(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】金属ストリップをディップコーティングのための方法
(51)【国際特許分類】
C23C 2/00 20060101AFI20220315BHJP
C23C 2/40 20060101ALI20220315BHJP
C23C 2/02 20060101ALI20220315BHJP
【FI】
C23C2/00
C23C2/40
C23C2/02
(21)【出願番号】P 2020548708
(86)(22)【出願日】2019-02-14
(86)【国際出願番号】 IB2019051190
(87)【国際公開番号】W WO2019175684
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2020-11-05
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2018/051603
(32)【優先日】2018-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IB
(73)【特許権者】
【識別番号】515214729
【氏名又は名称】アルセロールミタル
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア・マルティーノ,アンヘル
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア-チャパ,イノセンシオ
【審査官】松村 駿一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-068043(JP,A)
【文献】特開2007-247044(JP,A)
【文献】特開平05-279827(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 2/00
C23C 2/40
C23C 2/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ストリップ(9)の連続溶融めっきのための装置であって、
-焼鈍炉と、
-液体金属浴(3)を含むタンク(2)と、
-焼鈍炉と前記タンク(2)とを接続する筒口であって、その筒口を通して金属ストリップ(9)が保護雰囲気中を進み、前記筒口の下部であるサボー(5)は、浴の表面と共に、この筒口の内側に、液体シール(6)を画定するように、少なくとも部分的に液体金属浴(3)に浸漬される、筒口と、
-筒口に接続されていないオーバーフロー(7)であって、トレーが前記液体金属浴(3)に入り込むときに、ストリップ(9)の近傍に配置されて前記液体シール(6)によって包囲される、少なくとも1つのトレー(8)を備える、前記オーバーフロー(7)と、
を備える、金属ストリップ(9)の連続溶融めっきのための装置。
【請求項2】
前記筒口が、昇降可能であることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記トレー(8)が、
-液体シールの表面に向けられたストリップの一方の側に面する内壁(10)であって、その内壁の上方縁部が前記浴(3)の表面の下に配置されている内壁(10)と、
-液体シールの表面に向けられた筒口に面する外壁(11)であって、その外壁の上方縁部が前記浴(3)の表面の上方に配置されている外壁(11)と、
-前記外壁(11)下方縁部と前記内壁(10)の下方縁部との間の接続部(20)と、
-前述の壁の各共有端部(13)において、それらすべての縁部を接続する壁と、
-内壁(10)の上方縁部が、外壁(11)の上方縁部よりも低いことと、
によって形成される、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記オーバーフロー(7)が、このトレー(8)内の液体金属の自然な流れを設定するように、液体シールの表面より下のレベルに液体金属のレベルを維持するための手段(18)を備え、金属酸化物粒子および金属間化合物粒子が液体金属の流れに対して向流として上昇することを防止するように、前記液体金属の自然な流れが、50mmより大きい、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
トレーの第1の内壁(14)の上方縁部が、長手方向に、一連の凹み部および突出部を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記オーバーフロー(7)が、前記筒口が持ち上げられたときに取り外し可能である、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
