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特許7041079スペクトル放射線ディテクターにおける改善された光子カウント
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】スペクトル放射線ディテクターにおける改善された光子カウント
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/36 20060101AFI20220315BHJP
   G01T 1/17 20060101ALI20220315BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20220315BHJP
【FI】
G01T1/36 D
G01T1/17 H
G01T1/17 B
A61B6/03 350D
A61B6/03 373
A61B6/03 320R
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018565402
(86)(22)【出願日】2017-06-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-07-25
(86)【国際出願番号】 EP2017064838
(87)【国際公開番号】W WO2017216378
(87)【国際公開日】2017-12-21
【審査請求日】2020-06-12
(31)【優先権主張番号】16174692.0
(32)【優先日】2016-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ステッドマン ブッカー ロジャー
(72)【発明者】
【氏名】レッスル エワルド
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-528901(JP,A)
【文献】国際公開第2008/146230(WO,A2)
【文献】国際公開第2008/146218(WO,A2)
【文献】特開2007-121189(JP,A)
【文献】特開2014-041143(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/00 -1/16
G01T 1/167-7/12
A61B 6/00 -6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光子を検知するための放射線ディテクターであって、前記放射線ディテクターは、
前記入射光子に応答して電気的な出力信号を提供する検出回路であって、前記出力信号が、前記入射光子により前記放射線ディテクターに蓄積されたエネルギーを表す振幅をもつパルスを含む電圧信号である、前記検出回路と、
前記入射光子のエネルギーを特定するために、前記出力信号があるエネルギー値に対応した少なくとも1つの閾値より大きいことを検出するエネルギー推定回路と、
前記少なくとも1つの閾値に対する前記出力信号の比較とは無関係に、前記入射光子を検出する検知回路であって、前記出力信号の極大値を検出及び/又はカウントする極大値ディテクターを備える、前記検知回路と、
を備え、
前記極大値ディテクターは、信号の電圧が増加したときに実質的に前記出力信号の値まで充電され、前記出力信号の値が低下したときにその電荷を保持するコンデンサを含むピークディテクター回路を備え、また、前記出力信号の値が前記コンデンサにかかる電圧より低下すると前記出力信号の極大値を検出する比較器回路を含む、放射線ディテクター。
【請求項2】
前記出力信号の値が前記コンデンサにかかる電圧より低下すると、前記コンデンサが放電される、請求項1に記載の放射線ディテクター。
【請求項3】
前記検出回路は、
変換要素に入射する光子に応答してパルス様電流信号を生成する前記変換要素と、
前記変換要素に結合され、前記パルス様電流信号に応答してステップ状信号部分を生成する積分増幅器と、
前記ステップ状信号部分を処理して前記出力信号を生成する整形器回路とを備える、請求項1に記載の放射線ディテクター。
【請求項4】
前記検知回路はさらに、前記積分増幅器により生成された信号のステップ状部分を入射光子として検出及び/又はカウントする、請求項3に記載の放射線ディテクター。
【請求項5】
複数の所定の光子エネルギー範囲の各々に対する入射光子の数及び/又はレートを出力し、前記光子エネルギー範囲は前記少なくとも1つの閾値に基づいて規定されている、請求項1に記載の放射線ディテクター。
【請求項6】
前記検知回路で検出された光子の数及び/又はレートをさらに出力する、請求項5に記載の放射線ディテクター。
【請求項7】
前記検知回路における光子の検出に基づいて、前記複数の所定の光子エネルギー範囲の各々に対する入射光子の数及び/又はレートを特定する、請求項5に記載の放射線ディテクター。
【請求項8】
前記出力信号が光子エネルギー範囲の下方境界に対応した閾値より大きい間に、前記検知回路で検出された光子の数に基づいて、1つの所定の光子エネルギー範囲に対する入射光子の数及び/又はレートを特定する、請求項7に記載の放射線ディテクター。
【請求項9】
検出された前記極大値を、前記極大値の検出時点の前記出力信号により交差される最も高い閾値に関連した光子エネルギー範囲に割り当て、前記極大値の検出に基づいて当該光子エネルギー範囲内のエネルギーをもつ光子を検出する、請求項1に記載の放射線ディテクター。
【請求項10】
請求項1に記載の放射線ディテクターを使用して光子を検出する方法であって、前記方法は、
