(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】デジタルポジトロン放出断層撮影における検出器ピクセルの性能変動への対処
(51)【国際特許分類】
G01T 1/164 20060101AFI20220315BHJP
A61B 6/03 20060101ALI20220315BHJP
【FI】
G01T1/164 B
A61B6/03 350H
(21)【出願番号】P 2020516714
(86)(22)【出願日】2018-09-12
(86)【国際出願番号】 EP2018074546
(87)【国際公開番号】W WO2019057572
(87)【国際公開日】2019-03-28
【審査請求日】2021-09-03
(32)【優先日】2017-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】バイ チュアンヨン
(72)【発明者】
【氏名】アンドレーエフ アンドリー
(72)【発明者】
【氏名】リン スーシェン
(72)【発明者】
【氏名】チャン ビン
(72)【発明者】
【氏名】ミラー マイケル アレン
(72)【発明者】
【氏名】ソング シユン
(72)【発明者】
【氏名】イエ ジンハン
(72)【発明者】
【氏名】ドイヴェーディー シェカール
(72)【発明者】
【氏名】フー チーチャン
(72)【発明者】
【氏名】シェイ ユー‐ルング
(72)【発明者】
【氏名】ブロードスキー イリア
(72)【発明者】
【氏名】ブルグリン トーマス クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ズー ヤン‐ミン
(72)【発明者】
【氏名】マクナイト ダグラス ビー
【審査官】松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-001855(JP,A)
【文献】特開2005-006196(JP,A)
【文献】特開2013-081579(JP,A)
【文献】国際公開第2007/125691(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの電子プロセッサを含むワークステーションによって読み出し可能及び実行可能な命令を記憶する非一時的コンピュータ可読媒体であって、前記
命令により実行される品質管理(QC)の方法は、
ピクセル構成検出器によって取得され
、前記ピクセル構成検出器の検出器ピクセルの性能を示すQCデータセットについて、現在のQCデータセットと
1つ以上の先行するQCデータセットとを受信するステップと、
前記現在のQCデータセット及び前記1つ以上の先行するQCデータセットから、前記ピクセル構成検出器の検出器ピクセルの安定度レベルを経時的に判断するステップであって、前記現在のQCデータセットと前記1つ以上の先行するQCデータセットとの間の前記検出器ピクセルの感度の変化に基づいて、前記検出器ピクセルの安定度レベルを判断するステップと、
前記ピクセル構成検出器の検出器ピクセルに関して判断された前記安定度レベルが安定度閾値範囲から外れているときに、前記検出器ピクセルをデッドと分類するステップと、
前記ワークステーションと動作可能に接続された表示デバイス上に、デッドと分類された前記検出器ピクセルの識別情報を表示するステップとを有する、非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項2】
前記方法は、
前記現在のQCデータセットから、前記ピクセル構成検出器の前記検出器ピクセルの感度レベルを判断するステップと、
前記安定度レベルが前記安定度閾値範囲内であっても、前記感度レベルが最大感度閾値より高いときに、前記ピクセル構成検出器の検出器ピクセルをデッドと分類するステップとを更に有する、請求項1に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項3】
前記方法は、
前記感度レベルが最小感度閾値より低
い場合であっても、
前記安定度レベルが前記安定度閾値範囲内であるときに、前記ピクセル構成検出器の検出器ピクセルを
ライブと分類するステップを更に有し、
前記表示は、
ライブと分類された前記検出器ピクセルの識別情報も含む、請求項2に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項4】
前記方法は、
デッドと分類された前記検出器ピクセルに基づいて、前記ピクセル構成検出器の保守点検又は較正が指示されるか否かを判断するステップを更に有し、
前記表示デバイス上の前記表示は、前記ピクセル構成検出器の保守点検又は較正が指示されるか否かの前記判断を踏まえて、前記ピクセル構成検出器の保守点検の実行勧告又は前記ピクセル構成検出器の較正の実行勧告を指示するメッセージを更に含
む、請求項1に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項5】
前記ピクセル構成検出器の検出器ピクセルに関して判断された前記安定度レベルが安定度閾値範囲から外れているときに前記検出器ピクセルをデッドと分類する前記ステップの動作は、
以前にデッドと分類された1つ以上の検出器ピクセルの検出された前記安定度レベルが前記安定度閾値範囲内にあるときに、以前にデッドと分類された前記1つ以上の検出器ピクセルをライブと再分類することを更に含む、請求項1に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項6】
前記方法は、
デッドと分類された前記検出器ピクセルを、データを与えない検出器ピクセルとして取り扱って、前記ピクセル構成検出器によって撮像対象者に関して取得される撮像データをシミュレートするステップと、
前記シミュレートされた撮像データを再構成して、シミュレートされた画像を生成するステップとを更に有する、請求項1に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項7】
前記方法は、
前記ピクセル構成検出器によって取得された撮像データセットの全てのデータを再構成して、第1の再構成画像を生成するステップと、
デッドと分類された前記検出器ピクセルによって取得されたデータを省いて、前記ピクセル構成検出器によって取得された
前記撮像データセットを再構成して、
第2の再構成画像を生成するステップと、
前記表示デバイス上に、前記
第1の再構成画像と前記
第2の再構成画像との比較を表示するステップとを更に有する、請求項1に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項8】
