(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】アルミケース
(51)【国際特許分類】
H01M 50/119 20210101AFI20220315BHJP
H01M 50/103 20210101ALI20220315BHJP
H01M 50/121 20210101ALI20220315BHJP
H01M 50/124 20210101ALI20220315BHJP
H01M 50/126 20210101ALI20220315BHJP
H01M 50/133 20210101ALI20220315BHJP
【FI】
H01M50/119
H01M50/103
H01M50/121
H01M50/124
H01M50/126
H01M50/133
(21)【出願番号】P 2020537268
(86)(22)【出願日】2018-03-29
(86)【国際出願番号】 CN2018081033
(87)【国際公開番号】W WO2019095606
(87)【国際公開日】2019-05-23
【審査請求日】2020-03-13
(31)【優先権主張番号】201721543559.4
(32)【優先日】2017-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201721541854.6
(32)【優先日】2017-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201721541853.1
(32)【優先日】2017-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520088764
【氏名又は名称】深▲セン▼市科達利実業股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHENZHEN KEDALI INDUSTRY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Block 1, Zhongjian Electronic Industrial, Huaxing Road, Tongfuyu Industry Dalang, Longhua Shenzhen, Guangdong 518109 CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】励 建炬
【審査官】小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-178994(JP,A)
【文献】特表2015-508564(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103400945(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/119
H01M 50/103
H01M 50/121
H01M 50/124
H01M 50/126
H01M 50/133
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池のアルミケースの製造方法であって、
前記電池は、前記アルミケースの開口に閉止され、前記アルミケースとともに前記電池のケースを形成しているカバーをさらに備え、前記製造方法は、
板本体(11)の少なくとも一面に接着によって絶縁層(12)を被覆して、ここで、前記板本体(11)と前記絶縁層(12)の間には接着層を有することと、
前記絶縁層(12)が被覆された前記板本体(11)をプレス成形して、所定の形状のアルミケースを形成して、ここて、プレス過程において、前記接着層が未硬化であるため、前記絶縁層(12)と前記板本体(11)は相対的に移動することができることと、
前記プレス過程の後に、前記アルミケースにおいて前記絶縁層(12)が前記板本体(11)から脱落しないように、前記接着層が硬化して前記絶縁層(12)と前記板本体(11)とが完全に固定されることと、を含むことを特徴とするアルミケースの製造方法。
【請求項2】
前記アルミケースの内面に前記絶縁層(12)を有することを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記アルミケースの外面に前記絶縁層(12)を有することを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記アルミケースの内面および外面には、いずれも前記絶縁層(12)を有することを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記絶縁層(12)は、プラスチックフィルムであることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記プラスチックフィルムは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、又はポリプロピレン(PP)からなることを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記接着層は、加熱又は冷却により硬化することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記絶縁層(12)の厚さは、0.02mm~0.1mmであることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池の技術分野に関し、例えば、アルミケースに関する。
【背景技術】
【0002】
