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特許7041006模擬被覆金属アーク溶接を支援するばね付勢式チップアセンブリ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】模擬被覆金属アーク溶接を支援するばね付勢式チップアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   G09B 19/24 20060101AFI20220315BHJP
   G09B 9/00 20060101ALI20220315BHJP
   B23K 9/14 20060101ALI20220315BHJP
   B23K 31/00 20060101ALI20220315BHJP
【FI】
G09B19/24 Z
G09B9/00 A
B23K9/14 Z
B23K31/00 Z
【請求項の数】 20
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018104450
(22)【出願日】2018-05-31
(65)【公開番号】P2018205740
(43)【公開日】2018-12-27
【審査請求日】2021-04-05
(31)【優先権主張番号】62/513,584
(32)【優先日】2017-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/696,495
(32)【優先日】2017-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510202156
【氏名又は名称】リンカーン グローバル,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ダレン パトリック カポーニ
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー スティーブン コーシャー
(72)【発明者】
【氏名】ブルース ジョン チャントリー
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム トーマス マシューズ
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン メース
(72)【発明者】
【氏名】マシュー エイケン ダウニー
(72)【発明者】
【氏名】ゲイリー マイケル トッド
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン エー.スケールズ
(72)【発明者】
【氏名】サラ エヴァンズ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン トーマス ブロンストラップ
【審査官】宮本 昭彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-516420(JP,A)
【文献】米国特許第2333192(US,A)
【文献】実開昭59-54171(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2011/0169205(US,A1)
【文献】藤田 紀勝,溶接技能パラメータに基づく溶接訓練学習システム,電子情報通信学会論文誌(J90-D),日本,社団法人電子情報通信学会,2007年09月01日,第9号,第2522~2529頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 1/00 - 9/56
G09B 17/00 - 19/26
B23K 9/14
B23K 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆金属アーク溶接作業の模擬的な再現を支援するチップアセンブリであって、
基端と、先端と、前記基端の近くのロックスリーブとを有する細長い模擬電極チップと、
第1の端部および第2の端部を有する圧縮ばねであって、前記第1の端部が、前記模擬電極チップの前記基端と接するように構成された圧縮ばねと、
前記圧縮ばね、および前記模擬電極チップの前記ロックスリーブを囲むように構成されたロックカップと、
オリフィスを有するハウジングと、
を含み、
前記ハウジングは、前記模擬電極チップの前記先端を前記ハウジングの前記オリフィスに通して前記ロックスリーブまで受け入れることで、前記模擬電極チップ、前記圧縮ばね、および前記ロックカップを前記ハウジング内に入れ込むように構成され、結果として、前記圧縮ばね、前記ロックカップ、および前記ロックスリーブは前記ハウジングの内部に存在し、前記模擬電極チップの大部分は、前記ハウジングから外に突出し、
前記ロックスリーブおよび前記ロックカップは、互いに対して回転して、ロック位置とロック解除位置との間で切り換わるのを可能にするように構成される、チップアセンブリ。
【請求項2】
プレート溶接クーポンの模擬被覆金属アーク溶接で使用するために、前記ロック位置により、前記圧縮ばねが、前記ロックカップ内で最大限に圧縮した状態で保持され、その一方で、前記模擬電極チップは、前記ロックカップおよび前記ハウジングに対して不動の状態で保持される、請求項1に記載のチップアセンブリ。
【請求項3】
前記ロック解除位置により、前記圧縮ばねは、前記模擬電極チップの前記先端が、前記ハウジングに向かって押し込まれたときに、前記圧縮ばねが縮むのを可能にし、前記圧縮ばねが伸長して、前記模擬電極チップの前記先端を前記ハウジングから遠ざかる方向に押しやることを可能にする自由状態に置かれ、その結果、模擬被覆金属アーク溶接作業中に、前記模擬電極チップが、パイプ溶接クーポンに係合したときに、パイプに対して実際の被覆金属アーク溶接作業を行った感覚を模擬的に再現するように、触感フィードバックが見習い溶接工にもたらされる、請求項1に記載のチップアセンブリ。