トレー(8)およびレベルを維持するための手段(18)が、支持体(4および16)によってタンク(2)の縁部(21および22)に固定されている、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
トレー(8)が、コネクタ(15)によってレベルを維持するための手段(18)および支持体(16)に接続され、コネクタの最下部が液体シールの下にあって、筒口の下部の端部、サボー(5)が液体シールの下にあることを可能にするように、および、支持体の最下部の上にあることを可能にするように、オーバーフローの前記コネクタ(15)が、コーティング浴の底に向かって湾曲されている、請求項1および7に記載の装置。
【請求項9】
トレー(8)およびレベルを維持するための手段(18)が固定されている支持体(16および4)が、浴槽の縁部に沿って変位可能/移動可能であり、オーバーフロー(7)が、前記浴槽の縁部に沿って移動することを可能にする、請求項1および7に記載の装置。
【請求項10】
トレー(8)およびレベルを維持するための手段(18)が固定された支持体(16および4)が、浴表面に対して垂直に沿って変位可能である、請求項1および7に記載の装置。
【請求項11】
オーバーフロー(7)が、液体金属(3)内への金属ストリップの入口進入部に対して対称的に配置された2つのトレー(8)を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
オーバフロー(7)が、内壁(10)と、外壁(11)と、水平壁(20)とによって形成された、金属ストリップ(9)を連続的に取り囲む1つのトレー(8)から構成され、内壁(10)が、液体シールの表面に向けられたストリップの一方の側に面し、その内壁の上方縁部が、前記浴の下方に配置され、外壁(11)が、液体シールの表面に向けられた筒口に面し、その外壁の上方縁部が、前記浴の表面の上方に配置され、水平壁(20)が、外壁の下方縁部と内壁の下方縁部の間にある、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
筒口が、取り外し可能な上側部分と下側部分を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
請求項1~13に記載の装置における、溶融めっきによって金属コーティングを堆積させるための方法であって、
-鋼板を焼鈍炉で再結晶焼鈍することと、
-鋼板を筒口内で焼鈍炉から溶融めっき浴(3)へ進めることと、
-浴中の焼鈍鋼板を溶融めっきすることと、
を含む、方法。
【請求項15】
請求項1~13記載の装置における、溶融めっき工程からの筒口の摩耗した下部の交換方法であって、
-前記筒口が持ち上げられ、下部の取り外し可能な部分を液体浴の上方に配置する、
-オーバーフロー(7)が持ち上げられ、取り外されるおよび/または取り外し可能な、筒口の下部が取り外され、新しいものと交換される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ストリップの溶融めっきのための装置に関する。該装置は、焼鈍炉と、液体金属浴を含むタンクと、焼鈍炉と該タンクとを結ぶ筒口(snout)と、筒口から分離したオーバーフロー(overflow)と、を備える。言い換えれば、筒口は、高く上方で焼鈍炉の端部にある一方の側と、液体金属浴表面の少し下のシールを形成するもう一方の側とを有する。このような配置は、金属ストリップが液体金属浴に到達するまで、金属ストリップを焼鈍炉からの酸化から保護することを目的とする。オーバーフローは、筒口によって取り囲まれた液体金属浴の表面に配置される。
【0002】
コーティング処理の間、ストリップの浴中への進入位置は、異なる要因、例えば、ストリップ進入位置の変化により、経時的に変化し、したがって、オーバーフローの最適位置に影響を及ぼす。そのため、プロセス中にオーバーフローを変位して最適な位置に移動する必要がある。
【0003】
また、使用中には、種々の影響により装置が劣化するか、または故障する。例えば、筒口の浸漬部分は腐食を受け、ポンプまたはオーバーフローのレベル計は誤作動を起こす。これらの問題を克服するために、筒口またはオーバーフローの一部を交換または修理する必要があり、このような作業は、ストリップの切断、生産性の低下、および製造コストの上昇につながる。
