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特許7041147造影剤流の肝灌流を特徴付けるシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】造影剤流の肝灌流を特徴付けるシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/06 20060101AFI20220315BHJP
【FI】
A61B8/06 ZDM
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019524447
(86)(22)【出願日】2017-11-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-28
(86)【国際出願番号】 EP2017078690
(87)【国際公開番号】W WO2018087198
(87)【国際公開日】2018-05-17
【審査請求日】2020-11-04
(31)【優先権主張番号】17161867.1
(32)【優先日】2017-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2016/105682
(32)【優先日】2016-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】グー シャオリン
(72)【発明者】
【氏名】デン インフイ
(72)【発明者】
【氏名】リ シャオミヌ
(72)【発明者】
【氏名】シャンダサニ ヴィジャイ タークル
【審査官】冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-158360(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0172562(US,A1)
【文献】特表2011-509789(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0298710(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0253190(US,A1)
【文献】国際公開第2012/029459(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0116557(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 - 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
造影剤流が存在する際に肝臓から取得される超音波データに基づいて造影剤流の肝灌流を特徴付けるシステムであって、
肝動脈、及び前記肝臓の肝実質における少なくとも1つの関心領域(ROI)における造影剤流の時間/強度曲線であって、前記超音波データから生成される時間/強度曲線を供給する第1情報源を有する、システムにおいて、
記肝動脈における造影剤流の時間/強度曲線を、前記肝実質の前記ROIにおける造影剤流の時間/強度曲線に合致するようにスケーリングすることにより、前記肝実質の前記ROIにおける動脈流を表す時間/強度曲線データを生成すると共に、前記肝実質の前記ROIにおける動脈流を表す時間/強度曲線データを前記肝実質の前記ROIにおける造影剤流の時間/強度曲線から減算することにより、前記肝実質の前記ROIにおける静脈流を表す時間/強度曲線データを生成する時間/強度曲線スケーラ及び減算器、
を有することを特徴とする、システム。
【請求項2】
前記第1情報源は、
造影剤流が存在する際に取得される超音波肝臓画像データを供給する第2情報源と、
前記超音波肝臓画像データを入力し、造影剤流から高調波エコー信号データを生成する非線形信号分離器と、
前記高調波エコー信号データに応答して、記肝動脈における造影剤流の時間/強度曲線を生成する時間/強度曲線プロセッサと、
を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記時間/強度スケーラ及び減算器は、更に、前記肝動脈における造影剤流の全時間/強度曲線を振幅的に、前記肝動脈における造影剤流の時間/強度曲線の振幅が前記肝実質の前記ROIにおける時間/強度曲線の或る区域又は該区域の一部における振幅と合致するようにスケーリングし、前記区域が、前記肝動脈からの造影剤の到達から、前記肝臓の門脈からの造影剤の後の到達時までの期間により境界を定められる、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記第1情報源は前記肝臓の前記門脈における造影剤流の時間/強度曲線を供給し、
前記時間/強度曲線スケーラ及び減算器が、前記肝動脈における造影剤流の時間/強度曲線に基づいて、該肝動脈からの造影剤の到達を決定すると共に、前記肝臓の前記門脈における造影剤流の時間/強度曲線に基づいて、該門脈からの造影剤の後の到達時を決定する、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記時間/強度曲線スケーラ及び減算器が、前記肝動脈における造影剤流の時間/強度曲線を時間的にスケーリングする、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記肝実質の前記ROIにおける動脈流を表す時間/強度曲線データ及び前記肝実質の前記ROIにおける静脈流を表す時間/強度曲線データの1以上を出力する出力ユニット、
