(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】遠心分離用ピストン
(51)【国際特許分類】
B04B 5/02 20060101AFI20220315BHJP
【FI】
B04B5/02 C
B04B5/02 A
(21)【出願番号】P 2020541649
(86)(22)【出願日】2019-01-23
(86)【国際出願番号】 KR2019000957
(87)【国際公開番号】W WO2019151705
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2020-08-07
(31)【優先権主張番号】10-2018-0011502
(32)【優先日】2018-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520056349
【氏名又は名称】イ ジュン ソク
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】イ ジュンソク
【審査官】瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-189407(JP,A)
【文献】国際公開第92/022478(WO,A1)
【文献】特開2000-199760(JP,A)
【文献】特開昭54-015569(JP,A)
【文献】特開2001-224982(JP,A)
【文献】特表2011-528620(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B04B 1/00-15/12
A61B 5/06-5/22
G01N 1/00-1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
外力が作用することにより、前記本体の内部で前記本体の前方と後方に移動可能な弁と、
前記本体の前方から前記本体の後方に流体が流動する流路を備え、かつ前記本体の内部で前記弁の移動を案内する弁支持体と、
を含み、
前記弁に外力が作用する場合、前記弁が前記本体の前方に移動し、前記流路が開放され、前記弁に外力が作用していない場合、前記弁が前記本体の後方に移動し、前記流路が遮断される遠心分離用ピストン。
【請求項2】
前記本体の内側端部と前記弁との間に位置し、前記弁を弾性的に支持する弾性部材をさらに含み、
前記弁に外力が作用する場合、前記弾性部材が圧縮され、前記弁に外力が作用していない場合、前記弾性部材
が伸長される、請求項1に記載の遠心分離用ピストン。
【請求項3】
前記弁の重量は、前記外力の大きさ、前記弾性部材が前記弁に作用する弾性力、及び前記弁と前記弁支持体との間の摩擦力に応じて設定される、請求項2に記載の遠心分離用ピストン。
【請求項4】
前記弁支持体は、前記本体と同軸に整列されたガイド部と、前記ガイド部の一方の端部に形成された流入口と、前記ガイド部の側部に形成された流出口とを含み、前記流路は、前記ガイド部に沿って前記流入口から前記流出口につながる、請求項1に記載の遠心分離用ピストン。
【請求項5】
前記遠心分離用ピストンは、前記弁と前記弁支持体との間に配置される第1内部シール部材及び第2内部シール部材をさらに含み、前記流路が遮断されている間、前記第1内部シール部材は、前記流出口を基準として前記ガイド部の一方の部分に位置し、前記第2内部シール部材は、前記流出口を基準として前記ガイド部の他方の部分に位置する、請求項4に記載の遠心分離用ピストン。
【請求項6】
中心軸を有する本体と、
前記中心軸と同じ軸を有し、前記中心軸に沿って前記本体の前方と後方に移動する弁と、
前記本体の前方から前記本体の後方に流体が流動する流路を備える弁支持体であり、前記流路が前記弁の移動により開放または閉鎖される弁支持体と、
前記本体の前方に向かう前記弁の移動、または、前記本体の後方に向かう前記弁の移動を選択的に制限して前記流路を選択的に遮断する弁移動制限機構と、を含む、遠心分離用ピストン。
【請求項7】
前記弁移動制限機構は、
本体の内面に形成され、前記中心軸に沿って長手方向に延びるタング部と、
前記中心軸の軸方向に沿って弁の外面に形成され、前記タング部を収容するように構成されたグルーブと、を含む、請求項6に記載の遠心分離用ピストン。
【請求項8】
前記弁移動制限機構は、
前記弁の後方の表面に形成された凹部と、
前記弁支持体に形成された突出部と、
をさらに含み、
前記凹部と前記突出部は互いにスナップされる、請求項7に記載の遠心分離用ピストン。
【請求項9】
中心軸を有する本体と、
前記中心軸と同じ軸を有し、前記本体の内部で前記本体の前方と後方に移動する弁と、
前記弁を前記本体に選択的に固定して
