(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-15
(45)【発行日】2022-03-24
(54)【発明の名称】プリント配線板の検査方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/54 20200101AFI20220316BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20220316BHJP
【FI】
G01R31/54
H05K3/00 T
(21)【出願番号】P 2020168380
(22)【出願日】2020-10-05
【審査請求日】2020-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095795
【氏名又は名称】田下 明人
(72)【発明者】
【氏名】山田 啓太
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-153909(JP,A)
【文献】特開2008-203077(JP,A)
【文献】特開2009-288115(JP,A)
【文献】特開平09-264918(JP,A)
【文献】米国特許第05006808(US,A)
【文献】米国特許第06452410(US,B1)
【文献】国際公開第2007/138831(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/54
H05K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ネットと第2ネットを有するプリント配線板を繰り返し製造することで複数のプリント配線板を得ることと、
前記プリント配線板の前記第1ネットの抵抗
である第1抵
抗を測定することと、
前記プリント配線板の前記第2ネットの抵抗
である第2抵
抗を測定することと、
前記第1抵抗と前記第2抵抗で形成される第1組のデータ[(X、Y)=(第1抵抗、第2抵抗)]を準備することと、
前記第1組のデータをX-Y平面にプロットすることで、散布図を作成することと、
前記散布図を用いて、前記第1抵抗と前記第2抵抗の回帰直線を求めることと、
前記第1抵抗を前記回帰直線に代入することで、第2抵抗の予測値を算出することと、
前記第2抵抗の予測値を前記第1組のデータに追加することで第2組のデータ[(X、Y、予測値)=(第1抵抗、第2抵抗、第2抵抗の予測値)]を準備することと、
前記第2抵抗と前記第2抵抗の予測値との差
である第2抵抗の残
差を算出することと
、
前記第2抵抗の残差の標準偏差を求めることと、
前記
第2抵抗の残
差を用いて前記第2ネットの基準を決めることと、
前記第1ネットと前記第2ネットを有する別の前記プリント配線板(検査対象)を製造することと、
前記検査対象の前記第1ネットの抵抗
である第3抵
抗を測定することと、
前記検査対象の前記第2ネットの抵抗
である第4抵
抗を測定することと、
前記回帰直線に前記第3抵抗を代入することで、第4抵抗の予測値を求めることと、
前記第4抵抗と前記第4抵抗の予測値との差
である第4抵抗の残
差を求めることと、
前記第4抵抗の残差と前記基準を比較すること、とを有するプリント配線板の検査方法であって、
前記回帰直線の相関係数は0.7以上であ
り、
前記基準と前記標準偏差は次の関係を満足する。
関係:10×前記標準偏差≦前記基準≦30×前記標準偏差
【請求項2】
請求項
1のプリント配線板の検査方法であって、前記第4抵抗の残差が前記基準以下であると、前記検査対象の前記第2ネットは良品である。
【請求項3】
請求項1のプリント配線板の検査方法であって、前記複数のプリント配線板の数は30以上である。
【請求項4】
請求項1のプリント配線板の検査方法であって、さらに、前記第1組のデータを準備することと前記散布図を作成することとの間に一時的な散布図を作成することと前記一時的な散布図から外れ値を除去することを含む。
