IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社アドテックエンジニアリングの特許一覧

<>
  • 特許-露光方法 図1
  • 特許-露光方法 図2
  • 特許-露光方法 図3
  • 特許-露光方法 図4
  • 特許-露光方法 図5
  • 特許-露光方法 図6
  • 特許-露光方法 図7
  • 特許-露光方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】露光方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 9/00 20060101AFI20220315BHJP
【FI】
G03F9/00 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020113625
(22)【出願日】2020-06-30
(62)【分割の表示】P 2016016687の分割
【原出願日】2016-01-29
(65)【公開番号】P2020173470
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2020-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】300091670
【氏名又は名称】株式会社アドテックエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100097548
【弁理士】
【氏名又は名称】保立 浩一
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 晃
【審査官】今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-338357(JP,A)
【文献】特開2000-099158(JP,A)
【文献】特開平06-267817(JP,A)
【文献】特表平11-513481(JP,A)
【文献】特開2005-284046(JP,A)
【文献】特開2009-290119(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0214611(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027、21/30
G03F 7/20-7/24、9/00-9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線を含む光を放出する光源と、
透過型であるデジタルフォトマスクと、
デジタルフォトマスクを通した光源からの光の照射位置にワークを搬送する搬送系と、
光の照射位置に搬送されたワークの特定部位を撮像するカメラと、
コントローラと
を備えており、
デジタルフォトマスクは、コントローラによって制御される多数の画素を有していて、各画素は、紫外線を透過するオフ状態と、紫外線を遮断するオン状態とを取り得るものであり、
コントローラは、マスクパターンの表示をデジタルフォトマスクに行わせるためのデータであるパターンデータを記憶した記憶部と、デジタルフォトマスクに対してパターンデータを出力してマスクパターンの表示をデジタルフォトマスクに行わせる出力部とを備えているとともに、コントローラには、カメラによる撮像データに基づいてパターンデータを修正して修正したパターンデータが出力部から出力されるようにする修正プログラムが実装されており、
修正プログラムは、カメラによるワークの特定部位の撮像データに従ってデジタルフォトマスクにおけるマスクパターンの表示位置を修正する表示位置修正モジュールを含んでおり、
デジタルフォトマスクは、カメラの撮影波長の光を透過する透過部を有しており、
カメラは、デジタルフォトマスクの当該透過部を通してワークの特定部位を見込む位置に配置されている露光装置を使用した露光方法であって、
露光装置は、光の照射位置に配置されたステージと、ステージにワークが載置された状態でステージ又はデジタルフォトマスクとを移動させてデジタルフォトマスクをワークに接触させる移動機構とを備えており、
移動機構は、ステージとデジタルフォトマスクとが接近したり離間したりする方向である接近離間方向にステージ又はデジタルフォトマスクを移動させてデジタルフォトマスクをワークに接触させる機構であって接近離間方向に垂直な方向及び接近離間方向を軸とする回転方向にステージ及びデジタルフォトマスクを移動させずにデジタルフォトマスクをワークに接触させる機構であり、
ステージへのワークの載置における基準点として載置基準点が設定されており、
カメラは、ステージ上の載置基準点を臨む位置に配置されており、
表示位置修正モジュールは、載置基準点からの前記特定部位のずれを前記撮像データから求めてこのずれに従ってデジタルフォトマスクにおけるマスクパターンの表示位置を修正するモジュールであり、
ステージにワークが載置されて光照射位置に搬送された後、移動機構により、接近離間方向に垂直な方向及び接近離間方向を軸とする回転方向にはステージ及びデジタルフォトマスクを移動させることなくワークとデジタルフォトマスクとが接触した状態とするステップと、
デジタルフォトマスクとワークとが接触した後に、デジタルフォトマスクを通してカメラによりワークの特定部位の撮影を行う撮影ステップと、
撮影ステップで得られた撮像データに従って修正プログラムを実行する修正ステップと、
修正プログラムで修正されたパターンデータによりデジタルフォトマスクにマスクパターンを修正された位置に表示させながらワークを露光する露光ステップと
を有しており、
撮影ステップから露光ステップが終了するまでの間、デジタルフォトマスクとワークとが接触して両者の位置関係が変化しない状態が継続されることを特徴とする露光方法。
【請求項2】
紫外線を含む光を放出する光源と、
透過型であるデジタルフォトマスクと、
デジタルフォトマスクを通した光源からの光の照射位置にワークを搬送する搬送系と、
光の照射位置に搬送されたワークの特定部位を撮像するカメラと、
コントローラと
を備えており、
デジタルフォトマスクは、コントローラによって制御される多数の画素を有していて、各画素は、紫外線を透過するオフ状態と、紫外線を遮断するオン状態とを取り得るものであり、
コントローラは、マスクパターンの表示をデジタルフォトマスクに行わせるためのデータであるパターンデータを記憶した記憶部と、デジタルフォトマスクに対してパターンデータを出力してマスクパターンの表示をデジタルフォトマスクに行わせる出力部とを備えているとともに、コントローラには、カメラによる撮像データに基づいてパターンデータを修正して修正したパターンデータが出力部から出力されるようにする修正プログラムが
実装されており、
修正プログラムは、カメラによるワークの特定部位の撮像データに従ってデジタルフォトマスク上におけるマスクパターンの表示位置を修正する表示位置修正モジュールを含んでおり、