前記検出回路の電気的な出力信号を受信するステップであって、前記出力信号が、入射光子により前記放射線ディテクターに蓄積されたエネルギーを表す振幅をもつパルスを含む電圧信号である、ステップと、
前記入射光子のエネルギーを特定するために、前記出力信号があるエネルギー値に対応した少なくとも1つの閾値より大きいことを検出するステップと、
さらに、検知回路において、前記少なくとも1つの閾値に対する前記出力信号の比較とは無関係に、前記入射光子を検出及び/又はカウントするステップであって、前記検知回路の極大値ディテクターが、前記出力信号の極大値を検出及び/又はカウントし、前記極大値ディテクターは、信号の電圧が増加したときに実質的に前記出力信号の値まで充電され、前記出力信号の値が低下したときにその電荷を保持するコンデンサを含むピークディテクター回路と、比較回路とを含む、ステップとを有し、
前記出力信号の値が前記コンデンサにかかる電圧より低下すると、前記比較器回路が前記出力信号の極大値を検出する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、スペクトル放射線ディテクターに関する。より具体的には、本発明は、入射光子を検出するための放射線ディテクター、及び、この放射線ディテクターを使用して光子を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆるスペクトル又は光子カウントx線ディテクターは、入射x線光子を個々に検出し、(特定のエネルギー範囲に対応した)所定のエネルギービンに従って入射x線光子のエネルギーを特定することを可能にする。この目的のために、ディテクターは、光子が材料に入るたびにパルス様電流信号を生成する直接変換材料を含み、電流パルスは、光子エネルギーを表す電荷量に対応する。連続的に到達する光子の電流信号は、ディテクターの読み取り電子機器で処理されて、パルス列を含む出力信号を生成し、パルス列中で、各イベント(例えば入射光子)は、特定の幅と入射光子のエネルギーに比例した振幅とをもつパルスに対応する。
【0003】
出力信号内のパルスを検出することができ、そして、入射光子をカウントしてこれらの光子に対するエネルギービンを決定するために、パルスの振幅を閾値と比較することができる。この目的を達成するために、出力信号がそれぞれのエネルギービンの下方境界に対応した閾値を上回ったときにインクリメントされるカウンターを含む回路が、各エネルギービンに関連付けられる。カウンター出力に基づいて、エネルギービン当たりの入射光子のレートを特定することが可能である。このレート情報は、この情報に基づいてx線画像を生成する再現ユニットに提供される。
【0004】
前述の出力信号の評価では、信号がパルス間において所定の閾値のうちの1つ又は複数の閾値未満に立ち下がらないような形態で、連続した光子に対するパルスが出力信号において重なったときに問題が発生する。これはパイルアップとしても知られる。パイルアップが起こると、パルスを互いに区別することができず、1つの単一パルスとしてカウントされる。この結果、未カウントが発生し、それに対応するアーチファクトが生成された画像に生じる。
【0005】
このようなアーチファクトは、エネルギービンそれぞれに特定された個々の光子レートに基づいて生成されるスペクトルx線画像の質を損なう。
【0006】
さらに、光子カウントディテクターは、特定の用途における特定されたエネルギー情報とは無関係に従来のx線画像を生成するために使用され得る。このような画像は、(最低閾値、すなわち最低エネルギービンの下方境界に対応した閾値より高い出力信号内のパルスを生成する光子のレートに対応した)すべてのエネルギービンに対して特定された全体的な光子レートに基づいて生成される。さらにこれらの画像は未カウントによる影響を受ける。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
未カウントの数が減らされるように、光子カウント放射線ディテクターを改善することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様において、本発明は、入射光子を検知するための放射線ディテクターを提案し、本放射線ディテクターは、(i)入射光子に応答して電気的な出力信号を提供するように構成された検出回路であって、出力信号が、入射光子により放射線ディテクターに蓄積されたエネルギーを表す振幅をもつパルスを含む、検出回路と、(ii)入射光子のエネルギーを特定するために、出力信号があるエネルギー値に対応した少なくとも1つの閾値より大きいことを検出するように構成されたエネルギー推定回路と、を備える。放射線ディテクターは、少なくとも1つの閾値に対する出力信号の比較とは無関係に、入射光子を検出するように構成された検知回路をさらに備える。
【0009】
放射線ディテクターは、どの光子エネルギーが特定されるかに基づく少なくとも1つの閾値に対する比較とは無関係に、入射光子を検出するように構成されるので、この比較に基づく光子検出の欠点を伴わずに入射光子を検出することが可能である。これは、未カウントの数を減らすことを可能にする。
【0010】
一実施形態において、検出回路は、(i)変換要素に入射する光子に応答してパルス様電流信号を生成する変換要素と、(ii)変換要素に結合され、パルス様電流信号に応答してステップ状信号部分を生成する積分増幅器と、(iii)ステップ状信号部分を処理して前述の出力信号を生成するように構成された整形器回路とを備える。検知回路は、整形器回路の出力信号に基づいて、及び/又は、増幅器の出力信号に基づいて、入射光子を検出する。
【0011】
