35を製造する必要があるが、天井板51への装着は迅速にすることができる。
【0043】
上記実施形態では、
図9に示すように、給電ユニット3は、住宅50の天井板51の上面に当接、固定し、金属製プレート4は、天井板51の下面に貼着、固定し、住宅50の幅方向に並行状に、長さ方向に直線状に整列、配設するようにしたが、
図10に示すように、適宜位置において、曲線状に配設する等、自由に配設してもよい。
【0044】
そして、
図9及び
図10に示すように、給電ユニット3は、金属製プレート4の帯状切欠溝部4aに沿って、適宜間隔をおいて、複数個を配設してある。
【0045】
尚、天井板51の表面側に貼着して配設する金属製プレート4は、前記のように、肉厚0.6mm程度のものであるから、天井面は略平滑状態ではあるが、帯状切欠溝部4aがやや目立つので、帯状切欠溝部4aをパテにより埋めて、金属製プレート4を同一面状として、目立たないようにしてもよい。
【0046】
さらに、より美観性を向上するべく、金属製プレート4が露出しないよう、金属製プレート4を含めて天井板51全体にビニルクロス等を貼着し、天井面が一様に見えるようにしてもよい。
【0047】
又、特に、天井板51全体にビニルクロス等を貼着した場合には、天井板51の上面のどの位置に給電ユニット3及び金属製プレート4が配置されているか、居室から確認するのは容易ではないから、天井面(表面側)に貼着自在としたシールを貼着して、給電ユニット3及び金属製プレート4の位置を容易に認識できるようにしてもよい。
シールに代えて、天井面(表面側)の給電ユニット3及び金属製プレート4が配置されて位置に、図形、図案等を描写するようにしてもよい。
【0048】
以上のように、本発明の天井照明システム1は、天井板51の裏面側に給電ユニット3を配設し、天井板51の表面側には薄肉金属板から成る金属製プレート4を配設するものであって、表面側には引掛シーリング、案内部材等の何等突出する部材を配設することもないから、間仕切壁の構築又は設定の自由度、及び、照明装置の設定の自由度を大幅に高めることができる。
【0049】
又、シーリング8又は照明器具9の上端面を天井板51に近接させ、金属製プレート4に永久磁石7が吸着されることを確認して、照明装置9が天井板51の下面に確実に当接するようにするだけであるから、照明装置9は極めて簡単に設置、固定することができ、又、離脱することもできる。
【0050】
さらに、本発明の天井照明システム1は、受電ユニット6を給電ユニット3より短尺としてあるから、受電ユニット6への給電状態を保持しつつ、照明器具9を給電ユニット3に沿って、又は、帯状切欠溝部4aに沿って適宜距離移動させ、寝室、居室等の区画変更の際に、天井照明器具9の設置位置を適宜移動させることができる。
【0051】
尚、照明器具9の点灯の際に、電源スイッチによらず、リモコン等の点灯手段を使用する等、本発明の天井照明システムは、その要旨を逸脱しない限りにおいて、種々の形態を採用することができること、勿論である。
【符号の説明】
【0052】
1 天井照明システム
3 給電ユニット
4 金属製プレート
6 受電ユニット
7 永久磁石
8 シーリング
9 照明器具
11 1次コイル
13 2次コイル
51 天井板