(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】固相重合ポリ(テトラメチレン-2,5-フランジカルボキシレート)ポリマーの製造方法及び製造されたポリマー
(51)【国際特許分類】
C08G 63/80 20060101AFI20220315BHJP
C08G 63/672 20060101ALI20220315BHJP
【FI】
C08G63/80
C08G63/672
(21)【出願番号】P 2019518289
(86)(22)【出願日】2017-10-05
(86)【国際出願番号】 NL2017050655
(87)【国際公開番号】W WO2018067007
(87)【国際公開日】2018-04-12
【審査請求日】2020-10-02
(32)【優先日】2016-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】515337626
【氏名又は名称】フラニックス・テクノロジーズ・ベーフェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ラースロー・シポス
【審査官】岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-146153(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0124763(US,A1)
【文献】特表2014-530948(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0336349(US,A1)
【文献】特開2015-160871(JP,A)
【文献】特開2008-075068(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0018264(US,A1)
【文献】特表2015-518093(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0111450(US,A1)
【文献】国際公開第2015/166070(WO,A1)
【文献】特表2017-514937(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0282020(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/00-63/91
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固相重合ポリ(テトラメチレン-2,5-フランジカルボキシレート)ポリマーの製造方法であって、
- ポリスチレンを標準として使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定して
、10,000
~35,000の範囲の数平均分子量(Mn)を有し、
1~50ミリ当量/kg
の範囲のカルボン酸末端基含有量を有する、ポリ(テトラメチレン-2,5-フランジカルボキシレート)重縮合物を準備する工程;
- 前記ポリ(テトラメチレン-2,5-フランジカルボキシレート)重縮合物を、80~140℃の範囲の温度に保って、半結晶性重縮合物を得る工程;及び
- 前記半結晶性重縮合物を、前記半結晶性重縮合物が不活性ガス流下にあるか又は真空下にあるかのいずれかの状態で、少なくとも140℃の温度であって前記半結晶性重縮合物の融点より低い温度に保つことによって、固相重合にかける工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記ポリ(テトラメチレン-2,5-フランジカルボキシレート)重縮合物が、1~
15ミリ当量/kgの範囲のカルボン酸末端基含有量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリ(テトラメチレン-2,5-フランジカルボキシレート)重縮合物が
、12,000~30,000の範囲のMnを有する、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリ(テトラメチレン-2,5-フランジカルボキシレート)重縮合物が、
(i) ジアルキル2,5-フランジカルボキシレートと1,4-ブタンジオールとをエステル交換反応させてエステル交換反応生成物を得た後、そのエステル交換反応生成物を重縮合させる方法;及び
(ii) 2,5-フランジカルボン酸と1,4-ブタンジオールとをエステル化反応させてエステル化反応生成物を得た後、そのエステル化反応生成物を重縮合させる方法
からなる群から選択される方法の1つから得られたものである、請求項1~
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリ(テトラメチレン-2,5-フランジカルボキシレート)重縮合物を、80~130℃の範囲の温度に、0.5~4時間の範囲の時間保つ、請求項1~
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記半結晶性重縮合物が、示差走査熱量測定法(DSC)によって測定して、25~65J/gの範囲の結晶化度を有する、請求項1~
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
固相重合の間、前記半結晶性重縮合物を、その融点より5~30℃低い温度に保つ、請求項1~
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
固相重合の間、前記半結晶性重縮合物を、145~165℃の範囲の温度に保つ、請求項1~
