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特許7041173バイオフィルムの抗菌処理のための作用増強抗菌組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】バイオフィルムの抗菌処理のための作用増強抗菌組成物
(51)【国際特許分類】
   A01N 25/04 20060101AFI20220315BHJP
   A01N 25/30 20060101ALI20220315BHJP
   A01N 59/00 20060101ALI20220315BHJP
   A01N 65/42 20090101ALI20220315BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20220315BHJP
   C02F 1/50 20060101ALI20220315BHJP
【FI】
A01N25/04 101
A01N25/30
A01N59/00 A
A01N65/42
A01P3/00
C02F1/50 510C
C02F1/50 520A
C02F1/50 520J
C02F1/50 520K
C02F1/50 520L
C02F1/50 520P
C02F1/50 531Q
C02F1/50 532A
C02F1/50 532C
C02F1/50 540B
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2019562465
(86)(22)【出願日】2018-01-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-26
(86)【国際出願番号】 EP2018051620
(87)【国際公開番号】W WO2018141591
(87)【国際公開日】2018-08-09
【審査請求日】2021-01-07
(31)【優先権主張番号】17153886.1
(32)【優先日】2017-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519277623
【氏名又は名称】クラソリューションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】CURASOLUTIONS GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】フュールリンガー、ヴォルフガンク
【審査官】西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102012103767(DE,A1)
【文献】国際公開第2013/066403(WO,A1)
【文献】国際公開第98/021307(WO,A1)
【文献】国際公開第96/014092(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/002929(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N
C02F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
含水液体中に存在するバイオフィルムの抗菌及び/又は抗酸化処理のための組成物であって、
a)少なくとも1つの植物抽出物と、8~18のHLB値を有する少なくとも1つの乳化剤と、水とを含むミセル形成可溶化物、
)生分解性抗菌作用物質としてのH 、及び、
c)果実酸としてのL-(+)-乳酸
を含むこと
を特徴とする、組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物において、
乳化剤は、少なくとも80質量%のポリソルベート又はポリオキシエチレン-(20)-ソルビタンモノラウレート(ポリソルベート20)及び/又はポリオキシエチレン-(20)-ソルビタンモノオレート(ポリソルベート80)を含むこと
を特徴とする、組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の組成物において、
ミセル形成可溶化物は、5~40質量%の植物抽出物と、30~85質量%の乳化剤と、10~40質量%の水とを含有すること
を特徴とする、組成物。
【請求項4】
請求項に記載の組成物において、
組成物は、13~19質量%のHと、1~2.5質量%のL-(+)-乳酸とを含有すること
を特徴とする、組成物。
【請求項5】
請求項1~の何れかに記載の組成物において、
植物抽出物は、香辛料植物又はその部分からの抽出物、柑橘類植物又はその部分からの抽出物及びこれらの抽出物の組み合わせからなる群から選択されること
を特徴とする、組成物。
【請求項6】
請求項に記載の組成物において、
植物抽出物は、オリーブ、ニンニク、タマネギ及び/又は柑橘類果物に由来すること
を特徴とする、組成物。
【請求項7】
請求項1~の何れかに記載の組成物において、
ミセルは、1~100nmの又は3~50nmの又は5~20nmの平均径を有すること
を特徴とする、組成物。
【請求項8】
含水液体中に存在するバイオフィルムの抗菌及び/又は抗酸化処理のための方法であって、
該方法は、組成物の有効量の導入を含み、
該組成物は、
a)少なくとも1つの植物抽出物と、8~18のHLB値を有する少なくとも1つの乳化剤と、水とを含むミセル形成可溶化物、及び、
)生分解性抗菌作用物質としてのH 、及び、
c)果実酸としてのL-(+)-乳酸
を含み、
含水液体は人間又は動物の体液ではないこと
を特徴とする、方法。
【請求項9】
請求項に記載の方法において、
乳化剤は、少なくとも80質量%のポリソルベート又はポリオキシエチレン-(20)-ソルビタンモノラウレート(ポリソルベート20)及び/又はポリオキシエチレン-(20)-ソルビタンモノオレート(ポリソルベート80)を含むこと
を特徴とする、方法。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の方法において、
ミセル形成可溶化物は、5~40質量%の植物抽出物と、30~85質量%の乳化剤と、10~40質量%の水とを含有すること
を特徴とする、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法において、
組成物は、13~19質量%のHと、1~2.5質量%のL-(+)-乳酸とを含有すること
を特徴とする、方法。
【請求項12】
請求項11の何れかに記載の方法において、
植物抽出物は、香辛料植物又はその部分からの抽出物、柑橘類植物又はその部分からの抽出物及びこれらの抽出物の組み合わせからなる群から選択されること
を特徴とする、方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法において、
植物抽出物は、オリーブ、ニンニク、タマネギ及び/又は柑橘類果物に由来すること
を特徴とする、方法。
【請求項14】
請求項13の何れかに記載の方法において、
ミセルは、1~100nmの又は3~50nmの又は5~20nmの平均径を有すること
を特徴とする、方法。
【請求項15】
請求項14の何れかに記載の方法において、
含水液体は、プロセス水、廃水、表層水及び充填水からなる群から選択されること
を特徴とする、方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法において、
プロセス水は、技術装置、医療技術装置、工業装置ないし商業装置中の水であること