デジタルフォトマスクは、カメラの撮影波長の光を透過する透過部を有しており、
カメラは、デジタルフォトマスクの当該透過部を通してワークの特定部位を見込む位置に配置されている露光装置を使用した露光方法であって、
露光装置は、光の照射位置に配置されたステージと、ステージにワークが載置された状態でステージ又はデジタルフォトマスクとを移動させてデジタルフォトマスクをワークに接触させる移動機構と、デジタルフォトマスクがワークに接触している状態でデジタルフォトマスクとワークとの間の空間を真空排気して両者を密着させる排気系とを備えており、
移動機構は、ステージとデジタルフォトマスクとが接近したり離間したりする方向である接近離間方向にステージ又はデジタルフォトマスクを移動させてデジタルフォトマスクをワークに接触させる機構であって接近離間方向に垂直な方向及び接近離間方向を軸とする回転方向にステージ及びデジタルフォトマスクを移動させずにデジタルフォトマスクをワークに接触させる機構であり、
ステージへのワークの載置における基準点として載置基準点が設定されており、
カメラは、ステージ上の載置基準点を臨む位置に配置されており、
表示位置修正モジュールは、載置基準点からの前記特定部位のずれを前記撮像データから求めてこのずれに従ってデジタルフォトマスクにおけるマスクパターンの表示位置を修正するモジュールであり、
ステージにワークが載置されて光照射位置に搬送された後、移動機構により、接近離間方向に垂直な方向及び接近離間方向を軸とする回転方向にはステージ及びデジタルフォトマスクを移動させることなくワークとデジタルフォトマスクとが接触した状態とするステップと、
接触したデジタルフォトマスクとワークの間の空間が真空排気されて両者が密着した後に、デジタルフォトマスクを通してカメラによりワークの特定部位の撮影を行う撮影ステップと、
撮影ステップで得られた撮像データに従って修正プログラムを実行する修正ステップと、
修正プログラムで修正されたパターンデータによりデジタルフォトマスクにマスクパターンを修正された位置に表示させながらワークを露光する露光ステップと
を有しており、
撮影ステップから露光ステップが終了するまでの間、デジタルフォトマスクとワークの間の空間が真空排気されて両者が密着した状態が継続されることを特徴とする露光方法。
【請求項3】
前記カメラの解像度は、前記デジタルフォトマスクの解像度以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の露光方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の発明は、フォトリソグラフィにおける露光技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フォトリソグラフィは、対象物に微細な形状を作り込む技術として各種の用途で用いられている。代表的には、各種電子機器に搭載されているプリント基板の製造における回路パターンの形成のために、フォトリソグラフィが行われている。フォトリソグラフィにおいては、得ようとしている形状の光を対象物に照射する露光工程が存在しており、露光装置が使用される。
【0003】
露光装置には、投影露光、コンタクト露光、プロキシミティ露光等の各種方式が存在している。これら方式では、光源からの光をフォトマスクを介して対象物(以下、ワークという)に照射する構成となっている。フォトマスクは、石英ガラス基板のような透明なガラス基板上に、クロム等の遮光性材料でパターンが形成されており、このパターンにより光の透過、遮断が制御される。このパターンは、ワークに形成しようとするパターンと同じものであり、このパターンの光がワーク上に投影又は転写されることで露光が行われる。以下、ワーク上に照射される光のパターンを露光パターンといい、マスク上に形成されているパターンをマスクパターンという。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平6-232024号公報
【文献】特開2004-87771号公報
【文献】特開2005-338357号公報
【文献】特開2000-99158号公報
【文献】特開2002-55458号公報
【文献】特表平11-513481号公報
【文献】特開2009-229279号公報
【文献】特開平8-297024公報
【文献】特開2004-186377号公報
【文献】特開2014-204079号公報
【文献】特開2003-243279号公報
【文献】特開2003-224055号公報
【文献】特開平6-267817号公報
【文献】特開2000-112140号公報
【文献】特開2004-56002号公報
【文献】特表2007-515802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の露光装置おいて、製品の品種が異なる場合には形成するパターンも異なるので、各品種に合わせて各フォトマスクを用意して保管しなければならず、フォトマスク自体のコストの他、管理のコストも無視できないものとなっている。この点は、多品種少量生産の傾向が大きい生産現場ほど深刻な問題となっている。
本願の発明は、上記課題を考慮して為されたものであり、異なる品種用に異なる露光パターンでの露光を行う場合にも手間やコストがかからず、多品種少量生産に適した露光技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本願の請求項1記載の発明は、紫外線を含む光を放出する光源と、
透過型であるデジタルフォトマスクと、
デジタルフォトマスクを通した光源からの光の照射位置にワークを搬送する搬送系と、
光の照射位置に搬送されたワークの特定部位を撮像するカメラと、
コントローラと
を備えており、
デジタルフォトマスクは、コントローラによって制御される多数の画素を有していて、各画素は、紫外線を透過するオフ状態と、紫外線を遮断するオン状態とを取り得るものであり、
コントローラは、マスクパターンの表示をデジタルフォトマスクに行わせるためのデータであるパターンデータを記憶した記憶部と、デジタルフォトマスクに対してパターンデータを出力してマスクパターンの表示をデジタルフォトマスクに行わせる出力部とを備えているとともに、コントローラには、カメラによる撮像データに基づいてパターンデータを修正して修正したパターンデータが出力部から出力されるようにする修正プログラムが実装されており、
修正プログラムは、カメラによるワークの特定部位の撮像データに従ってデジタルフォトマスクにおけるマスクパターンの表示位置を修正する表示位置修正モジュールを含んでおり、
デジタルフォトマスクは、カメラの撮影波長の光を透過する透過部を有しており、
カメラは、デジタルフォトマスクの当該透過部を通してワークの特定部位を見込む位置に配置されている露光装置を使用した露光方法であって、
露光装置は、光の照射位置に配置されたステージと、ステージにワークが載置された状態でステージ又はデジタルフォトマスクとを移動させてデジタルフォトマスクをワークに接触させる移動機構とを備えており、