検知回路が整形器回路の出力信号に基づいて入射光子を検出したとき、検知回路は、出力信号の極大値を検出及び/又はカウントするように構成された極大値ディテクターを特に備える。(閾値の交差の代わりに)出力信号の極大値を検出することにより、これらのパルスが重なって出力信号がパルス間に特定の値未満に立ち下がらないときに、出力信号のパルス同士を区別することが特に可能となる。従って、出力信号内にこのようなパルスを生成する入射光子は別々に検出され得る。特に、各極大値が入射光子として検出及び/又はカウントされる。
【0012】
さらなる一実施形態において、出力信号は電圧信号であり、極大値ディテクターは、信号の電圧が増加したときに実質的に出力信号の値まで充電され、出力信号の値が低下したときにその電荷を保持するコンデンサを含むピークディテクター回路を備える。
【0013】
さらなる一実施形態において、極大値ディテクターは、出力信号の値がコンデンサにかかる電圧未満に低下したときに入射光子を検出するように構成された比較器回路を含む。この状況は、極大値の発生後に出力信号が低下したときに発生する。従って、比較器は、このような状況を検出することにより出力信号の極大値を検出し得る。
【0014】
さらに、一実施形態は、出力信号の値がコンデンサにかかる電圧未満に低下したとき、コンデンサが放電されることを含む。これは、出力信号の極大値の発生後、コンデンサが放電又は「リセット」されることを意味する。放電された後、コンデンサは、出力信号の次の極大値の検出を可能にするために、上述のように再度充電され得る。
【0015】
検知回路が積分増幅器の出力信号に基づいて入射光子を検出したとき、検知回路は、積分増幅器により生成された信号のステップ状部分を入射光子として検出及び/又はカウントするように特に構成される。この実施態様において、積分増幅器の出力信号は、入射光子を検出するために、整形器の前述の出力信号の代わりに、又は整形器の前述の出力信号に加えて使用される。通常、積分増幅器の出力信号は、入射光子のより速い検出を可能にする。しかし、それはノイズの影響をより大きく受ける。従って、積分増幅器の出力信号は、信頼性の高い検出よりも速い検出が重要な用途で入射光子を検出することに対して特に評価される。
【0016】
一実施形態において、放射線ディテクターは、複数の所定の光子エネルギー範囲の各々に対する入射光子の数及び/又はレートを出力するように構成され、光子エネルギー範囲は、少なくとも1つの閾値に基づいて規定されている。関連する実施形態において、放射線ディテクターは、検知回路で検出された光子の数及び/又はレートをさらに出力するように構成される。
【0017】
さらなる関連する実施形態において、放射線ディテクターは、検知回路における光子の検出に基づいて、複数の所定の光子エネルギー範囲の各々に対する入射光子の数及び/又はレートを特定するように構成される。特に、放射線ディテクターは、出力信号がエネルギー範囲の下方境界に対応した閾値より大きい間に検知回路で検出された光子の数に基づいて、1つの所定のエネルギー範囲に対する入射光子の数及び/又はレートを特定するように構成される。
【0018】
さらなる一実施形態において、放射線ディテクターは、検出された極大値を、極大値の検出時点に出力信号により交差される最も高い閾値に関連したエネルギー範囲に割り当て、極大値の検出に基づいて前記範囲内のエネルギーをもつ光子を検出するように構成される。各閾値及び関連付けられたエネルギー範囲の各々に対して、関連付けられた比較器が、出力信号が閾値を上回っているか否かを確認する。従って、極大値は、極大値の発生時点においてゼロより大きな値をもつ信号を出力する比較器に関連付けられた最高エネルギー範囲に割り当てられる。
【0019】
さらなる一態様において、本発明は、請求項1に規定される放射線ディテクターを使用して光子を検出する方法を提案する。本方法は、(i)検出回路の電気的な出力信号を受信するステップであって、出力信号が、入射光子により放射線ディテクターに蓄積されたエネルギーを表す振幅をもつパルスを含む、ステップと、(ii)入射光子のエネルギーを特定するために、出力信号があるエネルギー値に対応した少なくとも1つの閾値より大きいことを検出するステップと、(iii)さらに、少なくとも1つの閾値に対する出力信号の比較とは無関係に、入射光子を検出及び/又はカウントするステップとを有する。
【0020】
請求項1に記載の放射線ディテクター、及び請求項13に記載の方法は、特に従属請求項において規定されるように、同様の、及び/又は同一の好ましい実施形態を含むことが理解されなければならない。
【0021】
本発明の好ましい実施形態は、さらに従属請求項又は上述の実施形態とそれぞれの独立請求項との任意の組み合わせであり得ることが理解されなければならない。
【0022】
本発明のこれらの態様及び他の態様が、以下で説明される実施形態から明らかとなり、以下で説明される実施形態を参照しながら説明される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明による放射線ディテクターを備えるコンピュータ断層撮影イメージングデバイスを概略的かつ例示的に示す図である。
図2】放射線ディテクターのディテクター要素を概略的かつ例示的に示す図である。
図3a】放射線ディテクターのディテクター要素の動作のシミュレーションの結果を概略的かつ例示的に示す図である。
図3b】放射線ディテクターのディテクター要素の動作のシミュレーションの結果を概略的かつ例示的に示す図である。
