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特許7041315電気化学セル用電解質、及び電気化学セル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】電気化学セル用電解質、及び電気化学セル
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/1016 20160101AFI20220315BHJP
   H01M 8/1067 20160101ALI20220315BHJP
   H01M 8/0289 20160101ALI20220315BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20220315BHJP
【FI】
H01M8/1016
H01M8/1067
H01M8/0289
H01B1/06 A
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021164038
(22)【出願日】2021-10-05
【審査請求日】2021-12-23
(31)【優先権主張番号】P 2020177867
(32)【優先日】2020-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】藤崎 真司
(72)【発明者】
【氏名】小原 隆平
(72)【発明者】
【氏名】大森 誠
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-220463(JP,A)
【文献】特開2003-022708(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2007-0024944(KR,A)
【文献】特開2006-114502(JP,A)
【文献】特開2002-198067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/10
H01M 8/02
C25B 9/00
C25B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学セルに用いられる電解質であって、
セラミックスによって構成される第1イオン伝導体、及び樹脂によって構成される第1支持体、を有する第1電解質層と、
セラミックスによって構成される第2イオン伝導体、及び樹脂によって構成される第2支持体、を有する第2電解質層と、
を備え、
前記第1支持体の含有量に対する前記第1イオン伝導体の含有量の割合は、前記第2支持体の含有量に対する前記第2イオン伝導体の含有量の割合よりも高い、
電気化学セル用電解質。
【請求項2】
セラミックスによって構成される第3イオン伝導体、及び樹脂によって構成される第3支持体、を有する第3電解質層をさらに備え、
前記第2電解質層は、前記第1電解質層と前記第3電解質層との間に配置され、
前記第3支持体の含有量に対する前記第3イオン伝導体の含有量の割合は、前記第2支持体の含有量に対する前記第2イオン伝導体の含有量の割合よりも高い、
請求項1に記載の電気化学セル用電解質。
【請求項3】
前記第1支持体の含有量に対する前記第1イオン伝導体の含有量の割合は、前記第3支持体の含有量に対する前記第3イオン伝導体の含有量の割合よりも高い、
請求項2に記載の電気化学セル用電解質。
【請求項4】
前記第1支持体の含有量に対する前記第1イオン伝導体の含有量の割合は、前記第3支持体の含有量に対する前記第3イオン伝導体の含有量の割合よりも低い、
請求項2に記載の電気化学セル用電解質。
【請求項5】
前記第1電解質層は、前記第3電解質層よりも厚い、
請求項2から4のいずれかに記載の電気化学セル用電解質。
【請求項6】
前記第1電解質層は、前記第3電解質層よりも薄い、
請求項2から4のいずれかに記載の電気化学セル用電解質。
【請求項7】
前記第1イオン伝導体、前記第2イオン伝導体、及び前記第3イオン伝導体は、互いに同じ材料によって構成される、
請求項2から6のいずれかに記載の電気化学セル用電解質。
【請求項8】
前記第1支持体、前記第2支持体、及び前記第3支持体は、互いに同じ材料によって構成される、
請求項2から7のいずれかに記載の電気化学セル用電解質。
【請求項9】
前記第1イオン伝導体及び前記第2イオン伝導体は、互いに同じ材料によって構成される、
請求項1から8のいずれかに記載の電気化学セル用電解質。
【請求項10】
前記第1支持体及び前記第2支持体は、バインダである、
請求項1から9のいずれかに記載の電気化学セル用電解質。
【請求項11】
前記第1支持体及び前記第2支持体は、互いに同じ材料によって構成される、
請求項1から10のいずれかに記載の電気化学セル用電解質。
【請求項12】
前記第1支持体及び前記第2支持体は、ポリフッ化ビニリデンによって構成される、
請求項1から11のいずれかに記載の電気化学セル用電解質。
【請求項13】
前記第1電解質層は、前記第2電解質層よりも厚い、
請求項1から12のいずれかに記載の電気化学セル用電解質。
【請求項14】
前記第2電解質層は、前記第1電解質層よりも厚い、
請求項1から12のいずれかに記載の電気化学セル用電解質。
【請求項15】
