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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】スクリーン装置及びヘルメット
(51)【国際特許分類】
   A42B 3/04 20060101AFI20220315BHJP
【FI】
A42B3/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018238122
(22)【出願日】2018-12-20
(65)【公開番号】P2020100906
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2020-07-16
(73)【特許権者】
【識別番号】390005429
【氏名又は名称】株式会社SHOEI
(73)【特許権者】
【識別番号】591182112
【氏名又は名称】NSウエスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】磯部 栄治
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-319440(JP,A)
【文献】特開2018-124486(JP,A)
【文献】国際公開第2018/118433(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A42B 3/00- 7/00
G02B27/00-30/60
H04N 5/64- 5/655
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘルメットで投影された画像を前記ヘルメットで映すコンバイナと、
前記ヘルメットのシェルに取り付けられるとともに、前記コンバイナを上下方向に移動可能に、かつ、上下方向に対する前記コンバイナの傾きを変更可能に、前記コンバイナを支持する上下移動機構と、を備え
前記上下移動機構は、前記ヘルメットの外側シェルに固定される本体部と、前記本体部に対して相対的に上下移動する支持部とを備え、
前記コンバイナは、前記支持部に支持される被支持部を備え、
前記支持部は、前記被支持部を前記支持部に対してスライド移動させて前記傾きを変更する
スクリーン装置。
【請求項2】
前記支持部は、前記支持部が上下移動する各位置で前記傾きを変更可能に前記コンバイナを支持する
請求項に記載のスクリーン装置。
【請求項3】
前記コンバイナが着用者の視野に入る姿勢が、前記コンバイナの第1姿勢であり、
前記コンバイナが着用者の視野に入らない姿勢が、前記コンバイナの第2姿勢であり、
前記支持部は、前記被支持部を前記支持部に対してスライド移動させて前記傾きを変更し、当該傾きの変更に伴って、前記第1姿勢と前記第2姿勢との間で前記コンバイナの姿勢を変更する
請求項1又は2に記載のスクリーン装置。
【請求項4】
前記本体部は、前記支持部を上下移動可能に挿通する通路を備え、前記通路における段階的な位置で前記支持部を固定するラッチ機構を収納し、
前記上下移動機構は、前記ラッチ機構に対する外部操作で前記支持部の上下移動を可能にする
請求項1から3のいずれか一項に記載のスクリーン装置。
【請求項5】
前記支持部は、第1位置から、前記第1位置の後側下方である第2位置に向けて延びる弧状のレールを備え、
前記被支持部は、前記レールと係合し、かつ、前記第1位置と前記第2位置との間を前記レールの延在方向に沿ってスライド可能に構成され、
前記被支持部が前記第1位置に位置するとき、前記コンバイナが前記第1姿勢を有し、
前記被支持部が前記第2位置に位置するとき、前記コンバイナが前記第2姿勢を有する
請求項に記載のスクリーン装置。
【請求項6】
画像を投影する投影部と、
前記投影部が投影した画像を着用者の視野に映すスクリーン装置と、を備え、
前記スクリーン装置が請求項1~のいずれか一項に記載のスクリーン装置である