前記方法は、
前記現在のQC画像と前記基準画像とを比較するステップと、
前記現在のQC画像と前記基準画像との前記比較に基づいて、前記ピクセル構成検出器の保守点検又は較正が指示されるか否かを判断するステップとを更に有し、
前記表示デバイス上の前記表示は、前記ピクセル構成検出器の保守点検又は較正が指示されるか否かの前記判断を踏まえて、前記ピクセル構成検出器の保守点検の実行勧告又は前記ピクセル構成検出器の較正の実行勧告を指示するメッセージを更に含む、請求項7に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項9】
患者の撮像データを取得する画像取得デバイスであって、複数の検出器ピクセルを備えるピクセル構成検出器を含む、画像取得デバイスと、
表示デバイスと、
少なくとも1つの電子プロセッサとを備える、撮像システムであって、
前記少なくとも1つの電子プロセッサは、
前記ピクセル構成検出器によって取得され
、前記ピクセル構成検出器の検出器ピクセルの性能を示す品質管理(QC)データセットについて、現在
のQCデータセット
と1つ以上の先行するQCデータセットとを受信し、
前記現在のQCデータセット及び前記1つ以上の先行するQCデータセットから、前記検出器ピクセルの安定度レベルを経時的に判断することであって、前記現在のQCデータセットと前記1つ以上の先行するQCデータセットとの間の前記検出器ピクセルの感度の変化に基づいて、前記検出器ピクセルの安定度レベルを判断し、
前記検出器ピクセルに関して判断された前記安定度レベルが安定度閾値範囲から外れているときに、前記検出器ピクセルの1つ以上をデッドと分類し、
デッドと分類された前記検出器ピクセルの識別情報を表示するために、前記表示デバイスを制御するようにプログラムされる、撮像システム。
【請求項10】
前記少なくとも1つの電子プロセッサは、
前記現在のQCデータセットから、前記ピクセル構成検出器の前記検出器ピクセルの感度レベルを判断し、
前記安定度レベルが前記安定度閾値範囲内であっても、前記感度レベルが最大感度閾値より高いときに、前記ピクセル構成検出器の検出器ピクセルをデッドと分類し、
前記感度レベルが最小感度閾値より低い
場合であっても、
前記安定度レベルが前記安定度閾値範囲内であるときに、前記ピクセル構成検出器の検出器ピクセルを
ライブと分類し、
前記ピクセルの前記識別情報をデッド又は
ライブと表示するために、前記表示デバイスを制御するように更にプログラムされる、請求項9に記載の撮像システム。
【請求項11】
前記少なくとも1つの電子プロセッサは、
デッドと分類された前記検出器ピクセルに基づいて、前記ピクセル構成検出器の保守点検又は較正が指示されるか否かを判断するように更にプログラムされ、
前記表示デバイス上の前記表示は、前記ピクセル構成検出器の保守点検又は較正が指示されるか否かの前記判断を踏まえて、前記ピクセル構成検出器の保守点検の実行勧告又は前記ピクセル構成検出器の較正の実行勧告を指示するメッセージを更に含む、請求項9に記載の撮像システム。
【請求項12】
前記少なくとも1つの電子プロセッサは、
以前にデッドと分類された1つ以上の検出器ピクセルの検出された前記安定度レベルが前記安定度閾値範囲内にあるときに、以前にデッドと分類された前記1つ以上の検出器ピクセルをライブと再分類するように更にプログラムされる、請求項9に記載の撮像システム。
【請求項13】
前記少なくとも1つの電子プロセッサは、
デッドと分類された前記検出器ピクセルを、データを与えない検出器ピクセルとして取り扱って、前記ピクセル構成検出器によって撮像対象者に関して取得される撮像データをシミュレートし、
前記シミュレートされた撮像データを再構成して、シミュレートされた画像を生成するように更にプログラムされる、請求項9に記載の撮像システム。
【請求項14】
前記少なくとも1つの電子プロセッサは、
前記ピクセル構成検出器によって取得された撮像データセットの全てのデータを再構成して、第1の再構成画像を生成し、
デッドと分類された前記検出器ピクセルによって取得されたデータを省いて、前記ピクセル構成検出器によって取得された
前記撮像データセットを再構成して、
第2の再構成画像を生成し、
前記
第1の再構成画像と前記
第2の再構成画像との比較を表示するために、前記表示デバイスを制御するように更にプログラムされる、請求項9に記載の撮像システム。
【請求項15】
前記少なくとも1つの電子プロセッサは、
前記現在のQC画像と前記基準画像とを比較し、
前記現在のQC画像と前記基準画像との前記比較に基づいて、前記ピクセル構成検出器の保守点検又は較正が指示されるか否かを判断するように更にプログラムされ、
前記表示デバイス上の前記表示は、前記ピクセル構成検出器の保守点検又は較正が指示されるか否かの前記判断を踏まえて、前記ピクセル構成検出器の保守点検の実行勧告又は前記ピクセル構成検出器の較正の実行勧告を指示するメッセージを更に含む、請求項14に記載の撮像システム。
【請求項16】
前記方法は、
前記安定度レベルが前記安定度閾値範囲内であっても、前記感度レベルが最小感度閾値より低いときに、前記ピクセル構成検出器の検出器ピクセルをデッドと分類するステップを更に有する、請求項2に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項17】
前記ピクセル構成検出器は、
ポジトロン放出断層撮影(PET)デバイスの検出器リング、透過型コンピュータ断層撮影(CT)デバイスの検出器アレイ、単光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)を実行するガンマカメラの検出器、及びデジタルX線撮影デバイスのデジタル検出器アレイのうちの1つである、請求項9に記載の撮像システム。
【請求項18】
前記現在のQCデータセット及び1つ以上の先行するQCデータセットは、点線源又はライン線源を備える基準線源から取得される、請求項9に記載の撮像システム。
【請求項19】
患者の撮像データを取得するポジトロン放出断層撮影(PET)デバイスであって、前記ポジトロン放出断層撮影(PET)デバイスは、複数のPET検出器ピクセルを備えるPET検出器リングを含む、ポジトロン放出断層撮影(PET)デバイスと、
表示デバイスと、
少なくとも1つの電子プロセッサとを備える、撮像システムであって、
前記少なくとも1つの電子プロセッサは、
前記ピクセル構成検出器によって取得され
、前記ピクセル構成検出器の検出器ピクセルの性能を示す品質管理(QC)データセットについて、現在