【0004】
仏国特許発明第2816639号明細書は、金属ストリップの連続ディップコーティングのための装置に関する。この装置は、筒口にオーバーフローを付加することでその欠陥密度を減少させることによって、ストリップの表面品質を改善する。そうするために、オーバーフローは、筒口の延長部に取り付けられ、ストリップの近くでドロスを収集する。
【0005】
国際公開第2017/187225号パンフレットには、金属ストリップの連続ディップコーティングのための装置が記載されている。この装置は、上述した仏国特許発明第2816639号明細書からの装置を改良し、ストリップに関して筒口およびオーバーフローの位置調整を可能にする。そのために、筒口は、第1の回転軸の周りの金属ストリップに関して回転する排出可動ボックスを備えており、第2の回転軸の周りのシースの上部に対して、排出ボックスが回転するように可動である。さらに、シースの上部に対して排出ボックスの回転を可能にする関節接合部は、連結回転軸である。
【0006】
しかしながら、上記の装置を使用することによって、オーバーフローの正しい設置は複雑であり、適切に取り扱われなければ、不適切な位置決めにつながる可能性がある。設置の複雑さは、垂直変位のない水平変位を行うことによってオーバーフローの両側を水平に置くことの困難さが原因である。さらに、これは、より高い故障確率につながる多くのメカニズムを必要とする。さらに、1つの部品が破損した場合、それを修理するためには、筒口全体を取り外し、時には交換しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】仏国特許発明第2816639号明細書
【文献】国際公開第2017/187225号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、より単純でより信頼性の高いオーバーフロー調整装置、ならびにその交換を容易にするものを見出す必要がある。この解決策はまた、オーバーフローの正確な位置決めを容易にしなければならない。さらに、ストリップを切断することなくオーバーフローを除去することができ、その結果、ストリップは装着されたままであり、製造への影響を低減することができれば、非常に有利である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、請求項1に記載の装置を提供することによって達成される。この装置はまた、請求項2~13の任意の特徴を含むことができる。この目的は、請求項14および15に記載の方法を提供することによっても達成される。
【0010】
本発明の他の特徴および利点は、本発明の以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0011】
本発明を説明するために、非限定的な例の様々な実施形態および試行を、特に以下の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明を使用中に見ることができる本発明の断面図である。
【
図2】サボー(sabot)とオーバーフローに焦点を当てた本発明の断面図である。
【
図4】サボー、オーバーフローおよび移動システムの配置図の一例である。
【
図5】サボー、オーバーフローおよび移動システムを構成する異なる要素の分解図である。
【
図6】浴槽縁部に据え付けられるオーバーフローの概略図である。
【
図9】使用時のトレーおよび液体シールに関する液体浴のレベルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、金属ストリップ9の連続溶融めっきのための装置に関する。該装置は、焼鈍炉と、液体金属浴3を含むタンク2と、焼鈍炉と前記タンク2とを接続する筒口であって、その筒口を通して金属ストリップ9が保護雰囲気中を進み、前記筒口の下部であるサボー5は、浴の表面と共に、この筒口の内側に、液体シール6を画定するように、少なくとも部分的に液体金属浴3に浸漬される、筒口と、筒口に接続されていないオーバーフロー7であって、ストリップが前記液体金属浴3に入り込んで前記液体シール6によって包囲されるときに、ストリップ9の近傍に配置される、少なくとも1つのトレー8を備える、前記オーバーフロー7と、を備える。
【0014】
