(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】軸方向に区分けされたオイル分配ホイール、および、そのようなホイールを備えた遊星減速歯車
(51)【国際特許分類】
F01D 25/18 20060101AFI20220315BHJP
F16H 57/04 20100101ALI20220315BHJP
F02C 7/36 20060101ALI20220315BHJP
【FI】
F01D25/18 A
F16H57/04 J
F02C7/36
(21)【出願番号】P 2018539431
(86)(22)【出願日】2017-01-27
(86)【国際出願番号】 FR2017050200
(87)【国際公開番号】W WO2017129926
(87)【国際公開日】2017-08-03
【審査請求日】2020-01-08
(32)【優先日】2016-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516247122
【氏名又は名称】サフラン・トランスミッション・システムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガディン,パトリス
(72)【発明者】
【氏名】オートラン,ポリーヌ・マリー・セシール
(72)【発明者】
【氏名】ブルオ,セシル
(72)【発明者】
【氏名】ベック,ギヨーム・ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】ドンベク,アレクシ
(72)【発明者】
【氏名】ルモワーヌ,ジュリー
(72)【発明者】
【氏名】ペルティエ,ジョルダーヌ
【審査官】吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】仏国特許出願公開第02688574(FR,A1)
【文献】特表2012-518130(JP,A)
【文献】特表2015-513648(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 25/18
F16H 57/04
F02C 7/36
F02C 3/107
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンエンジンのためのアセンブリであって、前記アセンブリは、
共通の回転軸(X)周りに回転しつつ互いに噛み合う一連のピニオン(11、12、13)を備えた遊星減速歯車(10)であって、一連のピニオンが、太陽歯車ピニオン(11)と、一連の遊星ピニオン(12)と、一連の遊星キャリア(13)と、一連の遊星軸(16)とを備える、遊星減速歯車(10)と、
前記一連のピニオン(11、12、13)にオイルを供給するためのオイル供給装置とを備え、
前記オイル供給装置は、
潤滑オイルタンク(31)と、
前記共通の回転軸(X)周りに回転移動可能である潤滑剤ホイール(35)と、
前記潤滑剤ホイール(35)にオイルを供給するための少なくとも1つの固定されたライン(32)と、
回転している噛み合ったピニオンにオイルを供給するための、第1の供給ラインおよび第2の供給ラインであって、前記第1の供給ラインおよび第2の供給ラインが、共通の回転軸(X)周りに回転移動可能である、第1の供給ラインおよび第2の供給ラインと、
固定された供給ライン(32)の端部においてオイルを噴出するための少なくとも1つの噴出手段(33)と
を備え、
前記潤滑剤ホイール(35)は、オイルを受領するために、前記少なくとも1つの噴出手段(33)に対向して位置しており、周りに環状キャビティ(37)が延びる軸(X)を有し、
この環状キャビティが、軸(X)に向かって径方向に開いており、
環状キャビティが、オイルを受領するように、前記軸(X)に対して実質的に径方向である第1の壁(39a)および第2の壁(39b)によって横に境界が形成されており、
この環状キャビティからは、一連のピニオン(11、12、13)に潤滑剤を送るために、第1の潤滑剤供給ライン(43)および第2の潤滑剤供給ライン(45)が出発しており、
前記環状キャビティが、前記軸に対して平行に、少なくとも第1の環状サブキャビティ(40a)と第2の環状サブキャビティ(40b)とに分割され、
