(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-15
(45)【発行日】2022-03-24
(54)【発明の名称】プレス加工装置
(51)【国際特許分類】
B21D 37/10 20060101AFI20220316BHJP
B21D 24/16 20060101ALI20220316BHJP
【FI】
B21D37/10 A
B21D24/16 A
(21)【出願番号】P 2017228328
(22)【出願日】2017-11-28
【審査請求日】2020-10-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】三好 俊輔
【審査官】山本 裕太
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2014/162350(JP,A1)
【文献】特開2017-019015(JP,A)
【文献】特開2013-141672(JP,A)
【文献】実開昭55-092440(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 37/10
B21D 24/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上成形刃が固定された上型ホルダと、
前記上成形刃に対応する下成形刃が固定された下型ホルダと、
を具備し、
前記上型ホルダと前記下型ホルダとは、前記上成形刃と前記下成形刃との間隔を変更するように相対移動可能に設けられており、前記上成形刃と前記下成形刃との間でワークをプレス加工して被成形物を形成するプレス加工装置であって、
前記上型ホルダには、当該上型ホルダに対して相対移動方向に移動可能に設けられた切断刃が設けられ、
前記切断刃は、前記上型ホルダに対して前記相対移動方向に直交する方向の移動を規制するガイド手段によってガイドされ、
前記下型ホルダには、前記切断刃に向かって突出したガイドピンが設けられ、
前記切断刃には、前記ガイドピンが挿入されるガイド孔が設けられていることを特徴とするプレス加工装置。
【請求項2】
前記ガイド手段は、
前記切断刃
に設けられて前記相対移動方向において前記上型ホルダに向かって突出する上型用ガイドピンと、
前記上型ホルダに設けられて前記上型用ガイドピンが挿入される上型用ガイド孔と、
を有することを特徴とする請求項1記載のプレス加工装置。
【請求項3】
前記上型ホルダの前記下型ホルダへの相対移動における下死点において前記上成形刃と前記下成形刃との間で被成形物を成形すると共に、前記ガイドピンは、前記下死点よりも先に前記ガイド孔に挿入される長さを有することを特徴とする請求項1又は2記載のプレス加工装置。
【請求項4】
前記ガイドピンは、前記切断刃の対角となる一対の角部のそれぞれに対応する位置に配置されていることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載のプレス加工装置。
【請求項5】
前記切断刃によって前記被成形物を切断する位置において、前記ガイドピンは、前記切断刃の前記下型ホルダとは反対面側から突出する長さを有することを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載のプレス加工装置。
【請求項6】
前記切断刃の少なくとも前記上成形刃側の側面には、前記切断刃と、前記上成形刃または前記上型ホルダとの位置決めをするサイドプレートが設けられていることを特徴とする請求項1から5の何れか一項に記載のプレス加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークをプレス加工して被成形物を成形すると共に被成形物を切断するプレス加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、鋼材であるワークを金型でプレス加工して被成形物、例えば、車両の車体部品などを成形するプレス加工装置が知られている。
【0003】
また、プレス加工装置には、ワークを約750℃~1000℃に加熱して軟質化させた状態でプレス加工を行い、同時に金型との接触に伴う冷却効果によって焼き入れを行うことで、引っ張り強さの向上と部品の寸法精度を向上する熱間プレス(ホットスタンプまたはホットプレスとも言う)が知られている。
【0004】