移動機構は、ステージとデジタルフォトマスクとが接近したり離間したりする方向である接近離間方向にステージ又はデジタルフォトマスクを移動させてデジタルフォトマスクをワークに接触させる機構であって接近離間方向に垂直な方向及び接近離間方向を軸とする回転方向にステージ及びデジタルフォトマスクを移動させずにデジタルフォトマスクをワークに接触させる機構であり、
ステージへのワークの載置における基準点として載置基準点が設定されており、
カメラは、ステージ上の載置基準点を臨む位置に配置されており、
表示位置修正モジュールは、載置基準点からの前記特定部位のずれを前記撮像データから求めてこのずれに従ってデジタルフォトマスクにおけるマスクパターンの表示位置を修正するモジュールであり、
ステージにワークが載置されて光照射位置に搬送された後、移動機構により、接近離間方向に垂直な方向及び接近離間方向を軸とする回転方向にはステージ及びデジタルフォトマスクを移動させることなくワークとデジタルフォトマスクとが接触した状態とするステップと、
デジタルフォトマスクとワークとが接触した後に、デジタルフォトマスクを通してカメラによりワークの特定部位の撮影を行う撮影ステップと、
撮影ステップで得られた撮像データに従って修正プログラムを実行する修正ステップと、
修正プログラムで修正されたパターンデータによりデジタルフォトマスクにマスクパターンを修正された位置に表示させながらワークを露光する露光ステップと
を有しており、
撮影ステップから露光ステップが終了するまでの間、デジタルフォトマスクとワークとが接触して両者の位置関係が変化しない状態が継続されるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項2記載の発明は、紫外線を含む光を放出する光源と、
透過型であるデジタルフォトマスクと、
デジタルフォトマスクを通した光源からの光の照射位置にワークを搬送する搬送系と、
光の照射位置に搬送されたワークの特定部位を撮像するカメラと、
コントローラと
を備えており、
デジタルフォトマスクは、コントローラによって制御される多数の画素を有していて、各画素は、紫外線を透過するオフ状態と、紫外線を遮断するオン状態とを取り得るものであり、
コントローラは、マスクパターンの表示をデジタルフォトマスクに行わせるためのデータであるパターンデータを記憶した記憶部と、デジタルフォトマスクに対してパターンデータを出力してマスクパターンの表示をデジタルフォトマスクに行わせる出力部とを備えているとともに、コントローラには、カメラによる撮像データに基づいてパターンデータを修正して修正したパターンデータが出力部から出力されるようにする修正プログラムが
実装されており、
修正プログラムは、カメラによるワークの特定部位の撮像データに従ってデジタルフォトマスク上におけるマスクパターンの表示位置を修正する表示位置修正モジュールを含んでおり、
デジタルフォトマスクは、カメラの撮影波長の光を透過する透過部を有しており、
カメラは、デジタルフォトマスクの当該透過部を通してワークの特定部位を見込む位置に配置されている露光装置を使用した露光方法であって、
露光装置は、光の照射位置に配置されたステージと、ステージにワークが載置された状態でステージ又はデジタルフォトマスクとを移動させてデジタルフォトマスクをワークに接触させる移動機構と、デジタルフォトマスクがワークに接触している状態でデジタルフォトマスクとワークとの間の空間を真空排気して両者を密着させる排気系とを備えており、
移動機構は、ステージとデジタルフォトマスクとが接近したり離間したりする方向である接近離間方向にステージ又はデジタルフォトマスクを移動させてデジタルフォトマスクをワークに接触させる機構であって接近離間方向に垂直な方向及び接近離間方向を軸とする回転方向にステージ及びデジタルフォトマスクを移動させずにデジタルフォトマスクをワークに接触させる機構であり、
ステージへのワークの載置における基準点として載置基準点が設定されており、
カメラは、ステージ上の載置基準点を臨む位置に配置されており、
表示位置修正モジュールは、載置基準点からの前記特定部位のずれを前記撮像データから求めてこのずれに従ってデジタルフォトマスクにおけるマスクパターンの表示位置を修正するモジュールであり、
ステージにワークが載置されて光照射位置に搬送された後、移動機構により、接近離間方向に垂直な方向及び接近離間方向を軸とする回転方向にはステージ及びデジタルフォトマスクを移動させることなくワークとデジタルフォトマスクとが接触した状態とするステップと、
接触したデジタルフォトマスクとワークの間の空間が真空排気されて両者が密着した後に、デジタルフォトマスクを通してカメラによりワークの特定部位の撮影を行う撮影ステップと、
撮影ステップで得られた撮像データに従って修正プログラムを実行する修正ステップと、
修正プログラムで修正されたパターンデータによりデジタルフォトマスクにマスクパターンを修正された位置に表示させながらワークを露光する露光ステップと
を有しており、
撮影ステップから露光ステップが終了するまでの間、デジタルフォトマスクとワークの間の空間が真空排気されて両者が密着した状態が継続されるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項3記載の発明は、前記請求項1又は2の構成において、前記カメラの解像度は、前記デジタルフォトマスクの解像度以上であるという構成を有する。
【発明の効果】
【0007】
以下に説明する通り、本願の請求項1記載の発明によれば、デジタルフォトマスクとワークとが接触して両者の位置関係が変化しない状態が保持されたまま、修正データが適用されたパターンデータがデジタルフォトマスクに表示され、露光が行われる。このため、カメラによる撮影の後にワークの位置ずれが生じて表示修正データが不正確になってしまうことはなく、カメラによる撮像結果に応じたマスクパターンの修正という技術構成がより有意義なものとなる。
また、請求項2記載の発明によれば、真空排気によるデジタルフォトマスクとワークとの密着状態が保持されたまま、修正データが適用されたパターンデータがデジタルフォトマスクに表示され、露光が行われる。このため、上記効果がより確実に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態の露光方法が実施される露光装置の概略図である。
図2図1の装置におけるシーケンスプログラムの主要部を示すフローチャートである。
図3】修正プログラムの概略を示したフローチャートである。
図4】像原点の特定について示した概念図である。
図5】表示位置修正モジュールについて示した概念図である。
図6】拡縮モジュールについて示した概念図である。
図7】変形モジュールについて示した概念図である。
図8】実施形態の露光方向が実施される露光装置の全体の動作を示す正面断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本願発明を実施するための形態(以下、実施形態)について説明する。