第1の環状サブキャビティと第2の環状サブキャビティとが、前記軸に対して実質的に径方向である環状の内側パーティション(38)によって分割されており、
また、第1の潤滑剤供給ライン(43)と第2の潤滑剤供給ライン(45)とにそれぞれ連通しており、
環状キャビティ(37)が、内側パーティション(38)の位置におけるオーバーフローキャパシティを有し、それにより、第1の壁および第2の壁に対してオーバーフローすることなく、前記軸に対して平行に、第1のサブキャビティから第2のサブキャビティに、またはその逆に、潤滑剤のオーバーフローが生じ得るようになっており、
第1の一連の潤滑剤供給ライン(43)が、数において、遊星ピニオン(12)の数と等しく、遊星キャリア(13)のうちの1つによって閉じられる、各遊星軸(16)の内側クロージャ内に貫入し、
第1の一連の潤滑剤供給ライン(43)と、第2の一連の潤滑剤供給ライン(45)が、
共に、遊星減速歯車(10)の外周にわたって規則的に分布し、2つの連続した遊星ピニオン(12)間に位置する空間内に入ることを特徴とする、アセンブリ。
【請求項2】
内側パーティション(38)の自由端部が、ホイールの第1の横方向の壁(39a)および第2の横方向の壁(39b)の自由端部が離れているよりも、回転軸(X)から離れている、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のアセンブリの減速歯車によって駆動されるファンシャフト(4)を備えたデュアルフロー・ターボジェット・ファン・モジュール。
【請求項4】
請求項1もしくは請求項2に記載のアセンブリ、または、請求項3に記載のデュアルフロー・ターボジェット・ファン・モジュールを備えたタービンエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に航空機のターボプロップエンジンまたはターボジェットエンジンに備え付けることが意図される、タービンエンジンの潤滑剤分配ホイール、および、遊星減速歯車に特に関する。
【背景技術】
【0002】
減速歯車は通常、入力シャフト、たとえばタービンシャフトによって駆動される内側遊星歯車(太陽歯車とも呼ばれる)と、内側遊星歯車と同軸である外側遊星歯車(冠歯車とも呼ばれる)と、遊星が回転するように取り付けられた遊星キャリアとで構成され、遊星が、内側遊星歯車と外側遊星歯車との両方と噛み合っている。
【0003】
そのような減速歯車の減速比の変化は、太陽歯車、遊星、および外側の冠歯車の歯数を変化させること、ならびに、減速歯車の構造によって得られる。
【0004】
タービンエンジンでは、潤滑剤ホイールが知られている。この潤滑剤ホイールは、周りに環状キャビティが延びる軸を有している。
【0005】
この環状キャビティは、軸に向かって径方向に開いている。
【0006】
環状キャビティは、潤滑剤を受領するように、前記軸に対して実質的に径方向である第1の壁および第2の壁によって横に境界が形成されている。
【0007】
この環状キャビティからは、潤滑剤が送られることになる様々な異なる部材に潤滑剤を送るために、少なくとも第1の潤滑剤供給ラインおよび第2の潤滑剤供給ラインが出発している。
【0008】
国際公開第2010/092263号明細書では、周りに環状潤滑剤キャビティが延びる軸に対して平行に、前記キャビティが、少なくとも第1の環状サブキャビティと第2の環状サブキャビティとに分割されている。
【0009】
第1の環状サブキャビティと第2の環状サブキャビティとは、前記軸に対して実質的に径方向である環状の内側パーティションによって分割されている。
【0010】
また、第1の環状サブキャビティと第2の環状サブキャビティとは、第1のラインと第2のラインとにそれぞれ連通している。
【0011】