を更に有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記出力ユニットが、前記肝実質の前記ROIにおける動脈流を表す時間/強度曲線及び前記肝実質の前記ROIにおける静脈流を表す時間/強度曲線を出力する、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記出力ユニットが、肝臓における動脈流又は静脈流のパラメータ的マップを出力する、請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
造影剤流が存在する際に肝臓から取得される超音波肝臓画像データに基づいて造影剤流の肝灌流を特徴付ける方法であって、前記方法は、
肝動脈位置における造影剤流の時間/強度曲線、及び、前記肝臓の肝実質における少なくとも1つの関心領域(ROI)の各々における造影剤流の時間/強度曲線を取得するステップであって、これら時間/強度曲線が前記超音波肝臓画像データから生成されるステップを有する、方法において、
記肝動脈位置における造影剤流の時間/強度曲線を、前記肝実質の前記ROIにおける造影剤流の時間/強度曲線に合致するようにスケーリングすることにより前記肝実質の前記ROIにおける動脈流を表す時間/強度曲線データを成するステップ、及び
前記肝実質の前記ROIにおける動脈流を表すスケーリングされた時間/強度曲線データを前記肝実質の前記ROIにおける造影剤流の時間/強度曲線から減算することにより、前記肝実質の前記ROIにおける静脈流を表す時間/強度曲線データを生成するステップ
を有することを特徴とする、方法。
【請求項10】
前記肝臓の画像においてROIを選択するステップを更に有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記肝臓の造影剤流画像を取得するステップ、
前記造影剤流画像に基づいて造影剤流から高調波エコー信号データを生成するステップ、並びに、
前記高調波エコー信号データから前記肝実質のROIにおける造影剤流の時間/強度曲線及び前記肝動脈位置における造影剤流の時間/強度曲線を生成するステップ、
を更に有する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記スケーリングが、前記肝動脈位置における造影剤流の時間/強度曲線の初期上昇を前記肝実質の前記ROIにおける造影剤流の時間/強度曲線の初期上昇に合致させるステップを更に有する、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記初期上昇は、肝動脈からの造影剤の到達から、前記肝臓の門脈からの造影剤の後の到達時までの期間又は該期間の一部により境界を定められ、
当該方法は、更に、前記門脈の位置における造影剤流の時間/強度曲線を取得すると共に、前記門脈の位置における造影剤流の時間/強度曲線に基づいて、前記門脈からの造影剤の前記後の到達時を決定するステップを更に有する、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記肝臓における動脈流を表す時間/強度曲線データ及び前記肝臓における静脈流を表す時間/強度曲線データの1以上のパラメータ的マップを生成するステップを更に有する、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
コンピュータにより実行された場合に、該コンピュータに請求項9から14の何れか一項に記載の方法を実行させる命令を有する、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造影剤流の肝灌流を特徴付けるシステムに、特にはコントラスト強調超音波画像データを処理するシステムに関する。コントラスト強調超音波撮像は、医師が肝腫瘍等の病変を識別し及び特徴付けることを支援することができることが分かっている。
【背景技術】
【0002】
肝炎B及び肝炎C患者は、原発性肝臓癌、肝細胞癌腫(HCC)を進展させる高いリスクにあることが分かっている。肝炎Cは1980年代早期において輸血を介して患者に罹患されたとの発見により、病変は早期の段階において最良に治療されるので、HCCの発症を定期的に検査することを要する膨大な数の肝炎C患者が残存している。当該疾病の通常の進行は、肝炎から肝硬変へ、更にHCCへというものである。肝臓疾病の進行に関する利用し易い監視技術は、この重大な疾病の早期検出を支援する広範囲のアプリケーションを有するであろう。
【0003】
HCCに加えて、肝臓で生じ得る多数の病変が存在する。Ultrasound Quarterly, vol. 19, no. 1, 頁27~ (2003) に公開されたM. Averkiou 他による論文“Ultrasound Contrast Imaging Research”は、4つの原発性肝臓病変:即ち、肝細胞癌腫(HCC)、何らかの他の箇所における原発性腫瘍からの転移、血管腫及び限局性結節性過形成(focal nodal hyperplasia)を述べている。前者の2つは悪性であり、後者の2つは良性である。肝臓内の病変を識別する技術は、一層詳細な診断が肝臓内で見付かる全ての病変を識別及び区別することができるように、これらの病変の4つ全てを検出することができなければならない。IEEE TRANSACTIONS ON MEDICAL IMAGING, vol. 27, no. 10 頁1449~ (2008) に公開された G. J. Lueck 他による論文“Hepatic Perfusion Imaging Using Factor Analysis of Contrast Enhanced Ultrasound”は、独立した栄養血管、即ち、肝動脈及び門脈からのコントラスト強調の2つの異なる位相の視覚的分離のために因子分析を用いる方法を提示している。国際特許出願公開第2011/041244号は、肝臓の少なくとも1つのコントラスト強調超音波画像において主肝動脈(MHA)の位置及び主門脈(MPV)の位置を識別するステップ、MHA及びMOVにおける造影剤の灌流に対応する時間/強度情報を得るステップ、及びバイオマーカ指標値を決定するステップを有する、肝臓を評価する方法を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