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記半結晶性重縮合物を、その融点より低い温度に2~120時間保つ、請求項1~
8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
168~175℃の範囲の融点と、ポリスチレンを標準として使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定して
、40,000
~80,000の範囲の数平均分子量(Mn)とを有し、
ジクロロメタン及びヘキサフルオロイソプロパノールの8:2の体積/体積比の混合物中30mg/mLの濃度で、400nmの波長で測定して、
0.001~0.05
の範囲の吸光度を有する
ポリ(テトラメチレン-2,5-フランジカルボキシレート)ポリマー。
【請求項11】
ポリスチレンを標準として使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定して
、45,000~80,000の範囲のMnを有する、請求項1
0に記載のポリ(テトラメチレン-2,5-フランジカルボキシレート)ポリマー。
【請求項12】
1.9~2.6
のPD
Iを有する、請求項1
0又は1
1に記載のポリ(テトラメチレン-2,5-フランジカルボキシレート)ポリマー。
【請求項13】
0.001~0.04の範囲の吸光度を有する、請求項1
0~1
2のいずれか一項に記載のポリ(テトラメチレン-2,5-フランジカルボキシレート)ポリマー。
【請求項14】
示差走査熱量測定法(DSC)によって測定して、30~85J/gの結晶化度を有する、請求項1
0~1
3のいずれか一項に記載のポリ(テトラメチレン-2,5-フランジカルボキシレート)ポリマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固相重合ポリ(テトラメチレン-2,5-フランジカルボキシレート)ポリマーの製造方法及び製造されたポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
2,5-フランジカルボキシレート基を有するポリマーは、テレフタレート部分を有する同様のポリエステルと代替する可能性があるものとして興味が持たれてきた。この興味は、特に、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)と代替する可能性があるものとしてのポリ(エチレン-2,5-フランジカルボキシレート)すなわちPEFの使用に向けられている。ポリ(ブチレン-2,5-フランジカルボキシレート)すなわちPBFとしても知られているポリ(テトラメチレン-2,5-フランジカルボキシレート)には、ポリ(ブチレンテレフタレート)(PBT)と代替する可能性があるものとしての興味がほとんど持たれていない。
【0003】
米国特許出願公開第2014/0205786号には、PBF重縮合物の調製が記載されている。この重縮合物は、ポリ(トリメチレン-2,5-フランジカルボキシレート)(PTF)及びPEFを含有するフィルムの挙動と比較して、フィルムの挙動が劣っていることを示すための比較例として用いられている。PBFは、ジメチル2,5-フランジカルボキシレートと、1,4-ブタンジオールとを、1:2のモル比で、触媒の存在下、約80℃の温度で接触させることによって調製された。次いで、真空を適用し、温度を230℃に上昇させ、約3時間保った。約39℃のTg及び約169℃の融点を有する重縮合物が得られた。
【0004】
米国特許出願公開第2013/0171397号では、PBFは食品との接触に非常に適していると記載されている。このPBFは、ジメチル2,5-フランジカルボキシレートから、又は2,5-フランジカルボン酸から製造されている。PBFの製造において、重合にジメチル2,5-フランジカルボキシレートが出発物質として使用されたときに問題が生じた。ジメチルエステルから製造した場合、エステルを等モル量の1,4-ブタンジオールと接触させ、反応器内で220℃にて7時間加熱した。混合物が粘稠になったとき、メタノールを真空下でトラップに集めた。こうして得られたポリマーを冷却し、DMSOに溶解した。溶解後、それをメタノール中で沈殿させた。2,5-フランジカルボン酸を出発物質として使用した場合にも同様の方法が適用された。過剰の1,4-ブタンジオールを使用した(1.5モル/酸1モル)。出発物質を220~230℃に10時間保った。250~260℃で10時間の追加加熱工程を適用した。反応混合物が粘稠になったとき、形成された水を、反応器を真空下でポンプすることにより除去した。次いでこの粘性ポリマーを冷却し、DMSOに溶解した。その後、ポリマーをメタノール中で沈殿させた。報告されているPBFの特性は、159,000の質量平均分子量(Mw)(SEC-MALLSで測定)、47,750の数平均分子量(Mn)、228の重合度(DPn)、163℃の融点(Tm)、及び104℃ガラス転移温度(Tg)である。製造されたPBFの多分散性指数が3.0を著しく上回っていることは明らかであり、これはポリエステルが不均一であり、鎖長が広範囲の分子量にわたって様々であることを示している。
【0005】
米国特許出願公開第2014/0205786号による方法でも米国特許出願公開第2013/0171397号による方法でも、固相重合工程は適用されていない。
【0006】