【請求項5】
請求項1のプリント配線板の検査方法であって、前記第1ネットを形成する配線の長さと前記第2ネットを形成する配線の長さは略等しい。
【請求項6】
請求項1のプリント配線板の検査方法であって、0.7以上の相関係数を有する2つのネットが前記第1ネットと前記第2ネットとして選ばれる。
【請求項7】
請求項1のプリント配線板の検査方法であって、0.9以上の相関係数を有する2つのネットが前記第1ネットと前記第2ネットとして選ばれる。
【請求項8】
請求項1のプリント配線板の検査方法であって、0.95以上の相関係数を有する2つのネットが前記第1ネットと前記第2ネットとして選ばれる。
【請求項9】
請求項1のプリント配線板の検査方法であって、前記第1組のデータの数は30以上である。
【請求項10】
請求項1のプリント配線板の検査方法であって、前記残差の数は30以上である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、電子部品の良否を判定する方法を開示している。特許文献1の44段落によれば、測定値と基準範囲が比較されている。そして、測定値が基準範囲内のときには、電子部品が良好と判定され、測定値が基準範囲外であると、電子部品が不良と判定されている。測定値の例として、特許文献1は抵抗を挙げている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
[特許文献1の課題]
図1(A)に示されるように、一般的なプリント配線板100は導体回路4と導体回路4に繋がっているビア導体3を含む。そして、プリント配線板100の高密度化が進むにつれて、導体回路4の幅とビア導体3の径は小さくなり、導体回路4とビア導体3で形成される配線5の長さは長くなっている。配線5はプリント配線板100の表面Fから裏面Sまで延びている。配線5の数も増えている。従って、同じタイプのプリント配線板が大量に製造されると、大量のプリント配線板の中に異常なプリント配線板が含まれることがある。異常の1例は、
図1(B)に示されている。
図1(B)は平面図である。
図1(B)では、導体回路4が欠落部6を含む。欠落部6では、導体回路4の一部が欠落している。欠落部6では、導体回路4の幅が極端に狭くなっている。しかしながら、配線5の長さが長い場合や配線5の幅が狭い場合には、欠落部6の有無によって配線5の抵抗は大きく変化しないと予測される。異常の別例は、
図1(C)に示されている。
図1(C)は断面図である。
図1(C)では、導体回路4とビア導体3間の接続部に異物7が存在している。異物7の例は、樹脂絶縁層2を形成する樹脂である。
図1(C)の例では、異物7により、導体回路4とビア導体3間の接触面積が減少する。しかしながら、配線5の長さが長い場合やビア導体3の径が小さい場合には、異物7の有無によって配線5の抵抗は大きく変化しないと予測される。従って、プリント配線板100の高密度化が進むと、測定結果と基準範囲を比較することで配線5の良否を判定することは難しくなると予想される。そして、
図1(B)に示される異常な配線を含むプリント配線板が市場で使用されると、寿命が極端に短くなると推測される。同様に、
図1(C)に示される異常な配線を含むプリント配線板が市場で使用されると、寿命が極端に短くなると推測される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るプリント配線板の検査方法は、第1ネットと第2ネットを有するプリント配線板を繰り返し製造することで複数のプリント配線板を得ることと、前記プリント配線板の前記第1ネットの抵抗である第1抵抗を測定することと、前記プリント配線板の前記第2ネットの抵抗である第2抵抗を測定することと、前記第1抵抗と前記第2抵抗で形成される第1組のデータ[(X、Y)=(第1抵抗、第2抵抗)]を準備することと、前記第1組のデータをX-Y平面にプロットすることで、散布図を作成することと、前記散布図を用