一連の問題は、圧力で、潤滑剤が送られることになるこれら部材に供給することにある。このことは、特に、前記部材が回転する場に位置しており(減速歯車ベアリングおよび歯など)、決まった基準ポイントに位置するポンプから供給されている場合である。さらに、潤滑剤の要請は、減速歯車の動作フェイズに応じて、異なって分配されることである。さらに、損失を制限するために、問題となっている部材の各々の要請に可能な限り近い潤滑剤の供給が必要であり、このことは、潤滑剤の分配の調整を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、より詳細には、潤滑剤が送られることになる部材への、この圧力の供給を可能にしつつ、そのような調整を助けるホイールの解決策を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このため、このホイール上において、上述の環状キャビティが、前記内側パーティションの位置におけるあるオーバーフローキャパシティを有し、それにより、潤滑剤のオーバーフローが、前記軸に対して平行に、第1のサブキャビティから第2のサブキャビティ、またはその逆に、オーバーフローが生じ得るようになっていることが、最初に提案される。
【0015】
以下のように遊星減速歯車またはオイル供給装置上に取り付けられており、このホイールは、以下の利点のすべてまたはいくつかを与えるように設計されている。
【0016】
固定された基準ポイントに繋がった回路と、通常は減速歯車に設けられた遊星キャリアに接続された回路との間に部品を接続することなく、潤滑を提供し、結果として、コストおよび信頼性に関する利点が得られる。
【0017】
潤滑剤(通常はオイル)を、決まった基準ポイントから回転する基準ポイントへ、部品を摩耗させることなく移動させ、やはり、信頼性が向上する。
【0018】
エンジン内における減速歯車のモジュールの取付けを可能にし、メンテナンスをセーブする結果となる。
【0019】
減速歯車の様々な異なる構成要素の中で潤滑剤を分配させるとともに、この分配を、減速歯車の動作フェイズに応じて変化させ、結果として、潤滑剤の供給が最適になり、効率が向上し、エンジン全体の重量を制限する可能性がある(使用される潤滑剤が少なく、したがって、機内の潤滑剤が少なくなる)。
【0020】
これら供給システムのいずれかが故障した場合(たとえば、噴流がブロックされる、流量が過度に多い、など)の、減速歯車の潤滑が確実になり、やはり信頼性が向上する。
【0021】
上述のことに関し、ホイール上で、その軸に対して径方向に、
第1のサブキャビティと第2のサブキャビティとの各々が底部を有していることと、
内側パーティションが、各底部に関し、第1の壁および第2の壁の高さより低い高さを有していることとが、やはり推奨される。
【0022】
これにより、所望のオーバーフローの実現が、内側パーティションの位置における前記オーバーフローキャパシティのシンプルな実施形態を介して促進される。
【0023】
共通の回転軸(X)周りに回転しつつ互いに噛み合うピニオンのアセンブリにオイルを供給することが意図された上述の装置に関し、この装置が、
潤滑オイルタンクと、
前記アセンブリにオイルを供給するための少なくとも1つの固定されたライン、および、回転している噛み合ったピニオンにオイルを供給するための他のラインであって、前記他の供給ラインが、共通の回転軸(X)周りに回転移動可能である、他のラインと、
固定された供給ラインの端部においてオイルを噴出するための少なくとも1つのオイル噴出手段と、
その特徴のすべてまたはいくつかを伴う上述のホイールであって、共通の回転軸(X)周りに回転移動可能であり、オイルを受領するために、前記噴出手段に対向して位置している、ホイールと、
を備えることが推奨される。
【0024】
本発明は、それ自体が、前記共通の回転軸(X)周りに回転するように適合された遊星減速歯車であって、
互いに噛み合うピニオンの上述のアセンブリと、
上述のオイル供給装置と、
を備えた、遊星減速歯車にも関する。
【0025】
この減速歯車では、問題となっているホイールの内側パーティションが、このホイールの第1の横方向の壁および第2の横方向の壁が離れているよりも回転軸(X)から離れており、それにより、外側よりむしろ、1つのサブキャビティから別のサブキャビティに、前記軸に平行に、第1のサブキャビティから第2のサブキャビティへ、またはその逆に、優先的に潤滑剤のオーバーフローが生じ得るようになっていることが好ましい。
【0026】
利点は、すでに述べた利点の内にある。