を特徴とする、方法。
【請求項17】
請求項15又は16に記載の方法において、
プロセス水は、冷却水システムの冷却水として存在するか、又は、冷却水システムにおける使用のために処理されること
を特徴とする、方法。
【請求項18】
請求項15又は16に記載の方法において、
プロセス水は、冷却塔のための冷却水システムの冷却水として存在するか、又は、冷却塔のための冷却水システムにおける使用のために処理されること
を特徴とする、方法。
【請求項19】
請求項15又は16に記載の方法において、
プロセス水は、ビール醸造装置、貫流式水冷却装置及び/又は酒瓶閉栓装置の導水要素に存在するか、又は、ビール醸造装置、貫流式水冷却装置及び/又は酒瓶閉栓装置における使用のために処理されること
を特徴とする、方法。
【請求項20】
請求項15又は16に記載の方法において、
プロセス水は、医療技術装置の導水要素に存在するか、又は、医療技術装置における使用のために処理されること
を特徴とする、方法。
【請求項21】
請求項15に記載の方法において、
充填水は、水槽、貯水タンク、家庭用給水管及び温水循環装置のための充填水であること
を特徴とする、方法。
【請求項22】
含水液体中に存在するバイオフィルムに発生するグラム陽性及びグラム陰性菌、真菌及び/又は原生生物の増殖の抑制及び予防のための、方法であって、
含水液体は人間又は動物の体液ではないこと、
該方法は、組成物の有効量の導入を含むこと、及び、
組成物は、請求項1~の何れかに記載された組成物であること
を特徴とする、方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法において、
組成物は、バイオフィルムを含有する導水管に導入されること
を特徴とする、方法。
【請求項24】
請求項22に記載の方法において、
組成物は、バイオフィルムを含有する冷却水管に導入されること
を特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は含水液体中に存在するバイオフィルムの抗菌及び/又は抗酸化処理のための組成物の使用に関する。本発明は、更に、含水液体中に存在するバイオフィルムの抗菌及び/又は抗酸化処理のための作用増強された新規な組成物に関する。
【0002】
本発明は、更に、本書に記載の組成物を用いた、含水液体中に存在するバイオフィルムの抗菌及び/又は抗酸化処理のための、とりわけ含水液体中のバイオフィルム形成微生物の増殖の抑制及び予防のための、方法に関する。
【背景技術】
【0003】
細菌、真菌又は原生生物のような液体媒体中に存在する微生物のうち5%のみがプランクトン形態で存在する。これらの微生物の大部分は、表面構造体における固着形態で生息し、所定の環境条件下では、粘膜状析着物の形態でのバイオフィルムを形成する。これらの微生物は、バイオフィルム中において物質代謝活性を維持し、また、バイオフィルムによって物理的及び化学的有害物質から保護されている。
【0004】
バイオフィルムは、細菌によって形成される細胞外高分子物質(EPS)からなり、微生物それ自体に加えて、水と有機及び無機化合物とを含有する。バイオフィルムは、個々の微生物に保護を与え、それらがpH値変動又は温度変動のような変動する環境条件に順応(適応)することを可能にし、或いは、抗菌作用物質がバイオフィルム内に侵入して微生物に到達することを困難にすることによって、微生物に対する毒性物質との接触を妨げる。そのため、バイオフィルム内に埋め込まれている微生物に対しては、プランクトン形態のものと比べると、2~3log10だけより大きい濃度の抗菌作用物質が必要となり、場合によっては、ほぼ同じ大きな抗菌効果を得るためには、何倍もより長い作用時間が必要となることが知られている(例えば、Bridier, A. et al., Antimicrob Agents Chemother 2011; 55: 2648-54(非特許文献1)参照)。
【0005】
含水システムにしばしば生じる問題は、微生物の増殖と、その結果としての、これらの含水システムの境界面に粘膜状のバイオフィルム析着物の形成である。バイオフィルムは、例えば冷却塔の冷却水システム又は医療技術装置の導水要素のような、工業的、技術的、医療技術的ないし商業的含水システムに極めて頻繁に生じるが、レクリエーション目的の含水システムや装飾噴水(Zierbrunnen)にも生じ、その結果、それらに、不所望の細菌汚染が生じる。微生物ないしバイオフィルムの除去のための効率的(有効)かつ持続的処理が無ければ、冷却塔及び冷却装置のプロセス冷却の悪化のような問題、医療技術又は食料品工学装置における衛生上の問題又は水泳プール施設及び装飾噴水における美観上/衛生上の問題が生じる。これらの問題のために、数多くの抗菌物質ないし抗菌組成物、水滅菌システム、及び微生物増殖の阻止及び制御のための方法が開発されている。
【0006】
DE 10 2005 027 347 A1(特許文献1)は、技術的表面上の抗菌的に作用する(抗菌活性を有する)コーティングの製造方法を記載している。この方法では、ポリビニルアセテート、防腐剤(保存剤)及び溶媒から溶液が製造され、この溶液が技術的表面に塗布され、乾燥されて、コーティングが形成される。防腐剤は、安息香酸、ソルビン酸、ナタマイシン、バクテリオシン及び植物抽出物から選択される。しかしながら、この方法は、含水液体中の混合物には適していない。
【0007】
DE 10 2005 032 352 A1(特許文献2)は、作用物質濃縮物(これはオトギリソウ(Johanniskraut)抽出物、モクセイソウ(Reseda)抽出物又はエストラゴン抽出物であり得る)と、乳化剤及び水との可溶化物(Solubilisat)を開示している。可溶化物は、食料品における作用物質又は非水溶性作用物質の生物学的利用能を改善することが望まれている。しかしながら、この文献には、含水液体中における使用は言及されていない。
【0008】
DE 10 2012 103 767 A1(特許文献3)は、室内空気、食料品、表面の処理のための及びコーティング材料の製造のための、ミセル化植物抽出物に基づく可溶化物の使用を開示している。しかしながら、この文献には、含水液体における使用は言及されていない。
【0009】
US 2011/0151034 A1(特許文献4)は、乳化剤も添加可能な、シソ科植物抽出物に基づくグラム陽性菌に対する抗菌剤を記載している。
【0010】
DE 102 13 031 A1(特許文献5)は、洗濯用洗剤、食器用洗剤及び清掃用洗剤におけるオリーブの木の抽出物の使用を開示している。
【0011】
WO 2008/017580 A1(特許文献6)は、食料品分野についての抗菌性ミセルに関するものである。
【0012】
EP 0 842 606 A1(特許文献7)、WO 2015/072988(特許文献8)及びUS 2011/027382 A1(特許文献9)は、夫々、ミセル化植物抽出物に基づく抗菌性可溶化物を記載しているが、含水液体中に存在するバイオフィルムの処理のためにこの可溶化物を使用することについては記載していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】DE 10 2005 027 347 A1
【文献】DE 10 2005 032 352 A1
【文献】DE 10 2012 103 767 A1
【文献】US 2011/0151034 A1
【文献】DE 102 13 031 A1
【文献】WO 2008/017580 A1
【文献】EP 0 842 606 A1
【文献】WO 2015/072988
