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特許7041400リチウム電池電極用の結着剤組成物およびそれを用いた電極
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-15
(45)【発行日】2022-03-24
(54)【発明の名称】リチウム電池電極用の結着剤組成物およびそれを用いた電極
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/62 20060101AFI20220316BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20220316BHJP
   C08K 5/053 20060101ALI20220316BHJP
   C08L 33/02 20060101ALI20220316BHJP
   H01M 4/133 20100101ALI20220316BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20220316BHJP
   H01M 4/1393 20100101ALI20220316BHJP
   H01M 4/1395 20100101ALI20220316BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20220316BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
C08F290/06
C08K5/053
C08L33/02
H01M4/133
H01M4/134
H01M4/1393
H01M4/1395
H01M4/36 C
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018566105
(86)(22)【出願日】2018-02-02
(86)【国際出願番号】 JP2018003514
(87)【国際公開番号】W WO2018143383
(87)【国際公開日】2018-08-09
【審査請求日】2021-01-07
(31)【優先権主張番号】P 2017019098
(32)【優先日】2017-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000252300
【氏名又は名称】富士フイルム和光純薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】水田 浩徳
(72)【発明者】
【氏名】瀧本 一樹
(72)【発明者】
【氏名】綿引 博美
(72)【発明者】
【氏名】杉本 歌穂
(72)【発明者】
【氏名】松浦 隆敏
(72)【発明者】
【氏名】岡本 訓明
(72)【発明者】
【氏名】嶋村 信孝
【審査官】近藤 政克
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-130752(JP,A)
【文献】特開2008-311067(JP,A)
【文献】特開2015-115109(JP,A)
【文献】特開2007-220439(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/62
C08F 290/06
C08K 5/053
C08L 33/02
H01M 4/133
H01M 4/134
H01M 4/1393
H01M 4/1395
H01M 4/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル酸由来のモノマー単位と、下記一般式(I)又は一般式(II)で示される化合物由来のモノマー単位1~2種とを構成成分とするコポリマー、2価~10価のアルコール、及び水を含んでなる結着剤組成物;
[式中、R1は、水素原子又はメチル基を表し(但し、R2が水素原子の場合、R1はメチル基を表す)、R2は、水素原子;炭素数1~20のアルキル基;フッ素原子又はヒドロキシ基で置換された炭素数1~20のアルキル基;炭素数6~10のアリール基;炭素数7~13のアリールアルキル基;炭素数2~9のアルコキシアルキル基;炭素数3~9のアルコキシアルコキシアルキル基;炭素数7~13のアリールオキシアルキル基;炭素数5~7のモルホリノアルキル基;炭素数3~9のトリアルキルシリル基;酸素原子を有する又は酸素原子を有さない炭素数6~12の脂環式炭化水素基;炭素数3~9のジアルキルアミノアルキル基;炭素数9~14のヘキサヒドロフタルイミド-N-アルキル基;下記一般式(IV)で示される基
(式中、R3は、ヒドロキシ基を置換基として有する又は無置換の炭素数1~6のアルキレン基を表し、R4は、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、又はフェニル基を表し、vは2~20の整数を表す。);或いは、下記一般式(V)で示される基
(式中、R5~R7は、それぞれ独立して炭素数1~3のアルキル基を表し、R8は、炭素数1~3のアルキレン基を表す。)を表す。]、
(式中、R11は、水素原子又はメチル基を表し、R12は、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表し、R13は、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数3~9のジアルキルアミノアルキル基、又は炭素数1~6のヒドロキシアルキル基を表す。)。
【請求項2】
2価~10価のアルコールが、下記一般式(B1)で示される化合物である、請求項1記載の組成物;
(式中、R71は、炭素数1~6のアルキレン基を表し、R72は、ヒドロキシ基又は炭素数1~6のヒドロキシアルキル基を表し、R73は、水素原子、炭素数1~6のアルキル基又は炭素数1~6のヒドロキシアルキル基を表し、R74は、-O-を鎖中に有していてもよい炭素数1~6のアルキレン基を表し、rは0~4の整数を表す。ただし、複数のR72、複数のR73及び複数のR74は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項3】
コポリマーが、下記一般式[1]~[13]記載の化合物及び下記一般式[14]記載のポリマーから選ばれる架橋剤により架橋されたものである、請求項1記載の組成物;
(式中、aは1~6の整数を表す。)、
[式中、R25及びR26は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、R21は、炭素数1~20のアルキレン基、下記一般式[2-1]で示される基
(式中、R22は、炭素数1~6のアルキレン基を表し、bは1~6の整数を表す。)、又は下記一般式[2-2]で示される基
(式中、R23及びR24は、それぞれ独立して、炭素数1~6のアルキレン基を表し、cは1~22の整数を表す。)を表す。]、
(式中、R27~R33は、それぞれ独立して、炭素数1~3のアルキレン基を表す。)、
(式中、R34~R37は、それぞれ独立して、炭素数1~6のアルキレン基を表し、dは1~6の整数を表し、eは0~6の整数を表し、f及びgはそれぞれ独立して0又は1の整数を表す。)、
(式中、R38~R45は、それぞれ独立して、水素原子、ビニル基又はビニルケトン基を表し、これらの少なくとも2つ以上はビニル基又はビニルケトン基である。)、
(式中、R46~R48は、それぞれ独立して、炭素数1~6のアルキレン基を表す。)、
(式中、環Ar1は、ベンゼン環又はナフタレン環を表し、R49は、炭素数1~6のアルキレン基を表し、hは2~4の整数を表す。)、
(式中、環Ar2及び環Ar3は、それぞれ独立して、ベンゼン環又はナフタレン環を表し、R50は、炭素数1~6のアルキレン基を表す。)、
(式中、環Ar4は、ベンゼン環又はナフタレン環を表す。)、
(式中、iは0~6の整数を表す。)、
(式中、R51は、炭素数1~6のアルキレン基を表す。)、
[式中、R52は、置換基を有する又は無置換の炭素数1~6のアルキレン基、置換基を有する又は無置換の炭素数6~10のアリーレン基、下記一般式[12-1]で示される基
(式中、R53は、炭素数1~6のアルキル基を表し、R54は、炭素数1~6のアルキレン基を表し、環Ar5は、ベンゼン環又はナフタレン環を表し、jは、0~4の整数を表す。)、或いは、下記一般式[12-2]で示される基
(式中、R55は、炭素数1~6のアルキレン基を表し、R53、R54、環Ar5及びjは、上記と同じ。)を表す。]、
[式中、R56及びR57は、それぞれ独立して、置換基を有する又は無置換の炭素数1~6のアルキル基、置換基を有する又は無置換の炭素数6~10のアリール基、或いは、下記一般式[13-1]で示される基
(式中、R58は、炭素数1~6のアルキル基を表し、R59は、炭素数1~6のアルキレン基を表し、環Ar6は、ベンゼン環又はナフタレン環を表し、kは、0~5の整数を表す。)を表す。]、
[式中、R60は、置換基を有する又は無置換の炭素数1~6のアルキレン基、置換基を有する又は無置換の炭素数6~10のアリーレン基、下記一般式[14-1]又は[14-2]で示される基
(式中、R61は、炭素数1~6のアルキル基を表し、R62は、炭素数1~6のアルキレン基を表し、環Ar7は、ベンゼン環又はナフタレン環を表し、pは、0~4の整数を表す。)、或いは、下記一般式[14-3]で示される基
(式中、R63は、炭素数1~6のアルキレン基を表し、R61、R62、環Ar7及びpは、上記と同じ。)を表し、mは10~10000の整数を表す。]。
【請求項4】
1)炭素を含有する活物質、2)導電助剤、及び3)請求項1記載の結着剤組成物を含んでなるリチウム電池用のスラリー組成物。
【請求項5】
炭素を含有する活物質が、炭素、表面に炭素を被覆したシリコン、表面に炭素を被覆したシリコン酸化物、又は表面に炭素を被覆した金属と結合したシリコンを少なくとも1種含有する請求項4記載の組成物。
【請求項6】
負極作製用である、請求項4記載の組成物。
【請求項7】
1)炭素を含有する活物質、2)導電助剤、3)請求項1記載の結着剤組成物由来の結着剤、及び4)集電体を有するリチウム電池用の電極。
【請求項8】
炭素を含有する活物質が、炭素、表面に炭素を被覆したシリコン、表面に炭素を被覆したシリコン酸化物、又は表面に炭素を被覆した金属と結合したシリコンを少なくとも1種含有する請求項7記載の電極。
【請求項9】
電極が負極である、請求項7記載の電極。
【請求項10】
