(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】SCR活性材料
(51)【国際特許分類】
B01J 29/76 20060101AFI20220315BHJP
B01J 35/08 20060101ALI20220315BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20220315BHJP
F01N 3/08 20060101ALI20220315BHJP
F01N 3/10 20060101ALI20220315BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20220315BHJP
【FI】
B01J29/76 A ZAB
B01J35/08 B
B01D53/94 222
B01D53/94 400
B01D53/94 245
B01D53/94 280
F01N3/08 B
F01N3/10 A
F01N3/08 A
F01N3/28 301P
(21)【出願番号】P 2019506677
(86)(22)【出願日】2017-08-11
(86)【国際出願番号】 EP2017070399
(87)【国際公開番号】W WO2018029328
(87)【国際公開日】2018-02-15
【審査請求日】2020-08-03
(32)【優先日】2016-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501399500
【氏名又は名称】ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Umicore AG & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Rodenbacher Chaussee 4,D-63457 Hanau,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・ザイラー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・レナーツ
(72)【発明者】
【氏名】フランク-ヴァルター・シュッツェ
(72)【発明者】
【氏名】ベンヤミン・バルト
(72)【発明者】
【氏名】アンケ・シュラー
(72)【発明者】
【氏名】フランク・ヴェルシュ
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン・エックホフ
【審査官】若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-215166(JP,A)
【文献】特開2012-250149(JP,A)
【文献】国際公開第2016/023928(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/017516(WO,A2)
【文献】特表2011-519722(JP,A)
【文献】特表2012-522636(JP,A)
【文献】特表2014-512940(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/73
53/86-53/90
53/94
53/96
B01J 21/00-38/74
F01N 3/00
3/02
3/04-3/38
9/00-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)小細孔ゼオライトと、
(ii)酸化アルミニウムと、
(iii)銅と、
を含むSCR活性材料であって、材料全体に基づいて5~25重量%の酸化アルミニウムを含有し、前記銅が第1の濃度で前記酸化アルミニウム上に存在し、前記小細孔ゼオライト上に第2の濃度で存在
し、前記第1の濃度が前記第2の濃度より高いことを特徴とする、SCR活性材料。
【請求項2】
全SCR活性材料に基づいてCuOとして計算される銅の総量が1~15重量%であることを特徴とする、請求項1に記載のSCR活性材料。
【請求項3】
前記第1の濃度が前記第2の濃度の少なくとも1.5倍高いことを特徴とする、請求項1
又は2に記載のSCR活性材料。
【請求項4】
前記ゼオライト中に浸漬した銅の骨格アルミニウムに対する原子比が、前記ゼオライト中で0.25~0.6であることを特徴とする、請求項1~
3のいずれか一項に記載のSCR活性材料。
【請求項5】
前記小細孔ゼオライトが、アルミノシリケートであり、構造型AEI、CHA(チャバザイト)、ERI(エリオナイト)、LEV(レビエン)、AFX、DDR、又はKFIに属することを特徴とする、請求項1~
4のいずれか一項に記載のSCR活性材料。
【請求項6】
前記小細孔ゼオライトのSAR値が5~50であることを特徴とする、請求項
5に記載のSCR活性材料。
【請求項7】
前記小細孔ゼオライトが、シリコアルミノ