欧州特許第1948709号では、PBFの一部が固相重合工程にかけられて、PBFが製造されている。欧州特許第1948709号の実施例1によれば、2,5-フランジカルボン酸と1,4-ブタンジオールとを、1:3のモル比で、150℃及び170℃の温度で約4時間接触させた。 次いで、約1時間の間5Paの真空を適用し、反応を180℃でさらに6.5時間続けた。こうして得られたポリマーを、ヘキサフルオロイソプロパノールに溶解し、メタノールで再沈殿させた。真空中60℃で乾燥した後、得られた沈殿物を150℃の温度で固相重合にかけて、59,850の数平均分子量に相当する、(標準としてポリメチルメタクリレートを用いてGPCにより測定して)285の重合度を有するポリマーを得た。質量平均分子量は報告されていない。
【0007】
温度以外について、欧州特許第1948709号は、固相重合が起こる条件については言及していない。固相重合工程をどれだけ長く続けたかについては言及されていない。さらに、この文献は、固相重合工程の速度の決定に如何なるパラメータが影響を与えるのかについて言及していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許出願公開第2014/0205786号
【文献】米国特許出願公開第2013/0171397号
【文献】欧州特許第1948709号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
特定の含有量のカルボキシル末端基を有し、結晶化工程にかけられたポリ(テトラメチレン-2,5-フランジカルボキシレート)を用いて固相重合工程を実施すと、固相重合速度が増大することが今や見出された。したがって、本発明は、固相重合ポリ(テトラメチレン-2,5-フランジカルボキシレート)ポリマーの製造方法であって、
- ポリスチレンを標準として使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定して、少なくとも10,000の数平均分子量(Mn)を有し、最高で50ミリ当量/kgまでのカルボン酸末端基含有量を有する、ポリ(テトラメチレン-2,5-フランジカルボキシレート)重縮合物を準備する工程;
- 前記ポリ(テトラメチレン-2,5-フランジカルボキシレート)重縮合物を、80~140℃の範囲の温度に保って、半結晶性重縮合物を得る工程;及び
- 前記半結晶性重縮合物を、前記半結晶性重縮合物が不活性ガス流下にあるか又は真空下にあるかのいずれかの状態で、少なくとも140℃の温度であって前記半結晶性重縮合物の融点より低い温度に保つことによって、固相重合にかける工程
を含む方法を提供する。
【0010】
本発明の方法は、重縮合反応から得られた、最大で50ミリ当量/kgまでのカルボン酸末端基含有量を有する、比較的低分子量の重縮合物を使用する。酸末端基含有量が多いと、記述した条件下で固相重合が起こらないか、あるいは固相重合速度が非常に遅いことが見出された。この重縮合物は、非晶質である傾向がある。この重縮合物を80~140℃の範囲の温度に一定期間曝すことによって、非晶質重縮合物が結晶化し、これが固相重合を促進する。本発明による方法における固相重合工程は、かなり速い速度で進行するという点で非常に有効である。さらに、達成可能な分子量は非常に高く、標準としてポリスチレンを使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定して60,000を超え得る。加えて、いくつかの従来技術の方法は、溶解工程及び沈殿工程を使用し、そこでは、2,5-フランジカルボン酸又はそのジエステルの重縮合反応後に生じるポリマーが、最初に溶解され、次いでメタノール中で沈殿される。これらの工程により、重縮合ポリマー中の低分子量成分が除去される。これは、材料の損失が発生することを意味する。本発明の方法は溶解工程を必要とせず、溶解工程が回避され得るため、本発明の方法ではこのような損失を回避することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の方法の第一工程では、ポリ(テトラメチレン-2,5-フランジカルボキシレート)重縮合物(以下、「PBF重縮合物」という。)を準備する。このPBF重縮合物は、様々な方法で得ることができる。第一の方法は、欧州特許第1948709号に記載されているものと同様である。この方法では、2,5-フランジカルボン酸(2,5-FDCA)を、1,4-ブタンジオールと混合し、エステル化反応にかける。最終重縮合物中のカルボン酸末端基の数が50ミリ当量/kgを超えないことを確実にするために、2,5-FDCA対1,4-ブタンジオールのモル比は、適切には1:1.5~1:5、好ましくは1:2~1:4の範囲内である。加えて、エステル化反応の間に形成される水を、反応混合物から除去して、形成されたエステルの鹸化が回避されるようにする。このようにして、2,5-FDCA中の大部分のカルボン酸基は、得られるエステル化反応生成物が重縮合反応にかけられる前にエステル化される。得られる重縮合物のCEG含有量は、より容易に50ミリ当量/kg未満のレベルにすることができる。エステル化反応では、2,5-FDCAと1,4-ブタンジオールとを触媒の存在下または非存在下で接触させる。エステル化反応は酸基によって触媒され、酸基は2,5-FDCAによって既に供給されているので、触媒の存在は必要とされない。エステル化反応を、適切には150~245℃、好ましくは160~245℃、さらに好ましくは160~190℃の範囲の温度で実施する。175℃未満の温度では、エステル化はかなりゆっくり進行する。最も好ましくは、エステル化反応を、175~210℃の温度範囲で実施する。190℃を超える温度では、1,4-ブタンジオールが、テトラヒドロフラン(THF)を形成しながら反応し得ることが見出された。形成されたTHFは、蒸留により容易に除去することができる。THFは水と共沸混合物を形成するので、水をTHFと共に容易に除去することができる。175℃を超える温度では、水分が完全に除去されずに鹸化を引き起こす恐れがある。それによって、最終的な重縮合物のCEG含有量が、50ミリ当量/kgを超えるレベルまで増加する可能性がある。このエステル化反応の生成物は、ビス(4-ヒドロキシブチル)-2,5-フランジカルボキシレートを含む。エステル化反応は、先行技術に記載されているような時間実施することができる。それは、反応時間が0.5~8時間、好ましくは1~6時間の範囲であり得ることを含む。