肝臓病変は他の癌と同様に早期に検出された場合に最も効果的に治療されるので、高リスク患者は、これらの疾病の兆候に関して頻繁に監視されねばならない。しかしながら、肝臓病変は、早期の段階では、小さなサイズ故に従来の診断撮像によって検出することは、しばしば、困難である。このように、医師は、しばしば、病変が生じている他の兆候を捜すための診断を実行する。これらの兆候の1つは、肝臓への血流の変化である。肝臓は、固有の血液供給網を有する。肝臓に対する新鮮な血流の主たる源は、肝動脈からの動脈流入である。しかしながら、肝臓は二次的血液供給部、即ち腹部の門脈を有している。両者は動脈及び静脈であるが、これらの供給源は異なって機能する。肝動脈からの拍動的血流は、他の動脈と同様に、収縮期の直後に発生する。門脈からの血液流入は、心臓サイクルにおいて後半に発生する。これらの2つの源からの血流の相対的タイミング及び量は、肝臓における病変の発現に関係付けられている。このように、これらの2つの源からの肝臓への血流の特徴を分析することができることが望ましい。
【0005】
しかしながら、肝実質における血流は、これら2つの源からの血流の結合(合成)である。これらの別個の源から肝臓内の関心領域に到来する血液の量を別個に識別することは不可能である。肝臓内の異なる関心領域における血流を肝動脈及び門脈流に関係するものとして分離することができることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の原理に従い、肝臓における関心領域における血流の源を動脈又は静脈であると識別するシステム及び方法が記載される。発明者は、肝臓における結合(合成)された血流は、肝動脈及び門脈の両方からの流入に線形に関係すると認識した。肝動脈における血流の時間/強度曲線(TIC)又は付加的に門脈における血流のTICが、これらの血液供給の別個の源に対する基準として用いられる。肝実質における関心領域(ROI)内の血液灌流の時間/強度曲線があり、肝動脈TICのスケーリングされた複製が、ROIのTICから減算されて、当該TICを2つの曲線、即ち肝動脈流入に関係する一方及び門脈流入に関係する他方に分離する。
【0007】
更に、発明者は、ROIのTICの初期部分は、流入が肝動脈からのみのものである場合、肝動脈時間/強度曲線に大部分関係すると認識した。従って、本発明の幾つかの実施態様によれば、肝動脈における造影剤流の全時間/強度曲線は振幅的に、該肝動脈における造影剤流の時間/強度曲線の初期部分がROIにおける時間/強度に合致するようにスケーリングされる。該初期部分は流入が実質的に肝動脈からのみのものである区域又は該区域の一部とすることができ、これは、例えば肝動脈からの造影剤の到達から肝臓の門脈からの造影剤の後の(遅い)到達時までの期間により境界を区切ることができる。ROIにおける肝動脈からの造影剤の到達は、該ROIにおける造影剤の到達に等しいと推定することができる。ROIにおける門脈からの造影剤の到達時は、多分、ROIにおける前記造影剤の到達より所定の期間だけ遅いと推定することができる。加えて又は代わりに、ROIにおける門脈からの造影剤の到達時は、該門脈における造影剤流の時間/強度曲線に基づいて推定することができる。
【0008】
幾つかの他の実施態様によれば、肝動脈における造影剤流の時間/強度曲線は更に時間的にスケーリングすることができる。例えば、該時間的なスケーリングは時間シフト(ずらし)として実施することができる。
【0009】
肝動脈、門脈及びROIにおける造影剤流の時間/強度曲線(TIC)は、種々のやり方で提供することができる。或る例においては、当該肝臓のコントラスト強調超音波(CEUS)画像データに関する情報源が存在し、TICは該コントラスト強調超音波画像データから既知の又は将来の技術を用いて生成される。このようなCEUS画像データの情報源は、ローカルな又は遠隔の記憶媒体とすることができる。このようなCEUS画像データの源は、超音波プローブとすることができる。何らかの他の例においては、TICを直接供給する情報源が存在し、該情報源はローカルな又は遠隔の記憶媒体であり得るか、又は時間/強度曲線プロセッサであり得る。
【0010】
幾つかの他の実施態様によれば、前記ROIにおける動脈流を表す時間/強度曲線データ及び前記ROIにおける静脈流を表す時間/強度曲線データのうちの1以上を出力する出力ユニットが設けられる。該時間/強度曲線データは、肝臓における何れか一方又は両方の血流源の時間/強度曲線の1以上の特徴(特性)とすることができる。前記出力ユニットは、ディスプレイ(表示器)等のユーザインターフェースを有することができる。加えて又は代わりに、該出力ユニットは、上記時間/強度曲線データを何らかの種類の通信リンクを介して送出するためのデータ通信ユニットを有することができる。このようにして、別個のユーザインターフェースが当該時間/強度曲線データを受信し、該データをユーザに提示することができる。
【0011】
該時間/強度曲線データは種々のやり方で提示することができる。幾つかの実施態様においては、1以上のROIの1以上の特徴的パラメータを、テクスチャ、グラフィック又はオーディオのフォーマットで提供することができる。幾つかの実施態様においては、撮像領域における各撮像点に関するパラメータを表すパラメータマップを生成し、表示することができる。例えば、肝臓における動脈流を表す時間/強度曲線データ又は肝臓における静脈流を表す時間/強度曲線データのパラメータ的マップを生成することができる。更に、該パラメータ的マップは、当該肝臓のBモード画像上に重ねることができる。
【0012】
幾つかの他の実施態様によれば、肝臓画像内のROIを選択するためにユーザ制御を設けることができる。更に、該ユーザ制御は、肝臓画像におけるROIの空間位置を当該時間/強度曲線プロセッサに供給するように構成される。