流路を選択的に開放または遮断するロック機構と、を含む、遠心分離用ピストン。
【請求項10】
前記ロック機構は、
前記本体の中心に向かって突出するように前記本体の内面に形成された噛合要素と、
前記弁の軸方向に沿って前記弁の外面に形成された第1グルーブと、
前記弁の円周方向に沿って前記弁の外面に形成され、前記第1グルーブと交差する第2グルーブと、をさらに含み、
前記噛合要素は、前記第1グルーブに沿って移動し、前記第2グルーブに位置して前記第2グルーブに噛合し、請求項9に記載の遠心分離用ピストン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下、実施形態は、遠心分離用ピストンに関する。
【背景技術】
【0002】
吸収(absorption)または切開(incision)などにより得られた生体組織(biological tissue)には、大量の脂質及び血液、体液などが含まれているので、一般に、生体組織を遠心分離(centrifugation)して使用している。しかし、生体組織の大きさは非常に小さいため、従来の方法で生体組織を遠心分離することが不可能であるか、遠心分離が可能であるとしても、遠心分離中に生体組織が空気中に露出してしまうため、汚染の危険性があるか、生体組織から体液や脂質などを取り除くのが困難な場合がある。そこで、生体組織(例えば、脂肪組織)を遠心分離することにより、脂肪組織から不純物を取り除いた純粋な脂肪組織を得るための構造物が開発されている。例えば、韓国公開特許第10-2014-0040050号公報には、デュアルサイズの脂肪吸引装置が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の一実施形態に係る目的は、外力の作用の有無によって流路を開放または遮断することにより、生体組織と体液などの混合物から、特定の比重と特定の大きさを有する生体組織や体液などを容易に分離する遠心分離用ピストンを提供することである。
【0004】
本発明の一実施形態に係る他の目的は、ピストンに外力が加わっても、ピストンの前方から後方につながる流路を遮断する遠心分離用ピストンを提供することである。
【0005】
本発明の一実施形態に係るさらに他の目的は、遠心分離工程においてピストンに外力が加わっても、ピストンの前方から後方につながる流路を開放する遠心分離用ピストンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る遠心分離用ピストンは、本体と、外力が作用することにより前記本体の内部で前記本体の前方と後方に移動可能な弁と、前記本体の前方から前記本体の後方に流体が流動する流路を備え前記弁の移動を案内する弁支持体と、を含み、前記弁に外力が作用する場合、前記弁が前記本体の前方に移動し、前記流路が開放され、前記弁に外力が作用していない場合、前記弁が前記本体の後方に移動し、前記流路が遮断されてもよい。
【0007】
前記遠心分離用ピストンは、前記本体の内側端部と前記弁との間に位置し、前記弁を弾性的に支持する弾性部材をさらに含み、前記弁に外力が作用する場合、前記弾性部材が圧縮され、前記弁に外力が作用していない場合、前記弾性部材が伸長されてもよい。
前記弁の重量は、前記外力の大きさ、前記弾性部材が前記弁に作用する弾性力、及び前記弁と前記弁支持体との間の摩擦力に応じて設定されてもよい。
【0008】
前記弁支持体は、前記本体と同軸に整列されたガイド部と、前記ガイド部の一方の端部に形成された流入口と、前記ガイド部の側部に形成された流出口とを含み、前記流路は、前記ガイド部に沿って前記流入口から前記流出口につながってもよい。
【0009】
前記遠心分離用ピストンは、前記弁と前記弁支持体との間に配置される第1内部シール部材及び第2内部シール部材をさらに含み、前記流路が遮断されている間、前記第1内部シール部材は、前記流出口を基準として前記ガイド部の一方の部分に位置し、前記第2内部シール部材は、前記流出口を基準として前記ガイド部の他方の部分に位置してもよい。
【0010】
本発明の一実施形態に係る遠心分離用ピストンは、中心軸を有する本体と、前記中心軸と同じ軸を有し、前記中心軸に沿って前記本体の前方と後方に移動する弁と、前記本体の前方から前記本体の後方に流体が流動する流路を備える弁支持体であり、前記流路が前記弁の移動により開放または閉鎖される弁支持体と、前記本体の前方に向かう前記弁の移動、または、前記本体の後方に向かう前記弁の移動を選択的に制限して前記流路を選択的に遮断する弁移動制限機構と、を含んでもよい。
【0011】
前記弁移動制限機構は、本体の内面に形成され、前記中心軸に沿って長手方向に延びるタング部と、前記中心軸の軸方向に沿って弁の外面に形成され、前記タング部を収容するように構成されたグルーブと、を含んでもよい。