動力電池では、一般的に、1つの開口を有するボックス状構造であるアルミケースをケース構造のキャリア部材として使用し、アルミケースの開口に閉止されるカバーをケース構造の閉止部材として使用し、電池のケースが形成される。アルミケースは、アルミ板から直接に延伸成形されてもよく、電池が形成された後、アルミケースと、カバーと、正極セルとが接続され、いずれも正に帯電している。使用中に電池内部の短絡を回避するために、負極セルの外に絶縁膜が被覆され、負極セルがアルミケースの内面に接触して短絡することを回避する。しかし、電池の使用に伴い、特に、自動車などの移動キャリアに搭載されている動力電池などの電池は、負極セルがアルミケースの内面と絶えず摩擦する可能性があり、負極セルに被覆されている絶縁膜が破損すると、短絡が発生し、電池の廃棄を招き、さらには他の事故を引き起こす可能性がある。また、アルミ板の加工中に、アルミケースの内面に形成された金属粉塵は、電池内部の短絡を招き、安全事故を起こしやすい。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、成形後に内面および外面の少なくとも一方の表面に絶縁層を有し、金属粉塵を減少させ、電池の安全性を高め、電池の後続生産コストを低減させる、アルミケースを提案している。
【0004】
本発明に係るアルミケースは、アルミ板を備えるアルミケースであって、前記アルミ板は、板本体を含み、前記板本体の少なくとも一面に絶縁層が付着されている。
【0005】
好ましくは、前記アルミケースの内面に前記絶縁層を有する。
【0006】
好ましくは、前記アルミケースの外面に前記絶縁層を有する。
【0007】
好ましくは、前記アルミケースの内面および外面には、いずれも前記絶縁層を有する。
【0008】
好ましくは、前記絶縁層は、プラスチックフィルムである。
【0009】
好ましくは、前記プラスチックフィルムは、ポリエチレンテレフタレートPET、又はポリプロピレンPPからなる。
【0010】
好ましくは、前記アルミケースは、前記アルミ板からプレス成形加工により成形される。
【0011】
好ましくは、前記絶縁層は、スプレーによって前記板本体の表面に付着する。
【0012】
好ましくは、前記絶縁層は、熱プレスによって前記板本体の表面に付着する。
【0013】
好ましくは、前記絶縁層は、接着によって前記板本体の表面に付着する。
【0014】
好ましくは、前記アルミ板には、前記アルミ板がプレス延伸されている時に前記絶縁層と前記板本体とが相対的に移動可能になるように、前記絶縁層と前記板本体とが完全に固定されていない。
【0015】
好ましくは、アルミケースが延伸成形された後、絶縁層および板本体が脱落しないように、絶縁層および板本体が硬化する。
【0016】
好ましくは、前記絶縁層の厚さは、0.02mm~0.1mmである。
【0017】
本発明に係るアルミケースは、絶縁層を有するアルミ板を利用してアルミケースを製作することで、製作中に、アルミ板が加工されている間で金属粉塵の発生を減少させることができるとともに、絶縁層上の金属粉塵を洗浄しやすく、金属粉塵による電池内部の短絡のリスクを低減させ、アルミケースの外面の金属粉塵が他の部品に落下して安全上の問題を引き起こすことを回避することもできる。また、アルミケースの内面に絶縁層を有するため、使用中に、負極セル自体に被覆されている絶縁膜が破れても、負極セルがアルミケースの板本体に直接接触して導電することはなく、短絡を回避し、電池の安全係数を高める。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】一実施例に係るアルミ板の構造模式図である。
【
図2】一実施例に係るアルミケースの構造模式図である。
【
図3】他の実施例に係るアルミ板の構造模式図である。
【
図4】他の実施例に係るアルミケースの構造模式図である。
【
図5】他の実施例に係るアルミ板の構造模式図である。
【
図6】他の実施例に係るアルミケースの構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の技術案について、具体的な実施形態および図面を参照して説明する。
【0020】
本実施例の説明では、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「垂直」、「水平」、「頂」、「底」、「内」、「外」などの用語が指示する方位や位置関係は、図面に基づいて示した方位や位置関係であり、単に本実施例の説明しやすいようにためのものであり、デバイスやエレメントが特定の方位を有し、特定の方位で構成され、動作しなければならないことを指示したり暗示したりするのではなく、本実施例を限定するものと理解してはならない。
【0021】
図2に示すように、表面に絶縁層を有するアルミケースを提供し、アルミケースが成形された後、内面および外面にはいずれも絶縁層12を有する。このアルミケースは、
図1に示すように、板本体11を備えるアルミ板1からなり、成形されたアルミケースの内面および外面にはいずれも絶縁層12を有するように、板本体11の両面に絶縁層12が付着されている。好ましくは、アルミケースは、アルミ板1からプレス成形され、例えば、プレス延伸により成形されてもよく、製造が容易である。絶縁層12の厚さは、0.02mm~0.1mmとし、絶縁性能および全体寸法を両立することができる。
【0022】
本実施例では、絶縁層12を有するアルミ板1を利用してアルミケースを製作することで、製作中に、アルミ板1が加工されている間で金属粉塵の発生を減少させることができ、絶縁層12上の金属粉塵を洗浄しやすく、金属粉塵による電池内部の短絡のリスクを低減させ、アルミケースの外面の金属粉塵が他の部品に落下して安全上の問題を引き起こすことを回避することもできる。また、アルミケースの内面自体が絶縁層12を有するため、使用中に、負極セル自体に被覆されている絶縁膜が破れても、負極セルがアルミケースの板本体11に直接接触して導電することはなく、短絡を回避し、電池の安全係数を高める。アルミケースの内面に絶縁層を有すると、負極セルの外に絶縁膜を被覆しなくてもよく、後続の電池製造のコストを節約し、後続の電池製造の工程を簡素化できる。また、内面に絶縁層を有すると、電解液によるアルミケースの内面の腐食を回避することもできる。絶縁層12を有するアルミ板を採用することで、アルミケースが製作された後、アルミケースの外面に絶縁層12を有し、アルミケースやカバーなどで電池を組み立てた後、電池の外部に別途被膜を行う必要がなく、後続の電池の取り付け工程が簡素化されるとともに、後続の電池に別途被膜を行うコストが節約される。