【文献】US 2011/027382 A1
【非特許文献】
【0014】
【文献】Bridier, A. et al., Antimicrob Agents Chemother 2011; 55: 2648-54
【文献】Stewart, P. S. Microbiol Spectr 2015; 3: 1-30
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
利用可能な抗菌的に作用する物質、剤及び防腐剤の多くは、化学的純度の理由から合成によって製造され、製造コストが大きく、生物学的に非分解性であり又は生態学的に疑義有り(無害でない)と評価され得るものであり、そのため、使用に際してはしばしば毒物学的又は生態学的に疑義が生じ、拒絶に直面する。従って、生態学的にかつ経済的に有利な天然作用物質に対する需要が大きくなっている。しかしながら、この種の天然作用物質は、水溶性が極めて不良であることが多く、大抵は強烈な副臭又は副味を有し、使用可能な濃度ではバイオフィルム内への侵入は不良ないし不可能である(例えばStewart, P. S. Microbiol Spectr 2015; 3: 1-30(非特許文献2)参照)。
【0016】
本発明の課題は、含水液体中に存在するバイオフィルムの抗菌及び/又は抗酸化処理における使用に適合的であり、含水液体及び導水システム中に存在するバイオフィルム内における微生物増殖の阻止(Beseitigung)及び制御に関し顕著に改善された作用を示す作用増強組成物を提供することである。同時に、作用増強組成物は生態学的及び経済的利点を有することが望まれる。
【0017】
本発明の更なる課題は、含水液体中に存在するバイオフィルムの抗菌及び/又は抗酸化処理のための改善された方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の第1の視点において、含水液体中に存在するバイオフィルムの抗菌及び/又は抗酸化処理のための組成物が提供される。該組成物は、
a)少なくとも1つの植物抽出物と、8~18のHLB値を有する少なくとも1つの乳化剤と、水とを含むミセル形成可溶化物、
)生分解性抗菌作用物質としてのH 、及び、
c)果実酸としてのL-(+)-乳酸
を含むこと
を特徴とする(形態1)。
本発明の第2の視点において、含水液体中に存在するバイオフィルムの抗菌及び/又は抗酸化処理のための方法が提供される。
該方法は、組成物の有効量の導入を含み、
該組成物は、
a)少なくとも1つの植物抽出物と、8~18のHLB値を有する少なくとも1つの乳化剤と、水とを含むミセル形成可溶化物、及び、
)生分解性抗菌作用物質としてのH 、及び、
c)果実酸としてのL-(+)-乳酸
を含み、
含水液体は人間又は動物の体液ではないこと
を特徴とする(形態)。
本発明の第3の視点において、含水液体中に存在するバイオフィルムに発生するグラム陽性及びグラム陰性菌、真菌及び/又は原生生物の増殖の抑制及び予防のための、方法が提供される。該方法において、
含水液体は人間又は動物の体液ではないこと、
該方法は、組成物の有効量の導入を含むこと、及び、
組成物は、本発明に係る組成物であること
を特徴とする(形態22)。
【発明を実施するための形態】
【0019】
冒頭に記載したような組成物の使用において、該組成物は、
a)少なくとも1つの植物抽出物と、8~18のHLB値を有する少なくとも1つの乳化剤と、水とを含むミセル形成可溶化物(Solubilisat)、及び、
b)過酸(Peroxicarbonsaeuren)及びHを含む過酸化物、次亜塩素酸塩、次亜塩素酸及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの生分解性抗菌作用物質
を含む。
【0020】
過酸化物、とりわけH、次亜塩素酸塩及び次亜塩素酸は、長年、技術装置における水処理のための従来法において使用されている。しかしながら、これらの化合物は揮発性が極めて大きく、これらの化合物だけでは、効率的なバイオフィルム分解は可能ではない。
【0021】
同様に、少なくとも1つの植物抽出物と、8~18のHLB値を有する少なくとも1つの乳化剤と、水とを含む抗菌性ミセル形成可溶化物は従来技術から既知である。この種のミセル形成可溶化物は例えば上記の刊行物DE 10 2012 103 767 A1(特許文献3)、US 2011/0151034 A1(特許文献4)、DE 102 13 031 A1(特許文献5)、EP 0 842 606 A1(特許文献7)、WO 2015/072988(特許文献8)及びUS 2011/027382 A1(特許文献9)において詳細に記載されている。しかしながら、これらの刊行物は何れも、上述したように、含水液体中に存在するバイオフィルムの処理のためにこれらの可溶化物を使用することについて記載していない。
【0022】
本出願人ないし本発明者は、驚くべきことに、そのようなミセル形成可溶化物と過酸化物、次亜塩素酸塩及び次亜塩素酸の群からの抗菌作用物質との組み合わせの使用は、微生物に対し、とりわけバイオフィルム形成微生物及びバイオフィルム中に存在する微生物に対し、個々の成分の予期し得る相加的抗菌作用を顕著に上回る予想外に大きく増強された作用(活性)を有することを確認することができた。本書に記載の組成物のこの予想外の増強作用は、添付の(後掲する)実験結果及び対照試験において明確に示される(後記の実施例1及び実施例2参照)。
【0023】
更に、本発明の新規組成物は、(a)少なくとも1つの植物抽出物と、8~18のHLB値を有する少なくとも1つの乳化剤と、水とを含むミセル形成可溶化物、(b)過酸及びHを含む過酸化物、次亜塩素酸塩、次亜塩素酸及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの生分解性抗菌作用物質、及び(c)果実酸を含む。この組成物の個別成分の特殊な組み合わせは、本書に列記した刊行物の何れにも具体的に開示されておらずないしは如何なる方法でも容易に想到されないものであり、実際の実験において、既知の組成物と比べて予期せぬほど大きく増強された抗菌作用(活性)を示した。
【0024】
本発明によって、顕著に改善された抗菌作用が達成されるだけではなく、更には、使用濃度及び/又は作用時間の減少によって、生態学的及び経済的利点が得られる。本発明の組成物は、バイオフィルム形成微生物に対するないしは含水液体中に存在するバイオフィルムに対するその抗菌作用(活性)に関し高効率(hocheffizient)であり、生態学的に疑義がなく(無害であり)、その使用においてコスト的に有利であり、そのため、とりわけ大規模な技術的及び工業的含水システムのために有利である。
【0025】
科学的理論に結び付けられていないが、ミセル形成可溶化物と、過酸及びHを含む過酸化物、次亜塩素酸塩、次亜塩素酸及びこれらの組み合わせからなる群から選択される生分解性抗菌作用物質との組み合わせは、生分解性抗菌作用物質のミセル化をもたらし、それ故、混合物は水相において良好に分散され、更には、バイオフィルムの相応の被膜を貫通して侵入し、かくして、最終的に、微生物との良好な接触を達成することができると推測される。処理されるべき微生物ないしバイオフィルムは、既知の措置又は方法によりも改善された作用(有効性)を以って、本発明に応じて使用される生分解性抗菌作用物質に接触され、かつ、無害化されることができる。含水液体中に存在するバイオフィルムの微生物阻害又は減少処理のために組成物を本発明に応じて使用する場合、生分解性抗菌作用物質をミセル化形態で使用することによって、作用物質が微生物の細胞壁でのその遊離後に細胞内コンパートメント内に好適に進入できることが、とりわけ保証されることができるが、このことは、その化学的及び物理的性質、例えば脂溶性のために、非ミセル化形態では達成することが不可能であるか又は極めて困難であろう。かくして、多くの使用事例において、既知の使用と比べて作用(効果)が同等又は改善されているにも拘わらず、ミセル化作用物質の濃度をより小さくすること又は作用時間をより短くすることができる。