ホスフェート又はアルミノホスフェートであり、構造型AEI、CHA(チャバザイト)、ERI(エリオナイト)、LEV(レビエン)、AFX、DDR、又はKFIに属することを特徴とする、請求項1~
3のいずれか一項に記載のSCR活性材料。
【請求項8】
前記小細孔ゼオライトの平均結晶子サイズ(d50)が、0.1~20μmであることを特徴とする、請求項1~
7のいずれか一項に記載のSCR活性材料。
【請求項9】
前記小細孔ゼオライトがコアを形成し、前記酸化アルミニウムが前記コアを包むシェルを形成することを特徴とする、請求項1~
8のいずれか一項に記載のSCR活性材料。
【請求項10】
粉末形態で存在することを特徴とする、請求項1~
9のいずれか一項に記載のSCR活性材料。
【請求項11】
担体基材上にコーティングの形態で存在すること、又はマトリックス成分によって基材に押し出されていることを特徴とする、請求項1~
9のいずれか一項に記載のSCR活性材料。
【請求項12】
コーティング懸濁液の形態で存在することを特徴とする、請求項1~
9のいずれか一項に記載のSCR活性材料であって、前記コーティング懸濁液は、
a)
(i)小細孔ゼオライトと、
(ii)酸化アルミニウムと、
(iii)銅と、
を含むSCR活性材料であって、材料全体に基づいて5~25重量%の酸化アルミニウムを含有し、前記銅が第1の濃度で前記酸化アルミニウム上に存在し、前記小細孔ゼオライト上に第2の濃度で存在する、SCR活性材料と、
b)水と、を含む、SCR活性材料。
【請求項13】
リーン運転の燃焼エンジンの排気ガスを浄化するための方法であって、前記排気ガスを、請求項1~
11のいずれか一項に記載のSCR活性材料上を通すことを特徴とする、方法。
【請求項14】
請求項1~
11のいずれか一項に記載のSCR活性材料と、還元剤を提供する手段と、を含むことを特徴とする、リーン運転の燃焼エンジンの排気ガスを浄化するための装置。
【請求項15】
前記還元剤を提供するための手段が、尿素水溶液用の注入器であることを特徴とする、請求項
14に記載の装置。
【請求項16】
酸化触媒を含むことを特徴とする、請求項
14又は
15に記載の装置。
【請求項17】
前記還元剤を提供するための手段が、窒素酸化物吸蔵触媒であることを特徴とする、請求項
14に記載の装置。
【請求項18】
小細孔ゼオライト、銅塩及び酸化アルミニウムの水性懸濁液、又は酸化アルミニウムの前駆体化合物の水性懸濁液を乾燥させた後にか焼することを特徴とする、請求項1~
10のいずれか一項に記載のSCR活性材料の製造方法。
【請求項19】
前記乾燥は噴霧乾燥であることを特徴とする、請求項
18に記載の方法。
【請求項20】
前記か焼が、空気中又は空気/水雰囲気中で500℃~900℃の温度で行われることを特徴とする、請求項
18又は
19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼エンジンの排気ガス中における窒素酸化物を還元するためのSCR活性材料に関する。
【背景技術】
【0002】
主にリーン運転の燃焼エンジン(lean-operated combustion engine)を有する自動車からの排気ガスは、具体的には、粒子排出物に加えて、一次排出物の一酸化炭素CO、炭化水素HC、及び窒素酸化物NOxを含有する。最大15体積%の比較的高い酸素含有量のため、一酸化炭素及び炭化水素は、酸化によって比較的容易に無害化することができる。しかしながら、窒素酸化物を窒素に還元することは、はるかに困難である。
【0003】
酸素の存在下で、排気ガスから窒素酸化物を除去するための既知の方法は、適切な触媒上でのアンモニアによる選択的触媒還元(SCR法)である。本方法では、排気ガスから除去されるべき窒素酸化物が、アンモニアを使用して窒素及び水に変換される。還元剤として使用されるアンモニアは、アンモニア前駆体化合物、例えば尿素、カルバミン酸アンモニウム、又はギ酸アンモニウムを排気ガス流中に送給し、その後の加水分解によって利用可能にすることができる。
【0004】
例えば、ある種の金属交換ゼオライトを、SCR触媒として使用することができる。ゼオライトは、多くの場合、その最大細孔開口の環員数(ring size)によって、大細孔、中細孔、及び小細孔のゼオライトに細分化される。大細孔ゼオライトの最大環員数は12であり、中細孔ゼオライトの最大環員数は10である。小細孔ゼオライトの最大環員数は8である。
【0005】
例えば、鉄交換β-ゼオライトをベースとするSCR触媒、すなわち大細孔ゼオライトは、ヘビーデューティー車両において広く使用されてきており、そしてこれからも使用され続けることになると同時に、小細孔ゼオライトをベースとするSCR触媒はますます重要になりつつある。このことは、例えば、国際公開第2008/106519(A1)号、同第2008/118434(A1)号、及び同第2008/132452(A2)号を参照されたい。特に、銅チャバザイトをベースとするSCR触媒がこの点においてごく最近注目されていた。
【0006】
