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特許7041246血液内のGKN1タンパクを利用する胃癌診断
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】血液内のGKN1タンパクを利用する胃癌診断
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/574 20060101AFI20220315BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20220315BHJP
   C12N 15/19 20060101ALI20220315BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20220315BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220315BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20220315BHJP
【FI】
G01N33/574 A ZNA
G01N33/543 545H
C12N15/19
A61K38/17
A61P35/00
A61K47/42
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020508522
(86)(22)【出願日】2018-08-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-05
(86)【国際出願番号】 KR2018009149
(87)【国際公開番号】W WO2019035602
(87)【国際公開日】2019-02-21
【審査請求日】2020-02-27
(31)【優先権主張番号】10-2017-0103383
(32)【優先日】2017-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2017-0105210
(32)【優先日】2017-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】510058863
【氏名又は名称】ザ カトリック ユニバーシティ オブ コリア インダストリー-アカデミック コーオペレイション ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】パク ウォン-サン
(72)【発明者】
【氏名】ユーン ジュン-ファン
【審査官】三好 貴大
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/099400(WO,A2)
【文献】特表2008-514934(JP,A)
【文献】Jung Hwan Yoon et al.,The role of gastrokine 1 in gastric cancer,Journal of Gastric Cancer,14(3),KR,2014年,147-155
【文献】Filomena Altieri et al.,Epigenetic alterations of gastrokine 1 gene expression in gastric cancer,Oncotarget,米国,2017年03月07日,8(10),16899-16911
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
C12N 15/19
A61K 38/17
A61P 35/00
A61K 47/42
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
GKN1タンパク(Gastrokine 1 Protein)水準を測定する製剤を含み、前記GKN1タンパクは、血液、血漿または血清のエクソソーム内に存在する、胃癌の診断用組成物。
【請求項2】
前記GKN1タンパク水準を測定する製剤は、前記タンパクに特異的に結合する抗体であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
請求項1による組成物を含む胃癌診断用キット。
【請求項4】
前記キットは、ELISAキットまたはタンパクチップキットであることを特徴とする請求項3に記載のキット。
【請求項5】
(a)患者から分離した生物学的試料からGKN1タンパク水準を測定する段階と、
(b)前記GKN1タンパク水準を対照群試料から得た基準値と比べる段階とを含み、
前記生物学的試料は、血液、血漿または血清である、胃癌の診断または予後予測のための情報提供方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GKN1タンパク(Gastrokine 1 Protein)を有効成分として含む胃癌の診断、予防または治療用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
胃癌は、全世界的に韓国、中国、日本などで多く発生する癌であって、米国、ヨーロッパなどの西欧では発生率が低いが、韓国の場合、癌発生率の1位が胃癌であり、死亡率は肺癌に続き2位を占めている。胃癌の分類をみると、全体の95%が胃壁粘膜の腺細胞で生じる腺癌であり、その他にリンパ系で発生するリンパ腫、間質組織で発生する胃腸管間質性腫瘍がある。
【0003】
現在、癌を治療する方法の中で3つの主要な治療法としては、外科的治療法、薬物療法、放射線療法があるが、薬物療法は治療に伴う苦痛が少なく、外科的治療や放射線治療に比べて治療後も癌の再発が相対的に少ないので、これに対する期待が集まっている。従って、これに応えるような数多くの抗癌剤が開発されて使用されているが、これらの大部分の抗癌剤は、癌の異常増殖を念頭において活発に分裂する細胞を選択的に死なせることで坑癌効果を表すものである。このような抗癌剤は、一般的に人体内で活発に分裂する細胞である兔疫細胞、毛根細胞のような正常細胞も共に殺すという深刻な副作用を伴うので、長期間使用が不可能な問題点を抱えている。また、胃癌治療のための方法としては、リンパ節郭清、内視鏡的粘膜切除術、腹腔鏡胃切除術などの方法が使用されているが、内視鏡的粘膜切除術は、粘膜内に早期胃癌に対して癌病変のある胃粘膜周りに生理食塩水を注入して病変部位を膨らませた後、病変のある粘膜を切除する方法として、簡単な内視鏡手術で胃切除手術の苦痛が避けられるという長所があるが、粘膜に限った早期胃癌の中でリンパ節転移可能性の低い場合に限って使用可能であるという限界がある。
【0004】
最近、全世界的に癌の生成及び治療と関連した遺伝子の機能研究を通じて治療用標的を掘り出し、これらを診断及び治療剤の開発に利用するための研究を進行している。ゲノム研究の活性化と共にヒト遺伝子DNAチップまたはプロテオーム分析研究が活発に行われ、癌と関連した遺伝子が大量発掘されることにより、多くの遺伝子のリストと関連したデータベースは構築されているが、多くがこれらの遺伝子に対する細胞内における具体的な生物学的機能及び癌の関連性は未だ研究されていないか不確実であり、実際、癌の関連性または診断及び標的遺伝子としての活用と共に、さらに癌を効果的に治療することができる遺伝子の発掘に相当な困難がある。従って、これまで明らかになった癌関連の遺伝子以外にも新しい遺伝子の発掘が必要な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、GKN1タンパク(Gastrokine 1 Protein)水準を測定する製剤を含む胃癌の診断用組成物を提供することにある。