【請求項4】
前記ハウジングは、模擬被覆金属アーク溶接作業で使用するために、模擬溶接ツールに取り外し可能に取付くように構成される、請求項1に記載のチップアセンブリ。
【請求項5】
前記模擬電極チップの少なくとも前記先端は、模擬被覆金属アーク溶接作業中に、前記模擬電極チップと溶接クーポンとの間のスリップを軽減するように構成された材料からなる、請求項1に記載のチップアセンブリ。
【請求項6】
前記圧縮ばねの少なくとも一部分は、ポリエーテルイミドからなる、請求項1に記載のチップアセンブリ。
【請求項7】
前記模擬電極チップの少なくとも一部分は、ポリオキシメチレンからなる、請求項1に記載のチップアセンブリ。
【請求項8】
被覆金属アーク溶接作業の模擬的な再現を支援するチップアセンブリであって、
基端と、先端と、前記基端の近くのスリーブとを有する細長い模擬電極チップと、
第1の端部および第2の端部を有する圧縮ばねであって、前記第1の端部が、前記模擬電極チップの前記基端と接するように構成された圧縮ばねと、
前記圧縮ばねの圧縮量を検出し、前記圧縮ばねの前記圧縮量を示す信号を生成するために、前記圧縮ばねの前記第2の端部と接するように構成された圧力センサトランスデューサと、
前記圧力センサトランスデューサ、前記圧縮ばね、および前記模擬電極チップの前記スリーブを囲むように構成されたカップと、
オリフィスを有するハウジングと、
を含み、前記ハウジングは、前記模擬電極チップの前記先端を前記ハウジングの前記オリフィスに通して前記スリーブまで受け入れることで、前記模擬電極チップ、前記圧縮ばね、前記圧力センサトランスデューサ、および前記カップを前記ハウジング内に入れ込むように構成され、結果として、前記圧力センサトランスデューサ、前記圧縮ばね、前記カップ、および前記スリーブは前記ハウジングの内部に存在し、前記模擬電極チップの大部分は、前記ハウジングから外に突出する、チップアセンブリ。
【請求項9】
前記圧縮ばねの前記圧縮量を示す前記信号は、少なくとも1つの模擬アーク特性を示す、請求項8に記載のチップアセンブリ。
【請求項10】
前記少なくとも1つの模擬アーク特性には、アーク電圧、アーク電流、アーク長さ、および消弧の少なくとも1つがある、請求項9に記載のチップアセンブリ。
【請求項11】
前記スリーブおよび前記カップは、互いに対して回転して、ロック位置とロック解除位置との間で切り換わるのを可能にするように構成される、請求項8に記載のチップアセンブリ。
【請求項12】
プレート溶接クーポンに対する模擬被覆金属アーク溶接作業中に使用するために、前記ロック位置により、前記圧縮ばねが、前記カップ内で最大限に圧縮した状態で保持され、その一方で、前記模擬電極チップは、前記カップおよび前記ハウジングに対して不動の状態で保持される、請求項11に記載のチップアセンブリ。
【請求項13】
前記ロック解除位置により、前記圧縮ばねは、前記模擬電極チップの前記先端が、前記ハウジングに向かって押し込まれたときに、前記圧縮ばねが縮むのを可能にし、前記圧縮ばねが伸長して、前記模擬電極チップの前記先端を前記ハウジングから遠ざかる方向に押しやることを可能にする自由状態に置かれ、その結果、模擬被覆金属アーク溶接作業中に、前記模擬電極チップが、パイプ溶接クーポンに係合したときに、パイプに対して実際の被覆金属アーク溶接作業を行った感覚を模擬的に再現するように、触感フィードバックが見習い溶接工にもたらされる、請求項11に記載のチップアセンブリ。
【請求項14】
被覆金属アーク溶接作業の模擬的な再現を支援する模擬溶接ツールであって、
見習い溶接工によって保持されるように構成されたハンドルと、
前記ハンドルに動作可能に連結され、動的溶接状態を溶接シミュレータに知らせるように構成されたトリガと、
チップアセンブリを有する模擬棒電極と、
を含み、
前記チップアセンブリは、
基端と、先端と、前記基端の近くのロックスリーブとを有する細長い模擬電極チップと、
第1の端部および第2の端部を有する圧縮ばねであって、前記第1の端部が、前記模擬電極チップの前記基端と接するように構成された圧縮ばねと、
前記圧縮ばね、および前記模擬電極チップの前記ロックスリーブを囲むように構成されたロックカップと、
オリフィスを有するハウジングと、
を含み、
前記ハウジングは、前記模擬電極チップの前記先端を前記ハウジングの前記オリフィスに通して前記ロックスリーブまで受け入れることで、前記模擬電極チップ、前記圧縮ばね、および前記ロックカップを前記ハウジング内に入れ込むように構成され、結果として、前記圧縮ばね、前記ロックカップ、および前記ロックスリーブは前記ハウジングの内部に存在し、前記模擬電極チップの大部分は、前記ハウジングから外に突出し、
前記ロックスリーブおよび前記ロックカップは、互いに対して回転して、ロック位置とロック解除位置との間で切り換わるのを可能にするように構成される、模擬溶接ツール。
【請求項15】
プレート溶接クーポンに対する模擬被覆金属アーク溶接作業で使用するために、前記ロック位置により、前記圧縮ばねが、前記ロックカップ内で最大限に圧縮した状態で保持され、その一方で、前記模擬電極チップは、前記ロックカップおよび前記ハウジングに対して不動の状態で保持される、請求項14に記載の模擬溶接ツール。
【請求項16】
前記ロック解除位置により、前記圧縮ばねは、前記模擬電極チップの前記先端が、前記ハウジングに向かって押し込まれたときに、前記圧縮ばねが縮むのを可能にし、前記圧縮ばねが伸長して、前記模擬電極チップの前記先端を前記ハウジングから遠ざかる方向に押しやることを可能にする自由状態に置かれ、その結果、模擬被覆金属アーク溶接作業中に、前記模擬電極チップが、パイプ溶接クーポンに係合したときに、パイプに対して実際の被覆金属アーク溶接作業を行った感覚を模擬的に再現するように、触感フィードバックが見習い溶接工にもたらされる、請求項14に記載の模擬溶接ツール。