請求項4記載のスラリー組成物を集電体上に塗布した後、乾燥させることを特徴とする、リチウム電池用の電極作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム電池において用いられる、結着剤組成物、スラリー組成物及び電極、並びに該電極の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム電池は、二次電池として携帯電話等種々のポータブルデバイスの電源として利用されているが、近年、自動車用途等を想定した大型電池の研究開発が活発になっている。そのため、現行のリチウム電池のエネルギー密度をさらに増大させることが必要不可欠となってきている。そこで、リチウム電池の高容量化のために、活物質として炭素の代わりにシリコンを用いることが注目されている。シリコンを用いたリチウム電池が高容量となる理由としては、シリコンが室温で電気化学的にリチウムと合金反応を起こすことができるため、炭素を用いた場合に比べて高い電気容量をもたらすことに起因すると考えられている。
しかしながら、シリコンを活物質として用いた場合、充放電の際にシリコンが大きな体積変化(3倍以上に肥大化)を起こすことが知られている。そして、この体積変化により充放電時に電極構造の破壊が起き、電極の破壊につながる。結果として、充放電容量が低下する等の問題を有していた。
【0003】
体積変化の抑制方法として、近年ではシリコンの代わりに一酸化シリコン(SiO)の利用が試みられているが、一酸化シリコンを活物質として用いた場合でも体積膨張があり、実用化には課題がある(特許文献1)。さらに、一酸化シリコンは初期の充放電効率が低く、その分を考慮した正極の過剰な電池容量を必要とする。この問題の解決として様々な方法が検討されており、例えば、炭素を被覆した一酸化シリコン(SiOC)の使用などが報告されている(特許文献2)。
【0004】
また、電池の高容量化や安定性能の向上を目的として結着剤を用いる種々の試みがなされている(特許文献3、4)。しかしながら、これらの対象活物質は主に炭素であり、SiOCを始めとする表面に炭素を被覆したシリコン酸化物を用いた場合における上記問題の解消を目的としたものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-210962
【文献】WO2012/036127
【文献】特開2009-80971
【文献】特許4851092号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の如き問題を解決する優れた結着剤組成物、それを用いたスラリー組成物及び電極、並びに該電極の作製方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、活物質として炭素を含有する材料、特にSiOCを始めとする表面に炭素を被覆したシリコン酸化物を用いた場合における上記問題を解決するために、種々の結着剤を検討してきた。その結果、特定のコポリマー、該コポリマー同士を結合させるための2価~10価のアルコール、及び水を含んでなる組成物を結着剤として用いることにより、表面に炭素を被覆したシリコン酸化物を用いた場合であっても、優れた充放電容量が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
即ち、本発明は、以下の発明[i]~[x]を内包する。
[i]アクリル酸由来のモノマー単位と、下記一般式(I)又は一般式(II)で示される化合物由来のモノマー単位1~2種とを構成成分とするコポリマー、2価~10価のアルコール、及び水を含んでなる結着剤組成物(以下、本発明の結着剤組成物と略記する場合がある);
[式中、R1は、水素原子又はメチル基を表し(但し、R2が水素原子の場合、R1はメチル基を表す)、R2は、水素原子;炭素数1~20のアルキル基;フッ素原子又はヒドロキシ基で置換された炭素数1~20のアルキル基;炭素数6~10のアリール基;炭素数7~13のアリールアルキル基;炭素数2~9のアルコキシアルキル基;炭素数3~9のアルコキシアルコキシアルキル基;炭素数7~13のアリールオキシアルキル基;炭素数5~7のモルホリノアルキル基;炭素数3~9のトリアルキルシリル基;酸素原子を有する又は酸素原子を有さない炭素数6~12の脂環式炭化水素基;炭素数3~9のジアルキルアミノアルキル基;炭素数9~14のヘキサヒドロフタルイミド-N-アルキル基;下記一般式(IV)で示される基
(式中、R3は、ヒドロキシ基を置換基として有する又は無置換の炭素数1~6のアルキレン基を表し、R4は、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、又はフェニル基を表し、vは2~20の整数を表す。);或いは、下記一般式(V)で示される基
(式中、R5~R7は、それぞれ独立して炭素数1~3のアルキル基を表し、R8は、炭素数1~3のアルキレン基を表す。)を表す。]、
(式中、R11は、水素原子又はメチル基を表し、R12は、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表し、R13は、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数3~9のジアルキルアミノアルキル基、又は炭素数1~6のヒドロキシアルキル基を表す。)
[ii]2価~10価のアルコールが、下記一般式(B1)で示される化合物である、上記発明[i]記載の組成物;
(式中、R71は、炭素数1~6のアルキレン基を表し、R72は、ヒドロキシ基又は炭素数1~6のヒドロキシアルキル基を表し、R73は、水素原子、炭素数1~6のアルキル基又は炭素数1~6のヒドロキシアルキル基を表し、R74は、-O-を鎖中に有していてもよい炭素数1~6のアルキレン基を表し、rは0~4の整数を表す。ただし、複数のR72、複数のR73及び複数のR74は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
[iii]コポリマーが、下記一般式[1]~[13]記載の化合物及び下記一般式[14]記載のポリマーから選ばれる架橋剤により架橋されたものである、上記発明[i]又は[ii]記載の組成物;
(式中、aは1~6の整数を表す。)、
[式中、R25及びR26は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、R21は、炭素数1~20のアルキレン基、下記一般式[2-1]で示される基
(式中、R22は、炭素数1~6のアルキレン基を表し、bは1~6の整数を表す。)、又は下記一般式[2-2]で示される基
(式中、R23及びR24は、それぞれ独立して、炭素数1~6のアルキレン基を表し、cは1~22の整数を表す。)を表す。]、
(式中、R27~R33は、それぞれ独立して、炭素数1~3のアルキレン基を表す。)、
(式中、R34~R37は、それぞれ独立して、炭素数1~6のアルキレン基を表し、dは1~6の整数を表し、eは0~6の整数を表し、f及びgはそれぞれ独立して0又は1の整数を表す。)、
(式中、R38~R45は、それぞれ独立して、水素原子、ビニル基又はビニルケトン基を表し、これらの少なくとも2つ以上はビニル基又はビニルケトン基である。)、
(式中、R46~R48は、それぞれ独立して、炭素数1~6のアルキレン基を表す。)、
(式中、環Ar1は、ベンゼン環又はナフタレン環を表し、R49は、炭素数1~6のアルキレン基を表し、hは2~4の整数を表す。)、
(式中、環Ar2及び環Ar3は、それぞれ独立して、ベンゼン環又はナフタレン環を表し、R50は、炭素数1~6のアルキレン基を表す。)、
(式中、環Ar4は、ベンゼン環又はナフタレン環を表す。)、
(式中、iは0~6の整数を表す。)、
(式中、R51は、炭素数1~6のアルキレン基を表す。)、
[式中、R52は、置換基を有する又は無置換の炭素数1~6のアルキレン基、置換基を有する又は無置換の炭素数6~10のアリーレン基、下記一般式[12-1]で示される基
(式中、R53は、炭素数1~6のアルキル基を表し、R54は、炭素数1~6のアルキレン基を表し、環Ar5は、ベンゼン環又はナフタレン環を表し、jは、0~4の整数を表す。)、或いは、下記一般式[12-2]で示される基
(式中、R55は、炭素数1~6のアルキレン基を表し、R53、R54、環Ar5及びjは、上記と同じ。)を表す。]、
[式中、R56及びR57は、それぞれ独立して、置換基を有する又は無置換の炭素数1~6のアルキル基、置換基を有する又は無置換の炭素数6~10のアリール基、或いは、下記一般式[13-1]で示される基
(式中、R58は、炭素数1~6のアルキル基を表し、R59は、炭素数1~6のアルキレン基を表し、環Ar6は、ベンゼン環又はナフタレン環を表し、kは、0~5の整数を表す。)を表す。]、
[式中、R60は、置換基を有する又は無置換の炭素数1~6のアルキレン基、置換基を有する又は無置換の炭素数6~10のアリーレン基、下記一般式[14-1]又は[14-2]で示される基
(式中、R61は、炭素数1~6のアルキル基を表し、R62は、炭素数1~6のアルキレン基を表し、環Ar7は、ベンゼン環又はナフタレン環を表し、pは、0~4の整数を表す。)、或いは、下記一般式[14-3]で示される基
(式中、R63は、炭素数1~6のアルキレン基を表し、R61、R62、環Ar7及びpは、上記と同じ。)を表し、mは10~10000の整数を表す。]。
[iv]1)炭素を含有する活物質、2)導電助剤、及び3)上記発明[i]~[iii]の何れかに記載の結着剤組成物を含んでなるリチウム電池用のスラリー組成物。
[v]炭素を含有する活物質が、炭素、表面に炭素を被覆したシリコン、表面に炭素を被覆したシリコン酸化物、又は表面に炭素を被覆した金属と結合したシリコンを少なくとも1種含有する上記発明[iv]記載の組成物。
[vi]負極作製用である、上記発明[iv]又は[v]記載の組成物。
[vii]1)炭素を含有する活物質、2)導電助剤、3)上記発明[i]~[iii]の何れかに記載の結着剤組成物由来の結着剤、及び4)集電体を有するリチウム電池用の電極。
[viii]炭素を含有する活物質が、炭素、表面に炭素を被覆したシリコン、表面に炭素を被覆したシリコン酸化物、又は表面に炭素を被覆した金属と結合したシリコンを少なくとも1種含有する上記発明[vii]記載の電極。
[ix]電極が負極である、上記発明[vii]又は[viii]記載の電極。