図1は、実施形態の露光方法が実施される露光装置の概略図である。図1に示す露光装置は、光源1と、フォトマスク2と、搬送系3と、装置の各部を制御するコントローラ4等を備えて構成されている。
光源1は、少なくとも紫外線を含む光を放出するものである。例えば、ショートアーク型又はロングアーク型の水銀ランプ等が光源1として採用される。
フォトマスク2は、この露光装置を大きな特徴点を成しており、透過型のデジタルフォトマスク2が使用されている。デジタルフォトマスク2とは、一般的な用語ではないが、マスクパターンをデジタル表示するフォトマスクである。
【0010】
デジタルフォトマスク2は、コントローラ4によって制御される多数の画素を有していて、各画素は、紫外線を透過するオフ状態と、紫外線を遮断するオン状態とを取り得るものであり、それら画素のオンオフのパターンが、表示されるマスクパターンである。
このようなデジタルフォトマスク2としては、この実施形態では、透過型液晶ディスプレイが使用されている。例えば、10~100μm程度の画素ピッチの高解像度のTFTカラー液晶ディスプレイが採用できる。但し、バックライトは不要であるので取り外した状態で使用される。また、市販されている液晶ディスプレイは、紫外線カットフィルタが設けられている場合があるが、その場合も取り外されて使用される。
【0011】
光学系の構成は、露光の方式により異なってくる。この露光装置は、コンタクト露光を行う装置となっており、光源1とデジタルフォトマスク2の間に照射光学系5が配置されている。照射光学系5については、種々のものから任意に選択し得るが、例えばショートアーク型の紫外線ランプを光源1とした場合、光源1からの光をインテクグレータレンズで均一な強度分布の光束とした後、コリメータレンズで平行光としてデジタルフォトマスク2に照射する構成が採用され得る。デジタルフォトマスク2で透過・遮断が制御された光は、平行光のままワークWに達してワークWを露光する。照射光学系5は、不図示のシャッタを含んでおり、シャッタはコントローラ4によって制御される。
尚、投影露光を行う場合、デジタルフォトマスク2とワークWの間に投影光学系が配置される。投影光学系は、デジタルフォトマスク2上のマスクパターンを投影してワークWに光照射する。
【0012】
デジタルフォトマスク2と対向した位置には、ステージ6が配置されている。ステージ6は、露光パターンの光が照射される位置にワークWを保持する部材である。ワークWは、ステージ6の上面に載置されて保持される。ステージ6は、ワークWがステージ6上で動かないようにするための真空吸着孔61を上面に有しており、真空吸着孔61を排気してワークWを真空吸着する排気系8が設けられている。ステージ6は、不図示のワーク用センサを備えており、ワークWが載置されたことがワーク用センサで確認されるようになっている。ワーク用センサは、コントローラ4に接続されている。
【0013】
搬送系3としては、ワークWのタイプにより最適化されたものが採用される。この実施形態では、リジッドタイプのプリント基板用の露光装置となっている。このため、この実施形態では、コンベア31,32と、搬送ハンド33,34等によって搬送系3が構成されている。
コンベア31,32は、ステージ6に対して搬入側と搬出側に設けられており(以下、搬送側コンベア、搬出側コンベア)、搬送ハンド33,34も搬入側と搬出側に設けられている(以下、搬入ハンド、搬出ハンド)。この実施形態では、搬送方向は水平方向である。以下、説明の都合上、搬送方向(図1の紙面上、左右方向)をX方向とし、X方向に垂直な水平方向(図1の紙面に垂直な方向)をY方向とする。
【0014】
搬入ハンド33は、搬入側コンベア31で搬送されたワークWをピックアップしてステージ6に載置する機構であり、搬出ハンド34は、露光されたワークWをステージ6からピックアップして搬出側コンベア32に載置する機構である。各ハンド33,34は、下端にワークWを吸着する吸着パッド(符号省略)を備えているとともに、ハンド駆動機構331,341を備えている。各ハンド駆動機構331,341は、各ハンドを水平方向及び垂直方向に移動させる機構である。これら機構によって、ワークWの移載が行われる。
【0015】
また、装置は、ステージ6を移動する移動機構62を備えている。移動機構62は、載置されたステージ6のデジタルフォトマスク2に対する距離を最適に調節するための機構である。この実施形態では、コンタクト露光を行うものとなっており、載置されたワークWをデジタルフォトマスク2に接触させるための移動を行う機構となっている。したがって、移動機構62は、この実施形態では昇降機構となっている。尚、デジタルフォトフォトマスク2についても、必要に応じて移動機構が設けられ、ワークWに対する距離(距離ゼロを含む)が調節される。
【0016】
さらに、実施形態では、ワークWに対するデジタルフォトマスク2の密着性を高めるため、ワークWとデジタルフォトマスク2との間を真空排気する構成を採用している。具体的には、図1に示すように、ステージ6の表面にはOリングのような周状封止部材63が設けられている。デジタルフォトマスク2は枠部21を有しており、後述するようにステージ6が移動機構62によって上昇した際、枠部21は周状封止部材63に当接して密着する。ワークWは、周状封止部材63の内側に載置される。ステージ6は、載置されたワークWと周状封止部材63との間の位置になるようにして密着用の排気孔64を有している。排気孔64から排気されることでワークWとデジタルフォトマスク2との間が真空となり、ワークWに対するデジタルフォトマスク2の密着性が高められる。
【0017】
また、照射位置に搬送されたワークWのアライメントマークを撮像するカメラ7が設けられている。アライメントマークは、ワークWの表面に少なくとも二つ設けられている。これに合わせて、この実施形態では少なくも二つのカメラ7が設けられている。例えばアライメントマークが四つであれば、カメラ7も四つ設けられる。
各カメラ7の配置位置は、設定された載置位置にワークWが載置された際、当該載置されたワークWのアライメントマークを撮像可能な位置(視野の範囲内)である。各カメラ7には、例えばCCDカメラ7が採用され、デジタルフォトマスク2の画素ピッチに応じた高解像度のカメラ7が採用される。例えば、2μm~10μm程度の画素ピッチのものが採用される。尚、各カメラ7は、デジタルフォトマスク2を通して各アライメントマークを撮像する。各カメラは可視光を撮像波長とするものであるが、デジタルフォトマスク2は、可視光を透過する透過部を有する。透過部は、マスクパターンの表示と同様、一定の領域のドット群を透過状態とすることで構成される。
また、各カメラ7はコントローラ4に接続されており、各カメラ7で撮影することにより得られたデータ(以下、撮像データという)はコントローラ4に送られるようになっている。コントローラ4の記憶部は、各カメラ7用に記憶領域を確保しており、各記憶領域には各カメラ7からの撮像データを記憶し、各カメラ7のフレーム周期で更新する。
【0018】