【請求項17】
3次元空間の少なくとも位置および向きに関して前記模擬溶接ツールを追跡する際に、前記溶接シミュレータを手助けする少なくとも1つのセンサをさらに含む、請求項14に記載の模擬溶接ツール。
【請求項18】
実際の棒電極の消耗を模擬的に再現するために、前記見習い溶接工が前記トリガを動かしたのを受けて、前記模擬棒電極を前記見習い溶接工に向かって後退させるように構成されたアクチュエータアセンブリをさらに含む、請求項14に記載の模擬溶接ツール。
【請求項19】
前記溶接シミュレータと無線で通信するように構成された通信モジュールをさらに含む、請求項14に記載の模擬溶接ツール。
【請求項20】
前記模擬溶接ツールと前記溶接シミュレータとの間で接続されたケーブルを介して、前記溶接シミュレータと通信するように構成された通信モジュールをさらに含む、請求項14に記載の模擬溶接ツール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照/参照による援用
本米国特許出願は、参照により、その全体を本明細書に援用される、2017年6月1日に出願された米国仮特許出願第62/513,584号明細書の優先権および利益を主張するものである。「仮想現実パイプ溶接シミュレータ(Virtual Reality Pipe Welding Simulator)」と題して、2009年7月10日に出願され、2014年12月23日に登録された米国特許第8,915,740号明細書は、参照により、その全体を本明細書に援用される。
【0002】
本発明の実施形態は、模擬溶接に関連するシステム、装置、および方法に関する。より具体的には、本発明の実施形態は、ばね付勢式チップアセンブリによる被覆金属アーク溶接(SMAW)作業の模擬的な再現を支援するシステム、装置、および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
特定の溶接接合(例えば、SMAWパイプ溶接)では、溶接プロセスにおいて、使用者は、使用する電極を介して加工物の溶接接合部に触れる必要がある。適切なアーク距離を見つけるために、溶接接合部に加えられる理想的な圧力がある。現在の専門溶接工は、適切なアーク長さおよび溶着速度を得るために、電極を第1の接点を越えて接合部に送る。溶接見習いを訓練するために、SMAWパイプ溶接プロセスを模擬的に再現するのは困難なことがある。今日の模擬/仮想溶接訓練システムの場合、模擬SMAWツールの一部として設けられた模擬電極チップは、剛性が高い傾向がある。これは、SMAW作業の模擬的な再現を非現実的なものにする。例えば、電極のスリップが、溶接クーポンで発生することがあり、その場合に、圧力を基本とした溶接技術が存在せず、適切に溶着されない。SMAWパイプ溶接プロセスをより現実的に模擬再現する方法が求められている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の実施形態は、見習い溶接工を訓練するために、被覆金属アーク溶接(SMAW)作業の模擬的な再現を支援するばね付勢式チップアセンブリを含む。ばね付勢式チップアセンブリは、溶接クーポンでのスリップを軽減し、圧力を基本とした触感フィードバックを見習い溶接工にもたらす細長い模擬電極チップを含む。
【0005】
一実施形態は、被覆金属アーク溶接(SMAW)作業の模擬的な再現を支援するチップアセンブリを含む。チップアセンブリは、基端と、先端と、基端の近くのロックスリーブとを有する細長い模擬電極チップを含む。チップアセンブリはまた、第1の端部および第2の端部を有する圧縮ばねを含む。第1の端部は、電極チップの基端と接するように構成される。チップアセンブリは、圧縮ばね、および電極チップのロックスリーブを囲むように構成されたロックカップをさらに含む。チップアセンブリはまた、オリフィスを有するハウジングを含む。ハウジングは、電極チップの先端をハウジングのオリフィスに通してロックスリーブまで受け入れることで、電極チップ、圧縮ばね、およびロックカップをハウジング内に入れ込むように構成される。結果として、圧縮ばね、ロックカップ、およびロックスリーブはハウジングの内部に存在し、電極チップの大部分は、ハウジングから外に突出する。ロックスリーブおよびロックカップは、互いに対して回転して、ロック位置とロック解除位置との間で切り換わるのを可能にするように構成される。一実施形態では、プレート溶接クーポンの模擬被覆金属アーク溶接で使用するために、ロック位置により、圧縮ばねが、ロックカップ内で最大限に圧縮した状態で保持され、その一方で、電極チップは、ロックカップおよびハウジングに対して不動の状態で保持される。ロック解除位置により、圧縮ばねは自由状態に置かれる。自由状態により、電極チップの先端がハウジングに向かって押し込まれたときに、圧縮ばねが縮むことが可能になる。また、自由状態により、圧縮ばねが伸長して、電極チップの先端をハウジングから遠ざかる方向に押しやることが可能になる。その結果、模擬被覆金属アーク溶接作業中に、電極チップが、パイプ溶接クーポンに係合したときに、パイプに対して実際の被覆金属アーク溶接作業を行った感覚を模擬的に再現するように、触感フィードバックが見習い溶接工にもたらされる。一実施形態では、ハウジングは、SMAW作業で使用するために、模擬溶接ツールに取り外し可能に取付くように構成される。一実施形態では、電極チップの先端は、模擬SMAW作業中での電極チップと溶接クーポンとの間のスリップを軽減するように構成された材料からなる。例えば、電極チップの少なくとも一部分は、ポリオキシメチレンからなることができる。一実施形態では、圧縮ばねの少なくとも一部分は、ポリエーテルイミドからなる。
【0006】
