(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】車両情報送信装置、コンピュータプログラム及び車両情報送信方法
(51)【国際特許分類】
H04W 28/06 20090101AFI20220315BHJP
H04W 4/44 20180101ALI20220315BHJP
H04W 4/46 20180101ALI20220315BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20220315BHJP
G08G 1/01 20060101ALI20220315BHJP
H04W 88/04 20090101ALI20220315BHJP
【FI】
H04W28/06
H04W4/44
H04W4/46
G08G1/09 H
G08G1/01 A
H04W88/04
(21)【出願番号】P 2019177000
(22)【出願日】2019-09-27
【審査請求日】2021-07-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】上野 高明
(72)【発明者】
【氏名】大岸 智彦
【審査官】桑原 聡一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-217371(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24-7/26
H04W 4/00-99/00
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される車両情報送信装置において、
車車間通信により車両情報を送受し、受信した車両情報を一定期間保持する情報交換部と、
車両情報を管理サーバへ送信する車両情報送信タイミングにおいて前記情報交換部が保持する車両情報を、移動通信ネットワークを介して前記管理サーバへ送信する送信部と、を備え、
前記情報交換部は、自車両の車両情報を自車両情報送信周期で車車間通信により送信し、
前記情報交換部は、他の車両から車車間通信により受信した車両情報を一定期間保持し、前記情報交換部に保持された時刻から当該一定期間が経過した車両情報を削除し、
前記情報交換部は、前記情報交換部に既に保持されている車両情報と同じ車両の車両情報を受信した場合に、新たに受信した車両情報を前記情報交換部に既に保持されている当該車両の車両情報に上書きし、
前記送信部は、車両情報送信周期を繰り返し計測するカウンタを備え、
前記送信部は、車両情報送信周期になると、自車両の車両情報と前記情報交換部に保持される全ての他の車両の車両情報とを、移動通信ネットワークを介して前記管理サーバへ送信し、
前記情報交換部は、前記送信部による前記管理サーバへの車両情報の送信が完了すると、前記情報交換部に保持される全ての車両情報を削除し、
前記送信部は、前記管理サーバへ車両情報を送信したことを示す送信完了通知を車車間通信により送信し、
前記送信部は、車車間通信により他の車両から前記送信完了通知を受信した場合に、
前記カウンタをリセットする、
車両情報送信装置。
【請求項2】
前記送信部は、
前記車両情報送信周期を、前記情報交換部で保持される車両情報の送信元の車両台数と自車両の走行速度とのうち少なくとも一方に基づいて変更し、
変更後の車両情報送信周期を車車間通信により報知する、
請求項1に記載の車両情報送信装置。
【請求項3】
前記送信部は、予め設定された地理上の区域である車両情報エリアのうち、自車両が存在する車両情報エリアを示すエリア識別子を前記送信完了通知に含めて送信し、
前記送信部は、
車車間通信により他の車両から受信した前記送信完了通知に含まれるエリア識別子が自車両が存在する車両情報エリアのエリア識別子と同じである場合には
前記カウンタをリセットし、
一方、車車間通信により他の車両から受信した前記送信完了通知に含まれるエリア識別子が自車両が存在する車両情報エリアのエリア識別子と異なる場合には
前記カウンタをリセットしない、
請求項1又は2のいずれか1項に記載の車両情報送信装置。
【請求項4】
前記送信部は、予め設定された地理上の区域である車両情報エリアのうち、自車両が存在する車両情報エリアを示すエリア識別子を前記送信完了通知に含めて送信し、
前記送信部は、
車車間通信により他の車両から受信した前記送信完了通知に含まれるエリア識別子の車両情報エリアに存在する他の車両から受信した車両情報が、前記情報交換部が保持する車両情報の中に存在する場合には、
前記カウンタをリセットし、
一方、車車間通信により他の車両から受信した前記送信完了通知に含まれるエリア識別子の車両情報エリアに存在する他の車両から受信した車両情報が、前記情報交換部が保持する車両情報の中に存在しない場合には、
