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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】マイクロチップ
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20220315BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20220315BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20220315BHJP
【FI】
C12M1/00 A
G01N37/00 101
C12N15/09 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017245156
(22)【出願日】2017-12-21
(65)【公開番号】P2019110779
(43)【公開日】2019-07-11
【審査請求日】2020-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 隆昌
(72)【発明者】
【氏名】乾 延彦
(72)【発明者】
【氏名】高橋 良輔
(72)【発明者】
【氏名】今村 一彦
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼松 辰典
【審査官】田中 晴絵
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-529883(JP,A)
【文献】特開2004-163161(JP,A)
【文献】特表2009-523429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00-3/10
G01N 37/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が送液されるマイクロ流路と、
前記マイクロ流路の途中に設けられており、核酸を担持するための担持体が充填された担持体充填部と、
を備え、
前記担持体充填部において、前記担持体が圧縮されて固定されており、
前記担持体の圧縮弾性率が、50kPa以下であり、
前記担持体充填部における前記担持体の充填率が、8%以上、20%以下であり、
前記担持体が、ガラスフィルタである、マイクロチップ。
【請求項2】
前記マイクロ流路が延びる方向及び前記担持体充填部の深さ方向に直交する方向における前記担持体の幅の最大値が、1mm以上、4mm以下である、請求項1に記載のマイクロチップ。
【請求項3】
前記担持体の平均孔径が、1.5μm以上、5.0μm以下である、請求項1又は2に記載のマイクロチップ。
【請求項4】
前記担持体充填部における前記担持体の充填率が、8%以上、13.54%以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載のマイクロチップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体が送液されるマイクロ流路が設けられたマイクロチップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流体が送液されるマイクロ流路が設けられたマイクロチップが種々提案されている。この種のマイクロチップは、核酸や酵素などの生体物質の分析や無機イオンの分析等に用いられている。下記の特許文献1及び非特許文献1には、このような化学的及び生物学的分析に用いられる核酸を担持体に担持することによって分離して回収する方法が開示されている。
【0003】
マイクロ流路内へ担持体を固定する場合、例えば、シリカビーズのような粒子状担持体が送液時に流出してしまうことがある。この点に関し、特許文献1では、磁性を帯びた粒子をマイクロチップ外の磁石により固定する方法が提案されている。また、非特許文献1では、担持体であるシリカビーズを固定材としてのガラス繊維で挟み込んで固定させる構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2014/073638号
【非特許文献】
【0005】
【文献】Anal Biochem, 2008 February 15; 373 (2): 253-262