【0013】
本発明の第1態様の実施態様によれば、造影剤流が存在する際に肝臓から取得される超音波データに基づいて造影剤流の肝灌流を特徴付けるシステムが提供される。該システムは、肝動脈、門脈及び前記肝臓の肝実質における少なくとも1つの関心領域(即ち、ROI)における造影剤流の時間/強度曲線の第1情報源であって、前記時間/強度曲線が前記超音波データから生成されるような第1情報源を有し、該システムは、前記少なくとも1つのROIのうちの或るROIに関して、前記肝動脈における造影剤流の時間/強度曲線を該ROIにおける造影剤流の時間/強度曲線に対しスケーリングすることにより、該ROIにおける動脈流を表す時間/強度曲線データを生成すると共に、該ROIにおける動脈流を表す時間/強度曲線データを該ROIにおける造影剤流の時間/強度曲線から減算することにより、該ROIにおける静脈流を表す時間/強度曲線データを生成するよう構成された時間/強度曲線スケーラ及び減算器により特徴付けられる。
【0014】
幾つかの実施態様において、前記第1情報源は、造影剤流が存在する際に取得される超音波肝臓画像データの第2情報源と、前記超音波肝臓画像データを入力するように結合されると共に、造影剤流から高調波エコー信号データを生成するように構成された非線形信号分離器と、前記高調波エコー信号データに応答して、前記少なくとも1つのROIにおいて前記肝動脈における造影剤流の時間/強度曲線を生成するように構成された時間/強度曲線プロセッサと、を有する。
【0015】
本発明の第2態様の実施態様によれば、造影剤流が存在する際に肝臓から取得される超音波肝臓画像データに基づいて造影剤流の肝灌流を特徴付ける方法が提供される。該方法は、肝動脈位置における造影剤流の時間/強度曲線、及び、前記肝臓の肝実質における少なくとも1つの関心領域(即ち、ROI)の各々における造影剤流の時間/強度曲線を取得するステップであって、前記時間/強度曲線が前記超音波肝臓画像データから生成されるステップを有する。該方法は、前記少なくとも1つのROIのうちの或るROIに対して、前記肝動脈位置における造影剤流の時間/強度曲線を該ROIにおける造影剤流の時間/強度曲線に合致するようにスケーリングすることにより、該ROIにおける動脈流を表す時間/強度曲線データを生成するステップ、及び、該ROIにおける動脈流を表す時間/強度曲線データを該ROIにおける造影剤流の時間/強度曲線から減算することにより、該ROIにおける静脈流を表す時間/強度曲線データを生成するステップにより特徴付けられる。
【0016】
本発明の第3態様の実施態様によれば、コンピュータにより実行された場合に該コンピュータに前記方法を実行させる命令を有するコンピュータプログラム製品が提供される。
【0017】
一実施態様によれば、プロセッサにより実行された場合に該プロセッサに前記方法を実行させるコンピュータ実行可能な命令を記憶するためのコンピュータ読取可能な記憶媒体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、肝臓の図であり、臓器の底部への肝動脈及び門脈の入口を示す。
図2図2は、肝臓に入る肝動脈の位置を示す肝臓の造影及びBモード画像を示す。
図3図3は、肝臓に入る門脈の位置を示す肝臓の造影及びBモード画像を示す。
図4図4は、肝動脈における及び門脈における造影剤流の時間/強度曲線を示す。
図5図5は、肝動脈における造影剤流の簡略化された時間/強度曲線を示す。
図6図6は、門脈における造影剤流の簡略化された時間/強度曲線を示す。
図7図7は、肝臓内の関心領域における灌流の典型的な時間/強度曲線を示す。
図8図8は、本発明の原理に従って構成された超音波診断撮像システムをブロック図の形で示す。
図9図9は、本発明の原理に従って肝臓の診断を実行する方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、肝臓及び該肝臓の流れ網の図である。肝臓は、3つの流れ源のための管ツリーを、即ち、肝胆汁の流れのための胆管ツリー、腹部からの栄養血流を供給する門脈10及び動脈血流源である肝動脈12を含む。これらの網状体の毛細管構造は、肝実質全体にわたり絡み合わされ肝組織が動脈源及び静脈源の両方からの血液により灌流されるようにする。肝動脈12及び門脈10には、図示されるように、肝臓の底部において当該臓器に入る場所において別個にアクセスすることができる。
【0020】
図2は、2つの超音波画像、即ち、左側の造影画像及び右側のBモード画像を示すもので、肝動脈12の位置及び該肝動脈の血流を示している。これら2つの画像は、血管系がマイクロバブル造影剤により灌流されて同時に取得された。左側の造影画像はマイクロバブルからの高調波(非線形)信号戻りを強調する一方、組織からの基本信号周波数を抑圧することにより処理されているが、右側のBモード画像は高調波周波数が抑圧された基本周波数信号から生成されている。
【0021】
両画像において、肝動脈12は輪郭が描かれている。肝動脈12は、造影灌流血液が血管を介してポンプ送りされるので、各心拍に伴う周期的高輝度化により左側の造影画像においては容易に位置特定することができる。造影画像及び組織画像の両方を同時に示すことは、超音波検査者が画像取得の間においてプローブを安定させることを助けることになる。造影剤流が抑圧された右側の組織画像は、相対的に静的でなければならず、超音波検査者がプローブを同一のスキャン面に常に位置合わせされるように維持することを助ける一方、一層動的な造影画像における拍動的流れは、肝動脈を自身の周期的血流から見付けることを支援する。
【0022】
図3は、他の対の合致する造影及び組織画像であり、今度は、門脈10の輪郭描写が図に追加されている。図1の図示と一貫して、肝動脈12及び門脈10は肝臓の下で互いに隣接してスキャンするためにアクセスすることができることが分かる。