既知のSCR触媒により、還元剤としてのアンモニアを用いて窒素酸化物を高い選択率で窒素及び水に変換することができる。しかしながら、約350℃から始めて、いわゆる寄生アンモニア酸化(parasitic ammonia oxidation)が銅チャバザイト系触媒中で起こり、所望のSCR反応と競合する。ここで、還元剤のアンモニアは、酸素との一連の副反応で反応して二窒素、亜酸化窒素、一酸化窒素又は二酸化窒素を形成するので、還元剤が有効に利用されない、又はアンモニアから追加量の窒素酸化物がなおも形成される。この競合は、SCR触媒での排気ガスライン中のディーゼル微粒子フィルタ(DPF)の再生において起こり得るので、500~650℃の範囲の高温で特に顕著である。更に、自動車の全耐用期間にわたって、高い汚染物転換率の達成を可能にするためには、触媒材料は耐エージング性であることが保証されなければならない。それ故、DPF再生中の反応温度でも、耐用期間にわたっても、高い転化率を達成するために、改良されたSCR触媒材料が必要とされている。
【0007】
国際公開第2008/132452(A2)号には、例えば銅と交換された小細孔ゼオライトが記載されており、当該ゼオライトは、ウォッシュコートとして好適なモノリシック基材上にコーティングすること、又は基材を形成するために押し出すことができる。ウォッシュコートは、酸化アルミニウム、シリカ、(非ゼオライト)シリカ-アルミナ、天然粘土、TiO2、ZrO2、及びSnO2からなる群から選択されるバインダを含有してもよい。
【0008】
国際公開第2013/060341(A1)号では、プロトン型又は鉄促進型の酸性ゼオライト又はゼオタイプと、例えばCu/Al2O3との物理的混合物からのSCR活性触媒組成物を記載している。
【0009】
ACS Catal.2012,2,1432-1440には、NH3-SCR反応中のCuO/γ-Al2O3上のアンモニアの経路が記載されている。アンモニアは、0.5重量%のCuO/γ-Al2O3、特に一酸化窒素と反応して窒素を形成する一方で、10重量%のCuO/γ-Al2O3、特に酸素と反応して窒素酸化物を形成する。
【0010】
出願公開第2012-215166号には、SAPO型ゼオライトをベーマイトと混合し、当該混合物から円筒状のハニカム体を押し出し、続いてこの体を硝酸銅溶液に浸漬する方法が記載されている。
【0011】
驚くべきことに、小細孔ゼオライト、酸化アルミニウム及び銅をベースとする特定のSCR材料は、上記の要件を満たすことが現在確認されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、
(i)小細孔ゼオライトと、
(ii)酸化アルミニウムと、
(iii)銅と、
を含むSCR活性材料であって、材料全体に対して5~25重量%の酸化アルミニウムを含有し、銅が第1の濃度で酸化アルミニウム上に存在し、小細孔ゼオライト上に第2の濃度で存在することを特徴とする、SCR活性材料に関する。
【0013】
ゼオライト上に銅が存在するという表現には、本発明の範囲内で、ゼオライトの格子骨格の一部としての銅が存在することと、ゼオライト骨格の細孔中におけるイオン交換形態の銅が存在することと、任意の他の形態において銅が三次元ゼオライト骨格内又はその表面上に結合し得ることと、が含まれる。
【0014】
また、銅がアルミナ上に存在するという表現には、あらゆる形態において銅が三次元酸化アルミニウム骨格内又はその表面上に結合され得ることが含まれる。この表現には、アルミン酸銅(CuAl2O4)などの混合酸化物も含まれる。いずれの場合も、銅という用語は、酸化銅だけでなく、金属銅とイオン銅の両方を含む。
【0015】
更に、本発明のコンテキストにおいて、用語「酸化アルミニウム」は、ゼオライトのゼオライト格子中における酸化アルミニウムの比率を含まない。したがって、「酸化アルミニウム」は、(ii)による成分のみを含み、ゼオライトのSiO2/Al2O3比(SAR)から生じる酸化アルミニウムの比率は含まない。
【0016】
全SCR活性材料に基づいてCuOとして計算される銅の総量は、特に1~15重量%、好ましくは1~10重量%、より好ましくは2~5重量%である。
【0017】
ゼオライトに対する銅の好ましい量は、ゼオライトのSiO2/Al2O3比に依存することを考慮すべきである。ゼオライトのSiO2/Al2O3比が増加するにつれて、交換可能な銅の量が減少することが一般的に当てはまる。本発明によれば、ゼオライト中で交換された銅のゼオライト中の骨格アルミニウムに対する好ましい原子比(以下、Cu/Al比と呼ぶ)は、特に0.25~0.6である。
【0018】
これは、二価Cuイオンを介したゼオライト中の完全な電荷平衡が100%の交換率であると仮定すると、50%~120%の銅とゼオライトとの理論的な交換率に対応する。70~100%の理論的Cu交換率に相当する、0.35~0.5のCu/Al値が特に好ましい。
【0019】