【0012】
前記弁移動制限機構は、前記弁の後方の表面に形成された凹部と、前記弁支持体に形成された突出部と、をさらに含み、前記凹部と前記突出部は、互いにスナップされてもよい。
【0013】
本発明の一実施形態に係る遠心分離用ピストンは、中心軸を有する本体と、前記中心軸と同じ軸を有し、前記本体の内部で前記本体の前方と後方に移動する弁と、前記弁を前記本体に選択的に固定して前記流路を選択的に開放または遮断するロック機構と、を含んでもよい。
【0014】
前記ロック機構は、前記本体の中心に向かって突出するように前記本体の内面に形成された噛合要素と、前記弁の軸方向に沿って前記弁の外面に形成された第1グルーブと、前記弁の円周方向に沿って前記弁の外面に形成され、前記第1グルーブと交差する第2グルーブと、をさらに含み、前記噛合要素は、前記第1グルーブに沿って移動し、前記第2グルーブに位置して前記第2グルーブに噛合してもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一実施形態に係る遠心分離用ピストンは、外力の作用の有無によって流路を開放または遮断することにより、生体組織と体液などの混合物から、特定の比重と特定の大きさを有する生体組織と体液などを容易に分離することができる。
本発明の一実施形態に係る遠心分離用ピストンは、ピストンに外力が加わっても、ピストンの前方から後方につながる流路を遮断することができる。
【0016】
本発明の一実施形態に係る遠心分離用ピストンは、遠心分離工程においてピストンに外力が加わっても、ピストンの前方から後方につながる流路を開放することができる。
【0017】
本発明の一実施形態に係る遠心分離用ピストンの効果は、以上で言及したものに限定されず、言及されていない他の効果は、以下の記載から通常の技術者に明確に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1実施形態に係る遠心分離用ピストンを概略的に示す斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係る遠心分離用ピストンの構成要素を概略的に示す分解斜視図である。
【
図3】第1実施形態に係る遠心分離用ピストンの構成要素を概略的に示す分解側面図である。
【
図4】第1実施形態に係る遠心分離用ピストンの断面と固定部材を概略的に示す図である。
【
図5】第1実施形態に係る遠心分離用ピストンに外力が作用していない場合のピストンの動作様子を示す断面図である。
【
図6】第1実施形態に係る遠心分離用ピストンに外力が作用する場合のピストンの動作様子を示す断面図である。
【
図7】生体組織の中で脂肪組織を遠心分離した例であり、第1実施形態に係る遠心分離用ピストンが容器内部に挿入されて遠心分離が完了した後の状態を示す断面図である。
【
図8】第2実施形態に係る遠心分離用ピストンを概略的に示す分解斜視図である。
【
図9】第2実施形態に係る遠心分離用ピストンの本体内部を概略的に示す斜視図である。
【
図10】第2実施形態に係る遠心分離用ピストンの弁がタング部に支持されていない状態を示す第1状態図である。
【
図11】第2実施形態に係る遠心分離用ピストンの弁がタング部に支持されていない状態で外力が作用する状態を示すピストンの断面図である。
【
図12】第2実施形態に係る遠心分離用ピストンの弁がタング部に支持された状態を示す第2状態図である。
【
図13】第2実施形態に係る遠心分離用ピストンの弁がタング部に支持された状態を示すピストンの断面図である。
【
図14】第3実施形態に係る遠心分離用ピストンを概略的に示す分解斜視図である。
【
図15】第3実施形態に係る遠心分離用ピストンの弁が本体に固定されていない状態を示すピストンの断面図である。
【
図16】第3実施形態に係る遠心分離用ピストンの弁が本体に固定された状態を示すピストンの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を例示的な図面に基づいて詳細に説明する。各図面の構成要素に参照符号を付加するにあたり、同一の構成要素に対して、たとえ他の図面上に表示されていても、可能な限り同一の符号を有するようにしてあることに留意しなければならない。また、本発明の実施形態を説明するにあたり、関連する公知の構成又は機能についての具体的な説明がむしろ本発明の実施形態に対する理解を妨害するものと判断される場合は、その詳細な説明は省略する。
【0020】