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように、磁力などの外力を利用する方法においては、コストが増大し、しかも担持体を均一かつ高密度に充填することが難しい場合がある。一方、非特許文献1の方法においても、コストが増大したり、流路抵抗が大きくなったりする場合がある。また、固定材に目的物以外の物質が吸着する場合がある。さらに、特許文献1及び非特許文献1のいずれの方法を用いた場合においても、装置が大掛かりになるという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、大掛かりな装置を用いずとも、担持体を容易に固定することを可能とする、マイクロチップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るマイクロチップは、流体が送液されるマイクロ流路と、前記マイクロ流路の途中に設けられており、核酸を担持するための担持体が充填された担持体充填部と、を備え、前記担持体充填部において、前記担持体が圧縮されて固定されており、前記担持体の圧縮弾性率が、50kPa以下である。
【0009】
本発明に係るマイクロチップのある特定の局面では、前記担持体充填部における前記担持体の充填率が、8%以上、20%以下である。
【0010】
本発明に係るマイクロチップの他の特定の局面では、前記マイクロ流路が延びる方向及び前記担持体充填部の深さ方向に直交する方向における前記担持体の幅の最大値が、1mm以上、4mm以下である。
【0011】
本発明に係るマイクロチップの別の特定の局面では、前記担持体の平均孔径が、1.5μm以上、5.0μm以下である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、大掛かりな装置を用いずとも、担持体を容易に固定することを可能とする、マイクロチップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係るマイクロチップを示す模式的平面図である。
図2図1中のA-A線に沿う部分の模式的断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係るマイクロチップにおいて、マイクロ流路が設けられている部分を拡大して示す模式的平面図である。
図4】本発明の一実施形態に係るマイクロチップにおいて、マイクロ流路が設けられている部分を拡大して示す模式的断面図である。
図5】実施例における流路抵抗の測定方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0015】
なお、本明細書に記載の各実施形態は、例示的なものであり、異なる実施形態間において、構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることを指摘しておく。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係るマイクロチップを示す模式的平面図である。図2は、図1中のA-A線に沿う部分の模式的断面図である。
【0017】
図1に示すように、マイクロチップ1内には、流体が送液されるマイクロ流路2が設けられている。マイクロ流路2の途中には、担持体充填部3が設けられている。担持体充填部3は、担持体6を充填するための空間である。
【0018】
マイクロチップ1は、特に限定されないが、本実施形態では、図2に示すように、板状の基板4と、カバー部材5とを有する。基板4は、対向し合う第1の主面4a及び第2の主面4bを有する。基板4の第1の主面4a側には、凹部4cが設けられている。凹部4cは、第1の主面4a側に開口するように設けられている。
【0019】
基板4を構成する材料は、特に限定されず、例えば、合成樹脂、ゴム、金属などを用いることができる。なかでも、基板4は、合成樹脂の成形体からなることが好ましい。より好ましくは、合成樹脂の射出成形体からなることが望ましい。もっとも、基板4は、複数枚の合成樹脂のシートを積層することにより形成されていてもよい。また、基板4は、ベースシートと、ベースシート上に設けられた貫通孔を有する基材本体とにより構成されていてもよい。
【0020】
合成樹脂としては、特に限定されないが、熱可塑性樹脂であることが好ましい。なかでも、合成樹脂としては、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリジメチルシロキサン、シクロオレフィンポリマー、環状オレフィンコポリマー、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンテレフタレート、又はアモルファスポリオレフィンであることがより好ましい。これらは、単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
【0021】
基板4の第1の主面4a上には、カバー部材5が設けられている。カバー部材5は、基板4の凹部4cを閉成するように設けられている。カバー部材5が、基板4の凹部4cを閉成することにより、担持体充填部3が構成されている。
【0022】