このような熱間プレス加工では、被成形物は焼き入れにより硬質化しているため、被成形物の余分な部分を切断(トリム加工)するのが困難であり、成形後にレーザ加工等で切断しなくてはならず、製造に時間がかかり高コストになってしまうという問題がある。
【0005】
このため、プレス加工による成形と同時にトリム加工を行うプレス加工装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のように、切断刃に枠状のガイド部を設け、ガイド部を下型の位置決め孔に挿入して位置決めする場合、切断刃は摩耗によって交換されるため、切断刃の交換の度にガイド部の交換が必要になり、煩雑であるという問題がある。
【0008】
また、切断刃の交換の度にガイド部を交換すると、切断刃に対するガイド部の位置に誤差が生じ易く、被成形物に対して切断刃の位置ずれが生じ、切断位置ずれなどの切断精度の低下が生じるという問題がある。
【0009】
また、切断刃にガイド部を設けた場合、上型ホルダ(スライダ)に対するガイド部の位置は、切断刃の上型ホルダ(スライダ)に対する位置ずれと、切断刃に対するガイド部の位置ずれとの両方が影響するため、ガイド部は上型ホルダに対して位置精度が低くなり、ガイド部が位置決め孔に挿入できなくなることや切断位置ずれなどの問題が生じる虞がある。
【0010】
なお、このような問題は、熱間プレス加工を行う熱間プレス加工装置に限定されず、ワークを加熱することなくプレス加工を行うプレス加工装置においても同様に存在する。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑み、切断精度を向上したプレス加工装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する本発明の態様は、上成形刃が固定された上型ホルダと、前記上成形刃に対応する下成形刃が固定された下型ホルダと、を具備し、前記上型ホルダと前記下型ホルダとは、前記上成形刃と前記下成形刃との間隔を変更するように相対移動可能に設けられており、前記上成形刃と前記下成形刃との間でワークをプレス加工して被成形物を形成するプレス加工装置であって、前記上型ホルダには、当該上型ホルダに対して相対移動方向に移動可能に設けられた切断刃が設けられ、前記切断刃は、前記上型ホルダに対して前記相対移動方向に直交する方向の移動を規制するガイド手段によってガイドされ、前記下型ホルダには、前記切断刃に向かって突出したガイドピンが設けられ、前記切断刃には、前記ガイドピンが挿入されるガイド孔が設けられていることを特徴とするプレス加工装置にある。
【0013】
かかる態様では、切断刃の交換の度に切断刃に対してガイドピンの位置決めを行う必要がなく、切断刃の位置決め精度を向上して、切断位置精度を向上することができる。また、下型ホルダにガイドピンを設けるようにしたため、ガイドピンが、切断刃の上型ホルダに対する位置ずれに影響されることがなく、ガイドピンを常に同じ位置に配置することができ、切断位置精度を向上することができる。
【0014】
ここで、前記ガイド手段は、前記切断刃に設けられて前記相対移動方向において前記上型ホルダに向かって突出する上型用ガイドピンと、前記上型ホルダに設けられて前記上型用ガイドピンが挿入される上型用ガイド孔と、を有することが好ましい。これによれば、上型用ガイドピンが切断刃よりも下型ホルダ側に突出するのを抑制して、被成形物を取り出す際に上型用ガイドピンが邪魔することなく、被成形物の取り出しを容易に且つ短時間で行うことができる。
【0015】
また、前記上型ホルダの前記下型ホルダへの相対移動における下死点において前記上成形刃と前記下成形刃との間で被成形物を成形すると共に、前記ガイドピンは、前記下死点よりも先に前記ガイド孔に挿入される長さを有することが好ましい。これによれば、被成形物を切断刃で切断する際に、切断刃をガイドピンに対して高精度に位置決めすることができる。
【0016】
また、前記ガイドピンは、前記切断刃の対角となる一対の角部のそれぞれに対応する位置に配置されていることが好ましい。これによれば、2つのガイドピンを離れた位置に設けることができ、切断刃のガイドピンに対する位置決めを高精度に行うことができると共に、ガイドピンの軸方向に対する切断刃の傾斜方向の位置決めを高精度に行うことができる。
【0017】