また、本発明の実施形態の構成要素を説明するにあたり、「第1」、「第2」、「A」、「B」、「a」、「b」などの用語を使用することができる。このような用語は、その構成要素を他の構成要素と区別するためのものに過ぎず、その用語により、その構成要素の本質や順番または順序などが限定されるものではない。ある構成要素が他の構成要素に「連結」、「結合」または「接続」されると記載されている場合、その構成要素はその他の構成に直接連結または接続できるが、各構成要素の間に更に他の構成要素を「連結」、「結合」または「接続」することもできると理解されるべきである。
【0021】
本発明のいずれかの実施形態に含まれる構成要素と共通の機能を含む構成要素は、他の実施形態で同一の名称を用いて説明することにする。反対とされる記載がない限り、いずれかの実施形態に記載した説明は他の実施形態にも適用でき、重複範囲で具体的な説明は省略する。
【0022】
本願で使用する用語「前方」は、遠心分離用ピストンの本体を基準として本体の前方向を言い、本願で使用する用語「後方」は、遠心分離用ピストンの本体を基準として後方向を言う。
【0023】
本願で使用する用語「正圧」は、ピストンの前方の圧力と後方の圧力がピストンを収容する容器の外部の圧力よりも高い場合を言い、本願で使用される用語「負圧」は、ピストンの前方の圧力と後方の圧力がピストンを収容する容器の外部の圧力よりも低い場合を言う。
【0024】
本願で使用する用語「生体組織」は、人体から抽出された組織であって、脂肪組織、皮膚組織などを言う。
本願で使用する用語「体液」は、生体組織から抽出された血液、遊離の脂質などを言う。
【0025】
本願で使用する用語「外力」は、ピストンに加わる外部の駆動源によって発生する力を言う。例えば、ピストンに加わる外力は、主に遠心力であり得る。
【0026】
図1~
図4を参照して、第1実施形態に係る遠心分離用ピストン10の構造について説明する。
【0027】
図1~
図4を参照すると、第1実施形態に係る遠心分離用ピストン10は、生体組織と体液などを含む混合物から、特定の比重と特定のサイズを有する生体組織と体液などを分離することができる。ピストン10は、本体11、外部シール部12、フィルタ部13は、弁14、弁支持体15、弾性部材16は、内部シール部17および結合部18を含み得る。
【0028】
本体11は、生体組織と体液を含む混合物が入った容器1100(
図7参照)の内部において容器の長手方向に沿って移動することができる。例えば、容器は、注射器(syringe)であってもよい。容器内に配置された本体11に外力(例えば、遠心力)が作用する場合、本体11の前方に位置する生体組織と体液からなる混合物のうち、比重が小さくサイズも小さい体液が本体11の後方に向かって移動して、生体組織と体液とが分離される。例えば、本体11は、中心軸Xを有するシリンダ形状を有してもよい。
【0029】
外部シール部12は、本体11の外面と容器1100(
図7参照)の内面1100(
図7参照)との間をシールして、その間の生体組織と体液の混合物の流動を防止することができる。外部シール部12は、第1外部シール部材121及び第2外部シール部材122を含んでもよい。この場合、本体11の外面に、第1外部シール部材121と第2外部シール部材122がそれぞれ結合される第1外部凹部(recess)111と第2外部凹部112が形成されてもよい。例えば、第1外部シール部材121及び第2外部シール部材122は環状であってもよく、第1外部シール部材121及び第2外部シール部材122のそれぞれの外周面の一部が凹部であってもよい。この場合、第1外部シール部材121及び第2外部シール部材122のそれぞれが容器1100(
図7参照)の内面1110(
図7参照)と接触する面積が減少するので、それぞれの第1外部シール部材121及び第2外部シール部材122と容器1100の内面1110との間の摩擦力が低減され得る。
【0030】
フィルタ部13は、本体11の前方から本体11の後方に向かって移動する混合物を濾過することができる。フィルタ部13は、カバー131、突起132及びメッシュ(mesh)133を含んでもよい。カバー131は、本体11と同軸の中心軸Xを有し、本体11の先端113に結合してもよい。例えば、カバー131は、円板形状を有してもよい。突起132は、カバー131の中心部からカバー131の中心軸Xの軸方向に沿って突出していてもよい。外力が加えられて本体11が、生体組織と体液の混合物が存在する本体11の前方に向かって移動する場合、生体組織と体液の混合物にかかる圧力が高くなり、これに伴い本体11の前方に存在する生体組織と体液の混合物に含まれている気泡の数が減少する可能性がある。突起132は、流線形の構造を有してもよい。例えば、突起132は、カバー131に対して凸面を有していてもよい。このような構造によれば、体液が突起132の凸面に沿って移動する際に生じる流動抵抗を低減できる。メッシュ133は、本体11の前方から本体11の後方に向かって移動する体液と生体組織を濾過することができる。