カバー部材5は、例えば、弾性部材により構成されていることが好ましい。弾性部材としては、特に限定されないが、エラストマーであることが好ましい。なお、カバー部材5は、樹脂フィルムであってもよい。また、本発明において、基板4とカバー部材5とは、一体的に構成されていてもよい。
【0023】
基板4内には、流体が送液されるマイクロ流路2が設けられている。マイクロ流路2とは、流体の搬送に際し、マイクロ効果が生じるような微細な流路をいう。このようなマイクロ流路2では、液体は、表面張力の影響を強く受け、通常の大寸法の流路を流れる液体とは異なる挙動を示す。
【0024】
マイクロ流路2の横断面形状及び大きさは、上記のマイクロ効果が生じる流路であれば特に限定はされない。例えば、マイクロ流路2に流体を流す際、ポンプや重力を用いる場合には、流路抵抗を低下させる観点から、マイクロ流路2の横断面形状がおおむね長方形(正方形を含む)の場合には、小さい方の辺の寸法で、20μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましく、100μm以上がさらに好ましい。マイクロチップ1を用いたマイクロ流体デバイスのより一層の小型化の観点より、小さい方の辺の寸法で、5mm以下が好ましく、1mm以下がより好ましく、500μm以下がさらに好ましい。
【0025】
また、マイクロ流路2の横断面形状がおおむね円形の場合には、直径(楕円の場合には、短径)が、20μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましく、100μm以上がさらに好ましい。上記マイクロ流体デバイスのより一層の小型化の観点より、直径(楕円の場合には、短径)は、5mm以下が好ましく、1mm以下がより好ましく、500μm以下がさらに好ましい。
【0026】
一方、例えば、マイクロ流路2に流体を流す際、毛細管現象を有効に活用する場合には、マイクロ流路2の横断面形状がおおむね長方形(正方形を含む)の場合には、小さい方の辺の寸法で、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、20μm以上であることがさらに好ましい。また、小さい方の辺の寸法で、200μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがさらに好ましい。
【0027】
マイクロ流路2の途中に、上述の担持体充填部3が設けられている。マイクロ流路2は、入口側流路2aと、出口側流路2bとを有する。なお、本明細書において、流体は、液体である。
【0028】
入口側流路2aは、担持体充填部3より、上流側に設けられている上流側マイクロ流路である。入口側流路2aの一端は、担持体充填部3に接続されている。一方、入口側流路2aの他端が設けられている入口側から、流体やガスを流入させることができる。なお、複数の流体やガスを担持体充填部3に流入させる場合は、全て同じ入口から流入してもよく、流入する流体やガスごとに個別の入口や入口側流路2aが設けられていてもよい。
【0029】
出口側流路2bは、担持体充填部3より、下流側に設けられている下流側マイクロ流路である。出口側流路2bの一端は、担持体充填部3に接続されている。出口側流路2bの下流側に設けられている他端から、流体やガスを他の部位に送り出すことができる。なお、入口側流路2aと、出口側流路2b以外に必要に応じてその他の流路が接続されていてもよい。また、マイクロ流路2の形状としては、特に限定されず、目的の検査、反応に合わせて流路、混合・反応部等を配置することができる。
【0030】
担持体充填部3には、核酸を担持するための担持体6が充填されている。担持体充填部3において、担持体6は、圧縮されて固定されている。担持体6としては、圧縮弾性率が50kPa以下の担持体が用いられている。圧縮弾性率が上記上限以下の担持体6を用いることにより、担持体6を圧縮させ、担持体充填部3内に容易に固定することができる。また、シリカモノリスのような硬質素材とは異なり、担持体充填部3の隙間を少なくすることができ、担持体6の充填率を高めることができる。
【0031】
担持体充填部3内に担持体6をより一層容易に固定する観点から、担持体6の圧縮弾性率は、好ましくは80kPa以下、より好ましくは60kPa以下である。また、担持体6の圧縮弾性率の下限は、特に限定されないが、材料の性質上、例えば、20kPa以上とすることができる。
【0032】
なお、圧縮弾性率は、担持体6を、圧縮速度0.01667mm/sで圧縮したときの弾性率であり、JIS K 7181:2011記載の方法により測定することができる。
【0033】
圧縮弾性率が50kPa以下の担持体6としては、例えば、ガラス、セルロース混合エステル、セルロースアセテート、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリカーボネート(PC)製のフィルターを用いることができる。