【0006】
本発明のまた他の目的は、前記胃癌の診断用組成物を含む胃癌診断用キットを提供することにある。
【0007】
本発明のまた他の目的は、(a)患者から分離した生物学的試料からGKN1タンパク水準を測定する段階と、(b)GKN1タンパク水準を対照群試料から得た基準値と比べる段階とを含むことを特徴とする胃癌の診断または予後予測のための情報提供方法を提供することにある。
【0008】
本発明のさらに他の目的は、GKN1タンパク(Gastrokine 1 Protein)を有効成分として含む胃癌の予防または治療用薬学組成物を提供することにある。
【0009】
本発明のさらに他の目的は、GKN1タンパク(Gastrokine 1 Protein)を投与する段階を含む胃癌の予防または治療方法に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、GKN1タンパク(Gastrokine 1 Protein)水準を測定する製剤を含む胃癌の診断用組成物を提供する。
【0011】
本発明の一実施例において、前記GKN1タンパク水準を測定する製剤は、前記タンパクに特異的に結合する抗体であることができる。
【0012】
本発明の一実施例において、前記GKN1タンパクは、血液、血漿または血清のエクソソーム内に存在することができる。
【0013】
また、本発明は、胃癌の診断用組成物を含む胃癌診断用キットを提供する。
【0014】
本発明の一実施例において、前記キットは、ELISAキットまたはタンパクチップキットであることができる。
【0015】
また、本発明は、(a)患者から分離した生物学的試料からGKN1タンパク水準を測定する段階と、(b)前記GKN1タンパク水準を対照群試料から得た基準値と比べる段階とを含むことを特徴とする胃癌の診断または予後予測のための情報提供方法を提供する。
【0016】
本発明の一実施例において、前記GKN1タンパクは、60~80℃で5~15分間熱処理する段階をさらに含むことができ、好ましくは、75~85℃で8~12分間熱処理することができ、さらに好ましくは、70℃で10分間熱処理することができる。
【0017】
本発明の一実施例において、前記GKN1タンパク水準が基準値に比べて低い場合に胃癌であると判断される段階をさらに含むことができる。
【0018】
本発明の一実施例において、前記GKN1タンパク水準が基準値に比べて低い場合に胃癌の発病可能性が高いか予後が良くない可能性が高いと判断する段階をさらに含むことができる。
【0019】
本発明の一実施例において、前記生物学的試料は、血液、血漿または血清であることができ、好ましくは血清であることができる。
【0020】
本発明の一実施例において、前記測定は、酵素免疫分析法(ELISA)、放射免疫分析法(radioimmnoassay、RIA)、サンドイッチ測定法(sandwich assay)、ウェスタンブロッティング、免疫沈降法、免疫組織化学染色法(immnohistochemical staining)、フローサイトメトリー、蛍光活性化細胞分類法(FACS)、酵素基質発色法及び抗原-抗体凝集法からなるグループより選択されるいずれか一つ以上の方法を利用して行われることができる。
【0021】
また、本発明は、GKN1タンパク(Gastrokine 1 Protein)を有効成分として含む胃癌の予防または治療用薬学組成物を提供する。
【0022】
本発明の一実施例において、前記GKN1タンパクは、GKN1タンパクを発現する細胞から分泌されるエクソソームであることができる。
【0023】
本発明の一実施例において、前記GKN1タンパクは、GKN1タンパクを発現する細胞の培養上層液から分離することができる。
【0024】
本発明の一実施例において、前記GKN1タンパクは、組換えGKN1(rGKN1:recombinant GKN1)タンパクが導入された細胞の培養上層液から分離することができる。
【0025】
本発明の一実施例において、前記組換えGKN1タンパクは、1~10ng/mlの濃度で処理されることができ、好ましくは、3~7ng/mlの濃度で処理されることができ、さらに好ましくは、5ng/mlの濃度で処理されることができるが、これに制限されるものではない。
【0026】
本発明の一実施例において、前記GKN1タンパクは、1~20ng/mlの濃度で処理されることができ、好ましくは、5~15ng/mlの濃度で処理されることができ、さらに好ましくは、10ng/mlの濃度で処理されることができるが、これに制限されるものではない。
【0027】
本発明の一実施例において、前記GKN1タンパクは、クラスリン(Clathrin)によって癌細胞で内在化(internalization)されることができる。
【0028】
本発明の一実施例において、前記GKN1タンパクは、癌細胞の細胞増殖を抑制し、癌細胞の細胞死滅を誘導することができる。
【0029】
また、本発明は、GKN1タンパク(Gastrokine 1 Protein)を投与する段階を含む胃癌の予防または治療方法を提供する。
【0030】
本発明の癌の治療方法は、GKN1タンパクを治療的有効量で個体に投与することを含む。特定個体に対する具体的な治療的有効量は、達成しようとする反応の種類と程度、場合によって他の製剤が使用されるか否かを含み、具体的組成物、個体の年齢、体重、一般健康状態、性別及び食餌、投与時間、投与経路及び組成物の分泌率、治療期間、具体的組成物と共に使用されるか同時使用される薬物を含む多様な因子と医薬分野によく知られた類似因子によって異なって適用することが好ましい。従って、本発明の目的に適宜な組成物の有効量は、前述した事項を考慮して決定することが好ましい。
【0031】
上記個体は、任意の哺乳動物に適用可能であり、上記哺乳動物は、ヒト及び霊長類だけでなく、牛、豚、羊、馬、犬、及び猫などの家畜を含む。
【発明の効果】
【0032】
本発明によるGKN1タンパク(Gastrokine 1 Protein)は、胃癌の予測または診断に有用なバイオマーカーとして、前記エクソソームのGKN1タンパクを含み、試料内の総GKN1タンパク水準が正常人に比べて低い場合は胃癌であると、早期且つ便利に胃癌の診断または予後予測が可能である。
【0033】
また、本発明によるGKN1タンパク(Gastrokine 1 Protein)は、GKN1タンパクを発現する細胞でエクソソームとして分泌され、GKN1タンパクを発現する細胞の培養上層液から分離され、クラスリン(Clathrin)によって癌細胞に内在化されて癌細胞の細胞増殖を抑制し、癌細胞の細胞死滅を誘導することで、胃癌の予防または治療に有用に使用されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】GKN1結合タンパクを同定した結果として、(a)はタンパクマイクロアレイで組換えGKN1タンパクに結合を示すエクソソームタンパクのリストに関するものであり、(b)はGKN1がCOMT及びYWHAZタンパクに対する結合力を免疫沈殿法及びウェスタンブロッティングで確認した結果を示すものである。