いて、前記第1抵抗と前記第2抵抗の回帰直線を求めることと、前記第1抵抗を前記回帰直線に代入することで、第2抵抗の予測値を算出することと、前記第2抵抗の予測値を前記第1組のデータに追加することで第2組のデータ[(X、Y、予測値)=(第1抵抗、第2抵抗、第2抵抗の予測値)]を準備することと、前記第2抵抗と前記第2抵抗の予測値との差である第2抵抗の残差を算出することと、前記第2抵抗の残差の標準偏差を求めることと、前記第2抵抗の残差を用いて前記第2ネットの基準を決めることと、前記第1ネットと前記第2ネットを有する別の前記プリント配線板(検査対象)を製造することと、前記検査対象の前記第1ネットの抵抗である第3抵抗を測定することと、前記検査対象の前記第2ネットの抵抗である第4抵抗を測定することと、前記回帰直線に前記第3抵抗を代入することで、第4抵抗の予測値を求めることと、前記第4抵抗と前記第4抵抗の予測値との差である第4抵抗の残差を求めることと、前記第4抵抗の残差と前記基準を比較すること、とを有する。そして、回帰直線の相関係数は0.7以上であり、前記基準と前記標準偏差は次の関係を満足する。
関係:10×前記標準偏差≦前記基準≦30×前記標準偏差
【0006】
[実施形態の効果]
実施形態の検査方法は、強い相関を有する回帰直線を利用している。従って、第1抵抗の測定値を回帰直線に代入することで得られる第2抵抗の予測値と第2抵抗の測定値との差(残差)は小さいはずである。また、第1抵抗と第2抵抗は強い相関を有しているので、残差は適当な範囲内で変動する。残差の変動は安定している。変動の範囲は小さいはずである。実施形態の検査方法では、強い相関を有する回帰直線を用いて得られる残差から基準が決めている。そのため、実施形態の検査方法に用いられる基準は異常値に対し高い感度を有することができる。従って、実施形態の検査方法によれば、
図1(B)に示される異常を含むプリント配線板を検査することができる。
図1(C)に示される異常を含むプリント配線板を検査することができる。実施形態の検査方法でプリント配線板を評価することで、長期間、高い信頼性を維持するプリント配線板を提供することができる。例えば、プリント配線板内の配線の抵抗値が長期間安定している。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1(A)は本発明の実施形態に係るプリント配線板の断面図であり、
図1(B)と
図1(C)は異常の例を示し、
図1(D)は抵抗の例を示す。
【
図2】
図2(A)は散布図と回帰直線を示すグラフであり、
図2(B)は残差を示すグラフであり、
図2(C)は一時的な散布図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
実施形態の検査方法の手順の概要が説明される。
まず、第1ネットN1と第2ネットN2を有するプリント配線板100が繰り返し製造される。第1ネットN1の抵抗(第1抵抗)と第2ネットN2の抵抗(第2抵抗)が測定される。第1抵抗は変数Xであり、第2抵抗は変数Yである。第1抵抗と第2抵抗がX-Y平面にプロットされる。散布図が得られる。散布図から第1抵抗と第2抵抗との関係(回帰直線11)が求められる。回帰直線11の相関係数11は0.7以上である。相関係数11は0.9以上であることが好ましい。さらに、相関係数11は0.95以上であることが好ましい。第2抵抗と回帰直線11を用いて第2抵抗の残差Rが求められる。第2抵抗の残差Rを使って実施形態の検査方法の基準Wが決められる。
プロットと散布図作成との間に、一時的な散布図を作ることを追加することができる。一時的な散布図作成と散布図作成との間に、一時的な散布図から外れ値を削除することを追加することができる。基準Wは残差Rの標準偏差Σを用いて決めることができる。