一実施形態は、被覆金属アーク溶接作業の模擬的な再現を支援するチップアセンブリを含む。チップアセンブリは、基端と、先端と、基端の近くのスリーブとを有する細長い模擬電極チップを含む。チップアセンブリはまた、第1の端部および第2の端部を有する圧縮ばねを含む。第1の端部は、電極チップの基端と接するように構成される。チップアセンブリは、圧縮ばねの圧縮量を検出し、圧縮ばねの圧縮量を示す信号を生成するために、圧縮ばねの第2の端部と接するように構成された圧力センサトランスデューサをさらに含む。チップアセンブリはまた、圧力センサトランスデューサ、圧縮ばね、および電極チップのスリーブを囲むように構成されたカップを含む。チップアセンブリは、オリフィスを有するハウジングをさらに含む。ハウジングは、電極チップの先端をハウジングのオリフィスに通してスリーブまで受け入れることで、電極チップ、圧縮ばね、圧力センサトランスデューサ、およびカップをハウジング内に入れ込むように構成される。結果として、圧力センサトランスデューサ、圧縮ばね、カップ、およびスリーブはハウジングの内部に存在し、電極チップの大部分はハウジングから外に突出する。一実施形態では、圧縮ばねの圧縮量を示す信号は、少なくとも1つの模擬アーク特性を示す。模擬アーク特性には、例えば、アーク電圧、アーク電流、アーク長さ、または消弧があり得る。一実施形態では、スリーブおよびカップは、互いに対して回転して、ロック位置とロック解除位置との間で切り換わるのを可能にするように構成される。一実施形態では、プレート溶接クーポンの模擬被覆金属アーク溶接で使用するために、ロック位置により、圧縮ばねが、ロックカップ内で最大限に圧縮した状態で保持され、その一方で、電極チップは、ロックカップおよびハウジングに対して不動の状態で保持される。ロック解除位置により、圧縮ばねは、自由状態に置かれる。自由状態により、電極チップの先端がハウジングに向かって押し込まれたときに、圧縮ばねが縮むことが可能になる。また、自由状態により、圧縮ばねが伸長して、電極チップの先端をハウジングから遠ざかる方向に押しやることが可能になる。その結果、模擬被覆金属アーク溶接作業中に、電極チップがパイプ溶接クーポンに係合したときに、パイプに対して実際の被覆金属アーク溶接作業を行った感覚を模擬的に再現するように、触感フィードバックが見習い溶接工にもたらされる。
【0007】
一実施形態は、SMAW作業の模擬的な再現を支援する模擬溶接ツールを含む。模擬溶接ツールは、見習い溶接工によって保持されるように構成されたハンドルと、ハンドルに動作可能に連結され、動的溶接状態を溶接シミュレータに知らせるように構成されたトリガとを含む。模擬溶接ツールはまた、チップアセンブリを有する模擬棒電極を含む。チップアセンブリは、基端と、先端と、基端の近くのロックスリーブとを有する細長い模擬電極チップを含む。チップアセンブリはまた、第1の端部および第2の端部を有する圧縮ばねを含む。第1の端部は、電極チップの基端と接するように構成される。チップアセンブリは、圧縮ばね、および電極チップのロックスリーブを囲むように構成されたロックカップをさらに含む。チップアセンブリはまた、オリフィスを有するハウジングを含む。ハウジングは、電極チップの先端をハウジングのオリフィスに通してロックスリーブまで受け入れることで、電極チップ、圧縮ばね、およびロックカップをハウジング内に入れ込むように構成される。結果として、圧縮ばね、ロックカップ、およびロックスリーブは、ハウジングの内部に存在し、電極チップの大部分はハウジングから外に突出する。ロックスリーブおよびロックカップは、互いに対して回転して、ロック位置とロック解除位置との間で切り換わるのを可能にするように構成される。一実施形態では、プレート溶接クーポンの模擬被覆金属アーク溶接で使用するために、ロック位置により、圧縮ばねが、ロックカップ内で最大限に圧縮した状態で保持され、その一方で、電極チップは、ロックカップおよびハウジングに対して不動の状態で保持される。ロック解除位置により、圧縮ばねは自由状態に置かれる。自由状態により、電極チップの先端が、ハウジングに向かって押し込まれたときに、圧縮ばねが縮むことが可能になる。また、自由状態により、圧縮ばねが伸長して、電極チップの先端をハウジングから遠ざかる方向に押しやることが可能になる。その結果、模擬被覆金属アーク溶接作業中に、電極チップが、パイプ溶接クーポンに係合したときに、パイプに対して実際の被覆金属アーク溶接作業を行った感覚を模擬的に再現するように、触感フィードバックが見習い溶接工にもたらされる。一実施形態では、模擬溶接ツールは、3次元空間の少なくとも位置および向きに関して模擬溶接ツールを追跡する際に、溶接シミュレータを手助けする少なくとも1つのセンサを含む。一実施形態では、模擬溶接ツールは、実際の棒電極の消耗を模擬的に再現するために、見習い溶接工がトリガを動かしたのを受けて、模擬棒電極を見習い溶接工に向かって後退させるように構成されたアクチュエータアセンブリを含む。一実施形態では、模擬溶接ツールは、溶接シミュレータと通信するように構成された通信モジュールを含む。通信は、無線とするか、または模擬溶接ツールと溶接シミュレータとの間で接続されたケーブルを介することができる。
【0008】
包括的発明概念の様々な態様が、例示的な実施形態の以下の詳細な説明、特許請求の範囲、および添付図面から容易に明らかになるであろう。
【0009】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付図面は、本開示の様々な実施形態を示している。図示した要素境界(例えば、四角形、四角形群、または他の形状)は、境界の一実施形態を表すことが理解されよう。一部の実施形態では、1つの要素は、複数の要素として設計することができるし、または複数の要素は、1つの要素として設計することができる。一部の実施形態では、別の要素の内部構成要素として示した要素は、外部構成要素として使用することができ、逆も同様である。さらに、要素は、一定の縮尺で作図されないことがある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】模擬SMAW作業を支援するばね付勢式チップアセンブリの第1の実施形態の分解図を示している。