[x]上記発明[iv]~[vi]の何れかに記載のスラリー組成物を集電体上に塗布した後、乾燥させることを特徴とする、リチウム電池用の電極作製方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の結着剤組成物を用いてリチウム電極を作製することにより、炭素を含有する活物質、特にSiOCを始めとする表面に炭素を被覆したシリコン酸化物を含む活物質を用いた場合であっても高い充放電容量を維持する電極の提供を可能とする。また、該電極を用いることにより、長期にわたり高容量を保持し得る電池の提供を可能とする。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において、バインダー溶液とは、1種以上のポリマーとその他の化合物(架橋剤等の添加剤)とを水に混合させてなる水溶液を示す用語であり、バインダーとは、該バインダー溶液を乾燥させ水分を除去した状態を示す用語である。本発明の結着剤組成物はバインダー溶液の一種であり、本発明の結着剤組成物由来の結着剤はバインダーの一種である。
【0011】
本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸、メタクリル酸及びそれらの混合物を総称する用語であり、他の類似の表現についても同様である。
【0012】
また、本明細書において、n-はnormal-体を、i-はiso-体を、それぞれ表す。
【0013】
[アクリル酸由来のモノマー単位と、一般式(I)又は一般式(II)で示される化合物由来のモノマー単位1~2種とを構成成分とするコポリマー]
本発明の結着剤組成物は、アクリル酸由来のモノマー単位と、一般式(I)又は一般式(II)で示される化合物由来のモノマー単位1~2種とを構成成分とするコポリマーを含むものである(以下、本発明に係るコポリマーと略記する場合がある)。
【0014】
一般式(I)のR2における炭素数1~20のアルキル基としては、炭素数1~10のものが好ましく、炭素数1~6のものがより好ましい。また、直鎖状、分枝状及び環状のうちいずれであってもよく、直鎖状が好ましい。具体的には例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、シクロブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、2-メチルブチル基、1,2-ジメチルプロピル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、ネオヘキシル基、2-メチルペンチル基、1,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基、sec-ヘプチル基、tert-ヘプチル基、ネオヘプチル基、シクロヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基、ネオオクチル基、シクロオクチル基、n-ノニル基、イソノニル基、sec-ノニル基、tert-ノニル基、ネオノニル基、シクロノニル基、n-デシル基、イソデシル基、sec-デシル基、tert-デシル基、ネオデシル基、シクロデシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、n-イコシル基等が挙げられ、中でもメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、2-メチルブチル基、1,2-ジメチルプロピル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、ネオヘキシル基、2-メチルペンチル基、1,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基が好ましく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基がより好ましく、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基が特に好ましい。
【0015】
一般式(I)のR2におけるフッ素原子で置換された炭素数1~20のアルキル基としては、末端部分がフッ素化されたものが好ましく、パーフルオロアルキル基又は(パーフルオロアルキル)アルキル基が好ましく、(パーフルオロアルキル)アルキル基がより好ましい。また、炭素数1~10のものが好ましく、直鎖状が好ましい。具体的には例えば、フルオロエチル基、フルオロプロピル基、フルオロブチル基、フルオロペンチル基、フルオロヘキシル基、フルオロヘプチル基、フルオロオクチル基、フルオロノニル基、フルオロデシル基、フルオロウンデシル基、フルオロドデシル基、フルオロトリデシル基、フルオロテトラデシル基、フルオロペンタデシル基、フルオロヘキサデシル基、フルオロヘプタデシル基、フルオロオクタデシル基、フルオロノナデシル基、フルオロイコシル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、トリフルオロプロピル基、トリフルオロブチル基、トリフルオロペンチル基、トリフルオロヘキシル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基、(パーフルオロブチル)メチル基、(パーフルオロブチル)エチル基、(パーフルオロブチル)プロピル基、(パーフルオロヘキシル)メチル基、(パーフルオロヘキシル)エチル基、(パーフルオロヘキシル)プロピル基等が挙げられ、中でもトリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、トリフルオロプロピル基、トリフルオロブチル基、トリフルオロペンチル基、トリフルオロヘキシル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基、(パーフルオロブチル)メチル基、(パーフルオロブチル)エチル基、(パーフルオロブチル)プロピル基、(パーフルオロヘキシル)メチル基、(パーフルオロヘキシル)エチル基、(パーフルオロヘキシル)プロピル基が好ましく、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、(パーフルオロブチル)メチル基、(パーフルオロブチル)エチル基、(パーフルオロヘキシル)メチル基、(パーフルオロヘキシル)エチル基がより好ましく、(パーフルオロブチル)エチル基、(パーフルオロヘキシル)エチル基が特に好ましい。
【0016】
一般式(I)のR2におけるヒドロキシ基で置換された炭素数1~20のアルキル基としては、末端部分がヒドロキシ基で置換されたものが好ましく、1~2個の水素がヒドロキシ基で置換されたものが好ましく、1個の水素がヒドロキシ基で置換されたものがより好ましい。また、炭素数1~6のものが好ましく、直鎖状が好ましい。具体的には例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ジヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ジヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、ジヒドロキシブチル基、ヒドロキシペンチル基、ジヒドロキシペンチル基、ヒドロキシヘキシル基、ジヒドロキシヘキシル基、ヒドロキシヘプチル基、ヒドロキシオクチル基、ヒドロキシノニル基、ヒドロキシデシル基、ヒドロキシウンデシル基、ヒドロキシドデシル基、ヒドロキシトリデシル基、ヒドロキシテトラデシル基、ヒドロキシペンタデシル基、ヒドロキシヘキサデシル基、ヒドロキシヘプタデシル基、ヒドロキシオクタデシル基、ヒドロキシノナデシル基、ヒドロキシイコシル基等が挙げられ、中でもヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ジヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ジヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、ジヒドロキシブチル基、ヒドロキシペンチル基、ジヒドロキシペンチル基、ヒドロキシヘキシル基、ジヒドロキシヘキシル基が好ましく、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、ヒドロキシペンチル基、ヒドロキシヘキシル基がより好ましく、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基がさらに好ましく、ヒドロキシエチル基が特に好ましい。
【0017】
一般式(I)のR2における炭素数6~10のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられ、フェニル基が好ましい。
【0018】
一般式(I)のR2における炭素数7~13のアリールアルキル基としては、炭素数7~9のものが好ましい。具体的には例えば、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、ナフチルプロピル基等が挙げられ、中でもベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基が好ましく、ベンジル基がより好ましい。
【0019】
一般式(I)のR2における炭素数2~9のアルコキシアルキル基としては、メトキシメチル基、メトキシエチル基、メトキシプロピル基、メトキシブチル基、メトキシペンチル基、メトキシヘキシル基、メトキシヘプチル基、メトキシオクチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基、エトキシプロピル基、エトキシブチル基、エトキシペンチル基、エトキシヘキシル基、エトキシヘプチル基、プロポキシメチル基、プロポキシエチル基、プロポキシプロピル基、プロポキシブチル基、プロポキシペンチル基、プロポキシヘキシル基等が挙げられる。
【0020】
一般式(I)のR2における炭素数3~9のアルコキシアルコキシアルキル基としては、メトキシメトキシメチル基、メトキシメトキシエチル基、メトキシメトキシプロピル基、エトキシメトキシメチル基、エトキシメトキシエチル基、エトキシメトキシプロピル基、プロポキシメトキシメチル基、プロポキシメトキシエチル基、プロポキシメトキシプロピル基、メトキシエトキシメチル基、メトキシエトキシエチル基、メトキシエトキシプロピル基、エトキシエトキシメチル基、エトキシエトキシエチル基、エトキシエトキシプロピル基、プロポキシエトキシメチル基、プロポキシエトキシエチル基、プロポキシエトキシプロピル基、メトキシプロポキシメチル基、メトキシプロポキシエチル基、メトキシプロポキシプロピル基、エトキシプロポキシメチル基、エトキシプロポキシエチル基、エトキシプロポキシプロピル基、プロポキシプロポキシメチル基、プロポキシプロポキシエチル基、プロポキシプロポキシプロピル基等が挙げられる。