また、前記切断刃によって前記被成形物を切断する位置において、前記ガイドピンは、前記切断刃の前記下型ホルダとは反対面側から突出する長さを有することが好ましい。これによれば、被成形物の切断時にガイドピンとガイド孔とが相対向する面積を増大させて、ガイドピンとガイド孔との位置決め精度を向上することができる。
【0018】
また、前記切断刃の少なくとも前記上成形刃側の側面には、前記切断刃と、前記上成形刃または前記上型ホルダとの位置決めをするサイドプレートが設けられていることが好ましい。このようにサイドプレートを設けることで、切断刃と上成形刃または上型ホルダとの位置決め精度を向上することができ、切断刃の位置決め精度を向上することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のプレス加工装置によれば、被成形物に対する切断刃の位置精度を向上して切断位置精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態1に係るプレス加工装置の断面図である。
【
図2】本発明の実施形態1に係る切断刃の斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態1に係るプレス加工装置の動作を説明する断面図である。
【
図4】本発明の実施形態1に係るプレス加工装置の動作を説明する断面図である。
【
図5】本発明の実施形態1に係るプレス加工装置の動作を説明する断面図である。
【
図6】本発明の実施形態1に係るプレス加工装置の動作を説明する断面図である。
【
図7】本発明の実施形態1に係るプレス加工装置の動作を説明する断面図である。
【
図8】本発明の実施形態1に係るプレス加工装置の動作を説明する断面図である。
【
図9】本発明の実施形態2に係るプレス加工装置の動作を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係るプレス加工装置の断面図であり、
図2は、切断刃の斜視図である。
図1に示すように、プレス加工装置1は、上型ホルダ10と下型ホルダ20とを具備する。
上型ホルダ10と下型ホルダ20とは、互いに近接・離反方向に相対移動できるように設けられている。本実施形態では、上型ホルダ10と下型ホルダ20との相対移動方向をZ方向と称する。また、本実施形態では、上型ホルダ10が図示しない油圧シリンダや駆動モータ等の駆動手段によって下型ホルダ20に対してZ方向に移動可能に設けられている。もちろん、下型ホルダ20が上型ホルダ10に対してZ方向に移動可能に設けられていてもよい。
【0022】
上型ホルダ10には、下型ホルダ20側の面に上金型である上成形刃11が固定されている。
また、上型ホルダ10の下型ホルダ20側の面には、切断刃12がZ方向に移動可能に設けられている。本実施形態では、切断刃12は、ガイド手段によってZ方向にガイドされて移動可能となっている。
【0023】
本実施形態のガイド手段は、上型用ガイドピン13と上型用ガイド孔14とを具備する。
上型用ガイドピン13は、基端部が切断刃12に固定されると共に先端がZ方向の上型ホルダ10に向かって突出して設けられている。
【0024】
上型用ガイド孔14は、上型ホルダ10をZ方向に貫通して設けられており、上型用ガイドピン13の外径よりも若干大きな内径を有する。なお、上型用ガイド孔14は、特に図示していないが、上型ホルダ10に固定されたガイドブッシュに設けられている。
【0025】
このようなガイド手段では、上型用ガイドピン13を上型用ガイド孔14に挿入することで、上型ホルダ10に対して上型用ガイドピン13の軸方向であるZ方向に沿って切断刃12をガイドして移動させることができる。
【0026】
なお、本実施形態では、ガイド手段として、切断刃12に上型用ガイドピン13を設け、上型ホルダ10に上型用ガイド孔14を設けるようにしたが、特にこれに限定されず、ガイド手段として、切断刃12に上型用ガイド孔14を設け、上型ホルダ10に上型用ガイドピン13を設けるようにしてもよい。ただし、上型ホルダ10に上型用ガイドピン13を設けた場合、切断刃12よりも下型ホルダ20側に上型用ガイドピン13が突出する長さが必要となり、成形及びトリム加工した被成形物を取り出す際に上型用ガイドピン13が邪魔になって、被成形物を取り出し難くなってしまうと共に、上型ホルダ10に設けられた上型用ガイドピン13を避ける位置まで上型ホルダ10を移動しなくてはならず、被成形物の取り出しに時間がかかってしまう。
【0027】