ヘルメット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像が投影されるスクリーン装置、及び当該スクリーン装置の設けられたヘルメットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二輪車用ヘルメットの内部に設けられていて、運行関連情報を虚像として表示させるヘッドマウンテッドディスプレイ(HMD)が知られている。HMDは、ヘルメットの内部に設けたディスプレイ(表示装置)の出射する画像表示光を、シールドで反射することにより、運転者の眼に導くようにしている。運転者は、HMDを備えたヘルメットを着用することにより、二輪車を運転するときには、車速等の車両情報や、ナビゲーションシステムによる地図情報や、警告情報等を、前方を向いたまま見ることができるようになる。その結果、運転者は、過剰な視線移動や姿勢変動、例えば二輪車のハンドルに設置されたメータパネルを見るために下方を向くといった動作が抑制されるので、運転の安定化を図ることができる。例えば、ナビゲーションシステムの情報を表示させる装置の一例が特許文献1に記載されている。
【0003】
特許文献1に記載の装置は、プロセッサと、コンピュータプログラムのコードを含むメモリとを備える。この装置は、ナビゲーションイベントが発生している間、ユーザがヘルメットを着用していることを確認する。また、この装置は、ナビゲーションイベントに関連付けられている、ヘルメットに表示するための一連のナビゲーションの通知のセットを決定する。そして、ナビゲーションのセットは、ヘルメットに表示されるために調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2014/096517号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、特許文献1に記載の装置によれば、ヘルメットのシールド(バイザー)にナビゲーションの通知を表示させることができる。
ところで、シールドは、ヘルメットにおける視界確保、防風・防雨機能確保、及び開閉動作可能とするものであり、それらの機能確保に必要とされる取り付け態様がヘルメットに規定される。姿勢や身体的特徴に応じて着用者の視野は様々であるが、ヘルメットのシールドを着用者の姿勢や身体的特徴に応じることを目的として自由に調整することは容易ではない。そのため、HMD等のスクリーンとしてシールドを利用したとしても、スクリーンに投影される画像が着用者の視野の見やすい位置になるようにシールドの位置を調整することは容易ではない。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ヘルメットにおいてスクリーンの配置位置の調整を容易とすることのできるスクリーン装置、及び当該スクリーン装置を備えたヘルメットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためのスクリーン装置は、ヘルメットで投影された画像を前記ヘルメットで映すコンバイナと、前記ヘルメットのシェルに取り付けられるとともに、前記コンバイナを上下方向に移動可能に、かつ、上下方向に対する前記コンバイナの傾きを変更可能に、前記コンバイナを支持する上下移動機構と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ヘルメットにおいてスクリーンの配置位置の調整を容易とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ヘルメットの一実施形態における外観構造を示す側面図。
図2】ヘルメット内部のディスプレイを構成する機構を示す斜視図。
図3】スクリーン装置の分解斜視図。
図4】スクリーン装置の左側面。
図5】スクリーン装置の背面図。
図6】スクリーン装置の分解斜視図。
図7】スクリーン装置の分解斜視図。
図8】スクリーン装置の配置の態様を示す図であって、(a)はスクリーンが高い位置で投影位置に配置された図、(b)はスクリーンが高い位置で非投影位置に配置された図、(c)はスクリーンが低い位置で投影位置に配置された図、(d)はスクリーンが低い位置で非投影位置に配置された図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、ヘルメットを具体化した一実施形態を図1から図8を参照して説明する。
図1が示すように、ヘルメットは、球体状を有したヘルメット11、シールド13、一対の支持機構20を備える。以下では、図1が示すヘルメット11の状態において、シールド13の側を前側とし、左側面12Sに一方が図示される一対の支持機構20が並ぶ方向を左右方向として説明する。
【0011】
左右で一対の支持機構20は、ヘルメット11を構成する外側シェル12に固定されている。