図2a】HFE-145細胞、組換えGKN1(rGKN1)タンパクを処理/非処理したAGS及びMKN1細胞から分離したエクソソーム(Exosome)、エクソソームが除去された培地(soluble)及び全体細胞溶解物(WCL)におけるGKN1、TSG-101及びCD81に対するウェスタンブロッティングの結果を示すものである。
図2b】HFE-145細胞における全体培養液(Total media)、エクソソーム分画(Exosome)及びエクソソームが除去された培地(Soluble)をGKN1タンパクの濃度測定用ELISA kit 内の希釈緩衝溶液を処置した後、GKN1濃度を測定した結果を示すものである。
図2c】HFE-145細胞由来のエクソソームにトリプシン及びTriton X-100の処理/非処理による酵素分解アッセイ(Trypsin digestion assay)をした結果を示すものである。
図3a】組換えGKN1タンパクをAGS細胞に処理した後、分離されたエクソソームを確認した結果を示すものである。
図3b】siClathrinを処理したAGS及びMKN1細胞でClathrinタンパクの発現が抑制されることをウェスタンブロッティングで確認した結果を示すものである。
図3c】siClathrinが処理されたAGS及びMKN1細胞でGKN1タンパクを含むエクソソームの位置化(localization)を調査した結果を示すものである。
図3d】siClathrinが処理されたAGS及びMKN1細胞でGKN1及びCD81の発現量をウェスタンブロッティングで確認した結果を示すものである。
図4a】HFE-145細胞で熱処理をしないか(Non-heating)熱処理をした場合(Heating)の全体培地(Media)、エクソソーム(Exosome)及びエクソソームが除去された培地(exosome depleted media)におけるGKN1タンパクの濃度を分析した結果を示すものである。
図4b】10人の健康な被験者(Normal serum)及び10人の胃癌患者(cancer serum)の血清で熱処理をしないか(Non-heating)熱処理をした場合(Heating)の全体血清(Whole Serum)、エクソソーム(Exosome)及びエクソソームが除去された血清(W/O Esosome)におけるGKN1タンパクの濃度を分析した結果を示すものである。
図4c】100人の健康な被験者から血清GKN1タンパク濃度による年齢及び性別の関連度を分析した結果を示すものである。
図4d】健康な被験者、萎縮性胃炎(atrophicGastritis:Atrophy)のある者、腸上皮化生(intestinal metaplasia:IM)が伴った萎縮性胃炎のある者及び胃癌患者におけるGKN1タンパクの濃度を分析した結果を示すものである(P<0.0001)。
図4e】100人の健康な被験者(Normal serum)、150人の胃癌患者(GC serum)、45人の肝癌患者(LC serum)及び50人の大膓癌患者(CC serum)で血清GKN1濃度を分析した結果を示すものである。
図4f】正常胃粘膜(normal)を持った者、萎縮性胃炎(atrophicGastritis:Atrophy)のある者及び腸上皮化生(intestinal metaplasia:IM)が伴った萎縮性胃炎のある者に対する胃癌患者における血清GKN1水準によるROC曲線分析結果を示すものである。
図4g】血清GKN1濃度で胃癌患者を肝癌及び大膓癌患者と区分することができるかに対するROC曲線分析結果を示すものである。
図4h】健康な被験者、萎縮性胃炎(atrophicGastritis:Atrophy)のある者、腸上皮化生(intestinal metaplasia:IM)が伴った萎縮性胃炎のある者及び胃癌患者の中で早期胃癌と進行性胃癌患者におけるGKN1タンパクの濃度を分析した結果を示すものである(P<0.0001)。
図4i】健康な被験者、萎縮性胃炎(atrophicGastritis:Atrophy)のある者、腸上皮化生(intestinal metaplasia:IM)が伴った萎縮性胃炎のある者及び胃癌患者の中で早期胃癌患者におけるGKN1水準に対するROC曲線分析結果を示すものである。
図5a】HFE-145細胞由来のエクソソームがJurkat T細胞、THP-1タンパク球、U937大食細胞の細胞膜に付いたか否かを確認するための免疫蛍光アッセイ結果を示すものである。
図5b】HFE-145細胞由来のエクソソームGKN1及びCD81タンパクがJurkat T細胞、THP-1タンパク球、U937大食細胞の細胞膜または細胞質や核に存在するか否かを分析した結果を示すものである。
図5c】HFE-145細胞由来のエクソソームGKN1がJurkat T細胞、THP-1タンパク球、U937大食細胞の細胞生存率に影響を及ぼすか否かを分析した結果を示すものである。
図5d】HFE-145細胞由来のエクソソームGKN1がTHP-1タンパク球、U937大食細胞の機能に影響を及ぼすか否かを分析した結果を示すものである。
図6a】MKN1(組換えGKN1処理/非処理)、AGS(組換えGKN1処理/非処理)及びHFE-145細胞由来のエクソソームをHFE-145、AGS及びMKN1細胞にそれぞれ処理した後、MTT assayを通じて細胞生存率を確認した結果を示すものである。
図6b】MKN1(組換えGKN1処理/非処理)、AGS(組換えGKN1処理/非処理)及びHFE-145細胞由来のエクソソームをHFE-145、AGS及びMKN1細胞に処理した後、BrdU Incorporation Assayを通じて細胞増殖能を確認した結果を示すものである。
図6c】組換えGKN1(rGKN1)またはGKN1タンパクを含むエクソソーム(Exosome carrying gastrokine 1 Protein)を処理した後、MTTとBrdU Incorporation assayを通じて時間による細胞生存率と細胞増殖能を確認した結果を示すものである。
図6d】組換えGKN1をAGS及びMKN1細胞に処理(rGKN1_exosome)/非処理(w/oGKN1_exosome)した後、細胞周期を分析した結果を示すものである。
図6e】HFE-145、AGS(組換えGKN1処理/非処理)及びMKN1(組換えGKN1処理/非処理)細胞でp53、p21、CDK4、Cyclin D、Cdc25c、p-Cdc2、Cyclin B、BAX、BCL2、Caspase-3(cleaved含む)及びCaspase-8(cleaved含む)の発現変化をウェスタンブロッティングで確認した結果を示すものである。
図6f】組換えGKN1が処理/非処理された細胞に由来したGKN1タンパクを含むエクソソームをAGS及びMKN1細胞に処理した後、細胞死滅アッセイを通じて細胞死滅程度を確認した結果を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明における用語「診断」とは、病理状態を確認することを意味するもので、本発明の目的上、上記診断はエクソソームのGKN1タンパク発現水準を確認して胃癌の進行有無を確認することを意味する。