【0023】
図4に示すように、本実施例は、内面に絶縁層を有するアルミケースを提供し、アルミケースが成形された後、内面に絶縁層12を有する。このアルミケースは、
図3に示すような板本体11を備えるアルミ板1からなり、成形されたアルミケースの内面に絶縁層12を有するように、板本体11におけるアルミケースの内面に対応する面には、絶縁層12が付着されている。好ましくは、アルミケースは、アルミ板1からプレス成形され、例えば、プレス延伸により成形されてもよく、製造が容易である。絶縁層12の厚さは、0.02mm~0.1mmとし、絶縁性能および全体寸法を両立することができる。
【0024】
本実施例では、絶縁層12を有するアルミ板1を利用してアルミケースを製作することで、製作中に、絶縁層12が位置する面が加工されている間で金属粉塵が発生することはなく、金属粉塵を減らすだけでなく、アルミケースの内面における金属粉塵も洗浄しやすく、金属粉塵による電池内部の短絡のリスクを低減させる。また、アルミケースの内面に絶縁層12を有するため、使用中に、負極セル自体に被覆されている絶縁膜が破れても、負極セルがアルミケースの板本体11に直接接触して導電することはなく、短絡を回避し、電池の安全係数を高める。アルミケースの内面に絶縁層を有する場合、負極セルの外に絶縁膜を被覆しなくてもよく、後続の電池製造のコストを節約し、後続の電池製造の工程を簡素化できる。また、内面に絶縁層を有することで、電解液によるアルミケースの内面の腐食を回避することもできる。
【0025】
図6に示すように、本実施例は、外面に絶縁層を有するアルミケースを提供し、アルミケースが成形された後、外面に絶縁層12を有し、別途被膜を行う必要がない。このアルミケースは、
図5に示すような板本体11を備えるアルミ板1からなり、成形されたアルミケースの外面に絶縁層12を有するように、板本体11におけるアルミケースの外面に対応する面に絶縁層12が付着されている。好ましくは、アルミケースは、アルミ板1からプレス成形され、例えば、プレス延伸により成形されてもよく、製造が容易である。絶縁層12の厚さは、0.02mm~0.1mmとし、絶縁性能および全体寸法を両立することができる。
【0026】
本実施例では、絶縁層12を有するアルミ板1を利用してアルミケースを製作することで、絶縁層12が位置する面が加工されている間で金属粉塵が発生することはなく、絶縁層12の表面における金属粉塵を洗浄しやすく、アルミケースの外面の金属粉塵が他の部品に落下して安全上の問題を引き起こすことも回避する。絶縁層12を有するアルミ板を採用することで、アルミケースが作成された後、アルミケースの外面に絶縁層12を有し、アルミケースやカバーなどで電池を組み立てた後、電池の外部に別途被膜を行う必要がなく、後続の電池の取り付け工程が簡素化されるとともに、後続の電池に別途被膜を行うコストが節約される。
【0027】
本実施例では、絶縁層12をプラスチックフィルムとしてもよく、良好な絶縁性能を提供するように、高い絶縁性を持つプラスチックフィルムを採用してもよい。好ましくは、プラスチックフィルムは、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate、PET)、又はポリプロピレン(polypropylene、PP)などの材料からなっていてもよいし、他の良好な絶縁性能を持つ材料からなっていてもよい。
【0028】
絶縁層12は、板本体11の表面にスプレー、熱プレス、又は接着などの様々な方式で付着されることができ、良好に付着できればよい。しかし、アルミ板1において、絶縁層12と板本体11とが完全に固定されていなく、絶縁層12と板本体11とが完全に固定されると、アルミ板1がプレス延伸される時に両者の伸びが異なるため、絶縁層12が破れて機能しなくなってしまう恐れがある。したがって、本実施例では、絶縁層12と板本体11とが完全に固定されていなく、プレス成形の時に絶縁層12と板本体11とが相対的に移動可能になるように、ある程度の相対移動量を有するので、絶縁層12が完全に保持され、絶縁層12が破れることを回避することができる。
【0029】
アルミケースが延伸成形された後、絶縁層12および板本体11は硬化処理が必要であり、硬化方式は様々で、例えば、接着層を加熱したり冷却したりすることで、アルミケースにおいて絶縁層12および板本体11が脱落しないように、接着層が硬化した後に絶縁層12と板本体11とが完全に固定される。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明に係るアルミケースは、絶縁層を有するアルミ板を利用してアルミケースを製作することで、製作中に、アルミ板が加工されている間で金属粉塵の発生を減少させることができるとともに、絶縁層上の金属粉塵を洗浄しやすく、金属粉塵による電池内部の短絡のリスクを低減させ、アルミケースの外面の金属粉塵が他の部品に落下して安全上の問題を引き起こすことを回避することもできる。また、アルミケースの内面に絶縁層を有するため、使用中に、負極セル自体に被覆されている絶縁膜が破れても、負極セルがアルミケースの板本体に直接接触して導電することはなく、短絡を回避し、電池の安全係数を高める。
【符号の説明】
【0031】
1 アルミ板
11 板本体
12 絶縁層