前記カウンタをリセットしない、
請求項1又は2のいずれか1項に記載の車両情報送信装置。
【請求項5】
車両に搭載されるコンピュータに、
車車間通信により車両情報を送受し、受信した車両情報を一定期間保持する情報交換ステップと、
車両情報を管理サーバへ送信する車両情報送信タイミングにおいて前記情報交換ステップが保持する車両情報を、移動通信ネットワークを介して前記管理サーバへ送信する送信ステップと、
前記管理サーバへ車両情報を送信したことを示す送信完了通知を車車間通信により送信する送信完了通知ステップと、を実行させるためのコンピュータプログラムであり、
前記情報交換ステップは、自車両の車両情報を自車両情報送信周期で車車間通信により送信し、
前記情報交換ステップは、他の車両から車車間通信により受信した車両情報を一定期間保持し、前記情報交換ステップで保持された時刻から当該一定期間が経過した車両情報を削除し、
前記情報交換ステップは、前記情報交換ステップで既に保持されている車両情報と同じ車両の車両情報を受信した場合に、新たに受信した車両情報を前記情報交換ステップで既に保持されている当該車両の車両情報に上書きし、
前記送信ステップは、車両情報送信周期を繰り返し計測するカウンタステップを含み、
前記送信ステップは、車両情報送信周期になると、自車両の車両情報と前記情報交換ステップで保持される全ての他の車両の車両情報とを、移動通信ネットワークを介して前記管理サーバへ送信し、
前記情報交換ステップは、前記送信ステップによる前記管理サーバへの車両情報の送信が完了すると、前記情報交換ステップで保持される全ての車両情報を削除し、
前記送信ステップは、車車間通信により他の車両から前記送信完了通知を受信した場合に、
前記カウンタステップをリセットする、
コンピュータプログラム。
【請求項6】
車両に搭載される車両情報送信装置が、車車間通信により車両情報を送受し、受信した車両情報を一定期間保持する情報交換ステップと、
前記車両情報送信装置が、車両情報を管理サーバへ送信する車両情報送信タイミングにおいて前記情報交換ステップが保持する車両情報を、移動通信ネットワークを介して前記管理サーバへ送信する送信ステップと、
前記車両情報送信装置が、前記管理サーバへ車両情報を送信したことを示す送信完了通知を車車間通信により送信する送信完了通知ステップと、を含む車両情報送信方法であり、
前記情報交換ステップは、自車両の車両情報を自車両情報送信周期で車車間通信により送信し、
前記情報交換ステップは、他の車両から車車間通信により受信した車両情報を一定期間保持し、前記情報交換ステップで保持された時刻から当該一定期間が経過した車両情報を削除し、
前記情報交換ステップは、前記情報交換ステップで既に保持されている車両情報と同じ車両の車両情報を受信した場合に、新たに受信した車両情報を前記情報交換ステップで既に保持されている当該車両の車両情報に上書きし、
前記送信ステップは、車両情報送信周期を繰り返し計測するカウンタステップを含み、
前記送信ステップは、車両情報送信周期になると、自車両の車両情報と前記情報交換ステップで保持される全ての他の車両の車両情報とを、移動通信ネットワークを介して前記管理サーバへ送信し、
前記情報交換ステップは、前記送信ステップによる前記管理サーバへの車両情報の送信が完了すると、前記情報交換ステップで保持される全ての車両情報を削除し、
前記送信ステップは、車車間通信により他の車両から前記送信完了通知を受信した場合に、
前記カウンタステップをリセットする、
車両情報送信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両情報送信装置、コンピュータプログラム及び車両情報送信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高速道路や自動車専用道路における自動運転の実現を目的として、高精度な3次元地図情報と、渋滞情報や事故による通行規制などの位置情報とを組み合わせた「ダイナミックマップ」と呼ばれるデジタル地図の実用化が進められている(例えば、非特許文献1参照)。そのダイナミックマップは車両の位置情報をリアルタイムな動的情報として含むが、車両の位置情報をダイナミックマップシステム上で管理することが検討されている。
【0003】