【0036】
本発明における用語「抗体」とは、当該分野で公知された用語として、抗原性部位に対して指示される特異的なタンパク質分子を意味する。本発明の目的上、抗体は本発明のマーカーであるGKN1タンパクに特異的に結合する抗体を意味する。これには上記タンパクで作られることができる部分ペプチドも含まれ、本発明の部分ペプチドとしては、最小限7個のアミノ酸、好ましくは9個のアミノ酸、さらに好ましくは12個以上のアミノ酸を含む。本発明の抗体の形態は特に制限されず、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体または抗原結合性を有するものであればその一部も本発明の抗体に含まれ、全ての免疫グロブリン抗体が含まれる。さらに、本発明の抗体にはヒト化抗体などの特殊抗体も含まれる。このような本発明のGKN1タンパク質に対する抗体は、当業界の公知された方法で製造可能な全ての抗体を含む。
【0037】
本発明の胃癌診断キットは、エクソソームのGKN1タンパクに特異的に結合する抗体を含むことができ、タンパク水準を測定するキットは「タンパク質発現水準の測定」のために使用されるELISAキットまたはタンパク質チップキットであることができる。
【0038】
上記抗体を利用したタンパク発現有無の測定は、GKN1タンパク及びその抗体間の抗原-抗体複合体を形成することで測定され、多様な方法によって上記複合体の形成量を測定することで定量的に検出することができる。
【0039】
上記抗原-抗体複合体による測定は、酵素免疫分析法(ELISA)、放射免疫分析法(radioimmnoassay、RIA)、サンドイッチ測定法(sandwich assay)、ウェスタンブロッティング、免疫沈降法、免疫組織化学染色法(immnohistochemical staining)、フローサイトメトリー、蛍光活性化細胞分類法(FACS)、酵素基質発色法及び抗原-抗体凝集法からなるグループより選択されるいずれか一つ以上の方法を利用して行われるものであるが、これに制限されるものではない。
【0040】
本発明における用語「生物学的試料」とは、具体的にエクソソーム内のGKN1タンパクを含み、総GKN1タンパク発現水準を検出することができる試料を意味し、例として血液、血漿または血清などを含むが、好ましくは血清を意味する。
【0041】
本発明は、患者から分離した生物学的試料を獲得した後、60~80℃で5~15分間熱処理する段階を含むことができる。上記熱処理後、総試料内あるいはエクソソーム内のGKN1タンパクの発現水準を測定して対照群試料から得た基準値と比べてエクソソームのGKN1タンパク水準が基準値に比べて低い場合に胃癌であると判断することで胃癌の予測または診断が可能である。
【0042】
本発明は、GKN1タンパク(Gastrokine 1 Protein)を有効成分として含む胃癌の予防または治療用薬学組成物に関するものである。
【0043】
本発明の用語「予防」とは、本発明による薬学的組成物の投与によって胃癌を抑制させるか発病を遅延させる全ての行為を意味する。
【0044】
本発明の用語「治療」とは、本発明による薬学組成物の投与によって胃癌による病症が好転するか良く変更する全ての行為を意味する。
【0045】
本発明による薬学組成物は、薬学的に許容可能な担体を含むことができる。上記薬学的に許容可能な担体は、製剤時に通常利用されるもので、食塩水、滅菌液、リンゲル液、緩衝食塩水、シクロデキストリン、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノール、リポソームなどを含むが、これに限定されず、必要に応じて抗酸化剤、緩衝液などの他の通常の添加剤をさらに含むことができる。また、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤、潤滑剤などを付加的に添加して水溶液、懸濁液、乳濁液などのような注射用剤形、丸薬、カプセル、顆粒または錠剤として製剤化することができる。適合した薬学的に許容される担体及び製剤化については、レミントンの文献(Remington’s Pharmaceutical Science,Mack Publishing Company,Easton PA)に開示されている方法を利用して各成分によって好ましく製剤化することができる。本発明の薬学組成物は、剤形に特に制限はないが、注射剤、吸入剤、皮膚外用剤などとして製剤化することができる。
【0046】
本発明の薬学組成物は、目的の方法によって経口投与するか非経口投与(例えば、静脈内、皮下、皮膚、鼻腔、気道に適用)することができ、投与量は患者の状態及び体重、疾病の程度、薬物形態、投与経路及び時間によって異なるが、当業者によって適切に選択することができる。
【0047】
本発明による組成物は、薬学的に有効な量で投与する。本発明において「薬学的に有効な量」は、医学的治療に適用可能な合理的な受益/危険の割合で疾患を治療するのに十分な量を意味し、有効用量水準は、患者の疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路及び排出の割合、治療期間、同時に使用される薬物を含む要素及びその他の医学分野によく知られた要素によって決められることができる。本発明による組成物は、個別治療剤で投与するか他の治療剤と併用して投与することができ、従来の治療剤とは順次または同時に投与することができ、単一または多重投与することができる。上記の要素を全て考慮して副作用なく最小限の量で最大の効果が得られる量を投与することが重要であり、これは当業者によって容易に決められることができる。
【0048】
具体的に、本発明による組成物の有効量は、患者の年齢、性別、体重によって変えることができ、一般的には体重1kg当たり0.001~150mg、好ましくは0.01~100mgを毎日または隔日投与するか、1日1~3回に分けて投与することができる。しかし、投与経路、肥満の重症度、性別、体重、年齢などによって増減することができるので、上記投与量が如何なる方法でも本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例
【0049】
以下、本発明を実施例を通じてさらに詳しく説明する。これらの実施例は、本発明をより具体的に説明するためのもので、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。
【0050】
実施例1.実験方法
【0051】
1.1.GKN1が導入された組換えベクターの製造