第1電極と、
第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に配置される、請求項1から14のいずれかに記載の電解質と、
を備える、電気化学セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学セル用電解質、及び電気化学セルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気化学セルは、電極と、電解質とを有している。電解質は、例えばイオン伝導性のセラミックスによって構成されるものがある。このイオン伝導性のセラミックスは、バインダなどによって支持されている。このように構成された電解質上に電極が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-133337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らが鋭意検討した結果、電解質をイオン伝導性のセラミックスによって構成した場合、セラミックスの割合を高くすることによって、電解質と電極との界面抵抗が低減する一方で、電解質内における気孔の割合が大きくなり、その結果、メタノールなどの燃料が電解質を透過するおそれがあることを見出した。
【0005】
そこで本発明の課題は、電極との界面抵抗を低減するとともに燃料透過性を抑制することができる電気化学セル用電解質を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1側面に係る電気化学セル用電解質は、電気化学セルに用いられる。この電気化学セル用電解質は、第1電解質層と第2電解質層とを備える。第1電解質層は、第1イオン伝導体及び第1支持体を有する。第1イオン伝導体は、セラミックスによって構成される。第1支持体は、樹脂によって構成される。第2電解質層は、第2イオン伝導体、及び第2支持体を有する。第2イオン伝導体は、セラミックスによって構成される。第2支持体は、樹脂によって構成される。第1支持体の含有量に対する第1イオン伝導体の含有量の割合は、第2支持体の含有量に対する第2イオン伝導体の含有量の割合よりも高い。
【0007】
上述した構成によれば、第2電解質層に比べて、第1電解質層は、支持体の含有量に対するイオン伝導体の含有量の割合が高い。このため、第2電解質層のみを有する電解質に比べて、本発明に係る電解質は、第1電解質層上に配置された電極との界面の抵抗を低減することができる。また、第1電解質層に比べて、第2電解質層は、支持体の含有量に対するイオン伝導体の含有量の割合が低い。すなわち、第2電解質層は、第1電解質層に比べて、イオン伝導体の含有量に対する支持体の含有量の割合が高い。このため、第1電解質層のみを有する電解質に比べて、本発明に係る電解質は、メタノールなどの燃料の透過を第2電解質によって抑制することができる。このように、本発明に係る電気化学セル用電解質は、電極との界面抵抗を低減するとともに燃料透過性を抑制することができる。なお、含有量の割合は、後述するように、面積の割合によって算出することができる。
【0008】
好ましくは、電気化学セル用電解質は、第3電解質層をさらに備える。第3電解質層は、第3イオン伝導体及び第3支持体、を有する。第3イオン伝導体は、セラミックスによって構成される。第3支持体は、樹脂によって構成される。第2電解質層は、第1電解質層と第3電解質層との間に配置される。第3支持体の含有量に対する第3イオン伝導体の含有量の割合は、第2支持体の含有量に対する第2イオン伝導体の含有量の割合よりも高い。
【0009】
この構成によれば、この電解質の両面に電極を形成した場合、第1電解質層及び第3電解質層上に電極を形成することができる。第1及び第3電解質層は、第2電解質層に比べて、支持体の含有量に対するイオン伝導体の含有量の割合が高いため、電解質と各電極との界面抵抗を低減することができる。
【0010】
好ましくは、第1支持体の含有量に対する第1イオン伝導体の含有量の割合は、第3支持体の含有量に対する第3イオン伝導体の含有量の割合よりも高い。
【0011】
好ましくは、第1支持体の含有量に対する第1イオン伝導体の含有量の割合は、第3支持体の含有量に対する第3イオン伝導体の含有量の割合よりも低い。
【0012】
好ましくは、第1電解質層は、前記第3電解質層よりも厚い。
【0013】
好ましくは、第1電解質層は、前記第3電解質層よりも薄い。
【0014】
好ましくは、第1イオン伝導体、第2イオン伝導体、及び第3イオン伝導体は、互いに同じ材料によって構成される。
【0015】
好ましくは、第1支持体、第2支持体、及び第3支持体は、互いに同じ材料によって構成される。
【0016】
好ましくは、第1イオン伝導体及び第2イオン伝導体は、互いに同じ材料によって構成される。
【0017】
好ましくは、第1支持体及び第2支持体は、バインダである。
【0018】
好ましくは、第1支持体及び第2支持体は、互いに同じ材料によって構成される。
【0019】
好ましくは、第1支持体及び第2支持体は、ポリフッ化ビニリデンによって構成される。
【0020】
好ましくは、第1電解質層は、第2電解質層よりも厚い。
【0021】
好ましくは、第2電解質層は、第1電解質層よりも厚い。