【0012】
このエステル化反応生成物を、重縮合触媒と共に、重縮合工程において減圧下で反応させる。重縮合工程は、1つ以上の別個の工程で行ってもよい。エステル化反応生成物を、真空下、例えば0.1~10ミリバールの範囲の圧力に置くことが可能である。あるいは、圧力を段階的に、例えば、100から500ミリバールの圧力での第一段階とそれに続く0.1から10ミリバールの範囲の圧力での最終真空段階により、下げてもよい。重縮合工程における温度は、180~280℃の範囲であり得る。適切には、重縮合工程において温度を上昇させることができる。重縮合反応は、1~6時間の時間継続することが好ましい。過剰の1,4-ブタンジオールは重縮合物に影響を与えるが、重縮合反応を実施する方法は重要ではない。
【0013】
上述した方法の代替法として、PBF重縮合物を、2,5-FDCAのジアルキルエステルと1,4-ブタンジオールとのエステル交換によって得ることができる。適切なジアルキルエステルには、ジ(C1-C6-アルキル)エステル、特にジメチル及びジエチルエステルが含まれる。2,5-FDCAのジアルキルエステル対1,4-ブタンジオールのモル比は、適切には1:1.1~1:2.5、好ましくは1:1.3~1:2.0の範囲である。エステル交換反応は、エステル交換触媒の存在下で適切に行われる。エステル交換工程において、アルキル基は、4-ヒドロキシブチル基によって置換される。適切には、それに応じて形成されたアルキルアルコールは、反応混合物から除去される。エステル交換反応を実施する温度は、適切には、150~250℃、好ましくは160~240℃の範囲であり得る。エステル交換反応にはわずかに過剰の1,4-ブタンジオールしか使用されないので、THF形成の危険性は最小である。したがって、エステル交換反応の間の反応温度は、少なくとも200℃が好ましく、205~235℃がより好ましい。エステル交換反応は、先行技術に記載されているような時間の間実施することができる。それは、エステル交換反応時間が0.5~6時間、好ましくは1~4時間の範囲であり得ることを含む。重縮合反応は、2,5-FDCAと1,4-ブタンジオールとからのエステル化反応生成物について上述したように実施することができる。これに関連して、出発物質がカルボン酸末端基を含まないため、得られる重縮合物のカルボン酸末端基含有量は低く、例えば50ミリ当量/kg未満になることが観察されている。
【0014】
カルボン酸末端基は、ポリ(テトラメチレン-2,5-フランジカルボキシレート)に適合された、ASTM D7409に準拠した滴定法を使用することによって決定する。 そのように修正された方法は、オルト-クレゾール中のポリ(テトラメチレン-2,5-フランジカルボキシレート)の4%(質量/体積)溶液の、滴定剤としてエタノール中0.01MのKOHを用いるその等量点までの滴定であって、指示薬としてエタノール0.1mL中の0.5mgのブロモクレゾールグリーン〔2,6-ジブロモ-4-[7-(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシ-2-メチル-フェニル)-9,9-ジオキソ-8-オキサ-9λ6-チアビシクロ[4.3.0]ノナ-1,3,5-トリエン-7-イル]-3-メチル-フェノール〕を用いる滴定を含む。
【0015】
2,5-FDCAと1,4-ブタンジオールとの反応によって、あるいは2,5-FDCAのジアルキルエステルと1,4-ブタンジオールとのエステル交換反応によって製造される重縮合物を、製造されたまま直接、すなわち溶解工程および沈殿工程に付すことなく使用して、本発明による方法の次の工程に提供することが適切であることが観察される。したがって、80~140℃の温度に保つ工程に付すべきポリ(テトラメチレン-2,5-フランジカルボキシレート)重縮合物は、2,5-FDCAの1,4-ブタンジオールを用いるエステル化から、あるいは2,5-FDCAのジアルキルエステルのエステル交換反応から、溶解工程および沈殿工程に付されることなく適切に製造される。
【0016】
上述したエステル交換反応に使用することができるエステル交換反応触媒には、金属酸化物、塩及び有機金属化合物が含まれる。適切な塩には、炭酸塩、ハロゲン化物及びカルボン酸塩、例えばギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、安息香酸塩、及びそれらの混合物が含まれる。長い炭素鎖、例えば6~20個の炭素原子等の炭素鎖を有するカルボン酸の塩を使用することもできる。そのようなカルボン酸の例は、ラウリン酸、ステアリン酸、オクタン酸、例えば、2-エチル-ヘキサン酸である。適切な有機金属化合物には、アルコラート、例えばC1-C4-アルコキシド等、並びに、グリコレート、例えばエチレングリコレート及び1~4個のメチレン基を有するグリコレートが含まれる。他の有機金属化合物は、アルキル金属カルボキシレートであり、ここでアルキル部分はC1~C6アルキル基から選択され、カルボキシレートはC1~C20カルボン酸から誘導されたものである。金属は、亜鉛、鉛、スズ、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム及びそれらの組み合わせから適切に選択される。エステル化反応触媒は必要とされないが、2,5-FDCAと1,4-ブタンジオールとのエステル化反応において、上述したエステル交換反応触媒を使用することが可能である。