組換えGKN1タンパクを製造するために次のように組換えベクターを製造した。先ず、人体GKN1 cDNAをPCR方法を利用して増幅させ、pCMV6-AN-FC(Origene ID PS100055)ベクターに制限酵素サイトを利用してpCMV6-AN-FC-hGKN1組換えベクターを製造した。より具体的に、pCMV6-AN-FCベクターとGKN1 cDNAをSgfIとMluIの制限酵素で処理した後、pCMV6-AN-FCとhGKN1 cDNAを連結させて前記ベクターにGKN1遺伝子を導入させた。以後、大膓菌に形質転換してアガープレート上で生じたコロニーを取った後、これを培養してDNAを抽出した後、シーケンスを行ってGKNI遺伝子が正しく導入されたのかを確認した。その後、protein A affinityクロマトグラフィーを利用して組換えGKN1タンパクを精製した後、これをウェスタンブロット法を利用してGKN1組換えタンパクを確認した。以後、前記GKNI遺伝子の配列を配列番号1と、これにコーディングされたGKN1タンパクのアミノ酸配列を配列番号2と示した。
【0052】
1.2.細胞培養
GKN1(Gastrokine 1)タンパクを発現しないAGS及びMKN1胃癌細胞株(gastric cancer cell lines)とGKN1を発現するHFE-145不滅化胃上皮細胞株(immortalized gastric epithelial cells)は、10%熱-不活性化されたFBS(fetal bovine serum)を含むRPMI-1640培地で37℃、5%CO2で培養された。また、Jurkat T細胞、THP-1単核球及びU937大食細胞も上記のような条件で培養された。
【0053】
1.3.HuProtTMマイクロアレイ(microarray)を通じたGKN1結合タンパクの同定
GKN1結合タンパクを同定するために、19,000個以上の全-長さ組換えヒトタンパクを含むHuman Proteome Microarray(CDI Labs,USA)が使用された。簡単には、タンパクマイクロアレイは、2時間の間Blocking Buffer(5% BSA in PBS with 0.05% tween-20)が処理された後、1μgのbiotinylated GKN1が4℃で8時間の間処理された。以後、マイクロアレイに1μgのstreptavidin-fluorescence(Alexa-Fluor 635nm)が処理された。結果はGenePix 4100A Microarray Laser Scanner(Molecular Devices,USA)で確認した。
【0054】
1.4.エクソソームの分離(Exosome Isolation)
GKN1タンパクがエクソソームに存在するか否かを調査するために、AGS及びMKN1細胞は、組換えGKN1タンパク(rGKN1,ANRT,Daejeon,Korea)で処理された。エクソソームは、HFE-145、AGS及びMKN1細胞の上層液から分離された。簡単には、passage 3~8の細胞がserum-free培地で培養され、培地を集める前に48時間の間10%FBSと1%penicillin/streptomycinを添加して37℃、5%CO2で培養された。条件化された培地は、細胞残骸(cell debris)を除去するために4℃で10分間2000gで遠心分離され、以後0.22μmフィルターを通過させた。フィルターされた上層液は、新しいGlass tubeに移して氷に置いておいた。以後、新しいGlass tubeに2mlの上層液を0.75mlのA/B/C solution(101Bio company,CA,USA)と混合させ、30秒間強くボルテックスし、4℃で30分間引き置いた。混合物は2個の層に分離され、上層は除去され、下層はmicrocentrifuge tubeに移して3分間5,000gで遠心分離され、また中間層は新しいmicrocentrifuge tubeに移して3分間5,000gで遠心分離した後、蓋を開けて常温で10分間エアードライさせた。総4倍の体積の1X PBSをtubeに加え、強くピペットした。Tubeは、horizontal shakerで高速で15分間処理した後、5分間5,000gで遠心分離した。上層液はPureExo Column(101Bio company,CA,USA)に用心深く移した後、5分間1,000gで遠心分離した。通過液は、PBSに浮遊された分離したエクソソーム分画を含んでいる。
【0055】
1.5.エクソソーム標識(Exosome Labeling)
エクソソームは、製造社のプロトコル(若干変形)によってPKH26(Sigma,St.Louis,USA)で標識された。簡単には、エクソソームペレットは1mlのDiluent Cで浮遊され、別途に1mlのDiluent Cは4μlのPKH26で混合させてStain Solutionを作った。エクソソーム懸濁液は、前記stain solutionを混合して4分間反応させ、標識反応は、同量の1%BSA(bovine serum albumin)が加わりながら止まった。標識されたエクソソームは、Total Exosome Isolation Kit(Invitrogen)を使用して製造社のプロトコルによって分離された。簡単には、0.5volumeのIsolation Reagentが標識されたエクソソームに加わって混合された。標識されたエクソソームは一晩中4℃に引き置き、順次に4℃で1時間の間10,000gで遠心分離された。以後、上層液は捨て、各ペレットは100μlのPBSで浮遊された。
【0056】
1.6.エクソソームでGKN1タンパクの発現
HFE-145、AGS及びMKN1細胞の細胞溶解物(cell lysate)及びエクソソームにおけるGKN1の発現は、ウェスタンブロッティングで分析された。同量の細胞溶解物及びエクソソームは、12.5%SDS-PAGEから分離され、Hybond-PVDF(polyvinylidene difluoride)transfer membranes(Amersham)に移された。0.5%のskim milkでブロッキングした後、メンブレンはanti-GKN1(Abcam,MA,USA)、anti-TSG101及びanti-CD81 antibodies(Santa Cruz Biotechnology,TX,USA)である1次抗体で反応させ、HRP(horseradish peroxidase)-conjugated secondary antibodiesで反応させた。タンパクバンドはWesternsure ECL substrate(LI-COR Biosciences,NE,USA)で検出され、バンドはLAS 4000(Fuji Film,Japan)で可視化された。
【0057】
1.7.共同-免疫沈殿(co-immunoprecipitation)
組換えGKN1(rGKN1)で処理されたAGS及びMKN1細胞由来のエクソソームはPBSで洗浄され、上述したように1%のNP-40、0.5%のsodium deoxycholate、0.1%のSDS、10mMのNaF、1.0mMのNaVO4及び1%のprotease inhibitor cocktail(Sigma,St.Louis,MO,USA)を含むPBS(pH7.2)で4℃で溶解された(J.Biol.Chem.2010;285:20547-57)。上述したように、同量のタンパクアリコート(1.0mg)は、2.0μgのGKN1(Abcam,Cambridge,UK)、COMT及びYWHAZ(Genetex,CA,USA)に対する抗体が結合されたProtein A/G-agarose(SantaCruz Biotechnology)で免疫沈殿された(EBioMedicine.2016; 9:97-109)。