【0022】
本発明の第2側面に係る電気化学セルは、第1電極と、第2電極と、上記いずれかの電解質と、を備える。電解質は、第1電極と第2電極との間に配置される。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、電極との界面抵抗を低減するとともに燃料透過性を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】固体アルカリ形燃料電池の断面図。
図2】電解質の拡大断面図。
図3】変形例に係る固体アルカリ形燃料電池の断面図。
図4】変形例に係る第1電解質層の拡大断面図。
図5】実施例1における電解質層の断面を示すSEM写真。
図6】実施例2における電解質層の断面を示すSEM写真。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る電解質を用いた電気化学セルの一例である固体アルカリ形燃料電池100の実施形態について図面を参照しつつ説明する。固体アルカリ形燃料電池100は、水酸化物イオンをキャリアとするアルカリ形燃料電池(AFC)の一種である。
【0026】
(固体アルカリ形燃料電池100)
図1は、実施形態に係る固体アルカリ形燃料電池100の構成を示す断面図である。固体アルカリ形燃料電池100は、カソード2(第1電極の一例)、アノード3(第2電極の一例)、及び電解質4を備える。また、固体アルカリ形燃料電池100は、第1セパレータ11と、第2セパレータ12と、を備えている。カソード2、アノード3、及び電解質4は、燃料電池用接合体10を構成する。実際に使用する際は、複数の固体アルカリ形燃料電池100がスタックされる。詳細には、複数の燃料電池用接合体10が第1及び第2セパレータ11、12を介してスタックされる。
【0027】
(第1及び第2セパレータ11、12)
第1及び第2セパレータ11、12は、燃料電池用接合体10を厚さ方向(z軸方向)の両側から挟むように配置されている。第1セパレータ11は、カソード2に酸素(O)を含む酸化剤を供給するように構成されている。第1セパレータ11は、第1流路111を有している。第1流路111は、カソード2と対向している。この第1流路111には、酸素(O)を含む酸化剤が供給される。
【0028】
第2セパレータ12は、アノード3に水素原子(H)を含む燃料を供給するように構成されている。第2セパレータ12は、第2流路121を有している。第2流路121は、アノード3と対向している。この第2流路121には、水素原子(H)を含む燃料が供給される。例えば、第2流路121には、メタノールが供給される。
【0029】
複数の燃料電池用接合体10が第1及び第2セパレータ11,12を介してスタックされている場合は、第1セパレータ11は、第1流路111が形成される面とは反対側の面に第2流路が形成されている。また、第2セパレータ12は、第2流路121が形成される面とは反対側の面に第1流路が形成されている。
【0030】
(燃料電池用接合体10)
燃料電池用接合体10は、カソード2、アノード3、及び電解質4を備える。燃料電池用接合体10は、下記の電気化学反応式に基づいて、比較的低温(例えば、50℃~250℃)で発電する。ただし、下記の電気化学反応式では、燃料の一例としてメタノールが用いられている。
【0031】
・カソード2: 3/2O+3HO+6e→6OH
・アノード3: CHOH+6OH→6e+CO+5H
・全体 : CHOH+3/2O→CO+2H
【0032】
(カソード2)
カソード2は、電解質4の第1面401側(図1の上面側)に配置されている。詳細には、カソード2は、電解質4の第1電解質層41上に配置されている。カソード2は、一般的に空気極と呼ばれる陽極である。
【0033】
固体アルカリ形燃料電池100の発電中、カソード2には、第1セパレータ11の第1流路111を介して酸素(O)を含む酸化剤が供給される。酸化剤としては、空気を用いるのが好ましく、空気は加湿されていることがより好ましい。カソード2は、内部に酸化剤を拡散可能な多孔質体である。カソード2の気孔率は特に制限されない。カソード2の厚みは特に制限されないが、例えば10~200μmとすることができる。
【0034】
カソード2は、AFCに使用される公知の空気極触媒を含むものであればよく、特に限定されない。カソード触媒の例としては、白金族元素(Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt)、鉄族元素(Fe、Co、Ni)等の第8~10族元素(IUPAC形式での周期表において第8~10族に属する元素)、Cu、Ag、Au等の第11族元素(IUPAC形式での周期表において第11族に属する元素)、ロジウムフタロシアニン、テトラフェニルポルフィリン、Coサレン、Niサレン(サレン=N,N’-ビス(サリチリデン)エチレンジアミン)、銀硝酸塩、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられる。カソード2における触媒の担持量は特に限定されないが、好ましくは0.1~10mg/cm、より好ましくは、0.1~5mg/cmである。カソード触媒はカーボンに担持させるのが好ましい。カソード2ないしそれを構成する触媒の好ましい例としては、白金担持カーボン(Pt/C)、パラジウム担持カーボン(Pd/C)、ロジウム担持カーボン(Rh/C)、ニッケル担持カーボン(Ni/C)、銅担持カーボン(Cu/C)、及び銀担持カーボン(Ag/C)が挙げられる。
