(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】灯具および車両用灯具
(51)【国際特許分類】
F21S 43/242 20180101AFI20220315BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20220315BHJP
F21Y 115/20 20160101ALN20220315BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20220315BHJP
【FI】
F21S43/242
F21Y115:10
F21Y115:20
F21Y115:30
(21)【出願番号】P 2018021973
(22)【出願日】2018-02-09
【審査請求日】2021-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】仲田 麻美
(72)【発明者】
【氏名】仲野 裕次
【審査官】下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-013531(JP,A)
【文献】特開2014-029819(JP,A)
【文献】特開2013-161728(JP,A)
【文献】特開2002-100213(JP,A)
【文献】特開2017-212036(JP,A)
【文献】特開2003-141908(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0077400(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0110899(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/00
F21Y 115/10
F21Y 115/20
F21Y 115/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源の出力を制御する制御部と、
前記光源から出射した光を1回以上反射して出射する発光部と、を備え、
前記発光部は、
前記光源から出射した光が入射する入射部と、入射した光が反射しながら該入射部から離れる方向へ進んでいく導光路と、前記導光路の後面側に形成された
第1の反射部と、前記導光路の前面側に形成された、前記
第1の反射部で反射した光の一部が出射する出射部と、
前記入射部から離れる方向に沿って離散的に前記出射部に設けられた、前記光源から出射した光を反射する複数の第2の反射部と、を有し、
前記光源の出力の増大に応じて、前記出射部において所定値以上の明るさで発光する発光領域が増大するように構成されていることを特徴とする灯具。
【請求項2】
前記導光路は、前記光源の出力の増大に応じて、前記入射部から離れる方向へ前記発光領域が増大するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の灯具。
【請求項3】
前記導光路は、入射した光の一部が前記出射部の内面で全反射されるような形状の導光体であり、
前記
第1の反射部は、前記導光体の後面側の表面を被覆する反射膜であることを特徴とする請求項1または2に記載の灯具。
【請求項4】
前記導光体は、該導光体の内部を導光する光を前記出射部に向けて反射する複数のステップが後面側に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の灯具。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の灯具を備え、
前記灯具は、前記発光部の長手方向が車幅方向になるように配置されており、かつ、前記発光部の長手方向の両端のうち車両の中央側に前記入射部が位置するように配置されていることを特徴とする車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両や照明に適用できる灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、テールランプやストップランプに用いられる車両用灯具として、棒状の導光体の端部にLED等の光源を配置し、線状の発光が得られるように構成されたものが知られている。また、近年、車両のターンシグナルランプ(方向指示器)においては、複数の光源を同時に点灯させるのではなく、複数の光源を順番に点灯(連鎖式点灯、シーケンシャル点灯)させることで、導光体の前面部で動きのある発光を実現する技術も考案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述の車両用灯具では、複数のLEDを順番に点灯させることでシーケンシャルな発光を実現しているため、LEDが複数必要である。また、複数のLEDを導光体の周囲に配置するスペースが必要であり、車両用灯具が大型化してしまう。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、少ない光源で動きのある発光を実現する新たな技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の灯具は、光源と、光源の出力を制御する制御部と、光源から出射した光を1回以上反射して出射する発光部と、を備える。発光部は、光源から出射した光が入射する入射部と、入射した光が反射しながら該入射部から離れる方向へ進んでいく導光路と、導光路の後面側に形成された反射部と、導光路の前面側に形成された、反射部で反射した光の一部が出射する出射部と、を有する。発光部は、光源の出力の増大に応じて、出射部において所定値以上の明るさで発光する発光領域が増大するように構成されている。
【0007】
この態様によると、光源の出力を増大させることで発光領域を増大できる。
【0008】
導光路は、光源の出力の増大に応じて、入射部から離れる方向へ発光領域が増大するように構成されていてもよい。これにより、発光部は、発光領域が入射部から離れる方向へ徐々に延びていくように見える。