外側シェル12は、ヘルメット11の最外殻である。外側シェル12を構成する材料の一例は、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)、ポリカーボネート(PC)、および、強化繊維を含浸させた熱硬化性樹脂から選択されるいずれか一種である。外側シェル12の前面12Fは、前方に向けて開口する開口部12Aを備える。開口部12Aは、着用者の視界を確保する。外側シェル12の前面12Fは、開口部12Aの下部にチンガード12Gを備える。ヘルメット11は、いわゆるフルフェイス型のヘルメットである。
【0012】
シールド13は、光透過性を有した無色で透明の板部材である。シールド13は、左右で一対の支持機構20に回動可能に支持されている。シールド13は、シールド13を移動させる操作力を受けて、開位置と閉位置との間で変位する。開位置は、シールド13が開口部12Aを開ける位置である。閉位置は、図1の2点鎖線が示すように、シールド13が開口部12Aを閉じる位置である。シールド13は、前方から飛来する異物や雨、風がヘルメット11内に入ることを閉位置において妨げて、着用者の視認性を向上させる。シールド13を構成する材料は、例えば、ポリカーボネートである。
【0013】
一対の支持機構20は、シールド13の非操作時にシールド13の位置を保つ。例えば、一対の支持機構20は、開位置に変位したシールド13の位置を次回の操作まで開位置に保ち、また、閉位置に変位したシールド13の位置を次回の操作まで閉位置に保つ。
【0014】
ヘルメット11は、最内殻を構成する内側シェルを外側シェル12の内側に備える。内側シェルを構成する材料は、衝撃を吸収する樹脂であって、例えば、ポリウレタン、および、発泡スチロール樹脂から選択されるいずれか一種である。
【0015】
ヘルメット11には、スクリーン装置30が設けられている。スクリーン装置30は、開口部12Aが区画する空間と開口部12Aの上側にある前面12Fとに跨がって配置されている。スクリーン装置30のなかで、前面12Fにおいて外側シェル12と内側シェルとの間に挟まれる部分は、外側シェル12にシェル取付具14で取り付けられている。
【0016】
図1に示すように、シェル取付具14は、外側表面14aが、外側シェル12の外側表面の一部を構成しており、外側シェル12の外側表面において周囲の表面との間に大きな段差を生じないように配置されている。
【0017】
図3に示すように、シェル取付具14は、内側表面に、内側に延設される第1突起141a、第2突起141b、第3突起141cを備える。シェル取付具14は、第1突起141a、第2突起141b、第3突起141cを外側シェル12を貫通させて、外側シェル12の内側に配置されるスクリーン装置30に連結させる。
【0018】
詳述すると、スクリーン装置30は、上下移動機構31と、ヘルメットに投影される画像を映すコンバイナ60とを備える。上下移動機構31は、本体部40と、コンバイナ60を連結させる支持部50(図2参照)とを備える。つまり、シェル取付具14は、各突起141a,141b,141cを上下移動機構31の本体部40に連結させることで、スクリーン装置30を外側シェル12に固定する。
【0019】
第1突起141aは、本体部40の差し込み孔47aに差し込まれ、ねじ等で固定される。第2突起141bは、本体部40の貫通孔48bを介して差し込み孔47bに差し込まれ、ねじ等で固定される。第3突起141cは、本体部40の貫通孔48cを介して差し込み孔47cに差し込まれ、ねじ等で固定される。上下移動機構31が外側シェル12に取り付けられることにより、コンバイナ60がヘルメット11に対して適切な相対位置に配置できる。また、コンバイナ60を外側シェル12に固定するための構成は、外側シェル12において、各突起141a,141b,141cが通される孔で足りる。そのため、機械的な耐性が必要とされる外側シェル12の構造に大きな変更を強いることなく、コンバイナ60を外側シェル12に固定することが可能でもある。
【0020】
図2に示すように、スクリーン装置30は、上下移動機構31がシェル取付具14を介して外側シェル12に取り付けられる。上下移動機構31は、第1部材41(図3参照)及び第2部材42(図3参照)により構成される本体部40に設けられたスライド孔80に沿って外側シェル12の上下方向Xに位置決め移動可能に支持部50を備える。
【0021】
図3に示すように、支持部50は、図3において下方となる先端51に弧状レール53を備える。支持部50は、弧状レール53に、コンバイナ60の被支持部64をスライド可能に支持している。支持部50は、コンバイナ60を、上下方向Xへの移動である上下移動可能に、ヘルメット11の開口部12Aに支持する。コンバイナ60は、画像V(図5参照)を映す透過型のスクリーンである。画像Vは、ヘルメット11のチンガード12G(図2参照)内に配置された投影部21から投影されて投影口22から出力される。