【0035】
カソード2の作製方法は特に限定されないが、例えば、カソード触媒及び所望により担体をバインダと混合してペースト状にする。そして、このペースト状混合物を電解質4上に塗布して乾燥させることによりカソード2を形成することができる。
【0036】
(アノード3)
アノード3は、電解質4の第2面402側(図1の下面側)に配置されている。詳細には、アノード3は、電解質4の第3電解質層43上に配置されている。アノード3は、一般的に燃料極と呼ばれる陰極である。
【0037】
固体アルカリ形燃料電池100の発電中、アノード3には、第2セパレータ12の第2流路121を介して、水素原子(H)を含む燃料が供給される。燃料としては、メタノールを用いるのが好ましい。アノード3は、内部に燃料を拡散可能な多孔質体である。アノード3の気孔率は特に制限されない。アノード3の厚みは特に制限されないが、例えば10~500μmとすることができる。
【0038】
燃料は、アノード3において水酸化物イオン(OH)と反応可能な燃料化合物を含んでいればよく、液体燃料及び気体燃料のいずれの形態であってもよい。
【0039】
燃料化合物としては、例えば、(i)ヒドラジン(NHNH)、水加ヒドラジン(NHNH・HO)、炭酸ヒドラジン((NHNHCO)、硫酸ヒドラジン(NHNH・HSO)、モノメチルヒドラジン(CHNHNH)、ジメチルヒドラジン((CHNNH、CHNHNHCH)、及びカルボンヒドラジド((NHNHCO)等のヒドラジン類、(ii)尿素(NHCONH)、(iii)アンモニア(NH)、(iv)イミダゾール、1,3,5-トリアジン、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール等の複素環類化合物、(v)ヒドロキシルアミン(NHOH)、硫酸ヒドロキシルアミン(NHOH・HSO)等のヒドロキシルアミン類、及びこれらの組合せが挙げられる。これらの燃料化合物のうち炭素を含まない化合物(すなわち、ヒドラジン、水加ヒドラジン、硫酸ヒドラジン、アンモニア、ヒドロキシルアミン、硫酸ヒドロキシルアミン等)は、一酸化炭素による触媒被毒の問題が無いため特に好適である。
【0040】
燃料化合物は、そのまま燃料として用いてもよいが、水及び/又はアルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの低級アルコール等)に溶解させた溶液として用いてもよい。例えば、上記燃料化合物のうち、ヒドラジン、水化ヒドラジン、モノメチルヒドラジン及びジメチルヒドラジンは液体であるので、そのまま液体燃料として使用可能である。また、炭酸ヒドラジン、硫酸ヒドラジン、カルボンヒドラジド、尿素、イミダゾール、及び3-アミノ-1,2,4-トリアゾール、及び硫酸ヒドロキシルアミンは固体であるが水に可溶である。1,3,5-トリアジン及びヒドロキシルアミンは固体であるがアルコールに可溶である。アンモニアは気体であるが水に可溶である。このように、固体の燃料化合物は、水又はアルコールに溶解させて液体燃料として使用可能である。燃料化合物を水及び/又はアルコールに溶解させて用いる場合、溶液中の燃料化合物の濃度は、例えば1~90重量%であり、好ましくは1~30重量%である。
【0041】
また、メタノール、エタノール等のアルコール類やエーテル類を含む炭化水素系液体燃料、メタン等の炭化水素系ガス、或いは純水素などは、そのまま燃料として用いることができる。特に、本実施形態に係る固体アルカリ形燃料電池100に用いられる燃料としては、メタノールが好適である。メタノールは、気体状態、液体状態、及び、気液混合状態のいずれであってもよい。
【0042】
アノード3は、AFCに使用される公知のアノード触媒を含むものであればよく、特に限定されない。アノード触媒の例としては、Pt、Ni、Co、Fe、Ru、Sn、及びPd等の金属触媒が挙げられる。金属触媒は、カーボン等の担体に担持されるのが好ましいが、金属触媒の金属原子を中心金属とする有機金属錯体の形態としてもよく、この有機金属錯体を担体として担持されていてもよい。また、アノード触媒の表面には多孔質材料等で構成された拡散層を配置してもよい。アノード3及びそれを構成する触媒の好ましい例としては、ニッケル、コバルト、銀、白金担持カーボン(Pt/C)、パラジウム担持カーボン(Pd/C)、ロジウム担持カーボン(Rh/C)、ニッケル担持カーボン(Ni/C)、銅担持カーボン(Cu/C)、及び銀担持カーボン(Ag/C)が挙げられる。
【0043】
アノード3の作製方法は特に限定されないが、例えば、アノード触媒及び所望により担体をバインダと混合してペースト状にする。そして、このペースト状混合物を電解質4上に塗布して乾燥させることによりアノード3を形成することができる。
【0044】
(電解質4)
電解質4は、カソード2とアノード3との間に配置される。電解質4は、カソード2及びアノード3のそれぞれに接続される。電解質4は、イオン伝導性を有する。本実施形態では、電解質4は、水酸化物イオン伝導性を有する。電解質4は、膜状である。電解質4は、第1電解質層41、第2電解質層42、及び第3電解質層43を有している。第2電解質層42は、第1電解質層41と第3電解質層43との間に配置されている。第1電解質層41、第2電解質層42、及び第3電解質層43は、この順で積層されている。