【0058】
1.8.Trypsin digestion assay
GKN1タンパクのエクソソーム内の存在有無を確認するために、上述したように、HFE-145細胞(7μlのPBSに35μgのタンパク質)から分離されたエクソソームは、4℃で30分間1%のTriton X-100によって脂質膜が分解された(Blood.2009;113:1957-66)。エクソソームはTriton X-100のない同一条件下で培養された。エクソソーム懸濁液は、2つの酵素濃度(15及び0.01μg/mL)で37℃でトリプシンで分解された。Triton X-100処置は、トリプシン活性にほとんど影響を与えなかった(data not shown)。トリプシンの処理後、サンプルは同量のLaemmli bufferで直ちに混合され、3分間沸かした後、ゲルローディングが行われた。
【0059】
1.9.細胞の生存及び死滅の測定
細胞生存率の分析の場合、HFE-145細胞と5ngの組換えGKN1(rGKN1)で処理/非処理されたAGS及びMKN1細胞に由来したエクソソームを各細胞に処理した後、24、48及び72時間にHFE-145、AGS及びMKN1細胞でMTTアッセイが行われた。吸光度は540nmでspectrophotometerを使用して測定され、細胞生存率は非処理された細胞に相対的に表現された。
【0060】
細胞増殖アッセイの場合、5ng組換えGKN1(rGKN1)で処理されたHFE-145、AGS及びMKN1細胞に由来したエクソソームを各細胞に処理した後、BrdU Cell Proliferation Assay Kit(Millipore,Billerica,MA,USA)を使用して24、48及び72時間にBrdU Incorporation Assayが製造社のプロトコルによって行われた。吸光度は450nmでspectrophotometerを使用して測定され、細胞増殖率は非処理された細胞に相対的に表現された。エクソソームのGKN1タンパクと組換えGKN1(rGKN1)タンパクの細胞生存率及び細胞増殖に及ぼす効果を比べるために、GKN1タンパク(10ng/ml)を含むエクソソームまたは組換えGKN1(rGKN1)タンパク(10ng/ml)を処理した後、AGS及びMKN1細胞の細胞生存率と細胞増殖能を分析した。
【0061】
細胞死滅アッセイの場合、Annexin V-binding Assayが製造社の指示に従って行われた。Annexin Vは、細胞膜にホスファチジルセリンを持つ細胞に結合し、PI(propidium iodide)は弱化した細胞膜を持つ細胞のDNAを染色する。AGS及びMKN1細胞は、GKN1タンパクを含むエクソソームで処理され、冷たいPBSで二回洗浄され、100μlの結合バッファで浮遊された。各場合に100μlの上層液は400μlのブロッキング溶液と混合し、5μlのAnnexin V-FITC(1μg/ml)及び5μlのPI(2μg/ml)が混合液に加わり15分間程度暗室で反応され、細胞はFACS(fluorescence-activated cell sorter,BD Biosciences,San Jose,CA,USA)で分析された。PI染色されなかった蛍光-陽性細胞だけが死滅された細胞として見なされた。
【0062】
1.10.細胞周期の測定
細胞周期の分析の場合、5ng組換えGKN1(rGKN1)で処理/非処理されたAGS細胞から分離したエクソソームをAGS及びMKN1細胞に処理した後、前記細胞を集め、分析前に暗室で45分間PI(propidium iodide)で染色された。細胞周期中に各phaseにある細胞のパーセントはFACSCalibur Flow Cytometer with CellQuest 3.0 software(BD Biosciences,Heidelberg,Germany)を使用して決められた。実験は二回繰り返して行われた。
【0063】
1.11.細胞周期調節因子の発現
エクソソームのGKN1タンパクが細胞周期及び細胞死滅の調節に関与するか否かを決めるために、HFE-145細胞と組換えGKN1(rGKN1)が処理されたAGS及びMKN1細胞に由来したエクソソームを処理した後、48時間にHFE-145、AGS及びMKN1細胞でp53、p21、CDK4、cyclin D1、Cdc25、p-Cdc2、BAX、BCL2、Caspase-3及び8タンパクの発現変化が分析された。細胞溶解物は、10%ポリアクリルアミドゲルから分離され、Hybond PVDF membrane(Amersham Pharmacia Biotech,Piscataway,NJ,USA)に移された。ブロッキング後、メンブレンは順次にG0/G1phase proteinsに対する抗体で標識された。タンパク質バンドは、ECL(enhanced chemiluminescence reagents,Amersham Pharmacia Biotech,Piscataway,NJ,USA)溶液を使用して確認した。
【0064】
1.12.免疫蛍光の研究
Mouse anti-FITC conjugated GKN1(Genetex)、anti-clathrin(Abcam)及びTexas-red conjugated goat anti-mouse IgG(invitrogen) secondary antibodyが免疫反応のために使用された。反応の特異性は、Non-immune Mouse Serum(invitrogen)でテストされた。
【0065】
1.13.血清サンプル
胃切除術をする予定である胃癌患者150人と健康な志願者100人で構成された集団で研究が行われた。また、45人の肝癌(hepatocellular carcinoma)患者と50人の大膓癌(colorectal cancer)患者がそれぞれ対照群として使用された。手術前の癌患者245人と、100人の健康な志願者から全血が採取され、サンプリングした後、血清を分離して即時に-80℃で保管した。凍結された血清は氷で溶かした後、個々人の血清内の総タンパク濃度差を正規化(normalization)するためにリン酸緩衝溶液(PBS)で血清内の総タンパクの濃度を15μg/mlで希釈して使用した。GKN1タンパクがHFE-145細胞の培養液及びヒトの血清にあるエクソソームタンパクとして存在するか否かを調査するために、サンプルは70℃で処理されるか処理されなかった。全体培養液、全血清、エクソソームが除去されたサンプル及びエクソソーム分画にあるGKN1タンパクの濃度は、製造社の指示に従ってELISA kit(USCN,Wuhan,China)を使用して計算された。告知された同意書がヘルシンキ宣言によって提供され、全ての被験者から書面同意書を受けた。本発明は、Institutional Review Board of The Catholic University of Korea,College of Medicine(MC16SISI0132)によって承認された。癌患者の誰にも遺伝性癌の証拠はなかった。
【0066】
1.14.統計分析