のQCデータセット
と1つ以上の先行するQCデータセットとを受信し、
前記現在のQCデータセットから、検出器ピクセルの感度レベルを判断し、
前記現在のQCデータセット及び前記1つ以上の先行するQCデータセットから、前記検出器ピクセルの安定度レベルを経時的に判断し、前記検出器ピクセルの安定度レベルは、前記現在のQCデータセットと前記1つ以上の先行するQCデータセットとの間の前記検出器ピクセルの感度の変化に基づいて判断され、
前記安定度レベルが安定度閾値範囲内であっても、前記感度レベルが最大感度閾値より高いときに、前記ピクセル構成検出器の検出器ピクセルをデッドと分類し、
前記感度レベルが最小感度閾値より低い
場合であっても、
前記安定度レベルが前記安定度閾値範囲内であるときに、前記ピクセル構成検出器の検出器ピクセルを
ライブと分類し、
デッド又は
ライブと分類された前記検出器ピクセルの識別情報を表示するために、前記表示デバイスを制御するようにプログラムされる、撮像システム。
【請求項20】
前記少なくとも1つの電子プロセッサは、
以前にデッドと分類された1つ以上の検出器ピクセルの検出された前記安定度レベルが最大安定度閾値及び最小安定度閾値の範囲内にあるときに、以前にデッドと分類された前記1つ以上の検出器ピクセルをライブと再分類するように更にプログラムされる、請求項19に記載の撮像システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下の内容は包括的には、医療用撮像技術、医療用画像解釈技術、画像再構成技術、医療用撮像デバイス保守点検技術及び関連技術に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルポジトロン放出断層撮影(PET)検出器は、数多くのピクセルからなるアセンブリを含む。1つのピクセル構成検出器設計では、各検出器ピクセルは所望のサイズに切断された小さいシンチレータ結晶であり、PETスキャンにおいて511keVガンマ線を検出するために、関連するシンチレーション光検出ユニット及び電子回路を有する。大部分のピクセルの性能が比較的類似し、予測可能であり、それにより、平均的なピクセルからなる大きいサブセットが形成されるように、結晶調製、検出器組立工程などが、できる限り系統的に維持される。
【0003】
結晶の不均一性、製造時の処理の変動、光子検出ユニット(例えば、フォトダイオード)性能のばらつき、組立工程の不一致、電子回路の変動などの数多くの理由に起因して、検出器ピクセルのごく一部が平均的なピクセルとは著しく異なる場合がある。そのようなピクセルの中には、平均的なピクセルよりはるかに低い感度を有するものがある。そのようなピクセルの中には、平均よりはるかに高い感度を有するものがあるが、それでも感度が安定していないものもある。すなわち、その感度が、時間によって大幅に、又は絶えず変動する。
【0004】
検出器ピクセル性能の評価は通常、検出器ピクセル較正によって実行され、それは標準的な均一ファントムから事象データを取得することを伴い、標準的な均一ファントムは、検出器リングの検出器から等距離になるようにスキャナのアイソセンタに配置されることが好ましい。それに伴う時間及び労力に起因して、ピクセル較正は一般に頻繁には実行されず、例えば、主要な保守点検後などにのみ実行される。較正は通常、個々のピクセルの感度差を考慮に入れるために、検出器ピクセルに関する正規化係数を決定することも含む。
【0005】
いくつかの既存のPETシステムにおいて、極めて低い感度を有する(例えば、下限が平均的なピクセルの感度の20%以下である)ピクセル及び疑似的に高い感度を有する(例えば、上限が平均的なピクセルより40%高い)ピクセルは、デッドピクセルと見なされる。ピクセルがデッドであると識別されるとき、それらのピクセルは、存在しないかのように、データ処理から除外される。例えば、デッドピクセルに関連付けられる事象は、画像再構成プロセス(例えば、リストモード反復再構成など)から除外されるだけでなく、全国電機製造業者協会(NEMA)感度、計数率性能評価のような、システム性能評価からも除外される。再構成では、多くの場合に、デッドピクセルに対処するための手法を利用して、画像品質(例えば、解像度、アーティファクトなど)及び定量的精度(例えば、病変強度、SUVなど)におけるデッドピクセルの悪影響を最小限に抑える。
【0006】
標準的でない検出器ピクセルを取り扱うためのこれらの手法は、いくつかの欠点を有する。例えば、下限と上限との間で経時的にばらつく感度を有する不安定なピクセルは、識別するのが難しい可能性がある。較正は頻繁には実行されず、高い時間分解能で性能を追跡しないので、ピクセルが平均的なピクセルの、例えば、20%~140%の間で変動する感度を有する場合には、PETシステムの較正はそのようなピクセルを検出しない場合がある。正規化でそのような変動を暗に補償することができるが、2つの正規化間で生じる任意のピクセル性能変動は、検出及び補償することはできない。
【0007】
クラスタ化されたピクセルのグループ(例えば、タイル、モジュールなど)が非常に低い(例えば、平均の50%の)感度を有する場合、又はその感度が他のピクセルと大きく異なる場合には、それらのピクセルは、特定の状況において、著しい画像アーティファクト及び定量誤差を導入する可能性がある。そのような状況は、感度変動の根本原因が、タイル又はモジュールレベルにある場合、例えば、タイル又はモジュールの全ての検出器に強い影響を与えるタイル又はモジュール電子回路に関連する問題である場合に生じる可能性がある。正規化プロセスはそのようなタイルレベル又はモジュールレベルの変動を暗に補償することができるが、正規化は頻繁には実行されない。タイル又はモジュールの感度変動が2つの正規化間に生じる場合には、患者データが損なわれる場合があり、結果として生成された画像がアーティファクト及び定量誤差を有する場合がある。
【0008】
ピクセルをデッドと分類する既存の手法は、有用な撮像データを考慮しないように、過大包摂(over-inclusive)とすることもできる。デッドと分類されたピクセルがスキャンの持続時間にわたって安定している場合には、これらのデッドピクセルに関連付けられる計数は依然として有用な場合がある。実際に、そのような計数は、低用量研究、ショートスキャン又はダイナミックスキャンにおいて非常に有益である可能性がある。しかしながら、既存の手法は、デッドピクセルからの計数を、使用されないように除外する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