【0021】
一般式(I)のR2における炭素数7~13のアリールオキシアルキル基としては、炭素数7~9のものが好ましい。具体的には例えば、フェノキシメチル基、フェノキシエチル基、フェノキシプロピル基、ナフチルオキシメチル基、ナフチルオキシエチル基、ナフチルオキシプロピル基等が挙げられ、中でもフェノキシメチル基、フェノキシエチル基、フェノキシプロピル基が好ましく、フェノキシエチル基がより好ましい。
【0022】
一般式(I)のR2における炭素数5~7のモルホリノアルキル基としては、例えばモルホリノメチル基、モルホリノエチル基、モルホリノプロピル基等が挙げられる。
【0023】
一般式(I)のR2における炭素数3~9のトリアルキルシリル基としては、例えばトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、ジメチルエチルシリル基、ジエチルメチルシリル基等が挙げられる。
【0024】
一般式(I)のR2における酸素原子を有する炭素数6~12の脂環式炭化水素基としては、ジシクロペンテニルオキシエチル基等が挙げられる。
【0025】
一般式(I)のR2における酸素原子を有さない炭素数6~12の脂環式炭化水素基としては、シクロヘキシル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基等が挙げられる。
【0026】
一般式(I)のR2における炭素数3~9のジアルキルアミノアルキル基としては、ジメチルアミノメチル基、ジメチルアミノエチル基、ジメチルアミノプロピル基、ジエチルアミノメチル基、ジエチルアミノエチル基、ジエチルアミノプロピル基、ジプロピルアミノメチル基、ジプロピルアミノエチル基、ジプロピルアミノプロピル基等が挙げられる。
【0027】
一般式(I)のR2における炭素数9~14のヘキサヒドロフタルイミド-N-アルキル基のアルキル基は通常炭素数1~6であり、炭素数1~3のものが好ましく、直鎖状のものが好ましい。炭素数9~14のヘキサヒドロフタルイミド-N-アルキル基としては、具体的には例えば、2-ヘキサヒドロフタルイミドメチル基、2-ヘキサヒドロフタルイミドエチル基、2-ヘキサヒドロフタルイミドプロピル基、2-ヘキサヒドロフタルイミドブチル基、2-ヘキサヒドロフタルイミドペンチル基、2-ヘキサヒドロフタルイミドヘキシル基等が挙げられる。
【0028】
一般式(IV)のR3におけるヒドロキシ基を置換基として有する炭素数1~6のアルキレン基としては、1個の水素がヒドロキシ基で置換されたものが好ましく、炭素数1~3のものが好ましい。具体的には例えば、ヒドロキシメチレン基、ヒドロキシエチレン基、ヒドロキシトリメチレン基、ヒドロキシテトラメチレン基、ヒドロキシペンタメチレン基、ヒドロキシヘキサメチレン基等が挙げられ、中でもヒドロキシメチレン基、ヒドロキシエチレン基、ヒドロキシトリメチレン基が好ましく、ヒドロキシトリメチレン基がより好ましい。
【0029】
一般式(IV)のR3における無置換の炭素数1~6のアルキレン基としては、炭素数2~4のものが好ましい。具体的には例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられ、中でもエチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基が好ましく、エチレン基、プロピレン基がより好ましく、エチレン基が特に好ましい。
【0030】
一般式(IV)のR4における炭素数1~6のアルキル基としては、炭素数1~3が好ましい。また、直鎖状、分枝状及び環状のうちいずれであってもよく、直鎖状が好ましい。具体的には例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、シクロブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、2-メチルブチル基、1,2-ジメチルプロピル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、ネオヘキシル基、2-メチルペンチル基、1,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、中でもメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0031】
一般式(IV)のR3としては、無置換の炭素数2~6のアルキレン基が好ましく、無置換の炭素数2~4のアルキレン基がより好ましく、中でもエチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基が好ましく、エチレン基、プロピレン基がより好ましく、エチレン基が特に好ましい。
【0032】
一般式(IV)のR4としては、水素原子、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、水素原子、炭素数1~3のアルキル基がより好ましく、水素原子、メチル基が特に好ましい。
【0033】
一般式(IV)のvとしては、2~10の整数が好ましく、4~10の整数がより好ましい。また、v個の-(R3-O)-基は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0034】
一般式(IV)で示される基の具体例としては、ポリエチレングリコール基、メチルポリエチレングリコール基、エチルポリエチレングリコール基、n-プロピルポリエチレングリコール基、イソプロピルポリエチレングリコール基、フェニルポリエチレングリコール基、ポリトリメチレングリコール基、ポリプロピレングリコール基、メチルポリプロピレングリコール基、エチルポリプロピレングリコール基、n-プロピルポリプロピレングリコール基、イソプロピルポリプロピレングリコール基、フェニルポリプロピレングリコール基、ポリテトラメチレングリコール基、ポリペンタメチレングリコール基、ポリヘキサメチレングリコール基等が挙げられ、ポリエチレングリコール基、メチルポリエチレングリコール基、ポリプロピレングリコール基、メチルポリプロピレングリコール基が好ましく、ポリエチレングリコール基、メチルポリエチレングリコール基がより好ましい。
【0035】
一般式(V)のR5~R7における炭素数1~3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基等が挙げられ、メチル基が好ましい。
【0036】
一般式(V)のR8における炭素数1~3のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基等が挙げられる。
【0037】
一般式(V)で示される基の具体例としては、トリメチルアンモニウムメチル基、トリメチルアンモニウムエチル基、トリメチルアンモニウムプロピル基、トリエチルアンモニウムメチル基、トリエチルアンモニウムエチル基、トリエチルアンモニウムプロピル基等が挙げられる。
【0038】
一般式(I)のR1としては、水素原子又はメチル基のいずれでもよいが、R2が水素原子の場合、メチル基を表す。
【0039】
一般式(I)のR2としては、水素原子;炭素数1~20のアルキル基;フッ素原子又はヒドロキシ基で置換された炭素数1~20のアルキル基;炭素数7~13のアリールアルキル基;炭素数7~13のアリールオキシアルキル基;炭素数9~14のヘキサヒドロフタルイミド-N-アルキル基;或いは一般式(IV)で示される基が好ましく、水素原子;炭素数1~20のアルキル基;フッ素原子又はヒドロキシ基で置換された炭素数1~20のアルキル基;炭素数7~13のアリールオキシアルキル基;或いは一般式(IV)で示される基がより好ましく、水素原子;或いはフッ素原子又はヒドロキシ基で置換された炭素数1~20のアルキル基がさらに好ましく、ヒドロキシ基で置換された炭素数1~20のアルキル基が特に好ましい。
【0040】
一般式(I)で示される化合物の好ましい具体例としては、下記一般式(I-I)で示される化合物が挙げられる。
[式中、R101は、水素原子又はメチル基を表し(但し、R102が水素原子の場合、R101はメチル基を表す)、R102は、水素原子;炭素数1~20のアルキル基;フッ素原子又はヒドロキシ基で置換された炭素数1~20のアルキル基;炭素数7~13のアリールアルキル基;炭素数7~13のアリールオキシアルキル基;炭素数9~14のヘキサヒドロフタルイミド-N-アルキル基;或いは下記一般式(IV-I)で示される基
(式中、R103は、無置換の炭素数2~6のアルキレン基を表し、R104は、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表し、vは上記と同じ。)を表す。]
【0041】
一般式(I-I)のR102における炭素数1~20のアルキル基;フッ素原子又はヒドロキシ基で置換された炭素数1~20のアルキル基;炭素数7~13のアリールアルキル基;炭素数7~13のアリールオキシアルキル基;及び炭素数9~14のヘキサヒドロフタルイミド-N-アルキル基としては、一般式(I)のR2におけるそれらと同じものが挙げられ、好ましいものも同じである。
【0042】
一般式(IV-I)のR103における無置換の炭素数2~6のアルキレン基としては、炭素数2~4のものが好ましい。具体的には例えば、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられ、中でもエチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基が好ましく、エチレン基、プロピレン基がより好ましく、エチレン基が特に好ましい。
【0043】
一般式(IV-I)のR104における炭素数1~6のアルキル基としては、一般式(IV)のR4における炭素数1~6のアルキル基と同じものが挙げられ、好ましいものも同じである。
【0044】
一般式(IV-I)のR104としては、水素原子、炭素数1~3のアルキル基が好ましく、水素原子、メチル基がより好ましい。
【0045】