本実施形態では、切断刃12に上型用ガイドピン13を設けるようにしたため、上型用ガイドピン13が切断刃12よりも下型ホルダ20側に突出するのを抑制して、被成形物を取り出す際に上型用ガイドピン13が邪魔することなく、被成形物の取り出しを容易に行うことができると共に、上型ホルダ10の余分な移動を行うことなく被成形物の取り出しを短時間で行うことができる。
【0028】
また、本実施形態では、ガイド手段として上型用ガイドピン13と上型用ガイドピン13が挿入される上型用ガイド孔14とを設けるようにしたが、ガイド手段は、上型ホルダ10に対して切断刃12のZ方向への移動をガイドすることができれば特にこれに限定されず、例えば、上型ホルダ10にレールを固定し、レールに沿って切断刃12をスライド移動させるようにしてもよい。つまり、ガイド手段は、詳しくは後述するが、切断刃12の下型用ガイド孔17が下型ホルダ20に設けられた下型用ガイドピン22に挿入できる程度のガイドを行うことができればよい。
【0029】
また、切断刃12の上型ホルダ10に対するZ方向の移動は、駆動手段15によって行われる。本実施形態の駆動手段15は、油圧シリンダからなり、上型ホルダ10の切断刃12とは反対面側に固定された本体15aと、本体15aに対して伸長・短縮可能なロッド15bとを具備する。駆動手段15のロッド15bは、上型ホルダ10に設けられた貫通孔16を挿通して先端が切断刃12に固定されており、ロッド15bが上型ホルダ10に固定された本体15aに対して伸長・短縮することによって、切断刃12を上型ホルダ10に対してZ方向に移動する。
【0030】
なお、本実施形態では、油圧シリンダの駆動手段15を設けるようにしたが、駆動手段15は、切断刃12をZ方向に移動することができれば特にこれに限定されず、例えば、駆動モータや電磁石等であってもよい。
【0031】
一方、下型ホルダ20には、上成形刃11にZ方向で相対向する下金型である下成形刃21が固定されている。この下型ホルダ20の下成形刃21上に載置されたワークを、上型ホルダ10の上成形刃11との間でプレスすることで被成形物が成形される。
【0032】
また、下型ホルダ20には、Z方向に沿って切断刃12に向かって突出して設けられたガイドピンである下型用ガイドピン22が設けられている。下型用ガイドピン22は、軸方向がZ方向となるように基端部が下型ホルダ20に固定され、先端が切断刃12に向かって突出して設けられている。
【0033】
これに対して、切断刃12には、下型用ガイドピン22が挿入されるガイド孔である下型用ガイド孔17が設けられている。下型用ガイド孔17は、切断刃12をZ方向に貫通して設けられている。また、下型用ガイド孔17は、下型用ガイドピン22の外径よりも若干大きな内径を有する。なお、下型用ガイド孔17は、特に図示していないが、切断刃12に固定されたガイドブッシュに設けられている。
【0034】
ここで、下型用ガイド孔17と下型用ガイドピン22とのクリアランス(d1)は、上型用ガイドピン13と上型用ガイド孔14とのクリアランス(d2)以下であるのが好ましい(d1≦d2)。これにより、下型用ガイドピン22と下型用ガイド孔17との位置決め精度を向上して、切断刃12を下型ホルダ20に固定された下成形刃21に対して高精度に位置決めすることができる。また、上型用ガイドピン13が上型用ガイド孔14に挿入されると共に下型用ガイドピン22が下型用ガイド孔17に挿入された状態で上型ホルダ10及び切断刃12の移動が規制されるのを抑制することができる。
【0035】
このような下型用ガイドピン22は、切断刃12の対角となる一対の角部に対応する位置にそれぞれ設けられている。ここで、切断刃12の対角となる一対の角部に対応する位置に下型用ガイドピン22が設けられているとは、切断刃12の対角となる一対の角部のそれぞれに下型用ガイド孔17が設けられ、下型用ガイドピン22が下型用ガイド孔17に挿通される位置に配置されていることをいう。
【0036】
また、切断刃12の対角となる一対の角部のそれぞれに下型用ガイド孔17が設けられているとは、
図2に示すように、切断刃12がZ方向から平面視した際に、矩形状などの4つの角部を有する形状の場合、切断刃12には対角、すなわち互いに向き合った角部は二対存在する。この二対の対角となる角部のうち、一対の角部に下型用ガイド孔17を設けるようにすればよい。
【0037】