デッドピクセルの数が増加し、及び/又はデッドピクセルがクラスタ化されるとき、そのシステムが、依然として使用するのに安全であるか否かに関して、ユーザが不安に駆られる場合がある。修理依頼に関する指針は、それらの精通したユーザにとって十分でない場合があり、不要な、又は早計な保守点検依頼につながる場合がある。逆に、あまり注意深くないユーザは、デッドピクセルの数が臨床撮像品質に悪影響を及ぼすほど増えつつあることを認識できない場合がある。
【0010】
以下は、これらの問題を克服する新規の改善されたシステム及び方法を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
1つの開示される態様では、非一時的コンピュータ可読媒体が、品質管理(QC)方法を実行する少なくとも1つの電子プロセッサを含むワークステーションによって読み出し可能及び実行可能な命令を記憶する。その方法は、ピクセル構成検出器によって取得された現在のQCデータセットと、ピクセル構成検出器によって取得された1つ以上の先行するQCデータセットとを受信することと、現在のQCデータセット及び1つ以上の先行するQCデータセットからピクセル構成検出器の検出器ピクセルの安定度レベルを経時的に判断することと、検出器ピクセルに関して判断された安定度レベルが安定度閾値範囲から外れているときに、そのピクセル構成検出器の検出器ピクセルをデッドと分類することと、ワークステーションと動作可能に接続された表示デバイス上に、デッドと分類された検出器ピクセルの識別情報を表示することとを有する。
【0012】
別の開示される態様では、撮像システムが、患者の撮像データを取得するように構成される画像取得デバイスを含み、画像取得デバイスは、複数の検出器ピクセルを備えるピクセル構成検出器と、表示デバイスとを含む。少なくとも1つの電子プロセッサが、ピクセル構成検出器によって取得された現在の品質管理(QC)データセットと、ピクセル構成検出器によって取得された1つ以上の先行するQCデータセットとを受信し、現在のQCデータセット及び1つ以上の先行するQCデータセットから検出器ピクセルの安定度レベルを経時的に判断し、検出器ピクセルに関して判断された安定度レベルが安定度閾値範囲から外れているときに、検出器ピクセルの1つ以上をデッドと分類し、デッドと分類された検出器ピクセルの識別情報を表示するために表示デバイスを制御するようにプログラムされる。
【0013】
別の開示される態様では、撮像システムが、患者の撮像データを取得するように構成されるポジトロン放出断層撮影(PET)デバイスを含む。画像取得デバイスは、複数のPET検出器ピクセルを備えるPET検出器リングを含む。また、撮像システムは表示デバイスも含む。少なくとも1つの電子プロセッサが、ピクセル構成検出器によって取得された現在の品質管理(QC)データセットと、ピクセル構成検出器によって取得された1つ以上の先行するQCデータセットとを受信し、現在のQCデータセットから検出器ピクセルの感度レベルを判断し、現在のQCデータセット及び1つ以上の先行するQCデータセットから検出器ピクセルの安定度レベルを経時的に判断し、感度レベルが最大感度閾値より高いときに、ピクセル構成検出器の検出器ピクセルをデッドと分類し、感度レベルが最小感度閾値より低いときに、ピクセル構成検出器の検出器ピクセルをコールドと分類し、デッド又はコールドと分類された検出器ピクセルの識別情報を表示するために表示デバイスを制御するようにプログラムされる。
【0014】
1つの利点は、不安定な検出器ピクセルをより実効的に、かつ適時に識別することにある。
【0015】
別の利点は、以前に不安定であったが、再安定化した検出器ピクセルを識別することにある。
【0016】
別の利点は、低いが、安定した感度レベルを有する検出器ピクセルを用いて取得されたデータを含む撮像データを再構成することにある。
【0017】
別の利点は、デッドと分類された検出器ピクセルの識別情報を臨床医に提供することにある。
【0018】
別の利点は、臨床画像品質に及ぼすデッド検出器ピクセルの影響を臨床医により実効的に通知することにある。
【0019】
別の利点は、PET検出器リング保守点検問題に関する保守点検依頼を削減することにある。
【0020】
所与の実施形態が、上記の利点をいずれも提供しないか、上記の利点のうちの1つ、2つ、3つ以上又は全てを提供する場合があり、及び/又は本開示を読み、理解すると当業者に明らかになるような他の利点を提供する場合がある。
【0021】
本開示は、種々の構成要素及び構成要素の構成において、並びに種々のステップ及び種々のステップの構成において具現される場合がある。図面は、好ましい実施形態を例示することのみを目的としており、本発明を制限するものと解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】一態様による画像再構成システムの概略図である。
【
図2】
図1のシステムの例示的なフローチャート動作を示す図である。
【
図3】
図1のシステムのディスプレイ上の検出器ピクセルの識別情報を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
既存のデジタルPET撮像デバイス保守点検では、検出器ピクセルの正規化較正は頻繁には実行されず、例えば、主要な保守点検後に実行されるか、又は較正間に長い(例えば、数か月の)間隔を伴うスケジュールで実行される。正規化は、標準的な均一ファントムからデータを取得することを伴う。正規化較正中に、最小閾値より低い感度を有する任意のピクセル(「コールド」ピクセル)がデッドと分類され、同様に、最大閾値より高い感度を有する任意のピクセル(「ホット」ピクセル)もデッドピクセルと分類される。その論理的根拠は、コールドピクセルは大抵の場合に数多くの計数を見逃しており、一方、ホットピクセルは数多くの誤った計数を生じさせているためである。デッドピクセルと分類されるピクセルを用いて取得された計数は無視され、欠けているピクセルを考慮に入れるために、反復画像再構成において使用される感度行列が調整される。
【0024】
さらに、毎日の品質管理(QC)手順は通常、標準的な点線源ファントム、例えば、22Na点線源を用いて実行される。QCは、エネルギー分解能、検出器均一性などの種々の検出器ピクセルパラメータを検査し、デッドピクセルも検出する。QC手順から生成される情報は、任意のスキャナ設定を調整するために使用されるのではなく、スキャナが許容可能な包絡線内で動作していることを検証するためにのみ使用される。例えば、QCがあまりにも多くのデッドピクセルを検出する場合には、この結果、保守点検が依頼される場合がある。