【0026】
本書で使用されるような概念「ミセル化(“Mizellierung”ないし“Micellierung”)」とは、物質、例えば抗菌的に活性な原料及び作用物質を乳化剤及び水によって人工的なミセル内に包み込む方法を意味する。ミセルは包み込んだ1つ又は複数の作用物質のための運搬体(キャリア)媒体として役立つ。本方法は本質的に自然(現象)を手本としてミセル化構造体を形成する。二桁のナノメートル範囲の径を有するミセルは、例えば鶏卵又はミルク内に存在する。尤も、人間の組織も、例えばビタミンA、D、E及びKのような油溶性物質を身体に摂取すること及び/又は代謝することができるように、例えば胆汁(Galle)を使用して継続的にミセルを作り出している。ナノレベルのミセルの可溶化物は水中において通常は清澄な溶液を形成する。ミセルは、物質の伝統的な処方及びマイクロカプセル化と比べると、熱的及び機械的に相対的に安定であり、微生物学的及び毒性的に疑義がない(無害である)。ミセルは、作用部位への輸送がミセルによらなければ困難であるか又は従来は不可能であった作用物質のために、本書に記載の使用を有利に可能にする。
【0027】
HLB値(HLB=hydrophilic-lipophilic-balance(親水性親油性バランス))は、当業界において常用されているパラメータであり、使用される乳化剤分子の親水性及び親油性分量(Anteil)を記述する。本発明によれば、HLB値は、W. C. Griffinの方法に応じて決定される1~20の段階の値である。1のHLB値は親油性化合物を表し、20のHLB値を有する化合物は大きな親水性分を有する。凡そ3~8の値はW/O型乳化剤に対応付けられており、凡そ8~18の値はO/W型乳化剤に対応付けられている。
【0028】
含水液体中に存在するバイオフィルムの微生物阻害又は減少処理のための本書に記載の組成物を使用する場合、組成物は、場合によっては、例えばクエン酸のような更なる溶媒(溶剤)と混合され、目的にかなった方法で、そのために適切な使用形態で、水中又は水上に投与される。
【0029】
概念「水性液体」とは、本発明との関連においては、その主成分が水である各種の液体、例えば冷却水、循環水、生物工学及び食料品工学用プロセス溶液のような技術的プロセス水、河川水及び海水、廃水(汚水)及び浄化済み廃水(汚水)等、として理解されるものである。
【0030】
本書で使用されるような概念「バイオフィルム」とは、当業界において確立された専門用語である;これについては、水性環境中におけるバイオフィルムについての上記の説明参照。
【0031】
生分解性抗菌作用物質は、有利には、H(過酸化水素)である。Hは水処理のために及び技術装置の殺菌のために長年使用されており、コスト的に有利に大量に使用可能であり、顕著な酸化及び抗菌作用(活性)及び大きな環境適合性を有する。
【0032】
有利な一発展形態では、組成物は、更に、乳酸、とりわけL-(+)-乳酸、リンゴ酸、クエン酸又はシュウ酸のような果実酸を含む。尤も、有利には、組成物はL-(+)-乳酸を含む。なぜなら、L-(+)-乳酸は(例えばD-(-)-乳酸とは異なり)環境中に存在する殆ど全ての微生物によって代謝され、従って、完全に分解されるからである。
【0033】
本発明の格別に有利な一変形形態では、組成物は生分解性抗菌作用物質としてHを含み、これに加えて、L-(+)-乳酸を含む。
【0034】
本発明の組成物の好ましい一変形形態では、乳化剤は、少なくとも80質量%のポリソルベート、有利にはポリオキシエチレン-(20)-ソルビタンモノラウレート(ポリソルベート20)及び/又はポリオキシエチレン-(20)-ソルビタンモノオレート(ポリソルベート80)、を含む。
【0035】
有利には、一変形例における本発明の組成物のミセル形成可溶化物は、5~40質量%の植物抽出物と、30~85質量%の乳化剤と、10~40質量%の水とを含有する。有利には、植物抽出物:水の質量比は凡そ30:35であり、植物抽出物:乳化剤の質量比は凡そ30:35である。
【0036】
生分解性抗菌作用物質が過酸化水素である場合、これは、13~19質量%の量で組成物に含有されていると有利である。
【0037】
他の一下位変形形態では、本発明の組成物は、13~19質量%のHと、1~2.5質量%のL-(+)-乳酸とを含有することができる。
【0038】
更なる有利な一変形形態では、本発明の組成物は、5~40質量%の植物抽出物と、30~85質量%の乳化剤と、10~40質量%の水とを有するミセル形成可溶化物、生分解性抗菌作用物質として13~19質量%のH、更には1~2.5質量%のL-(+)-乳酸を含む。有利には、植物抽出物:水の質量比は凡そ30:35であり、植物抽出物:乳化剤の質量比は凡そ30:35である。
【0039】
組成物に含有される生分解性抗菌作用物質の量に関しては、分量(Anteil)が過小であれば、運搬体材料(乳化剤と水)に対する抗菌作用物質の比は過小であり得るため、十分な抗菌作用は最早保証されていないということができる。組成物中おいて抗菌作用物質の分量(割合)が過大であるかないしは乳化剤の分量(割合)が過小であれば、ミセルは形成されないか又は不安定になることがあり得る。尤も、当業者であれば、難なく、簡単なルーチンワークによって、本発明の組成物の各成分の相応の量を特別な使用及び要求に応じて選択しかつ相応に最適化することができる。
【0040】
上述したように、本発明において使用されるようなミセル形成可溶化物は、例えば上掲の刊行物DE 10 2012 103 767 A1(特許文献3)、US 2011/0151034 A1(特許文献4)及びDE 102 13 031 A1(特許文献5)に詳細に記載されている。とりわけ、ここでは、DE 10 2012 103 767 A1(特許文献3)を参照するが、この刊行物によれば、これに記載されている植物抽出物は本発明のためにも使用可能である。
【0041】
これに応じ及びDE 10 2012 103 767 A1(特許文献3)を考慮すると、本書において同義に使用される概念「植物抽出物」ないし「ファイトエキス(Phytoextrakt)」は、本発明の意義において、香辛料植物及び/又は柑橘類植物又はそのような植物の部分又は天然に存在する他の植物の部分からの1つの(1種の)抽出物又は複数の((複数種の)抽出物の混合物に関するものとする。概念ファイトエキスないし植物抽出物は、上記の抽出物の成分又はフラクションも、例えば所定の溶剤(溶媒)によって又は蒸留によって生抽出物から得られるエキス又はフラクションも含む。この場合、それ自体がある程度の抗菌作用を有する植物抽出物も使用可能である。