(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】クイック・カプラのための係止デバイス
(51)【国際特許分類】
E02F 3/40 20060101AFI20220315BHJP
【FI】
E02F3/40 E
(21)【出願番号】P 2018529159
(86)(22)【出願日】2016-12-01
(86)【国際出願番号】 NZ2016050189
(87)【国際公開番号】W WO2017099610
(87)【国際公開日】2017-06-15
【審査請求日】2019-12-02
(32)【優先日】2015-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NZ
(73)【特許権者】
【識別番号】515157437
【氏名又は名称】ウェッジロック・エクイップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン,アンドレ・リチャード
(72)【発明者】
【氏名】カルヴァート,デイヴィッド・アペラハマ
(72)【発明者】
【氏名】カルヴァート,マシュー・ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】ライダー,アンドリュー・ジェームズ・フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ライダー,マイケル・ヒュー・ジェームズ
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0318841(US,A1)
【文献】国際公開第2006/083172(WO,A1)
【文献】特開2001-303608(JP,A)
【文献】特開2004-124382(JP,A)
【文献】欧州特許第01445385(EP,B1)
【文献】国際公開第2009/110808(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/035883(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/00- 3/96
E02F 9/00- 9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付け部材のピンを土壌作業機械に結合するクイック・カプラであって、係止デバイス
を含み、前記係止デバイスは、
a.傾斜くさび表面およびこの傾斜くさび表面から突出するピン係合表面を含むくさび
係止要素であって、前記ピン係合表面は、前記くさび係止要素の遠位先頭部に位置し、かつ前記くさび係止要素が移動するように構成されている方向へ延在する平担面であり、前
記取付け部材のピン
と前記くさび係止要素の前記ピン係合表面とが係合する係止位置に前記くさび係止要素
を維持する
ために必要な駆動力が不足する際、前記くさび係止要素を動か
す実質的な負荷を
前記くさび係止要素に加えることなく
前記取付け部材のピンが前記くさび係止要素
の前記ピン係合表面と係合するように構成されている、くさび係止要素、
b.前記ピン係合表面で前記取付け部材のピンを保持するように動作可能なクランプ・
デバイス、
を含み、
前記くさび係止要素は、前記クイック・カプラに摺動可能に保持され、前記クランプ・
デバイスは、前記くさび係止要素とともに移動可能に取り付けられる、クイック・カプラ
。
【請求項2】
前記くさび係止要素は、液圧線形アクチュエータに結合するように構成する、請求項1
に記載のクイック・カプラ。
【請求項3】
前記くさび係止要素は、液圧アクチュエータの一部を形成する、請求項2に記載のクイ
ック・カプラ。
【請求項4】
前記取付け部材のピンは、前記傾斜くさび表面によって前記クイック・カプラとくさび
結合し、前記クランプ・デバイスは、前記くさび係止要素を
前記係止位置で維持する駆動力が不足する際、前記取付け部材のピンを前記ピン係合表面で保持するように動作可能である、請求項1に記載のクイック・カプラ。
【請求項5】
