IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ブランパン・エス アーの特許一覧

特許7041227文字盤を固定かつ/または取り外すシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】文字盤を固定かつ/または取り外すシステム
(51)【国際特許分類】
   G04B 19/14 20060101AFI20220315BHJP
【FI】
G04B19/14 Z
【請求項の数】 9
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020180354
(22)【出願日】2020-10-28
(65)【公開番号】P2021076599
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2020-10-28
(31)【優先権主張番号】19207244.5
(32)【優先日】2019-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】594082512
【氏名又は名称】ブランパン・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】ベルナト・モンフェレール
(72)【発明者】
【氏名】オラーヌ・ロマノ
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】実公昭50-15509(JP,Y1)
【文献】実開昭54-111177(JP,U)
【文献】米国特許第3488943(US,A)
【文献】英国特許出願公告第154858(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 19/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
文字盤(190)を固定かつ/または取り外すシステムであって;
前記文字盤(190)は、支持体(195)または該支持体(195)の第1の側(196)に配置され、前記文字盤(190)を前記支持体(195)に当接させるように構成された少なくとも1つの保持部(191)および/または前記文字盤(190)を前記支持体(195)から引き離すように構成された少なくとも1つの取り外し部(192)を有し;
前記システム(100)は、少なくとも1つの固定位置(101)と少なくとも1つの取り外し位置(102)との間を移動させる、または移動するように構成された少なくとも1つの可動装置(110)を備え、可動装置(110)は、少なくとも:
-1つの保持面(111)であって;前記少なくとも1つの保持面(111)は、前記少なくとも1つの可動装置(110)が前記固定位置(101)と前記取り外し位置(102)との間を移動させるとき、または移動するときに前記文字盤(190)が前記支持体(195)と当接するように前記少なくとも1つの保持部(191)と協働するように構成される、保持面(111);および、
-1つの取り外し面(112)であって;前記少なくとも1つの取り外し面(112)は、前記少なくとも1つの可動装置(110)が前記固定位置(101)と前記取り外し位置(102)との間を移動させるとき、または移動するときに前記文字盤(190)を前記支持体(195)から引き離すように前記少なくとも1つの取り外し部(192)と協働するように構成される、取り外し面(112)
を有するシステム(100)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの可動装置(110)は、前記固定位置(101)と前記取り外し位置(102)との間で少なくとも1つの回動軸(115)周りに回動する少なくとも1つのアンクル(110)である、請求項1に記載のシステム(100)。
【請求項3】
可動装置(110)は、少なくとも1つの保持アーム(116)および少なくとも1つの取り外しアーム(117)を備え;前記少なくとも1つの保持面(111)は、前記少なくとも1つの保持アーム(116)に設けられ、かつ/または前記少なくとも1つの取り外し面(112)は、前記少なくとも1つの取り外しアーム(117)に設けられる、請求項1または2に記載のシステム(100)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの可動装置(110)を前記固定位置(101)と前記取り外し位置(102)との間で移動させるように構成された少なくとも1つの可動ストッパ(118)を備えている、請求項1に記載のシステム(100)。
【請求項5】
前記少なくとも1つの可動装置(110)を前記固定位置(101)と前記取り外し位置(102)との間で移動させるように構成された少なくとも1つの戻り部材(119)を備えている、請求項1に記載のシステム(100)。
【請求項6】
前記少なくとも1つの戻り部材(119)は、前記少なくとも1つの可動装置(110)の中に完全にまたは部分的に収容され、かつ/または前記可動装置(110)は、前記少なくとも1つの戻り部材(119)を完全にまたは部分的に収容するように構成された少なくとも1つの溝(109)を有する、請求項に記載のシステム(100)。