【0017】
重縮合反応触媒として、多くのエステル交換反応触媒を使用することができる。適切な重縮合反応触媒には、スズ、チタン、亜鉛、アンチモン、カルシウム、マンガン、コバルト、ハフニウム、鉛、マグネシウム、アルミニウム、セリウム、ジルコニウム、及びそれらの混合物から選択される1つまたは複数の元素を含む触媒が含まれる。これらの化合物は、これらの金属の酢酸塩または炭酸塩であってもよい。あるいは、金属アルコキシド、アルキル金属化合物、又は他の有機金属化合物であってもよい。他の適切な触媒には、上述した元素の酸化物及びハロゲン化物が含まれる。好ましい触媒には、チタンアルコキシド、酢酸アンチモン、酸化アンチモン、及びグリコール酸アンチモン、例えば酸化アンチモンとエチレングリコールとの反応生成物が含まれる。重縮合反応触媒の量は、金属として計算し、出発混合物中の2,5-フランジカルボン酸のモル数に基づいて、典型的には0.005モル%~0.2モル%の範囲、好ましくは0.01~0.15モル%の範囲である。遷移金属が使用される場合、一部の金属は1つの原子価において別の原子価とは異なって機能するようである。例えば、スズ(IV)塩はスズ(II)塩よりもより無色のポリマーをもたらす傾向があるのに対して、スズ(II)塩はスズ(IV)塩よりも高い分子量を有する固相重合ポリマーをもたらす傾向がある。好ましいエステル交換反応及び重縮合反応触媒には、酢酸亜鉛、ジルコニウム(IV)ブトキシド、チタン(IV)ブトキシド、スズ(II)(2-エチルヘキサノエート)、スズ(II)アセテート、ブチルスズ(IV)トリス(2-エチルヘキサノエート)、ジブチルスズ(IV)ジラウレート、及びトリブチルスズ(IV)ベンゾエートが含まれる。
【0018】
本発明によれば、ポリ(テトラメチレン-2,5-フランジカルボキシレート)重縮合物が、
(i) ジアルキル2,5-フランジカルボキシレートと1,4-ブタンジオールとをエステル交換反応させてエステル交換反応生成物を得た後、そのエステル交換反応生成物を重縮合させる方法;及び
(ii) 2,5-フランジカルボン酸と1,4-ブタンジオールとをエステル化反応させてエステル化反応生成物を得た後、そのエステル化反応生成物を重縮合させる方法
からなる群から選択される方法の1つから適切に得られることが明らかである。
したがって、本発明は、固相重合ポリ(テトラメチレン-2,5-フランジカルボキシレート)ポリマーの製造方法であって、
- ポリ(テトラメチレン-2,5-フランジカルボキシレート)重縮合物を、
(i) ジアルキル2,5-フランジカルボキシレートと1,4-ブタンジオールとをエステル交換反応させてエステル交換反応生成物を得た後、そのエステル交換反応生成物を重縮合させる方法;及び
(ii) 2,5-フランジカルボン酸と1,4-ブタンジオールとをエステル化反応させてエステル化反応生成物を得た後、そのエステル化反応生成物を重縮合させる方法
からなる群から選択される方法の1つによって調製する工程であって、ポリ(テトラメチレン-2,5-フランジカルボキシレート)重縮合物が、ポリスチレンを標準として使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定して、少なくとも10,000の数平均分子量(Mn)を有し、最高で50ミリ当量/kgまでのカルボン酸末端基含有量を有するように、前記重縮合反応を実施する工程;
- 前記ポリ(テトラメチレン-2,5-フランジカルボキシレート)重縮合物を、80~140℃の範囲の温度に保って、半結晶性重縮合物を得る工程;及び
- 前記半結晶性重縮合物を、前記半結晶性重縮合物が不活性ガス流下にあるか又は真空下にあるいずれかの状態で、少なくとも140℃の温度であってその融点より低い温度に保つことによって、固相重合にかける工程
を含む方法も提供する。
【0019】
上で指摘したように、重縮合物中のカルボキシル末端基(CEG)の含有量は、エステル交換反応及びその後の重縮合反応のための出発物質として2,5-FDCAのジアルキルエステルを用いることによって、比較的容易に50ミリ当量/kgの値未満にすることができる。したがって、重縮合反応によって、典型的には、50ミリ当量/kg未満のカルボン酸末端基含有量を有する重縮合物がもたらされる。エステル化反応の出発物質として2,5-FDCAを使用する場合、得られる重縮合物中のCEG含有量は50ミリ当量/kgを超え得る。1,4-ブタンジオールの相対量を増加させることによって、かつ/あるいはFDCAと1,4-ブタンジオールとのエステル化反応中に形成される水を除去することによって、CEG含有量は影響を受け得る。本発明の方法では、比較的低いCEG含有量の値を有することが有利であることがわかった。 PBF重縮合物が1~50ミリ当量/kgの範囲のCEG含有量を有するときに良好な結果が得られる。 PBF重縮合物の場合、低いCEG含有量を有することが有利であることは注目に値する。国際公開第2015/137807号には、ポリ(エチレン-2,5-フランジカルボキシレート)(PEF)重縮合物中のCEG含有量は、比較的速い固相重合を得るために低すぎてはならないと記載されている。そのPEF重縮合物中のCEG含有量は、適切には15~122ミリ当量/kgである。本PBF重縮合物中のCEG含有量は低くてもよく、例えば、1~25ミリ当量/kg、好ましくは1~15ミリ当量/kg、さらに好ましくは2~14ミリ当量/kgの範囲である。驚くべきことに、このような低いCEG含有量で、固相重合反応が、重合速度に関しても達成可能な分子量に関しても最適化される。