【0022】
コンバイナ60が上下移動可能に支持されるため、着用者の視野に対してコンバイナ60を適切な位置に配置することができる。また、スクリーンの配置位置の調整をヘルメットにおいて容易とすることができる。
【0023】
支持部50の弧状レール53は、前後方向Yを長手方向として延設されるレール孔54を有する。レール孔54は、長手方向に弧を有して延設される曲線状を有する。また、被支持部64は、扁平状であり、弧状レール53の有するレール孔54に、被支持部64を軸にする旋回不能に嵌め込まれているとともに、レール孔54を長手方向の円弧状Rに沿ってスライド移動する。
【0024】
レール孔54は、前後方向Yにおける前側からみて、後側下方に向かって湾曲している。弧状レール53は、扁平状の被支持部64をレール孔54に沿ってスライドさせる。この際、被支持部64の扁平面の角度は、弧状レール53の曲線状に併せて変わり、被支持部64を有したコンバイナ60(投影面61)の上下方向に対する傾きも変わる。すなわち、コンバイナ60は、弧状レール53を前後方向Yにスライド移動して、支持部50に対する相対角度を変更する。
【0025】
このように、コンバイナ60の上下移動機構31に対する相対角度、すなわち、上下方向に対するコンバイナ60の傾きが変更可能であるため、コンバイナ60を着用者の視野に対してより適切な位置に配置することができる。
【0026】
図4に示すように、弧状レール53は、前側端部53fと後側端部53rとを備える。支持部50は、前側端部53fと後側端部53rとの間で被支持部64をスライド移動させて、コンバイナ60を円弧状Rに旋回させる。支持部50に対するコンバイナ60の相対角度は、弧状レール53の中心角(変化角度θ)の範囲で変化する。このとき、コンバイナ60は、スクリーンである投影面61が着用者Eの視野Sに入る第1姿勢AT11,AT12(図8参照)と、投影面61が着用者Eの視野Sに入らない第2姿勢AT21,AT22(図8参照)との間で、姿勢を変える。第1姿勢AT11,AT12、及び第2姿勢AT21,AT22は、投影面61の支持部50に対する相対角度が相違することで規定される姿勢である。
【0027】
コンバイナ60は、支持部50に対する相対角度をスライド移動によって変化させて、投影面61に投影される画像Vの位置を、第1姿勢AT11,AT12と第2姿勢AT21,AT22との途中で調整可能にする。また、例えば、コンバイナ60が支持部50に対しヒンジで支持される構成と比較して、振動による不用意な移動がコンバイナ60で生じることを抑制できる。
【0028】
なお、第1姿勢AT11,AT12は、例えば、図8(a),(c)に示す姿勢であって、被支持部64が前側端部53fに位置するときのコンバイナ60の姿勢である。一方、第2姿勢AT21,AT22は、例えば、図8(b),(d)に示す姿勢であって、被支持部64が後側端部53rに位置するときのコンバイナ60の姿勢である。すなわち、第2姿勢AT21,AT22は、被支持部64を後側端部53rまで後退させて、それによって、コンバイナ60の前方端部が第1姿勢AT11,AT12よりも前方に突き出ることを抑える。
【0029】
図3に示すように、上下移動機構31は、本体部40に対する支持部50の上下方向Xへの位置決め移動と、支持部50に対するレール孔54に沿った長手方向への円弧状Rの移動とがそれぞれ独立して可能である。つまり、支持部50は、支持部50が上下方向Xで位置決めされる各位置において、コンバイナ60を円弧状Rに移動させて、コンバイナ60の投影面61の支持部50に対する相対角度を変化させる。そして、コンバイナ60の位置及び角度調節によって、着用者の視野のなかのより適切な位置に画像Vを投影することができる。
【0030】
図4図7を参照し、上下移動機構31及びコンバイナ60について詳しく説明する。
図4及び図5に示すように、上下移動機構31は、本体部40が外側シェル12の内面に対向する第1部材41と内側シェルに対向する第2部材42とが組み合わされて構成されている。第1部材41は、外面壁41aを外側シェル12の内面に対向させ、第2部材42は、外面壁42aを内側シェルに対向させる。セル各留め部46が第2部材42にねじ留めされることによって、第1部材41と第2部材42とが組み合わされる。
【0031】