図3c】放射線ディテクターのディテクター要素の動作のシミュレーションの結果を概略的かつ例示的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、個々の入射x線光子を検出すること、及び、所定のエネルギー範囲又はビンに従って入射x線光子のエネルギーを特定することが可能なスペクトル又は光子カウント放射線ディテクター1を概略的かつ例示的に示す。示される実施形態において、放射線ディテクター1は、医療又は他の目的のために物体の三次元画像を生成するためのコンピュータ断層撮影(CT:computed tomography)イメージングデバイス2に含まれる。しかし、放射線ディテクター1は、CTイメージング以外の他の用途においても同様に使用され得る。
【0025】
以下でさらに詳細に説明されるx線ディテクター1に加えて、CTイメージングデバイス2は、イメージングされる物体を含む放射源3と放射線ディテクター1との間の検査領域5を横断するx線ビーム4を生成する、x線管などの放射源3を備える。検査領域を横断したx線の放射は、放射線ディテクター1により収集される。放射線ディテクター1及び放射源3は、検査領域5内に位置する物体の周囲を回転され得る回転可能ガントリー6上の対向する位置に搭載される。さらに、物体及びガントリー6は、ガントリー6の軸方向(z方向)に互いに対して動かされ得る。従って、ガントリー6が物体の周囲において回転されるとき、異なる角度的投影が獲得され得、その際、各投影は、イメージングされる物体に対する放射源3及び放射線ディテクター1の1つの角度位置に対応し、物体及びガントリー6をz方向に互いに対して動かすことにより、物体の異なるいわゆるスライスがイメージングされ得る。
【0026】
放射線ディテクター1は再現ユニット7に結合され、再現ユニット7は、放射線ディテクター1により収集された測定データに基づいて三次元CT画像を再現し、再現ユニット7により行われるルーチンを実施するコンピュータプログラムを実行する1つ又は複数のプロセッサユニットを備えるコンピュータデバイスとして構成される。放射線ディテクター1により提供される測定データは物体の投影であり、画像は当業者にそのようなものとして知られている手法により、これらの投影から再現され得る。
【0027】
放射線ディテクター1により検出された光子のエネルギーに関する情報を使用することにより、再現ユニット7はスペクトルCT画像を生成することができる。その際、再現ユニット7は、各エネルギービンに対するサブ画像を生成する。これらのサブ画像はさらに別々に処理又は評価されるか、又は、再現ユニット7が、例えばサブ画像のエネルギーに依存した重み付けに基づいて、サブ画像を組み合わせて、組み合わされた画像を形成する。加えて、再現ユニット7は、光子エネルギーに由来する情報を含まない従来のCT画像を生成するように構成される。CTデバイス2を使用して行われる各CTスキャンに対して、再現ユニット7は、特にCT画像の意図されるさらなる評価に応じて、1つ又は複数のスペクトルCT画像、従来のCT画像、又はスペクトル画像と従来の画像との両方を生成する。
【0028】
説明したように、放射線ディテクター1は単一の入射x線光子を検出するように適応され、多くの既定のエネルギービンに従ってそれらのエネルギーを特定することを可能にする。この点で、放射線ディテクター1に入射する光子は、ディテクター電極にドリフトする電荷担体(電子及び孔)の電荷雲を生成し、電荷量は、入射x線光子のエネルギーに依存する。生成された電荷は放射線ディテクター1の読み取り電子機器により収集され、続いて読み取り電子機器が電気信号(例えば電圧信号)を生成し、電気信号の振幅は、当たるx線光子のエネルギーに比例する。この信号に基づいて、読み取り電子機器は光子エネルギーを特定することが可能である。加えて、読み取り電子機器は本明細書において以下で説明されるように、入射光子のレートを特定するように構成される。
【0029】
より具体的には、放射線ディテクター1は、好ましくは、平ら又は凹状であるアレイ状に配置された、通常タイルとも呼ばれる複数のディテクター要素201を備える。従って、ディテクター要素201は、互いに実質的に直交するように配置された行及び列の形態で配置される。図2に概略的かつ例示的に示されるように、各ディテクター要素201は、X線を電気信号に変換するための変換器要素202と、変換器要素202に結合された読み取り電子機器とを備える。読み取り電子機器は、例えば変換器要素202のアノード側に装着されたCMOS ASIC構造物内に実施される。
【0030】
変換器要素202は、カソード接点組立体203とアノード接点組立体204との間に提供され、半導体材料から作られる。適切な半導体材料として、例えば、テルル化カドミウム(CdTe)、テルル化カドミウム亜鉛(CdZnTe)、セレン化カドミウムテルル(CdTeSe)、CdZnTeSe、テルル化カドミウムマンガン(CdMnTe)、シリコン(Si)、ガリウムヒ素(GaAs)、ペロブスカイト、及びヨウ化水銀(HgI)が挙げられる。動作時、変換器要素202内でカソード接点組立体203とアノード接点組立体204との間に電界が形成されるように、カソード接点組立体203が全体的にアノード接点組立体204より低い電位に保たれる(すなわちアノード接点組立体204に対する負のバイアス電圧がカソード接点組立体203に印加される)。X線光子は、カソード接点組立体203を通して変換器要素202に入る。
【0031】
変換器要素202は、実質的に立方体のブロックとして構成され、その横寸法は厚さよりもはるかに大きい。電界が変換器要素202の小さい方の厚さ方向に沿って延びるように、カソード接点組立体203及びアノード接点組立体204は、変換器要素202の大きな上側及び底側に接続される。さらに、カソード接点組立体203は、変換器要素202上に付加された薄い金属化薄膜により形成される連続的なカソード電極として構成される。
【0032】