ちなみに、切断刃12をZ方向から平面視した際に、4つの角部を有する形状以外の形状、例えば、3角形状や5角形状以上の場合には、平面視において最も距離が離れた位置に下型用ガイド孔17を設け、この下型用ガイド孔17に対応する位置に下型用ガイドピン22を設けるようにすればよい。
【0038】
このように、切断刃12の対角となる一対の角部となる位置、または、最も距離が離れた位置に対応する位置に下型用ガイドピン22を設けることで、切断刃12の下型用ガイドピン22に対するZ方向に直交する方向の位置決めを高精度に行うことができると共に、下型用ガイドピン22の軸方向であるZ方向に対する切断刃12の傾斜方向の位置決めを高精度に行うことができる。
【0039】
また、本実施形態では、上型用ガイドピン13は、切断刃12の下型用ガイド孔17が設けられた対角となる一対の角部とは異なる一対の角部のそれぞれに設けられている。すなわち、対角となる二対の角部のうち、一方の一対の角部には、下型用ガイド孔17が設けられ、他方の一対の角部には、上型用ガイドピン13が設けられている。
【0040】
このように上型用ガイドピン13を、切断刃12の対角となる一対の角部に設けることで、切断刃12の上型ホルダ10に対するZ方向に直交する方向の位置決めを高精度に行うことができると共に、上型用ガイドピン13の軸方向であるZ方向に対する切断刃12の傾斜方向の位置決めを高精度に行うことができる。なお、切断刃12をZ方向から平面視した際に、4つの角部を有する形状以外の形状、例えば、3角形状や5角形状以上の場合には、上型用ガイドピン13は下型用ガイドピン22と同様に平面視において最も距離が離れた位置に設けるようにすればよい。ちなみに、2つの下型用ガイド孔17(下型用ガイドピン22)の距離と、2つの上型用ガイドピン13の距離とは、両方ともに最も離れた距離であるのが好ましいが、同じ距離で設けられない場合には、2つの下型用ガイド孔17の距離(L1)の方が、2つの上型用ガイドピン13の距離(L2)よりも大きい方が好ましい(L1≧L2)。これは、詳しくは後述するが、下型用ガイド孔17と下型用ガイドピン22との位置決めによって、切断刃12が被成形物を切断する位置が決まるため、下型用ガイド孔17と下型用ガイドピン22との位置決め精度を向上することで、切断位置精度を向上することができるからである。
【0041】
このようなプレス加工装置1の動作、すなわち、プレス加工装置1を用いた被成形物の製造方法について
図3~
図8を参照して説明する。なお、
図3~
図7は、本発明の実施形態1に係るプレス加工装置の動作を説明する断面図であり、
図8は、比較となるプレス加工装置の動作を説明する断面図である。
【0042】
まず、
図3に示すように、下成形刃21上に例えば750℃~1000℃に加熱した鋼材であるワーク100を載置する。
【0043】
また、このとき、上型ホルダ10の上死点において、下型ホルダ20の下型用ガイドピン22は、切断刃12の下型用ガイド孔17に挿入されない程度の長さを有するのが好ましい。これにより、ワーク100を成形することで形成した被成形物を下成形刃21から取り出す際に、上型ホルダ10の上死点において、下型用ガイドピン22が邪魔するのを抑制することができる。また、下型用ガイドピン22のZ方向の長さをできるだけ短くすることで、下型用ガイドピン22の歪みを抑制して、精度を向上することができる。
【0044】
次に、
図4に示すように、上型ホルダ10を下型ホルダ20に向かってZ方向に移動することで、下型用ガイドピン22を切断刃12の下型用ガイド孔17に挿入する。ここで、下型用ガイドピン22の長さは、上型ホルダ10の下死点において上成形刃11と下成形刃21との間でワーク100を成形する場合において、下死点に達する前に切断刃12の下型用ガイド孔17に挿入される長さであるのが好ましい。これにより、後の工程でワーク100を成形した被成形物101を切断刃12で切断(トリム加工)する際に、切断刃12を下型用ガイドピン22に対して確実に位置決めすることができる。
【0045】
次に、
図5に示すように、上型ホルダ10をさらに下型ホルダ20に向かってZ方向に移動する(下死点)。これにより、下成形刃21と上成形刃11との間でワーク100をプレス成形して被成形物101を形成する。
【0046】
次に、
図6に示すように、上型ホルダ10に対して切断刃12を下型ホルダ20に向かってZ方向に移動する。これにより、切断刃12が被成形物101を切断(トリム加工)する。このとき、切断刃12は、下型ホルダ20に設けられた下型用ガイドピン22にガイドされて位置決めされているため、被成形物101が固定された下成形刃21に対して切断刃12の位置を高精度に位置決めして、被成形物101の切断位置の精度を向上することができる。