なお、本体部40の内部には、ラッチ機構が収納されているが、ラッチ機構は、第2部材42において、下部範囲421に収容可能であって上部範囲422は利用しない。そのため、第1部材41は下部範囲421に対応する大きさを有する。すなわち、第2部材42よりも第1部材41の方が小さく、第2部材42の上部範囲422には、第1部材41は組み合わされない。
【0032】
本体部40は、上下方向Xの下側に、支持部50が挿通されるスライド口44Aを備え、スライド口44Aからスライド孔80(図6参照)に支持部50が挿通されている。また、本体部40は、上下方向Xの下側に、操作口43を有する。操作口43は、解除機構の操作部45を本体部40の外部に配置させる。
【0033】
操作部45は、本体部40内部に設置された支持部50を段階的な位置に固定させるラッチ機構を解除する。操作部45は、端部に設けられた操作端452と、操作端452から本体部40の内部に繋がる第1操作軸451とを有し、操作口43は、第1操作軸451が挿通方向に移動可能となっている。操作端452は、第1操作軸451よりも太い外周を有し、操作口43に第1操作軸451を超えて操作端452が挿入できないようになっている。操作端452は、開口部12Aから入れた着用者の指で操作しやすい端面形状として、前後方向Yにおいて、後側が操作口43に近づく傾斜を有する。
【0034】
上下移動機構31は、支持部50の先端51に、レール孔54を有した弧状レール53を備える。弧状レール53は、前後方向Yに変化角度θの弧を描くレールであり、レール孔54を水平方向に貫通させるとともに、弧の方向に延びる長孔として有する。弧状レール53は、レール孔54を上レール53aと下レール53bとの間に形成している。上レール53aの弧の内側が、レール孔54を区画し、下レール53bの弧の外側が、レール孔54を区画する。
【0035】
上レール53aは、支持部50の先端51に連結されて弧状レール53を支持させる。下レール53bは、レール幅方向中央にレール孔54まで貫通してレール延長方向に延びる長孔56を有する。長孔56には、前側端部53fから後側端部53rまで少なくとも一部がレール孔54に突出する付勢部55が掛け渡されている。付勢部55は、レール孔54に侵入しているコンバイナ60の被支持部64の扁平面を、上レール53aに付勢する。これによって、配置位置における保持力が高められて、弧状レール53におけるコンバイナ60の配置位置が容易に変化しないようになっている。なお、付勢部55の上レール53aに対向する面は、被支持部64の扁平面の位置決めを容易にするための溝や凹凸などのように、位置の保持力を高めるざらつき等を有してもよい。
【0036】
支持部50は、本体部40のスライド孔80(図6参照)に収容されるスライド部を有し、スライド部の側面には、ラッチ用穴52が所定の間隔で設けられている。支持部50は、本体部40のスライド孔80のなかで、ラッチ用穴52の間隔で上下方向Xへの移動が規制可能になっている。
【0037】
図5に示すように、コンバイナ60は、透過型スクリーンである投影面61と、投影面61から支持部50方向に延設される延設部63とを備える。また、コンバイナ60は、弧状レール53のレール孔54に左右方向に挿通される被支持部64と、被支持部64の先端に設けられて被支持部64がレール孔54から抜けることを防止する留め端部65とを備える。
【0038】
留め端部65は、レール孔54を貫通した被支持部64の先端に差し込まれる穴を有し、穴に差し込まれた被支持部64の先端を著好方向のねじ穴66からねじ込まれるねじにより被支持部64の先端に固定される。延設部63や留め端部65は、被支持部64に対して垂直な面をレール孔54(図4参照)の開口面に当接させる。これにより、弧状レール53に取り付けられたコンバイナ60がレール孔54に対してがたついたり、スライド移動時に引っ掛かりを生じたりするおそれが低減される。
【0039】
被支持部64は、ヘルメット11の開口部12Aから操作される留め端部65を開口部12Aの外方に向けている。また、留め端部65は、前方から見て前部66bよりも後部66aが膨らみ、前方から見て、着用者の指の腹を当てやすい傾斜を有する。これによって、ヘルメット11の着用者が自身の指でコンバイナ60の支持部50に対する位置を調整することが容易になる。
【0040】
図6及び図7を参照して、ラッチ機構について詳しく説明する。図6図7は、組み合わされた第1部材41と第2部材42とを見開いた状態の図である。なお、位置決め部品90は、図6及び図7の両方に重複記載してある。本体部40は、第2部材42の外側シェル12側の一部に、第1部材41が留め部46のねじ止め等によって組み合わされる。
【0041】