新たなプリント配線板(別のプリント配線板)1001が製造される。新たなプリント配線板1001は検査対象である。検査対象1001の第1ネットN1の抵抗(第3抵抗)と第2ネットN2の抵抗(第4抵抗)が測定される。第3抵抗を回帰直線11に代入することで、第4抵抗の予測値が求められる。第4抵抗と第4抵抗の予測値との差R1と基準Wを比較することで、検査対象1001が検査される。差R1が基準W以下であると、第2ネットN2は良品である。プリント配線板100がヒートサイクルを受けても、第2ネットN2の抵抗は安定である。第2ネットN2は欠落部6を含んでいない。欠落部6を起点として、第2ネットN2は断線しない。第2ネットN2は、断線を引き起こす欠落部6を含んでいない。
【0009】
図1(A)に示されるプリント配線板100が繰り返し製造される。繰り返し製造されるプリント配線板の数はN(数N)である。同じプリント配線板を得ることを目指して、プリント配線板100が繰り返し製造される。プリント配線板100に番号が付けられる。最初に製造されるプリント配線板100に1が付けられる。その後、順に、プリント配線板100に番号が付けられる。Nは30以上の整数である。M番目に製造されるプリント配線板100に番号Mが付与される。Mは1以上、N以下の整数である。
図1(A)に示されるように、プリント配線板100は表面Fと表面Fと反対側の裏面Sを有する。さらに、プリント配線板100は複数の導体層1と複数の樹脂絶縁層2を有する。導体層1と樹脂絶縁層2は交互に積層されている。異なる導体層1は樹脂絶縁層2を貫通するビア導体3で接続される。各導体層1は複数の導体回路4を含む。表面Fに形成されている導体層1は複数の電極8を含む。電極8を介し、プリント配線板100に電子部品が実装される。裏面Sに形成されている導体層1は複数の端子9を含む。端子9を介し、プリント配線板100はマザーボードと接続される。電極8は第1電極81と第2電極82を含む。端子9は第1端子91と第2端子92を含む。
【0010】
第1電極81と第1端子91はプリント配線板100内のビア導体3と導体回路4を介し電気的に接続されている。第1電極81と第1端子91を電気的に接続しているビア導体3と導体回路4で形成される経路が第1ネットである。第1ネットN1は第1電極81と第1端子91を含む。
【0011】
第2電極82と第2端子92はプリント配線板100内のビア導体3と導体回路4を介し電気的に接続されている。第2電極82と第2端子92を電気的に接続しているビア導体3と導体回路4で形成される経路が第2ネットN2である。第2ネットは第2電極82と第2端子92を含む。
【0012】
第1ネットN1と第2ネットN2は独立している。第1ネットN1は第1配線の長さ(第1配線長)を有する。第2ネットN2は第2配線の長さ(第2配線長)を有する。第1配線長は、第1ネットN1内の各導体回路4の長さの和である。第2配線長は、第2ネットN2内の各導体回路4の長さの和である。第1配線長と第2配線長はほぼ等しい。同一の導体層1内に第1ネットN1に含まれる導体回路4と第2ネットN2に含まれる導体回路4が形成されていると、両者の長さはほぼ等しい。両者の厚みはほぼ等しい。両者の幅はほぼ等しい。
【0013】
ネットNは多数存在する。多数のネットNの中から第1ネットN1と第2ネットN2を選定することができる。ネットNはネットAとネットBを含む。同じ導体層1内では、ネットAを形成する導体回路4の幅とネットBを形成する導体回路4の幅はほぼ等しいことが好ましい。同じ導体層1内では、ネットAを形成する導体回路4の厚みとネットBを形成する導体回路4の厚みはほぼ等しいことが好ましい。
【0014】
(選定の第1例)
各ネットNは配線の長さ(配線長)を有する。配線長はネットNを形成する全ての導体回路4の和である。ネットAとネットBの配線長が比較される。ネットAの配線長AとネットBの配線長Bとの比(配線長A/配線長B)が0.90以上、1.1以下であると、ネットAは第1ネットN1であり、ネットBは第2ネットN2である。比(配線長A/配線長B)が0.95以上、1.05以下であると、多数のネットNの中から、第1ネットN1と第2ネットN2を容易に絞ることができる。