【0047】
また、切断刃12が被成形物101を切断する位置において、下型用ガイドピン22は、切断刃12の下型ホルダ20とは反対面側から突出する長さを有することが好ましい。ここで、下型用ガイドピン22が切断刃12の下型ホルダ20とは反対面側から突出するとは、下型用ガイドピン22が切断刃12の下型用ガイド孔17を挿通して、その先端が切断刃12の上型ホルダ10に対向する面から突出した状態のことをいう。本実施形態では、
図5に示すように、上型ホルダ10の下死点において、下型用ガイドピン22は切断刃12の上型ホルダ10に対向する面から突出するようにした。また、下型用ガイドピン22は、切断刃12が被成形物101を切断する位置において切断刃12の上型ホルダ10に対向する面から突出していればよく、上型ホルダ10の下死点において、下型用ガイドピン22が切断刃12の上型ホルダ10に対向する面から突出していなくてもよい。
【0048】
このように切断刃12が被成形物101を切断する位置において下型用ガイドピン22を切断刃12の上型ホルダ10に対向する面から突出させる長さとすることで、Z方向において下型用ガイドピン22と下型用ガイド孔17とが対向する面積を増大させて、下型用ガイドピン22と下型用ガイド孔17との位置決め精度を向上することができる。したがって、切断刃12の位置決め精度を向上することができる。
【0049】
また、本実施形態では、加熱したワーク100を上成形刃11と下成形刃21との間で成形した直後に、成形した被成形物101を上成形刃11と下成形刃21との間から取り出すことなく、焼き入れされる前に被成形物101の余分な部分を切断刃12によって高精度に切断することができるため、成形後に焼き入れされて硬質化された被成形物101を別工程のレーザ加工等によって加工する必要がなく、製造時間を短縮してコストを低減することができる。
【0050】
次に、
図7に示すように、上型ホルダ10を下型ホルダ20から離反するようにZ方向に移動して、下成形刃21上のトリム加工した被成形物101をアーム等で取り出す。このとき、本実施形態では、下型ホルダ20に下型用ガイドピン22が設けられているため、切断刃12に下型用ガイドピン22を設けた場合に比べて、被成形物101を取り出すために上型ホルダ10の下型ホルダ20からの高さh
1を短くすることができる。
【0051】
ちなみに、
図8に示すように、切断刃12に下型用ガイドピン22を設けた場合、下成形刃21からトリム加工した被成形物101を取り出すためには、切断刃12が保持された上型ホルダ10を下型用ガイドピン22が邪魔とならない高さh
2まで移動させる必要がある。ここで、トリム加工した被成形物101を下成形刃21から取り出すためには、アーム等によって被成形物101を下成形刃21上から上型ホルダ10側に向かって持ち上げる必要がある。このため、被成形物101よりも上側(上型ホルダ10側)に水平方向からアームを差し込むためのスペースが必要となる。したがって、
図8に示すように、切断刃12に下型用ガイドピン22を設けた場合、下成形刃21からトリム加工した被成形物101を取り出すためには、切断刃12が保持された上型ホルダ10を下型用ガイドピン22が邪魔とならない比較的高い高さh
2まで移動させる必要がある。これに対して、本実施形態では、
図7に示すように、下型ホルダ20に下型用ガイドピン22を設けているため、被成形物101を取り出すためには、切断刃12が保持された上型ホルダ10を切断刃12が邪魔にならない高さh
1、すなわち、切断刃12が被成形物101にZ方向で重ならない位置まで移動させればよいため、
図8に示す上型ホルダ10の高さh
2に比べて、上型ホルダ10の高さh
1を低くすることができる(h
1<h
2)。
【0052】
このように被成形物101を取り出す際の上型ホルダ10の下型ホルダ20に対する高さh1を低くすることで、成形後の上型ホルダ10の移動距離を短くすることができるため、トリム加工後の被成形物101を取り出す時間を短縮することができ、コストを低減することができる。
【0053】