【0025】
本明細書において開示される実施形態は、有利には、検出器ピクセルの日々の安定度を評価するために、既存のQC手順を利用する。いくつかの考えられる実施態様において、この付加的なQC情報は情報を提供し、すなわち、感度閾値に基づいて、又は不安定度に基づいてデッドピクセルが検出され、あまりにも多くのデッドピクセルが存在する場合には、これが、保守点検依頼又は新たな正規化較正をトリガすることができる。
【0026】
本明細書において開示される他の実施形態では、QCデータから取得された情報を用いて、不安定な検出器ピクセルをデッドと分類することができ、及び/又は現時点でデッドと分類されたピクセルをライブピクセルであると再分類することができる。1つの例示的なプロセスにおいて、分類することは、(1)その感度が下限/上限閾値内にある場合であっても、任意の不安定なピクセルをデッドと分類すること、(2)その感度が閾値より高い任意のピクセルをデッドと分類すること、及び(3)その感度が閾値より低い任意の安定したピクセルをライブと分類することを含む。
【0027】
別の開示される態様では、新たに識別されたデッドピクセルの影響をシミュレートして、これらのデッドピクセルの実際の臨床的影響をユーザに通知することができる。このシミュレーションは簡単に行うことができる。既存のファントム又は臨床画像が元のデータセットと比較され、新たに識別されたデッドピクセルが除去される(そして、画像再構成において使用される感度行列が適切に調整される)のに起因して、元のデータセットの再構成が任意の計数で繰り返される。デッドピクセルの既存の集団をシミュレートすることに加えて、デッドピクセル計数が臨床的観点から問題になる時点をユーザに通知するために、更なるデッドピクセルの予測に関するシミュレーションが行われることも考えられる。これが、実際の臨床画像に関して行われる場合には、その効果は、病院において実際に実行されるタイプの臨床撮像に及ぼすデッドピクセルの影響に関する実世界の予測を臨床医に提供することである。
【0028】
場合によっては、取得されたデータを性能マップに保存することができる。例えば、毎日のQCデータ収集において、同時計数を用いて、ピクセル性能マップを取得することができる。既存のPETシステムの場合、実際のデッドピクセルの反対側にある正常な結晶の幾何学的応答変動及び陰影を回避するために、代替的には、各ピクセルの単線源(すなわち、単一の511keVガンマ線)を用いて、ピクセル性能マップを取得することができる。ピクセル性能マップは毎日取得されるので、ピクセル性能の解析も毎日実行される。データ処理においてそのようなマップを適用することにより、取得されたデータの信頼性に関する保証を日々与えることができる。このようにして、1日のうちの変化を検出できず、対処できない場合であっても、リスクが最小限に抑えられる。この日々のプロセスは、毎日のピクセル感度の正規化較正手順を不要にし、それにより、毎日の運用に関する時間及び費用(例えば、ファントム、線源など)が著しく削減される。
【0029】
既存のPETシステムによって実施される通常の画像再構成プロセスは、検出器の正規化結果を用いて、ピクセル性能変動に暗に対処する。しかしながら、均一ファントムを放射能で満たし、スキャン及び解析を実行する必要があることに起因して、正規化は時間を要するプロセスであるので、毎日は実行されない。本明細書において開示される方法及びシステムでは、一連の正規化間で生じるピクセル性能変動が日々検出され、結果として生じる性能マップを画像再構成において適用することにより、データ忠実度を改善し、データ劣化のリスクを最小限に抑えることができる。これらのプロセスにおいて、性能が変動する(すなわち、不安定な)ピクセルはデータ処理から除外される。経時的に安定していることがわかる個々のピクセル感度のあらゆる調整が、反復再構成アルゴリズム、又は再構成におけるシステム応答をモデル化する/含む他のアルゴリズムの投影/逆投影モデルに含まれる。
【0030】
いくつかの実施形態において、システム性能、画像品質及び定量化に関するピクセル性能変動を評価するためのQCツールが提供される。QCツールは、ワークステーションシステム上で測定されたピクセル性能マップをロードし、そのマップを用いて、システム性能、画像品質及び定量化に関する通常の解析を実行することを提供する。また、QCツールは、デジタルPETのための異なるピクセル性能変動による影響のシナリオをシミュレートするために、ピクセル性能マップを手作業で変更することも提供する。QCツールは、計数性能、解像度、コントラスト、雑音、均一性、SUVなどを含む、システム性能、画像品質及び定量化の解析のために、シミュレートされたデータ、又はシステム上で取得されたデータを使用することができる。QCツールは、ユーザが複数の要件に対してシステム性能を評価するための定性的及び定量的結果を与え、何らかの大きいピクセル性能変動が検出されるときに、そのシステムが依然として使用するのに適しているかをユーザが理解するのを助ける。
【0031】
デジタルPETを参照しながら説明されるが、以下の手法は、検出器ピクセルを有する検出器を利用する任意のタイプの撮像法、例えば、デジタルPET、透過型コンピュータ断層撮影(CT)、デジタル単光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)、又はデジタルX線撮影(DR)(すなわち、平坦なピクセル構成デジタルx線検出器を備えるフラットパネルx線)に適用可能である。
【0032】
図1を参照すると、例示的な医療用撮像システム10が示される。
図1に示されるように、システム10は、画像取得デバイス12を含む。一例において、画像取得デバイス12は、放出撮像デバイス(例えば、ポジトロン放出断層撮影(PET)デバイス、単光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)において使用するためのガンマカメラなど)を備えることができる。しかしながら、任意の他の適切な撮像モダリティ(例えば、透過型コンピュータ断層撮影(CT)、X線など、及びPET/CTのようなハイブリッドシステム)が使用されてもよいことは理解されよう。画像取得デバイス12は、検査領域17に配置される患者から撮像データを収集するように配置される複数の検出器ピクセル16(
図1に差込