【0045】
電解質4の厚さtは、例えば、10~60μm程度である。そのうち、第1電解質層41の厚さt1及び第3電解質層43の厚さt3は、例えば、それぞれ4~20μm程度である。また、第2電解質層42の厚さt2は、例えば、2~20μm程度である。
【0046】
第1~第3電解質層41~43の厚さt1~t3の測定方法は、次の通りである。まず、図1に示すような、電解質4の中央近傍を通る切断面(xz面)を作成する。そして、その切断面において、電解質4の両端部の任意の点と、中央部の任意の点とで、第1電解質層41の厚さを測定し、その平均値を第1電解質層41の厚さt1とすることができる。同様の方法で、第2電解質層42の厚さt2、第3電解質層43の厚さt3、及び電解質4の厚さtも算出することができる。なお、第1電解質層41、第2電解質層42、及び第3電解質層43の境界は、FE-SEMによる反射電子像のコントラスト差から判断することができる。
【0047】
第1電解質層41の厚さt1及び第3電解質層43の厚さt3の少なくとも一方は、第2電解質層42の厚さt2よりも厚くすることができる。例えば、第2電解質層42の厚さt2に対する、第1電解質層41の厚さt1の割合(t1/t2)を、1.1~2.0とすることができる。同様に、第2電解質層42の厚さt2に対する、第3電解質層43の厚さt3の割合(t3/t2)を、1.1~2.0とすることができる。
【0048】
第2電解質層42の厚さt2を、第1電解質層41の厚さt1及び第3電解質層43の厚さt3の少なくとも一方よりも厚くしてもよい。例えば、第1電解質層41の厚さt1に対する、第2電解質層42の厚さt2の割合(t2/t1)を、1.1~2.0とすることができる。同様に、第3電解質層43の厚さt3に対する、第2電解質層42の厚さt2の割合(t2/t3)を、1.1~2.0とすることができる。
【0049】
図2は、電解質4の断面を拡大して示す模式図である。図2に示すように、第1電解質層41は、第1イオン伝導体411と、第1支持体412とを有している。第2電解質層42は、第2イオン伝導体421と、第2支持体422とを有している。第3電解質層43は、第3イオン伝導体431と、第3支持体432とを有している。
【0050】
第1、第2、及び第3イオン伝導体411、421、431は、イオン伝導性を有している。第1、第2、及び第3イオン伝導体411、421、431は、例えば、水酸化物イオン伝導性を有する。固体アルカリ形燃料電池100の発電中、電解質4は、主に第1、第2、及び第3イオン伝導体411、421、431によって、カソード2側からアノード3側に水酸化物イオン(OH)を伝導する。
【0051】
第1、第2、及び第3イオン伝導体411、421、431の水酸化物イオン伝導率は特に制限されないが、0.1mS/cm以上が好ましく、より好ましくは0.5mS/cm以上、さらに好ましくは1.0mS/cm以上である。第1、第2、及び第3イオン伝導体411、421、431の水酸化物イオン伝導率は、高いほど好ましく、その上限値は特に制限されないが、例えば10mS/cmである。
【0052】
第1、第2、及び第3イオン伝導体411、421、431は、互いに同じ材料によって構成することができる。第1、第2、及び第3イオン伝導体411、421、431は、セラミックスによって構成されている。詳細には、第1、第2、及び第3イオン伝導体411、421、431は、水酸化物イオン伝導性を有するセラミックスによって構成することができる。好ましくは、第1、第2、及び第3イオン伝導体411、421、431は、層状複水酸化物(LDH:Layered Double Hydroxide)によって構成することができる。
【0053】
LDHは、M2+ 1-x3+ (OH)n-x/n・mHO(式中、M2+は2価の陽イオン、M3+は3価の陽イオンであり、An-はn価の陰イオン、nは1以上の整数、xは0.1~0.4、mは水のモル数を意味する任意の整数である)の一般式で示される基本組成を有する。M2+の例としてはMg2+、Ca2+、Sr2+、Ni2+、Co2+、Fe2+、Mn2+、及びZn2+が挙げられ、M3+の例としては、Al3+、Fe3+、Ti3+、Y3+、Ce3+、Mo3+、及びCr3+が挙げられ、An-の例としてはCO 2-及びOHが挙げられる。M2+及びM3+としては、それぞれ1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0054】
LDHは、複数の水酸化物基本層と、これら複数の水酸化物基本層間に介在する中間層とから構成される。中間層は、陰イオン及びHOで構成される。水酸化物基本層は、例えば金属MがNi、Al、Tiの場合には、Ni、Al、Ti及びOH基を含む。以下、LDHの水酸化物基本層がNi、Al、Ti及びOH基を含む場合について説明する。
【0055】