前記クランプ・デバイスは、前記くさび係止要素に組み付ける、請求項4に記載のクイ
ック・カプラ。
【請求項6】
前記クランプ・デバイスは、枢動軸周りに枢動可能であるように組み付けたアームを含
み、前記アームは、前記枢動軸から遠位であるピン係合部分を組み込む、請求項5に記載
のクイック・カプラ。
【請求項7】
前記アームは、付勢手段によって付勢する、請求項6に記載のクイック・カプラ。
【請求項8】
前記付勢手段は、ばねである、請求項7に記載のクイック・カプラ。
【請求項9】
前記駆動力は、液圧式である、請求項4に記載のクイック・カプラ。
【請求項10】
前記くさび係止要素は、液圧線形アクチュエータに結合する、請求項4に記載のクイッ
ク・カプラ。
【請求項11】
取付け部材のピンを土壌作業機械に結合するクイック・カプラであって、前記クイック
・カプラは、係止デバイス、及びクランプ・デバイスを含み、前記係止デバイスは、傾斜
くさび表面を含むくさび係止要素を有し、前記くさび係止要素は、摺動するように前記ク
イック・カプラ内に保持され、前記傾斜くさび表面から突出するのは、ピン係合表面であり、前記ピン係合表面は、平担面であってかつ前記くさび係止要素の遠位先頭部を形成し
、さらに前記くさび係止要素が移動するように構成されている方向と実質的に一致する面
内にあり、前記ピン係合表面がこのように構成されることで、
前記取付け部材のピンと前記くさび係止要素の前記ピン係合表面とが係合する係止位置に前記くさび係止要素
を維持する
ために必要な駆動力が不足する際、前記くさび係止要素を動か
す実質的な負荷を
前記くさび係止要素に加えることなく前記取付け部材のピンが前記ピン係合表面と係合できるように構成され、前記クランプ・デバイスは、前記駆動力が不足する場合に、前記ピン係合表面で前記取付け部材のピンを保持するように動作可能であり、前記クランプ・デバイスは、前記くさび係止要素と共に移動するように組み付ける、クイック・カプラ。
【請求項12】
前記クランプ・デバイスは、前記くさび係止要素に組み付け、枢動軸周りに枢動可能で
あるように組み付けたアームを含み、前記アームは、付勢手段によって付勢し、前記枢動
軸から遠位であるピン係合部分を組み込む、請求項11に記載のクイック・カプラ。
【請求項13】
前記クイック・カプラが前記取付け部材のピンを土壌作業機械に結合するのに使用
されているとき、前記くさび係止要素は、前記駆動力によって動かされ、前記くさび係止要素は、液圧線形アクチュエータに結合する、請求項11に記載のクイック・カプラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クイック・カプラのための係止デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
取付け部材、例えばバケットを、掘削機等の土壌作業機械に組み付けるクイック・カプラは公知である。クイック・カプラに関する潜在的な危険性は、カプラが、取付け部材をクイック・カプラに組み付ける組付け点の一方又は両方で、取付け部材を保持できないおそれがあることである。したがって、取付け部材は、(組付け点のそれぞれで結合していない場合)カプラから脱落するか、又はカプラからぶら下がる(即ち、組付け点の一方の周りに揺動する)ことがある。取付け部材上の組付け点は、典型的には、いわゆるピンによって形成され、これらのピンは、クイック・カプラの合体点の凹部内に嵌合し、次に、凹部内で係止される。
【0003】
カプラを掘削機等の土壌作業機械に組み付ける際、オペレータに最も近い端部を本明細書では「前端部」と呼ぶ。したがって、前端部で凹部/合体点に嵌合する取付け部材のピンを本明細書では「前ピン」と呼ぶ。同様に、カプラのもう一方の端部を「後端部」と呼び、カプラの中に嵌合する取付け部材のピンを「後ピン」と呼ぶ。
【0004】