【0015】
(選定の第2例)
ネットNを形成する導体回路4の中から、最も長い導体回路(最長の導体回路)4Lが抽出される。ネットAの最長の導体回路4Lの長さ4LAとネットBの最長の導体回路4Lの長さ4LBとの比(長さ4LA/長さ4LB)が0.97以上、1.03以下であると、ネットAは第1ネットN1であり、ネットBは第2ネットN2である。
【0016】
(選定の第3例)
ネットAは各導体層1に導体回路Aを有し、ネットBは各導体層1に導体回路Bを有する。各導体回路Aは長さ(長さA)を有し、各導体回路Bは長さ(長さB)を有する。導体層1ごとに、長さAと長さBが比較される。長さAと長さBとの比(長さA/長さB)が算出される。導体層1ごとに、比(長さA/長さB)が0.9以上、1.1以下であると、ネットAは第1ネットN1であり、ネットBは第2ネットN2である。導体層1ごとに、比(長さA/長さB)が0.95以上、1.05以下であると、多数のネットNの中から、第1ネットN1と第2ネットN2を容易に絞ることができる。
【0017】
(選定の第4例)
プリント配線板100内の各ネットNの抵抗が測定される。もし、Nが30であると、各ネットの抵抗の数は30である。ネットAの抵抗(抵抗A)とネットBの抵抗(抵抗B)を変数として、抵抗Aと抵抗Bとの関係(回帰直線AB)が求められる。ネットBの候補はネットA以外の全ネットNである。その場合、回帰直線ABを作成するネットNの組み合わせ(ネットAとネットB(ネットA以外の全ネットN))ABの数は(N1)である。従って、回帰直線の数は(N1)である。各回帰直線ABから各回帰直線ABの相関係数ABが求められる。相関係数ABの数も(N1)である。全組み合わせから0.7以上の相関係数ABを有する組み合わせAB7が抽出される。実施形態の検査方法では、第1ネットN1と第2ネットN2が組み合わせAB7を形成する。組み合わせAB7が複数である時、全ての組み合わせAB7が実施形態の検査方法の対象である。組み合わせAB7の中で、0.9以上の相関係数ABを有する組み合わせAB9を選ぶことが好ましい。さらに、組み合わせAB7の中で、0.95以上の相関係数ABを有する組み合わせAB95を選ぶことが好ましい。相関係数ABが大きいほど、実施形態の検査方法の精度が高くなる。
【0018】
(選定の第5例)
同じ導体層1内では、ネットAを形成する導体回路4とネットBを形成する導体回路4はほぼ平行に走っている。その場合、ネットAは第1ネットN1であり、ネットBは第2ネットN2である。
【0019】
第1ネットN1と第2ネットN2との関係が、選定の第1例から第5例の中の1つを満足すると、第1ネットN1のデザインと第2ネットN2のデザインは似ている。
【0020】
各プリント配線板100の第1ネットN1と第2ネットN2の抵抗(抵抗値)が測定される。抵抗の測定値の例が
図1(D)に示される。第1ネットN1の抵抗(第1抵抗)は第1電極81と第1端子91との間の抵抗である。第2ネットN2の抵抗(第2抵抗)は第2電極82と第2端子92との間の抵抗である。
【0021】
実施形態では、第1抵抗は変数Xであり、第2抵抗は変数Yである。第1抵抗の値(第1抵抗)がX軸であり、第2抵抗の値(第2抵抗)がY軸である。第1抵抗と第2抵抗は第1組のデータ[(X、Y)=(第1抵抗、第2抵抗)]を形成する。第1組のデータは第1データと称される。一つの第1データ内の第1抵抗と第2抵抗は同じプリント配線板100に属する第1ネットN1と第2ネットN2の抵抗である。第1データの数はNである。第1抵抗で形成されるX軸と第2抵抗で形成されるY軸を含むX-Y平面に第1データがプロットされる。一時的な散布図が得られる。一時的な散布図は
図2(C)に示されている。
図2(C)では、一つの第1データは丸(〇)で描かれている。一時的な散布図にプロットされる第1データの数はK(数K)である。数Kは数N以下である。数Kは30以上である。数Kと数Nが同じであるとき、全第1データがプロットされる。数Kと数Nが異なるとき、全第1データの中からプロットされる第1データはランダムに選ばれる。あるいは、一時的な散布図が作られるとき、もし、全第1データの中に、異常なデータが含まれる場合、異常な第1データはプロットされない。