従来技術では、オーバーフローを清掃し、修理し、または交換するために、オーバーフローのみを容易かつ迅速に除去することは不可能であるように思われる。さらに、筒口の全部または大部分を取り除くことなく、筒口を交換または清掃するように、浴に接触している筒口の部分のみを取り除くことも可能ではないように思われる。これに対し、本発明による装置では、筒口全体を取り外すことなく、オーバーフローを容易に取り除くことができる。さらに、コーティング中に少なくとも部分的に浸漬された部分を、筒口全体またはその大部分を除去することなく、筒口から分離することが可能である。
【0015】
有利には、前記筒口は、100cmまで、より好ましくは120cmまで昇降可能である。例えば、筒口を120cmまで持ち上げることができ、これは、明らかに、サボーの最低位置と最高位置との間に120cmの差があることを意味する。このような高さの範囲は、オーバーフローの除去を容易にする。
【0016】
有利には、前記オーバーフロー8は、液体シールの表面に向けられたストリップの一方の側に面する内壁10であって、内壁10の上方縁部が前記浴3の表面の下に配置されている内壁10と、液体シールの表面に向けられた筒口に面する外壁11であって、その外壁11の上方縁部が前記浴3の表面の上方に配置されている外壁11と、前記外壁11の下方縁部と内壁10の下方縁部との間の接続部20と、さらに、前述の壁の各共有端部13において、それら全ての縁部を接続する壁と、内壁10の上方縁部は、外壁11の上方縁部よりも低いことと、によって形成される。
【0017】
有利には、前記オーバーフロー7は、このトレー8内に液体金属の自然な流れを生じさせるように、液体シールの表面より下のレベルに液体金属のレベルを維持するための手段18を備え、金属酸化物粒子および金属間化合物粒子が液体金属の流れに対して向流として上昇することを防止するように、前記液体金属の自然な流れは、50mmより大きい。
【0018】
有利には、トレー8の第1の内壁14の上方縁部は、長手方向に、一連の凹み部および突出部を備える。いかなる理論によっても拘束されることなく、その第1の内壁14の上方縁部は、ストリップ上のコーティングのスプラッシングを低減または抑制し、その壁に沿った流れを容易にすることを可能にする。
【0019】
有利には、前記オーバーフロー7は、前記筒口が持ち上げられたときに取り外し可能である。筒口が持ち上げられるとき、より容易な除去を可能にする、オーバーフローの除去の方法は何もない。
【0020】
有利には、前記トレー8およびレベルを維持するための手段18は、支持体4および16によってタンク2の縁部21および22に固定される。例えば、支持体は、トレーに溶接され、レベルを維持するための手段および支持体は、タンク縁部にねじ止めされる。
【0021】
有利には、トレー8は、コネクタ15によってレベル18を維持するための手段18および支持体16に接続され、コネクタの最下部が、液体シールの下にあって、筒口の下部の端部、サボーが、液体シールの下にあることを可能とするように、および、支持体の最下部の上にあることを可能にするように、オーバーフローの前記コネクタ15は、コーティング浴の底部に向かって湾曲している。例えば、コネクタの最下部は、「U」字形、「V」字形、または半円形であってもよい。
【0022】
有利には、トレー8ならびにレベルを維持するための手段18が固定されている支持体16および4は、浴槽の縁部に沿って変位可能/移動可能であり、オーバーフロー7が、前記浴槽の縁部に沿って移動することを可能にする。例えば、片側または両側の支持体は、移動されることができるピストンまたは油圧シリンダーシステムに取り付けられることができる。より好ましくは、オーバーフローの両側の支持体は、摺動可能なシステムに取り付けられる。その結果、いかなる理論によっても束縛されることなく、オーバーフローは、コーティング浴およびストリップの表面によって形成される軸に対して準垂直に移動する。例えば、支持体、従ってオーバーフローは、縁部の軸に沿って少なくとも50cmの距離で変位可能である。より有利には、支持体は、ストリップ位置に対して自動的に変位される。
【0023】
有利には、トレー8およびレベルを維持するための手段18が固定される支持体16および4は、浴表面に対して垂直に沿って変位可能である。これにより、トレーを浴のレベルに保つようにトレーのレベルを調整することを可能にする。このシステムは、オーバーフローのレベルを微調整するように、インゴットの浸漬と組み合わせて良好に作動する。例えば、オーバーフローを垂直方向に移動するように機械的システムを使用することによって、オーバーフローのレベルを微調整することを実現することができる。
【0024】
有利には、オーバーフローは、液体金属3内への金属ストリップの進入部に対して、対称的に配置された2つのトレー8を有する。