本発明に応じて使用可能な抗菌作用を有する植物抽出物についての概要は以下の文献に記載されている:a)Rios, J.L., Recio, M.C. Medical plants and antimicrobial activity; J Ethnopharmacol 2005; 100: 80-4;b)Burt, S. Essential Oils: their antibacterial properties and potential applications in foods -a review; Int J Food Microbiol 2000; 94: 223-53;c)Keyal, U., Huang, X, Bhatta, A. K. Antifungal effect of plant extract and essential oil. Chin J Integr Med 2016, DOI: 10.1007/s11655-016-2524-z;d)Bacha, K., Tariki, Y., Gebreyesus, F., Zerihun, S., Mohammed, A., Weiland-Braeuer, N., Schmitz, R. A., Mulat, M. Antimicrobial and anti-Quorum sensing activities of selected medical plants of Ethiopia: Implication for development of potent antimicrobial agents. BMC Microbiol 2016; 16: 139;e)Cascaes, M. M., Guihon, G. M., Andrade, E. H., Zoghbi, M. D., Santos Lda, S. Constituents and pharmacological activities of Myrcia (Myrtaceae): A review of an aromatic and medical group of plants. Int J Mol Sci 2015; 16: 23881-904;f)Kramer, A., Assadian, O. (Hrsg.) Wallhaeussers Praxis der Sterilisation, Desinfektion und Antiseptik. 6. Ausgabe, 2009, Georg Thieme Verlag, Stuttgart. Kapitel 70, pp 887-891。
【0042】
上掲した文献に列記された植物抽出物(ファイトエキス、ファイト誘導体)は本発明に応じて使用可能な植物抽出物を最終的に(全部)記載しているのではなく、好適な植物抽出物の例を記載しているに過ぎない。当業者であれば、利用可能な植物抽出物(複数)の中から及び夫々の植物抽出物について開示された試験及び特性の記述を用いて、その都度計画された使用に好適な1つ以上の植物抽出物を選択することができるであろう。
【0043】
植物抽出物を本発明の意義において製造するための植物部分は、植物全体、根、茎、幹、枝、葉、花、花序、種子、果実及び果実の部分を含むが、これらに限定されない。好適な更なる植物部分は、例えば、上掲した文献に見出すことができる。
【0044】
植物抽出物は、有利には、香辛料植物又はその部分からの抽出物、柑橘類植物又はその部分からの抽出物及びこれらの抽出物の組み合わせからなる群から選択される。
【0045】
植物抽出物を本発明の意義において製造するための香辛料植物は、タマネギ、ニンニク、オリーブ、ローズマリー、香辛料野菜、ベイリーフ(ローリエ)、サフラン、チョウジ、ケーパー、セイロン肉桂、ショウガ、西洋ワサビ、ナツメグ、コショウ、トウガラシ、ビャクシン(属の実)、バニラ、キャラウェー、アニス、カカオ、ナデシコ(属)、チリ、ダイダイ、ウイキョウ、ガラナ、コーラナッツ及びサルビアを含むが、これらに限定されない。好適な更なる植物は、例えば、上掲した文献に見出すことができる。
【0046】
植物抽出物を本発明の意義において製造するための柑橘類植物は、シトロン、レモン、アマレモン、オレンジ、マンダリン、クレメンタイン、グレープフルーツ、ベルガモット、キンカン、ライムカット、タンジェロ、ザボン、温州ミカン、タンジェリン、オレンティーク(Orantique)、ポネランツェ(Poneranze)、ウグリを含むが、これらに限定されない。好適な更なる植物は、例えば、上掲した文献に見出すことができる。
【0047】
本発明において使用される種類の香辛料又は柑橘類植物の植物抽出物は一般的に既知である。基本的には、使用される植物及び植物部分、その成長段階及び使用される抽出方法に応じてその組成が変化する物質混合物である。従って、植物抽出物に含有される個別化合物を具体的かつ最終的に(全部)列挙することは、本発明の意義においては、可能でもなければ意味もなく、本発明は正しく(適切に)評価(理解)されないであろう。本発明の意義における植物抽出物は、主に、親油性化合物を含有する。本発明において使用される種類の有用植物、香辛料植物又は柑橘類植物の植物抽出物は当業者には既知であり、かつ、商業的に入手可能であり、例えばCognis GmbH社(デュッセルドルフ、ドイツ)の製品Cegemett Fresh又はProcena GmbH社(イラーティッセン、ドイツ)の製品ProExtrakt P150が入手可能である。
【0048】
尤も、植物抽出物は、オリーブ、ニンニク、タマネギ及び/又は柑橘類果物に由来すると格別に好ましい。オリーブ、ニンニク、タマネギ及び柑橘類果物を含む商業的に入手可能な植物抽出物の例は、Procena GmbH社(ドイツ)の製品ProExtrakt P150である。
【0049】
本発明の意義における植物抽出物は既知の方法に応じて製造可能である。植物抽出物の製造法の例は、エタノール、メタノール、クロロホルム又はアセトンのような有機溶媒による抽出を含むが、これに限定されない。好適な更なる抽出法は、例えば、上掲した文献及びそれらに記載された更なる参考文献に見出すことができる。
【0050】
ミセルは1~100nmの、有利には3~50nmの、特に好ましくは5~20nmの、平均径を有すると有利である。ミセルが大きすぎる場合、上記の利点はその都度の使用において場合によっては達成することができない。これに対し小さすぎる場合、ミセルは、生分解性抗菌作用物質を全く又は殆ど受容できない。
【0051】
本発明の更なる1つの対象は、冒頭に記載したような、含水液体中に存在するバイオフィルムの抗菌及び/又は抗酸化処理のための方法、とりわけ含水液体中に存在するバイオフィルムのグラム陽性及びグラム陰性菌、真菌及び/又は原生生物の増殖の抑制及び予防のための方法に関し、該方法は、本発明に応じ、本書の開示において説明され及び定義されているような本発明の組成物の有効量を、処理されるべきバイオフィルムが存在する含水液体へ導入することを含む。「含水液体への導入(Einbringen)」とは、例えば含水液体中への組成物の添加(投入:Hinzufuegen)又は含水液体上への組成物の投与(Aufbringen)による、組成物と含水液体とのあらゆる可能な種類の接触として理解されるものである。
【0052】
「本発明の組成物の有効量」という表現は、ここでは、微生物に対する抗菌及び/又は抗酸化作用を有し、かつ、処理されるべき液体ないしバイオフィルムに接触されると、バイオフィルムにおける微生物の、とりわけグラム陽性菌及びグラム陰性菌、真菌及び/又は原生生物の増殖の(阻害(Hemmung)/死滅(Abtoetung)の形での)抑制(Bekaempfung)ないし予防を可能にする組成物のあらゆる任意の量を表すために使用される。組成物の量は、その都度の使用、処理されるべき導水システムの寸法及び幾何学的形状(例えば導水冷却管の構造、径および長さ)、処理されるべき水の種類(例えばプロセス水、廃水)、微生物負荷の程度及び存在する微生物の種類及び組成(比率)に依存するであろう。多くの使用例では、相応の時間インターバルに組成物を一回適用すれば十分であり得るが、他の使用例では、ある期間にわたって時間を置かずに繰り返し適用することが必要である。適切な量は、あらゆる任意の場合において、当業者であれば難なく認識することができ、簡単なルーチンワークによって実験的に決定かつ最適化することができる。