図Aとして示される)を有するピクセル構成検出器14を含む。画像取得デバイス12のモダリティに応じて、ピクセル構成検出器14は、PETデバイスの検出器リング(例えば、PET検出器リング全体、又は検出器タイル、検出器モジュールのようなその一部など)、CTデバイスの検出器アレイ、SPECTを実行するように構成されるガンマカメラの検出器、及びX線機器のようなデジタルx線撮影デバイスのデジタル検出器アレイとすることができる。
【0033】
また、システム10は、少なくとも1つの電子プロセッサ20、少なくとも1つのユーザ入力デバイス(例えば、マウス、キーボード、トラックボールなど)22及び表示デバイス24のような通常の構成要素を備える、コンピュータ若しくはワークステーション又は他の電子データ処理デバイス18を含む。いくつかの実施形態において、表示デバイス24は、コンピュータ18とは別の構成要素とすることができる。また、ワークステーション18は、1つ以上のデータベース26(RAM若しくはROM、磁気ディスクなどの非一時的記憶媒体内に記憶される)を含むことができ、及び/又はワークステーションは1つ以上のデータベース27(例えば、電子医療記録(EMR)データベース、画像保存通信システム(PACS)データベースなど)と電子通信することができる。本明細書において説明されるように、データベース27はPACSデータベースである。
【0034】
少なくとも1つの電子プロセッサ20は非一時的記憶媒体(図示せず)と動作可能に接続され、非一時的記憶媒体は、品質管理(QC)方法又はプロセス100を実行することを含む、開示される動作を実行する少なくとも1つの電子プロセッサ20によって読み出し可能及び実行可能である命令を記憶する。非一時的記憶媒体は、例えば、ハードディスクドライブ、RAID若しくは他の磁気記憶媒体、ソリッドステートドライブ、フラッシュドライブ、電子的消去可能読み出し専用メモリ(EEROM:electronically erasable read-only memory)若しくは他の電子メモリ、光ディスク若しくは他の光学記憶装置、又はその種々の組み合わせなどを備えることができる。いくつかの例において、QC方法又はプロセス100は、クラウド処理によって実行される。QC方法又はプロセス100は、検出器正規化プロセスと比べて、相対的に頻繁に実行される。例えば、いくつかの実施形態において、QC方法又はプロセス100は、毎日、例えば、撮像デバイスの起動中に毎朝、実行される。QCプロセス100を実行した後に、その後、撮像デバイスを用いて患者の臨床撮像が実行され、各患者は撮像するために順次に、検査領域17に送り込まれ、終了後に検査領域から出され、次の臨床患者が収容される。
【0035】
図2を参照すると、QC方法100の例示的な実施形態がフローチャートとして図式的に示される。そのプロセスを開始するために、標準的な点線源ファントムが、検査領域17に、好ましくは撮像領域17のアイソセンタに送り込まれる。PET較正の場合、通常の標準的な点線源ファントムはNEMA規格
22Na点線源である。102において、少なくとも1つの電子プロセッサ20が、ピクセル構成検出器14によって点線源から取得される現在の品質管理(QC)データセットを受信するようにプログラムされる。また、QC方法100は、より早期の時点、例えば、過去数日間にピクセル構成検出器によって取得された1つ以上の先行するQCデータセットにもアクセスできる。先行するQCデータセットは、例えば、データベース26内に記憶することができる。点線源から取得されたQCデータ(例えば、同時データ又は単線源(シングルス)データ)は、検出器ピクセル16の個々の性能を示し、毎日収集することができる。点線源が、例えば、Bqにおいて測定される、標準的な放射線を有するとき、検出器ピクセルが同一の感度を有すると仮定すると、点線源から検出器ピクセルまでの距離を考慮した後に、全ての検出器によって取得される計数は概ね同じになるはずである。例えば、マルチリングPET検出器では、画像取得デバイス12のアイソセンタに点線源があると、異なるピクセル構成検出器14では、検出器ピクセル16への距離が異なることになり、系統的な感度差につながる。同時に、視野の中心及び線源場所に関して通常のPET検出器リング内に数多くの幾何学的対称性が存在するので、同等に位置決めされる検出器ピクセルは、類似の感度を有することが予想される。したがって、現在のQCデータセットにおける計数差は、異なるピクセル感度を示す。検出器ピクセル性能についての他の情報も判断することができる。検出器ピクセル16の性能データは、感度、エネルギー分解能、飛行時間(ToF)シフト(すなわち、検出器時間遅延)などのうちの1つ以上を含むことができる。言及された
22Na点線源の代わりに、いくつかの実施形態では、ライン放射線源を備える基準線源から、ピクセル構成検出器14によって現在のQCデータ及び先行するQCデータセットが取得される。ライン線源は、マルチリングPET検出器のためのより均一な照射を与えることができる。受信されると、取得されたQCデータ(現在及び先行の両方)をデータベース26内に保存することができる。
【0036】
104において、少なくとも1つの電子プロセッサ20が、現在のQCデータセット及び1つ以上の先行するQCデータセットから、ピクセル構成検出器14の検出器ピクセル16の感度レベル及び安定度レベルを判断するようにプログラムされる。そのために、検出器ピクセルによって取得される実際の計数と、予想される計数(点線源又はライン線源の放射能、及び/又は全ての検出器の平均計数に基づいて予想される)との比に基づいて、QCデータセット(例えば、現在のQCデータセット及び各先行するQCデータセット)ごとに検出器ピクセル16の感度レベルが判断される。プロセッサ20は、検出器ピクセル16の判断された感度レベルが感度閾値範囲から外れているか否かを判断する。「ホット」ピクセルは、上限閾値より高い感度を有すると定義することができ、一方、「コールド」ピクセルは、下限閾値より低い感度を有すると定義することができる。下限閾値と上限閾値との間の感度を有するピクセルは、正常なピクセルであると見なされる。
【0037】
検出器ピクセル安定度は、現在のQCデータセット及び先行するQCデータセットにおける検出器ピクセルの感度の経時的変化として判断される。QCデータセットは通常、毎日取得されるので、「1日ごとの」時間間隔で、安定度、すなわち、時間の関数としての感度を判断するのは簡単である。不安定な検出器ピクセルは、その経時的な感度変動が許容できないほど大きいピクセルである。例えば、時間の関数として大きい感度変動を有する検出器ピクセル16が識別される(例えば、ある日に、その感度が平均の10%であり、別の日に、平均の60%であるなど)。現在のQCデータセットから判断されるような感度が下限閾値と上限閾値との間にあるという意味において、ある検出器ピクセルを「正常」と分類することができるが、それでも、その感度が、過去のQCデータセット及び現在のQCデータセットから判断されるように日々著しく変動する場合には(この日々の変動が下限閾値及び上限閾値内にとどまっている場合でも)、「不安定」と分類されることに留意されたい。