以上説明したように、本実施形態のプレス加工装置1は、上成形刃11が固定された上型ホルダ10と、上成形刃11に対応する下成形刃21が固定された下型ホルダ20と、を具備し、上型ホルダ10と下型ホルダ20とは、上成形刃11と下成形刃21との間隔を変更するように相対移動可能に設けられており、上成形刃11と下成形刃21との間でワーク100をプレス加工して被成形物101を形成するプレス加工装置1であって、上型ホルダ10には、当該上型ホルダ10に対して相対移動方向であるZ方向に移動可能に設けられた切断刃12が設けられ、切断刃12は、上型ホルダ10に対してZ方向に直交する方向の移動を規制するガイド手段によってガイドされ、下型ホルダ20には、切断刃12に向かって突出したガイドピンである下型用ガイドピン22が設けられ、切断刃12には、下型用ガイドピン22が挿入されるガイド孔である下型用ガイド孔17が設けられている。
【0054】
このように、下型ホルダ20に下型用ガイドピン22を設け、切断刃12に下型用ガイドピン22が挿入される下型用ガイド孔17を設けるようにしたため、切断刃12の摩耗による交換の度に切断刃12に対する下型用ガイドピン22の位置ずれを抑制することができ、切断刃12の位置決め精度を向上して切断位置の精度を向上することができる。ちなみに、切断刃12に下型用ガイドピン22を固定している場合、切断刃12の摩耗による交換の度に切断刃12に対する下型用ガイドピン22の位置に誤差が生じ易いため、切断刃12の位置ずれが生じ易い。
【0055】
また、下型ホルダ20に下型用ガイドピン22を設けるようにしたため、下型用ガイドピン22が、切断刃12の上型ホルダ10に対する位置ずれに影響されることなく、下型用ガイドピン22を常に同じ位置に配置することができる。したがって、下型用ガイドピン22の位置ずれによって切断刃12の下型用ガイド孔17に挿入できなくなるなどの不具合が発生するのを抑制して、下型用ガイドピン22に対する切断刃12の位置決め精度を向上して、切断位置精度を向上することができる。
【0056】
また、本実施形態のプレス加工装置1では、ガイド手段は、切断刃12に設けられて相対移動方向であるZ方向において上型ホルダ10に向かって突出する上型用ガイドピン13と、上型ホルダ10に設けられて上型用ガイドピン13が挿入される上型用ガイド孔14と、を有することが好ましい。
【0057】
このように切断刃12を上型ホルダ10に対して位置決めするガイド手段として、上型用ガイドピン13を切断刃12に設けることで、上型用ガイドピン13が切断刃12よりも下型ホルダ20側に突出するのを抑制して、被成形物101を取り出す際に上型用ガイドピン13が邪魔することなく、被成形物101の取り出しを容易に行うことができると共に、上型ホルダ10の余分な移動を行うことなく被成形物101の取り出しを短時間で行うことができる。
【0058】
また、本実施形態のプレス加工装置1では、上型ホルダ10の下型ホルダ20への相対移動であるZ方向における下死点において上成形刃11と下成形刃21との間で被成形物101を成形すると共に、ガイドピンである下型用ガイドピン22は、下死点よりも先にガイド孔である下型用ガイド孔17に挿入される長さを有することが好ましい。
【0059】
このように下死点において下型用ガイドピン22を下型用ガイド孔17に挿入することで、成形した被成形物101を切断刃12で切断(トリム加工)する際に、切断刃12を下型用ガイドピン22に対して高精度に位置決めすることができる。
【0060】
なお、上型ホルダ10の下死点において、下型用ガイドピン22は、切断刃12の下型用ガイド孔17に挿入されていなくてもよいが、切断刃12が被成形物101を切断する際には、下型用ガイドピン22は、下型用ガイド孔17に挿入されている必要がある。
【0061】
また、本実施形態のプレス加工装置1では、ガイドピンである下型用ガイドピン22は、切断刃12の対角となる一対の角部のそれぞれに対応する位置に配置されていることが好ましい。
【0062】
このように下型用ガイドピン22を切断刃12の対角となる一対の角部のそれぞれに対応する位置に設けることで、切断刃12の下型用ガイドピン22に対するZ方向に直交する方向の位置決めを高精度に行うことができると共に、下型用ガイドピン22の軸方向であるZ方向に対する切断刃12の傾斜方向の位置決めを高精度に行うことができる。なお、下型用ガイドピン22を設ける位置は、特にこれに限定されるものではない。
【0063】
また、本実施形態のプレス加工装置1では、切断刃12によって被成形物101を切断する位置において、ガイドピンである下型用ガイドピン22は、切断刃12の下型ホルダ20とは反対面側から突出する長さを有することが好ましい。