LDH中のNiはニッケルイオンの形態を採りうる。LDH中のニッケルイオンは典型的にはNi2+であると考えられるが、Ni3+等の他の価数もありうるため、特に限定されない。LDH中のAlはアルミニウムイオンの形態を採りうる。LDH中のアルミニウムイオンは典型的にはAl3+であると考えられるが、他の価数もありうるため、特に限定されない。LDH中のTiはチタンイオンの形態を採りうる。LDH中のチタンイオンは典型的にはTi4+であると考えられるが、Ti3+等の他の価数もありうるため、特に限定されない。水酸化物基本層は、Ni、Al、Ti及びOH基を主要構成要素として含むのが好ましいが、他の元素ないしイオンを含んでいてもよいし、不可避不純物を含んでいてもよい。不可避不純物は、製法上不可避的に混入されうる任意元素であり、例えば原料や基材に由来してLDH中に混入しうる。
【0056】
LDHの中間層は、陰イオン及びHOで構成される。陰イオンは1価以上の陰イオン、好ましくは1価又は2価のイオンである。好ましくは、LDH中の陰イオンはOH及び/又はCO 2-を含む。
【0057】
上記のとおり、Ni、Al及びTiの価数は必ずしも定かではないため、LDHを一般式で厳密に特定することは非実際的又は不可能である。仮に水酸化物基本層が主としてNi2+、Al3+、Ti4+及びOH基で構成されるものと想定した場合、LDHは、一般式:Ni2+ 1-x-yAl3+ Ti4+ (OH)n- (x+2y)/n・mHO(式中、An-はn価の陰イオン、nは1以上の整数、好ましくは1又は2であり、0<x<1、好ましくは0.01≦x≦0.5、0<y<1、好ましくは0.01≦y≦0.5、0<x+y<1、mは0以上、典型的には0を超える又は1以上の実数である)なる基本組成で表すことができる。もっとも、上記一般式はあくまで「基本組成」と解されるべきであり、Ni2+、Al3+、Ti4+等の元素がLDHの基本的特性を損なわない程度に他の元素又はイオン(同じ元素の他の価数の元素又はイオンや製法上不可避的に混入されうる元素又はイオンを含む)で置き換え可能なものとして解されるべきである。
【0058】
第1支持体412は、第1イオン伝導体411を支持するように構成されている。第2支持体422は、第2イオン伝導体421を支持するように構成されている。第3支持体432は、第3イオン伝導体431を支持するように構成されている。
【0059】
詳細には、第1、第2、及び第3支持体412、422、432は、バインダである。第1支持体412は、第1イオン伝導体411を構成する各構成粒子間に配置されている。第1支持体412は、第1イオン伝導体411の各構成粒子同士を決着することによって、第1イオン伝導体411を支持している。このように、第1支持体412が第1イオン伝導体411を支持することによって、第1電解質層41の形状を維持している。同様に、第2支持体422は第2イオン伝導体421の各構成粒子同士を決着しており、第3支持体432は第3イオン伝導体431の各構成粒子同士を決着している。
【0060】
第1、第2、及び第3支持体412、422、432は、樹脂によって構成されている。第1支持体412、第2支持体422、及び第3支持体432は、互いに同じ材料によって構成されている。
【0061】
第1、第2、及び第3支持体412、422、432を構成する材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレン-ブタジエンゴム、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン-クロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン-ペンタフルオロプロピレン共重合体、プロピレン-テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン-パーフルオロメチルビニルエーテル-テトラフルオロエチレン共重合体、又はエチレン-アクリル酸共重合体などを挙げることができる。
【0062】
第1電解質層41において、第1支持体412の含有量(CS1)に対する第1イオン伝導体411の含有量(CI1)の割合(CI1/CS1)は、例えば、1.1~2.3程度である。第2電解質層42において、第2支持体422の含有量(CS2)に対する第2イオン伝導体421の含有量(CI2)の割合(CI2/CS2)は、例えば、0.4~1.0程度である。第3電解質層43において、第3支持体432の含有量(CS3)に対する第3イオン伝導体431の含有量(CI3)の割合(CI3/CS3)は、例えば、1.1~2.3程度である。
【0063】
なお、第1支持体412の含有量(CS1)、第1イオン伝導体411の含有量(CI1)、第2支持体422の含有量(CS2)、第2イオン伝導体421の含有量(CI2)、第3支持体432の含有量(CS3)、及び第3イオン伝導体431の含有量(CI3)は、次の方法によって求めることができる。
【0064】
まず、日本電子株式会社のクロスセクションポリッシャを用いて、イオンミリング加工処理によって電解質4の断面を作製する。そして、反射電子検出器を用いたFE-SEMによって電解質4の断面画像を取得する。反射電子像では、イオン伝導体411,421,431と支持体412,422,432と気孔の明暗差が異なり、イオン伝導体411,421,431が“灰白色”、支持体412,422,432が“灰色”、気孔が“黒色”で表示される。このような明暗差による3値化は、画像の輝度を256階調に分類することによって実現可能である。この反射電子像のコントラストから、イオン伝導体411,421,431、支持体412,422,432、及び気孔を同定することができる。