コントローラ4は各種プログラムを実行するプロセッサを含む制御手段であり、PLC(Programmable Logic Controller)のようなプログラマブルな制御デバイスがコントローラ4として使用される。図1に示すように、コントローラ4は、プロセッサ41、メモリのような記憶部42、入出力部(I/O)43等を備えている。尚、記憶部42には、各種プログラムが記憶されており、その中にシーケンスプログラムが含まれる。
【0019】
上述したように、デジタルフォトマスク2は、形成されているマスクパターンで光の透過・遮断を制御してワークW上に露光パターンの光を投影し転写するためのものである。この露光装置において、デジタルフォトマスク2はコントローラ4に接続されており、コントローラ4から送られるデータに従って表示を行うことがマスクパターンの形成となる。以下、このマスクパターンの表示用データをパターンデータという。また、コントローラ4における入出力部43は、この実施形態における出力部として機能し、フォトマスク2に対してパターンデータを出力する部分である。
【0020】
コントローラ4は、搬送系3を制御してワークWを一枚ずつ搬入してステージ6に載置させ、デジタルフォトマスク2にパターンデータを出力してマスクパターンを表示させ、この状態でワークWを露光する。所定時間の露光の後、ワークWをステージ6からピックアップして搬出させる。このようなシーケンスで動作するようシーケンスプログラムがコントローラ4に実装されている。このようなシーケンスプログラムにおいて、デジタルフォトマスク2を使用したマスクパターンの表示とそれを利用したワークWの露光が最適化されている。以下、この点について説明する。
【0021】
図2は、図1の露光装置におけるシーケンスプログラムの主要部を示すフローチャートである。
実施形態において、パターンデータは基本的には予め作成され、コントローラ4の記憶部42に記憶される。パターンデータの作成は、ワークWに対してどのようなパターンを形成するかということによるのであり、最終的な製品の設計情報に基づいて作成される。尚、パターンデータは、デジタルフォトマスク2でのイメージ表示用のデータであり、ある種のイメージデータであるともいえる。
【0022】
記憶部42には、品種毎にパターンデータが記憶されている。以下、記憶部42に記憶されているオリジナルの品種毎のパターンデータをオリジナルデータという。シーケンスプログラムは、指定された品種のパターンデータを記憶部42から読み出し、入出力部43を介してデジタルフォトマスク2に送ってマスクパターンの表示を行わせる。この際、各カメラ7から送られる撮像データに従ってオリジナルデータを修正し、修正されたパターンデータ(以下、修正済みパターンデータ)をデジタルフォトマスク2に送る。この修正を行う修正プログラムが、シーケンスプログラムのサブルーチンとして実装されている。
【0023】
より具体的に説明すると、図2に示すように、露光の際、シーケンスプログラムは、ワークWをステージ6に載置した後、ステージ6を駆動してワークWがデジタルフォトマスク2に接触した状態とし、且つ排気系8によって両者の間を真空排気して密着させる。この状態で、シーケンスプログラムは、修正プログラムを実行する。
【0024】
修正プログラムの戻り値は、オリジナルデータをどのように修正して表示するかというデータ(以下、表示修正データ)である。図2に示すように、シーケンスプログラムは、オリジナルデータに対して表示修正データを適用して修正済みパターンデータを取得し、修正済みパターンデータをデジタルフォトマスク2に送ってマスクパターンを表示させる。この状態で、照射光学系5内のシャッタを開いて露光を行わせる。そして、所定時間の露光の後、シャッタを閉じ、密着を解除してから搬送系3を制御して露光済みのワークWをステージ6からピックアップして搬出させる。このようなシーケンスで動作するようシーケンスプログラムがコントローラ4には実装されている。
【0025】
次に、修正プログラムについて、図3を参照して説明する。図3は、修正プログラムの概略を示したフローチャートである。
図2に示すように、ワークWが載置されたことがワーク用センサで確認されと、シーケンスプログラムは、修正プログラムを呼び出して実行する。図3に示すように、修正プログラムは、起動すると、各カメラ7の撮像データを取得する。即ち、記憶部42の記憶領域から各撮像データを読み出し、一時的に変数に格納する。
【0026】
次に、修正プログラムは、各撮像データを処理して表示修正データを算出する。表示修正データは、マスクパターンの表示位置を修正するデータである場合、マスクパターンの形状を修正するデータである場合、又はそれらの双方である場合がある。いずれの場合においても、修正プログラムは、各撮像データからアライメントマークの像(以下、マーク像)を表示している部分のデータを取得し、マーク像の基準となる点(以下、像原点)を特定する。この点について、図4を参照して説明する。図4は、実施形態におけるアライメントマーク及び像原点の特定について示した概念図である。
【0027】
図4に示すように、ワークWは、フォトリソグラフィによりパターン形成が行われる領域(以下、パターン形成領域)WRを有する。アライメントマークAMは、パターン形成領域WRの外側のマージンの領域に形成されている。図4に示すように、この実施形態では、方形であるワークWの平面視の輪郭における各角の部分に設けられている。この例では、アライメントマークAMは、円形のパターンとなっている。
図4において、各カメラ7による撮影可能領域(視野)72が示されており、あるカメラ7により撮影されたイメージIが例示的に示されている。このイメージIのデータ(撮像データ)を処理して像原点Moが特定される。像原点の特定については、幾つかのやり方があるが、この実施形態では、重心を像原点として特定するようになっている。この場合の重心とは、平面視において当該マーク像の形状を有する均質な板であると仮定した場合の重心の意味である。この例ではアライメントマークAMは円形であるので円の中心が像原点Moとなるが、星形や十字形等の他の形状の場合も重心の平面視の座標が算出されて像原点Moとされる。
【0028】
図3に示すように、修正プログラムは、像原点Moの算出の後、基準点と像原点Moとのずれを求め、そのずれを補償する(修正する)量として表示修正データを算出する。まず、基準点について説明する。
表示修正データの算出の際の基準点とは、ステージ6へのワークWの載置における基準点であり、理想的には、ステージ6上でこの位置に載置されるという意味での基準点である。以下、基準点を載置基準点と言い換える。載置基準点を、図4においてPoで示す。例えばワークWが方形であり、方形の各隅にアライメントワークWが形成されており、カメラ7が各アライメントマークを同時に撮像できるように四台設けられているとする。この場合、載置基準点Poは、例えばステージ6に対して照射光学系5の光軸51が交差する点をステージ原点(図1に60で示す)とし、このステージ原点60に対してXY方向に延びる方形の各角の位置が載置基準点Poとなる。この方形の寸法は、四つのアライメントマークが成す設計情報としての方形の寸法に相当している。即ち、ワークW上でのアライメントマークの形成位置として予め定められた情報における方形の寸法と同じである。