Cu/Al比は、銅交換ゼオライトの特性評価に広く使用されている尺度である。このことは、国際公開第2008/106519(A1)号、Catalysis Today54(1999)407-418(Torre-Abreuら)、Chem.Commun.,2011,47,800-802(Korhonenら)、又はChemCatChem2014,6,634-639(Guoら)を参照されたい。したがって、当業者はこの量に精通している。Cu/Al比は、例えば、誘導結合プラズマ(ICP OES)を用いる発光分光分析によって測定することができる。この方法は、当業者に既知である。
【0020】
第1の濃度(酸化アルミニウム上の銅の濃度)が、第2の濃度(ゼオライト上の銅の濃度)より高い場合が特に有利である。好ましくは、第1の濃度は、第2の濃度よりも少なくとも1.5倍、より好ましくは少なくとも3倍高い。例えば、第1の濃度は、第2の濃度よりも1.5~20倍又は3~15倍高い。第1の濃度及び第2の濃度の比は、透過型電子分光法(TEM)及びエネルギー分散型X線分光法(EDX)を用いて測定することができる。この目的のため、本発明によるSCR活性材料の薄片を調製し、EDXによって、ゼオライトの領域及び酸化アルミニウムの領域における銅の濃度を測定し、比率を求める(put into)。この方法は当業者に公知であり、文献に記載されている。
【0021】
一実施形態では、本発明によるSCR活性材料は、白金、パラジウム及びロジウムなどの貴金属を含まない。
【0022】
小細孔ゼオライトは、例えばアルミノシリケートである。当業者に知られているこの型の全てのゼオライトを使用することができる。これらのゼオライトとしては、天然起源のものが挙げられるが、好ましくは合成により製造した小細孔ゼオライトが挙げられる。
【0023】
合成的に調製された小細孔ゼオライトの例は、構造型ABW、ACO、AEI、AEN、AFN、AFT、AFX、ANA、APC、APD、ATN、ATT、ATV、AWO、AWW、BIK、BRE、CAS、CDO、CHA、DDR、DFT、EAB、EDI、EPI、ERI、ESV、GIS、GOO、IHW、ITE、ITW、JBW、KFI、LEV、LTA、LTJ、MER、MON、MTF、NSI、OWE、PAU、PHI、RHO、RTE、RTH、SAS、SAT、SAV、SIV、THO、TSC、UEI、UFI、VNI、YUG、及びZONに属する。好ましい小細孔ゼオライトは、構造型AEI、CHA(チャバザイト)、ERI(エリオナイト)、LEV(レビエン(levyne))、AFX、DDR及びKFIに属するもの、又は構造型AEI、CHA(チャバザイト)、ERI(エリオナイト)、AFX、DDR及びKFIに属するものである。構造型CHA、AEI、ERI及びLEV、又は構造型CHA、AEI及びERIが特に好ましい。非常に特に好ましいのは、構造型CHA及びLEV、又はCHAである。
【0024】
本発明の実施形態において、アルミノシリケート型の小細孔ゼオライトは、5~50、好ましくは14~40、特に好ましくは20~35のSAR値を有する。
【0025】
本発明のコンテキストにおいて、ゼオライトという用語は、上記のアルミノシリケートだけでなく、いわゆるシリコアルミノホスフェート及びアルミノホスフェート型のゼオライト様材料も含む。好適なシリコアルミノホスフェート又はアルミノホスフェートもまた、特に構造型AEI、CHA(チャバザイト)、ERI(エリオナイト)、LEV(レビエン)、AFX、DDR及びKFIに属する。このような材料は、国際ゼオライト学会(International Zeolite Association)の「構造データベース」の「関連材料」で、関連した3文字のコードのもとで確認できる(http://www.iza-structure.org/databases/)。例としては、SAPO-17、SAPO-18、SAPO-34、SAPO-35、SAPO-39、SAPO-43、SAPO-47及びSAPO-56又はAlPO-17、AlPO-18、AlPO-34及びAlPO-35が挙げられる。アルミノシリケートの前述の好ましいSAR値は、これらの材料には適用されない。
【0026】
小細孔ゼオライトの平均結晶子サイズ(d50)は、例えば、0.1~20μm、好ましくは0.5~10μm、より好ましくは1~4μmである。
【0027】
30~250m2/g、好ましくは100~200m2/g(ISO 9277により測定)のBET表面積を有する酸化アルミニウムが、酸化アルミニウムとして特に適している。このような材料は、当業者に公知であり市販されている。加えて、物理的特性又は化学的特性を改善するために、さらなる元素でドープされた酸化アルミニウムが考慮される。既知の元素は、例えば、Si、Mg、Y、La、及びCe、Pr、Ndなどのランタニド元素であり、これらの元素はアルミニウムと混合酸化物化合物を形成することができるため、例えば酸性度又は表面安定性を変化させることができる。1つ又は複数の元素による酸化アルミニウムのドーピングは、それぞれの混合酸化物を基準にして、15重量%未満、好ましくは10重量%未満、特に好ましくは5重量%未満であるべきである。
【0028】