【0053】
本方法は、とりわけ、組成物がバイオフィルムを含有する導水管、とりわけ冷却水管(例えば冷却塔の冷却水管)に導入されることを含むことができる。
【0054】
本書に記載される発明は、上記の形態に応じて、含水液体中に存在するバイオフィルムの抗菌及び/又は抗酸化処理のための、本書の開示において説明されかつ定義されているような抗菌組成物の使用に関する。含水液体は人間又は動物の体液ではない。
【0055】
有利には、含水液体はプロセス水、廃水、表層水及び充填水(Fuellwasser)からなる群から選択される。
【0056】
概念「表層水(Oberflaechenwasser)」は、とりわけ、存在する微生物の数が減少されるか又は安定に維持されることが望まれるか又はバイオフィルムの形成が遅延されることが望まれる河川水又は海水に関するが、これらに限定されない。
【0057】
概念「廃水(汚水:Abwasser)」は、本来的な意味での廃水だけではなく、存在するバイオフィルムの処理が望まれる浄化された廃水ないし清澄化された廃水(清水(Klarwasser))も含む。
【0058】
概念「プロセス水(Prozesswasser)」(しばしばNutzwasser、Brauchwasser又はBetriebswasserとも称される)は、第一に、技術装置、医療装置、工業装置ないし商業装置に使用される水に関する。これは、例えば、例えば回転ドリル又は鋸のような医薬製造具の冷却水、又は外科手術中の患者の冷却/加温のためのないし集中治療中の患者の体温制御のためのヒーター・クーリングユニットの冷却水を含む。
【0059】
一実施形態では、プロセス水は、冷却水システムの、とりわけ冷却塔のための冷却水システムの、冷却水として存在するか、又は、冷却水システムにおける、とりわけ冷却塔のための冷却水システムにおける、使用のために処理される。交換法の場合、システムは空にされ、その後、(予め水と混合された)本発明に応じた組成物が夫々の装置の基部にポンプによって導入される。注入法の場合、本発明に応じた組成物は注入部位(Impfstelle)を介して使用の期間中持続的に冷却水ないしプロセス水に混合される。
【0060】
更なる一実施形態では、プロセス水は、ビール醸造装置、貫流式(非循環式)水冷却装置及び/又は酒瓶閉栓装置(Schankzapfanlage)の導水要素に存在するか、又は、ビール醸造装置、貫流式水冷却装置及び/又は酒瓶閉栓装置における使用のために処理される。
【0061】
更なる1つの実施形態では、プロセス水は、医療技術装置の導水要素に存在するか、又は、医療技術装置における使用のために処理される。この場合、使用は、例えばデンタルユニットの水(ボーア(Bohr)冷却水及びリンス水、但しデンタルユニットの患者用飲用水ではない)、回転医用器具の冷却水、又は外科手術中の患者の冷却/加温のための又は集中治療中の患者の体温制御のためのヒーター・クーリングユニットの冷却水の抗菌処理に関し得る。
【0062】
概念「充填水(Fuellwasser)」は、とりわけ、水槽(Wasserbecken)(例えば装飾噴水、浴場、水泳プール施設及びプールのようなレクリエーション及びスポーツ関連装置)のための、貯水タンク(例えば航空機、列車、キャンピングカー等の貯水タンク)のための、家庭用給水管(Hauwasserleitung)のための及び温水循環装置のための充填水であり得る。
【0063】
本発明に応じた組成物は、例えば、以下の工程を有する方法によって入手可能である:
a)少なくとも1つの植物抽出物と水とを凡そ45~50℃で混合すること;
b)有利には凡そ50℃に加熱された8~18のHLB値を有する少なくとも1つの乳化剤を、植物抽出物と水の混合物に加えること;
c)植物抽出物、水及び乳化剤の混合物を、有利には凡そ90℃に、加熱し、この混合物をミセル形成可溶化物が得られるまで均質化すること;
d)過酸及びHを含む過酸化物、次亜塩素酸塩、次亜塩素酸及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの生分解性抗菌作用物質、有利にはHを加えること;及び
e)場合により果実酸、有利にはL-(+)-乳酸を加えること。
【0064】
ここに、本発明の好ましい形態を示す。
(形態1)上記本発明の第1の視点参照
形態)形態1の組成物において、乳化剤は、少なくとも80質量%のポリソルベート又はポリオキシエチレン-(20)-ソルビタンモノラウレート(ポリソルベート20)及び/又はポリオキシエチレン-(20)-ソルビタンモノオレート(ポリソルベート80)を含むことが好ましい。
(形態)形態1又は2の組成物において、ミセル形成可溶化物は、5~40質量%の植物抽出物と、30~85質量%の乳化剤と、10~40質量%の水とを含有することが好ましい。
(形態)形態の組成物は、13~19質量%のHと、1~2.5質量%のL-(+)-乳酸とを含有することが好ましい。
(形態)形態1~の何れかの組成物において、植物抽出物は、香辛料植物又はその部分からの抽出物、柑橘類植物又はその部分からの抽出物及びこれらの抽出物の組み合わせからなる群から選択されることが好ましい。
(形態)形態の組成物において、植物抽出物は、オリーブ、ニンニク、タマネギ及び/又は柑橘類果物に由来することが好ましい。
(形態)形態1~の何れかの組成物において、ミセルは、1~100nmの又は3~50nmの又は5~20nmの平均径を有することが好ましい。
(形態)上記本発明の第2の視点参照
形態)形態の方法において、乳化剤は、少なくとも80質量%のポリソルベート又はポリオキシエチレン-(20)-ソルビタンモノラウレート(ポリソルベート20)及び/又はポリオキシエチレン-(20)-ソルビタンモノオレート(ポリソルベート80)を含むことが好ましい。
(形態10)形態8又は9の方法において、ミセル形成可溶化物は、5~40質量%の植物抽出物と、30~85質量%の乳化剤と、10~40質量%の水とを含有することが好ましい。
(形態11)形態10の方法において、組成物は、13~19質量%のHと、1~2.5質量%のL-(+)-乳酸とを含有することが好ましい。
(形態12)形態11の何れかの方法において、植物抽出物は、香辛料植物又はその部分からの抽出物、柑橘類植物又はその部分からの抽出物及びこれらの抽出物の組み合わせからなる群から選択されることが好ましい。
(形態13)形態12の方法において、植物抽出物は、オリーブ、ニンニク、タマネギ及び/又は柑橘類果物に由来することが好ましい。
(形態14)形態13の何れかの方法において、ミセルは、1~100nmの又は3~50nmの又は5~20nmの平均径を有することが好ましい。
(形態15)形態14の何れかの方法において、含水液体は、プロセス水、廃水、表層水及び充填水からなる群から選択されることが好ましい。
(形態16)形態15の方法において、プロセス水は、技術装置、医療技術装置、工業装置ないし商業装置中の水であることが好ましい。
(形態17)形態15又は16の方法において、プロセス水は、冷却水システムの冷却水として存在するか、又は、冷却水システムにおける使用のために処理されることが好ましい。
(形態18)形態15又は16の方法において、プロセス水は、冷却塔のための冷却水システムの冷却水として存在するか、又は、冷却塔のための冷却水システムにおける使用のために処理されることが好ましい。