【0023】
図4は、肝動脈12及び門脈10における造影剤が灌流される血流から時間にわたり取得されたエコー信号から、各々、生成された第1及び第2時間/強度曲線302及び304を示すグラフである。第1造影剤強度情報303(接続された点を有して示されている)は肝動脈12から時間にわたり取得された高調波信号の戻りから生成される一方、第2造影剤強度情報305は門脈10から時間にわたり取得された高調波信号の戻りから生成された。第1及び第2造影剤情報値は、何らかの好適なアルゴリズムを用いて例えば平均化、曲線当てはめ等により当該超音波システムにより処理されて、第1及び第2時間/強度曲線302及び304を各々形成する。従って、第1時間/強度曲線302は(例えば、当てはめ、平均化等により)第1造影剤強度情報303に対応し、従って肝動脈12内の時間にわたる造影剤の流れの指示情報となる。同様に、第2時間/強度曲線304は(例えば、当てはめ、平均化等により)第2造影剤強度情報305に対応し、従って門脈10内の時間にわたる造影剤の流れの指示情報となる。
【0024】
従って、第1時間/強度曲線302は、図2における肝動脈12上に描かれた第1ROI内の造影剤流の第1グループのピクセルの変化する輝度に対応し、該肝動脈における時間にわたる造影剤の流れに関係する。同様に、第2時間/強度曲線304は、第2グループのピクセル(即ち、図3における門脈10上に描かれたもの)の変化する輝度に対応し、門脈における時間にわたる造影剤の流れに関係する。
【0025】
図4は、当該時間/強度曲線(TIC)から得ることができる複数の定量化されたパラメータも示している。306に示されるものは肝動脈12のTICのピーク強度であり、tからtまでの時間310は当該動脈内への造影剤の最初の到達からピーク強度までの時間であり、ウォッシュイン時間と称される。所望なら、時刻tとtとの間の曲線の平均傾斜を計算することもできる。同様に、308は門脈10のTICのピーク強度を示し、tからtまでの期間312は当該静脈内への造影剤の最初の到達から該造影剤流のピーク強度までのウォッシュイン時間である。両曲線のピーク強度点に続いて、これら曲線は造影剤が血管からウォッシュアウトする(流れ去る)につれて減退する。望むなら、当該曲線の該部分の持続時間及び傾斜を定量化することもできる。
【0026】
図5及び図6は、肝動脈12及び門脈10に関する時間/強度曲線の例を各々示す。図5において、肝動脈TIC72は時刻tにおける閾値TH1のレベルからピーク造影剤強度のピーク閾値TH2まで上昇し始める。その後、動脈内の造影剤の量は、曲線72が示すように最初は緩やかに、次いで一層急速に減少する。図6における門脈TIC74は、時刻tにおける門脈内への造影剤の遅い到達まで上昇し始めることはなく、短時間後に、より低いピーク強度まで上昇し、該強度は該図に示される曲線74の時間の間において実質的に維持される。
【0027】
これら2つの流れの源からの肝実質の毛細管構造における造影剤の流れは、図7に示されるように、両者の組み合わせである。当該肝実質における該複合TICは曲線72(肝動脈流からの)及び曲線74’であり、該曲線74’は門脈流の到達後に曲線72のレベルを超える。これら2つの流れの源を区別する際に重要なものは、図7における陰影区域70である。これは、期間t~t(肝動脈からの造影剤の到達の時点から門脈からの造影剤の到達の後の時点まで)により境界を区切られる区域である。図4において、これは期間t~tであろう。この時間は、肝臓内の血流が肝動脈からの動脈血流のみである時間窓である。即ち、図7における時刻tの後、肝臓内の流れは両源からの流れの結合となる。
【0028】
ここで図8を参照すると、本発明の原理に従って構成された超音波システムがブロック図の形で示されている。超音波システム100は、超音波パルスを送信及び受信する超音波トランスジューサ素子のアレイ102を含む。該アレイは、二次元撮像のための一次元の直線状若しくは湾曲したアレイとすることができ、又は2若しくは3次元における電子的ビームステアリング及び収束のためのトランスジューサ素子の二次元マトリクスとすることができる。アレイ102における超音波トランスジューサ素子は、ビーム成形器(ビームフォーマ)30による計時された駆動により超音波エネルギのビームを送信すると共に、この送信に応答して返送されるエコーを受信する。送受信器(T/R)スイッチ22は、アレイ102の超音波トランスジューサに結合されて、受信動作フェーズの間において当該トランスジューサ素子からの信号をビーム成形器30内のA/D変換器に選択的に供給する。信号を送信するために当該トランスジューサアレイが駆動される時点は、内部システムクロック(図示略)に同期させることができるか、又は心臓サイクル(心周期)等の身体的作用に同期させることができ、このために、通常は心周期波形が当該超音波システムに結合されたECG波形センサにより供給される。ECGセンサにより供給される波形により決定されるように、当該心拍が、その周期の所望のフェーズにある場合、当該プローブはシステムコントローラにより超音波画像を取得するように指令される。
【0029】
送信された超音波エネルギからのエコーはアレイ102のトランスジューサにより受信され、該トランスジューサはエコー信号を発生し、これらエコー信号はT/Rスイッチ22を介して結合されると共にアナログ/デジタル変換器によりデジタル化される(当該システムがデジタルビーム成形器を用いる場合)。代わりに、アナログビーム成形器を用いることもできる。上記A/D変換器は、システムコントローラ28によって発生された信号fにより制御されるサンプリング周波数で受信エコー信号をサンプリングする。サンプリング理論により指示される望ましいサンプリング速度は、受信される通過帯域の最高周波数の少なくとも2倍であり、30~40MHz程度であり得る。最低要件よりも高いサンプリング速度が、また望ましい。当該超音波システムの制御並びにプローブ選択及びROI輪郭描写等の撮像のための種々の制御設定の制御は、ユーザ制御パネル20の制御子のユーザ操作により実行されるものであり、該ユーザ制御パネルはシステムコントローラ28に結合されて、該コントローラを介して当該制御を適用する。