また、V2X(vehicle to X)通信と呼ばれる通信方式として、5.8GHz帯を利用したDSRC(dedicated short range communications:狭域通信)システムや、760MHz帯を利用した「ITS Connect」システムや、「3GPP Release 14」で規定されているセルラーV2X(C-V2X:Cellular Vehicle to Everything)PC5通信システムなどが知られている。それらV2X(vehicle to X)通信においては、各車両から位置情報や運転情報を周囲に定期的に拡散することにより、車両同士で位置情報や運転情報を交換している。V2X(vehicle to X)通信によって各車両は互いの位置情報や運転情報を把握し、把握された情報は例えば交差点などでの危険察知システムなどに活用されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】葛巻清吾、“戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)自動走行システム Automated driving system for everyone a smile”、[online]、2018年5月11日、World Wide Web Consortium、[令和1年9月26日検索]、インターネット<URL:https://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/sip/press/jidosoko.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ダイナミックマップを実現する際、全ての車両がそれぞれに自己の位置情報をリアルタイムな動的情報として、ダイナミックマップシステム等の管理サーバへ、移動通信ネットワークを介して送信すると、移動通信ネットワークの無線リソースが逼迫する可能性がある。
【0006】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、各車両の位置情報等の車両情報を移動通信ネットワークを介して管理サーバへ送信する際の通信効率の向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の一態様は、車両に搭載される車両情報送信装置において、車車間通信により車両情報を送受し、受信した車両情報を一定期間保持する情報交換部と、車両情報を管理サーバへ送信する車両情報送信タイミングにおいて前記情報交換部が保持する車両情報を、移動通信ネットワークを介して前記管理サーバへ送信する送信部と、を備え、前記情報交換部は、自車両の車両情報を自車両情報送信周期で車車間通信により送信し、前記情報交換部は、他の車両から車車間通信により受信した車両情報を一定期間保持し、前記情報交換部に保持された時刻から当該一定期間が経過した車両情報を削除し、前記情報交換部は、前記情報交換部に既に保持されている車両情報と同じ車両の車両情報を受信した場合に、新たに受信した車両情報を前記情報交換部に既に保持されている当該車両の車両情報に上書きし、前記送信部は、車両情報送信周期を繰り返し計測するカウンタを備え、前記送信部は、車両情報送信周期になると、自車両の車両情報と前記情報交換部に保持される全ての他の車両の車両情報とを、移動通信ネットワークを介して前記管理サーバへ送信し、前記情報交換部は、前記送信部による前記管理サーバへの車両情報の送信が完了すると、前記情報交換部に保持される全ての車両情報を削除し、前記送信部は、前記管理サーバへ車両情報を送信したことを示す送信完了通知を車車間通信により送信し、前記送信部は、車車間通信により他の車両から前記送信完了通知を受信した場合に、前記カウンタをリセットする、車両情報送信装置である。
(2)本発明の一態様は、前記送信部は、前記車両情報送信周期を、前記情報交換部で保持される車両情報の送信元の車両台数と自車両の走行速度とのうち少なくとも一方に基づいて変更し、変更後の車両情報送信周期を車車間通信により報知する、上記(1)の車両情報送信装置である。
(3)本発明の一態様は、前記送信部は、予め設定された地理上の区域である車両情報エリアのうち、自車両が存在する車両情報エリアを示すエリア識別子を前記送信完了通知に含めて送信し、前記送信部は、車車間通信により他の車両から受信した前記送信完了通知に含まれるエリア識別子が自車両が存在する車両情報エリアのエリア識別子と同じである場合には前記カウンタをリセットし、一方、車車間通信により他の車両から受信した前記送信完了通知に含まれるエリア識別子が自車両が存在する車両情報エリアのエリア識別子と異なる場合には前記カウンタをリセットしない、上記(1)又は(2)のいずれかの車両情報送信装置である。