【0038】
106において、少なくとも1つの電子プロセッサ20が、検出器ピクセルに関して判断された感度レベルが感度閾値範囲から外れている(例えば、平均感度の20%より低い下限を有し、平均感度の140%より高い上限を有する)ときに、ピクセル構成検出器14の検出器ピクセル16のうちの少なくとも1つを「デッド」と分類するようにプログラムされ、残りの検出器ピクセルは「ライブ」と分類される。例えば、「ホット」検出器ピクセル16は、判断された感度レベルが感度閾値範囲の最大感度閾値より高いときに、「デッド」と分類される。「コールド」検出器ピクセル16は、判断された感度レベルが感度閾値範囲の最小感度閾値より低いときに、「デッド」と分類される。更なる例では、以前にデッドと分類された1つ以上の検出器ピクセル16は、以前にデッドと分類された1つ以上の検出器ピクセルの検出された安定度レベルが安定度閾値範囲内にあるとき、ライブと再分類することができる。
【0039】
さらに、動作106において、少なくとも1つの電子プロセッサ20が、検出器ピクセルに関して判断された安定度レベルが安定度閾値範囲から外れているときに、ピクセル構成検出器14の検出器ピクセル16の少なくとも1つを「デッド」と分類するようにプログラムされる。例えば、安定度閾値範囲は、非限定的な例として、過去5日にわたって、20%以下の感度変化とすることができる。この例を用いるとき、検出器ピクセルが、(当日を含む)過去5日にわたって、70%、65%、60%、62%、72%の感度を測定した場合には、このピクセルは、20%安定度閾値範囲を満たすと見なされる。それに対して、(当日を含む)過去5日にわたって、52%、70%、75%、79%、71%の感度を測定した検出器ピクセルは、その感度が52%~79%の範囲であった(その範囲は27%であり、20%安定度閾値範囲より大きい)ので、不安定であると見なされる。このピクセルは、測定された感度が全て感度閾値範囲(20%~140%)内に十分に入る場合であっても、その不安定度に起因してデッドと分類される。代替的には、いくつかの第2のパスの統計ステップが存在する場合があり、それらのステップは、デッドであると判断される前に行うことができる。例えば、QCデータ内の単一の外れ値を除外することができ、及び/又は第2のパスの評価が、統計的分散を考慮して、使用されるQCデータ点の数を増やすことを含むことができ、それらを組み合わせることなどもできる。
【0040】
先行する例では、ピクセルが感度閾値範囲又は安定度閾値範囲のいずれかを満たせない場合には、デッドと分類される。別の実施形態では、安定度評価を用いて、通常であればデッドと分類されていたいくつかの安定したピクセルを保持する。1つのそのような例では、コールド検出器ピクセル16は、安定度閾値範囲を満たす場合には、ライブと分類され、更なるデータ処理動作に含まれる。それに対して、この例では、ホットピクセルは、安定している場合であっても、デッドと分類される。この手法に関する論理的根拠は、安定しているコールドピクセルが放射線検出事象の有用な計数を依然として与えていることである。それに対して、ホットピクセルは、その高い感度が放射線検出事象に関連しない高い暗計数率に起因する可能性が高いので、信頼性がない。
【0041】
コールドであるが、安定している検出器ピクセルの保持は、特に低計数の撮像の場合に大きい利点を有する。例えば、点線源スキャン、又は非常に小さい焦点を有する患者スキャンに関して、そのようなコールドピクセルからの計数が除外される場合には、そのようなピクセルに関連付けられる計数を推定するために、ピクセル充填手法が行われる。しかしながら、充填が隣接するピクセルの平均又は外挿を使用している場合には、ピクセル充填手法は、データに対して誤差/バイアスを導入する場合がある。これは、ピクセルがクラスタ化され、そのために空間分解能損失も著しい場合に特に当てはまる。対応する性能マップとともに、コールド(であるが安定している)検出器ピクセル16からの計数を使用することにより、データ(空間分解能を含む)の精度を保持することができ、コールドピクセルに関連付けられるわずかに高い雑音レベルを克服することができる。
【0042】
現在のQCデータセット及び先行するQCデータセットに関して行われる104、106における検出器ピクセル評価の出力は、次に説明されるように、様々に使用されることができる。
【0043】
108において、1つの適用例では、少なくとも1つの電子プロセッサ20が、デッドと分類された検出器ピクセル16の識別情報28を表示するために、表示デバイス22を制御するようにプログラムされる。識別情報を、リスト、検出器マップなどの任意の適切なフォーマットで表示することができる。いくつかの例において、識別情報28は、デッドと分類されたピクセルが塗り潰されたボックスを用いて指示され、ライブピクセルが塗り潰されないボックスを用いて指示される、検出器14のマップを表示することができる。それに加えて、又はその代わりに、デッドピクセルのリストが提供される場合がある。いくつかの実施形態において、マップは、感度閾値範囲から外れていることに起因してデッドと分類されたピクセルと、安定度閾値範囲から外れていることに起因してデッドと分類されたピクセルとを異なるように指示することができる。代替的には、2つの異なる検出器マップ(感度範囲から外れている場合、及び不安定なピクセルの場合)が示される。このタイプの表現は有用な場合があるが、マップ化されたデッドピクセルが実際に臨床画像にいかに影響を及ぼすかを臨床医が理解するのが困難であるという潜在的な不都合がある。デッドピクセルの実際の臨床的影響に関するこの不確定性に起因して、(まだ)不要である時点で、臨床医が修理依頼を出す可能性がある。逆に、臨床医がデッドピクセルの実際の臨床的影響を過小評価する場合には、検出器14を修理依頼するのが好ましいときに、撮像システムが臨床撮像のために使用され続ける場合がある。
【0044】