図2図1の実施形態の第1の組立図を示している。
図3図1の実施形態の第2の組立図を示している。
図4図1図3のばね付勢式チップアセンブリの組立実施形態の一部分のロック形態を示している。
図5図1図3のばね付勢式チップアセンブリの組立実施形態の一部分のロック解除形態を示している。
図6図1図3のばね付勢式チップアセンブリの組立実施形態の断面図を示している。
図7】模擬SMAW作業を支援するばね付勢式チップアセンブリの第2の実施形態の分解図を示している。
図8図1図3のばね付勢式チップアセンブリを有する模擬溶接ツールの実施形態の第1の図を示している。
図9図8の模擬溶接ツールの第2の図を示している。
図10】模擬SMAW作業を支援するのに使用されるパイプ溶接クーポンの実施形態を示している。
図11図8および図9の模擬溶接ツールと図10のパイプ溶接クーポンとを対応させた一実施形態を示している。
図12】溶接シミュレータによって支援される模擬SMAW作業中に、見習い溶接工が、図10のパイプ溶接クーポンに対して図8および図9の模擬溶接ツールを使用する例を示している。
図13図12の溶接シミュレータを有する訓練用溶接システムの実施形態のブロック図を示している。
図14】ばね付勢式チップアセンブリを組み立てる方法の第1の実施形態の流れ図を示している。
図15】ばね付勢式チップアセンブリを組み立てる方法の第2の実施形態の流れ図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ばね付勢式チップアセンブリによる被覆金属アーク溶接(SMAW)作業の模擬的な再現を支援するシステム、装置、および方法の実施形態が開示される。一実施形態では、チップアセンブリを有する模擬溶接ツールを含む溶接シミュレータが用意される。チップアセンブリは、基端と、先端と、基端の近くのロックスリーブとを有する細長い模擬電極チップを含む。圧縮ばねは、電極チップの基端と接するように構成される。ロックカップは、圧縮ばねおよびロックスリーブを囲むように構成される。オリフィスを有するハウジングは、電極チップの先端をオリフィスに通してロックスリーブまで受け入れることで、電極チップ、圧縮ばね、およびロックカップをハウジングの内部に入れ込むように構成される。ロックスリーブおよびロックカップは、互いに対して回転して、ロック位置とロック解除位置との間で切り換わるのを可能にするように構成される。
【0012】
本明細書における例および図は単なる例示であり、本発明を限定することを意図するものではなく、本発明は、特許請求の範囲および趣旨によって判断される。ここで各図を参照して、表示したものは、本発明の例示的な実施形態を示すことのみを目的とし、本発明を限定することを目的としたものではなく、図1は、模擬SMAW作業を支援するばね付勢式チップアセンブリ100の第1の実施形態の分解図を示している。
【0013】
図1を参照すると、チップアセンブリ100は、細長い模擬電極チップ110を含む。電極チップ110は、基端112と、先端114と、基端112の近くのロックスリーブ116とを有する。チップアセンブリ100はまた、第1の端部122および第2の端部121を有する圧縮ばね120を含む。第1の端部122は、電極チップ110の基端112と接するように構成されている。例えば、図1に示すように、雄/雌タイプの連結が形成される。チップアセンブリ100は、圧縮ばね120と電極チップ110のロックスリーブ116とを囲むように構成されたロックカップ130を含む。
【0014】
チップアセンブリ100は、オリフィス142を有するハウジング140を含む。ハウジング140は、電極チップ110の先端114をオリフィス142に通して、ロックスリーブ116まで受け入れることで、電極チップ110、圧縮ばね120、およびロックカップ130をハウジング140の内部に入れ込むように構成されている。図2および図3に示すように、電極チップ110、圧縮ばね120、およびロックカップ130をハウジング140の内部に組み込んだ状態で、電極チップ110の大部分は、オリフィス142を抜けてハウジング140から突出している。図2は、図1の実施形態の第1の組立図を示し、図3は、図1の実施形態の第2の組立図を示している。
【0015】
一実施形態によれば、ロックスリーブ116およびロックカップ130は、互いに対して回転して、ロック位置とロック解除位置との間で切り換わるのを可能にするように構成されている。図4は、図1図3のばね付勢式チップアセンブリ100の組立実施形態の一部分のロック形態400を示し、電極チップ110およびロックカップ130をロック位置で示している。図5は、図1図3のばね付勢式チップアセンブリ100の組立実施形態の一部分のロック解除形態500を示し、電極チップ110およびロックカップ130をロック解除位置で示している。
【0016】
図4では、圧縮ばね120はロック位置にあり、ロックカップ130およびロックスリーブ116によって圧縮され、全体的に囲まれているため、図4では見えない。一実施形態では、圧縮ばね120は、ロック位置で最大限に圧縮された状態にあり、電極チップ110は、ロックカップ130およびハウジング140に対して不動の状態にある(ロックされている)。ロック位置にするために、一実施形態において、使用者は、電極チップ110が進む限り、電極チップ110をハウジング140に押し込み、次いで、電極チップ110をロックカップ130に対して回転させる。図4に示すように、ロックスリーブ116の一部分は、ロックカップ130のスロットと係合して、チップアセンブリ100をロック位置に置く。他の実施形態によれば、他の同等のロック形態も同様に可能である。このように、ロック位置が、模擬SMAWプレート溶接作業を支援するためにもたらされる。