メッシュ133は、分離されるべき生体組織のサイズよりも小さく体液のサイズよりも大きい空隙(void)のポア(pore:孔)で構成されてもよい。これにより、本体11の前方から本体11の後方に向かって移動する生体組織と体液のうち、空隙のサイズよりも大きく比重が大きい生体組織および体液は、本体11の前方に残り、生体組織と体液のうち、空隙のサイズよりも小さく、本体11の前方に残っている生体組織および体液よりも比重が小さい生体組織および体液は、本体11の後方に移動することがある。メッシュ133は、カバー131に複数設けられてもよい。例えば、メッシュ133の数は、4つであってもよい。複数のメッシュ133は、突起132の周りで互いに離間してカバー131に設けられてもよい。例えば、複数のメッシュ133は、互いに等間隔に離間配置されてもよい。
【0031】
弁14は、弁14に外力が作用することにより、本体11の内部で本体11の前方に移動または本体11の後方に移動することができる。弁14は、本体11と同軸の中心軸Xを有してもよい。ここで、外力は、中心軸Xの軸方向に沿って本体の前方に向かって弁14に作用する遠心力であってもよい。弁14の詳細構造については、弁支持体15と弾性部材16について説明した後に詳述する。
【0032】
弁支持体15は、弁14を支持し、弁14の移動を案内したり、弁14の移動を制限したりすることができる。弁支持体15は、ガイド部151、流入口152、流路153、流出口154及びフランジ155を含んでもよい。ガイド部151は、本体11の内部における弁14の移動を案内することができる。ガイド部151は、中心軸Xの軸方向に延びるシャフト形状を有してもよい。ガイド部151は、本体11と同軸の中心軸Xを有してもよい。これにより、ガイド部151は、弁14の移動を本体11の前方に案内するか、または、弁14の移動を本体11の後方に案内することができる。一方、本体11は、弁支持体15のガイド部151の一部を収容する収容部114を含んでもよい。収容部114の中央には、ガイド部151の一部が収容されるホールが形成されてもよい。流入口152はガイド部151の一方の端部に形成されて、流体が流入口152を介してガイド部151の内部に流入することができる。流路153は、本体11の前方から本体11の後方に向かって流体が流動する流体通路であり、ガイド部151の長手方向に沿ってガイド部151の内部に形成されていてもよい。流出口154は、ガイド部151の側部に形成されて、流体が流出口154を介してガイド部151の外部に流出することができる。流路153は、流入口152から流出口154につながっていてもよい。フランジ155は、本体11の外部への弁14の移動を制限することができる。フランジ155は、ガイド部151の他方の端部に形成されてもよい。例えば、フランジ155は、フランジ(flange)形状を有してもよい。弁14が本体11の後方に向かって移動し、フランジ155と接するとき、弁14と接するフランジ155の位置まで弁14の移動が制限され得る。結果として、本体11の外部への弁14の離脱を防止することができる。
【0033】
一方、本体11の収容部114は、ガイド部151の一部を囲み、中心軸Xの軸方向に沿って本体11の内側中心まで延びていてもよい。これにより、弁14が本体11の前方に向かって移動し、収容部114と接するので、弁14が接する収容部114の位置まで弁14の移動が制限され得る。その結果、弁14は、本体11の収容部114と弁支持体15のフランジ155との間でガイド部151の長手方向に沿って移動することができる。
【0034】
弾性部材16は、本体11の内側端部115と弁14との間に位置し、ガイド部151の長手方向に沿って圧縮(compression)または伸長(extension)されてもよい。例えば、弾性部材16は、ばね(spring)であってもよい。弾性部材16の第1端部161は本体11の内側端部115に位置し、弾性部材16の第2端部162は弁14の陥没部142に位置しているため、弾性部材16は、本体11に対して弁14を弾性的に支持することができる。一方、弾性部材16は、本体11の収容部114の外側に配置されてもよい。
【0035】