(形態19)形態15又は16の方法において、プロセス水は、ビール醸造装置、貫流式水冷却装置及び/又は酒瓶閉栓装置の導水要素に存在するか、又は、ビール醸造装置、貫流式水冷却装置及び/又は酒瓶閉栓装置における使用のために処理されることが好ましい。
(形態20)形態15又は16の方法において、プロセス水は、医療技術装置の導水要素に存在するか、又は、医療技術装置における使用のために処理されることが好ましい。
(形態21)形態15の方法において、充填水は、水槽、貯水タンク、家庭用給水管及び温水循環装置のための充填水であることが好ましい。
(形態22)上記本発明の第3の視点参照。
(形態23)形態22の方法において、組成物は、バイオフィルムを含有する導水管に導入されることが好ましい。
(形態24)形態22の方法において、組成物は、バイオフィルムを含有する冷却水管に導入されることが好ましい。
本発明及びその利点、とりわけその抗菌(バイオサイド)作用は、以下に実施例を用いて詳細に説明される。
【実施例
【0065】
実施例1:ミセル形成可溶化物を用いた抗菌組成物の製造
【0066】
植物抽出物として、オリーブ、ニンニク、タマネギ及び柑橘類果物からの植物抽出物の混合物並びにグリセリン(E422)及びビタミンC(アスコルビン酸、E300)を含有するProcena GmbH社(ドイツ)のProExtrakt P150を用いた。オリーブ、ニンニク、タマネギ及び柑橘類果物歯は、抗酸化特性に加えて、細菌、酵母及び真菌に対する抗菌作用も有する物質を含有することが知られている。既知の活性物質は、例えばオリーブのオレウロペイン及びニンニクのアリシンである。
【0067】
本発明に応じて使用される作用増強抗菌組成物の製造のために、30質量%のProExtrakt P150と35質量%の水を凡そ45~50℃で混合し、この混合物を、凡そ50℃に加熱した35質量%の乳化剤ポリソルベート(Polysorbat)80(Novasol Art. Nr. EW0240/2、Aquanova AG、64295 ダルムシュタット、ドイツ;E-Nummer:E 433)に混入した。次に、得られた調製物を凡そ90℃に加熱し、所望の油溶性及び水溶性ミセル形成可溶化物が得られるまで均質化した。次に、この実施例では、生分解性抗菌作用物質H(過酸化水素;IBEN Mikro Stop GmbH、27572 ブレーマーハーフェン、ドイツ)を15~19体積%で、並びに、作用物質の付加的な増強のために、更に、L-(+)-乳酸(IBEN Mikro Stop GmbH、27572 ブレーマーハーフェン、ドイツ)を2~2.5体積%で、場合によっては更に水を添加した。ここで、飲料水、廃水、プロセス水又は表層水のような(但しこれらに限定されない)水内への導入又はそのような水上への投与による水の処理のために使用可能な作用増強抗菌組成物は、本発明において使用するために作り出された。この方法によって得られた組成物に含有されているミセルは、凡そ3~50nm、有利には5~20nmのサイズを有する。上記の条件の下で、上記の範囲のサイズのミセルが自動的に形成されるが、ミセルのサイズは当業者であれば難なく調節すること又は最適化することが可能である。
【0068】
実施例2:模擬冷却水における本発明に応じて使用される抗菌組成物の抗菌作用
【0069】
実施例1に示した組成物の0.1質量%、0.25質量%、0.5質量%、1質量%、2.5質量%、5質量%及び10質量%の試料溶液を、ドイツの認定微生物試験所(akkreditierten mikrobiologischen Laboratorien)において、DIN EN 13623:2010に応じて、対照(コントロール)としての標準硬度水(WSH)、対照としての7.5%のH(過酸化水素)水(15体積%のH出発(原料)溶液の50%水溶液)、対照としての1%ポリソルベート80水溶液、対照としての20%植物抽出物水溶液及び対照としての機能化(官能化)植物抽出物(ミセル形成可溶化物)の20%水溶液と比較して、バイオフィルム形成細菌Legionella pneumophilia(ATCC33152)に対し、冷却水をシミュレートするために0.005%酵母抽出物の添加したpH8.0の水性環境中で、15分間、30分間、60分間及び120分間の作用時間で試験した。
【0070】
WSH、7.5%H水溶液のみ、植物抽出物ProExtrakt P150のみ、乳化剤ポリソルベート80のみ、機能化植物抽出物(ミセル形成可溶化物)のみ及び種々異なる希釈度の本発明の組成物についての測定結果は以下の表1に示されている。
【0071】
表1-本発明の組成物(ミセル形成可溶化物と組み合わせた水性環境中のHとL-(+)-乳酸)の作用増強抗菌効果


試験結果はL. pneumophilia(ATCC33152)に対する対数(log10)(での)減少ファクタ(Reduktionsfaktor)で表した;n.d.=不実施;WSH=標準硬度水;PSb80=ポリソルベート80;PE=ファイトエキス(P150);fPE=機能化ファイトエキス(=ミセル形成可溶化物);WVAG=作用増強抗菌混合物。
【0072】
試験結果は、本発明に応じた抗菌作用を示さないWSHと比べると、機能化ファイトエキスと乳酸からなる環境中に包まれたことによるHの抗菌作用はH単独に対しないし対照群に対し増大されることを明確に示している。この現象は、例えば技術的冷却塔において使用されるもののような冷却水中において、水中に存在しバイオフィルムを形成する細菌L. pneumophiliaに対しても有効である。
【0073】
試験結果は、植物抽出物/乳化剤を基礎とするミセル形成可溶化物を用いた作用増強抗菌作用物質ないし作用物質混合物を使用することによって、例えば飲料水、廃水、プロセス水又は表層水のような(但しこれらに限定されない)水に導入又はそのような水の上に投与することによる水の抗菌処理を目的とする水中の既存の抗菌物質の適用濃度及び/又は作用時間を低減できることを示している。
【0074】
試験結果は、更に、本発明の組成物は何れの希釈レベルも、すべての試験された濃度及び作用時間の大部分において、模擬冷却水中のL. pneumophiliaに対しより良好な作用を有することを示している。これに対し、相応の非ミセル化抗菌試験試料は、試験された試料中において、ミセル化試験試料と比べて改善された作用を示さなかった。
【0075】
実施例3-本発明に応じて使用される抗菌組成物のバイオフィルムにおける抗菌作用
【0076】
植物抽出物/乳化剤を基礎とするミセル形成可溶化物を用いた作用増強抗菌作用物質ないし作用物質混合物のバイオフィルム中の細菌に対する抗菌作用を確認するために、標準硬度水(WSH)、17%H水溶液のみ及び1.7%H水溶液(1:10)のみ、植物抽出物ProExtrakt P150の0.3%希釈物のみ、2%乳酸のみ、並びに、上記実施例1ないし実施例2に記載された本発明に応じて使用される抗菌組成物の非希釈(100%)及び1:10希釈(10%)溶液の作用について試験を行った。結果は以下の表2に示されている。
【0077】
表2-バイオフィルム中のP. aeruginosa(出発(初)菌数:>8log10cfu/cm2)に対する本発明に応じて使用される組成物(ミセル形成可溶化物と組み合わせた水性環境中のHとL-(+)-乳酸;その調製については実施例1参照)の作用増強された抗菌効果:


試験結果はP. aeruginosa(PAO1)に対する対数減少ファクタで表した;WSH=標準硬度水;fPE=機能化ファイトエキス(=ミセル形成可溶化物);MS=L-(+)-乳酸;WVAG=本発明の作用増強抗菌混合物。