【0017】
図5では、圧縮ばね120は、圧縮ばね120を自由状態に置くロック解除位置にある。図5に示すように、ロックスリーブ116は、もはやロックカップ130のスロットと係合していない。自由状態により、電極チップ110の先端114がハウジング140に向かって押し込まれたときに(例えば、見習い溶接工が、チップアセンブリ100が取付けられた模擬溶接ルールによる模擬SMAWパイプ溶接作業中に、電極チップ110の先端114をパイプ溶接クーポンの接合部に押し込むときに)、圧縮ばね120が縮むことが可能になる。また、自由状態により、(例えば、見習い溶接工が、模擬SMAWパイプ溶接作業中に、チップアセンブリ100が取付けられた模擬溶接ツールをパイプ溶接クーポンの接合部から遠ざかる方向に引き寄せたときに)圧縮ばね120が伸長して、電極チップ110の先端114をハウジング140から遠ざかる方向に押しやることが可能になる。このように、模擬SMAW作業中に、電極チップ110がパイプ溶接クーポンに係合したときに、パイプに対して実際のSMAW作業を行った感覚を模擬的に再現するように、触感フィードバックが見習い溶接工にもたらされる。
【0018】
図6は、図1図3のばね付勢式チップアセンブリ100の組立実施形態の断面図を示している。図6に示すように、ハウジング140は、本明細書において後で説明するように、チップアセンブリ100が、模擬溶接ツールに着脱されるのを可能にする取付け可能部分600を含む。図6の取付け可能部分600は、クリップ式またはスナップ式構造の形態をとる。他の実施形態によれば、他の同等の取付け可能部分の構造も同様に可能である。
【0019】
電極チップ110は、模擬SMAW作業中に、電極チップ110と溶接クーポンとの間のスリップを軽減するように構成された材料からなる。例えば、一実施形態では、電極チップ110の少なくとも先端114は、ポリオキシメチレン材料からなる。ポリオキシメチレン材料は、所望通りにスリップを軽減する。一実施形態によれば、圧縮ばね120の少なくとも一部分は、ポリエーテルイミド材料からなる。ポリエーテルイミド材料は、模擬SMAW作業に適用するための望ましい圧縮ばね特性をもたらす。他の実施形態によれば、他の同等の材料も同様に可能である。
【0020】
図7は、模擬SMAW作業を支援するばね付勢式チップアセンブリ700の第2の実施形態の分解図を示している。図7のチップアセンブリ700は、圧力センサトランスデューサ710をさらに含むことを除いて、前の図のチップアセンブリ100と同様である。圧力センサトランスデューサ710は、圧縮ばね120の圧縮量を検出し、圧縮ばね120の圧縮量を示す信号を生成するために、圧縮ばね120の第2の端部121と接するように構成されている。一実施形態によれば、圧力センサトランスデューサ710は、圧電技術を使用する。他の実施形態によれば、圧力センサトランスデューサ710は、他のタイプのセンサおよびトランスデューサ技術を使用することができる。カップ130は、圧力センサトランスデューサ710、圧縮ばね120、および電極チップ110のスリーブ116を囲むように構成されている。ハウジング140は、図1図3のものと同様の態様で、電極チップ110、圧縮ばね120、圧力センサトランスデューサ710、およびカップ130をハウジングの内部に入れ込むように構成されている。
【0021】
一実施形態では、チップアセンブリ700のカップ130およびスリーブ116は、図1図3のものと同様のロックカップおよびロックスリーブである。しかし、代替実施形態では、チップアセンブリ700のカップ130およびスリーブ116は、本明細書で前述した、ロック位置とロック解除位置との間で切り換わる能力が備わっていない。その代わりに、電極チップ110は、模擬SMAWパイプ溶接作業を支援するために、常にロック解除され、(本明細書で前述した)自由状態にある。
【0022】
一実施形態によれば、圧縮ばね120の圧縮量を示す、圧力センサトランスデューサ710によって生成される信号は、少なくとも1つの模擬アーク特性を示す。模擬アーク特性は、アーク電圧、アーク電流、アーク長さ(アーク距離)、または消弧とすることができる。信号は、(有線または無線で)溶接シミュレータに供給することができ、本明細書において後で説明するように、溶接シミュレータは、信号を少なくとも1つのアーク特性に相関させ、その相関関係に基づいて応答を生成する。様々な実施形態によれば、信号は、アナログ信号および/またはデジタル信号とすることができる。
【0023】
図8は、図1のばね付勢式チップアセンブリ100または図7のばね付勢式チップアセンブリ700を有する模擬溶接ツール800の実施形態の第1の図を示している。図9は、図8の模擬溶接ツール800の一部分の第2の図を示している。模擬溶接ツール800は、見習い溶接工によって保持されるように構成されたハンドル810を含む。模擬溶接ツール800はまた、ハンドル810に動作可能に連結され、動的溶接状態を溶接シミュレータに知らせるように構成されたトリガ820を含む。例えば、一実施形態では、見習い溶接工がトリガ820を押下すると、電気信号が、有線または無線のいずれかで、模擬溶接ツール800から溶接シミュレータに送られて、模擬(例えば、仮想現実)溶接作業を作動させる。溶接シミュレータは、本明細書において後でさらに詳細に説明される。ハンドル810およびトリガ820は、一実施形態では右利きの見習い溶接工用に、別の実施形態では左利きの見習い溶接工用に構成することができる。
【0024】