【請求項7】
前記少なくとも1つの保持面(111)は、前記少なくとも1つの取り外し面(112)に対面しており、前記少なくとも1つの保持面(111)に対する垂線は、前記少なくとも1つの取り外し面(112)に対する垂線に平行である、請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム(100)。
【請求項8】
前記少なくとも1つの保持面(111)は、前記少なくとも1つの保持部(191)に適合するように構成され、かつ/または前記少なくとも1つの取り外し面(112)は、前記少なくとも1つの取り外し部(192)に適合するように構成される、請求項1から7のいずれか一項に記載のシステム(100)。
【請求項9】
前記支持体(195)を備え、前記少なくとも1つの可動装置(110)は、前記支持体(195)または該支持体(195)の前記第1の側(196)の反対側の第2のに配置される、請求項1に記載のシステム(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、時計製造の分野に関し、さらに詳細には、アンクルを固定するための固定システムの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
時計製造の分野は、高度な精密度が要求される分野である一方で、使用できるスペースが限られているため、時計の歯車の一部のパーツにアクセスするのがますます困難になっている。
【0003】
実際、場合によっては、所望のパーツに手が届くようにいくつかのパーツまたは歯車を分解しないかぎり、一部のパーツにはアクセスするのが困難で、アクセス不可能なことさえある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、文字盤を固定かつ/または取り外すシステムを用いて、好ましくは文字盤を用いてこれらの欠点を完全にまたは部分的に克服することを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記文字盤は、支持体に、好ましくは前記支持体の第1の側に配置され、前記文字盤を前記支持体に当接させるように構成された少なくとも1つの保持部および/または前記文字盤を前記支持体から引き離すように構成された少なくとも1つの取り外し部を有し;前記システムは、少なくとも1つの固定位置と少なくとも1つの取り外し位置との間を移動させる、または移動するように構成された少なくとも1つの可動装置を備え、可動装置は、少なくとも:
-1つの保持面であって;前記少なくとも1つの保持面は、前記少なくとも1つの可動装置が前記固定位置と前記取り外し位置との間を移動させる、または移動するときに前記文字盤が前記支持体と当接するように前記少なくとも1つの保持部と協働するように構成される、保持面;および、
-1つの取り外し面であって;前記少なくとも1つの取り外し面は、前記少なくとも1つの可動装置が前記固定位置と前記取り外し位置との間を移動させる、または移動するときに前記文字盤を前記支持体から引き離すように前記少なくとも1つの取り外し部と協働するように構成される、取り外し面
を有する。
【0006】
この構成により、ムーブメントの外部にアクセス可能で文字盤に届く可動装置を用いて文字盤を固定することが可能である。
【0007】
1つの実施形態によれば、前記少なくとも1つの可動装置は、前記固定位置と前記取り外し位置との間で少なくとも1つの回動軸周りに回動する少なくとも1つのアンクルである。
【0008】
1つの実施形態によれば、前記回動軸は、固定装置によって、好ましくはネジ、リベットおよび/またはピンによって作られる。
【0009】
このいずれかの構成により、可動装置は回動軸周りに回動できる。
【0010】
1つの実施形態によれば、可動装置は、少なくとも1つの保持アームおよび少なくとも1つの取り外しアームを備え;前記少なくとも1つの保持面は、前記少なくとも1つの保持アームに設けられ、かつ/または前記少なくとも1つの取り外し面は、前記少なくとも1つの取り外しアームに設けられる。
【0011】
この構成により、保持アームは文字盤の保持を可能にし、取り外しアームは文字盤の取り外しを可能にする。
【0012】
1つの実施形態によれば、前記少なくとも1つの保持アームおよび前記少なくとも1つの取り外しアームは、互いに対面し、かつ/またはスペースを介して隔てられている。
【0013】
1つの実施形態によれば、前記少なくとも1つの保持アームおよび前記少なくとも1つの取り外しアームは、前記少なくとも1つの可動装置のいずれかの側にある。
【0014】
これらの構成のうちの1つにより、可動装置が2つの位置の間、好ましくは固定位置と取り外し位置との間を移動するとき、保持アームは文字盤を保持でき、取り外しアームは文字盤を取り外すことができる。
【0015】
1つの実施形態によれば、本システムは、前記少なくとも1つの可動装置を前記固定位置と前記取り外し位置との間で移動させるように構成された少なくとも1つの可動ストッパを備えている。