二枝分類法に基づいたマーカーの診断学的有用性を評価するために、ROC(receiver operating characteristic)曲線分析が使用された。ROC曲線は全ての可能な限界値に評価されるtrue-positive fraction対false-positive fractionのプロット(plot)である。また、細胞生存率及び細胞増殖でGKN1の効果を分析するためにStudent’s t-testが使用された。全ての実験は、再現性を証明するために2回以上繰り返して実験した。データは2個の独立した実験から平均±S.D.(standard deviation)で表現し、P値が0.05未満であれば統計的に有意であるとみなした。
【0067】
実施例2.GKN1結合タンパクの同定
【0068】
本発明者らは、GKN1に結合するタンパクを同定するために、タンパクマイクロアレイアッセイを行った。その結果、組換えGKN1(rGKN1)に普通または強い結合力を持った27個のエクソソームタンパクが発見された(図1a)。エクソソームタンパクに対するGKN1の結合力を確認するために、本発明者らはHFE-145細胞と組換えGKN1(rGKN1)を処理したAGS及びMKN1細胞でエクソソームタンパクを抽出し、共同-免疫沈殿分析によってエクソソームタンパク中のGKN1とCOMT間の相互作用及びGKN1とYWHAZ間の相互作用を証明した(図1b)。
【0069】
実施例3.胃細胞株由来のエクソソームでGKN1タンパクの検出
【0070】
前記組換えGKN1(rGKN1)タンパクがエクソソームタンパクに対する結合力があるという事実から、本発明者らは、GKN1がエクソソームタンパクで自然的に分泌して内在化されるのかを調査するために、HFE-145、AGS及びMKN1細胞の培養上層液からエクソソームを分離してGKN1の存在有無を確認する実験を行った。その結果、HFE-145細胞由来のエクソソームではGKN1タンパクが含まれていたが、AGS及びMKN1胃癌細胞株由来のエクソソームではGKN1タンパクが発現されていないことを確認した(図2a)。エクソソームマーカーであるTSG101は、分離されたエクソソーム及び細胞溶解物で確認されたが、CD81は、単にエクソソームのみで存在することを確認して、CD81を以後実験でエクソソームマーカーとして使用した(図2a)。また、組換えGKN1(rGKN1)タンパクをAGS及びMKN1細胞に処理する場合、GKN1タンパクの大部分がエクソソームに存在することを確認した(図2a)。これと一致するように、HFE-145細胞における全体培養液、エクソソーム分画及びエクソソームが除去された培地におけるGKN1タンパクの濃度は、それぞれ1.13±0.04、1.08±0.07、0.05±0.03ng/mlであった(図2b)。
【0071】
次に、エクソソーム内のGKN1タンパクの存在部位を確認するために、トリプシン及びTriton X-100の処理/非処理によるTrypsin Digestion Assayが行われ、以後ウェスタンブロッティングが行われた(Blood.2009;113:1957-66)。エクソソームにTriton X-100が非処理され、トリプシンのみが処理された場合、GKN1はトリプシン依存の酵素分解が起こらなかった。しかし、Triton X-100及びトリプシンが全て処理された場合、GKN1は完全に分解された(図2c)。上記結果からGKN1タンパクがエクソソーム内部に存在することを確認した。
【0072】
実施例4.GKN1タンパクを含むエクソソームのClathrin依存的内在化
【0073】
本発明者らは、エクソソームのGKN1タンパクの内在化にClathrinが関連したか否かを確認する実験を行った。CathrinをノックダウンさせるためにsiRNAであるsiClathrinを使用し、siClathrin及びGKN1タンパクを含むエクソソームをAGS及びMKN1細胞に処理した後、上記細胞でGKN1タンパクの発現有無を確認するために免疫蛍光アッセイ及びウェスタンブロッティングを行った。
【0074】
先ず、GKN1タンパクを含むPKH26陽性エクソソームをAGS及びMKN1細胞に処理した場合、前記エクソソームはAGS及びMKN1の細胞質で明確に内在化されていた(図3a及び3c)。しかし、AGS及びMKN1細胞でClathrinがノックダウンされた場合は、細胞膜と細胞質におけるPKH26-陽性エクソソームの存在が確実に抑制された(図3b及び3c)。また、siClathrinによるClathrinのサイレンシングは、細胞膜と細胞質でGKN1タンパク発現を顕著に抑制させたことを確認した(図3d)。
【0075】
従って、Clathrinは、GKN1タンパクを含むエクソソームを上記粘膜上皮細胞に付着させて内在化させるのに重要な役割をしていることを確認した。
【0076】
実施例5.血清GKN1タンパク濃度による胃癌の診断
【0077】
GKN1タンパクがエクソソームタンパクとして培地及びヒト血清に存在するか否かを確認するために、HFE-145細胞の培養液及びヒト血清を70℃で10分間処理した後、ELISA assayでGKN1タンパクの濃度を測定した。その結果、HFE-145細胞で熱処理されていない場合(Non-heating)、GKN1タンパクが全体培地、エクソソーム及びエクソソームが除去された培地で確認されず、一方、70℃で10分間熱処理した場合(heating)は、全体培地、エクソソーム及びエクソソームが除去された培地(soluble)でGKN1タンパクの濃度がそれぞれ1.13±0.06、1.08±0.1及び0.05±0.04ng/mlと確認された(図4a)。これと一致して、GKN1タンパクは熱処理されていない全体血清、エクソソーム及びエクソソームが除去された血清で確認されなかった(図4b)。10人の健康な被験者の中で、熱処理された全体血清及びエクソソームにおけるGKN1タンパクの発現濃度は、それぞれ6.53±0.58ng/ml及び6.24±0.55ng/mlであった(図4b)。また、10人の胃癌患者において、全体血清及びエクソソームにおけるGKN1タンパクの発現濃度は、それぞれ3.58±0.54ng/ml及び3.28±0.82ng/mlであったが(図4b)、これは、血清GKN1タンパクの大部分がエクソソーム内に存在することを意味する。上記結果によって、本発明者らは、100人の健康な被験者及び245人の胃癌、大膓癌及び肝癌患者における全体血清を得た後、70℃で10分間熱処理した後、GKN1濃度を分析した。
【0078】
図4cに示すように、正常健康人で血清GKN1タンパクの水準は年齢と関連がある傾向を示したが、統計的有意性はなかった(P=0.338)。また、血清GKN1水準において男女間の差異は見えなかった(P=0.074)。興味深いことに、萎縮性胃炎のある者と腸上皮化生(intestinal metaplasia、IM)が伴った萎縮性胃炎のある者は、胃炎のない被験者より低い血清GKN1濃度を示したが、胃癌を持った患者よりは顕著に高かった(図4d)。
【0079】