【0029】
各カメラ7は、ステージ6上の載置基準点Poを臨む位置に配置される。通常は、カメラ7の光軸(カメラ7の撮像レンズの中心軸)71が載置基準点Poと一致する位置とされる。搬送系3における搬入ハンド33は、ワークWの各アライメントマークが各載置基準点Poに一致するようワークWをステージ6に載置する。しかしながら、搬入ハンド33の精度や、搬入コンベア41上にある時点で既に位置がずれている等の要因から、ステージ6に載置された際のワークWの位置は、各アライメントマークが載置基準点Poに一致する位置ではない。それでも、各アライメントマークは、各カメラ7の撮像領域の中に入るようになっている。つまり、各機構系の精度を要因とする位置ずれは、あったとしても最大で0.5~1.0mm程度である。一方、各カメラ7は、取り付け状態での撮影距離において例えば7.5×10mm程度の領域を撮像領域としており、十分な余裕を持って各アライメントマークが撮像される。
【0030】
このような載置基準点Poは、撮像データの処理においても定数として設定されている。例えばカメラ7の光軸71上の点が載置基準点Poである場合、図4に示すように撮像データが表現するイメージIの中心点が載置基準点Poである。修正プログラムは、図4に示すように、各カメラ7からの撮像データにおいて上記像原点Moを算出し、各像原点Moを結んでできる形状(以下、像原点形成図形という)が、方形であるかどうか判断する。方形である場合、載置基準点Poを結んでできる方形(以下、基準方形という)BRとほぼ同じサイズであるかどうか判断する。「ほぼ同じサイズ」とは、各辺の大きさの相違がある閾値以内であるということである。ほぼ同じサイズである場合、図3に示すように、修正プログラムは、表示位置修正モジュールを実行する。表示位置修正モジュールは、修正プログラムのサブルーチンとして実装されているプログラムである。図5は、表示位置修正モジュールについて示した概念図である。
【0031】
表示位置修正モジュールは、四つの載置基準点Poのいずれかを基準としてずれ量を算出する。例えば、図5に示すように左下の載置基準点Poが基準とされ、各像原点Moを結んでできる方形(以下、像方形という)MRが、左下の載置基準点Poを基準にしてどの程度ずれているかが算出される。即ち、像方形MRの左下の像原点Moの載置基準点PoからのX方向のずれ量、Y方向のずれ量、回転方向(θ方向)のずれ量が算出される。これらのずれ量のデータがXYθ方向での修正用データ(以下、XYθ修正データという)である。表示位置修正データには、XYθの各量と、四つの載置基準点Poのうちのどれを基準にしたかという情報を含む。表示位置修正モジュールは、このようにして算出した表示位置修正データを戻り値として修正プログラムに戻す。尚、θがゼロという場合もある。
【0032】
また、像原点形成図形が方形ではあるものの、基準方形BRとほぼ同サイズではない場合、表示位置修正プログラムは、拡縮モジュールを実行する。図6は、拡縮モジュールについて示した概念図である。
図6(1)に示すように、拡縮モジュールは、同様に四つの載置基準点Poのうちのいずれかの点を基準にして像方形MRのXY方向のずれ、θ方向のずれを算出する。即ち、XYθ修正データを算出する。そして、図6(2)に示すように、その載置基準点Poに、対応する像方形MRの像原点Moを一致させて傾き角θだけ逆向きに回転させ、XY方向の辺を一致させた状態を観念する。この状態で、像方形MRが基準方形BRからどの程度の倍率であるかを算出し、その倍率を拡縮率として表示修正データに含める。この場合、X方向の拡縮率とY方向の拡縮率とが同じ場合もあるし違う場合もある。このようにして、拡縮モジュールは、XYθ修正データに加え、XYの拡縮率を加えた修正データを取得し、戻り値として修正プログラムに戻す。
【0033】
像原点形成図形が方形ではない場合、図4に示すように修正プログラムは変形モジュールを実行する。図7は、変形モジュールについて示した概念図である。
像原点形成図形が方形ではない場合、ワークWに歪みのような変形が生じていることを意味する。この場合、修正可能な変形と修正可能でない変形とがある。変形モジュールは、像原点形成図形を解析し、修正できるかどうか判断する。例えば、図7(1)に示すように、像原点Moを結んでできる形状が中心線Lcに対して対称な台形である場合、修正可能である。即ち、変形モジュールは、ある二つの像原点Moを結ぶ線分Loを基準線分とし、基準線分Loの中点を通り当該線分に垂直な線Lcを観念する。像原点形成図形がその線分に対して対称な台形であれば、修正可能であるとされる。
【0034】
この場合、変形プログラムは、図7(1)に示すように、当該基準線分Loを、対応する基準方形BRの辺に一致させるためのXYθ修正データを算出する。そして、図7(2)に示すように、像原点形成図形をXYθについて逆向きに移動させ、像原点形成図形の基準線分Loを基準方形BRの対応する辺に一致させた状態を観念する。この際、基準線分Loの長さが、基準方形BRの対応する辺の長さと一致しない場合、像原点形成図形を全体に拡大縮小し、その際の拡縮率を記憶する。
そして、図7(2)に示す状態において、台形の上辺と下辺との比率を算出し、中心線Lcの方向において徐々に拡大又は縮小する修正データ(漸次拡縮率)を生成する。そして、XYθ修正データ、全体の拡縮率の逆数、及びX方向又はY方向での漸次拡縮率を修正データに含める。このようにして算出された表示修正データが変形モジュールの実行結果として修正プログラムに戻される。上記の例は台形であったが、平行四辺形や菱形といった図形の場合も修正可能であり、修正可能であるとして変形データが作成されて修正プログラムに戻される。尚、変形不能の判断がされた場合、その旨の値が戻り値として修正プログラムに戻される。
【0035】
このようにして、条件に応じて各モジュールが実行され、表示修正データが修正プログラムにおいて取得される。修正プログラムは、このようにして取得された表示修正データをプログラムの実行結果としてシーケンスプログラムに戻し、プログラムを終了する。尚、変形モジュールにより変形不能の値が戻された場合、ワークWにおいて修正ができない歪みが生じていることになるので、修正プログラムは、修正不能である旨のプログラムの実行結果をシーンスプログラムに出力し、プログラムを終了する。
【0036】
図2に示すように、修正プログラムから表示修正データが戻されると、シーケンスプログラムは、表示修正データを適用してオリジナルデータを更新する。即ち、XY方向の修正データに基づいてマスクパターンの表示位置をXY方向で修正してオリジナルデータを更新し、修正済みパターンデータとする。また、表示修正データにθ修正データが含まれていれば、回転中心点と回転角度を適用してオリジナルデータを修正する。さらに、拡縮修正データや変形データが含まれていれば、それを適用し、X方向、Y方向で拡縮又は漸次拡縮を行ってオリジナルデータを修正する。このようにして、シーケンスプログラムは、修正済みパターンデータを取得する。