【0016】
この構成により、可動ストッパは、可動装置を固定位置と取り外し位置との間で移動させる。
【0017】
1つの実施形態によれば、本システムは、前記少なくとも1つの可動装置を前記固定位置と前記取り外し位置との間で移動させ、好ましくは前記少なくとも1つの可動装置を前記固定位置に移動させるように構成された少なくとも1つの戻り部材を備えている。
【0018】
1つの実施形態によれば、戻り部材は、弾性により変形するように構成される。
【0019】
これらの構成のうちの1つにより、戻り部材は、可動装置を保持位置で押し付けるように可動装置を固定位置と取り外し位置との間で移動させる。
【0020】
1つの実施形態によれば、前記少なくとも1つの戻り部材は、前記少なくとも1つの可動装置の中に完全にまたは部分的に収容され、かつ/または前記可動装置は、前記少なくとも1つの戻り部材を完全にまたは部分的に収容するように構成された少なくとも1つの溝を有する。
【0021】
この構成により、かさに余裕ができる。
【0022】
1つの実施形態によれば、前記少なくとも1つの保持面は、前記少なくとも1つの取り外し面に対面しており、好ましくは、前記少なくとも1つの保持面に対する垂線は、前記少なくとも1つの取り外し面に対する垂線に平行かつ/または同軸である。
【0023】
この構成により、可動装置が2つの位置の間、好ましくは固定位置と取り外し位置との間を移動するときに、保持面は文字盤を保持でき、取り外し面は文字盤を取り外すことができる。
【0024】
1つの実施形態によれば、前記少なくとも1つの保持面は、前記少なくとも1つの保持部に適合するように構成され、かつ/または前記少なくとも1つの取り外し面は、前記少なくとも1つの取り外し部に適合するように構成される。
【0025】
1つの実施形態によれば、本システムは、前記支持体を備え、前記少なくとも1つの可動装置は、前記支持体に、好ましくは特に前記第1の面の反対側の第2の面に配置される。
【0026】
この構成により、文字盤および可動装置は、支持体の両側で互いを保持し合う。
【0027】
上記の実施形態と変形例とは、別々に取り入れてもよいし、あるいは技術的に可能な任意の組み合わせで取り入れてもよい。
【0028】
本発明は、非限定的な例として挙げたにすぎない以下の説明に照らし合わせ、添付の図面を参照することでよく理解され、その利点も明らかになるであろう。図面では、同じ符号は、構造および/または機能が同じまたは同様の要素に相当する。
【0029】
非限定的な例として挙げた添付の図面を用いて本発明を以下にさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1A】文字盤(190)を固定かつ/または取り外すシステム(100)が固定位置(101)にある一実施形態を示す図である。
図1B】文字盤(190)を固定かつ/または取り外すシステム(100)が固定位置(101)にある一実施形態を示す図である。
図1C】文字盤(190)を固定かつ/または取り外すシステム(100)が固定位置(101)にある一実施形態を示す図である。
図2A】文字盤(190)を固定かつ/または取り外すシステム(100)が取り外し位置(102)にある一実施形態を示す図である。
図2B】文字盤(190)を固定かつ/または取り外すシステム(100)が取り外し位置(102)にある一実施形態を示す図である。
図2C】文字盤(190)を固定かつ/または取り外すシステム(100)が取り外し位置(102)にある一実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、使用できるスペースが限られているにもかかわらず、アクセスするのが困難でないくつかのパーツにアクセスするのを可能にするものである。
【0032】
本発明は、文字盤190を固定かつ/または取り外すシステム100の形態であり、好ましくは文字盤190の形態である。このシステムは、保持面111および取り外し面112を有する。前記文字盤を支持体195に当接させて保持する、または支持体195から取り外すことを可能にするのがこれらの面である。
【0033】
実際、文字盤190は、ちょうど可動装置110のように、支持体195に、好ましくは支持体195の第1の側196に配置できる。
【0034】
実施形態によれば、支持体195は、特に第1の面の反対側に第2の面または第2の側を有していてよく、文字盤190と可動装置110とが支持体195の両側で互いに保持し合うようにこの第2の面に可動装置110を配置できる。
【0035】
図1Aおよび図1Bに示したように、文字盤190は、文字盤190を支持体195に当接させるように構成された保持部191、および/または文字盤190を支持体195から引き離すように構成された取り外し部192を有する。
【0036】