【0064】
このように切断刃12が被成形物101を切断する位置において下型用ガイドピン22を切断刃12の上型ホルダ10に対向する面から突出させる長さとすることで、Z方向において下型用ガイドピン22と下型用ガイド孔17とが対向する面積を増大させて、下型用ガイドピン22と下型用ガイド孔17との位置決め精度を向上することができ、切断刃12の位置決め精度を向上することができる。
【0065】
なお、被成形物101を切断刃12が切断する際に、下型用ガイドピン22は、切断刃12の下型ホルダ20とは反対面側から突出しない長さであってもよい。ただし、下型用ガイドピン22が、切断刃12の下型ホルダ20とは反対面側から突出しない長さで設けられている場合には、Z方向において下型用ガイドピン22と下型用ガイド孔17とが対向する面積が減少し、切断刃12の位置決め精度は低下する。
【0066】
(実施形態2)
図9本発明の実施形態2に係るプレス加工装置の断面図である。なお、上述した実施形態と同様の部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0067】
図9に示すように、本実施形態のプレス加工装置1は切断刃12を具備し、切断刃12には、上成形刃11との間にサイドプレート18が設けられている。また、本実施形態では、切断刃12には、上型ホルダ10の枠部19との間にもサイドプレート18が設けられている。
【0068】
本実施形態のプレス加工装置1では、切断刃12の少なくとも上成形刃11側の側面には、切断刃12と、上成形刃11または上型ホルダ10との位置決めをするサイドプレート18が設けられている。このように切断刃12の少なくとも上成形刃11との間にサイドプレート18を設けることで、切断刃12と上成形刃11または上型ホルダ10との位置決め精度を向上することができ、切断刃12の位置決め精度を向上することができる。
【0069】
(他の実施形態)
以上、本発明の各実施形態を説明したが、本発明の基本的な構成は上述したものに限定されるものではない。
【0070】
例えば、上述した各実施形態では、プレス加工装置1は、上型ホルダ10と下型ホルダ20とを有し、上型ホルダ10が鉛直方向上に位置し、下型ホルダ20が鉛直方向下に位置するように配置したが、上型ホルダ10及び下型ホルダ20の上下方向は、鉛直方向の上下方向に一致しなくてもよい。すなわち、上型ホルダ10が鉛直方向下に位置し、下型ホルダ20が鉛直方向上に位置するように配置してもよい。
【0071】
また、上述した各実施形態では、加熱したワーク100を上成形刃11と下成形刃21との間でプレス加工して成形するようにしたが、特にこれに限定されず、常温のワーク100をプレス加工して成形してもよい。このように常温のワーク100をプレス加工して成形する場合であっても、上述した各実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0072】
また、上述した各実施形態では、下型用ガイドピン22を2本設け、下型用ガイド孔17を2つ設けるようにしたが、下型用ガイドピン22及び下型用ガイド孔17の数は上述したものに限定されるものではなく、例えば、対となる下型用ガイドピン22と下型用ガイド孔17とを3対以上設けるようにしてもよい。ただし、下型用ガイドピン22と下型用ガイド孔17との対を3対以上設ける場合、クリアランスの制御が難しく、切断刃12の上型ホルダ10に対するZ方向の移動が困難になる虞がある。本実施形態のように下型用ガイドピン22と下型用ガイド孔17との対を2対設けることで、下型用ガイドピン22と下型用ガイド孔17とのクリアランスの制御を容易に行うことができると共に、切断刃12の上型ホルダ10に対するZ方向の移動を容易に行わせることができる。なお、上型用ガイドピン13及び上型用ガイド孔14についても同様に、上型用ガイドピン13と上型用ガイド孔14との対を3対以上設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 プレス加工装置
10 上型ホルダ
11 上成形刃
12 切断刃
13 上型用ガイドピン
14 上型用ガイド孔
15 駆動手段
15a 本体
15b ロッド
16 貫通孔
17 下型用ガイド孔
18 サイドプレート
19 枠部
20 下型ホルダ
21 下成形刃
22 下型用ガイドピン
100 ワーク
101 被成形物