対照的に、アノード接点組立体204は、互いに対して特定の距離に配置された、及び通常アノードピクセルとも呼ばれるピクセル状アノード電極205、すなわち分離したアノード電極205を含む。一実施形態において、これらのアノードピクセル205はさらに、変換要素202の表面上において互いに実質的に直交した行及び列に配置される。アノード電極又はピクセル205は、変換器要素202に入射する光子により生成された電荷を収集し、各アノードピクセルは、結果として得られる電流を収集して、測定データを特定する読み取り電子機器に接続され、測定データは続いて再現ユニット7に提供される。
【0033】
x線光子が変換器要素202に入ったとき、x線光子が半導体材料を励起することにより、電荷担体(電子及び孔)を生成する。負の電荷担体が、変換器要素202内で電界の影響を受けてアノード電極205のうちの1つにドリフトし、読み取り電子機器により収集されるパルス様電気信号を生成する。
【0034】
各アノード電極205に対して、読み取り電子機器が、各パルス(すなわち各入射x線光子)にわたって入力電流を積分する、及び対応するステップ状出力電圧信号を生成する電荷感応増幅器などの増幅器206を含み、ステップの高さが積分された電荷に対応し、結果として、変換器要素202内に蓄積された光子エネルギーに対応する。増幅器出力信号は好ましくは、いわゆるパルス整形器回路207内においてフィルタ処理されて電圧信号を生成し、その際、増幅器206により生成された各ステップは、特定の幅と徐々に丸みを帯びた極大値とをもつパルスに対応し、その振幅は、ステップの高さに(すなわち、入射x線光子により生成された電荷雲の積分された電荷に)比例し、結果として入射光子のエネルギーに比例する。この目的のために、パルス整形器回路207は特にパルスの持続期間を設定する。従って、パルス整形器回路207は、非常に長い減衰時間をもつパルスに対応した、増幅器206のステップ状出力信号の減衰時間を制限する。加えて、パルス整形器回路207は、ステップ状増幅器出力信号の立ち上がり時間を伸ばす。
【0035】
さらに、読み取り電子機器は、2つ以上の比較器208、…、208を備え、各比較器208、…、208は、整形器回路207の出力信号を関係する所定の閾値S(i=1,…,N)と比較して、整形器回路207の出力が閾値Sを上回った場合に(のみ)、ゼロより大きな出力信号を生成する。これらの比較器208…、208の閾値Sは、前述のエネルギービンの境界を表す。それらは、特定のエネルギービンに対応した範囲内のエネルギーをもつ光子に対応した整形器回路207の出力信号内のパルスが、エネルギービンに対する上方及び下方の境界に対応した閾値間の振幅をもつように選択される。閾値Sの対応する構成は、当業者にそのようなものして知られている手法により実行されるx線デバイス2の校正手順の範囲内で提供される。
【0036】
従来、各比較器208、…、208の出力は、比較器208、…、208において検知された光子の数をカウントするための関連付けられたカウンター209、…、209に接続される。この目的を達成するために、各カウンター209、…、209が、関連付けられた比較器208…、208の出力信号の立ち上がりエッジをカウントする。カウントされた光子数に基づいて、読み取り電子機器は、各エネルギービンに対する光子検知のレート(すなわち単位時間間隔当たりの光子検知の数)を特定する。
【0037】
この構成によれば、検出された光子の各々が、そのエネルギーに対応したエネルギービンに関連した、及びより低いエネルギービンに関連したカウントを生成する。従って、特定のエネルギービン内における検出された光子のレートは、エネルギービンに対する光子検知のレート間の差に基づいて特定され得る。特に、最高エネルギービンに対する光子レートは、このエネルギービンのエネルギーをもつ検知された光子の数に対応する。より低いエネルギービンのエネルギーをもつ検知された光子の数は、次に高いビンのエネルギーをもつ光子の数と、それぞれのエネルギービンに対するカウントとの間の差に基づいて特定され得る。
【0038】
このような手法により、エネルギービン当たりの入射光子の検出されたレートが特定され得る。この特定は、読み取り電子機器においてなされ、及び特定されたレート情報は、読み取り電子機器の処理回路210を介して再現ユニット7に提供される。代替的に、各エネルギービンに対する光子検知のレートは、再現ユニット7に提供され、再現ユニット7は、上述のように、エネルギービン当たりの光子のレートを特定する。
【0039】
エネルギービン当たりの光子レートに基づいて、再現ユニット7は、エネルギービンに対応したエネルギー範囲の各々に対して、検査領域5内に位置する物体のスペクトル画像を再現する。これらの画像は、さらに別々に評価されるか、又は組み合わされて単一のx線画像を形成する前述のサブ画像に対応する。さらに、再現ユニット7はさらに、数及び/又はレート情報に基づいて、従来の画像を生成し得る。この目的のために、すべてのエネルギービンに対する光子レートの和に対応した全体的な光子レートが特定され、画像は、この全体的な光子レートに基づいて生成される。
【0040】
上述の読み取り電子機器を含む放射線ディテクター1は、より低い入射光子レートを高い信頼性で特定し得る。しかし、光子は、カウントされないか、又は、より高い入射光子レートの場合に誤ったエネルギービンに関連付けられる場合がある。これは、スペクトル画像の生成と従来のCT画像の生成との両方に影響を与える。
【0041】