【0027】
上述のすべてまたは一部により、
上述のような、向上された減速歯車によって駆動されるファンシャフトを備えたデュアルフロー・ターボジェット・ファン・モジュール、
および/または、少なくとも1つのそのような減速歯車を備えたタービンエンジンを実現することも可能になる。
【0028】
本発明は、上述のオイル供給装置の動作方法にも関する。
【0029】
この方法によれば、
ホイールの環状キャビティに、オイル噴出手段を介してオイルが供給され、それにより、潤滑オイルの最初の分配が、内側パーティションによってホイールのキャビティ内に生じ、また、オイルレベルまたは複数のオイルレベルがこうして前記第1のサブキャビティおよび第2のサブキャビティに生じるようになっており、
次いで、前記第1のサブキャビティおよび第2のサブキャビティへ、内側パーティションの位置においてホイールの前記第1のサブキャビティおよび第2のサブキャビティの他方内へオイルがあふれるまで、過度に供給することが提供される。
【0030】
いくつかの動作状況では、潤滑剤の消費量が他の時点よりも多い。さらに、問題となっているホイールによって潤滑剤が送られる部材への飛散を避けることが望ましい場合がある。
【0031】
このため、所与の状況において、前記第1のサブキャビティと第2のサブキャビティとの少なくとも1つへの過度な供給が、ホイールの外へあふれるまで継続されることがさらに可能である。
【0032】
ホイール潤滑剤システムの効率的な動作のために、ホイールの環状キャビティにオイルを供給および過度に供給するために、ホイールが回転し、遠心力による圧力がキャビティ内に、ホイールの回転速度、および、前記キャビティ内のオイルの柱の高さに応じて生成されることがやはり推奨される。
【0033】
添付図面を参照して、網羅的ではない例としての以下の説明を読むことで、本発明は、必要であれば、よりよく理解され、また、本発明の他の詳細、特徴、および利点が明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】デュアルフローターボジェットの原理を示す図である。
【
図2】可能性のある実施形態に係る潤滑剤システムが備え付けられたファンシャフト遊星減速歯車を示す図であり、潤滑剤の減速歯車へ、および減速歯車内への供給の詳細を含んでおり、このホイールには、本発明に係る向上が含まれていない。
【
図3】本発明に係る向上をホイールに含む、上述の減速歯車の断面斜視図である。
【
図5】上述のホイールの充填の状態の1つを示す図である。
【
図6】上述のホイールの充填の状態の1つを示す図である。
【
図7】上述のホイールの充填の状態の1つを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1を参照すると、この場合はターボジェットなどのタービンエンジン1を見ることができる。このタービンエンジン1は、慣習的に、全体的かつ連続的に、タービンエンジンの長手軸Xに沿って、ファンS、低圧コンプレッサ1a、高圧コンプレッサ1b、燃焼チャンバ1c、高圧タービン1d、低圧タービン1e、および排気ノズル1hを備えている。高圧コンプレッサ1bと高圧タービン1dとは、高圧シャフト2によって接続され、高圧シャフト2とともに、高圧(HP)本体を形成している。低圧コンプレッサ1aと低圧タービンとは、低圧シャフト3によって接続され、低圧シャフト3とともに低圧(LP)本体を形成している。慣習的なターボファンを含む図示の構成では、ファンSのブレードが取り付けられたディスクが、ファンシャフト4、またはLPトラニオンによって駆動される。ファンシャフト4またはLPトラニオンは、次いで、LPシャフト3により、遊星減速歯車10を介して直接駆動される。
【0036】
長手軸Xは、タービンエンジンの回転軸Xである(この軸の周りで、ファンSの可動ブレード、コンプレッサの可動ブレード、およびタービンの可動ブレードが、すなわち回転している)。本明細書における「径方向(radial)」との用語は、この軸Xに対する径方向である。
【0037】