【0037】
次に、シーケンスプログラムは、修正済みパターンデータをデジタルフォトマスク2に送り、マスクパターンを表示させる。この状態でシャッタを開き、デジタルフォトマスク2を通してワークWを露光する。尚、図2に示すように、修正プログラムからの戻り値が表示修正データでない場合(修正不能である場合)、シーケンスプログラムは、コントローラ4が備える不図示のディスプレイにその旨のエラーメッセージを表示し、プログラムを中止する。このようなシーケンスで動作が行われるよう、シーケンスプログラム及び修正プログラムはプログラミングされている。
尚、各カメラ7による各アライメントマークの撮像は、排気系8によって真空排気がされてデジタルフォトマスク2とワークWが密着した後であり、表示修正データを適用してのマスクパターンの表示、マスクパターンに応じた露光パターンでのワークWの露光が完了するため、密着状態は保持される。したがって、各カメラ7で各アライメントマークが撮像された後の露光が完了するまでの間にデジタルフォトマスク2に対してワークWが位置ずれしてしまうことはない。
【0038】
次に、実施形態の露光方法が実施される露光装置の全体の動作について、図8を参照して概略的に説明する。図8は、実施形態の露光方法が実施される露光装置の全体の動作を示す正面断面概略図である。以下の説明は、露光方法の発明の実施形態の説明でもある。
まず、図8(1)に示すように、一枚のワークWが搬入側コンベア31により搬入される。そして、図8(2)に示すように、搬入ハンド33によりステージ6に載置される。そして、ワークWは真空吸着孔62からの真空排気によりステージ6に吸着される。次に、移動機構62が動作してステージ6を上昇させ、図8(3)に示すように、ワークWをデジタルフォトマスク2に接触させる。
【0039】
そして、ステージ6の排気孔64から真空排気がされ、デジタルフォトマスク2とワークWとの間の空間が真空排気されて両者が密着する。この状態で各カメラ7がデジタルフォトマスク2を通してワークWの各アライメントマークを撮像する。各カメラは、撮像データをコントローラ4に送り、コントローラ4では修正プログラムが実行される。この結果、修正済みパターンデータがデジタルフォトマスク2に送られ、修正されたマスクパターンがデジタルフォトマスク2において表示される。
【0040】
この状態で照射光学系5内のシャッタが開き、修正されたマスクパターンが表示されているデジタルフォトマスク2に照射光学系Rからの光Eが照射され、ワークWに対して露光パターンでの露光が行われる。所定時間の露光の後、シャッタが閉じられ、デジタルフォトマスク2とワークWとの間の真空排気は解除される。その後、移動機構62がステージ6を下降させ、図8(4)に示すように、当初の高さに戻す。これにより、ワークWはデジタルフォトマスク2から離間する。その後、ステージ6でのワークWの真空吸着が解除され、図8(5)に示すように、搬出ハンド34がワークWをステージ6からピックアップし、搬出側コンベア32に移載する。そして、搬出側コンベア32がワークWを搬出する。一方、搬入側コンベア31には次のワークWが搬入されており、次のワークWについて同様のステップが繰り返される。
【0041】
上述した構成及び動作に係る実施形態の露光方法によれば、従来のいわばアナログのフォトマスクではなくデジタルフォトマスクを使用して露光が行われる。このため、異なる品種の製品のための露光を行う際にはパターンデータの変更のみで足り、ハードウェアとしてのフォトマスクの交換は必要ない。このため、生産性の高いプロセスとなる。また、品種毎にハードウェアとしてのフォトマスクを用意する必要はなく、品種毎にハードウェアとしてのフォトマスクを管理する必要はない。このため、ランニングコストも安価となる。
【0042】
また、実施形態の露光方法では、ワークWが搬入されてステージ6に載置された際、ワークWの各アライメントマークを撮像し、その撮像データを処理することでマスクパターンの表示修正データが作成され、表示修正データにより修正された状態でマスクパターンが表示される。そして、修正表示されたマスクパターンにより光の透過及び遮断が制御されて露光パターンの光がワークWに照射されて露光される。つまり、ワークWは、ステージ6に載置されたままの状態で露光され、本質的にアライメントの動作は不要である。このため、実施形態の方法はアライメント機構を必要とせず、またアライメントの動作は不要である。したがって、この点で装置のコストが安価となり、またタクトタイムが短くなる。
【0043】
また、ワークWにサイズの変化や変形があったとしても、そのサイズ変化や変形に応じてマスクパターンが修正され、修正された状態で露光がされる。したがって、それらサイズ変化や変形が最終的な製品との関係で許容できるものである場合、それら許容できるサイズ変化や変形に応じたパターン形成がされる。このため、製品の歩留まりを高くすることができる。つまり、ワークWに許容されるサイズ変化や変形があった場合に、それに対応していない状態でパターンが形成されると、パターンとワークWのサイズや形状がアンバランスとなるため、製品不良になり易い。実施形態の方法によれば、この要因での製品不良を低減させることができ、歩留まり向上に寄与することができる。
尚、サイズ変化や変形が許容される程度は、上述した修正プログラムにおける判断の条件に反映される。即ち、例えば方形であると判断される場合の閾値は、変形が許容される程度を反映したものとなる。サイズ変化についても同様である。
【0044】
サイズ変化や変形に対する対応が不要な場合は、修正プログラムは、XYθの修正だけを行えば良い。この場合でも、アライメントが不要であるという効果は享受される。尚、θ方向のずれがない状態でワークWが搬入、載置される場合、θ方向の修正を行わないよう修正プログラムはプログラミングされる場合もある。さらに、拡縮の修正においてXY方向で等倍の拡縮の修正は行うが、不等倍の修正(非相似の修正)は行わないようにする場合もあり得る。ワークWにおいて相似形での変化のみ発生し、非相似の変化は生じないのであれば、そのようにする場合もある。またさらに、方形のワークWが非方形となる変化が生じないのであれば、非方形への修正(変形)は行わないようにする場合もある。
【0045】
上記実施形態において、異なる品種のための露光が行われる場合、マスクパターンは当然に異なるものとされる。コントローラ4の記憶部42には、各品種についてのパターンデータが記憶されている。作業者は、ある品種のロットの処理が始まる際、コントローラ4を操作し、マスクパターンを選択する入力を行う。コントローラ4は、選択されたマスクパターンを記憶部42から読み出し、上記のように修正プログラムを実行しながら各ワークWの露光処理を行わせる。修正プログラムは、載置基準点Poの位置、基準方形BR、さらには各閾値などが品種毎に異なるため、パターンデータに応じて最適化されてプログラミングされ、コントローラ4に実装される。したがって、異なるパターンデータで露光処理が行われる場合、それに応じて修正プログラムも選択され、プロセッサ41において実行される。