このような未カウント又は不適正に分類されたカウントの1つの理由は、整形器回路207の出力信号が関連する比較器208、…、208に割り当てられた閾値を閾値未満の値から閾値を上回る値まで交差したときに、個々の光子がカウンター209、…、209の各々により検知されるのみであることである。従って、(正しいエネルギーをもつ)カウンター209、…、209における光子の検知は、連続した入射光子に対応した2つのパルス間に整形器回路207の出力信号がゼロに、又は少なくとも最低閾値未満に低下することを必要とする。これは、変換要素202、増幅器206、及び整形器207が連続した光子を分解し得る場合(すなわち、整形器207の出力信号が光子に対応した独立したピークを含む場合)でも、整形器207の出力信号内のパルスが重なって信号がパルス間に関連する閾値未満に低下しない場合があるので、より高い光子レートに対しては当てはまらない場合がある。
【0042】
この問題を解決するために、放射線ディテクター1は、それらのエネルギー、及び比較器208、…、208に関係した前述の閾値と無関係に、入射光子を検知するための検知回路211を備える。一実施態様において、検知回路は、検知回路211が入射光子を検出した時点におけるパルスを含む出力信号を提供する。好ましくは、これらのパルスは、高い光子レートの場合にパルスに重ならないように比較的狭い。その一方で、パルスは、検知回路211の出力信号の後続の処理において高い信頼性で検出されるのに十分に幅広い。
【0043】
この点で、検知回路211の出力信号のパルスは、入射光子の全体的な数又はレートを特定するために、カウンター212によりカウントされる。この場合、カウンター209、…、209により特定されたエネルギービンに対するレート情報に加えて、全体的なレート情報が放射線ディテクター1により出力されて、再現ユニット7に提供される。全体的なレート情報の追加のみを使用して、再現ユニット7が一実施形態において従来のCT画像を生成する。スペクトルCT画像は、上述のように従来の手法で特定されたエネルギービンに対するレート情報に基づいて生成される。
【0044】
さらなる一実施形態において、読み取り電子機器は、検知回路211により提供される出力信号に基づいて、エネルギービンに対する光子レートを特定する。特に、読み取り電子機器は、検知回路211の出力信号の各パルスを、1つ又は複数のエネルギービン割り当て、エネルギービンに割り当てられたパルスの数に基づいて、エネルギービンに対する光子レートを特定する。そのようにするに当たり、読み取り電子機器は、検知回路211の出力信号のパルスを、パルスが発生した時点においてゼロより大きな値をもつ信号を出力する比較器208、…、208に関係した最高エネルギービンに割り当てる。ここまでの説明から明らかなように、このエネルギービンは、整形器回路207の出力信号に基づいて特定された光子のエネルギーに対応する。本関係は、処理回路210で実施される対応するアルゴリズムに基づいて、読み取り電子機器の処理回路210において特定される。本関係が検知回路211の出力信号の各パルスに対して(すなわち検知された各光子に対して)作製されたとき、読み取り電子機器は、各エネルギービンに対する入射光子の数と、各エネルギービンに対する対応する光子レートとを特定し得る。カウンター209、…、209は、この特定には不要とされ得る。
【0045】
エネルギービンに対する特定されたレート情報は、再現ユニット7がこの情報に基づいてスペクトルCT画像を生成するように、再現ユニット7に提供され得る。加えて、放射線ディテクター1は、上述のようにカウンター212を使用して特定される全体的なレート情報を提供する。全体的なレート情報に基づいて、再現ユニット7が従来の画像を生成する。同様に、再現ユニット7は、従来の画像を特定するために、個々のエネルギービンに対するレート情報に基づいて全体的なレート情報を判定する。この場合、放射線ディテクター1は、一実施態様においては出力信号として全体的なレート情報を提供しない。
【0046】
検知回路211及びカウンター212により提供された信号に基づいて特定されたレート情報を使用して、変換要素202、増幅器206、及び整形器回路207によって分解できる光子イベントのレートが検出され得る。しかし、入射光子レートは、変換要素202、増幅器206、及び整形器回路207の分解能を上回る。特に、短い期間内に到達する2つ以上の光子は、このような光子に関連した独立したパルスピーク同士を区別することが不可能であるような、光子の全体的なエネルギーに対応した単一パルスを生成する。この場合、検知回路211及びカウンター212により提供された信号に基づいて特定された光子レートは、より高い入射光子の真のレートに対応しない。さらに、この場合、光子が光子エネルギーより高いエネルギーに対応した振幅をもつ単一パルスを生成するので、光子エネルギーが比較器208、…、208の出力から直接的に導き出されることはできない。
【0047】
この場合、正確な従来の画像及び/又はスペクトル画像を生成することができるように、入射光子の真のレートは、入射(高い)光子フラックスに対する放射線ディテクター1の応答を説明するモデルに基づいて、放射線ディテクター1の読み取り電子機器により、又は再現ユニットにより推定される。このようなディテクターモデルを使用して、この推定に基づいて従来のx線画像を生成するために真の全体的な光子レートが推定され、及び/又は、スペクトル画像を生成するために、各エネルギービンに対して真の光子レートが推定される。エネルギービンに対する真の光子レートを推定するために、比較器208、…、208の出力信号に基づいて、光子のエネルギーが推定される。この推定は、真の光子レートの推定に加えて、整形器回路207の出力信号の振幅の値をさらに考慮に入れた、対応して拡張されたディテクターモデルを使用して行われる。
【0048】