取付け部材を適切な位置に正確に保持できないのは、様々な理由に起因し得る。例えば、クイック・カプラが、液圧式に動作する摺動くさび構成要素によって後ピンを保持するタイプのものである場合、液圧の不良により、クイック・カプラが取付け部材を作動位置に保持できなくなる。このことは、典型的には、後ピンがくさび構成要素の傾斜先頭表面上に負荷を加え、これにより、ピンがクイック・カプラ内でもはや係止されない位置までくさびを「後方に」駆動させることに起因する。したがって、取付け部材は、前ピンの軸周りにカプラからぶら下がることになる。
【0005】
前ピンが係止デバイスによって保持されていない場合、取付け部材は、カプラから完全に脱落することがある。本発明者等の特許文献1では、安全係止デバイスを開示しており、この安全係止デバイスは、後ピンの解放をもたらす不良の際に、前ピンをカプラ内に保持する。したがって、取付け部材は、前ピンの軸周りにカプラからぶら下がるだけである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】ニュージーランド特許明細書第552294号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、本発明の目的は、クイック・カプラの係止デバイスのためのくさび係止要素を提供することであり、このくさび係止要素は、くさびによって保持されるピンが、(液圧不良の際に)ピンがもはやカプラによって保持されない位置までくさびを駆動する傾向を少なくとも低減するか、又は有用な選択を世間に少なくとも提供するようなものである。
【0008】
この目的を達成する本発明の概念は、広範には、ピンに対してある向きを有するくさびの先頭端部にあり、くさびは、ピンがくさびに負荷を加えてくさびを解放位置まで駆動する可能性を少なくとも低減するような係止関係で、ピンと係合する。
【0009】
広範には、本発明の一態様によれば、取付け部材のピンを土壌作業機械に結合するクイック・カプラの係止デバイスのためのくさび係合要素を提供し、くさび係止要素は、傾斜くさび表面を含み、くさび表面から突出するのは、係合表面であり、取付け部材のピンは、係合表面と係合することができるが、くさび係止要素を適切な位置に維持する力が不足する際、くさび係止要素に実質的な駆動力を加えることが一切なく、これにより、ピンは、くさび表面によってカプラにくさび結合する。
【0010】
広範には、本発明の第2の態様によれば、係止デバイスは、前記駆動力が不足する際、ピン係合表面でピンを保持するように動作可能なクランプ・デバイスを更に含む。
【0011】
本発明の好ましい形態では、ピン係合表面は、くさびの遠位先頭部に位置し、くさびの遠位先頭部を形成する。
【0012】
本発明の好ましい形態では、ピン係合表面は、実質的に平坦である。
【0013】
好ましい形態では、ピン係合表面は、使用中、係止要素が駆動力によって移動する方向と実質的に一致する平面内にある。
【0014】
好ましい形態では、駆動力は、液圧式である。
【0015】
好ましくは、くさび係止要素は、液圧線形アクチュエータに結合するように構成し、より好ましくは、くさび係止要素は、液圧アクチュエータの一部を形成する。
【0016】
本発明の好ましい形態では、クランプ・デバイスは、くさび係止要素に組み付ける。
【0017】
好ましくは、本発明の1つの形態では、クランプ・デバイスは、枢動軸周りに枢動可能であるように組み付けたアームを含み、アームは、枢動軸から遠位であるピン係合部分を組み込む。
【0018】
本発明の好ましい形態では、アームは、付勢手段によって付勢する。本発明の好ましい形態では、付勢手段は、ばねである。
【0019】
本発明の第3の広範な態様によれば、取付け部材のピンを土壌作業機械に結合するクイック・カプラを提供し、カプラは、くさび係止要素と、本発明の上記の第2の広範な態様で述べたクランプ・デバイスとの組合せを含む。
【0020】
好ましくは、くさび係止要素は、摺動するようにクイック・カプラ内に保持し、クランプ・デバイスは、くさび係止要素と共に移動するように組み付ける。
【0021】