酸化アルミニウムは、そのまま使用することができるが、酸化アルミニウムは、SCR活性材料の製造の範囲内で、ベーマイト又は硝酸アルミニウムなどのアルミニウム塩をはじめとする好適な前駆体から形成されることが好ましい。
【0029】
本発明の一実施形態では、SCR活性材料は小細孔ゼオライトがコアを形成し、酸化アルミニウムはコアを包むシェルを形成する形態で存在する。そのような構造はコア/シェル構造として知られており、例えば、国際公開第2012/117042(A2)号に記載されている。
【0030】
本発明の一実施形態では、SCR活性材料は粉末として存在する。
【0031】
本発明の別の実施形態では、SCR活性材料は、コーティング懸濁液の形態で存在し、該コーティング懸濁液は、
a)
(i)小細孔ゼオライトと、
(ii)酸化アルミニウムと、
(iii)銅と、
を含むSCR活性材料であって、材料全体に基づいて5~25重量%の酸化アルミニウムを含有し、銅が第1の濃度で酸化アルミニウム上に存在し、小細孔ゼオライト上に第2の濃度で存在する、SCR活性材料と、
b)水と、を含む。一実施形態では、本発明によるコーティング懸濁液は、それぞれコーティング懸濁液の重量に基づいて、20~55重量%のSCR活性材料及び45~80重量%の水を含有する。
別の実施形態では、本発明によるコーティング懸濁液は、それぞれコーティング懸濁液の重量に基づいて、30~50重量%のSCR活性材料及び50~70重量%を含有する。
【0032】
本発明によるSCR活性材料は、例えば、小細孔ゼオライト、銅塩及び酸化アルミニウムの水性懸濁液、又は酸化アルミニウムの前駆体化合物の水性懸濁液を乾燥させた後にか焼することによって調製することができる。
【0033】
例えば、小細孔ゼオライトを水中に入れ、撹拌しながら可溶性銅塩を添加し、次いで酸化アルミニウム又は対応する酸化アルミニウム前駆体を添加する。得られた水中の本発明によるSCR活性材料の懸濁液は、コーティング懸濁液として直接使用することができる。しかしながら、この懸濁液は濾過及び/又は乾燥することもでき、後者の場合には本発明によるSCR活性材料は粉末形態で得られる。
【0034】
同様に例えば、小細孔ゼオライト、酸化アルミニウム又は酸化アルミニウム前駆体化合物及び銅塩からなる水性懸濁液の乾燥及びか焼の後に、得られた材料を酸化アルミニウム又は対応する酸化アルミニウム前駆体と共に水溶液中で再懸濁し、再度この材料を乾燥及びか焼して、粉末形態の本発明によるSCR活性材料を調製することが可能である。
【0035】
本発明によるコーティング懸濁液は、撹拌しながら水を添加し、そして場合により粉砕することにより粉末形態のSCR活性材料から単一な方法で得ることができる。
【0036】
好ましい可溶性銅塩は、硫酸銅、硝酸銅、及び酢酸銅などの水に可溶性の塩である。硝酸銅及び酢酸銅が特に好ましく、酢酸銅が非常に特に好ましい。
【0037】
乾燥の種類は様々な方法で実施することができる。例えば、噴霧乾燥、マイクロ波乾燥、ベルト乾燥、ローラー乾燥、凝縮乾燥、ドラム乾燥、凍結乾燥、及び真空乾燥などが当業者に知られている。噴霧乾燥、ベルト乾燥、ローラー乾燥、及び凍結乾燥が好ましい。噴霧乾燥が特に好ましい。この場合、噴霧器で高温ガス流に懸濁液を導入することにより、非常に短時間(数秒~数分の1秒)で懸濁液を乾燥させ、SCR活性材料を形成する。場合により、材料は続いて、例えば空気中又は空気/水混合物中で、500℃~900℃の温度でか焼される。か焼は、好ましくは550℃~850℃、最も好ましくは600℃~750℃の温度で行われる。
【0038】
本発明のさらなる実施形態において、例えば、洗浄及び乾燥の後、場合により、小細孔ゼオライト及び銅塩からなる水性懸濁液(又はすでに銅で合成されたゼオライト)をか焼し、このようにして得られた材料を酸化アルミニウム又は対応する酸化アルミニウム前駆体と共に水溶液中で懸濁し、再度乾燥及びか焼して、本発明によるSCR活性材料を製造することが可能である。続いてこの材料を水に再懸濁し、場合により粉砕し、バインダを加えてコーティングすることができる。
【0039】
Al2O3、SiO2、TiO2若しくはZrO2又はそれらの前駆体、並びにそれらの混合物は、例えば、フロースルー型基材をコーティングするためのバインダとして使用することができる。バインダは通常フィルタ基材のコーティングには必要とされない。
【0040】
明確にするために、本発明によるSCR活性材料を製造するための酸化アルミニウム又は酸化アルミニウム前駆体は、以下の点でアルミニウム含有バインダ材料と異なることがここで指摘される:
1.SCR活性材料の調製中に既に使用されており、フロースルー型基材上の触媒活性材料の接着強度を改善するためだけではない。
2.銅の一部は酸化アルミニウム上に存在する。
3.酸化アルミニウム又は酸化アルミニウム前駆体を含有するSCR活性材料は、基材上にコーティングする前にか焼され、それによって典型的なバインダ特性が失われる。