一般式(IV-I)で示される基の具体例としては、ポリエチレングリコール基、メチルポリエチレングリコール基、エチルポリエチレングリコール基、n-プロピルポリエチレングリコール基、イソプロピルポリエチレングリコール基、ポリトリメチレングリコール基、ポリプロピレングリコール基、メチルポリプロピレングリコール基、エチルポリプロピレングリコール基、n-プロピルポリプロピレングリコール基、イソプロピルポリプロピレングリコール基、ポリテトラメチレングリコール基、ポリペンタメチレングリコール基、ポリヘキサメチレングリコール基等が挙げられ、ポリエチレングリコール基、メチルポリエチレングリコール基、ポリプロピレングリコール基、メチルポリプロピレングリコール基が好ましく、ポリエチレングリコール基、メチルポリエチレングリコール基がより好ましい。
【0046】
一般式(I-I)のR101としては、水素原子又はメチル基のいずれでもよいが、R102が水素原子の場合、メチル基を表す。
【0047】
一般式(I-I)のR102としては、水素原子;炭素数1~20のアルキル基;フッ素原子又はヒドロキシ基で置換された炭素数1~20のアルキル基;炭素数7~13のアリールオキシアルキル基;或いは一般式(IV-I)で示される基が好ましく、水素原子;或いはフッ素原子又はヒドロキシ基で置換された炭素数1~20のアルキル基がより好ましく、ヒドロキシ基で置換された炭素数1~20のアルキル基が特に好ましい。
【0048】
一般式(I)で示される化合物のより好ましい具体例としては、下記一般式(I-II)で示される化合物が挙げられる。
[式中、R201は、水素原子又はメチル基を表し(但し、R202が水素原子の場合、R201はメチル基を表す)、R202は、水素原子;炭素数1~20のアルキル基;フッ素原子又はヒドロキシ基で置換された炭素数1~20のアルキル基;炭素数7~13のアリールオキシアルキル基;或いは一般式(IV-II)で示される基
(式中、R203は、無置換の炭素数2~4のアルキレン基を表し、R204は、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を表し、vは上記と同じ。)を表す。]
【0049】
一般式(I-II)のR202における、炭素数1~20のアルキル基;フッ素原子又はヒドロキシ基で置換された炭素数1~20のアルキル基;及び炭素数7~13のアリールオキシアルキル基としては、一般式(I)のR2におけるそれらと同じものが挙げられ、好ましいものも同じである。
【0050】
一般式(IV-II)のR203における無置換の炭素数2~4のアルキレン基としては、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基等が挙げられ、中でもエチレン基、プロピレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。
【0051】
一般式(IV-II)のR204における炭素数1~3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基等が挙げられ、メチル基が好ましい。
【0052】
一般式(IV-II)のR204としては、水素原子、メチル基が好ましい。
【0053】
一般式(IV-II)で示される基の具体例としては、ポリエチレングリコール基、メチルポリエチレングリコール基、エチルポリエチレングリコール基、n-プロピルポリエチレングリコール基、イソプロピルポリエチレングリコール基、ポリトリメチレングリコール基、ポリプロピレングリコール基、メチルポリプロピレングリコール基、エチルポリプロピレングリコール基、n-プロピルポリプロピレングリコール基、イソプロピルポリプロピレングリコール基、ポリテトラメチレングリコール基が挙げられ、ポリエチレングリコール基、メチルポリエチレングリコール基、ポリプロピレングリコール基、メチルポリプロピレングリコール基が好ましく、ポリエチレングリコール基、メチルポリエチレングリコール基がより好ましい。
【0054】
一般式(I-II)のR201としては、水素原子又はメチル基のいずれでもよいが、R202が水素原子の場合、メチル基を表す。
【0055】
一般式(I-II)のR202としては、水素原子、或いはフッ素原子又はヒドロキシ基で置換された炭素数1~20のアルキル基がより好ましく、ヒドロキシ基で置換された炭素数1~20のアルキル基が特に好ましい。
【0056】
一般式(I)で示される化合物の特に好ましい具体例としては、例えばメタクリル酸、(メタ)アクリル酸-n-ブチル、(メタ)アクリル酸-n-ペンチル、(メタ)アクリル酸-n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチル、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸(パーフルオロブチル)メチル、(メタ)アクリル酸-2-(パーフルオロブチル)エチル、(メタ)アクリル酸(パーフルオロヘキシル)メチル、(メタ)アクリル酸-2-(パーフルオロヘキシル)エチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシペンチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸フェノキシメチル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシプロピル、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート等が挙げられ、中でも、メタクリル酸、(メタ)アクリル酸-2-(パーフルオロブチル)エチル、(メタ)アクリル酸-2-(パーフルオロヘキシル)エチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシペンチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘキシルが好ましく、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチルがより好ましく、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルが特に好ましい。一般式(I)で示される化合物は、市販のものでも、自体公知の方法によって適宜合成したものでもよい。
【0057】
一般式(II)のR12及びR13における炭素数1~6のアルキル基としては、一般式(IV)のR4における炭素数1~6のアルキル基と同じものが挙げられ、中でもメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基が好ましく、イソプロピル基がより好ましい。
【0058】
一般式(II)のR13における炭素数3~9のジアルキルアミノアルキル基としては、ジメチルアミノメチル基、ジメチルアミノエチル基、ジメチルアミノプロピル基、ジエチルアミノメチル基、ジエチルアミノエチル基、ジエチルアミノプロピル基、ジプロピルアミノメチル基、ジプロピルアミノエチル基、ジプロピルアミノプロピル基等が挙げられる。
【0059】
一般式(II)のR13における炭素数1~6のヒドロキシアルキル基としては、末端部分がヒドロキシ基で置換されたものが好ましい。また、1~2個の水素がヒドロキシ基で置換されたものが好ましく、1個の水素がヒドロキシ基で置換されたものがより好ましい。さらに、炭素数1~3のものが好ましく、直鎖状が好ましい。具体的には例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ジヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ジヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、ジヒドロキシブチル基、ヒドロキシペンチル基、ジヒドロキシペンチル基、ヒドロキシヘキシル基、ジヒドロキシヘキシル基が挙げられ、中でもヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、ヒドロキシペンチル基、ヒドロキシヘキシル基が好ましく、ヒドロキシエチル基がより好ましい。
【0060】
一般式(II)のR11としては、水素原子が好ましい。
【0061】
一般式(II)のR12としては、水素原子、炭素数1~3のアルキル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0062】
一般式(II)のR13としては、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のヒドロキシアルキル基が好ましく、水素原子、炭素数1~6のアルキル基がより好ましく、水素原子、炭素数1~3のアルキル基がさらに好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0063】
一般式(II)で示される化合物の好ましい具体例としては、下記一般式(II-I)で示される化合物が挙げられる。
(式中、R113は、水素原子、炭素数1~6のアルキル基又は炭素数1~6のヒドロキシアルキル基を表し、R11及びR12は上記と同じ。)
【0064】
一般式(II-I)のR113における炭素数1~6のアルキル基及び炭素数1~6のヒドロキシアルキル基としては、一般式(II)のR13におけるそれらと同じものが挙げられ、好ましいものも同じである。
【0065】
一般式(II-I)のR113としては、水素原子、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、水素原子、炭素数1~3のアルキル基がより好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0066】
一般式(II)で示される化合物のより好ましい具体例としては、下記一般式(II-II)で示される化合物が挙げられる。
(式中、R212及びR213は、それぞれ独立して水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を表し、R11は上記と同じ。)
【0067】
一般式(II-II)のR212及びR213における炭素数1~3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基等が挙げられ、イソプロピル基が好ましい。
【0068】
一般式(II-II)のR212及びR213としては、水素原子が好ましい。
【0069】