【0078】
試験結果は、24時間経過バイオフィルム中のP. aeruginosaに対し本発明に応じた抗菌作用を示さないWSHと比べると、17%H溶液も、機能化ファイトエキスと乳酸からなる環境中に包まれた17%Hの非希釈溶液(=100%WVAG)も、5分間の作用時間後には早くも、24時間経過バイオフィルム中の試験微生物に対する大きな抗菌作用を示すことを示している。
【0079】
個別成分0.3%fPE及び2%MSはそれら自体ではバイオフィルム中の試験微生物に対する抗菌作用を有しなかった。
【0080】
17%Hの1:10希釈(1.7%H)ないし機能化ファイトエキスと乳酸からなる環境中に包まれた17%Hの1:10希釈(=10%WVAG)の場合、5~60分間の作用時間内において、機能化ファイトエキスと乳酸からなる環境中に包まれた1.7%H(=10%WVAG)を使用する場合では5.47超から7.01log10cfuの減少という抗菌作用の相違が明確に見られるが、このことは抗菌作用の増強を裏付けている。
【0081】
簡単にまとめると、試験結果は、バイオフィルムに対する17%Hの抗菌作用と(17%Hを含有する)100%WVAGの抗菌作用は大きくかつ実質的に同じ値とみなし得ることを示している。これらの高濃度のHの抗菌作用は、それ自体は、驚くべきものではない。
【0082】
これに対し、明確により小さい濃度の過酸化水素溶液、即ち1.7%Hを用いた試験結果は、17%H及び100%WVAGと比べて、バイオフィルムにおける抗菌作用の顕著な喪失を示した。しかしながら、驚くべきことに、(1.7%Hを含有する)希釈された10%WVAGについて、バイオフィルムにおいて、高用量の17%Hないし100%WVAGの抗菌作用の場合と同等の大きな抗菌作用が確認された。従って、本発明の組成物は低濃度(10%WVAGについての結果参照)でもバイオフィルムに対する大きな抗菌作用を達成すると同時に、生態学的及び経済的利点を必然的にもたらし、更に、実用上、利用者に対する危険の可能性を極めて小さくする。
ここに、本発明の可能な態様を付記する。
[付記1]含水液体中に存在するバイオフィルムの抗菌及び/又は抗酸化処理のための組成物の使用。
該組成物は、
a)少なくとも1つの植物抽出物と、8~18のHLB値を有する少なくとも1つの乳化剤と、水とを含むミセル形成可溶化物、及び、
b)過酸及びH を含む過酸化物、次亜塩素酸塩、次亜塩素酸及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの生分解性抗菌作用物質
を含む。
含水液体は人間又は動物の体液ではない。
[付記2]上記の使用において、生分解性抗菌作用物質はH である。
[付記3]上記の使用において、組成物は、更に、果実酸を含む。
[付記4]上記の使用において、果実酸はL-(+)-乳酸である。
[付記5]上記の使用において、組成物は、生分解性抗菌作用物質としてのH と、L-(+)-乳酸とを含む。
[付記6]上記の使用において、乳化剤は、少なくとも80質量%のポリソルベート、有利にはポリオキシエチレン-(20)-ソルビタンモノラウレート(ポリソルベート20)及び/又はポリオキシエチレン-(20)-ソルビタンモノオレート(ポリソルベート80)、を含む。
[付記7]上記の使用において、ミセル形成可溶化物は、5~40質量%の植物抽出物と、30~85質量%の乳化剤と、10~40質量%の水とを含有する。
[付記8]上記の使用において、組成物は、13~19質量%のH と、1~2.5質量%のL-(+)-乳酸とを含有する。
[付記9]上記の使用において、植物抽出物は、香辛料植物又はその部分からの抽出物、柑橘類植物又はその部分からの抽出物及びこれらの抽出物の組み合わせからなる群から選択される。
[付記10]上記の使用において、植物抽出物は、オリーブ、ニンニク、タマネギ及び/又は柑橘類果物に由来する。
[付記11]上記の使用において、ミセルは、1~100nmの、有利には3~50nmの、特に好ましくは5~20nmの、平均径を有する。
[付記12]上記の使用ないし下記の組成物の使用において、含水液体は、プロセス水、廃水、表層水及び充填水からなる群から選択される。
[付記13]上記の使用において、プロセス水は、技術装置、医療技術装置、工業装置ないし商業装置中の水である。
[付記14]上記の使用において、プロセス水は、冷却水システムの、とりわけ冷却塔のための冷却水システムの、冷却水として存在するか、又は、冷却水システムにおける、とりわけ冷却塔のための冷却水システムにおける、使用のために処理される。
[付記15]上記の使用において、プロセス水は、ビール醸造装置、貫流式水冷却装置及び/又は酒瓶閉栓装置の導水要素に存在するか、又は、ビール醸造装置、貫流式水冷却装置及び/又は酒瓶閉栓装置における使用のために処理される。
[付記16]上記の使用において、プロセス水は、医療技術装置の導水要素に存在するか、又は、医療技術装置における使用のために処理される。
[付記17]上記の使用において、充填水は、水槽、貯水タンク、家庭用給水管及び温水循環装置のための充填水である。
[付記18]含水液体中に存在するバイオフィルムの抗菌及び/又は抗酸化処理のための、とりわけ含水液体中に存在するバイオフィルムに発生するグラム陽性及びグラム陰性菌、真菌及び/又は原生生物の増殖の抑制及び予防のための、方法。
含水液体は人間又は動物の体液ではない。
該方法は、組成物の有効量の導入を含む。
組成物は、上記又は下記のものである。
[付記19]上記の方法において、組成物は、バイオフィルムを含有する導水管に、とりわけ冷却水管に、導入される。
[付記20]含水液体中に存在するバイオフィルムの抗菌及び/又は抗酸化処理のための組成物。該組成物は、
a)少なくとも1つの植物抽出物と、8~18のHLB値を有する少なくとも1つの乳化剤と、水とを含むミセル形成可溶化物、
b)過酸及びH を含む過酸化物、次亜塩素酸塩、次亜塩素酸及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの生分解性抗菌作用物質、及び、
c)果実酸
を含む。
[付記21]上記の組成物において、果実酸はL-(+)-乳酸である。
[付記22]上記の組成物において、生分解性抗菌作用物質はH である。
[付記23]上記の組成物は、H を生分解性抗菌作用物質としてかつL-(+)-乳酸を果実酸として含む。
[付記24]上記の組成物において、乳化剤は、少なくとも80質量%のポリソルベート、有利にはポリオキシエチレン-(20)-ソルビタンモノラウレート(ポリソルベート20)及び/又はポリオキシエチレン-(20)-ソルビタンモノオレート(ポリソルベート80)、を含む。
[付記25]上記の組成物において、ミセル形成可溶化物は、5~40質量%の植物抽出物と、30~85質量%の乳化剤と、10~40質量%の水とを含有する。
[付記26]上記の組成物は、13~19質量%のH と、1~2.5質量%のL-(+)-乳酸とを含有する。
[付記27]上記の組成物において、植物抽出物は、香辛料植物又はその部分からの抽出物、柑橘類植物又はその部分からの抽出物及びこれらの抽出物の組み合わせからなる群から選択される。
[付記28]上記の組成物において、植物抽出物は、オリーブ、ニンニク、タマネギ及び/又は柑橘類果物に由来する。
[付記29]上記の組成物において、ミセルは、1~100nmの、有利には3~50nmの、特に好ましくは5~20nmの、平均径を有する。
【0083】
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