【0030】
アレイ102の個々のトランスジューサからのエコー信号のサンプルはビーム成形器30により遅延されると共に総計されて、画像のためのスキャンラインに沿うコヒーレントなエコー信号を形成する。該デジタルのコヒーレントエコー信号は、次いで、デジタルフィルタによりフィルタ処理されると共に空間又は周波数コンパウンドによる等のノイズ低減処理を受ける。上記デジタルフィルタは、当該周波数帯域を一層低い又はベースバンドの周波数範囲にずらすこともできる。該デジタルフィルタは、例えば、米国特許第5,833,613号(Averkiou他)に開示されたタイプのフィルタとすることができる。ドプラ処理の場合におけるように位相情報が必要とされる場合、エコー信号に対して直交(I及びQ)復調を実行することもできる。この構成において、送信周波数f及び受信器周波数は個別に制御され、ビーム成形器30が周波数2fの周辺の高調波周波数帯域等の送信帯域のものとは異なる周波数の帯域を自由に受信することができるようにする。
【0031】
ビーム成形されたコヒーレントなエコー信号は、非線形信号分離器32に入力される。非線形信号分離器32は、好ましくは、高調波造影剤から返送された高調波周波数エコーをパルス反転技術により分離し、その場合において、画像位置への複数の異なるように位相付けされた(反転された)パルスの送信から生じるエコー信号は相加的に結合されて、基本周波数成分を相殺すると共に高調波成分を強調し、かくして、高調波帯域2f内のエコー信号を生成する。同一のエコー信号は減法的に結合されて基本周波数帯域fにおけるエコー信号を生成する。好ましいパルス反転技術は、例えば、米国特許第6,186,950号(Averkiou他)及び米国特許第5,706,819号(Hwang他)に記載されている。
【0032】
マイクロバブル等の造影剤からの高調波エコー信号は、造影画像プロセッサ38に入力される。造影剤は、血管を一層明確に輪郭描写するため、又は、例えば米国特許第6,692,438号(Skyba他)に記載されているように、組織の微細血管系の灌流調査を実行するために、しばしば、用いられる。図8に示された構成において、造影剤からのエコーは、図2及び図3に示されるような造影画像、並びに画像フィールドにおける選択されたROIからの時間/強度曲線の両方を生成するために使用される。当該造影画像プロセッサは、造影画像を、当該画像フィールドにおける各点からの高調波エコー信号の振幅(又は包絡線)検出により生成する。これを当該エコーが直角復調されたものである場合に行う1つのやり方は、振幅を(I+Q1/2の形で計算することである。これらの造影剤強度信号は、サンプルをR-θ座標から図2及び図3に示されるような空間的に定義された画像の表示のためのデカルト(x,y)座標に変換するスキャン変換により、所望の表示フォーマットにマッピングされる。
【0033】
基本周波数エコー信号は、標準的Bモード組織画像を生成するBモードプロセッサ36に入力される。該Bモードプロセッサは、前記造影画像プロセッサと同様に作用するが、基本波エコー信号に対して動作する。当該エコー信号は、振幅(包絡線)検波されると共にスキャン変換されて、図2及び図3の右側に示されたBモード画像のような組織の空間的に輪郭描写された画像を生成する。上記造影及びBモード画像は画像プロセッサ40に入力され、該画像プロセッサは、これら画像を画像表示器42上に表示するために要する画像処理を実行する。このことは、図2及び図3に示されるように、両画像を同時に並んで表示することを含む。このことは、造影画像をBモード画像上に重ね合わせも有することができるので、造影剤を含む血液の流れが、該血液が流れている血管の組織構造と関連して示される。
【0034】
本発明の原理に従って、前記高調波エコー信号はTICプロセッサ50に入力される。該TICプロセッサは、関心領域(ROI)から時間にわたり受信される造影剤からのエコー信号を処理して、図4図7に示されたもののような時間/強度曲線を生成する。前述したように、この処理は、関心領域の血管(又は複数の血管)に対しウォッシュイン及びウォッシュアウトする造影剤からの時間にわたるエコー信号を取得すると共に、このエコーデータを滑らかな曲線に当てはめる処理を含む。造影剤は、ボーラス注入で供給することができると共に、マイクロバブルを破壊し又は拡散させる相対的に強い超音波により破裂させることもできる(これらマイクロバブルは、次いで、ROIにおける血管を再灌流することを可能にされる)ので、造影剤の到達及び離脱に関する時間的特徴を測定し、診断のために使用することができる。通常の測定は、米国特許第5,833,613号(Averkiou他)に記載されたような造影剤の到達及び離脱の時間/強度曲線である。時間/強度曲線は灌流される組織の画像における各点に関して計算することができ、各画像点に関する各曲線の1以上のパラメータをグレイスケール陰影又はカラーコーティングで表示して、米国特許第6,692,438号(Skyba他)に記載されているように、灌流のパラメータ的画像を形成することができる。これらのパラメータは、各々が組織灌流の異なる特徴を示すような、曲線のピーク及び傾斜を含む。
【0035】
時間/強度曲線は、一般的に、造影剤が当該組織の血管及び微細血管系に流れ込み及び流れ出す際に該造影剤から戻る信号の強度を測定することにより計算される。造影剤の量の上昇及び下降の斯かる測定値は、次いで、ガンマ変量曲線モデル、
【数1】
により定義されるもの等の曲線に当てはめられ、ここで、Aは当該曲線のピーク、tは造影剤の増加の開始の時点、ρは該曲線の上昇の傾斜、xは該造影剤の量の瞬時測定値である。これらの時間及び強度の表現は、訓練された医師に当該組織が灌流される態様についての指示情報を提供する。