本体部40は、第2部材42の差し込み孔47aに、シェル取付具14の第1突起141aが取り付けられる。また、本体部40は、第1部材41の各貫通孔48b,48cを通り、第2部材42の各差し込み孔47b,47cに、シェル取付具14の第2及び第3突起141b,141cが取り付けられる。
【0042】
第1部材41と第2部材42とは、それらが相互に対向する側の間にラッチ機構を保持する。第1部材41は、下部範囲421に対応する大きさであり、シェル取付具14の第1突起141aに対応する範囲には広がっていない。ラッチ機構は、本体部40において、第1部材41と第2部材42との間であって、上下方向Xにおいて、シェル取付具14の各突起141a,141b,141cに干渉しない下側にある下部範囲421に配置される。
【0043】
第1部材41と第2部材42とは、中央上下方向にスライド孔80を備える。スライド孔80は、下側にスライド口44Aを有し、上側にスライド口44Bを有する。スライド孔80は、第2部材42内部の内平面81及び内部ガイド81A、第2部材42内部の内部壁面82,83、及び、第1部材41内部の複数のガイド82C(図7参照)によって、断面長方形状の通路に区画されている。
【0044】
スライド孔80は、スライド口44Bよりも上側に第2部材42に形成されたスライド溝44Cが連続している。スライド溝44Cは、内部ガイド81Aに連続する平面と、内部壁面82,83に連続する壁面87とを有する。第1部材41のガイド82Cは、第1部材41の外面壁41aから立ち上がって支持部50の上下移動方向に延設される。ガイド82Cの先端は、スライド口44Aを構成する第1部材41の内平面82A及び、第1部材41の内平面82Bと同一平面を形成している。第2部材42の内部ガイド81Aは、第2部材42の外面壁42aから立ち上がった先端面が内平面81と同一平面を形成している。
【0045】
本体部40は、ラッチ機構を収容する収容スペースを有する。
収容スペースは、スライド孔80に干渉しないように、スライド孔80の両側の縦スペース、及び、スライド孔80を挟んだ2つの縦スペースを繋ぐ横スペースを備える。第1部材41は、2つの縦スペース及び横スペースを兼ねた第1スペース411を備える。第1スペース411は、ガイド82Cを中央部に配置させ、位置決め部品90に対応する部分に土台部85,86を配置させた枠状の枠形状のスペースである。第2部材42は、スライド孔80を挟んだ2つの縦スペースのそれぞれに対応する第2スペース432、及び第3スペース436を備える。
【0046】
本体部40は、第1スペース411において、第2スペース432と対向する位置、及び第3スペース436とが対向する位置には、スライド孔80に干渉しない広い空間を有する。すなわち、この広い空間が縦スペースである。一方、本体部40は、第1スペース411において、第2スペース432又は第3スペース436のいずれにも対向しない位置には、スライド孔80との緩衝を避けた狭い空間を有する。すなわち、この狭い空間が横スペースである。
【0047】
収容スペースは、操作部45の一部と、位置決め部品90とを収容する。位置決め部品90は、支持部50のラッチ用穴52に嵌合する複数の爪91を有し、内部壁面82,83に形成された通路821,831に対して進退することで爪91をスライド孔80に対して進退させる。爪91は、スライド孔80に進出することで支持部50のラッチ用穴52に嵌合して、支持部50の上下方向Xの位置を固定する。一方、爪91は、スライド孔80から退出することで、支持部50のラッチ用穴52から離間して、支持部50の上下方向Xの移動を自由にする。
【0048】
内部壁面82,83に形成された通路821,831は、スライド孔80に向かって下がる傾斜を有する通路である。位置決め部品90は、本体92に対して斜め下方に2つの爪91を延設させる。収容スペースに配置される本体92と、2つの爪91とをつなぐ2つの腕部93とは、通路821,831の傾斜に沿う傾斜を有する。2つの腕部93は、通路821,831の中央ガイド822,832で区画されたそれぞれの通路に配設される。
【0049】
爪91は、下方に傾斜を有する通路821,831に腕部93が配置されているため、支持部50から下方への力が加わるとスライド孔80へ引き出されて、ラッチ用穴52に嵌合して支持部50の下方への移動を防ぐ。一方で、下方に傾斜を有する通路821,831に配置された腕部93に支持される爪91は、支持部50から上方への力が加わるとスライド孔80から押し戻されて、ラッチ用穴52から離間して支持部50の上方への移動を許可する。すなわち、位置決め部品90は、下方に引き出された支持部50を、上下方向の位置固定しつつも、上方に移動可能にしている。よって、支持部50に連結されているコンバイナ60は、位置調整が下方から上方に押し上げることで容易に行えるようになる。