一般式(II)で示される化合物の特に好ましい具体例としては、例えば(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-n-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ-n-プロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられ、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-n-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミドが好ましく、(メタ)アクリルアミドがより好ましく、アクリルアミドが特に好ましい。一般式(II)で示される化合物は、市販のものでも、自体公知の方法によって適宜合成したものでもよい。
【0070】
本発明に係るコポリマーの構成成分の組合せとしては、下記表記載の組合せが挙げられ、中でも組合せ1~4が好ましく、組合せ1、3及び4がより好ましく、組合せ1が特に好ましい。さらに、組合せ1の中でも、アクリル酸由来のモノマー単位と一般式(I-I)で示される化合物由来のモノマー単位1種とからなる組合せが好ましく、アクリル酸由来のモノマー単位と一般式(I-II)で示される化合物由来のモノマー単位1種とからなる組合せがより好ましい。より具体的には、アクリル酸由来のモノマー単位と、一般式(I)で示される化合物の特に好ましい具体例として挙げられている化合物由来のモノマー単位1種とからなる組合せが好ましい。
【0071】
【0072】
本発明に係るコポリマーにおける、アクリル酸由来のモノマー単位と、一般式(I)又は一般式(II)で示される化合物由来のモノマー単位の比率は、質量比として通常、アクリル酸由来のモノマー単位/一般式(I)又は一般式(II)で示される化合物由来のモノマー単位=30/70~70/30であり、好ましくは40/60~60/40である。
【0073】
本発明に係るコポリマーは中和されたものであってもよく、中和されたものが好ましい。言い換えれば、本発明に係るコポリマー中のカルボキシ基の一部又は全部が塩になっていてもよい。中和された本発明に係るコポリマーとしては、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属で中和されたものが好ましく、水酸化ナトリウムで中和されたものがより好ましい。このような中和された本発明に係るコポリマーを用いると電極部材の分散性が向上し、活物質と導電性化合物とを集電体上に均一に分布させることができるため、電極の電気特性をより向上させることが可能となる。この際の中和度は、通常60~100%、好ましくは70~100%、より好ましくは70~90%である。
【0074】
本発明に係るコポリマーは架橋されたものであってもよく、架橋されたものが好ましい。本発明に係るコポリマーの架橋に用いられる架橋剤としては、後述する一般式[1]~[13]記載の化合物及び一般式[14]記載のポリマーから選ばれる架橋剤が挙げられる(以下、本発明に係る架橋剤と略記する場合がある)。また、架橋された本発明に係るコポリマーは、さらに中和されたものであってもよい。
【0075】
架橋された本発明に係るコポリマーの粘度としては、回転粘度計の回転速度が12rpmの場合、通常500~50,000mPa・S、好ましくは1,000~50,000mPa・Sである。尚、回転粘度計は、回転速度12rpmにおいて上限粘度が50,000mPa・Sであるものを用いた。該粘度は、本発明に係るコポリマーを1質量%の濃度で水に分散(懸濁)させたものを、20~25℃でB型回転粘度計にて測定した値である。
【0076】
本発明に係るコポリマーの重量平均分子量は、通常1,000~10,000,000、好ましくは10,000~5,000,000である。
【0077】
本発明に係るコポリマーとしては、本発明に係る架橋剤により架橋されたものが好ましく、本発明に係る架橋剤により架橋され、且つ中和されたものがより好ましい。
【0078】
具体的には、アクリル酸由来のモノマー単位と、一般式(I)又は一般式(II)で示される化合物由来のモノマー単位1~2種とを構成成分とするコポリマーであり、該コポリマーが本発明に係る架橋剤により架橋されたものが好ましく;アクリル酸由来のモノマー単位と、一般式(I)又は一般式(II)で示される化合物由来のモノマー単位1~2種とを構成成分とするコポリマーであり、該コポリマーが本発明に係る架橋剤により架橋され、且つ中和されたものがより好ましい。その中でも、アクリル酸由来のモノマー単位と一般式(I)で示される化合物由来のモノマー単位1種とを構成成分とするコポリマーであり、該コポリマーが本発明に係る架橋剤により架橋され、且つ中和されたものが好ましく;アクリル酸由来のモノマー単位と一般式(I-I)で示される化合物由来のモノマー単位1種とを構成成分とするコポリマーであり、該コポリマーが本発明に係る架橋剤により架橋され、且つ中和されたものがより好ましく;アクリル酸由来のモノマー単位と一般式(I-II)で示される化合物由来のモノマー単位1種とを構成成分とするコポリマーであり、該コポリマーが本発明に係る架橋剤により架橋され、且つ中和されたものがさらに好ましく;アクリル酸由来のモノマー単位と、一般式(I)で示される化合物の特に好ましい具体例として挙げられている化合物由来のモノマー単位1種とを構成成分とするコポリマーであり、該コポリマーが本発明に係る架橋剤により架橋され、且つ中和されたものが特に好ましい。
【0079】
[本発明に係る架橋剤]
本発明に係るコポリマーの架橋に用いられる架橋剤としては、下記一般式[1]~[13]記載の化合物及び下記一般式[14]記載のポリマーから選ばれる架橋剤が挙げられる。
【0080】
(式中、aは1~6の整数を表す。)
【0081】
[式中、R25及びR26は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、R21は、炭素数1~20のアルキレン基、下記一般式[2-1]で示される基
(式中、R22は、炭素数1~6のアルキレン基を表し、bは1~6の整数を表す。)、又は下記一般式[2-2]で示される基
(式中、R23及びR24は、それぞれ独立して、炭素数1~6のアルキレン基を表し、cは1~22の整数を表す。)を表す。]
【0082】
(式中、R27~R33は、それぞれ独立して、炭素数1~3のアルキレン基を表す。)
【0083】
(式中、R34~R37は、それぞれ独立して、炭素数1~6のアルキレン基を表し、dは1~6の整数を表し、eは0~6の整数を表し、f及びgはそれぞれ独立して0又は1の整数を表す。)
【0084】
(式中、R38~R45は、それぞれ独立して、水素原子、ビニル基又はビニルケトン基を表し、これらの少なくとも2つ以上はビニル基又はビニルケトン基である。)
【0085】
(式中、R46~R48は、それぞれ独立して、炭素数1~6のアルキレン基を表す。)
【0086】
(式中、環Ar1は、ベンゼン環又はナフタレン環を表し、R49は、炭素数1~6のアルキレン基を表し、hは2~4の整数を表す。)
【0087】
(式中、環Ar2及び環Ar3は、それぞれ独立して、ベンゼン環又はナフタレン環を表し、R50は、炭素数1~6のアルキレン基を表す。)
【0088】
(式中、環Ar4は、ベンゼン環又はナフタレン環を表す。)
【0089】
(式中、iは0~6の整数を表す。)
【0090】
(式中、R51は、炭素数1~6のアルキレン基を表す。)
【0091】
[式中、R52は、置換基を有する又は無置換の炭素数1~6のアルキレン基、置換基を有する又は無置換の炭素数6~10のアリーレン基、下記一般式[12-1]で示される基
(式中、R53は、炭素数1~6のアルキル基を表し、R54は、炭素数1~6のアルキレン基を表し、環Ar5は、ベンゼン環又はナフタレン環を表し、jは、0~4の整数を表す。)、或いは、下記一般式[12-2]で示される基
(式中、R55は、炭素数1~6のアルキレン基を表し、R53、R54、環Ar5及びjは、上記と同じ。)を表す。]
【0092】
[式中、R56及びR57は、それぞれ独立して、置換基を有する又は無置換の炭素数1~6のアルキル基、置換基を有する又は無置換の炭素数6~10のアリール基、或いは、下記一般式[13-1]で示される基
(式中、R58は、炭素数1~6のアルキル基を表し、R59は、炭素数1~6のアルキレン基を表し、環Ar6は、ベンゼン環又はナフタレン環を表し、kは、0~5の整数を表す。)を表す。]
【0093】
[式中、R60は、置換基を有する又は無置換の炭素数1~6のアルキレン基、置換基を有する又は無置換の炭素数6~10のアリーレン基、下記一般式[14-1]又は[14-2]で示される基
(式中、R61は、炭素数1~6のアルキル基を表し、R62は、炭素数1~6のアルキレン基を表し、環Ar7は、ベンゼン環又はナフタレン環を表し、pは、0~4の整数を表す。)、或いは、下記一般式[14-3]で示される基
(式中、R63は、炭素数1~6のアルキレン基を表し、R61、R62、環Ar7及びpは、上記と同じ。)を表し、mは10~10000の整数を表す。]
【0094】
一般式[1]におけるaとしては、1~3の整数が好ましく、1がより好ましい。
【0095】
一般式[1]記載の化合物の具体例としては、例えばアクリル酸アリル(アクリル酸-2-プロペニル)、アクリル酸-3-ブテニル、アクリル酸-4-ペンテニル、アクリル酸-5-ヘキシニル、アクリル酸-6-ヘプテニル、アクリル酸-7-オクテニル等が挙げられ、アクリル酸アリルが好ましい。
【0096】