模擬溶接ツール800はまた、ばね付勢式チップアセンブリ100またはばね付勢式チップアセンブリ700が一部分に取付けられた模擬棒電極830を含む。様々な実施形態によれば、チップアセンブリ100またはチップアセンブリ700は、本明細書で前述した通りであり、チップアセンブリ100またはチップアセンブリ700の取付け可能部分600(例えば、図6および図7も参照のこと)により取付く(および取り外し可能)。一実施形態によれば、取付け可能部分600は、模擬溶接ツール800にクリップ式に、またはスナップ式に留まるように構成されている。他の実施形態では、取付け可能部分は、模擬溶接ツールにねじ込む、または模擬溶接ツールにスライドロックするように構成することができる。他の取付け可能な実施形態も同様に可能である。さらに、一実施形態では、チップアセンブリ100またはチップアセンブリ700は、模擬溶接ツール800に結合するアダプタとして構成される。模擬溶接ツール800はまた、例えば、他のタイプの溶接または切断を模擬的に再現するための他のアダプタツール形態の取付けを支援することもできる。
【0025】
模擬溶接ツール800は、見習い溶接工が、トリガ820を動かした(例えば、押下した、または引き寄せた)のを受けて、模擬棒電極830を見習い溶接工に向かって後退させる、または引っ込めるように構成されたアクチュエータアセンブリ840を含む。模擬棒電極830を後退させる、または引っ込めることで、SMAW作業中の実際の棒電極の消耗が模擬的に再現される。一実施形態によれば、アクチュエータアセンブリ840は電気モータを含む。
【0026】
一実施形態では、模擬溶接ツール800は、3次元空間の少なくとも位置および向きに関して模擬溶接ツール800を追跡する際に、溶接シミュレータを手助けする少なくとも1つのセンサ850を含む。特定の実施形態によれば、センサおよび追跡技術は、例えば、加速度計、ジャイロ、マグネット、導電性コイル、レーザ、超音波、高周波装置、および走査システムの1つまたは複数を含むことができる。空間追跡能力を有する溶接シミュレータの例は、参照により、その全体を本明細書に援用される米国特許第8,915,740号明細書で説明されている。
【0027】
一実施形態では、模擬溶接ツール800は、溶接シミュレータと通信するように構成された通信モジュール860を含む。様々な実施形態によれば、模擬溶接ツール800と溶接シミュレータとの間の通信は、無線か(例えば、高周波または赤外線による)、または有線手段か(例えば、電気ケーブルによる)のいずれかで行うことができる。通信モジュール860は、トリガ820が動かされたときに生成される電気信号の模擬溶接ツール800から溶接シミュレータへの通信を容易にすることができる。通信モジュール860はまた、センサ850によって生成されるセンサ信号(模擬溶接ツール800の位置および向きを示す)の模擬溶接ツール800から溶接シミュレータへの通信を容易にすることもできる。一実施形態では、通信モジュール860は、警告および警報信号の溶接シミュレータから模擬溶接ツール800への通信を容易にすることができる。例えば、模擬溶接ツール800は、警告および警報信号を受けて、見習い溶接工に警告し、警報を出す発光ダイオード(LED)および/または音生成トランスデューサを含むことができる。
【0028】
図10は、模擬SMAWパイプ溶接作業を支援するのに使用されるパイプ溶接クーポン1000の実施形態を示している。パイプ溶接クーポン1000は、クーポン1000の周囲を囲む接合部1010を含む。図11は、図8および図9の模擬溶接ツール800と図10のパイプ溶接クーポン1000とを対応させた、模擬SMAWパイプ溶接作業の一部としての接合部1010の溶接を模擬的に再現する一実施形態を示している。模擬溶接ツール800のばね付勢式チップアセンブリは、溶接クーポンでのスリップを軽減し、圧力を基本とした触感フィードバックを見習い溶接工にもたらす。
【0029】
図12は、溶接シミュレータ1200によって支援される模擬SMAW作業中に、見習い溶接工1100が、図10のパイプ溶接クーポン1000に対して図8および図9の模擬溶接ツール800を使用する例を示している。図12に示すように、パイプ溶接クーポン1000は、パイプ溶接クーポンを見習い溶接工1100にとっての所望の位置に保持する溶接スタンド1110によって支持されている。図12では、見習い溶接工1100は、表示装置が取付けられた仮想現実溶接ヘルメットまたはフェイス(FMDD)1120を着用しており、FMDD1120は、模擬溶接ツール800と共に、溶接シミュレータ1200に通信可能に接続している。特定の実施形態では、溶接シミュレータ1200は、見習い溶接工1100が、模擬溶接ツール800を使用して、パイプ溶接クーポン1000に対して模擬SMAWパイプ溶接を実施するときに、FMDD1120内の表示装置で見習い溶接工1100が見ることができる拡張現実および/または仮想現実環境を見習い溶接工にもたらす。再度、模擬溶接ツール800のばね付勢式チップアセンブリは、模擬被覆金属アーク溶接作業中に、電極チップがパイプ溶接クーポン1000に係合したときに、パイプに対して実際の被覆金属アーク溶接作業を行った感覚を模擬的に再現するように、圧力を基本とした触感フィードバックを見習い溶接工1100にもたらす。
【0030】
図13は、図12の溶接シミュレータ1200、溶接クーポン1000、溶接テーブル/スタンド1110、FMDD1120、および模擬溶接ツール800を含む訓練用溶接システム1300の実施形態のブロック図を示している。溶接シミュレータ1200は、プログラム可能なプロセッサを基本としたサブシステム(PPS)1210、空間追跡装置(ST)1220、溶接ユーザインターフェイス(WUI)1230、および観測表示装置(ODD)1240を含む。PPS1210、ST1220、WUI1230、ODD1240(さらには、FMDD1120、溶接クーポン1000、および溶接テーブル/スタンド1110)の実施形態の詳細な説明は、参照により、その全体を本明細書に援用される米国特許第8,915,740号明細書に見ることができる。なお、対応する構成要素に対して、本明細書で使用したものとは異なる参照数字が、米国特許第8,915,740号明細書で使用されていることがある。