100人の健康な被験者及び150人の胃癌患者の全体血清にあるGKN1濃度は、それぞれ6.35±0.82ng/ml及び3.50±0.57ng/mlであり(図4e)、これにより、胃癌患者における血清GKN1タンパク水準が健康な被験者の水準に比べて顕著に低いことを確認した(P<0.0001)。さらに、肝癌及び大膓癌患者における血清GKN1濃度は、それぞれ6.07±0.92及び6.26±0.95ng/mlであり、これは健康な被験者の水準と類似し、胃癌患者に比べて顕著に高い水準であった(図4e)。特に、ROC曲線のarea値がそれぞれ1.0、1.0及び0.9964と確認されることで、血清GKN1タンパクの濃度によって健康な被験者、萎縮性胃炎のある者、腸上皮化生(intestinal metaplasia、IM)が伴った萎縮性胃炎のある者と胃癌患者を区別することができることを確認した(図4f)。また、本発明者らが血清GKN1水準によって胃癌患者と肝癌及び大膓癌患者を区別できることを確認するために、ROC曲線値を測定し、ROC曲線でareaはそれぞれ0.9938及び0.9987であり、全体血清におけるGKN1タンパク濃度によって胃癌を予測及び診断できることを確認した(図4g)。
【0080】
胃癌は、癌細胞の胃壁浸潤程度によって早期胃癌と進行性胃癌に区分される。本研究で早期胃癌患者血清におけるGKN1濃度は3.75±0.47ng/mlであり、進行性胃癌患者の血清GKN1濃度である3.38±0.58ng/mlより高かったが(P<0.001)(図4h)、腸上皮化生(intestinal metaplasia、IM)が伴った萎縮性胃炎のある者の血清GKN1濃度よりは低かった(P<0.001)(図4h)。ROC曲線のarea値がいずれも1.0と確認されることで、血清GKN1タンパクの濃度によって健康な被験者、萎縮性胃炎のある者、腸上皮化生(intestinal metaplasia、IM)が伴った萎縮性胃炎のある者と早期胃癌患者を区別できることを確認した(図4i)。
【0081】
上記結果から、本発明者らは、ヒト血清にあるエクソソームGKN1タンパクが胃癌の診断のための有用なバイオマーカーとして使用可能なことを確認した。
【0082】
実施例6.エクソソーム内のGKN1タンパクの血球細胞に対する細胞毒性
【0083】
胃上皮細胞で生産分泌されて腫瘍形成抑制機能を持ったGKN1タンパクが血清で確認されたという証拠に基づいて、本発明者らは、GKN1タンパクを含むエクソソームが血液内のリンパ球、単核球及び大食細胞の細胞生存率と機能に影響を及ぼすか否かを調査した。興味深いことに、免疫蛍光アッセイ結果でHFE-145細胞由来のGKN1タンパクを含むエクソソームは、THP-1タンパク球及びU937大食細胞の細胞膜に付いたが、Jurkat T細胞には付かず(図5a)、ウェスタンブロッティングでエクソソームGKN1タンパクは、THP-1タンパク球及びU937大食細胞の細胞膜部分のみに存在することを確認した(図5b)。また、エクソソームGKN1タンパクは、THP-1タンパク球及びU937大食細胞の細胞生存率及びIL-6を含むサイトカインの分泌に何らの影響も及ぼさなかった(図5c及び5d)。上記結果から、本発明者らは、エクソソームGKN1タンパクはリンパ球、単核球及び大食細胞に対して細胞毒性がないことを確認した。
【0084】
実施例7.細胞増殖及び細胞死滅の測定
【0085】
本発明者らは、エクソソームのGKN1タンパクによる細胞生存率及び増殖に対する効果を確認するために、MTT assay及びBrdU Incorporation Assayを行った。HFE-145、AGS(組換えGKN1処理/非処理)及びMKN1(組換えGKN1処理/非処理)細胞に由来したエクソソームをそれぞれHFE-145、AGS及びMKN1細胞に処理し、細胞生存率及び細胞増殖能を実験した。
【0086】
その結果、AGS及びMKN1細胞に由来したGKN1陰性エクソソーム(組換えGKN1が非処理された群)を処理した場合は細胞生存率が確実に増加したが、HFE-145、AGS及びMKN1細胞に由来したGKN1タンパクを含むエクソソーム(組換えGKN1が処理された群)がAGS及びMKN1細胞で細胞生存率及び細胞増殖能を顕著に抑制することを確認した(図6a及び6b)。
【0087】
次に、本発明者らは、エクソソームのGKN1タンパク及び組換えGKN1(rGKN1)タンパクを処理した後、時間によるAGS及びMKN1細胞の細胞生存率を比べる実験を行った。その結果、上記細胞でエクソソームのGKN1タンパクと組換えGKN1(rGKN1)タンパクを処理すると、時間依存的に細胞生存率と細胞増殖能が抑制されることを確認し、特に、エクソソームのGKN1タンパクを処理した場合、組換えGKN1(rGKN1)タンパクを処理した細胞でより細胞生存率と細胞増殖能が急激に減少することを確認した(図6c)。
【0088】
また、本発明者らは、組換えGKN1(rGKN1)タンパクをAGS及びMKN1細胞に処理(rGKN1_exosome)/非処理(w/oGKN1_exosome)した後、細胞周期を分析する実験を行った。その結果、AGS及びMKN1細胞に組換えGKN1(rGKN1)を処置後、分離したGKN1タンパクを含むエクソソーム(GKN-陽性エクソソーム)を処理した場合、AGS及びMKN1細胞のいずれもS phaseにある細胞群は顕著に減少し、G1及びG2/M phaseの細胞群は増加したことを確認した(図6d)。
【0089】
また、本発明者らは、エクソソームのGKN1タンパクによるG1またはG2/M phase arrestに影響を与える細胞周期調節因子の発現有無を確認する実験を行った。その結果、エクソソームのGKN1タンパクは、G1 phase arrestのためにp53及びp21のような陽性細胞周期調節因子の発現を増加させ、cdk4及びcyclin Dのような陽性細胞周期調節因子の発現を減少させたことを確認した(図6e)。また、G2/M phase arrestのために、エクソソームのGKN1タンパクはHFE-145、AGS及びMKN1細胞でp-cdc2、cdc25c及びcyclin Bタンパクの発現を下向調節したことを確認した(図6e)。
【0090】
次に、本発明者らは、組換えGKN1が処理/非処理された細胞に由来したGKN1タンパクを含むエクソソームをAGS及びMKN1細胞に処理した後、細胞死滅アッセイを行った。細胞死滅は、FITC-labeled Annexin Vによって染色された細胞によって測定されたが、組換えGKN1(rGKN1)が処理されたAGS細胞に由来したGKN1タンパクを含むエクソソームの投与によりAGS及びMKN1細胞で細胞死滅が顕著に増加したことを確認した(図6f)。ウェスタンブロッティングの結果ではcleaved caspase-3及び-8の発現量が確実に増加した一方、BAX及びBCL2発現には変化がなかったことを確認した(図6e)。
【0091】
従って、エクソソームのGKN1タンパクは胃癌細胞で内在化され、細胞質タンパクと相互作用して細胞の増殖を抑制し、細胞死滅を誘導して胃癌を治療することができ、血球細胞には細胞毒性がないことを確認した。
図1
図2a
図2b
図2c
図3a
図3b
図3c
図3d
図4a
図4b
図4c
図4d
図4e
図4f
図4g
図4h
図4i
図5a
図5b
図5c
図5d
図6a
図6b
図6c
図6d
図6e
図6f
【配列表】
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