【0065】
そして、反射電子像をMVTec社(ドイツ)製の画像解析ソフトHALCONによって画像解析し、解析画像において第1支持体412の合計面積に対する第1イオン伝導体411の合計面積の割合を算出する。このように算出される割合を、第1支持体412の含有量に対する第1イオン伝導体411の含有量の割合とすることができる。同様に、第2支持体422の合計面積に対する第2イオン伝導体421の合計面積の割合を算出したものを、第2支持体422の含有量に対する第2イオン伝導体421の含有量の割合とすることができる。また、第3支持体432の合計面積に対する第3イオン伝導体431の合計面積の割合を算出したものを、第3支持体432の含有量に対する第3イオン伝導体431の含有量の割合とすることができる。
【0066】
第1支持体412の含有量(CS1)に対する第1イオン伝導体411の含有量(CI1)の割合(CI1/CS1)は、第2支持体422の含有量(CS2)に対する第2イオン伝導体421の含有量(CI2)の割合(CI2/CS2)よりも高い。また、第3支持体432の含有量(CS3)に対する第3イオン伝導体431の含有量(CI3)の割合(CI3/CS3)は、第2支持体422の含有量(CS2)に対する第2イオン伝導体421の含有量(CI2)の割合(CI2/CS2)よりも高い。
【0067】
例えば、第1支持体412の含有量(CS1)に対する第1イオン伝導体411の含有量(CI1)の割合(CI1/CS1)は、第2支持体422の含有量(CS2)に対する第2イオン伝導体421の含有量(CI2)の割合(CI2/CS2)の1.1~5.4倍程度とすることができる。第3支持体432の含有量(CS3)に対する第3イオン伝導体431の含有量(CI3)の割合(CI3/CS3)は、第2支持体422の含有量(CS2)に対する第2イオン伝導体421の含有量(CI2)の割合(CI2/CS2)の1.1~5.4倍程度とすることができる。
【0068】
第1支持体412の含有量(CS1)に対する第1イオン伝導体411の含有量(CI1)の割合(CI1/CS1)は、第3支持体432の含有量(CS3)に対する第3イオン伝導体431の含有量(CI3)の割合(CI3/CS3)よりも低い。この構成によれば、例えば、一般的に樹脂の割合が少ないカソード2との接着性を向上させることができる。
【0069】
なお、第1電解質層41は、実質的に第1イオン伝導体411及び第1支持体412のみによって構成されており、その他の物質は無視できる程度である。同様に、第2電解質層42は、実質的に第2イオン伝導体421及び第2支持体422のみによって構成されており、その他の物質の密度は無視できる程度である。また、第3電解質層43は、実質的に第3イオン伝導体431及び第3支持体432のみによって構成されており、その他の物質は無視できる程度である。
【0070】
電解質4は、例えば、次のようにして形成することができる。まず、第1電解質層41を形成する。詳細には、上述したような第1支持体412を構成する材料を有機溶媒によって溶かして、第1支持体412の溶解液を作成する。そして、この溶解液中に、上述した第1イオン伝導体411を構成する材料を入れて、第1電解質層41のペーストを作成する。そして、このペーストを剥離フィルム上に成膜し、ペーストを乾燥させた後、剥離フィルムを剥離して第1電解質層41を形成する。
【0071】
次に、第1電解質層41と同様に第2電解質層42のペーストを作成し、このペーストを第1電解質層41上に成膜し乾燥させることによって、第1電解質層41上に第2電解質層42を形成する。そして、第1電解質層41と同様に第3電解質層43のペーストを作成し、このペーストを第2電解質層42上に成膜し乾燥させることによって、第2電解質層42上に第3電解質層43を形成する。以上により、第1~第3電解質層41~43を有する電解質4を形成することができる。
【0072】
(実施形態の変形例)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0073】
変形例1
上記実施形態では、第1~第3電解質層41~43は、水酸化物イオン伝導性を有していたが、第1~第3電解質層41~43のイオン伝導性はこれに限定されない。例えば、第1~第3電解質層41~43は、プロトン伝導性を有していてもよいし、酸素イオン伝導性を有していてもよい。
【0074】
変形例2
上記実施形態では、電解質4は、第1~第3電解質層41~43を有する3層構成となっているが、電解質4の構成はこれに限定されない。例えば、電解質4は、第3電解質層43を有していなくてもよい。すなわち、図3に示すように、電解質4は、第1及び第2電解質層41,42の2層構成であってもよい。
【0075】
変形例3