(4)本発明の一態様は、前記送信部は、予め設定された地理上の区域である車両情報エリアのうち、自車両が存在する車両情報エリアを示すエリア識別子を前記送信完了通知に含めて送信し、前記送信部は、車車間通信により他の車両から受信した前記送信完了通知に含まれるエリア識別子の車両情報エリアに存在する他の車両から受信した車両情報が、前記情報交換部が保持する車両情報の中に存在する場合には、前記カウンタをリセットし、一方、車車間通信により他の車両から受信した前記送信完了通知に含まれるエリア識別子の車両情報エリアに存在する他の車両から受信した車両情報が、前記情報交換部が保持する車両情報の中に存在しない場合には、前記カウンタをリセットしない、上記(1)又は(2)のいずれかの車両情報送信装置である。
【0008】
(5)本発明の一態様は、車両に搭載されるコンピュータに、車車間通信により車両情報を送受し、受信した車両情報を一定期間保持する情報交換ステップと、車両情報を管理サーバへ送信する車両情報送信タイミングにおいて前記情報交換ステップが保持する車両情報を、移動通信ネットワークを介して前記管理サーバへ送信する送信ステップと、前記管理サーバへ車両情報を送信したことを示す送信完了通知を車車間通信により送信する送信完了通知ステップと、を実行させるためのコンピュータプログラムであり、前記情報交換ステップは、自車両の車両情報を自車両情報送信周期で車車間通信により送信し、前記情報交換ステップは、他の車両から車車間通信により受信した車両情報を一定期間保持し、前記情報交換ステップで保持された時刻から当該一定期間が経過した車両情報を削除し、前記情報交換ステップは、前記情報交換ステップで既に保持されている車両情報と同じ車両の車両情報を受信した場合に、新たに受信した車両情報を前記情報交換ステップで既に保持されている当該車両の車両情報に上書きし、前記送信ステップは、車両情報送信周期を繰り返し計測するカウンタステップを含み、前記送信ステップは、車両情報送信周期になると、自車両の車両情報と前記情報交換ステップで保持される全ての他の車両の車両情報とを、移動通信ネットワークを介して前記管理サーバへ送信し、前記情報交換ステップは、前記送信ステップによる前記管理サーバへの車両情報の送信が完了すると、前記情報交換ステップで保持される全ての車両情報を削除し、前記送信ステップは、車車間通信により他の車両から前記送信完了通知を受信した場合に、前記カウンタステップをリセットする、コンピュータプログラムである。
【0009】
(6)本発明の一態様は、車両に搭載される車両情報送信装置が、車車間通信により車両情報を送受し、受信した車両情報を一定期間保持する情報交換ステップと、前記車両情報送信装置が、車両情報を管理サーバへ送信する車両情報送信タイミングにおいて前記情報交換ステップが保持する車両情報を、移動通信ネットワークを介して前記管理サーバへ送信する送信ステップと、前記車両情報送信装置が、前記管理サーバへ車両情報を送信したことを示す送信完了通知を車車間通信により送信する送信完了通知ステップと、を含む車両情報送信方法であり、前記情報交換ステップは、自車両の車両情報を自車両情報送信周期で車車間通信により送信し、前記情報交換ステップは、他の車両から車車間通信により受信した車両情報を一定期間保持し、前記情報交換ステップで保持された時刻から当該一定期間が経過した車両情報を削除し、前記情報交換ステップは、前記情報交換ステップで既に保持されている車両情報と同じ車両の車両情報を受信した場合に、新たに受信した車両情報を前記情報交換ステップで既に保持されている当該車両の車両情報に上書きし、前記送信ステップは、車両情報送信周期を繰り返し計測するカウンタステップを含み、前記送信ステップは、車両情報送信周期になると、自車両の車両情報と前記情報交換ステップで保持される全ての他の車両の車両情報とを、移動通信ネットワークを介して前記管理サーバへ送信し、前記情報交換ステップは、前記送信ステップによる前記管理サーバへの車両情報の送信が完了すると、前記情報交換ステップで保持される全ての車両情報を削除し、前記送信ステップは、車車間通信により他の車両から前記送信完了通知を受信した場合に、前記カウンタステップをリセットする、車両情報送信方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、各車両の位置情報等の車両情報を移動通信ネットワークを介して管理サーバへ送信する際の通信効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態に係る車両情報管理システムの構成例を示すブロック図である。
【
図2】一実施形態に係る車両情報送信装置の構成例を示すブロック図である。
【
図3】一実施形態に係る車両情報送信方法の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図4】一実施形態に係る車両情報送信方法の手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
図1は、一実施形態に係る車両情報管理システムの構成例を示すブロック図である。