内部シール部17は、弁14の内面と弁支持体15の外面との間の流体の流動を防止することができる。内部シール部17は、弁14と弁支持体15との間に配置される第1内部シール部材171及び第2内部シール部材172を含み得る。第1内部シール部材171及び第2内部シール部材172は、ガイド部151と接触することができる。外力が加わっても、弁14の移動が制限されて弁14が弁支持体15の流出口154を遮断する、いくつかの実施形態では、第1内部シール部材171は、流出口154を基準としてガイド部151の側部の第1部分156に位置し、第2内部シール部材172は、流出口154を基準としてガイド部151の側部の第2部分157に位置することができる。ここで、第1部分156及び第2部分157は、流出口154を基準として互いに対向している。このような構造によれば、ピストン10を基準として容器1100内に正圧または負圧がかかっても、第1内部シール部材171とガイド部151との間の摩擦力、及び、第2内部シール部材172とガイド部151との間の摩擦力により圧力が遮断されて、弁15とガイド部151との間の気密を保つことができる。
【0036】
結合部18は、本体11の内側に形成されて、ピストン10を固定する固定部材1200と結合することができる。例えば、結合部18は、本体11の後端側本体11の内面に形成された雌ねじ(internal thread:内ねじ)を含んでもよい。この場合、固定部材1200には、雌ねじと螺合する雄ねじ(outer thread:外ねじ)210が形成されてもよい。ユーザーが遠心分離用ピストン10を手動で操作する場合、ユーザーは、固定部材1200を本体11の中心軸Xに沿って本体11に向けて移動させて、固定部材1200の雄ねじ1210と結合部18の雌ねじとを螺合させることにより、弁14を本体11に固定することができる。これにより、本体11の前方から本体11の後方への流体の流動が遮断され、ユーザーがピストン10を手動で操作することができる。
以下、弁14、弁支持体15、弾性部材16および内部シール部17の結合関係、並びに、弁14の構造について詳細に説明する。
【0037】
弁14は、弁ボディ141、陥没部(depression)142、中空143、第1内部凹部144及び第2内部凹部145を含んでもよい。弁ボディ141は、本体11と同軸の中心軸Xを有してもよい。例えば、弁ボディ141は、シリンダ形状を有してもよい。陥没部142は、弁ボディ141の内側中心に向けて弁本体141の円周方向に沿って形成されてもよい。陥没部142には弾性部材16の第2端部が位置しているため、弾性部材16によって弁14を弾性的に支持することができる。弁ボディ141には、弁ボディ141の前方から弁ボディ141の後方に弁ボディ141の中央部を貫通する中空143が形成されていてもよい。中空143には、弁支持体15のガイド部151が挿入されてもよい。これにより、中空143にガイド部151が挿入された状態で、弁ボディ141がガイド部151の長手方向に沿って移動することができる。第1内部凹部144及び第2内部凹部145は、弁ボディ141の内面に形成されており、第1内部シール部材171及び第2内部シール部材172とそれぞれ結合され得る。
【0038】
弁14は、設定サイズの重量を有してもよい。弁14の重量は、外力の大きさ、弾性部材16によって弁14に加えられる弾性力、弁14と弁支持体15との間の摩擦力などに応じて設定可能である。ここで、弁14に加わる外力の大きさ、弁14と弁支持体15との間の摩擦力は、弁14の重量に依存する。例えば、弁14を本体11の前方に移動させるとき、弁14に作用する外力の大きさは、弁14に作用する弾性力の大きさと、弁14と弁支持体15との間の摩擦力の大きさとの合計よりも大きくなるように設定されてもよい。一方、弁14を本体11の後方に移動させるとき、弁14に作用する外力の大きさは、弁14に作用する弾性力の大きさと、弁14と弁支持体15との間の摩擦力の大きさとの合計よりも小さくなるように設定されてもよい。
【0039】
図5~
図7を参照して、第1実施形態に係る遠心分離用ピストン10の動作について説明する。
【0040】
図5は、一実施形態に係る遠心分離用ピストン10に外力が作用していない場合の力の平衡状態を示す。弾性部材16が弁14に弾性力を加えるので、弁14は、本体11の内側端部115から離れる方向である本体11の後方に移動しようとする。このとき、フランジ155は、弁14が本体11の外部に離脱することを防止するために弁14の移動を制限することができる。
【0041】
このような状態で、弁14は、流出口154を遮断することにより、本体11の前方に存在する生体組織と体液の混合物のうち、比重が小さくサイズも小さい生体組織および体液などがメッシュ133によって濾過されて流入口152に進入し、流路153に沿って本体11の後方に流動することを遮断することができる。内部シール部17の第1内部シール部材171及び第2内部シール部材172により、弁14と弁支持体15との間で流体シールが達成される。
【0042】
図6は、遠心分離の回転中心が本体11の後方に位置するとき、一実施形態に係る遠心分離用ピストン10に外力、すなわち遠心力が作用している状態を示す。遠心分離の回転中心が本体11の後方に位置するとき、遠心分離により、
図5のピストン10に、