【0022】
一時的な散布図から外れ値が除去される。一時的な散布図が外れ値を含まないと、外れ値を除去することは行われない。その場合、一時的な散布図を作ることはスキップされる。
【0023】
一時的な散布図を観察することで、分布から離れている第1データが選ばれる。分布から離れている第1データは外れ値である。このような第1データは一時的な散布図から除去される。
【0024】
一時的な散布図から、統計的な手法を用いて外れ値が一時的な散布図から除去される。
[統計的な手法1]
第1抵抗の平均値X1と標準偏差σ1が求められる。X1とσ1を求めるための第1抵抗の数は数Nである。第2抵抗の平均値X2と標準偏差σ2が求められる。X2とσ2を求めるための第2抵抗の数は数Nである。
第1抵抗が所定の範囲以外であると、それらの第1抵抗を含む第1データは外れ値である。所定の範囲はX1±2×σ1である。もしくは、所定の範囲はX1±3×σ1である。
第2抵抗が所定の範囲以外であると、それらの第2抵抗を含む第1データは外れ値である。所定の範囲はX2±2×σ2である。もしくは、所定の範囲はX2±3×σ2である。
[統計的な手法2]
スミルノフ・グラブス検定により、外れ値が除去される。
[統計的な手法2]
トンプソン検定により、外れ値が除去される。
【0025】
一時的な散布図から外れ値を除去することで、散布図が得られる。一時的な散布図が外れ値を含まないと、一時的な散布図が散布図を形成する。その場合、一時的な散布図と散布図は同じである。散布図にプロットされている第1データは散布図内データ(第5データ)と称される。実施形態の散布図は
図2(A)に示されている。
図2(A)では、一つの第5データは丸(〇)で描かれている。
【0026】
散布図を用いて回帰直線(Y=aX+b)11と相関係数が求められる。例えば、表計算ソフトのExcelを用いることで、回帰直線11と相関係数を求めることができる。回帰直線11の例が
図2(A)に示されている。相関係数は0.7以上である。相関係数が0.7以上であると、回帰直線11を利用する検査方法が有効である。実施形態の検査方法では、相関係数は0.7以上である。相関係数が大きくなると、第1抵抗と第2抵抗との間の相関が強くなる。そのため、回帰直線11を利用する検査方法の精度を高くすることができる。相関係数が0.9以上であると、プリント配線板100内の配線が長期間断線しない。相関係数が0.95以上であると、プリント配線板100内の配線の抵抗が長期間安定する。このように、相関係数が0.9以上であると、
図1(B)に示される異常を含むプリント配線板100の流出を抑制することができる。同様に、
図1(C)に示される異常を含むプリント配線板100の流出を抑制することができる。
【0027】
実施形態の検査方法では、相関係数が検査の精度に影響を与える。そのため、検査の精度を高くするため、相関係数を制御することが好ましい。相関係数を制御する例が以下に示される。
【0028】
選定の第4例によれば、相関係数の大きさを用いて第1ネットN1と第2ネットN2が選ばれている。そのため、選定の第4例は相関係数を制御することができる。選定の第4例では、検査可能なネットNが選ばれる。ネットAとネットB間の相関係数が0.7であって、ネットAとネットC間の相関係数が0.9であると、ネットAが第1ネットN1に選定される。ネットCが第2ネットN2に選定される。これにより、検査の精度を高くすることができる。
【0029】
選定の第1例と選定の第5例を用いることで、相関係数は0.9以上である。一時的な散布図を経て散布図が作られると、相関係数は0.95以上である。
【0030】
選定の第3例を用いることで、相関係数は0.7以上である。一時的な散布図を経て散布図が作られると、相関係数は0.9以上である。