【0034】
上記のように、本実施形態のマイクロチップ1では、担持体6の圧縮弾性率が50kPa以下であり、大掛かりな装置を用いずとも、担持体充填部3に容易に担持体6を固定することができる。核酸を担持体6に担持することにより、核酸を分離して洗浄や回収をすることができる。
【0035】
また、本実施形態では、担持体充填部3における担持体6の充填率が、8%以上、20%以下であることが好ましい。担持体充填部3における担持体6の充填率を8%以上とすることにより、核酸の回収率をより一層高めることができる。また、担持体充填部3における担持体6の充填率を20%以下とすることにより、流路抵抗をよい一層小さくすることができ、より一層効率よく核酸を担持体に担持することができる。
【0036】
核酸の回収率をより一層高める観点から、担持体6の充填率は、より好ましくは10%以上である。また、流路抵抗をより一層小さくする観点から、担持体6の充填率は、より好ましくは15%以下である。
【0037】
なお、担持体充填部3における担持体6の充填率は、以下の式を用いて測定することができる。
【0038】
充填率(%)=[(担持体6の重量/担持体6の比重)/(担持体充填部3の体積)]×100…(式)
【0039】
図3は、本発明の一実施形態に係るマイクロチップにおいて、マイクロ流路が設けられている部分を拡大して示す模式的平面図である。また、図4は、本発明の一実施形態に係るマイクロチップにおいて、マイクロ流路が設けられている部分を拡大して示す模式的断面図である。なお、図3及び図4においては、マイクロ流路2が延びる方向を長さ方向xとする。図3において、長さ方向xに直交する方向を幅方向yとする。また、図4において、長さ方向xに直交する方向を深さ方向zとする。なお、幅方向yと深さ方向zも直交するものとする。
【0040】
本発明においては、幅方向yにおいて、担持体6の幅y1の最大値が、担持体充填部3の幅y2に対し、-0.2mm以上、+0.2mm以下であることが好ましい。また、幅方向yにおいて、担持体6の幅y1の最大値が、担持体充填部3と接するマイクロ流路2の幅y3に対し、1mm以上、2mm以下であることが好ましい。なお、担持体6の幅y1の最大値は、1mm以上、4mm以下であることが好ましい。
【0041】
深さ方向zにおいて、担持体6の厚みz1の最大値は、担持体充填部3の深さz2に対し、-0.3mm以上、+0.3mm以下であることが好ましい。深さ方向zにおいて、担持体充填部3の深さz2が、担持体充填部3と接するマイクロ流路2の深さz3に対し、0mm以上、0.2mm以下であることが好ましい。深さ方向zにおいて、担持体6の厚みz1の最大値は、担持体充填部3と接するマイクロ流路2の深さz3に対し、0mm以上、0.8mm以下であることが好ましい。なお、担持体6の厚みz1の最大値は、0.3mm以上、1.5mm以下であることが好ましい。
【0042】
また、長さ方向xにおいて、担持体6の長さx1の最大値は、担持体充填部3の長さx2に対し、-0.3mm以上、+0.3mm以下であることが好ましい。
【0043】
マイクロ流路2、担持体6、及び担持体充填部3の寸法が、上記範囲内にある場合、担持体充填部3により一層容易に担持体6を固定することができる。
【0044】
なお、本実施形態において、上述の担持体6の充填率を求める際の担持体充填部3の体積は、担持体充填部3における長さx2×幅y2×深さz2により求めることができる。
【0045】
本発明において、担持体6の孔径は、特に限定されないが、平均孔径が、好ましくは1.5μm以上、より好ましくは2.0μm以上、好ましくは5.0μm以下、より好ましくは4.0μm以下である。担持体6の平均孔径が上記下限以上である場合、流路抵抗をより一層小さくすることができる。また、担持体6の平均孔径が上記上限以下である場合、核酸の回収率をより一層高めることができる。なお、担持体6の平均孔径は、例えば、マイクロトラック・ベル社製、品番「Porolux 100NW」を用いて測定することができる。
【0046】
また、本発明において、例えば、担持体充填部3に送液される核酸を含む液体は、マイクロチップ1の内部又は外部に設けられた送液手段により送液することができる。送液手段としては、特に限定されず、例えば、マイクロポンプが挙げられる。具体的には、マイクロポンプを用いて、入口側流路2aに液体や空気、又は所定のガスを送り込むことにより、担持体充填部3側へ液体試薬を送液する手段が挙げられる。この場合、マイクロポンプは、マイクロチップ1の内部に設けられていてもよいし、マイクロチップ1の外部に設けられていてもよい。このような手段により、核酸を含む液体が図1に示すA方向に送液され、担持体充填部3に送液される。
【0047】