図6に示すように遠心力が作用する。遠心力の大きさが、弁14に加わる弾性力の大きさと、弁支持体15と内部シール部17との間の摩擦力の大きさとの合計よりも大きければ、弁14が弁支持体15の長手方向に沿って本体11の前方に向かって移動し、流出口154が開放される。これにより、流入口152に進入して流路153に沿って流動する流体は、流出口154を介して本体11の後方に流動する。遠心分離が終了し、もはやピストン10に遠心力が作用していない場合、弁14は、弁14に加わる弾性力によって本体11の後方に移動し、フランジ155によって停止され、弁14によって流出口154が遮断される(
図5のピストン10の状態参照)。
【0043】
図7は、生体組織の中で脂肪組織を遠心分離した例であり、遠心分離が完了した後、容器1100内に配置された遠心分離用ピストン10を基準として、ピストン10の前方には血液及び樹液、純粋な脂肪組織が残っており、ピストン10の後方には遊離の脂質のみが残っている状態を示す。遠心分離が完了すると、ユーザーは必要に応じて遊離の脂質のみを取得することができる。万が一、ユーザーが純粋な脂肪組織を取得したい場合は、ユーザーは遊離の脂質を除去した後、ピストン10を容器1100の前方に移動させて、容器1100の前方に血液及び樹液を流出させ、残りの純粋な脂肪組織のみを取得することができる。
【0044】
要するに、容器内のピストン10の前方に生体組織と血液、体液の混合物が配置され、設定回転速度RPMにて遠心分離を行うと、遠心力によって比重に応じて生体組織と血液、体液の混合物が分離され、また、加速されて特定の遠心力を超えると、弁14は、弁支持体15と内部シール部17との間の摩擦力、及び、弁14に作用する弾性力を克服して、遠心力が作用する方向に移動し、流出口154が開放される。これにより、遠心分離により分離された生体組織および体液の中でメッシュ133の空隙よりも小さく比重が小さい生体組織および体液は、本体11の後方に移動し、ピストン10は、遠心力が作用する方向に移動する。その結果、ピストン10を基準として、ピストン10の後方には、相対的に比重が小さくサイズが小さい生体組織および体液が位置し、ピストン10の前方には、相対的に比重が大きいか、またはサイズが大きい生体組織および体液が位置する。遠心分離が終了すると、弁14に加わる弾性力によって弁14が本体11の後方に移動し、流出口154が遮断される。その後、容器内で分離された生体組織および体液から所望の生体組織および体液を別々に回収することができる。
【0045】
図8~
図13を参照して、第2実施形態に係る遠心分離用ピストン20の構造および動作方式について説明する。
【0046】
図8~
図13を参照すると、第2実施形態に係る遠心分離用ピストン20は、第1外部凹部211と、第2外部凹部212と、先端213と、収容部214と、内側端部215とを含み、中心軸X’を有する本体21と;第1外部シール部材221と、第2外部シール部材222とを含む外部シール22と;カバー231と、突起232と、メッシュ233とを含むフィルタ部23と;弁ボディ241と、陥没部242と、中空243と、第1内部凹部244と、第2内部凹部245とを含む弁24と;ガイド部251と、流入口252と、流路253と、流出口254と、フランジ255とを含む弁支持体25と;弾性部材26と;第1内部シール部材271と第2内部シール部材272とを含む内部シール部27と;結合部28と;を含んでいてもよい。
【0047】
第2実施形態に係る遠心分離用ピストン20は、遠心分離用ピストン20に外力が加わっても、選択的に弁24の移動を制限して流路253を遮断する弁移動制限機構を含んでいてもよい。弁移動制限機構は、タング部(tongue:舌部)216及びグルーブ(groove:溝)246を含んでいてもよい。タング部216は、本体21の内面に形成され、中心軸X’に沿って長手方向に延びる形状を有してもよい。グルーブ246は、中心軸X’の軸方向に沿って弁24の外面に形成されてもよい。グルーブ246の幅は、タング部216がグルーブ246内に収容されるように、タング部216の幅よりも大きいかまたは実質的に等しくてもよい。
【0048】
図10及び
図11は、タング部216とグルーブ246とが互いに整列されている第1状態を示す。この状態では、遠心分離用ピストン20に外力が加わると、タング部216が弁24の移動を規制しないため、弁24は、弁支持体25に固定されず、ガイド部251に沿って本体21の前方と後方に移動可能であり、流路253の開放及び閉鎖を両方とも行うことができる。弁24が本体21の前方と後方に移動する間、グルーブ246は、タング部216によってガイドされてタング部216に沿って移動することができる。
【0049】
図12及び