4.酸化アルミニウムはまた、フィルタ基材の多孔質ウォールをコーティングする場合(例えば、ウォールフロー型フィルタのインウォールコーティングにおいて)触媒活性材料の熱安定性を増大させるために、本発明によるSCR活性材料の調製に使用される。触媒活性材料がフィルタの細孔の内側に配置されている場合にはバインダの結合特性は必要とされないので、この際バインダの使用は不要である。また、バインダを追加すると、フィルタ間の背圧が望ましくないほど更に上昇することになるが、バインダを追加しなければ、コーティングされた触媒活性材料の量は同じままである。
5.本発明によるSCR活性材料の熱エージング後におけるNOx転化率の増加に寄与し、かつ触媒的に不活性として分類されない。
【0041】
この場合、本発明によるSCR活性材料は、上述した点の1つ以上又は全てを満たすことができる。
【0042】
本発明の実施形態において、本発明によるSCR活性材料は、担体基材(carrier substrate)上にコーティングの形態で存在する。担体基材はまた、いわゆるフロースルー型担体であっても、ウォールフロー型フィルタであってもよい。これらは、例えば、炭化ケイ素、チタン酸アルミニウム、又はコーディエライト、又は金属からなり得る。これらは、当業者に公知であり市販されている。本発明によるSCR活性材料の担体基材への塗布は、当業者によく知られている方法、例えば、一般的なディップコーティング法、又はポンプコーティング法及び吸引コーティング法に続いての熱的後処理(か焼)によって行うことができる。
【0043】
当業者には、ウォールフロー型フィルタの場合、本発明によるSCR活性材料の平均孔径及び平均粒径を互いに適合させることができることは公知であり、これにより、得られたコーティングは、多孔質ウォール上にのせられ、ウォールフロー型フィルタのチャネルを形成する(オンウォールコーティング)。しかし好ましくは、平均孔径及び平均粒径を互いに適合させることにより、本発明によるSCR活性材料は、多孔質ウォール内に位置し、ウォールフロー型フィルタのチャネルを形成し、ひいては内部細孔表面のコーティング(インウォールコーティング)が行われる。この事例において、本発明によるSCR活性材料の平均粒径は、ウォールフロー型フィルタの細孔内に入り込むのに十分に小さいものである必要がある。
【0044】
本発明はまた、SCR活性材料がマトリックス成分によって基材に押し出された実施形態に関する。この場合、担体基材は、不活性マトリックス成分と本発明によるSCR活性材料とから形成される。
【0045】
当業者には、単にコーディエライトなどの不活性材料からなるのではなく、追加的に触媒活性材料を含有する、担体基材、フロースルー型基材、及びウォールフロー型基材が知られている。これらを生産するには、10~95重量%の不活性マトリックス成分及び5~90重量%の触媒活性材料からなる混合物を、例えば、それ自体既知の方法に従って押出加工する。この事例では、それ以外の場合にも触媒基材を生産するために使用される全ての不活性材料を、マトリックス成分として使用することができる。これらは、例えば、シリケート、酸化物、窒化物、又は炭化物であり、特に好ましくは、マグネシウムアルミニウムシリケートである。
【0046】
本発明によるSCR活性材料を含む押出された担体基材は、それ自体で排ガス浄化のために使用され得る。しかしながら、これらの基材はまた、慣用の方法により、不活性の担体基材と同様に、さらなる触媒活性材料を用いてコーティングすることもできる。しかしながら、本発明によるSCR活性材料は、好ましくは押出物として存在せず、特に本発明によるSCR活性材料のみからなる、すなわちマトリックス成分を含有しない押出物としては存在しない。
【0047】
本発明によるSCR活性材料は、リーン運転の内燃エンジン(lean-operated internal combustion engine)、特にディーゼルエンジンからの排気ガスを浄化するために、好都合に使用することができる。それにより、排気ガス中に存在する窒素酸化物は、無害な化合物である窒素及び水に変換される。
【0048】
したがって、本発明はまた、リーン運転の燃焼エンジンの排気ガスを浄化する方法であって、排気ガスを本発明によるSCR活性材料上に通すことを特徴とする、方法に関する。この通過は通常還元剤の存在下で行われる。本発明による方法において、好ましくはアンモニアが、還元剤として使用される。例えば、必要とされるアンモニアを、例えば上流の窒素酸化物吸蔵触媒(nitrogen oxide storage catalyst)(「リーンNOxトラップ」-LNT)によって、本発明による粒子フィルタの上流で、特に豊富な排気ガス条件下の運転中に、排気ガスの系内にて生成させることができる。この方法は、「パッシブSCR」として知られている。しかしながら、アンモニアはまた、必要に応じて本発明による粒子フィルタの上流の注入器を介して注入される尿素水溶液の形態で「活性SCR法」を使って携帯することもできる。
【0049】
したがって、本発明はまた、リーン運転の内燃エンジンからの排気ガスを浄化するための装置に関し、該装置は、好ましくは不活性担体材料上のコーティングの形態で本発明によるSCR活性材料と、還元剤を提供するための手段と、を含むことを特徴とする。