【0031】
本明細書において前述したように、一実施形態によれば、圧縮ばね120の圧縮量を示す、圧力センサトランスデューサ710によって生成される信号は、少なくとも1つの模擬アーク特性を示す。模擬アーク特性は、例えば、アーク電圧、アーク電流、アーク長さ(アーク距離)、または消弧とすることができる。信号は、(有線または無線で)溶接シミュレータ1200に供給することができ、溶接シミュレータ1200は、信号を少なくとも1つのアーク特性に相関させ、その相関関係に基づいて応答を生成する。様々な実施形態によれば、信号は、アナログ信号および/またはデジタル信号とすることができる。
【0032】
例えば、信号は、電極チップ110が、パイプ溶接クーポン1000の接合部1010に極端に押し込められたことと、現実世界において、アークが結果として消失したこととを意味する「消弧」特性に相関することができる。別の例として、信号は、アーク距離が短すぎる、または遠すぎることと、見習い溶接工が、適切なアーク距離を出すために、接合部1010に対する模擬溶接ツール800の位置を調整しなければならないこととを意味する「アーク距離」特性に相関することができる。一実施形態によれば、溶接シミュレータ1200は、そのようなアーク特性に基づいて、様々な警報および警告を見習い溶接工に出すことができる。また、溶接シミュレータ1200は、見習い溶接工が、様々なアーク特性に対して「定められた限界から外れた」場合に、見習い溶接工の成績にペナルティを適用することができる。
【0033】
図14は、ばね付勢式チップアセンブリ100を組み立てる方法1400の第1の実施形態の流れ図を示している。図14のブロック1410で、基端の近くにロックスリーブを有する、細長い模擬電極チップの基端に圧縮ばねの第1の端部を接触させる。ブロック1420で、圧縮ばねと模擬電極チップの少なくともロックスリーブとをロックカップで取り囲む。ブロック1430で、圧縮ばね、ロックカップ、およびロックスリーブがハウジングの内部に存在して、模擬電極チップの大部分が、オリフィスを通ってハウジングから外に突出するように、電極チップ、圧縮ばね、およびロックカップを(連結され、取り囲まれるように)オリフィスを有するハウジングに挿入する。ブロック1410~1430は、ばね付勢式チップアセンブリ100の最終的な同じ組立形態が得られる所与の順序で、または別の順序で実施することができる。
【0034】
図15は、ばね付勢式チップアセンブリ700を組み立てる方法1500の第2の実施形態の流れ図を示している。ブロック1510で、基端の近くにロックスリーブを有する、細長い模擬電極チップの基端に圧縮ばねの第1の端部を接触させる。ブロック1520で、圧力センサトランスデューサを圧縮ばねの第2の端部に接触させる。ブロック1530で、圧力センサトランスデューサと、圧縮ばねと、模擬電極チップの少なくともロックスリーブとをロックカップで取り囲む。ブロック1540で、圧縮ばね、圧力センサトランスデューサ、ロックカップ、およびロックスリーブがハウジングの内部に存在して、電極チップの大部分が、オリフィスを通ってハウジングから外に突出するように、電極チップ、圧縮ばね、圧力センサトランスデューサ、およびロックカップを(連結され、取り囲まれるように)オリフィスを有するハウジングに挿入する。ブロック1510~1540は、ばね付勢式チップアセンブリ700の最終的な同じ組立形態が得られる所与の順序で、または別の順序で実施することができる。
【0035】
開示した実施形態が、かなり細部にわたって図示および説明されたが、これは、特許請求の範囲をそのような細部に制限する、または何らかの形で限定することを意図するものではない。当然のことながら、主題の様々な態様を説明するために、構成要素または方法の想定可能なあらゆる組み合わせを説明することは不可能である。したがって、本開示は、図示および説明された特定の細部または用例に限定されない。すなわち、本開示は、特許請求の範囲内に入り、米国特許法第101条の法定主題要件を満たす変更、修正、および変形を包含することを意図されている。特定の実施形態の上記の説明は、例として提示された。当業者は、提示された開示から、包括的発明概念および付随する利点を理解するだけでなく、さらに、開示した構造および方法に対する種々の明白な変更および修正を発見するであろう。したがって、添付の特許請求の範囲およびその等価物によって規定される包括的発明概念の趣旨および範囲内に入るそのような変更および修正のすべてを包含することが図られている。
【符号の説明】
【0036】
100 チップアセンブリ
110 電極チップ
112 基端
114 先端
116 ロックスリーブ
120 圧縮ばね
121 第2の端部
122 第1の端部
130 ロックカップ
140 ハウジング
142 オリフィス
400 ロック形態
500 ロック解除形態
600 取付け可能部分
700 チップアセンブリ
710 圧力センサトランスデューサ
800 模擬溶接ツール
810 ハンドル
820 トリガ
830 模擬棒電極
840 アクチュエータアセンブリ
850 センサ
860 通信モジュール
1000 パイプ溶接クーポン
1010 接合部
1100 見習い溶接工
1110 溶接スタンド
1120 FMDD
1200 溶接シミュレータ
1210 PPS
1220 ST
1230 WUI
1240 ODD
1400 方法
1410 ブロック
1420 ブロック
1430 ブロック
1500 方法
1510 ブロック
1520 ブロック
1530 ブロック
1540 ブロック
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15