ファンSのブレードは、ファンシャフト4によって支持されている。このファンシャフト4は、エンジン構造に接続されている。このファンシャフトの下流側端部は、減速歯車10の遊星キャリア13に固定されている。その一部に関し、LPシャフト3は、そのリブ7により、減速歯車10の遊星歯車11に接続されている。
【0038】
図2はこのことを示しており、より概略的には、径方向の断面の半分で、減速歯車10の上部を示している。下部は、回転軸Xに対して対称に位置している。
【0039】
図示のように、減速歯車10は、支持ケーシング22の一端に、閉鎖および支持用フランジ20に締結されている。このフランジ20は、遊星減速歯車の冠歯車から延び、こうして、減速歯車をファンシャフト2に固定し、また、この減速歯車をLPシャフト3に対して配置する。
【0040】
減速歯車10の囲まれた部分は、ケーシング24内で加圧されている。加圧ケーシング24の目的は、減速歯車の周りに、周囲の圧力よりも高い圧力の、囲まれた部分を形成することである。周囲は、減速歯車10のオイルを吸引する吸引ポンプによる真空下に置かれている。ケーシング24は、支持ケーシング22を囲んでいる。
【0041】
減速歯車10は、その冠歯車14内に外部で囲まれている。冠歯車14は、回転移動不可であり、フランジ20においてエンジン構造に締結されている。減速歯車は、一方では、LPシャフト3のリブ7に、遊星減速歯車の遊星歯車11の歯車ピニオンを介して係合し、他方では、この同じ遊星減速歯車の遊星キャリア13に取り付けられたファンシャフト4に係合している。慣習的に、太陽歯車ピニオン11は、減速歯車の周囲にわたって規則的に分布した一連の遊星ピニオン12を駆動する。これら遊星12は、やはり、冠歯車14上で回転しつつ、軸X周りに旋回する。冠歯車14は、支持ケーシング22により、タービンエンジン構造に取り付けられている。遊星キャリア13にリンクした遊星軸16は、各遊星の中心に位置し、この遊星は、図示のように、ベアリングにより、この軸周りに自在に回転する。遊星歯車の、その軸周りの回転は、冠歯車14のピニオンとの、遊星歯車のピニオンの協同によるものであり、この遊星歯車の軸周りの回転は、遊星キャリア13が、軸X周り、したがって、この遊星キャリア13に接続されたファンシャフト4の軸周りに回転する結果となる。ファンシャフト4は、一連のセンタリングフィンガ17によって、遊星キャリア13によって駆動される。このセンタリングフィンガ17は、ファンシャフト4の下流側端部から軸方向に延びている。遊星キャリア13は、減速歯車の両側で対称的に延び、潤滑機能が実施され得る、囲まれた部分を形成している。ブッシング19により、この囲まれた部分を遊星軸16において、減速歯車の両側で囲まれた部分をブロックすることで、この囲まれた部分の閉鎖が完結する。
【0042】
図2の矢印は、バッファタンク31として知られる、特定のオイルタンクから潤滑剤が送られるピニオンおよびベアリングへの、オイルが辿る経路を示している。バッファタンク31は、減速歯車の隣に、頂部で位置しており、それにより、オイルが重力によって減速歯車の中心に向かって流れることができるようになっている。このタンク31には、メインタンク(図示せず)を起点とするライン30によって供給される。バッファタンク31から、オイルは、少なくとも1つのジェット33が備え付けられた少なくとも1つのインジェクタ32に流れる。オイルは、ジェット33から噴流34の形態で出る。噴流34は、供給ポンプの圧力と、ジェットの上に位置するオイルの柱の重さとの協同によって生じる圧力下で形を成す。この噴流34は、エンジンの外側に向けられた径方向の構成要素に向いており、オイル分配ホイール35で終わる。
【0043】
ホイール35は、噴流34のオイルを保持するためのキャビティを形成している。このオイルは、ホイール35によって回転して押し出され、ホイール35の底部において、遠心力の作用で加圧される。ホイールの底部から導かれているのは、それぞれ、430と450とにおいて、潤滑剤が送られることになる様々な部材にオイルを供給するための一連のラインである。これらラインは、
図2に基づいて示されるように、
遊星ピニオン12の数に等しい数の第1の一連のライン43であって、ホイール
後に、
第1の一連のライン43は、遊星キャリア13によって再び閉じられる、各遊星シャフト16の内側クロージャ内に貫入