本発明の一実施形態、及びクイック・カプラへの実施形態の適用に関する以下のより詳細な説明では、本明細書の一部を形成する図面を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】くさび形状のピン係合手段を有する従来技術の液圧クイック・カプラの断面側面図であり、図は、取付け部材の前ピン及び後ピンが、カプラの前凹部及び後凹部内に係合しているのを示す。
【
図2】
図1と同様の、従来技術カプラの更なる側面図であるが、カプラが、後ピンが後凹部から外れて移動可能である「不良モード」にあるのを示す。
【
図3】カプラの断面側面図であり、取付け部材の前ピン及び後ピンは、カプラと係合し、(後ピンを後凹部内に係止する)移動可能要素の先頭部は、本発明による外形を有し、移動可能要素は、完全に後退した位置で示される。
【
図4】
図3に示すカプラの一連の断面側面図であり、後凹部内の後ピン、及び移動可能要素が完全係合位置に達するまでの、移動可能要素の後凹部内への前進を示す。
【
図5】
図3に示すカプラの一連の断面側面図であり、後凹部内の後ピン、及び移動可能要素が完全係合位置に達するまでの、移動可能要素の後凹部内への前進を示す。
【
図6】
図3に示すカプラの一連の断面側面図であり、後凹部内の後ピン、及び移動可能要素が完全係合位置に達するまでの、移動可能要素の後凹部内への前進を示す。
【
図7】
図3に示すカプラの一連の断面側面図であり、後凹部内の後ピン、及び移動可能要素が完全係合位置に達するまでの、移動可能要素の後凹部内への前進を示す。
【
図8】
図3に示すカプラの一連の断面側面図であり、後凹部内の後ピン、及び移動可能要素が完全係合位置に達するまでの、移動可能要素の後凹部内への前進を示す。後ピンは、移動可能要素によって後凹部内に保持されている。
【
図9】
図8と同様であるが、不良モードのカプラを示す図であり、移動可能要素は、部分的に後退位置に移動しているが、依然として、後ピンは、本発明によるクランプ・アームによって移動可能要素との係合を保持されている。
【
図10】
図9と同様であるが、不良モードのカプラを示す図であり、移動可能要素は、部分的に後退位置に移動しており、後ピンは、移動可能要素との係合を保持されていないが、依然として、クランプ・アームによって凹部からの移動を防止されている。
【
図11】
図9及び
図10と同様の不良モードのカプラを示す図であり、移動可能要素は、部分的に後退位置に移動しているが、後ピンは、クランプ・アームによって後凹部から外れて移動するのを防止され、前ピンは、前凹部保持要素によって前凹部からの移動するのを防止されている。
【
図12】組付け部を有する本発明による移動可能要素の一例の等角図であり、組付け部の上に、クランプ・アームが置かれる。
【
図13】
図12に示す移動可能要素の更なる等角図であるが、クランプ・アームは、組付け部に結合されている。
【
図15】
図13及び
図14に示す移動可能要素の等角図であり、移動可能要素は、液圧シリンダに結合している。
【
図16】クランプ・アーム機構によってくさびと共に保持した2つの異なる直径のピンのグラフィックな図である。
【
図17】
図16と同様の図であり、より小さなサイズの後ピンが、クランプ・アームの成形端部のより近くに置かれているのを示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
クイック・カプラの1つの形態に関して、本発明の態様を本明細書で説明するが、他の形態のクイック・カプラを使用し得ることは当業者であれば理解されよう。
【0024】
図面の
図1及び
図2に示すクイック・カプラは、本発明者等が製造した公知の形態のクイック・カプラAである。クイック・カプラAは、カプラを取り付ける機械(通常は土壌作業機械)の液圧技術によって液圧式に動作する。カプラ本体Bは、組付け点Cを有し、これにより、カプラを、例えば掘削機のアーム(図示せず)に取り付けることができる。
【0025】
カプラ本体Bは、フック形状前凹部Dを有し、この前凹部D内に、取付け部材の前組付けピンP1が係合する。上述のように、クイック・カプラのフック形状凹部の端部は、典型的には、カプラの「前」と呼ぶ。というのは、この端部が、機械(例えば掘削機)のオペレータの方に向くことになるカプラの端部であるためである。