システム100は、固定位置101と取り外し位置102との間を移動させる、または移動するように構成された可動装置110を備えていてよい。この可動装置110は、固定位置101と取り外し位置102との間で回動軸115周りに回動するように構成されたアンクル110の形状であってよい。保持面111および/または取り外し面112は、この同じ可動装置110にあってよい。実際、図1A図2Cに示した1つの実施形態によれば、可動装置110は、保持アーム116および取り外しアーム117を含んでいてよく、保持面111は保持アームに設けられ、取り外し面112は取り外しアームに設けられ、それによって保持アーム116および取り外しアーム117は、文字盤190の保持および取り外しを可能にする。
【0037】
この保持面111は、取り外し面112と対面していてよく、好ましくは保持面11に対する垂線は、取り外し面112の垂線と平行かつ/または同軸で、それによって可動装置110が2つの位置の間、好ましくは固定位置101と取り外し位置102との間を移動するときに、保持面111は文字盤190を保持でき、かつ/または取り外し面112は文字盤190を取り外すことができる。
【0038】
好ましくは、図1A図2Cに見られるように、保持面111は、保持部191に適合するように構成でき、取り外し面112は、取り外し部192に適合するように構成できる。
【0039】
この保持面111は、可動装置110が固定位置101と取り外し位置102との間を移動させる、または移動するときに文字盤190が支持体195と当接するように保持部191と協働するように構成され、これによって可動装置110を用いて文字盤190を支持体195に、好ましくは支持体195の第1の側196に固定することが可能になる。実際、可動装置110が取り外し位置102から固定位置101に移動するとき、または移動させられるとき、図1Aおよび図1Bに見られるように、保持面111は保持部191に接触し、文字盤190を支持体195に押し付けるか、好ましくは当接させる。これによって使用者は、可動装置110を用いて文字盤190を支持体195に当接させることができ、ムーブメントを保持するのに必要な周辺のパーツを組み立てたり組み立て直したりする必要がない。
【0040】
一方、取り外し面112は、可動装置110が固定位置101と取り外し位置102との間を移動するとき、または移動させられるときに文字盤190を支持体195から引き離すように取り外し部192と協働するように構成され、これによって文字盤190を引き離すことが可能になる。実際、可動装置110が固定位置101から取り外し位置102に移動するとき、または移動させられるとき、取り外し面112は、図2Aおよび図2Bに見られるように、取り外し部192に接触し、文字盤190を支持体195から押し出すか、好ましくは引き離す。これによって使用者は、可動装置110を用いて文字盤190を引き離すことができ、ムーブメントに接続している他のパーツを分解する必要がない。
【0041】
上述したように、可動装置110は、固定位置101と取り外し位置102との間で回動軸115周りに回動するアンクル110の形状をとることができる。この回動は、可動ストッパ118によって誘導され、これによって可動装置110を固定位置101と取り外し位置102との間で移動させることが可能になる。
【0042】
実際、図1Aおよび図2Aまたは図1Bおよび図2Bに示した例のように、長円形で示された可動ストッパ118は、可動ストッパ118が回転できる回転中心を含んでいる。これに加えて、支持体195の周囲近辺にくるように円形で、かつ回転中心に近い近位端と、回転中心から遠く、可動装置110と接触状態になるように構成され、かつ固定位置101と取り外し位置102との間で、好ましくは固定位置101から取り外し位置102に可動装置110を移動させるように構成された遠位端とがある。
【0043】
支持体によって可動装置110に摩擦力がかかる可能性があるため、取り外し位置102から固定位置101への可動装置110の移動は、可動装置110の固定位置101に相当する主要位置に可動ストッパ118が戻るときは起こらないことがある。このような理由から、システム100は、実施形態によれば、戻り部材119を含むことができ、戻り部材は、弾性により変形でき、可動装置110を固定位置101と取り外し位置102との間で移動させるように、好ましくは可動装置110を取り外し位置102から固定位置101に移動させて可動装置を保持位置、すなわち固定位置101で押し付けるように構成される。
【0044】
この戻り部材119は、可動装置110の中に完全にまたは部分的に収容されてよい。あるいは、1つの実施形態によれば、可動装置110は、固定かつ/または取り外すシステム100での戻り部材119のかさを小さくするように、戻り部材119を完全にまたは部分的に収容するように構成された溝109を有していてよい。
【符号の説明】
【0045】
100 システム
101 固定位置
102 取り外し位置
110 可動装置
111 保持面
112 取り外し面
115 回動軸
116 保持アーム
117 取り外しアーム
118 ストッパ
190 文字盤
191 保持部
192 取り外し部
195 支持体
196 第1の側
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C