【0050】
操作部45は、操作端452に連結されている第1操作軸451と、スライド孔80を挟んで第1操作軸451の反対側に配置される第2操作軸456と、第1操作軸451と第2操作軸456とを横スペースを介して連結する下側連結杆454と、上側連結杆455とを備える。下側連結杆454は、第1操作軸451の収容スペース内下端と第2操作軸456の下端とを連結し、上側連結杆455は、第1操作軸451の上端と第2操作軸456の上端とを連結する。
【0051】
操作端452が押されて第1操作軸451が上に移動すると、上側連結杆455及び下側連結杆454で接続される第2操作軸456も上に移動する。なお、第1操作軸451の上端、及び第2操作軸456の上端にはそれぞれ収容スペースの上面との間に設けられて各上端を下方に付勢するバネ49Bが設けられている。バネ49Bは、収容スペースの状部に設けられている配置穴491,492に配置されて下方に位置する第1操作軸451の上端又は第2操作軸456の上端をそれぞれ下方に付勢する。よって、通常、第1操作軸451及び第2操作軸456は、収容スペースの下部に配置され、操作端452を外部操作で押し上げることによって、付勢に抗して収容スペースの上部に配置される。
【0052】
第1操作軸451は、位置決め部品90の本体92を上下方向に挟み込む挟み込み部453を有する。第2操作軸456は、位置決め部品90の本体92を上下方向に挟み込む挟み込み部457を有する。
【0053】
第1操作軸451や第2操作軸456が収容スペースの下部に配置されているとき、位置決め部品90は、下方に傾斜する通路821,831に腕部93を押し込み、爪91をスライド孔80に進出させて、支持部50の上下方向Xにおける位置を固定する。反対に、操作端452が外部操作により押し上げられて第1操作軸451や第2操作軸456が収容スペースの上部に配置されているとき、位置決め部品90は、下方に傾斜する通路821,831から腕部93を引き出し、爪91をスライド孔80から退出させて、支持部50の上下方向Xへの上下移動を可能にする。
【0054】
上述したように、上下移動機構31がラッチ機構により固定されているため、振動による上下移動がコンバイナ60において抑制されて、コンバイナ60の調整位置が保持される。また、ラッチ機構に対する外部操作でコンバイナ60の上下移動が可能になる。
【0055】
なお、本実施形態では、ラッチ機構は、収容スペースと、操作部45と、位置決め部品90とから構成されている。
図8を参照して、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0056】
図8(a)に示すように、スクリーン装置30は、支持部50に保持された第1姿勢AT11にあるコンバイナ60の上下方向Xの高さを、上下移動機構31に対する支持部50の上下移動により、着用者Eの視野Sの高さL1に合わせることができる。
【0057】
図8(c)に示すように、着用者Eの視野Sの高さL2が着用者Eの視野Sの高さL1よりも低いとき、上下移動機構31に対する支持部50の下移動により、第1姿勢AT12にあるコンバイナ60の上下方向Xの高さを、着用者Eの視野Sの高さL2に合わせることができる。
【0058】
図8(b)に示すように、支持部50に保持された第1姿勢AT11にあるコンバイナ60の相対角度を変化させることができる。ここでは、弧状レール53の前後方向Yへのスライド移動により、コンバイナ60の姿勢を着用者Eの視野Sから外す第2姿勢AT21とすることができる。これにより、高さ方向に係る上下移動を行うことなく、高さL1を維持しつつ、第1姿勢AT11を第2姿勢AT21に変更することができる。よって、画像が不要なとき、画像に煩わされない視野Sが確保されるようになる。反対に、画像が必要なとき、第2姿勢AT21を第1姿勢AT11に変更することで画像を含む視野Sが確保されるようになる。
【0059】
図8(d)に示すように、着用者Eの視野Sが高さL2であるときであれ、支持部50にコンバイナ60の第1姿勢AT12を、着用者Eの視野Sから外す第2姿勢AT22とすることができる。これにより、高さ方向に係る上下移動を行うことなく、高さL2を維持しつつ、第1姿勢AT12を第2姿勢AT22に変更し、画像に煩わされない視野Sが確保されるようになる。逆に、画像が必要なとき、第2姿勢AT22を第1姿勢AT12に変更することで画像を含む視野Sが確保されるようになる。