【0026】
組付け部の後組付けピンP2は、後凹部Eに位置する。
【0027】
カプラのこの形態では、くさび構成要素である移動可能係止要素F(以下、簡単にするために「くさびF」)は、取付け部材の後組付けピンP2を後凹部内に捕捉するように拡張可能である。くさびFには、液圧で動力を供給する。
【0028】
典型的には、掘削機のオペレータは、カプラの凹部Dを取付け部材の前ピンP1上に配置し、次に、後ピンP2が凹部E内に係合するようにカプラを押し込める。次に、くさびFを拡張し、後凹部E内で後ピンP2と係合させ、係止する。カプラAによって係合したピンP1及びP2を
図1に示す。これにより、取付け部材は、作動位置でカプラAに結合している。
【0029】
例えば、カプラAへの液圧力が不足する場合、くさびFをその係止位置に動かし保持する液圧シリンダGは、係止位置でくさびを保持することができない。その結果、くさびFは後退することがあり、組付けピンP2を凹部Eから解放可能にする(
図2を参照)。
【0030】
フック形状凹部又は合体部D内の前ピンP1が前凹部内に保持されていない場合、取付け部材は、カプラから脱落し、したがって、掘削機のアームから脱落することがある。しかし、前ピンP1が、(例えば本発明者等のニュージーランド特許明細書第552294号/第546893号に記載され、特許請求する本発明者等のI-LockデバイスLによって)保持されている場合、取付け部材は、カプラAから完全に脱落することはないが、ピンP1上にぶら下がることになる。
【0031】
図示のカプラAの形態において、くさびFは、液圧シリンダGによって形成する動作手段の一部であり、液圧シリンダGは、駆動力を加え、シリンダGのピストン・ロッドRを介してくさびFの拡張及び後退を制御する。このことは、シリンダG及びくさびF構成が取り得る形態の一例にすぎない。
【0032】
図1及び
図2に示すように、くさびFの先頭端部又は遠位端部は、傾斜又は勾配表面Mを含む。複合的に液圧が不足した場合、作動力により、ピンP2がくさびFを後方に駆動する(
図1の矢印Yに示すように)。このことは、傾斜面M(及び
図1に矢印Xによって示される、加えられた垂直な力)による。したがって、後ピンP2は、くさび面MがくさびFによって後凹部内でもはや保持されない点までくさび面Mを下げ(
図2)、取付け部材は、上記した前ピンP1周りで自由に揺動することになる。
【0033】
所与の取付け部材に関して、ピンP1とP2との間の距離は、ピンの直径のように厳格に固定される。本明細書に示し、説明する実施形態では、クイック・カプラは、前凹部に対して、後凹部Eがもたらす範囲内にあるピン直径及びピン中心を有する取付け部材に応ずる。したがって、本発明のくさび係止要素は、多数の取付け部材のピン中心に適しているが、単一のピン中心設計にも等しく適用することができる。
【0034】
本発明によれば、本発明者等は、くさび10(くさび10の一例は
図12から
図15に示す)を考案しており、くさび10は、先頭端部に、突出部11を含み、突出部11は、実質的に平らな(平坦な)ピン係合表面12をもたらす。この平坦表面12は、傾斜くさび表面13の下側末端を越えて延在する。傾斜表面13と平坦表面12との間の角度は、鈍角である。
【0035】
図12から
図15に示すくさびの例の構成は、
図1及び
図2に示すタイプのカプラに特定のものである。(本発明により提供するような)くさびの先頭端部における平坦突出ピン係合表面12は、傾斜ピン係合表面を有するくさびの他のタイプ及び構成で組み込むことができることは当業者であれば理解されよう。
【0036】
ピン係合表面12の表面は、(矢印「X」で示す)カプラの不良状態においてピンP2がくさび10に加える力の方向に実質的に垂直である。したがって、ピンP2が傾斜くさび区分13の端部に到達すると、ピンP2が傾斜面13と係合している際に加える負荷と同様にくさび10に対し負荷を加えることは、もはや可能ではない。言い換えれば、くさびを矢印「Y」の方向で後方に駆動する負荷はない。
【0037】