【0020】
ポリ(テトラメチレン-2,5-フランジカルボキシレート)重縮合物は、標準としてポリスチレンを使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定して、少なくとも10,000の数平均分子量(Mn)を有する。これに関連して、標準としてポリスチレンを使用するGPCによるMnの決定は、標準としてポリメチルメタクリレート(PMMA)を使用するGPCによるMnの決定とは異なる値をもたらすことが観察される。
【0021】
本発明の方法は、標準としてポリスチレンを用いてGPCにより測定して、10,000~35,000、好ましくは12,000~30,000の範囲のMnを有するポリ(テトラメチレン-2,5-フラン-ジカルボキシレート)重縮合物を用いて適切に実施される。
【0022】
ポリ(テトラメチレン-2,5-フランジカルボキシレート)重縮合物を80~140℃の範囲の温度に保持すると、固相重合が円滑に進行し、半結晶質重縮合物が得られることが見出された。この加熱工程中に、重縮合物中の鎖が再配列し、半結晶性ポリマーを形成する。好ましくは、ポリ(テトラメチレン-2,5-フランジカルボキシレート)重縮合物を、80~130℃の範囲の温度で0.5~4時間の範囲の時間保持する。ポリ(テトラメチレン-2,5-フランジカルボキシレート)重縮合物を、適切には周囲条件に保つ。これは、圧力を高めたり低下させたりしないことを意味する。雰囲気の不活性化に関して特別な措置を取る必要はない。この処理中の雰囲気は空気であってもよい。人工的な空気又は不活性ガスの流れは必要とされない。このような流れは適切には実施しない。ポリマーの結晶化度は、ポリマーの溶融に伴う熱を定量することによって、示差走査熱量計(DSC)を用いて決定することができる。熱は、融解熱を100%結晶性の試料の融解熱に対して正規化することによって、結晶化度の百分率として報告することができる。しかし、100%結晶性の試料はまれである。それ故、結晶化度は、1グラム当たりのジュール数を単位とする正味のエンタルピーとして表されることが多く、その数はDSC技術から導かれる。溶融および結晶化のエンタルピーは、ISO 11357-3に準拠して決定することができる。本発明による方法で使用する重縮合物は、好ましくは、形成された半結晶性重縮合物が示差走査熱量測定(DSC)によって測定して、25~75J/g、好ましくは30~65J/gの結晶化度を有するような時間の間、上述した温度範囲に保たれる。
【0023】
特定の程度の結晶化度を有する半結晶性重縮合物も、融点Tmを有する。ポリマーの融点は、DSCによって容易に検出され、吸熱ピークの頂点で測定される。 本発明の目的のために、用語「融点」及び「Tm」は、Tpmと呼ばれるISO-11357-3におけるピークで測定された温度を指す。DSCが複数のピークを示す場合、融点又はTmは最高温度でのピークのTpmを指す。ISO 11357-3規格にはそのような融点決定が記載されている。この測定によれば、半結晶性重縮合物は、示差走査熱量測定法(DSC)により測定して、165~175℃の範囲の融点を有することが好ましい。本発明の方法の間に、重縮合物の融点および結晶化度が上昇することが観察されている。
【0024】
このようにして得られた半結晶性重縮合物を、続いて固相重合反応にかける。このために、半結晶性重縮合物を少なくとも140℃であってその融点より低い温度に保ち、その間、半結晶性重縮合物を不活性ガス流下又は真空下に置く。好ましくは、半結晶性重縮合物を、固相重合の間、その融点より5~30℃低い温度に保つ。典型的には、固相重合の間、半結晶質重縮合物を、145~165℃の範囲の温度に保つことが必要とされる。1つの実施形態では、半結晶質重縮合物の加熱を真空中、例えば0.001~0.2ミリバールの圧力レベルを維持しながら行う。好ましい他の実施形態では、固相重合反応の間、不活性ガスを半結晶性重縮合物に沿って通過させながら、半結晶性重縮合物を加熱する。不活性ガスは、窒素、ヘリウム、アルゴン、ネオン、二酸化炭素、及びそれらの混合物から適切に選択される。不活性ガスは、適切には、実質的に水蒸気を全く含まない。好ましくは、不活性ガス流を使用するのは、不活性ガス流の使用が、典型的には、真空の使用よりも副生成物のより効果的な除去に有利に働くからである。特に、ブタンジオール残基から形成される可能性があるテトラヒドロフラン、及び溶融加工された物品中又は溶融加工に使用される器具類内に白いダスト又は微粒子を形成する可能性がある環状オリゴマーが、不活性ガス流の使用によってより効果的に除去される。
【0025】
半結晶性重縮合物及びその指定された範囲のカルボキシル末端基を得るために、本固相重合反応工程中に分子量が増加する速度は非常に有利である。それは、所望の最終分子量に応じて、当業者が望ましいと考える限り、固相重合を延長することができることを意味する。典型的には、半結晶性重縮合物を、固相重合の間、2~120時間、好ましくは12~96時間の範囲の時間、その融点未満の温度に保つ。
【0026】
本発明による方法で得られる固相重合ポリマーは、非常に透明かつ無色であることがわかった。 欧州特許第1948709号による方法で得られるポリマーは85%の光透過率を有すると述べられているので、それは注目に値する。従って、これらの先行技術のポリマーは、6.5%のヘイズを有する(ヘイズ及び光透過率の両方が、JIS K 7105に従って決定されており、これはASTM D1003と同等である)。吸光度と光透過率との間の関係:吸光度=-log(パーセント透過率/100)によれば、欧州特許第1948709号のポリマーの吸光度は約0.07であると見られる。