【0036】
本発明の一構成例において、時間/強度曲線は、図2に示されたような肝動脈12上に位置するROIにおける造影剤のウォッシュイン及びウォッシュアウトから、並びに図3に示されたような門脈10上に位置するROIにおける造影剤のウォッシュイン及びウォッシュアウトから形成される。このことは、画像内のROIにカーソルを移動させるように制御子を操作することによるユーザによる手動的な又は自動化された選択手段によるROIの選択、及び当該ROIの空間位置を“ROI選択”信号により前記TICプロセッサに供給することにより実行される。該ROI選択信号は、前記ビーム成形器にも供給することもでき、該ビーム成形器に時間/強度曲線処理のために所要のエコーを何処で取得するかを指示する。肝動脈からのTICは図5に示されたものと同様に(及び図4における曲線302のように)見える一方、門脈からのTICは図6に示されたものと同様に(及び図4における曲線304のように)見えるであろう。結果としての曲線は、肝動脈及び門脈基準曲線としてTICメモリ52に記憶される。次いで、肝実質のROIにおける造影剤の再灌流から時間/強度曲線が生成される。本発明の原理に従い、2つの血液源、即ち肝動脈及び門脈から肝実質への流れが、このとき、推定される。肝動脈12から取得された基準曲線は、両源からの流れの結合である当該ROIのTICに関するものである。肝動脈からのTICは純粋な血流における造影剤からのものであるので、肝臓のROIからのTICよりも大幅に大きな強度(振幅)を有するであろう。従って、肝動脈TIC(302、72)は、肝臓TICの振幅に整合するように、主に図5図7における時間窓t~tの間に生じる肝動脈TICの部分又は斯様な部分における肝臓内への流れが肝動脈のみからのものである一部を用いて、振幅(必要なら、及び時間)がスケーリング(拡縮)される。このようにしてスケーリングされた肝動脈TICは、次いで、肝動脈からの流れのみから生じる肝臓ROIにおける流れ特性の推定として使用される。
【0037】
理論的に、肝動脈からの造影剤流の異なるROIにおける到達は、これらROIの位置に依存して互いに変化し、例えば肝動脈に近いROIにおけるほど早くなる。造影剤流の速い灌流により、このような差は、特に該差が著しくない場合は無視することができる。幾つかの他の実施態様において、肝動脈TICは、例えば当該曲線を時間シフトすることにより、更に時間的にスケーリングすることができる。特に、肝実質における造影剤流の到達は理論的に肝動脈における造影剤流の到達より遅いので、時間遅延を導入することができる。時間シフトの量は、肝動脈TIC及びROIにおけるTICを比較することにより決定することができる。例えば、2つの曲線の各々における造影剤の到達時点は、当該振幅が所定の閾値を超えた時点として決定することができる。一実施態様において、該所定の閾値は絶対値として設定することができる。肝動脈TICの振幅はROIにおけるTICの振幅より大幅に大きいので、肝動脈における造影剤の到達を決定するための該所定の閾値は、ROIにおける造影剤の到達を決定するためのものとは異なるように設定される。他の実施態様において、造影剤の到達を決定するための所定の閾値は、対応するTICのピークに対する相対値として設定することができる。
【0038】
肝臓ROIにおける結合された流れは両源からの血流にリニアに関係するので、前記スケーリングされた肝動脈TICは肝臓ROIからのTICから減算され、これは、例えば図7における曲線72及び74’の結合である。この減算の結果として、図6の曲線74に類似するが、肝臓ROIからの組織灌流曲線の一層低い振幅(門脈曲線と比較して)における曲線が得られる。該結果としての曲線は、次いで、門脈からの流れのみから生じる当該肝臓ROIにおける流れ特性の推定として使用される。
【0039】
これらの推定された曲線の1以上の特性はグラフィックプロセッサ56に入力され、該グラフィックプロセッサは斯かる特性を診断目的で医師に対し表示する。簡単な表示は、選択されたROIに関する動脈及び静脈灌流の2つの推定された曲線のデータを表示スクリーン上に表示することであり、これらは図5及び図6に示された曲線と同様に見えるであろう。画像フィールドにおける当該肝臓に関する一層完全な二次元マップを生成することもできる。例えば、推定された動脈及び静脈曲線データを画像における肝臓内の各点に関して計算することができ、これら曲線のパラメータを肝臓内の各点においてBモード画像上にパラメータ的重ね書きとして定性的に示すことができる。前述したガンマ変量曲線方程式を用いて、各曲線Aのピークが選択されると共に、Aの大きさに伴って変化するカラー値に変換される。次いで、Bモード画像を、当該肝臓の各点における動脈灌流のピーク強度Aを示すカラーマップと重ね合わすことができ、又は該肝臓画像の各点における静脈灌流のピーク強度Aを示すカラーマップと重ね合わすことができる。動脈血流のウォッシュイン時間(図4におけるt~t)、静脈血流のウォッシュイン時間(図4におけるt~t)又は動脈又は静脈流に関するウォッシュイン時間の傾斜(ρ)のパラメータ的マップ等の、他のパラメータも画像における各点に関して計算し、カラーコード化し、表示することができる。表示することができる他のパラメータは、当業者にとり容易に明らかであろう。
【0040】