ピン係合表面12がある平面は、くさび係止要素が前後に移動する方向と実質的に一致することは理解されよう。
【0038】
後ピンP2がくさび10のピン係合表面12に到達すると、ピンP2とピン係合表面12との間の摩擦のために、くさび10に負荷を加えることが依然として可能である場合がある。この摩擦接触は、周期的なわずかな量で、くさび10を(方向Yで)後方に、ピンP2がくさびの極縁部21を通過し得る点まで移動させることがある。したがって、ピンP2は、凹部から離れてカプラから自由になることができ、このため、取付け部材がカプラから解放され、取付け部材をピンP1上で揺動可能にさせることになる。
【0039】
したがって、後ピンP2とくさび10との間の関係を実質的に保持する手段を追加することは、有利であり、図面は、そのような手段をクランプ・デバイス14の形態で示す。クランプ・デバイス14の存在により、くさび10が上述の量だけ後ろに移動した後、再度引き戻されることが保証される。というのは、ピンP2が、方向Yとは反対の方向に移動するためである。したがって、このクランプ・デバイス14は、ピンP2がくさび10のピン係合表面12の遠位端部21を越えて通過しカプラと分離することを防止するものである。
【0040】
本発明によれば、クランプ・デバイス14は、クランプ・デバイスを作動させるために更なる液圧アクチュエータを必要としない。このことは、費用を低減させるだけでなく、信頼性も向上させる。
【0041】
クランプ・デバイス14は、適切な組付け部15によってくさび10に結合され、くさび10と共に移動可能であるようにする。これにより、クランプ14をくさび10に結合すると、クランプ14が、くさび10とピンP2とのあらゆるくさび固定位置で、ピンP2との適切な関係を保持できることが保証される。
【0042】
クランプ14の例示的形態では、クランプは、中実クランプ・アーム16を含む。例示の好ましい形態では、クランプ・アーム16は、実質的に円弧形状であり、一端17で組付け部15に枢動結合する。
【0043】
クランプ・アーム16は、付勢、好ましくはばね付勢され、したがって、一形態では、クランプ・アーム16は、(図示のような)圧縮ばね18又はねじりばね等の他の付勢手段によって付勢される。図示のように、ばね18は、枢動軸17から離間しているが隣接する点でクランプ・アーム16と係合する。ばね18のもう一方の端部は、組付け部15の交差部品19に結合する。
【0044】
組付け部15は、上記のように、くさび10によって支持される。図示の形態では、組付け部15は、くさび10内に設けた、適切に成形された凹部15aの中に位置する。
【0045】
クランプ・アーム16は、ピンP2が、ピンP2が凹部E内に入る移動の間、ばね18の付勢効果に反してクランプ・アーム16を強制的に移動できるような設計及び構成のものである。これにより、ピンP2が凹部内に移動するのを可能にするのに必要な間隙をもたらす。
【0046】
したがって、例えば、クランプ・アーム16の先頭ピン接触部分20の外形は適切に決定され、(カプラAが取付け部材と係合する際)ピンP2が凹部E内に係合する間、及び(取付け部材をカプラAから分離する際)カプラから分離する間の両方で、先頭ピン接触部分20がピンP2と滑らかに押し込み式に係合し、ピンP2の上に載るようにする。
【0047】
図3は、クランプ・アーム16の外形付き端部20を示し、外形付き端部20は、シリンダGの作用下、くさび10が拡張し始めるとピンP2に接近する。一方で、
図4は、くさび10が拡張を続けるにつれて、クランプ・アーム16の端部20がピンP2と接触することを示す。くさび10が更に前進すると、クランプ・アーム16の端部20は、ピンP2の上に載る(
図5及び
図6を参照)。
【0048】
くさび10が前進し続けると(
図7)、クランプ・アーム16に対するばね付勢により、端部20はピンP2の反対側に乗り越えて下がる。最終的に、くさび10が前進できるだけ遠くに拡張すると、後ピンP2がくさび10と凹部Eの対向表面との間で完全に係合するために、クランプ・アーム16は、ピンP2の上に、ピンと接触した状態で位置することになる(