真の光子レートを特定するために、適用されるモデルは、入射光子フラックスに対する検知回路211及びカウンター212の応答を特に説明する。検知回路は入射光子のエネルギーと無関係に入射光子を検知するので、この応答は入射フラックスの単調関数である。これは、複雑さの比較的低いモデルを使用することを可能にする。使用される1つの例示的なモデルが、E.Roesslら、「On the analogy between pulse-pile up in energy sensitive, photon counting detectors and level-crossing of shot noise」、Proc.SPIE 9783、Medical Imaging 2016:Physics of Medical Imaging、97831H(2016年3月25日);doi:10.1117/12.2216909の刊行物において説明される。この刊行物は、入射光子フラックスに応答するディテクター信号のレベル交差に対するモデルを開示する。関連するディテクター信号として整形器回路207の出力信号の時間微分を考慮したとき、及び、値ゼロの下向きの交差を考慮したとき、検知回路211がこの時間微分の下向きのゼロ線交差を効果的に検知するので、このモデルは、入射光子フラックスに対する検知回路211の応答に適用され得る。
【0049】
このようなモデルを使用すると、真の入射光子レートは、上述のように全体的な光子レート及び/又は個々のエネルギービンに対する光子レートに対する、検知回路211及びカウンター212により提供された信号に基づいて特定されたレート情報を使用して推定される。加えて、光子の真のエネルギーが推定される。この目的のために、比較器208、…、208の出力信号が考慮され、これらの出力信号と特定される光子エネルギーとの間の関係を説明するようにモデルが拡張される。
【0050】
一実施形態において、検知回路211は、整形器回路207の出力信号の極大値を検出するように構成された極大値ディテクターとして構成され、検出された極大値の各々が光子イベントとみなされる。上述のように極大値の検出をさらに評価するために、極大値ディテクターは、整形器回路207の出力信号の極大値の各発生時における狭パルスを含む出力信号を提供する。
【0051】
図2に概略的かつ例示的に示される本実施形態の一実施態様において、検知回路211は、整形器回路207の出力信号を受信するピーク保持器回路213を備える。ピーク保持器回路213は、整形器回路207の電圧が増加するとき、整形器回路207の出力信号の値まで充電され、整形器回路207の出力信号の値が低下するとき、特定の時間長にわたってその電荷を保持するコンデンサ214を含む。以下の説明から明らかとなるように、コンデンサにかかる電圧の実際の値は検知回路211において評価されない。これは特に、コンデンサ214の抵抗と結果として生じる電荷漏れとが実質的に無関係であることを意味する。コンデンサ214は、従って、例えば数フェムトファラッドの範囲内の小さなキャパシタンスをもち得る。このようなコンデンサ214は、コンデンサ電圧が整形器回路207の出力信号の値に近接して追従するように、迅速に充電及び放電され得る。
【0052】
コンデンサ214を充電するために、整形器回路207の出力信号は、演算増幅器215の非反転入力に供給され、コンデンサは、演算増幅器及びさらなるコンポーネントの出力を介して充電される。コンデンサ電圧は、閉ループが確立されるように、演算増幅器215の反転入力にさらに提供される。このような構成において、演算増幅器215は、入力における電圧間、すなわち整形器回路7の出力信号の値とコンデンサ電圧との間の差がゼロになるように、その出力を制御しようとする。整形器回路207の出力信号の値がコンデンサ電圧より大きいときに、演算増幅器215の出力信号がコンデンサ214の充電をもたらし、整形器回路207の出力信号の値がコンデンサ電圧より小さい場合に、演算増幅器215の出力信号がコンデンサ電圧を変えないように、さらなるコンポーネントが選択される。
【0053】
図2に示される実施態様において、さらなるコンポーネントはトランジスタ216であり、特に接合ゲート電界効果トランジスタ(JFET:junction gate field-effect transistor)である。このさらなるコンポーネントを介して、コンデンサ214が電圧源(Vdd)に接続される。演算増幅器の出力は、トランジスタ216のゲート接点に接続され、トランジスタは、演算増幅器215の入力に正の電圧差が現れた場合(すなわち、整形器回路207の出力信号がコンデンサ電圧より大きい場合)、コンデンサ214がさらに充電されるように導通状態となるように、演算増幅器215の出力信号がトランジスタ216を制御し、演算増幅器215の入力に負の電圧差が現れた場合、(トランジスタ216が導通しないように)演算増幅器215の出力信号がトランジスタ216をオフにスイッチングするように構成される。
【0054】
さらなる可能な実施態様において、さらなるコンポーネントは、異なる手法で構成され得る。例えば、さらなるコンポーネントは、ダイオードであり、演算増幅器215の出力は、ダイオードを介してコンデンサ214に接続される。従って、コンデンサ214は、演算増幅器214の入力に正の電圧差が現れた場合、演算増幅器214の出力を介して充電され得、ダイオードは、演算増幅器214の入力に負の電圧差が現れた場合、コンデンサ214の放電を防ぎ得る。
【0055】