また、他の送液手段としては、入口側流路2aより上流側に連結された空間に配置されたガス発生部材が挙げられる。ガス発生部材とは、光や熱等の外力によりガスを発生する部材である。ガス発生部材に所定のタイミングで外力を加えることによりガスを発生させ、入口側流路2aにガスを送り込むことができる。それによって、入口側流路2aから担持体充填部3側へ液体試薬を送液することができる。ガス発生部材としては、例えば、ガス発生テープが挙げられる。
【0048】
以下、本発明の具体的な実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を明らかにする。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0049】
(実施例1)
実施例1では、以下のようにして図1及び図2に示すマイクロチップ1を作製した。
【0050】
具体的には、基板4を構成する材料として、シクロオレフィンポリマー(日本ゼオン社製、商品名「ゼオノア1420R」)を用い、これを射出成形することにより、凹部4cを有する基板4を作製した。また、カバー部材5には、封止テープ(3M社製、商品名「ポリオレフィンテープ9795R」)を用い、封止テープで基板4の凹部4cを閉成することによりマイクロチップ1を作製した。なお、作製したマイクロチップ1の担持体充填部3の幅(充填部幅)、マイクロ流路2の幅(流路幅)、及び担持体充填部3の深さ(充填部深さ)は、下記の表1に示す通りである。
【0051】
担持体6としては、ガラスフィルタ(GEヘルスケア社製、ガラス繊維ろ紙、グレード「GF/D」、粒子保持能2.7μm)を用いた。担持体6は圧縮することにより、マイクロ流路2を介して担持体充填部3に充填した。担持体6の圧縮弾性率、幅、厚み、及び平均孔径を下記の表1に示す。
【0052】
なお、担持体6の圧縮弾性率は、サーモフィッシャー社製、品番「マーズワン3790300」を用いて、JIS K 7181:2011記載の方法により測定した。担持体6の平均孔径は、マイクロトラック・ベル社製、品番「Porolux 100NW」を用いてJIS K 3832の方法により測定した。また、担持体6の充填率は、以下の式を用いて測定した。
【0053】
充填率(%)=[(担持体6の重量/担持体6の比重)/(担持体充填部3の体積)]×100…(式)
【0054】
(実施例2~3)
担持体充填部3の深さ(充填部深さ)を、下記の表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にしてマイクロチップを作製した。
【0055】
(実施例4~5)
担持体充填部3の幅(充填部幅)、マイクロ流路2の幅(流路幅)及び担持体充填部3の深さ(充填部深さ)を、下記の表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にしてマイクロチップを作製した。
【0056】
(比較例1)
担持体6として、ガラスフィルタの代わりにシリカモノリス(ジーエルサイエンス社製、品番「MonoTrap」)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてマイクロチップを作製した。
【0057】
[評価]
実施例1~5及び比較例1で作製したマイクロチップについて、以下の評価を行なった。結果を下記の表1に示す。
【0058】
担持体固定の評価;
担持体固定できているか否かについて、以下の判定基準で評価を行なった。
【0059】
[判定基準]
○…目視で担持体充填部3に担持体6を固定できているかを確認し、固定できている
×…担持体6を担持体充填部3に押し込めず固定できない
【0060】
核酸回収率の評価;
担持体充填部3に核酸を含む液体を送液し、核酸回収率を以下の式を用いて求め、以下の判定基準で評価を行なった。
【0061】
核酸回収率(%)=(担持体6で担持し回収できた核酸の量/担持体充填部3に入る前のもとの核酸の量)×100
【0062】
[判定基準]
○…核酸回収率が50%以上
×…核酸回収率が50%未満
【0063】
流路抵抗の評価;
図5に示すようにマイクロ流路2の途中に予め分岐流路7を作製し、担持体充填部3に送液された核酸を含む流体が分岐流路7に混入するか否かを下記の判定基準で判定した。
【0064】
[判定基準]
○…分岐流路7に核酸を含む流体が混入しない
×…分岐流路7に核酸を含む流体が混入
【0065】
【表1】
【0066】
表1より、実施例1~5では、大掛かりな装置を用いずとも、担持体6を容易に固定できることが確認できた。一方、比較例1では、担持体を固定できず、核酸の担持ができなかった。
【符号の説明】
【0067】
1…マイクロチップ
2…マイクロ流路
2a…入口側流路
2b…出口側流路
3…担持体充填部
4…基板
4a,4b…第1,第2の主面
4c…凹部
5…カバー部材
6…担持体
7…分岐流路
図1
図2
図3
図4
図5