一般式[2]のR21における炭素数1~20のアルキレン基としては、炭素数1~12のものが好ましく、炭素数1~6のものがより好ましい。また、直鎖状、分枝状及び環状のうちいずれであってもよく、直鎖状が好ましい。具体的には例えば、メチレン基、エチレン基、メチルメチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、ジメチルメチレン基、エチルメチレン基、テトラメチレン基、1-メチルトリメチレン基、2-メチルトリメチレン基、1,2-ジメチルエチレン基、1,1-ジメチルエチレン基、エチルエチレン基、エチルメチルメチレン基、プロピルメチレン基、ペンタメチレン基、1-メチルテトラメチレン基、2-メチルテトラメチレン基、1-エチルトリメチレン基、2-エチルトリメチレン基、n-プロピルエチレン基、イソプロピルエチレン基、n-ブチルメチレン基、イソブチルメチレン基、tert-ブチルメチレン基、ヘキサメチレン基、1-メチルペンタメチレン基、2-メチルペンタメチレン基、3-メチルペンタメチレン基、1-エチルテトラメチレン基、2-エチルテトラメチレン基、1-n-プロピルトリメチレン基、1-イソプロピルトリメチレン基、2-n-プロピルトリメチレン基、2-イソプロピルトリメチレン基、n-ブチルエチレン基、イソブチルエチレン基、tert-ブチルエチレン基、n-ペンチルメチレン基、イソペンチルメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基、ドデカメチレン基、トリデカメチレン基、テトラデカメチレン基、ペンタデカメチレン基、ヘキサデカメチレン基、ヘプタデカメチレン基、オクタデカメチレン基、ノナデカメチレン基、イコサメチレン基、シクロプロピレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基、シクロウンデシレン基、シクロドデシレン基、シクロトリデシレン基、シクロヘキサデシレン基、シクロオクタデシレン基、シクロイコシレン基、-C610-CH2-基、-C610-C24-基、-C610-C36-基、-C610-C48-基、-C610-C510-基、-C610-C612-基等が挙げられ、中でも、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基、ドデカメチレン基が好ましく、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基がより好ましい。
【0097】
一般式[2-1]のR22における炭素数1~6のアルキレン基としては、炭素数1~3のものが好ましく、炭素数2~3のものがより好ましい。また、直鎖状、分枝状及び環状のうちいずれであってもよく、直鎖状が好ましい。具体的には例えば、メチレン基、エチレン基、メチルメチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、ジメチルメチレン基、エチルメチレン基、テトラメチレン基、1-メチルトリメチレン基、2-メチルトリメチレン基、1,2-ジメチルエチレン基、1,1-ジメチルエチレン基、エチルエチレン基、エチルメチルメチレン基、プロピルメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、シクロプロピレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基等が挙げられ、中でも、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基が好ましく、エチレン基、トリメチレン基がより好ましく、エチレン基が特に好ましい。
【0098】
一般式[2-1]のbとしては、2~6の整数が好ましく、4~6の整数がより好ましい。bが2以上の場合、b個の-(R22-O)-基は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、全て同一であるのが好ましい。
【0099】
一般式[2-1]で示される基の好ましい具体例としては、例えば下記一般式[2-1-1]~[2-1-3]で示される基等が挙げられる。
(式中、bは上記と同じ。)
【0100】
一般式[2-2]のR23及びR24における炭素数1~6のアルキレン基としては、一般式[2-1]のR22における炭素数1~6のアルキレン基と同じものが挙げられ、好ましいものも同じである。
【0101】
一般式[2-2]のcとしては、2~13の整数が好ましく、3~8の整数がより好ましい。cが2以上の場合、c個の-(R23-O)-基は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、全て同一であるのが好ましい。
【0102】
一般式[2-2]で示される基の好ましい具体例としては、例えば下記一般式[2-2-1]~[2-2-3]で示される基等が挙げられ、中でも一般式[2-2-2]で示される基が好ましい。
(式中、cは上記と同じ。)
【0103】
一般式[2]記載の化合物の好ましい具体例としては、下記一般式[2-01]~[2-14]記載の化合物等が挙げられ、中でも一般式[2-09]~[2-14]記載の化合物が好ましく、一般式[2-11]及び[2-12]記載の化合物がより好ましく、一般式[2-11]記載の化合物が特に好ましい。
(式中、b及びcは上記と同じであり、sは1~6の整数を表し、4~6の整数が好ましく、6がより好ましい。)
【0104】
一般式[3]のR27~R33における炭素数1~3のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基等が挙げられ、メチレン基、エチレン基が好ましく、メチレン基がより好ましい。
【0105】
一般式[3]記載の化合物の好ましい具体例としては、例えば下記式[3-01]~[3-03]記載の化合物等が挙げられ、中でも式[3-01]記載の化合物が好ましい。
【0106】
一般式[4]のR34~R37における炭素数1~6のアルキレン基としては、一般式[2-1]のR22における炭素数1~6のアルキレン基と同じものが挙げられ、好ましいものも同じである。
【0107】
一般式[4]のdとしては、1~4の整数が好ましく、1又は2がより好ましい。dが2以上の場合、d個の-(O-R34)-基は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、全て同一であるのが好ましい。
【0108】
一般式[4]のeとしては、0~2の整数が好ましい。eが2以上の場合、e個の-(R35-O)-基は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、全て同一であるのが好ましい。尚、eが0の場合、-(R35-O)-は結合手(ボンド)を表す。即ち、隣接する-O-と-(R37)g-とが直接結合することを表す。以下、結合手とは同様の意味を表す。
【0109】
一般式[4]のf及びgは、それぞれ独立して0又は1の整数を表し、fとgが同じであるのが好ましい。尚、fが0の場合、-R36-は結合手を表し、gが0の場合、-R37-は、結合手を表す。
【0110】
一般式[4]記載の化合物の好ましい具体例としては、例えば下記一般式[4-1]又は[4-2]記載の化合物等が挙げられ、中でも一般式[4-1]記載の化合物が好ましい。
【0111】
(式中、R64及びR65はそれぞれ独立して、メチレン基、エチレン基又はトリメチレン基を表し、d'は1又は2を表し、e'は0~2の整数を表す。)
【0112】
(式中、R66はメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基又はヘキサメチレン基を表し、d''は1~4の整数を表す。)
【0113】
一般式[4-1]のR64及びR65としては、エチレン基が好ましい。
【0114】
一般式[4-1]のd'及びe'は、同じであるのが好ましい。d'が2の場合、d'個の-(O-R64)-基は、同一であっても異なっていてもよく、同一であるのが好ましい。e'が2の場合、e'個の-(R65-O)-基は、同一であっても異なっていてもよく、同一であるのが好ましい。尚、e'が0の場合、-(R65-O)-は結合手を表す。
【0115】
一般式[4-2]のR66としては、エチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基が好ましい。
【0116】
一般式[4-2]のd''としては、1又は2が好ましい。d''が2以上の場合、d''個の-(O-R65)-基は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、全て同一であるのが好ましい。
【0117】
一般式[4]記載の化合物のより好ましい具体例としては、例えば下記式[4-01]~[4-10]記載の化合物等が挙げられ、中でも式[4-02]~[4-05]記載の化合物が好ましい。
【0118】
一般式[5]におけるR38~R45のうち、少なくとも2つ以上がビニル基又はビニルケトン基であり、5~8個がビニル基又はビニルケトン基であるものが好ましく、5~7個がビニル基又はビニルケトン基であるものがより好ましい。
【0119】
一般式[5]記載の化合物の好ましい具体例としては、例えば下記式[5-01]~[5-06]記載の化合物等が挙げられる。
【0120】
一般式[6]のR46~R48における炭素数1~6のアルキレン基としては、一般式[2-1]のR22における炭素数1~6のアルキレン基と同じものが挙げられる。
【0121】
一般式[6]のR46及びR48としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピルメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基が好ましく、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基がより好ましい。
【0122】
一般式[6]のR47としては、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基が好ましく、シクロヘキシレン基がより好ましい。
【0123】
一般式[6]記載の化合物の好ましい具体例としては、例えば下記式[6-01]~[6-03]記載の化合物等が挙げられる。
【0124】
一般式[7]のR49における炭素数1~6のアルキレン基としては、一般式[2-1]のR22における炭素数1~6のアルキレン基と同じものが挙げられ、中でもメチレン基、エチレン基が好ましく、メチレン基がより好ましい。
【0125】
一般式[7]の環Ar1としては、ベンゼン環が好ましい。
【0126】
一般式[7]のhとしては、3~4の整数が好ましい。h個の下記式で示される基は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、全て同一であるのが好ましい。
(式中、R49は上記と同じ。)
【0127】
一般式[7]記載の化合物の好ましい具体例としては、例えば下記式[7-01]~[7-02]記載の化合物等が挙げられる。
【0128】
一般式[8]の環Ar2及び環Ar3としては、ベンゼン環が好ましい。
【0129】
一般式[8]のR50における炭素数1~6のアルキレン基としては、一般式[2-1]のR22における炭素数1~6のアルキレン基と同じものが挙げられ、中でもメチレン基、エチレン基、トリメチレン基が好ましく、トリメチレン基がより好ましい。