図13は、タング部216とグルーブ246とが互いに位置ずれている(misalign)第2状態を示す。この状態では、遠心分離用ピストン20に外力が加わっても、タング部216が弁24の移動を規制しているため、弁24は、弁支持体25に沿って移動しない。このため、流路253の遮断状態が維持される。
【0050】
一実施形態では、弁移動制限機構は、互いにスナップ(snap)される突出部256及び凹部247をさらに含んでいてもよい。突出部256は、フランジ255の外面から突出するようにフランジ255に形成されてもよい。凹部247は、弁24の後方の表面から弁24の内側に凹部となるように、弁24の後方の表面に形成されてもよい。例えば、突出部256と凹部247は、複数であってもよい。タング部216が弁24の移動を規制する間、フランジ255に形成された突出部256は、弁24に形成された凹部247にスナップされ得る。このような構造によれば、ユーザーが、遠心分離用ピストン20の状態を第2状態から第1状態に、または第1状態から第2状態に変更したい場合、ユーザーは、突出部256と凹部247との間のスナップ結合の有無により、タング部216とグルーブ246とが整列しているか、または整列していないかを容易に把握することができる。
【0051】
図14~
図16を参照して、第3実施形態に係る遠心分離用ピストン30の構造及び動作について説明する。
【0052】
図14~
図16を参照すると、第3実施形態に係る遠心分離用ピストン30は、第1外部凹部311と、第2外部凹部312と、先端313と、収容部314と、内側端部315とを含み、中心軸X”を有する本体31と;第1外部シール部材321と、第2外部シール部材322とを含む外部シール部32と;カバー331と、突起332と、メッシュ333とを含むフィルタ部33と;弁ボディ341と、陥没部342と、中空343と、第1内部凹部344と、第2内部凹部345とを含む弁34と;ガイド部351と、流入口352と、流路353と、流出口354と、フランジ355とを含む弁支持体35と;弾性部材36と;第1内部シール部材371と、第2内部シール部材372とを含む内部シール部37と;結合部38と;を含んでいてもよい。
【0053】
第3実施形態に係る遠心分離用ピストン30は、弁34を本体31に選択的に固定することにより、流路353を選択的に開放または遮断するロック機構を含んでもよい。この場合、弁34は、円筒形状であってもよい。ロック機構は、噛合要素316、第1グルーブ346及び第2グルーブ347を含み得る。噛合要素316は、本体31の中心に向かって突出するように本体31の内面に形成されてもよい。第1グルーブ346は、弁34の軸方向に沿って弁34の外面に形成されてもよい。第2グルーブ347は、弁34の円周方向に沿って弁34の外面に形成されてもよい。第1グルーブ346と第2グルーブ347とは、互いに交差し得る。例えば、噛合要素316が第1グルーブ346及び第2グルーブ347にそれぞれ収容されるように、噛合要素316のサイズは、第1グルーブ346のサイズ及び第2グルーブ347のサイズよりも小さいか、実質的に等しくてもよい。
【0054】
噛合要素316が第1グルーブ346と整列されている状態で、弁34に外力が加わると、噛合要素316は、第1グルーブ346に沿って移動可能であり、弁34はガイド部351に沿って本体31の前方と後方に自由に移動でき、流路353の開放及び閉鎖を両方行うことができる。
【0055】
ユーザーは、別の操作で弁34に外力を加えてピストン30を前方に移動させ、弁34と収容部314が当接すると、弁34を中心軸X”に対して回転させることができる。この場合、噛合要素316が第1グルーブ346に沿って移動する間、噛合要素316は、第1グルーブ346と交差する第2グルーブ347に進入することができる。第2グルーブ347に進入した噛合要素316は、第2グルーブ347に沿って移動し、第2グルーブ347に噛合することになる。このような状態では、遠心分離工程において弁34に外力が加わっても、第2グルーブ347にかかっている噛合要素316が弁34の移動を規制するので、弁34は、本体31に固定された状態を維持する。これにより、流路353は、開いたままであり得る。
【0056】
以上のように、実施形態をたとえ限定された図面によって説明したが、当技術分野で通常の知識を有する者であれば、上記の記載に基づいて様々な修正及び変形を適用することができる。例えば、説明された技術が、説明された方法と異なる順で実行されてもよいし、及び/又は説明されたシステム、構造、装置、回路などの構成要素が、説明された方法と異なる形態に結合又は組み合わせられてもよいし、他の構成要素又は均等物によって代置又は置換されたとしても適切な結果を達成することができる。