【0027】
本発明による方法を使用して製造されたポリマーを、400nmの波長で、ジクロロメタンとヘキサフルオロイソプロパノールとの8:2体積/体積比の混合物中30mg/mLの濃度で吸光度測定に供した。これらのポリマーは、先行技術のポリマーと比較した吸光度によって示したとおり、改善された光学特性を示す。 欧州特許第1948709号も、吸光度を改善するためにどのような対策を適用することができるのかを示していない。したがって、本発明に従って製造されたPBFポリマーがこの有利な性質を有することは驚くべきことである。
【0028】
従って、本発明は、168~175℃の範囲の融点を有し、標準としてポリスチレンを使用するゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって決定して少なくとも40,000の数平均分子量(Mn)を有し、かつ、上述した通りに測定して最大で0.05までの吸光度を有する、ポリ(テトラメチレン-2,5-フランジカルボキシレート)ポリマーをも提供する。これらのポリマーが、最大で3.0まで、適切には1.9~2.6、より好ましくは2.0~2.45の多分散性指数を有することはさらに驚くべきことである。これは、製造されたポリマーが、米国特許出願公開第2013/0171397号に従って製造されたPBFよりもより均一であることを示している。それにもかかわらず、本発明によるポリマーの質量平均分子量(Mw)は、むしろ高くなり得る。135,000を超えるMwの値を比較的容易に達成することができる。適切には、本発明によるポリマーのMwは、全てGPCにより、標準としてポリスチレンを用いて測定して、100,000~250,000、好ましくは100,000~200,000、より好ましくは120,000~175,000の範囲にある。
【0029】
ポリマーは、少なくとも45,000、好ましくは45,000~80,000の範囲の数平均分子量を都合よく有することができる。数平均分子量は、固相重合を延長することによって調節することができる。
【0030】
吸光度は非常に低くなり得る。その値は、重縮合反応及び/又は固相重合反応に使用される触媒によってある程度影響を受け得る。吸光度は、好適には、0.001~0.04の範囲である。
【0031】
ポリマーの結晶化度は、DSCによって測定して、適切には30~85J/g、好ましくは35~65J/gの範囲であり得る。
【0032】
こうして得られたポリマーは、優れた機械的性質を有する。ポリマーは、優れたテナシティ(tenacity)を有する繊維に紡糸され得る。モノフィラメントを紡糸することができ、紡糸されたままのモノフィラメントを、1以上の延伸工程で、例えばホットピンを使用して、2~10、好ましくは3~8の範囲の比に延伸することができる。このモノフィラメントは、優れたテナシティを有する。250~500mN/tex、好ましくは300~400mN/texの範囲のテナシティが達成可能である。破断点伸びは15~50%の範囲内、例えば20~45%であり得る。繊維中のポリマーの結晶化度は、30~70J/gの範囲内であり得る。延伸繊維の複屈折は、紡糸されたままの繊維よりも高い。例えば、繊維が196μmの直径で紡糸された場合、0.0016の複屈折(△n)を有し得る。4の延伸比で延伸された場合、104μmの直径及び0.1433の複屈折を有し得る。2の延伸比で延伸された場合、複屈折は0.1237に増加した。これは、本発明によるポリマーから製造された繊維が、延伸比次第で、0.2~0.001の範囲の複屈折を有し得ることを示す。
【0033】
得られたポリマーは、優れたガスバリア性をも有する。したがって、それらは包装材料、例えばフィルム、又は容器、例えばボトル等としての使用に非常に適している。ポリマーは、35~45℃の範囲のガラス転移温度を有する。無配向フィルムでは、ポリマーは、例えばポリブチレンテレフタレート(PBT)よりも優れたガスバリア性を有する。ポリマーは、23℃及び相対湿度50%でml(STP)・mil(千分の1インチ)/100平方インチ・日・気圧で表される酸素透過度を、PBTの6~7と比較して、1.6有する。透水性は、本発明のポリマー及びPBTについてほぼ同じである。38℃及び相対湿度100%で、PBTの1.3g・mil/100平方インチ・日・気圧と比較して、本発明によるポリマーの場合は1.5g・mil/100平方インチ・日・気圧である。CO2透過率は、23℃及び相対湿度0%で、約5.2ml(STP)mil/100平方インチ・日・気圧である。ポリマーの機械的性質が優れ、透明性も優れているため、本ポリマーは、包装、例えばボトル及びフィルム等に非常に適している。
【0034】
本方法およびポリマーを、ポリ(テトラメチレン-2,5-フランジカルボキシレート)ポリマーを参照して記述してきた。このポリマーは、本質的に2,5-フランジカルボキシレート基及びテトラメチレン部分のみからなり得る。しかし、本出願の目的のためには、ポリマーは、少量の、例えば最高で10モル%までの、適切には最高で5モル%までの1種以上の他のジカルボン酸基及びジオール部分を含んでいてもよい。適切なジカルボン酸基には、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、アジピン酸、2,4-フランジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、及びそれらの混合物の残基が含まれる。適切なジオールには、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、イソソルビドが含まれる。しかし、ポリ(テトラメチレン-2,5-フランジカルボキシレート)ポリマーは、実質的に2,5-フランジカルボキシレート及びテトラメチレン部分からなることが好ましい。