図1に示す車両情報管理システム1において、管理サーバ5は、各車両3,3-1,3-2,3-3,3-4,3-5,3-6,3-7の車両情報を管理する。以下、各車両を特に区別しないときは「車両3」と称する。車両3は、例えば自動車である。管理サーバ5は、例えばダイナミックマップに適用される車両情報を管理するダイナミックマップシステムのサーバである。各車両3は、移動通信ネットワークNWを介して、管理サーバ5と通信を行う。
【0013】
一車両3の車両情報は、当該車両3の識別情報(車両ID)、当該車両3の位置を示す位置情報及び当該車両情報の作成日時を示す日時情報(タイムスタンプ)を含む情報である。さらには、一車両3の車両情報は、当該車両の状態を示す車両状態情報を含むものであってもよい。また、さらには、一車両3の車両情報は、当該車両3が観測した周辺の他の車両3の状態を示す周辺車両状態情報を含むものであってもよい。
【0014】
管理サーバ5は、車両3から受信した車両情報を、車両3(車両ID)毎にデータベースに格納する。管理サーバ5は、同じ車両3(車両ID)の車両情報については、最新のタイムスタンプを有する車両情報のみをデータベースに格納する。管理サーバ5は、所定の期間(例えば、30秒間)以上経過しても車両情報が更新されない車両3(車両ID)については、車両トラブルや通信トラブルの発生等の要因が考えられるので、当該車両3(車両ID)の車両情報をデータベースから削除する。
【0015】
図1に例示されるように、地理上の区域である車両情報エリアA1,A2,A3,A4が予め設定されている。各車両情報エリアA1,A2,A3,A4には、エリア識別子(エリアID)が予め付与されている。
【0016】
図1には、車両3のV2V(vehicle to vehicle:車車間)通信の通信可能範囲の一例として、車両3-1についてのV2V通信(車車間通信)の通信可能範囲Bが示されている。V2V通信として、例えば、DSRC(dedicated short range communications:狭域通信)システム、「ITS Connect」システム、セルラーV2X(C-V2X)PC5通信システムなどが適用可能である。
【0017】
車両3-1は、通信可能範囲Bに存在する他の車両3-2,3-3,3-4,3-5,3-6,3-7との間で、V2V通信により相互に車両情報を交換する。同様に、車両3-1以外の他の車両3についても、V2V通信の自己の通信可能範囲に存在する他の車両3との間で、V2V通信により相互に車両情報を交換する。
【0018】
図2は、本実施形態に係る車両情報送信装置の構成例を示すブロック図である。
図2に示される車両情報送信装置10は、各車両3に搭載される。
図2において、車両情報送信装置10は、情報交換部11と、送信部12とを備える。
【0019】
情報交換部11は、車両情報記憶部110を備える。情報交換部11は、V2V通信により車両情報を送受する。情報交換部11は、自車両3の車両情報を定期的に(例えば、100ms周期で)V2V通信により送信する。情報交換部11は、他の車両3からV2V通信により受信した車両情報を車両情報記憶部110に一定期間(例えば、30秒間)保持する。情報交換部11は、車両情報記憶部110に保持された時刻から当該一定期間が経過した車両情報を、車両情報記憶部110から削除する。情報交換部11は、車両情報記憶部110内に既に格納されている車両情報と同じ車両3(車両ID)の車両情報を受信した場合、新たに受信した車両情報を車両情報記憶部110内に既に格納されている当該車両3(車両ID)の車両情報に上書きする。
【0020】
送信部12は、車両情報を管理サーバ5へ送信する車両情報送信タイミングにおいて情報交換部11が車両情報記憶部110に保持する全ての車両情報を、移動通信ネットワークNWを介して管理サーバ5へ送信する。送信部12が管理サーバ5へ送信する車両情報は、自車両3の車両情報と、車両情報記憶部110に保持される他の車両3の車両情報である。送信部12が車両情報を管理サーバ5へ送信したら、情報交換部11は、車両情報記憶部110に保持される全ての車両情報を削除する。
【0021】
送信部12は、管理サーバ5へ車両情報を送信したことを示す送信完了通知をV2V通信により送信する。車両3は、他の車両3から送信完了通知を受信すると、送信完了通知の送信元の他の車両3が車両情報を管理サーバ5へ送信したことを認識する。送信部12は、V2V通信により他の車両3から送信完了通知を受信した場合に、車両情報送信タイミングを遅らせる。
【0022】
図3及び
図4を参照して、車両情報送信装置10の具体的な動作例を説明する。
図3及び