上記実施形態では、第1支持体412は、バインダであるが、第1支持体412の構成はこれに限定されない。例えば、図4に示すように、第1支持体412は、樹脂製の多孔質基材であってもよい。この場合、第1支持体412は、三次元網目構造を有する。「三次元網目構造」とは、基材の構成物質が立体的かつ網目状に繋がった構造である。第1支持体412は、連続孔412aを形成する。連続孔412aは、立体的かつ網目状に孔が繋がることによって構成されており、第1支持体412の外表面に露出している。連続孔412aには、第1イオン伝導体411が含浸されている。
【0076】
第1支持体412の材質は、例えば、ポリスチレン、ポリエーテルサルフォン、ポリプロピレン、エポキシ樹脂、ポリフェニレンサルファイド、親水化したフッ素樹脂(四フッ素化樹脂:PTFE等、ポリフッ化ビニリデン)、セルロース、ナイロン、ポリエチレン及びこれらの任意の組合せが挙げられる。
【0077】
なお、第2支持体422、及び第3支持体432も同様に、樹脂製の多孔質基材とすることができる。
【0078】
変形例4
第1電解質層41の厚さt1は、第2電解質層42の厚さt2と実質的に同じであってもよい。また、第3電解質層43の厚さt3は、第2電解質層42の厚さt2と実質的に同じであってもよい。
【0079】
変形例5
上記実施形態では、第1電解質層41は第3電解質層43と同じ厚さであったが、電解質4の構成はこれに限定されない。例えば、第1電解質層41の厚さt1は、第3電解質層43の厚さt3よりも大きくすることができる。もしくは、第1電解質層41の厚さt1は、第3電解質層43の厚さt3よりも小さくすることもできる。
【0080】
変形例6
第1支持体412の含有量(CS1)に対する第1イオン伝導体411の含有量(CI1)の割合(CI1/CS1)は、第3支持体432の含有量(CS3)に対する第3イオン伝導体431の含有量(CI3)の割合(CI3/CS3)よりも高くしてもよい。
【0081】
変形例7
上記実施形態では、本発明に係る電気化学セル用電解質を固体アルカリ形燃料電池に適用した実施形態を説明したが、本発明に係る電気化学セル用電解質が適用される対象は固体アルカリ形燃料電池に限定されず、例えば、固体高分子形燃料電池などの他の燃料電池にも適用することができる。
【0082】
また、上記実施形態では、水酸化物イオンをキャリアとする固体アルカリ形燃料電池100について説明したが、プロトンをキャリアとする燃料電池であってもよい。この場合、第1、第2、及び第3イオン伝導体411、421、431は、プロトン伝導性を有するセラミックスによって構成することができる。
【0083】
プロトン伝導性を有するセラミックスとしては、プロトン導電性を有する金属酸化物水和物などを用いることができる。このような金属酸化物水和物としては、酸化ジルコニウム水和物、酸化タングステン水和物、酸化スズ水和物、ニオブをドープした酸化タングステン、酸化ケイ素水和物、酸化リン酸水和物、ジルコニウムをドープした酸化ケイ素水和物、タングストリン酸、モリブドリン酸などを用いることができる。
【実施例
【0084】
以下の実施例は、支持体の含有量に対するイオン伝導体の含有量の割合を大きくすることによって、電解質層内における気孔の割合が大きくなることを示すためのものである。
【0085】
まず、PVDFを有機溶媒であるN-メチル-2-ピロリドンによって溶かして、支持体の溶解液を作成した。そして、この溶解液中に、イオン伝導体を構成する材料であるLDHを入れて、電解質層のペーストを作成した。
【0086】
そして、このペーストを剥離フィルム上に成膜し、ペーストを乾燥させた後、剥離フィルムを剥離して電解質層を形成した。
【0087】
以上の製造方法によって、実施例1及び2の電解質層を形成した。なお、支持体の含有量に対するイオン伝導体の含有量の割合は、実施例1では50vol%であり、実施例2では70vol%である。なお、実施例1及び2の電解質層は、支持体の含有量に対するイオン伝導体の含有量の割合以外は、基本的に同じ製造方法で製造した。
【0088】
図5は、実施例1における電解質層の断面を示すSEM写真であり、図6は、実施例2における電解質層の断面を示すSEM写真である。
【0089】
図5及び図6から明らかなように、支持体の含有量に対するイオン伝導体の含有量の割合を大きくすることによって、電解質層内における気孔の割合が大きくなることが分かった。
【符号の説明】
【0090】
2 カソード
3 アノード
4 電解質
41 第1電解質層
411 第1イオン伝導体
412 第1支持体
42 第2電解質層
421 第2イオン伝導体
422 第2支持体
43 第3電解質層
431 第3イオン伝導体
432 第3支持体
【要約】
【課題】電極との界面抵抗を低減するとともに燃料透過性を抑制する。
【解決手段】電気化学セル用電解質4は、第1電解質層41と第2電解質層42とを備える。第1電解質層41は、セラミックスによって構成される第1イオン伝導体411、及び樹脂製の第1支持体412を有する。第1支持体412は、第1イオン伝導体411を支持する。第2電解質層42は、セラミックスによって構成される第2イオン伝導体421、及び樹脂製の第2支持体422を有する。第2支持体422は、第2イオン伝導体421を支持する。第1支持体412の含有量に対する第1イオン伝導体411の含有量の割合は、第2支持体422の含有量に対する第2イオン伝導体421の含有量の割合よりも高い。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6