図8)。
【0049】
液圧シリンダGから入手可能な力は、付勢手段(例えばばね18)がもたらすクランプ・アーム16のクランプ力と比較すると非常に大きいものである。したがって、通常機能の間、ピンP2と係合及び解放する際、くさび10が移動すると、クランプ・アーム16は、ばね18の付勢に反して容易に移動する。したがって、クランプ・デバイス14を駆動又は作動させるために更なる液圧アクチュエータは必要としない。
【0050】
図8は、係合位置におけるカプラAを示し、ピンP1及びP2、したがって、取付け部材はカプラ上に係止されている。この位置では、ピンP2は、後凹部E内にあり、くさび10は、シリンダGによって拡張され、ピンP2がくさび10(この場合傾斜表面13)と凹部Eの表面との間に保持されるようにする。
【0051】
より大きな直径のピンP2(
図16を参照)の場合、図面は、ピンP2が、傾斜表面13及びピン係合表面12の両方に係合しているのを示すように見えるが、実際には、わずかな間隙がある。この間隙のために、ピン係合表面12と凹部Eの表面との間は、実質的に、同時に接触することはなく、これにより、係合/分離ごとに生じる摩耗を回避するようにする。
【0052】
しかし、くさび10が、(例えば液圧がないために)ピンP2が分離し得る点まで後退した場合(
図9又は
図10を参照)、クランプ・アーム16の存在により、ピンP2とくさび10との間の関係を実質的に保持し、これにより、ピンP2をくさび10と係合した状態で自動的に保持する。したがって、カプラの不良モードでは、後ピンP2は、後凹部Eから外れる動きに反して保持されることになる。
【0053】
取付け部材のピンP1及びP2の保持は、前ピンP1が、上述した本発明者等のI-Lock安全係止デバイス等の保持手段によって保持されていることに依拠する。言い換えれば、前ピンP1は、
図11に示すように、その通常位置と係止特徴(即ちI-Lock)との間のみを移動することができる。その結果、いずれか1つの取付け部材の前ピンP1と後ピンP2との間の固定距離のために、後ピンP2は、前ピンP1と同じ量だけ移動することができる。
【0054】
当業者であれば、カプラ、及び特に後端部係止機構が、様々な直径のピンと作動し得ることは上記及び図面から理解されよう。
図16は、2つの異なるピン直径、例えば、小さな直径のピン及び大きな直径のピンを示す。
図17は、より小さなピンP2が、クランプ・アーム16の成形端部20のより近くに置かれているのを示す。
【0055】
この目的で、クランプ・アーム16の遠位端部の内部表面の形状及び構成は、好ましくは、より小さな直径のピンを、平坦区分12の遠位端部21からできるだけ遠くに保持するように成形される。このことは、大きな直径及び小さな直径のピンP2を示す
図16及び
図17にグラフィックに示し、より小さな直径のピンは、遠位縁部21のより近くに保持されている。したがって、より小さなピンP2は、より遠くに移動しなければならず、これにより、クランプ・デバイス14が加える負荷(即ちより多くのばね圧縮)をより高く生じさせる。
【0056】
上記の説明では、アーム16をクランプ・アーム16と呼ぶ。しかし、アーム16の形態及び機能は、当業者が理解するように、アーム16を「安全」アームとして記述できるようなものである。
【0057】
本発明は、修正に対してオープンである。例えば、ばね付きクランプ・アーム16は、ばね部材によって形成することができる。
【0058】
本発明は、特定の実施形態として説明、例示しており、実施形態は、公知のタイプのクイック・カプラに関連して詳細に説明している。本発明の範囲をそのような詳細に限定するか又は何らかの形で限定することは本出願人の意図するものではない。
【0059】
更なる利点及び修正は、当業者には直ちに明らかであろう。したがって、本発明は、そのより広範な態様において、特定の詳細、製造及び方法の代表的手段、並びに図示、説明した例示的な例に限定されるものではない。したがって、本出願人の一般的な発明概念の趣旨又は範囲から逸脱することなく、そのような詳細から逸脱することができる。