図4は、本実施形態に係る車両情報送信方法の手順の一例を示すフローチャートである。送信部12は、ダウンカウンタ120を備える。ダウンカウンタ120は、一定時間分(例えば、10秒分)のカウンタ設定値を繰り返しダウンカウントするカウンタである。カウンタ設定値は、車両情報を管理サーバ5へ送信する周期(車両情報送信周期)に対応するものである。
【0023】
まず
図3を参照して、車両情報送信装置10が管理サーバ5へ車両情報を送信する段階を説明する。
【0024】
(ステップS11) 送信部12は、ダウンカウンタ120をカウントダウンする。
【0025】
(ステップS12) ダウンカウンタ120のカウンタ値が0である場合にステップS13に進み、そうではない場合にステップS11に戻る。
【0026】
(ステップS13) 送信部12は、カウンタ値が0になる毎に(つまり、カウンタ設定値に対応する一定時間(例えば、10秒)経過毎に)、自車両3の車両情報と車両情報記憶部110に保持される全ての他の車両3の車両情報とを、移動通信ネットワークNWを介して管理サーバ5へ送信する。この送信部12による車両情報の管理サーバ5への送信が完了すると、情報交換部11は、車両情報記憶部110に保持される全ての車両情報を削除する。
【0027】
(ステップS14) 送信部12は、管理サーバ5へ車両情報を送信したことを示す送信完了通知をV2V通信により送信する。送信完了通知は、自車両3が存在する車両情報エリアのエリアIDを含む情報である。車両3は、他の車両3から送信完了通知を受信すると、送信完了通知に含まれるエリアIDの車両情報エリアに存在する他の車両3が車両情報を管理サーバ5へ送信したことを認識する。
【0028】
次に
図4を参照して、車両情報送信装置10が管理サーバ5へ車両情報を送信する車両情報送信タイミングを遅らせる段階を説明する。
【0029】
(ステップS21) 送信部12は、他の車両3から送信完了通知を受信したか否かを判断する。他の車両3から送信完了通知を受信した場合にはステップS22へ進み、そうではない場合にはステップS21に戻る。
【0030】
(ステップS22) 送信部12は、他の車両3から受信した送信完了通知に含まれるエリアIDが自車両3が存在する車両情報エリアのエリアIDと同じであるかを確認する。
【0031】
(ステップS23) ステップS22の確認の結果、他の車両3から受信した送信完了通知に含まれるエリアIDが自車両3が存在する車両情報エリアのエリアIDと同じである場合にはステップS24に進み、そうではない場合には
図4の処理を終了する。
【0032】
(ステップS24) 送信部12は、ダウンカウンタ120をリセットする。ダウンカウンタ120がリセットされると、カウンタ設定値がダウンカウンタ120にセットされ(つまり、ダウンカウンタ120のカウンタ値がカウンタ設定値に戻される)、ダウンカウンタ120のダウンカウントが再開される。
【0033】
本実施形態によれば、送信部12は、自車両3と同じ車両情報エリアに存在する他の車両3から送信完了通知を受信した場合、ダウンカウンタ120のカウンタ設定値が0になる前にダウンカウンタ120をリセットすることにより、ダウンカウンタ120のカウンタ設定値が0になるまでの時間(つまり、自車両3から車両情報を管理サーバ5へ送信するまでの時間)が延びるので、自車両3の車両情報送信タイミングを遅らせることになる。自車両3の車両情報は、送信完了通知の送信元の他の車両3との間でV2V通信により共有されているので、当該他の車両3から管理サーバ5へ送信されている。この結果として、各車両3から管理サーバ5へ車両情報が送信される頻度が減るので、各車両3の位置情報等の車両情報を移動通信ネットワークNWを介して管理サーバ5へ送信する際の通信効率の向上を図ることができる。
【0034】
図1に示される例を挙げれば、車両3-1が、車両情報を管理サーバ5へ送信し、送信完了通知をV2V通信により送信する。車両3-1から送信された送信完了通知は、車両3-1のV2V通信の通信可能範囲Bに存在する他の車両3-2,3-3,3-4,3-5,3-6,3-7により受信される。それら車両3-2,3-3,3-4,3-5,3-6,3-7のうち、車両3-3,3-4,3-5,3-6は、車両3-1と同じ車両情報エリアA1に存在するので、ダウンカウンタ120をリセットし車両情報送信タイミングを遅らせる。この結果として、各車両3-2,3-3,3-4,3-5,3-6の車両情報は、車両3-1が代表して管理サーバ5へ送信したことになり、通信効率の向上効果が得られる。一方、車両3-2,3-7は、車両3-1とは異なる車両情報エリアA2,A3に存在するので、ダウンカウンタ120をリセットせず車両情報送信タイミングを遅らせない。この結果として、各車両3-2,3-7は、車両3-1による車両情報の管理サーバ5への送信完了にかかわらず、自己の車両情報送信タイミングにより車両情報を管理サーバ5へ送信する動作を継続する。