【0050】
アンモニアは通常還元剤として使用される。したがって、本発明による装置の一実施形態では、還元剤を提供するための手段は、尿素水溶液用の注入器である。注入器には一般に、運搬リザーバ、すなわちタンクなどから生じる尿素水溶液が供給される。
【0051】
別の実施形態では、還元剤を提供するための手段は、窒素酸化物からアンモニアを形成することができる窒素酸化物吸蔵触媒である。このような窒素酸化物吸蔵触媒は当業者に知られており、文献に広く記載されている。例えば、窒素酸化物が一酸化窒素及び二酸化窒素の1:1の混合物中に存在する場合、又はこの比率に近い任意の事例において、アンモニアによるSCR反応はより速く進行することが、SAE-2001-01-3625から公知である。リーン運転の燃焼エンジンの排気ガスの一酸化窒素は、通常、二酸化窒素と比較して過剰なので、本文書では、酸化触媒の寄与により二酸化窒素の比率を増加させることが企図される。
【0052】
したがって、一実施形態では、本発明による装置は、酸化触媒も含む。本発明のある実施形態において、担体材料上の白金が、酸化触媒として使用される。この目的のため、当業者に公知の全ての材料が、担体材料とみなされる。担体材料は、30~250m2/gの、好ましくは100~200m2/g(ISO 9277に従って指定される)のBET表面を有し、特に、酸化アルミニウム、酸化シリコン、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、並びにこれらの酸化物のうちの少なくとも2つの混合物又は混合酸化物である。好ましくは、酸化アルミニウム、及びアルミニウム/ケイ素混合酸化物である。酸化アルミニウムを使用する場合、これは、特に好ましくは、例えば酸化ランタンによって安定化されている。
【0053】
本発明による装置は、排気ガスの流れ方向に、最初に酸化触媒、次に尿素水溶液用の注入器、そして次に本発明によるSCR活性材料を、好ましくは不活性担体材料上のコーティングの形態で、配置するように設計されている。あるいは、窒素酸化物吸蔵触媒、次いで本発明によるSCR活性材料を、好ましくは不活性担体材料上のコーティングの形態で、最初に排気ガスの流れ方向に配置する。窒素酸化物吸蔵触媒の再生中に、アンモニアが還元性排気ガス条件下で形成され得る。この場合、尿素水溶液用の酸化触媒及び注入器は不要である。
【発明の効果】
【0054】
驚くべきことに、本発明によるSCR活性材料は、従来の銅交換小細孔ゼオライトと比較して利点を有する。特に、SCR活性材料は500~650℃の反応温度で、より高い窒素酸化物の転化率によって区別される。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【発明を実施するための形態】
【0056】
本発明を、以下の実施例及び図面においてより詳細に説明する。
【0057】
実施例1
a)本発明による材料EM-1の調製
100.4グラムの銅(II)-アセテート-1-水和物及び960グラムのアンモニウムチャバザイトを、30のSiO2/Al2O3比で、2500グラムの水中においてスラリー化する。得られた懸濁液を2時間撹拌する。この懸濁液に、20重量%のAl2O3の含有量を有する400グラムのベーマイトゾルを添加する。次いで撹拌を2時間続ける。最終懸濁液をスプレー乾燥機中で乾燥粉末に変換し、次いでこの乾燥粉末を空気中500℃で2時間か焼する。
【0058】
b)ゼオライト及び酸化アルミニウム間のEM-1におけるCu分布の特性評価
工程a)に従って得られた材料EM-1は、ポリマー樹脂中に微細に分散した形で埋め込まれている。その後、薄片試料を調製し、透過型電子顕微鏡で検査する。材料の例示的なTEM画像を
図1に示す。酸化アルミニウム及びゼオライトの領域は、EDX及び形態によって測定されるアルミニウム含有量に基づいて明確に区別することができる。酸化アルミニウムケーシングを有するゼオライト結晶子の断面を示す。酸化アルミニウム(領域A)とゼオライト領域(領域B)との間の違いを説明するために、容器内に2つの領域をマークした。これら2つの位置で、銅濃度をEDXによって重量パーセントで測定し、領域Aで測定された濃度を領域Bで測定された濃度で除算した。
【0059】
同様に、この手順を、統計的評価を可能にするために、酸化アルミニウムケーシングを有するゼオライト結晶子のさらなるTEM画像に対して行った。全ての場合において、以下の表から推測できるように、酸化アルミニウムシェルの領域における銅の濃度は、ゼオライトよりも著しく高いことがわかった。
【0060】
【0061】
比較例1
比較材料VM-1の調製
100.4グラムの銅(II)-アセテート-1-水和物及び960グラムのアンモニウムチャバザイトを、30のSiO2/Al2O3比で、2500グラムの水中においてスラリー化する。得られた懸濁液を2時間撹拌する。実施例1とは異なり、ベーマイトゾルは添加されていない。最終懸濁液をスプレー乾燥機中で乾燥粉末に変換し、この乾燥粉末を空気中500℃で2時間か焼する。このため、ゼオライトに基づくこの調製に使用される銅の量は、実施例1と同じである。しかしながら、銅が分布する可能性がある材料には追加のAl2O3は存在しない。