【0035】
本発明を以下の実施例によって説明する。
【実施例】
【0036】
[一般的手順]
100mLの容器に、13.8g(75mmol)のジメチルフランカルボキシレート(DMF)及び12.8gの1,4-ブタンジオールを導入した。これは、1,4-BD:DMFのモル比が1.9であることを意味する。特定の量のエステル交換反応及び重縮合反応触媒も添加した。
【0037】
得られた混合物を、エステル交換反応温度に加熱した油浴によって加熱した。エステル交換反応温度は、215℃であった。メタノールが蒸留し始め、これを除去した。実質的に全てのメチル基がヒドロキシブチル基で置換されたときに、容器に真空を適用し、容器の温度を約225℃に上げて、重縮合反応を開始させた。特に示さない限り、重縮合反応を2.5時間の間続けた。得られた重縮合物を冷却して固体にし、粉砕し、篩いにかけた。
【0038】
重縮合粒子を、結晶化のために110℃で2時間の間加熱して、半結晶性重縮合物を得た。
【0039】
結晶化後、4mL/分の窒素流下(mL量は標準温度及び圧力で測定)、150℃の温度に半結晶性重縮合物を保持することによって、半結晶性重縮合物を固相重合にかけた。固相重合反応の様々な時間間隔で、数平均分子量を測定した。
【0040】
[実施例1]
触媒としてチタン(IV)ブトキシドを、DMFの量に基づいて金属として計算して0.02、0.03、又は0.04モル%の量で使用して、上述した一般的手順を用いて4つの試験を行った。エステル交換反応を4時間続けた。その後、重縮合反応を開始し、以下に示す時間数継続させた。重縮合反応温度は240又は225℃であった。重縮合物のCEG含有量及び分子量(Mn及びMw、ポリスチレンを標準として用いてCEGによって測定)を測定した。重縮合物を、一般手順に記述したとおりに固相重合(SSP)にかけた。固相重合ポリマーのMw’及びMn’を、固相重合の様々な時間後に測定した。多分散指数(PDI)は、Mw/Mnとして計算した。固体重合ポリマーの吸光度〔400nmでのジクロロメタン:ヘキサフルオロイソプロパノール8:2(体積/体積)の混合物中の30mg/mLの濃度の試料で測定〕も、Heliosα(ThermoSpectronic)分光光度計を使用して測定した。
【0041】
反応条件及び結果を表1に示す。
【0042】
【0043】
試験番号1は比較試験である。これは、50ミリ当量/kgを超える重縮合反応後のCEG含有量を有する。他の試験は、50ミリ当量/kg未満のCEG含有量を有する。試験番号2~4の結果と比較試験番号1の結果との比較は、SSPが起こる速度がはるかに高く、かつ、より高い分子量がもたらされることを示している。
【0044】
これらの結果は、試験番号2~4のポリマーの吸光度が、比較試験番号1のポリマーの吸光度よりも低いことを示している。
【0045】
[実施例2]
重縮合反応温度の影響を示すために、一般に上述した試験番号4に従って、試験を行った。各試験におけるエステル交換反応時間は4時間であった。重縮合温度を変えた。温度を高くすると、重縮合反応速度が増加するだけでなく、CEG含有量も増加することがわかった。重縮合反応時間は、CEG含有量が適切な限度を超えないように調節した。条件及び結果を以下の表2に示す。
【0046】
【0047】
[実施例3]
スズを含有するエステル交換反応及び重縮合反応の触媒の性能を示すために、5つのさらなる試験を行った。反応条件は、一般に、一般手順に記述した通りであった。使用した触媒は、ブチルスズ(IV)トリス(2-エチルヘキサノエート)(「触媒1」)、ジブチルスズ(IV)ジラウレート(「触媒2」)、トリブチルスズ(IV)ベンゾエート(「触媒3」)、スズ(II)(2-エチルヘキサノエート)(「触媒4」)、及び酢酸スズ(II)(「触媒5」)であった。反応条件及び結果を表3に示す。
【0048】
【0049】
[実施例4]
一連の試験において、2,5-FDCAを、金属として2,5-FDCAのモル量に基づいて計算して0.04モル%のチタン(IV)ブトキシドの存在下で、1,4-ブタンジオール(1,4-BD)と重合させた。2,5-FDCAを、ある量の1,4-ブタンジオール及び触媒と、175℃で混合した。その結果、1,4-ブタンジオール中の固体2,5-FDCAのスラリーが得られた。水が発生し、これを除去した。約4時間後に混合物が透明になったとき、混合物をさらに3時間の間徐々に加熱し、1時間に亘ってエステル化反応温度である205℃に保った。重縮合反応は、一般手順に記述したとおり、225℃で2.5時間行った。こうして得られた重縮合物を、冷却して固化させ、粉砕し、篩いにかけた。
【0050】
重縮合粒子を、結晶化のために110℃で2時間の間加熱して、半結晶性重縮合物を得た。
【0051】
結晶化後、半結晶性重縮合物を、4mL/分の窒素流下で150℃の温度に保って、固相重合を達成した。
【0052】
重縮合物のCEG含有量及びMnを測定した。固相重合の様々な段階におけるMn’も測定した。最後に、固相重合ポリマーの吸光度を上述したとおりに測定した。重縮合物及び固相重合ポリエステルのPDIは、両方の試験において、3.0未満であった。
【0053】
他の反応条件及び結果を表4に示す。
【0054】
【0055】
試験番号14は比較試験であり、重縮合物は50を超えるCEG含有量を有する。これらの結果は、試験番号13のSSP法が、試験番号14のSSP法よりも、分子量のより速い増加をもたらし、より高い最終分子量をもたらし、かつ、より低い吸光度を有するポリマーを生じることを示している。