加えて、本実施形態の検知回路211は、整形器回路207の出力信号の値とコンデンサ214にかかる電圧とを比較する比較器217を備える。コンデンサ電圧が整形器回路207の出力信号の値より小さいとき、比較器217はゼロ信号を出力する。コンデンサ電圧が整形器回路207の出力信号の値より大きいとき、(すなわち極大値の発生後に電圧出力信号が低下し始めたとき)、比較器217は、ゼロより大きな信号を出力する。
【0056】
比較器217の出力信号はさらにコンデンサ214を短絡させ得るスイッチ218を制御する。スイッチ218は、比較器217の出力信号がゼロより大きい場合にスイッチ218が閉じられ(すなわち導通し)、比較器217の出力信号がゼロ以下の場合にスイッチ218が開けられる(すなわち非導通となる)ように制御される。従って、比較器217の出力信号がゼロより大きくなったとき、すなわち、整形器回路207の出力信号の極大値が検出されたとき、コンデンサ214が放電又は「リセット」される。その結果、コンデンサ214は、整形器回路207の出力信号の次の極大値が発生するまで再度充電され得る。さらに、比較器217の出力信号は(放電されたコンデンサ214に起因して)再度ゼロになる。
【0057】
従って、比較器217は、整形器回路207の出力信号の極大値の各発生時にパルスを出力する。
【0058】
図3a~図3cにおいて、前述の実施形態における検知回路211を備える読み取り電子機器の動作のシミュレーションの結果が概略的かつ例示的に示される。
【0059】
図3aは、100keVのエネルギーをもつ61個の入射光子のシーケンスを示し、各光子イベントがパルスにより示される(1つのパルスに符号301が付されている)。さらに、図3aは、入射光子に応答して生成された整形器回路207の出力信号302を示す。図3aから理解され得るように、整形器回路207の出力信号は特定の幅をもつパルスを含み、各パルスは、1つの入射光子に対応するか、又は、(いわゆるパイルアップ効果に起因して)変換要素202、積分増幅器206、及び整形器回路207において分解することが不可能であることにより、より高いエネルギーをもつ単一のイベントとして検知される多くの入射光子に対応する。さらに、信号302内のパルスのうちのいくつかは重なっており、そのため信号302がこれらのパルス間においてゼロに低下しない。
【0060】
図3bは、25keVの光子エネルギーに対応した信号の電圧302と閾値Sとを比較する比較器208、…、208のうちの1つの出力信号303を示す。図3bから理解され得るように、信号302がこのような光子に対応したパルス間において閾値未満に低下しないとき、信号303では、光子同士を区別することができない。その結果、13個の光子イベントを検出する可能性があり、変換要素202、積分増幅器206、及び整形器回路207により分解できる(すなわち、信号302の極大値を生成する)すべての光子イベントを検出することは不可能である。
【0061】
図3cは、信号302の極大値を検出する検知回路211の出力信号304を示す。図3cから理解され得るように、変換要素202、積分増幅器206、及び整形器回路207において分解され得るすべての光子を検出することが可能である。図3aに示される光子のシーケンスの場合、これは、26個の光子イベントを検出することが可能であることを意味する。従って、検知回路211の出力信号304に基づいて、比較器208、…、208の出力信号303に基づく場合よりもさらに大幅に多い光子を検出することが可能である。入射光子の真の数(図3に示される例では61)を推定するために、ディテクターモデルが上述のように使用される。
【0062】
さらなる一実施形態において、検知回路211は、入射光子の数を特定するために、整形器回路207の出力信号を処理しない。むしろ、検知回路211は、電荷感応増幅器206の出力信号を処理する。上述のように、この信号は、各光子イベントにおいてステップを含む(ステップの高さは光子エネルギーを表す)。この信号を評価して光子イベントを検出するために、検知回路211は、電荷感応増幅器206の出力信号内でこのようなステップを検出し、(上述の実施形態において見られるように)このようなステップが検出された場合に狭パルスを出力するように構成される。この目的を達成するために、本実施形態の検知回路211はコンデンサを備え、コンデンサの電圧は、特定の小さな遅延を伴って積分増幅器206の出力信号の値に追従する。比較器を備える回路は、ステップを検出するために、コンデンサ電圧と積分増幅器206の出力信号の値とを比較し、対応する出力信号を生成する。
【0063】
積分増幅器206の出力信号は、整形器回路207の出力信号と比べて処理遅延の影響を受けにくいので、積分増幅器の出力信号の評価は、光子が放射線ディテクター1に入る時点のより正確な(すなわちより速い)検出を可能にする。しかし、積分増幅器206の出力信号は通常、ノイズの影響をより大きく受けるので、積分増幅器206の出力信号を評価するときに誤検出が増加する。
【0064】
開示される実施形態に対する他の変形例が、図面、本開示、及び付属の請求項の考察により、請求項に記載された発明を実施する当業者により理解及び実現され得る。
【0065】
特許請求の範囲において、「備える(comprising)」という用語は、他の要素もステップも排除せず、「1つ(a)」又は「1つ(an)」という単数表現の不定冠詞は、複数を排除しない。
【0066】
コンピュータプログラムは、他のハードウェアと一体的に又は他のハードウェアの一部として供給される光記憶媒体又はソリッドステート媒体などの適切な媒体に記憶/分散されるが、インターネット又は他の有線若しくは無線電気通信システムを介することなどにより、他の形態でも分散される。
【0067】
特許請求の範囲における参照符号は、いずれも特許請求の範囲を限定するように解釈されてはならない。
図1
図2
図3a
図3b
図3c