【0031】
選定の第2例を用いることで、相関係数は0.7以上である。
【0032】
第5データ内の第1抵抗を回帰直線11に代入することで第2抵抗の予測値を求めることができる。第2抵抗の予測値を第1データに追加することで、第2組のデータ [(X、Y、予測値)=(第1抵抗、第2抵抗、第2抵抗の予測値)]が形成される。第2組のデータは第2データと称される。1つの第2データに含まれる各データ(X、Y、予測値)は、一つのプリント配線板100内の第1ネットN1と第2ネットN2に基づいている。第2データの数は30以上である。第5データ毎に第2データが作られる。
【0033】
第2抵抗の測定値と第2抵抗の予測値との差(残差)Rが求められる。残差(第2抵抗の残差)Rを第2組のデータに追加することで、第3組のデータ [(X、Y、予測値、残差)=(第1抵抗、第2抵抗、第2抵抗の予測値、第2抵抗の残差)]が形成される。第3組のデータは第3データと称される。第3データは第2データ毎に形成される。第3データの数は30以上である。
【0034】
第3データとプリント配線板100の番号が関連付けられる。プリント配線板100の番号Mを第3組のデータに追加することで、第4組のデータ [(X、Y、予測値、残差、プリント配線板の番号)=(第1抵抗、第2抵抗、第2抵抗の予測値、第2抵抗の残差、M)]が形成される。第4組のデータは第4データと称される。1つの第4データに含まれる各データ(X、Y、予測値、第2抵抗の残差、M)は、一つのプリント配線板100内の第1ネットN1と第2ネットN2に基づいている。プリント配線板100の番号Mと第2抵抗の残差の関係がプロットされる。その関係が
図2(B)に示される。
図2(B)はXYグラフである。
図2(B)では、X軸はプリント配線板100の番号Mであり、Y軸は第2抵抗の残差である。
図2(B)では、プリント配線板100の番号Mは小さい数から順に並べられている。
【0035】
図2(B)を用いて、実施形態の検査方法の基準Wが決められる。基準Wを決めるために、第2抵抗の残差の標準偏差Σが求められる。
基準Wは下記の関係1、2,3のいずれかを満足する。
関係1:10×標準偏差Σ ≦ 基準W ≦ 30×標準偏差Σ
関係2:15×標準偏差Σ ≦ 基準W ≦ 25×標準偏差Σ
関係3:17×標準偏差Σ ≦ 基準W ≦ 23×標準偏差Σ
例えば、基準Wは前記標準偏差Σの20倍である。
【0036】
新たなプリント配線板(検査対象)1001が製造される。その時、プリント配線板100と検査対象1001が同じであることが目標である。基準を決めるためのプリント配線板100と同じプリント配線板を目指して検査対象1001は製造される。
【0037】
検査対象1001の第1ネットN1の抵抗と第2ネットN2の抵抗が測定される。第1ネットN1の抵抗の値は第3抵抗(第3抵抗の測定値)であり、第2ネットN2の抵抗の値は第4抵抗(第4抵抗の測定値)である。
図2(A)に示される回帰直線11に第3抵抗を代入することで、第4抵抗の予測値が求められる。第4抵抗の測定値と第4抵抗の予測値から第4抵抗の残差R1が求められる。
【0038】
第4抵抗の残差と基準Wが比較される。第4抵抗の残差が基準W以下であると、検査対象1001内の第2ネットN2は良品と判定される。
【0039】
実施形態の検査方法は、強い相関を有する回帰直線11を利用している。そして、残差Rを用いて基準が作られている。従って、実施形態の検査方法を用いて、プリント配線板を評価することで、長期間、高い信頼性を維持するプリント配線板を提供することができる。例えば、プリント配線板内の配線の抵抗値が長期間安定している。
【0040】
[実施例1]