【0009】
導光路は、入射した光の一部が出射部の内面で全反射されるような形状の導光体であり、反射部は、導光体の後面側の表面を被覆する反射膜であってもよい。これにより、反射部での反射により光を減衰させながら導光できる。
【0010】
導光体は、該導光体の内部を導光する光を出射部に向けて反射する複数のステップが後面側に形成されていてもよい。これにより、簡易な構成で出射部に向けて光を反射できる。
【0011】
本発明の他の態様は車両用灯具である。この車両用灯具は、前述の灯具を備えている。灯具は、発光部の長手方向が車幅方向になるように配置されており、かつ、発光部の長手方向の両端のうち車両の中央側に入射部が位置するように配置されている。これにより、例えば、連鎖式点灯(シーケンシャル点灯)のターンシグナルランプとして利用できる。また、シーケンシャル点灯を実現するために、複数の光源をライン状に配置して個別に点灯制御する必要はなく、一つ以上の光源の出力を制御するだけでよい。
【0012】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、少ない光源で動きのある発光を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施の形態に係るターンシグナルランプの概略構成を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す灯具の導光体を含む要部を模式的に示した上面図である。
【
図3】本実施の形態に係る車両用灯具の制御部を含むブロック図である。
【
図4】本実施の形態に係る導光体における導光の状態を示す模式図である。
【
図5】
図5(a)は、反射膜で反射されながら導光体の内部を光が導光していく様子を示す模式図、
図5(b)は、導光距離と光量との関係を示す図である。
【
図6】
図6(a)~
図6(d)は、ターンシグナルランプのシーケンシャル点灯を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述される全ての特徴やその組合せは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0016】
本発明は、様々な種類の灯具に適用できるが、例えば、車両用灯具に用いることができる。車両用灯具としては、ヘッドランプ、テールランプ、クリアランスランプ、ターンシグナルランプ、ストップランプ、デイタイムランニングランプ、コーナーリングランプ、ハザードランプ、ポジションランプ、バックランプ、フォグランプ等の各種のランプやこれらのうちの2種類以上のランプの機能の組合せである各種のコンビネーションランプ等が挙げられる。以下の説明では、車両用灯具の一つであるターンシグナルランプに適用した場合について説明する。
【0017】
(車両用灯具)
本実施の形態に係る車両用灯具は、車体の右後端部に設けられたターンシグナルランプである。
図1は、本実施の形態に係るターンシグナルランプの概略構成を示す斜視図である。
図2は、
図1に示す灯具の導光体を含む要部を模式的に示した上面図である。
図3は、本実施の形態に係る車両用灯具の制御部を含むブロック図である。
図4は、本実施の形態に係る導光体における導光の状態を示す模式図である。
【0018】
図1に示す車両用灯具10は、前方に開口された凹部を有するランプハウジング12と、ランプハウジング12の開口を閉塞する透明なカバー14と、を備えている。車両用灯具10においては、ランプハウジング12とカバー14とで区画された内部空間が灯室16として形成されている。
【0019】
灯室16には、光源18と、光源18から出射した光を内部で1回以上反射して出射する発光部としての導光体20と、が配置されている。光源18は、例えば、LED、LD、EL等の半導体発光素子が用いられる。また、車両用灯具10は、光源18の出力を制御する制御部19と、方向指示器を作動させるためのスイッチ30と、を備える。
【0020】
導光体20は、光源18から出射した光が入射する入射部22と、入射した光が反射しながら入射部22から離れる方向へ進んでいく導光路24と、導光路24の後面側に形成された反射部26と、導光路24の前面側に形成された、反射部26で反射した光の一部が出射する出射部28と、を有する。
【0021】
導光体20は、長手方向が車幅方向Wに沿うように配置されており、かつ、長手方向の両端のうち車両の中央側に入射部22が位置するように配置されている。また、導光体20は、光源18が発する光に対して透明(透過率50%以上)な部材であり、ポリカーボネート樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ガラス等で構成されている。
【0022】
反射部26は、導光路24の後面に形成された複数の反射用ステップ26a(
図4参照)を有する。反射用ステップ26aは、導光路24を導光する光の一部を、出射部28から灯具前方に出射するように出射部28に向けて反射する形状である。これにより、反射部26は、簡易な構成で出射部28に向けて光を反射できる。
【0023】
一般的な導光体は、導光体の内面における全反射を利用して導光体の内部を光が進行していく。全反射による光の反射率は理想的には100%(物質による吸収は除く)であり、反射を繰り返しても光は減衰しない。そのため、出射部の長手方向における明るさは均一になり、光源の出力を変化させても、出射部全体の明るさが一様に変化するだけであり、動きのある(発光面積が変わる)発光とは言い難い。
【0024】
そこで、本実施の形態に係る反射部26は、反射用ステップ26aの表面を被覆する反射膜26bを有している。反射膜26bによる反射は、全反射と異なり、反射率が100%未満である。例えば、アルミニウムを反射用ステップ26aの表面に蒸着した金属蒸着反射膜の場合、反射率は約85%であり、一度の反射で光量は85%に減衰する。つまり、導光体20は、反射部26での反射により光を減衰させながら導光できる。一方、導光体20は、入射した光の一部が出射部28の内面で全反射されるような形状である。つまり、導光体20に入射した光は、出射部28の内面での反射では減衰しない。