【0062】
EM-1とVM-1との触媒活性の比較
EM-1材料及びVM-1材料のSCR活性を粉末反応器で試験する。この目的のため、200mgの対応する材料をそれぞれ石英ガラスのU字管反応器に導入し、石英ウールで固定する。
【0063】
450℃の反応温度での窒素酸化物転化率を、それぞれ次の測定条件下で測定する。一酸化窒素:500ppm、アンモニア:750ppm、水:5%、酸素:5%、窒素:残部、流量:cm3/分(mL/分)。
【0064】
EM1材料は96%のNOx転化率をもたらすのに対して、VM-1材料はわずか89%のNOx転化率をもたらす。
【0065】
実施例2
EM-1材料によりコーティングされたハニカム体WEM-1の調製
20重量%のAl2O3を含有する、950グラムのEM-1材料及び250グラムのベーマイトゾルを、水で懸濁液にする。添加されたベーマイトゾルは、市販のコーディエライトハニカム体へ、EM-1材料を良好に付着させるためのバインダシステムとして機能する。
【0066】
したがって、得られた懸濁液は、試料重量及びCuOとしての銅の計算に従って、以下の化合物又は構成成分を含有する。
【0067】
【0068】
一般的な浸漬法により、コーディエライトハニカム体(直径14.4cm(5.66インチ)、長さ7.6cm(3インチ)、セルラ文字62cpscm(400cpsi)及び壁厚0.15mm(6ミル))を、触媒体積150g/Lのウォッシュコート担持量でコーティングし、90℃で乾燥、500℃でアニールする。
【0069】
比較例2
VM-1材料によりコーティングされたハニカム体WVM-1の調製
20重量%のAl2O3を含有する、880グラムのVM-1材料及び600グラムのベーマイトゾルを、水で懸濁液にする。一般的な浸漬法により、コーディエライトハニカム体(直径14.4cm(5.66インチ)、長さ7.6cm(3インチ)、セルラ文字62cpscm(400cpsi)及び壁厚0.15mm(6ミル))を、触媒体積150g/Lのウォッシュコート担持量でコーティングし、90℃で乾燥、500℃でアニールする。
【0070】
このようにして得られた懸濁液は、実施例2と同じ量の以下の構成成分を比率で含有し、実施例2とは異なり、酸化アルミニウム成分はバインダのみから誘導される。
【0071】
【0072】
WEM-1とWVM-1との触媒活性の比較
a)得られたばかりの状態
2つのハニカム体WEM-1及びWVM-1から直径2.54cm(1インチ)及び長さ7.6cm(3インチ)のボアコア(bore core)を穿孔し、モデルガスシステムにおいてそれらの触媒活性について試験した。
【0073】
以下の測定条件を選択した。NO:500ppm、NH3:750ppm、H2O:5体積%、O2:10体積%、N2:残余、空間速度:60000h-1、反応温度:500℃及び650℃。
【0074】
両方の測定温度において、WEM-1はWVM-1と比較してより高いNOx転化率を有する。
【0075】
【0076】
b)エージング後
WEM-1及びWVM-1の2つのドリルコアを、運転中の触媒のエージングをシミュレーションするために、10体積%の水、10体積%の酸素及び80体積%の窒素のガス混合物中で750℃で16時間処理した。
【0077】
このシミュレーションしたエージング後、a)に示した上記条件下での触媒活性を再度試験する。本発明による材料EM-1に基づく触媒WEM-1は、比較触媒WVM-1よりも著しく高いNOx転化率を有する。
【0078】
【0079】
実施例3
本発明による材料EM-1を、炭化ケイ素フィルタ基材上に、インウォールコーティングとして100g/Lのウォッシュコート担持量でコーティングする。コーティングされたフィルタFEM-1が得られる。
【0080】
比較例3
実施例3と同様に、炭化ケイ素フィルタ基材を比較材料VEM-1でコーティングする。コーティングされたフィルタFVM-1が得られる。
【0081】
FEM-1とFVM-1との触媒活性の比較
いずれの場合も、実施例3及び比較例3に従って、1つのドリルコアを両方のコーティングされたフィルタから取り外す。このドリルコアを、運転中にSCR活性材料でコーティングされた微粒子フィルタのハードエージングをシミュレーションするために、10体積%の水、10体積%の酸素及び80体積%の窒素のガス混合物中で800℃で16時間処理する。
【0082】
続いて、以下の測定条件下でモデルガスを使用して両方のドリルコアを測定する。NO:500ppm、NH3:750ppm、H2O:5体積%、O2:10体積%、N2:残余、空間速度:100,000h-1、反応温度:650℃。
【0083】
FVM-1によるNOx転化率はわずか8%であったが、FEM-1試料は供給された窒素酸化物の18%を転化する。