【0035】
また、本実施形態によれば、送信完了通知の送信元の車両3と同じ車両情報エリアに存在する他の車両3であっても、無線通信の環境によって送信完了通知を受信することができなかった車両3においては、ダウンカウンタ120がリセットされないので、車両情報送信タイミングが遅れることなく、車両情報が管理サーバ5へ送信される。これにより、無線通信の環境によってV2V通信により他の車両3との間で車両情報を共有することができなかった車両3についても、車両情報を管理サーバ5へ送信することができる。
【0036】
なお、ダウンカウンタ120のカウンタ設定値は、固定値であってもよく、又は、変動値であってもよい。例えば、送信部12は、車両情報記憶部110に保持されている車両情報の個数(車両情報が保持されている他の車両3の台数)や自車両3の走行速度に応じて、カウンタ設定値を変えてもよい。例えば、車両情報記憶部110に保持されている車両情報の個数が多いほど、カウンタ設定値を小さく(つまり、車両情報送信周期を短く)してもよい。例えば、自車両3の走行速度が速いほど、カウンタ設定値を小さく(つまり、車両情報送信周期を短く)してもよい。
【0037】
例えば、自車両3の走行速度が交通渋滞における走行速度に対応する所定閾値以下である場合に、カウンタ設定値を交通渋滞に対応する所定値にしてもよい。交通渋滞に対応する所定値は、交通渋滞が発生していない場合のカウンタ設定値よりも大きい(つまり、車両情報送信周期が長い)値である。交通渋滞が発生している場合、交通渋滞の範囲に存在する各車両3の車両情報は、ある程度時間が経過しても(例えば、数分経過しても)ほとんど変化しないことが予想される。このため、交通渋滞が発生している時には、車両情報の送信効率の観点から、交通渋滞が発生していない時よりもカウンタ設定値を大きく(つまり、車両情報送信周期を長く)することは好ましい。
送信部12は、カウンタ設定値を変えた場合、変更後のカウンタ設定値を送信完了通知に含めて報知する。
【0038】
[変形例]
上述した実施形態の変形例を以下に説明する。
本変形例では、車両3は、自車両3が存在する車両情報エリアのエリアIDを車両情報に含める。したがって、V2V通信により車両3間で車両情報を共有することにより、各車両3が存在する車両情報エリアを認識することができる。
送信部12は、V2V通信により他の車両3から受信した送信完了通知に含まれるエリアIDの車両情報エリアに存在する他の車両3から受信した車両情報が、情報交換部11が車両情報記憶部110に保持する車両情報の中に存在する場合には、ダウンカウンタ120をリセットし車両情報送信タイミングを遅らせる。
【0039】
一方、送信部12は、V2V通信により他の車両3から受信した送信完了通知に含まれるエリアIDの車両情報エリアに存在する他の車両3から受信した車両情報が、情報交換部11が車両情報記憶部110に保持する車両情報の中に存在しない場合には、ダウンカウンタ120をリセットせず車両情報送信タイミングを遅らせない。
【0040】
本変形例によれば、送信完了通知の送信元の他の車両3からは管理サーバ5へ送信されていない「当該他の車両3が存在する車両情報エリアとは異なる車両情報エリアに存在する他の車両3の車両情報」を、送信漏れなく管理サーバ5へ送信することを図ることができる。
【0041】
なお、上述した実施形態では、車両情報エリアを設けたが、車両情報エリアを設けず、送信完了通知を受信した車両3の送信部12が、送信完了通知の送信元の車両3が存在する区域にかかわらず、ダウンカウンタ120をリセットし車両情報送信タイミングを遅らせるようにしてもよい。
【0042】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0043】
また、上述した各装置の機能を実現するためのコンピュータプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行するようにしてもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、DVD(Digital Versatile Disc)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0044】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【符号の説明】
【0045】
1…車両情報管理システム、3,3-1,3-2,3-3,3-4,3-5,3-6,3-7…車両、5…管理サーバ、10…車両情報送信装置、11…情報交換部、12…送信部、110…車両情報記憶部、120…ダウンカウンタ、NW…移動通信ネットワーク