【0025】
そのため、
図4に示すように、光Lが反射用ステップ26aで1回反射して出射部28から出射した光L1は、L1=L×(0.85)
1=0.85Lの光量となる。同様に、光Lが反射用ステップ26aで2回反射して出射部28から出射した光L2は、L2=L×(0.85)
2≒0.72の光量となり、光Lが反射用ステップ26aで3回反射して出射部28から出射した光L3は、L3=L×(0.85)
3≒0.61の光量となり、光Lが反射用ステップ26aで4回反射して出射部28から出射した光L4は、L4=L×(0.85)
4≒0.52の光量となる。
【0026】
このように、反射部26として反射膜26bを用いることで、導光体20の出射部28の明るさを入射部22から離れるに従って暗くなるようにできる。なお、反射膜は、アルミニウムに限らず、他の金属膜や、反射率が比較的低い塗装膜であってもよい。
【0027】
本発明者らは、前述の知見に基づき鋭意検討した結果、光源の出力を制御することで導光体の出射部における動きのある発光を実現できる点に想到した。
【0028】
図5(a)は、反射膜で反射されながら導光体の内部を光が導光していく様子を示す模式図、
図5(b)は、導光距離と光量との関係を示す図である。
図5(a)に示す導光体は、厚みtが4mmで、後面側に反射膜26bが形成されている。このような導光体に、入射角θが80°の光Lを入射させた。その結果、
図5(b)に示すように、光Lの光量は、導光距離の増大に伴い徐々に減衰する。
【0029】
図5(a)に示す導光体では、導光距離100mmにおける光量は、導光距離0mmにおける光量の約半分になる。したがって、光源18を点灯させる最小電流をIとすると、その2倍の電流2Iを光源に印加すれば、導光距離100mmの光量を、光源を最小電流Iで点灯させたときの導光距離0mmの光量と同等にできる。その場合、最小電流Iで光源18を点灯した状態では入射部のごく近傍しか明るく見えなかった発光部が、入射部から100mmの範囲まで明るく見えるようになる。
【0030】
したがって、制御部19が備える駆動回路19aによって光源18の出力を制御することで、出射部において所定値以上の明るさで発光する発光領域の大きさを変化させることができる。そのため、このような現象を用いて、ターンシグナルランプをシーケンシャル点灯することができる。
【0031】
図6(a)~
図6(d)は、ターンシグナルランプのシーケンシャル点灯を説明するための図である。
【0032】
図6(a)に示すように、光源18が駆動していない状態では、導光体20の出射部28は全面が消灯している。次に、
図3に示すターンシグナルランプを動作させるスイッチ30をドライバが操作すると、駆動回路19aは最小電流Iの2倍の電流を光源18に印加する。これにより、スイッチ30を操作した直後には、
図6(b)に示すように、導光体20の出射部28が、入射部22から100mmの範囲で所定値以上の明るさで発光する。
【0033】
次に、制御部19は、駆動回路19aによって光源18に印加する電流の量を2Iから徐々に増加させると、光源18の出力の増大に応じて、出射部28において所定値以上の明るさで発光する発光領域が増大する(
図6(c))。そして、電流の量を12Iまで高めると、出射部28の全面が明るくなる(
図6(d))。このように、導光体20は、光源18の出力の増大に応じて、入射部22から離れる方向へ発光領域が増大するように構成されている。そのため、車両用灯具10は、出射部28の発光領域が入射部22から離れる方向へ徐々に延びていくように見えるため、シーケンシャル点灯を実現できる。また、車両用灯具10は、シーケンシャル点灯を実現するために、複数の光源をライン状に配置して個別に点灯制御する必要はなく、一つ以上の光源18の出力を制御するだけでよい。
【0034】
なお、前述の説明では、導光体20の出射部28の内面反射は全反射として説明しているが、例えば、出射部28から出射する光(L1~L4等)をなるべく遮蔽しない位置に反射膜32を設けてもよい。これにより、導光路24を導光する光の減衰をより高めることができる。
【0035】
なお、本実施の形態に係る導光路24は、中実の角柱や円柱のような棒状の部材であり、車両の外観意匠に応じて湾曲しているが、導光路24は、必ずしも中実である必要はなく中空であってもよい。
図7は、導光体の変形例を示す模式図である。変形例に係る導光体40は、金属膜等の反射膜46が形成された反射鏡47と、反射鏡47と対向するように設けられているインナーレンズ等の透明部材48と、で構成されており、反射鏡47と透明部材48との間の領域が導光路42として機能する。反射鏡47の内壁には複数の反射用ステップ44が形成されており、反射用ステップ44を被覆するように反射膜46が形成されている。
【0036】
また、透明部材48は、光入射面48aまたは光出射面48bのいずれかに金属膜がハーフ蒸着されていてもよい。これにより、透明部材48はハーフミラーとして機能し、導光路42を導光する光を反射させながらより遠くまで伝搬させると共に、一部の光を光出射面48bから出射させることができる。
【0037】
以上、本発明を上述の実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて実施の形態における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
【符号の説明】
【0038】
10 車両用灯具、 18 光源、 19 制御部、 20 導光体、 22 入射部、 24 導光路、 26 反射部、 26a 反射用ステップ、 26b 反射膜、 28 出射部、 32 反射膜、 40 導光体、 42 導光路、 44 反射用ステップ、 46 反射膜。