する、第1の一連のライン43と、
第1の一連のライン
のように、減速歯車の外周にわたって規則的に分布し、ホイール35の後に、2つの連続した遊星ピニオン12間に位置する空間内に入る、第2の一連のライン45と、を備えている。
【0044】
第1のライン43を循環するオイルは、各遊星軸16の内部のキャビティ内に突入する。遠心力により、オイルがガイドチャネル44内に入り、これら軸を径方向に通過する。これらチャネル44は、遊星軸16の外周に、遊星12を支持するそのベアリングにおいて出て、それにより、これらベアリングに潤滑剤を送る。第2のライン45は、ホイール35の底部から、遊星12間に入り、いくつかのチャネル45a、45bに分枝する。このチャネル45a、45bは、一方では、遊星12のピニオンおよび遊星歯車11のピニオンによって形成された歯車に向けて、そして他方では、遊星12のピニオンおよび冠歯車14のピニオンによって形成された歯車に向かってオイルを運ぶ。各チャネル45aは、遊星ピニオン12と遊星歯車11との間で、遊星ピニオンに沿って軸方向に延びる。冠歯車11と遊星12との間の歯車に供給するライン45bは、そのオイルを、各遊星によって形成された円筒の中心に向けて投入する。
【0045】
機能的に、オイルは、重力により、バッファタンク31からインジェクタ32内に流れる。供給ポンプの圧力と、ジェット(複数の場合もある)33の上に位置するオイル柱との下で、オイルは噴出され、このオイルが流れ込む回転ホイール35によって回収される。オイルは次いで、各遊星12の第1のライン43と第2のライン45とに入る。第1のライン43を通過するオイルは、対応する遊星ピニオン12の内側キャビティに入り、次いで、同時に、前の遠心力の場と、その遊星軸16周りの遊星ピニオンの回転に起因する場との影響を受ける。オイルは、ガイドチャネル44により、遊星ピニオン12の厚さを越え、遊星12と、その遊星軸16との間に位置するベアリングに潤滑剤を送る。遠心加速場は、パイプに沿う圧力勾配を生じる結果となり、また、この勾配が、ベアリングに供給することを可能にするために、ベアリングにおいて十分に高い圧力(約5バー)になる結果となることを確実にしている。その一部に関し、第2のライン45を通過するオイルは、遊星歯車の第2の供給ライン45aと、遊星冠歯車システムの第2の供給ライン45bとの間に分枝する。ライン45aは、その潤滑バーにより、両方のピニオンの幅全体にわたってオイルを噴出する。ライン45bは、遊星ピニオンの上に、冠歯車14上の、その歯車装置に延び、この歯車装置に潤滑剤を送るジェットで終端する。
【0046】
こうして、潤滑手段は、ホイール35の径方向内側のエリアから、対応する歯およびベアリングに、潤滑剤を供給することを確実にすることが可能になる。
【0047】
この場合、ホイール35は、径方向の断面がU状の円筒状のカップであり、その開口が回転軸Xに向いている。(各)インジェクタ32とそのジェット33とが固定されているが、ホイール35は、軸X周りに回転移動可能である。ホイール35のU形状の底部の開口は、回転軸Xおよびジェットに対向しており、Uの縁部は、この軸に向けられている。
【0048】
その内側環状キャビティ37が周りに延びるホイールの軸は、したがって、軸Xである。さらに、キャビティ37はこのため、軸Xに向かって径方向に開いており、また、潤滑剤を受領するように、前記軸に対して実質的に径方向の第1の壁39aおよび第2の壁39bによって横方向に境界が形成されている。
【0049】
潤滑剤をベアリングおよび歯に供給するための第1のライン43および第2のライン45は、図示のように、キャビティ37から始まっている。さらに、X軸に対して平行に、キャビティ37が、この場合では数が2つの、環状のサブキャビティ40a、40bに分割されている。これら第1のサブキャビティと第2のサブキャビティとは、軸Xに対して実質的に径方向の、環状の内側パーティション38によって分割されており、第1のラインと第2のラインとにそれぞれ連通している。
【0050】
内側パーティションは、サブキャビティのそれぞれの底部41a、41b(これら底部は、第1の壁と第2の壁とによって横方向に境界が形成されている)に関し、第1の壁39aの高さおよび第2の壁39bの高さ(この場合は同一であり、Hである)よりも小さい高さhを有している。