本発明による例示的方法のステップが図9に示されている。ステップ80において、肝臓の造影画像が、図2及び図3に示されるような造影剤注入肝臓画像のソースから取得される。これらは、生の(リアルタイムな)画像、又は以前に取得され、メモリ内の記憶部から取り出された画像ループとすることができる。ステップ82において、肝動脈における流れの時間/強度曲線が取得される。このことは、図2に示されたように当該画像における肝動脈12上にROIを配置し、ウォッシュイン及びウォッシュアウトの間において肝臓血流からの造影剤エコーデータを取得し、該データをTICプロセッサ50で処理して動脈基準TICを生成することにより実行することができる。ステップ84において、門脈における流れの時間/強度曲線が取得される。このことは、図3に示されたように当該画像における門脈10上にROIを配置し、ウォッシュイン及びウォッシュアウトの間において静脈流からの造影剤エコーデータを取得し、該データをTICプロセッサ50で処理して静脈基準TICを生成することにより実行することができる。ステップ86において、肝臓ROIにおける流れから時間/強度曲線が取得される。前述したように、1つのみの肝臓ROIを用いることができるか、又は肝実質の一部又は全てにわたって取得された時間/強度曲線を用いることができる。ステップ88において、一層大きな振幅の動脈TICは肝臓ROI曲線のサイズ及び持続時間に、肝臓における流れが肝動脈流のみによるものである場合の初期ウォッシュインの期間を用いて、スケーリングされる。該スケーリングされた動脈TICデータは、肝動脈のみからの血液による当該ROIにおける流れの推定された時間/強度曲線として使用される。ステップ90において、上記のスケーリングされた動脈TICデータは前記肝臓ROI曲線から減算されて、静脈流のみによる該肝臓ROIにおける血流の推定である時間/強度曲線データを生成する。ステップ92において、ディスプレイ上に肝臓における単一のROIの推定された動脈及び静脈の曲線、又は肝臓の幾らか若しくは全てに関する時間/強度曲線パラメータのパラメータ的マップを表示する等のように、動脈及び静脈の流れ曲線の1以上のパラメータがユーザに対して表示される。
【0041】
図8図9の方法及び、特に、図8の超音波システムの要素構成に示されるような、肝動脈、門脈及び肝臓における流れから造影剤データを取得すると共に個々の血流源による肝臓内の流れの推定を生成する当該超音波システムは、ハードウェア、ソフトウェア又はこれらの組み合わせで実施化することができることに注意すべきである。超音波システムの種々の実施態様及び/又は構成要素、例えば該システムにおけるモジュール又は部品及びコントローラは、1以上のコンピュータ又はマイクロプロセッサの一部として実施化することもできる。斯かるコンピュータ又はプロセッサは、計算装置、入力装置、表示ユニット及び例えばインターネットにアクセスするためのインターフェースを含むことができる。当該コンピュータ又はプロセッサはマイクロプロセッサを含むことができる。当該マイクロプロセッサは、例えばPACSシステムにアクセスするための通信バスに接続することができる。当該コンピュータ又はプロセッサはメモリを含むこともできる。Aラインメモリ等の当該メモリ装置は、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び読出専用メモリ(ROM)を含むことができる。当該コンピュータ又はプロセッサは記憶装置を更に含むことができ、該記憶装置はハードディスクドライブ又はフロッピーディスクドライブ、光ディスクドライブ、固体サムドライブ等の取り外し可能な記憶装置とすることができる。当該記憶装置は、コンピュータプログラム又は他の命令を当該コンピュータ又はプロセッサにロードするための他の同様の手段とすることもできる。
【0042】
本明細書で使用される場合、“コンピュータ”、“モジュール”又は“プロセッサ”なる用語は、マイクロコントローラを使用するシステム、縮小命令セットコンピュータ(RISC)、ASIC、論理回路及び本明細書に記載される機能を実行することができる如何なる他の回路若しくはプロセッサをも含む、任意のプロセッサベースの又はマイクロプロセッサベースのシステムを含むことができる。上述した例は、例示のみのものであり、従って、これら用語の定義及び/又は意味を一切限定することを意図するものではない。
【0043】
当該コンピュータ又はプロセッサは、入力データを処理するために1以上の記憶要素に記憶された一群の命令を実行する。これらの記憶要素は、所望に又は必要に応じて、データ又は他の情報を記憶することもできる。斯かる記憶要素は、情報源又は処理マシン内の物理的メモリ要素の形態とすることができる。
【0044】
前述した造影剤データの取得並びに時間/強度曲線及びパラメータの計算を含む超音波システムの前記一群の命令は、処理マシンとしてのコンピュータ又はプロセッサに本発明の種々の実施態様の方法及び処理等の固有の処理を実行するよう指令する種々のコマンドを含むことができる。該一群の命令は、ソフトウェアプログラムの形態とすることができる。該ソフトウェアは、システムソフトウェア又はアプリケーションソフトウェア等の種々の形態のものとすることができ、有形及び非一時的なコンピュータ読取可能な媒体として具現化することができる。更に、該ソフトウェアは、別個のプログラム若しくはモジュールの集合、大きなプログラム内のプログラムモジュール、又はプログラムモジュールの一部の形態のものとすることができる。例えば、図8の時間/強度データプロセッサにより計算される方程式は、斯かる方程式を計算するソフトウェアモジュールにより実行することができる。当該ソフトウェアは、オブジェクト指向プログラミングの形態のモジュール型プログラミングを含むこともできる。当該処理マシンによる入力データの処理は、操作者のコマンドに応答するもの、前の処理の結果に応答するもの、又は他の処理マシンによりなされる要求に応答するものとすることができる。図8の撮像及び時間/強度計算部分において、例えば、ソフトウェア命令は前述した方程式を計算するために従来使用されている。
【0045】
更に、後の請求項の限定は手段プラス機能フォーマットでは書かれておらず、斯様な請求項限定が更なる構成を欠いた機能の言及が後続する文言“手段”を明示的に使用しない限り、35 U.S.C. 112第6項に基づいて解釈されるべきことを意図するものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9