【0025】
好ましくは、オーバーフロー7は、内壁10と、外壁11と、水平壁20とによって形成された、金属ストリップ9を連続的に囲む1つのトレー8から構成される。内壁10は、液体シールの表面に向けられたストリップの一方の側に面し、その内壁10の上方縁部は、前記浴の表面の下方に配置される。外壁11は、液体シールの表面に向けられた筒口に面し、その外壁11の上方縁部は、前記浴の表面の上方に配置される。水平壁20は、外壁の下方縁部と内壁の下方縁部との間にある。いかなる理論にも束縛されるものではないが、トレー8は、特有の周囲コンパートメントを有することを可能にする。
【0026】
有利には、筒口は、取り外し可能な上側部分と下側部分とを備える。
【0027】
本発明はまた、請求項1~13に記載されるような装置における、溶融めっきによって金属コーティングを堆積させるための方法にも関する。
この方法は、
- 鋼板を焼鈍炉で再結晶焼鈍することと、
- 鋼板を筒口内で焼鈍炉から溶融めっき浴へ進めることと、
- 浴中の焼鈍鋼板を溶融めっきすることと、
を含む。
【0028】
また、本発明は、請求項1~13に記載の装置における、溶融めっきプロセスから筒口の摩耗した下部を交換するための方法であって、
- 前記筒口が持ち上げられ、下側の取り外し可能な部分を液体浴の上方に配置する、
- オーバーフローが持ち上げられ、取り外されるおよび/または取り外し可能な、筒口の下部が取り外されて、新しいものと交換される、
方法に関する。
【0029】
以下の説明は、金属ストリップの連続的な亜鉛めっきのための装置に関するものである。しかし、本発明は、表面汚染物質が存在し且つ液体シールが清浄なままでなければならない且つオーバーフローを容易に除去する必要がある、連続コーティングのあらゆるプロセスに適用可能である。
【0030】
冷間圧延による歪硬化後の金属ストリップを再結晶させるように、および、亜鉛めっき時に生じる化学反応を高めたその表面状態を調製するように、冷間圧延部の後、還元雰囲気中で、金属ストリップは焼鈍炉(図示せず)を通過する。
【0031】
焼鈍炉では、金属ストリップは、一般に650~900℃に含まれる温度で加熱される。直後、金属ストリップ9は、
図1に示されるような亜鉛めっき装置内を通過する。
【0032】
この装置は、焼鈍炉(図示せず)と、液体金属浴3を含むタンク2とを備え、前記液体金属浴は、一般に、アルミニウムおよび鉄などの化学元素、ならびに場合によっては鉛およびアンチモンなどの添加元素を含む液体亜鉛から構成される。浴の温度は一般に約460℃である。
【0033】
焼鈍炉の後、金属ストリップ9は、浴の温度に近い温度まで冷却され、次いで、金属液体浴3に浸漬される。
【0034】
この浸漬の際、浴中に存在する元素に応じて、金属間合金が形成される。この金属間合金は、一般にFe-Zn-Alであり、乾燥後の前記金属ストリップ上の残留亜鉛との接触を保証することができる。
【0035】
図1に示すように、金属ストリップは、保護雰囲気中で、サボー5および筒口(図示されていないが、サボーの延長部にある)を通過する。
【0036】
筒口およびサボー5は、矩形横断面である
図2に表わされる。サボー5は、
図9に示すように、サボー内に液体シール6を形成するように、部分的に浴内に浸漬されている。したがって、金属ストリップ9は、浴に進入するとき、液体シールを通過し、2つのトレー8の間を通過する。
【0037】
次いで、金属ストリップは、ローラ1によって偏向され、次の段階に進む。次の段階では、一般に、空気を吹き付けるジェットノズル(図示せず)によって乾燥される。
【0038】
図3および
図6に示すように、オーバーフローは、2つの矩形トレー8と、湾曲コネクタ15と、レベルを維持するための手段18と、支持体16および4と、から構成することができる。一方の側では、高さを維持するための手段の近くのトレーの穴17と高さを維持するための手段の穴19は、トレーとレベルを維持するための手段18との間に通路を形成する中空湾曲コネクタ15によって接続されている。
図10から分かるように、レベルを維持するための手段18に固定された支持体4は、タンク2の縁部21上に据え付けられている。他方では、支持体16は、トレー8(正確にはコネクタ15)に取り付けられ、タンク2の縁部22に取り付けられている。
【0039】