【0051】
換言すると、各側壁39aまたは39bの自由端部が周方向に沿って延びる半径R1は、パーティション38の自由端部が周方向に沿って延びる半径R2よりも小さい。
【0052】
このため、潤滑剤は、ホイール内で、軸Xに平行に、第1のサブキャビティから第2のサブキャビティへ、またはその逆(
図6の矢印)にあふれる可能性がある。
【0053】
さらに、ピニオンギア減速歯車(11;12…)、および、そのような、共通の回転軸X周りに旋回しつつ、ピニオンが互いに噛み合うアセンブリにオイルを供給するための装置が得られ、前記装置が特に、
潤滑オイルタンク31と、
ピニオンにおいて固定されたオイル供給ライン32と、
回転歯車におけるオイル供給ライン45、45a、45bであって、したがって、これら供給ラインが軸X周りに回転移動可能であり、それにより、前記歯車の動きに追従するようになっている、オイル供給ライン45、45a、45bと、
ライン32の端部におけるオイル噴出手段33と、
同じ軸X周りに回転移動可能であり、したがって、オイルを受領するために、前記噴出手段33に対向して位置している、ホイール35と、
を備えている。
【0054】
軸方向に段になっているサブキャビティ40a、40bに優位に供給するために、軸Xから離れるように向けられた径方向の構成要素の、これら手段33が向けられる対象に留意されたい。
【0055】
現代のタービンエンジン、特にデュアルフローターボジェットは、固定部品と可動部品とを備えることができるモジュールのアセンブリによって慣習的に提供されることにも留意されたい。モジュールは、タービンエンジンのサブアセンブリとして規定され、このサブアセンブリの、隣接するモジュールとの境界面は、サブアセンブリを別々に搬送することを可能にするように、十分に的確である幾何学的特徴を示す。そのようなモジュールのアセンブリは、境界面における部品のバランシングおよびペアリングの操作を最小に低減することにより、完全なエンジンを構築することを可能にしている。
【0056】
そのようなモジュールは、本明細書で実現可能であり、そのファンシャフト4が、前述のタイプの減速歯車によって駆動される。
【0057】
上述の可動ホイール35により、さらに、ジェットおよびベアリングに圧力で供給し、ホイールが回転駆動されつつ、サブキャビティ内の流れと圧力との平衡を達成することが可能になり、それにより、ホイールの回転速度、および、このキャビティ内にオイルの柱(複数の場合もある)の高さに応じて、キャビティ37内に遠心力による圧力が生成されるようになっている。
【0058】
関連するオイル供給装置の動作を確実にするために、ホイールのサブキャビティ40a、40bには、手段33を介してオイルが供給され、それにより、潤滑オイルの最初の分配が、1つ(または先験的に2つ)のオイルレベル(複数の場合もある)47a、47bがそれゆえに前記サブキャビティ内に形成された状態(
図5参照)で、パーティション38を介してキャビティ37内に生じるようになっている。
【0059】
上昇または離陸の間などの、このことが必要とされる状況では、
図6で40bが付されているサブキャビティなどの、これらサブキャビティの1つには、軸Xに平行に、パーティション38を越えて、隣接するサブキャビティにオイルがあふれるまで過度に供給さえされる。オイルの流れを流出するために必要な圧力は、この場合、完全なホイールの圧力(
図5の状況)よりも高い。
【0060】
その後、あふれているサブキャビティの流量は、もはや増大しない。しかし、サブキャビティ40aの流量は、増大し続けている。供給セクション間の分配は、したがって、変更される。両方のサブキャビティがあふれている場合、ホイールから外にあふれる(
図7)。
【0061】
図5から
図7のような、短い内側パーティション38に対する代替形態により、このパーティションを上昇させることになり、通常は半径R2の位置において、前記内側パーティションを通り過ぎてオイルの通路を形成し、前記内側パーティションの位置において、サブキャビティ40a、40bの一方から、他方へあふれることを可能にすることに留意されたい。