尚、ワークWには、製品の品種を示すIDが印字されている場合もあるので、場合によってはこのIDをカメラ7で読み取って品種を判断し、パターンデータをコントローラ4が自動的に選択するようにしても良い。
【0046】
上述した実施形態において、アライメントマークの数は四つであるとしたが、アライメントマークは少なくとも二つあれば足りる。二つあれば、XYθの表示位置修正は可能である。また、アライメントマークが三つの場合、載置基準点Poも三つとなるので、基準の図形は三角形となる。したがって、像原点形成図形が、載置基準点Poを結んでできる三角形とほぼ相似の三角形になるかどうかで、拡縮修正ができるかどうかが判断される。
【0047】
また、カメラの台数はアライメントマークの数に応じたものとなるが、必ずしも同数でなくとも良い。即ち、例えば二つのアライメントマークに対して1台のカメラとした場合、当該カメラに移動機構を設け、カメラを各アライメントマークの撮像位置に順次移動させる構成であっても良い。但し、撮像した際にどの位置にアライメントマークがあるかで表示位置修正を行うので、カメラは基準となる位置に精度良く停止する必要がある。上述した実施形態のように各アライメントマーク撮影用にそれぞれカメラが設けられていると、移動機構は不要であり、停止位置の精度も無縁となるので、コスト及び露光品質の面で優位性がある。
【0048】
また、アライメントマークが一つであっても、実施は可能である。例えば塗りつぶされた方形のパターンで一つのアライメントマークが形成されており、そのアライメントマークの撮像された位置、傾き角からXYθ修正データが算出され、像のサイズの基準サイズからのずれで拡縮データが算出される。但し、一つのマークのみで修正データを算出しようとすると、非常に解像度の高いカメラが必要になる欠点がある。また、マークの拡縮からワークWの拡縮を判断すると精度が良くない場合もあり得る。このような欠点がない点で、複数のアライメントマークで判断する方が優れている。
【0049】
また、上記実施形態では、カメラ7はデジタルフォトマスク2を通してアライメントマークを撮像する位置に配置されていたが、これも必ずしも必須ではない。例えばワークWの裏面に各アライメントマークが設けられている場合もあり、この場合はステージ6に撮像用の開口を設け、裏側から開口を通して撮像する構造が考えられる。開口の位置は、ワークWが載置された際に各アライメントマークを見通すことができる位置とされる。また、投影露光を行う光学系の場合、デジタルフォトマスク2とステージ6との間に折り返しミラーを設け、ミラーで折り返しながら各アライメントマークを撮像する構成もあり得る。各折り返しミラーは、露光用の光を遮蔽しない位置に配置される。
但し、コンタクト露光又はプロキシミティ露光を行う装置において、デジタルフォトマスク2を通してアライメントマークを撮像する構成を採用すると、アライメントマークを撮像する際の視差が小さくなるので、より高精度のデータ修正が行える優位性がある。
【0050】
また、上述したように、上記実施形態では真空排気で密着性を高めたコンタクト露光を行う装置となっており、カメラ7によるアライメントマークの撮像は、デジタルフォトマスク2とワークWとが真空排気により密着した状態で行われる。そして、真空排気による密着状態を保持したまま、修正データが適用されたマスクパターンがデジタルフォトマスク2に表示され、露光が行われる。このため、カメラ7による撮影の後にワークWの位置ずれが生じて表示修正データが不正確になってしまうことはなく、アライメントマークの撮像によるマスクパターンの修正という技術構成がより有意義なものとなる。
尚、真空排気で密着性を高めることは本願発明において必須要件ではなく、ワークWに対してデジタルフォトマスク2を接触させるだけでも良い。この場合でも、両者の間には摩擦力が作用しているし、いずれか一方のみを動かすようなことをしない限り、両者の位置関係は変化せず、上記効果は同様に得られる。但し、真空吸着をした方が摩擦力が高くなるので、上記効果がより確実となるという面はある。
【0051】
デジタルフォトマスク2のドットピッチと露光の解像度との関係について、一例を挙げると、例えば30μm程度のドットピッチのデジタルフォトマスク2を使用し、等倍で露光する場合(コンタクト方式又はプロキシミティ方式)、100μm程度のラインアンドスペースで露光が可能である。100μm程度の線幅は、多くの製品で採用されているオーダーであり、このオーダーでフレキシブル性の高いフォトリソグラフィが可能になることの意義は大きい。
【0052】
また、ある種の製造プロセスでは、一つのワークWに対してフォトリソグラフィを複数回繰り返して階層構造のパターンを形成する場合がある。この場合、ある回のフォトリソグラフィの際にパターン形成の状況に合わせて次の回のフォトリソグラフィのパターン形成(上の層のパターン形成)を調整する場合があり得る。即ち、図4中に拡大して示すように、ワークWのパターン形成領域WRには、既に別のパターンが形成されていることがあり得る。実施形態の構成は、このような用途において最適化されることがあり得る。具体的には、前の回のフォトリソグラフィで形成されたパターンの特定箇所をカメラで撮像し、データ処理を行う。この場合、前の回のフォトリソグラフィでのパターンの形成位置を判断できる箇所が撮像箇所として選択され、ワークWの場合と同様に、XYθ修正データが算出される。また、ある特徴的な箇所を撮像することで、既に形成されているパターンのサイズのずれを判断したり、変形を判断したりすることができ、この場合もワークWの場合と同様に、拡縮修正データを算出したり、変形データを作成したりして、マスクパターンの表示位置や形状が修正された状態で次の回の露光が行われる。このようにすると、位置ずれや変形が補正された状態で各層のパターンが形成されるので、より良質な多層構造のパターンが得られる。
【0053】
さらに、ウエハのようなワークWでは、オリフラやノッチといった輪郭形状における特異点が設けられる。したがって、カメラでこの特異点を撮像してXYθ修正データを作成することもあり得る。したがって、本願発明において、カメラによる撮像は、修正データの作成が可能なワークWの特定部位ということになる。
但し、前述した説明から解るように、ワークにアライメントマークを設けてアライメントマークを撮影してマスクデータの修正に利用した方が、データ処理が容易であり、拡縮修正等も容易に行える。この点で、アライメントマークの撮像の方が好ましい。
【符号の説明】
【0054】
1 光源
2 デジタルフォトマスク
3 搬送系
31 搬入側コンベア
32 搬出側コンベア
33 搬入ハンド
34 搬出ハンド
4 コントローラ
41 プロセッサ
42 記憶部
43 入出力部
5 照射光学系
6 ステージ
61 真空吸着孔
62 移動機構
63 周状封止部材
64 排気孔
7 カメラ
8 排気系
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8