第1ネットN1と第2ネットN2を含むプリント配線板100が繰り返し製造される。実施例1では、第1ネットN1と第2ネットN2は選定の第4例を満たしている。プリント配線板100の数Nは30である。各プリント配線板100内の第1ネットN1と第2ネットN2の抵抗(第1抵抗と第2抵抗)が測定される。第1抵抗と第2抵抗がX-Y平面にプロットされる。一時的な散布図が作られる。一時的な散布図は外れ値を含まない。そのため、一時的な散布図は散布図である。第1抵抗と第2抵抗間の相関係数は0.95以上である。散布図を用いて、基準Wが決められる。基準Wは第2抵抗の残差Rの標準偏差Σの20倍である。検査対象1001が製造される。検査対象1001の第1ネットの抵抗(第3抵抗)と第2ネットの抵抗(第4抵抗)が測定される。第3抵抗を回帰直線11に代入することで第4抵抗の予測値が求められる。第4抵抗と第4抵抗の予測値との差(第4抵抗の残差)R1が求められる。第4抵抗の残差R1が基準W以下である。
【0041】
[実施例2]
実施例2の数Nは35である。第1ネットN1と第2ネットN2は選定の第1例を満足している。実施例2の一時的な散布図は外れ値を含む。一時的な散布図の相関係数は0.9である。統計的な手法1を用いて外れ値が除去さる。実施例2で採用される所定の範囲は次に示される。
第1抵抗の所定の範囲:X1±2×σ1
第2抵抗の所定の範囲:X2±2×σ2
一時的な散布図から外れ値が除去される。第3データの数Kは30である。第3データを用いて散布図が作られる。散布図の相関係数は0.95である。散布図を用いて、基準Wが決められる。基準Wは第2残差の標準偏差Σの25倍である。検査対象1001が製造される。検査対象1001の第1ネットN1の抵抗(第3抵抗)と第2ネットN2の抵抗(第4抵抗)が測定される。実施例1と同様に、検査対象1001が評価される。
【0042】
[実施例3]
実施例2の数Nは35である。第1ネットN1と第2ネットN2は選定の第2例を満足している。実施例2の一時的な散布図は外れ値を含む。一時的な散布図の相関係数は0.6である。統計的な手法2を用いて外れ値が除去さる。一時的な散布図から外れ値が除去される。第3データの数Kは30である。第3データを用いて散布図が作られる。散布図の相関係数は0.7である。散布図を用いて、基準Wが決められる。基準Wは第2残差の標準偏差Σの15倍である。検査対象1001が製造される。検査対象1001の第1ネットの抵抗(第3抵抗)と第2ネットの抵抗(第4抵抗)が測定される。実施例1と同様に、検査対象1001が評価される。
【0043】
[実施例4]
実施例3と実施例4では、外れ値を除去する方法が異なる。それ以外、実施例4は実施例3に準ずる。統計的な手法3を用いて外れ値が除去さる
【0044】
[実施例5]
実施例5の数Nは50である。第1ネットN1と第2ネットN2は選定の第3例を満足している。実施例5の一時的な散布図は一時的な散布図は外れ値を含む。一時的な散布図の相関係数は0.9である。統計的な手法1を用いて外れ値が除去さる。実施例5で採用される所定の範囲は次に示される。
第1抵抗の所定の範囲:X1±3×σ1
第2抵抗の所定の範囲:X2±3×σ2
一時的な散布図から外れ値が除去される。第3データの数Kは45である。第3データを用いて散布図が作られる。散布図の相関係数は0.95である。散布図を用いて、基準Wが決められる。基準Wは第2残差の標準偏差Σの20倍である。検査対象1001が製造される。検査対象1001の第1ネットの抵抗(第3抵抗)と第2ネットの抵抗(第4抵抗)が測定される。実施例1と同様に、検査対象1001が評価される。
【0045】
[実施例6]
第1ネットN1と第2ネットN2は選定の第5例を満足している。それ以外、実施例6は実施例5に準ずる。
【符号の説明】
【0046】
1 :導体層
2 :樹脂絶縁層
3 :ビア導体
4 :導体回路
5 :配線
8 :電極
9 :端子
100 :プリント配線板
【要約】
【課題】 高精度なプリント配線板の検査方法の提供
【解決手段】 実施形態に係るプリント配線板の検査方法は、第1ネットN1の抵抗(第1抵抗)と第2ネットN2の抵抗(第2抵抗)の回帰直線と第2抵抗の残差を用いて基準Wが決められる。そして、基準Wを用いて、新たに製造されるプリント配線板100の評価が行われる。
【選択図】
図2