【0060】
本実施形態によれば、ヘルメット11の着用者の視野Sのうちの適切な位置に投影部21の投影した画像が映されるようになる。
上記実施形態によれば、以下に列挙する効果が得られる。
【0061】
(1)ヘルメット11内においてコンバイナ60がヘルメット11の開口部12Aで上下移動可能に支持されるため、着用者の視野Sに対してコンバイナ60を適切な位置に配置することができる。これにより、ヘルメット11においてコンバイナ60の配置位置の調整を容易とすることができる。また、コンバイナ60の移動方向が上下方向Xであるため、着用者のヘルメットの着脱において、着用者の頭部がコンバイナ60と干渉することが抑制可能でもある。
【0062】
(2)上下移動機構31が外側シェル12に取り付けられるため、着用者の視野Sに対してコンバイナ60を適切な位置に配置することに加えて、コンバイナ60の調整位置の保持が容易ともなる。
【0063】
(3)コンバイナ60は、上下移動機構31に対する相対角度が変更可能であるから、着用者の視線方向に対しコンバイナ60をより適切な角度で配置することができるようになる。
【0064】
(4)上下移動と相対角度の変更とが別々に可能であるため、コンバイナ60の位置及び角度を調節して、着用者の視野Sの適切な位置に画像を投影することができる。
(5)コンバイナ60はスライド移動により相対角度を第1姿勢AT11,AT12と第2姿勢AT21,AT22との間で調整可能にする。また、例えば、ヒンジによる支持に比較して、振動による不用意な移動が抑制されるようになる。
【0065】
(6)上下移動機構31がラッチ機構により固定されているため、振動による上下移動が抑制されて、コンバイナ60の調整位置が保持される。また、ラッチ機構に対する外部操作で上下移動が可能になる。
【0066】
(7)コンバイナ60を第1姿勢AT11,AT12にするときに、被支持部64を前側端部53f(第1位置)に配置させて、コンバイナ60を第2姿勢AT21,AT22にするとき、被支持部64を後側端部53r(第2位置)に配置させる。そのため、コンバイナ60を使用しないときなど、第2姿勢AT21,AT22のコンバイナ60が第1姿勢AT11,AT12よりも前側に突き出ることが抑制され、シールド13とコンバイナ60とが干渉することも抑制される。
【0067】
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・位置決め部品90は、スライド孔80を挟む両側に位置する構成に限らず、例えば、スライド孔80を挟む両側のうちの一方側にのみ位置する構成に具体化可能である。この構成においても、上記(1)から(7)に準じた効果を得ることは可能であって、かつ、1体の位置決め部品90、および、その位置決め部品90を機能させるためのバネ49Bを省略することが可能ともなる。さらに、位置決め部品90を配置するための本体部40の構造を簡略化すること、および、本体部40そのものの大きさを小型化することが可能ともなる。本体部40の小型化は、本体部40を固定するための外側シェルの削り量、あるいは、本体部40を配置するための衝撃吸収ライナーの削り量が抑制可能であるから、ヘルメット自体の衝撃性能が支持機構の搭載によって低下することが抑制可能でもある。
【0068】
・コンバイナは、弧状レールに沿って前方に移動されることでコンバイナが視野から外れる姿勢になってもよい。例えば、弧状レールが前方上方に湾曲していれば、前方移動でコンバイナを視野Sから外れる姿勢にすることができる。
【0069】
・コンバイナは、支持部に対する相対角度を変更可能であれば、支持部との連結支持が、弧状レール以外の構造、例えば、ヒンジ等であってもよい。
・ヘルメットにスクリーン装置を適切に配置することができるのであれば、スクリーン装置が、外側シェル以外のヘルメットを構成する部材、例えば、外側シェルの内側に配置されるEPSライナーに取り付けられてもよい。
【符号の説明】
【0070】
AT11,AT12…第1姿勢、AT21,AT22…第2姿勢、S…視野、V…画像、11…ヘルメット、12…外側シェル、12A…開口部、21…投影部、30…スクリーン装置、31…上下移動機構、40…本体部、50…支持部、60…コンバイナ、61…投影面、64…被支持部、821,831…通路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8