トレーは、液体シールの表面に向けられたストリップの一方の側に面する内壁10であって、その内壁の上方縁部は、前記浴の表面の下に配置されている内壁10と、液体シールの表面に向けられた筒口に面する外壁11であって、その外壁の上方縁部は、前記浴の表面の上方に配置されている外壁11と、前記外壁11の下方縁部と前記内壁10の下方縁部との間の接続部20と、さらに、前述の壁の各共有端部13において、それら全ての縁部を接続する壁と、によって形成される。トレーの1つの重要な特徴は、外壁の上方縁部が内壁の上方縁部よりも高いことである。いかなる理論にも束縛されるものではないが、これらの全ての要素は、トレーへの液体金属の自然な流れをもたらし、したがって、金属ストリップに接するより清浄な表面をもたらすはずである。
【0040】
図8に見られるように、いかなる理論によっても拘束されることなく、内壁は、ストリップに向かってわずかに傾斜させることができ、それにより、ストリップ上のスプラッシュを減少させることができる。
【0041】
さらに、レベルを維持するための手段は、そのコンパートメント12内で吸引し且つ液体金属浴内に戻す、ポンプから構成されることができる。
【0042】
図4および
図5は、オーバーフローの移動のための可能な機構23を示している。準矩形プレート30は、浴槽の縁部で、各側部に2つのねじによってねじ止めされている。プレート30は、1つの壁31を、各側部に有するが、その端部には有さない。第1の壁は、中央孔33を有し、第2の壁は、壁の長さの約3分の1の間隔を置いて配置された2つの孔34を有する。この準矩形プレート30上には金属ブロック35が据え付けられている。この金属ブロックは、その側方の縁部でより薄く、上側面および下面で「U」形状を作り、3つの穴を有する。これらの穴は、準矩形プレート30の穴と整列させることができる。3本のネジ36は、孔33,34および前記孔を貫通して、ブロックと該プレートとを互いに固定する。このブロック35には、支持端部4、16が、より薄い縁部にねじによってねじ止めされて固定されている。
【0043】
本特許に説明された装置の寸法は、ライン構成、特にラインで処理される最大ストリップ幅に依存することは、熟練者にとって明らかである。当業者は、オーバーフローの幅が幅ストリップよりも広くなければならないことに常に留意すべきである。
【0044】
例1
特定の実施形態では、本発明の教示を使用すると、浴の長さは、3900mmであり、その幅は2720であり、筒口の長さは、2300mmであり、筒口の幅は、525mmであり、これにより、1800mm幅のストリップの通過を可能にする。使用時のサボーの高さは1283mmである。トレーは、長さ2200mm、幅150mmであり、外壁については、高さ150mm、内壁については、高さ100mmである。移動可能なシステム23は、浴槽の幅に沿って420mmで移動されることができ、4本のねじによって、500mmの幅の浴槽側部にねじ止めされる。ねじは、それぞれの両端に2本ずつある。支持体が取り付けられる移動可能なシステム23は、500mmの長さである。内壁の上部は浴槽側部から120mm下、外壁は浴槽側部から70mm下にある。それぞれ2回、ねじ止めされた、500mmの長さの2枚のプレートによって、一方の側では、移動可能なシステムに、トレーは固定されている。もう一方の側では、トレーはレベル計を含む。この移動可能なシステムは、浴槽の幅に沿って3本のねじでレベル計システムに固定されている。
【0045】
例2
好ましい実施形態では、(仏国特許発明第2816639中と同様に)古典的なオーバーフローは、この特許に記載されたオーバーフローに置き換えられている。
【0046】
古典的なオーバーフローでは、オーバーフローを変更するために必要なステップは、一般に以下の通りである。すなわち、
A) ラインを停止する、
B) 冷却(待機)する、
C) 浴槽のハードウェアを取り外す、
D) ポットを下げる、
E) ポットをガレージ位置に移動する、
F) プラットフォームを取り付ける、
G) ストリップを切断する、
H) (オーバーフローと一緒に)筒口を取り外す、
I) (オーバーフローと一緒に)新しい筒口を取り付ける、
J) ストリップをトレッディング(treading)する、
K) ストリップを溶接する、
L) プラットフォームを取り外す、
M) ポットをガレージ位置から移動する、
N) ポットを上げる、
O) 浴槽のハードウェアを取り付ける、
P) 筒口を不活性化する、
Q) 加熱する、
R) ラインを再始動する。
【0047】
この手順は、古典的なオーバーフローが使用される場合、約24時間かかる。一方、取り外し可能なオーバーフローが取り付けられている場合には、ステップA、C、D、N、O、P、QおよびRのみが行われる。したがって、取り外し可能なオーバーフローの交換は、8時間のみである。