110において、別の適用例では、実際の臨床画像に及ぼすデッドピクセルの影響が提示される。このため、少なくとも1つの電子プロセッサ20が、臨床画像空間内のデッドピクセルの影響を明示するために、取得された、又はシミュレートされた撮像データをデッドピクセルを用いて、及びデッドピクセルを用いることなく再構成するようにプログラムされる。一例において、プロセッサ20は、例えば、シミュレーションを用いて、ピクセル構成検出器14によって撮像対象者に関して取得されることになる撮像データをシミュレートするようにプログラムされる。2つの画像再構成が実行される。全てのシミュレートされた撮像データ(ここでは、「基準画像」と呼ばれる)を用いて、第1の再構成が実行される。基準画像を、以前に分類されたデッドピクセルを用いて取得されたデータ、以前に分類されたデッドピクセルを省くことによって再構成された画像、条件を満たすと見なされた画像品質及び定量化を含む、先行するQCデータセット内のデータから生成することができる。データを与えない検出器ピクセルとして取り扱われる、デッドと分類された検出器ピクセル16を除く、全てのシミュレートされた撮像データ(ここでは、「現在のQC画像」と呼ばれる)を用いて、第2の再構成が実行される。これらのデッドピクセルによって取得されたものとしてシミュレートされたデータが、更なるデータ処理から除外され、これらの除外されたピクセルに基づいて、再構成プロセスが調整される。結果として生じる現在のQC画像及び基準画像は、臨床医が臨床画像に及ぼすデッドピクセルの影響を視認できるように、ディスプレイ上に並べて提示されるか、又は何らかの他の容易に理解される比較フォーマットにおいて提示される(例えば、ユーザがボタンを押すのに応答して、2つの画像が切り替えられる)。
【0045】
より精通したユーザの場合、上記のシミュレーションは代わりに、点又は線ファントムに関して実行され、シミュレートされたデータが再び現在のQC画像及び基準画像を形成するように再構成される。点又は線ファントムの簡略化された幾何学的形状は、ユーザにとってより有益な比較画像を与えることができ、PET撮像データ取得及び画像再構成プロセスの理解も進む。
【0046】
撮像データのシミュレーションは、一度だけ実行し、ワークステーション18のデータベース26に記憶できることに留意されたい。同様に、全ての撮像データを使用する基準画像再構成は一度だけ行われ、ワークステーション18のデータベース26に記憶される。その後、動作110を実行することは、現在の1組のデッドピクセルを省いて、記憶されたシミュレーションデータを用いて単に現在のQC画像の再構成を実行することを伴う。
【0047】
108、110における1つ又は複数の表現はユーザに受動的に提示される。別の手法では、QCプロセス100は、保守点検勧告を与えるために、これらの結果に関して能動的診断を更に実行することができる。したがって、112において、少なくとも1つの電子プロセッサ20は、デッドと分類された検出器ピクセル16に基づいて、ピクセル構成検出器14の保守点検又は較正が指示されるか否かを判断するようにプログラムされる。例えば、多数の検出器ピクセル16がデッドと分類される場合には、ピクセル構成検出器14は、再較正される必要がある。較正プロセス後に、多数の検出器ピクセル16が依然としてデッドと分類される場合には、保守点検依頼を要求して、ピクセル構成検出器14を取り替えることができる。この場合、表示デバイス20は、ピクセル構成検出器14の保守点検又は較正が指示されるか否かの判断を踏まえて、ピクセル構成検出器14の保守点検の実行勧告、又はピクセル構成検出器14の較正の実行勧告を指示するメッセージを表示する。この作業によって、ユーザは、NEMA調査、患者調査などにおけるシステム計数性能、解像度、画像品質及び定量化を含む、デッド検出器ピクセル16の影響を系統的に評価できるようになる。
【0048】
別の例では、プロセッサ20は、110において生成された再構成済み画像を用いて、勧告作業112を実行するようにプログラムされる。現在のQC画像と基準画像との比較に基づいて、プロセッサ20は、ピクセル構成検出器14の保守点検又は較正が必要とされると指示されるか否かを判断する。この場合、表示デバイス20は、ピクセル構成検出器14の保守点検又は較正が指示されるか否かの判断を踏まえて、ピクセル構成検出器14の保守点検の実行勧告、又はピクセル構成検出器14の較正の実行勧告を指示するメッセージを表示する。
【0049】
図3は、検出器ピクセル16の識別情報28の指示を表示する表示デバイス20の一例を示す。識別情報28は、検出器ピクセル16の異なる分類間の感度対時間の関係を示す。第1の曲線1は、検出器ピクセル16の感度が最大感度閾値より高いことを示す。一実施形態において、高い感度が放射線検出事象に関連しない高い暗計数率に起因する可能性が高いという論理的根拠のもとで、安定度にかかわらず、全てのホットピクセルが「デッド」と分類されるので、このピクセルは「デッド」と分類される。第2の曲線2は、当初の較正問題後に、その性能が許容可能な感度閾値範囲内で安定する検出器ピクセル16を示す。第3の曲線3は、感度閾値範囲内にあるが、その感度が種々の時点において著しく変動する検出器ピクセル16を示す。このようにして、このピクセルが不安定であると判断される場合には、その感度が許容可能な範囲内にある場合であっても、「デッド」と分類される。第4の曲線4は、最小感度閾値限界より低い(すなわち、「コールド」である)が、その性能が安定している検出器ピクセル16を示す。安定しているコールドピクセルが依然として放射線検出事象の有用な計数を与えているという論理的根拠のもとで、この安定している検出器ピクセル16を、再構成作業において使用することもできる。第5の曲線5は、感度が著しく低下している検出器ピクセル16を示す。この検出器ピクセル16はリスクがあると識別され、別の較正プロセス後にも引き続き機能していない可能性がある。このピクセルが、絶えず低下する感度に起因する初期の不安定性を示し、最終的に下限閾値より低下する(「コールド」ピクセルに移行する)のに応じて、最終的に「デッド」と再分類される。この場合、予定された保守点検前に予防的な検査/保守点検に関する警告がトリガされ、それにより、システム信頼性が改善される。修理は、モジュールを取り替えることを含むか、又はクラスタ単位でデッドピクセルが発生している場合には、これらのクラスタを解消し、総合性能を改善するために、検出器タイル又はモジュールを再配置することができる。
【0050】
本開示は、好ましい実施形態を参照しながら説明されてきた。これまでの詳細な説明を読み、理解すると、当業者は変更及び改変を思いつくことができる。そのような変更及び改変が添付の特許請求の範囲又はその均等物内に入る限りにおいて、本発明はそれら全ての変更及び改変を含むものと解釈されることを意図している。