【0130】
一般式[8]記載の化合物の好ましい具体例としては、例えば下記式[8-01]~[8-03]記載の化合物等が挙げられ、中でも式[8-03]記載の化合物が好ましい。
【0131】
一般式[9]の環Ar4としては、ベンゼン環が好ましい。
【0132】
一般式[9]記載の化合物の好ましい具体例としては、例えば下記式[9-01]及び[9-02]記載の化合物等が挙げられ、中でも式[9-01]記載の化合物が好ましい。
【0133】
一般式[10]のiとしては、0~3の整数が好ましく、0がより好ましい。
【0134】
一般式[10]記載の化合物の好ましい具体例としては、例えばジビニルエチレングリコール(1,5-ヘキサジエン-3,4-ジオール)、1,6-ヘプタジエン-3,5-ジオール、1,7-オクタジエン-3,6-ジオール、1,8-ノナジエン-3,7-ジオール等が挙げられ、ジビニルエチレングリコールが好ましい。
【0135】
一般式[11]のR51における炭素数1~6のアルキレン基としては、一般式[2-1]のR22における炭素数1~6のアルキレン基と同じものが挙げられ、中でもメチレン基、エチレン基、トリメチレン基が好ましく、メチレン基がより好ましい。
【0136】
一般式[11]記載の化合物の好ましい具体例としては、例えばN,N'-メチレンビスアクリルアミド、N,N'-エチレンビスアクリルアミド、N,N'-トリメチレンビスアクリルアミド等が挙げられ、N,N'-メチレンビスアクリルアミドが好ましい。
【0137】
一般式[12]のR52における「置換基を有する又は無置換の炭素数1~6のアルキレン基」の炭素数1~6のアルキレン基としては、一般式[2-1]のR22における炭素数1~6のアルキレン基と同じものが挙げられ、中でもメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基が好ましい。尚、上記炭素数1~6は、置換基の炭素数を含まない。以下同様に、置換基を有する基の炭素数は、置換基の炭素数を含まないものとする。
【0138】
一般式[12]のR52における「置換基を有する又は無置換の炭素数6~10のアリーレン基」の炭素数6~10のアリーレン基としては、具体的には例えばフェニレン基、ナフチレン基等が挙げられ、フェニレン基が好ましい。
【0139】
一般式[12]のR52における置換基を有する炭素数1~6のアルキレン基及び置換基を有する炭素数6~10のアリーレン基としては、1又は2個の置換基を有するものが好ましい。その置換基としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基等の炭素数1~6のアルキル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、tert-ブトキシ基、プロポキシ基、ヘキシルオキシ基等の炭素数1~6のアルコキシ基;フェニル基等の炭素数6~10のアリール基;ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基等の炭素数1~6のヒドロキシアルキル基;メトキシエチル基、エトキシエチル基、エトキシプロピル基、ブトキシエチル基等の炭素数2~7のアルコキシアルキル基;2-ヒドロキシエトキシ基等の炭素数1~6のヒドロキシアルコキシ基;2-メトキシエトキシ基、2-エトキシエトキシ基等の炭素数2~7のアルコキシアルコキシ基;2-スルホエチル基等の炭素数1~6のスルホアルキル基;カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、カルボキシプロピル基、カルボキシブチル基、カルボキシペンチル基、カルボキシヘキシル基等の炭素数2~7のカルボキシアルキル基;シアノメチル基、シアノエチル基、シアノプロピル基、シアノブチル基、シアノペンチル基、シアノヘキシル基等の炭素数2~7のシアノアルキル基;スルホ基等が挙げられ、炭素数1~6のアルキル基が好ましい。
【0140】
一般式[12]のR52としては、無置換の炭素数1~6のアルキレン基、及び炭素数1~6のアルキル基を置換基として有する又は無置換のフェニレン基が好ましく、直鎖状の炭素数1~6のアルキレン基がより好ましい。
【0141】
一般式[12-1]及び[12-2]のR53における炭素数1~6のアルキル基としては、一般式(IV)のR4における炭素数1~6のアルキル基と同じものが挙げられ、好ましいものも同じである。
【0142】
一般式[12-1]及び[12-2]のR54、並びに一般式[12-2]のR55における炭素数1~6のアルキレン基としては、一般式[2-1]のR22における炭素数1~6のアルキレン基と同じものが挙げられ、好ましいものも同じである。
【0143】
一般式[12-1]及び[12-2]の環Ar5としては、ベンゼン環が好ましい。
【0144】
一般式[12-1]及び[12-2]のjとしては、0又は1が好ましい。jが0の場合、環Ar5のベンゼン環又はナフタレン環は置換基を有していないことを意味する。
【0145】
一般式[12]記載の化合物の好ましい具体例としては、下記一般式[12-3]~[12-6]記載の化合物等が挙げられ、中でも一般式[12-6]記載の化合物が好ましい。
(式中、R67は、無置換の炭素数1~6のアルキレン基を表し、R53~R55及びjは、上記と同じ。)
【0146】
一般式[12-6]のR67における無置換の炭素数1~6のアルキレン基としては、一般式[2-1]のR22における炭素数1~6のアルキレン基と同じものが挙げられ、中でもメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基が好ましい。
【0147】
一般式[12-6]記載の化合物の好ましい具体例としては、1,2:4,5-ジエポキシペンタン、1,2:5,6-ジエポキシヘキサン、1,2:6,7-ジエポキシヘプタン、1,2:7,8-ジエポキシオクタン、1,2:8,9-ジエポキシノナン、1,2:9,10-ジエポキシデカン等が挙げられる。
【0148】
一般式[13]のR56及びR57における「置換基を有する又は無置換の炭素数1~6のアルキル基」の炭素数1~6のアルキル基としては、一般式(IV)のR4における炭素数1~6のアルキル基と同じものが挙げられ、好ましいものも同じである。
【0149】
一般式[13]のR56及びR57における「置換基を有する又は無置換の炭素数6~10のアリール基」の炭素数6~10のアリール基としては、具体的には例えばフェニル基、ナフチル基等が挙げられ、フェニル基が好ましい。
【0150】
一般式[13]のR56及びR57における置換基を有する炭素数1~6のアルキル基及び置換基を有する炭素数6~10のアリール基としては、1~3個の置換基を有するものが好ましく、2個の置換基を有するものがより好ましい。その置換基としては、一般式[12]のR52における「置換基を有する炭素数1~6のアルキレン基及び置換基を有する炭素数6~10のアリーレン基」の置換基の具体例と同じものが挙げられる。
【0151】
一般式[13-1]のR58における炭素数1~6のアルキル基としては、一般式(IV)のR4における炭素数1~6のアルキル基と同じものが挙げられ、好ましいものも同じである。
【0152】
一般式[13-1]のR59における炭素数1~6のアルキレン基としては、一般式[2-1]のR22における炭素数1~6のアルキレン基と同じものが挙げられ、好ましいものも同じである。
【0153】
一般式[13-1]の環Ar6としては、ベンゼン環が好ましい。
【0154】
一般式[13-1]のkとしては、1~3の整数が好ましく、2がより好ましい。kが0の場合、環Ar6のベンゼン環又はナフタレン環は置換基を有していないことを意味する。
【0155】
一般式[13]のR56及びR57としては、R56とR57が同一であるのが好ましく、炭素数1~6のアルキル基を置換基として有する又は無置換のフェニル基、及び一般式[13-1]で示される基が好ましい。
【0156】
一般式[13]記載の化合物の好ましい具体例としては、下記一般式[13-2]及び[13-3]記載の化合物等が挙げられ、中でも一般式[13-2]記載の化合物が好ましい。
(式中、R58、R59及びkは、上記と同じであり、2個のR58及びR59は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【0157】
一般式[13-2]記載の化合物の好ましい具体例としては、下記式[13-01]~[13-12]記載の化合物等が挙げられる。
【0158】
一般式[14]のR60における置換基を有する又は無置換の炭素数1~6のアルキレン基、及び置換基を有する又は無置換の炭素数6~10のアリーレン基としては、一般式[12]のR52におけるそれらと同じものが挙げられる。
【0159】
一般式[14-1]~[14-3]のR61における炭素数1~6のアルキル基としては、一般式(IV)のR4における炭素数1~6のアルキル基と同じものが挙げられる。
【0160】
一般式[14-1]~[14-3]のR62及び一般式[14-3]のR63における炭素数1~6のアルキレン基としては、一般式[2-1]のR22における炭素数1~6のアルキレン基と同じものが挙げられる。
【0161】
一般式[14-1]~[14-3]の環Ar7としては、ベンゼン環が好ましい。
【0162】
一般式[14-1]~[14-3]のpとしては、0又は1が好ましい。pが0の場合、環Ar7のベンゼン環又はナフタレン環は置換基を有していないことを意味する。
【0163】
一般式[14]のR60としては、置換基を有する又は無置換の炭素数1~6のアルキレン基、置換基を有する又は無置換のフェニレン基が好ましく、無置換の炭素数1~6のアルキレン基、置換基を有するフェニレン基がより好ましく、炭素数1~6のアルキル基を置換基として有するフェニレン基が特に好ましい。
【0164】
一般式[14]のmは、10~1000の整数が好ましく、10~100の整数がより好ましい。
【0165】
一般式[14]記載のポリマーの好ましい具体例としては、下記一般式[14-4]~[14-8]記載のポリマー等が挙げられ、中でも一般式[14-5]記載のポリマーが好ましい。
(式中、R61~R63、p及びmは、上記と同じであり、R68は、無置換の炭素数1~6のアルキレン基を表す。)
【0166】
一般式[14-2]のR61における無置換の炭素数1~6のアルキレン基としては、一般式[12-6]のR67における無置換の炭素数1~6のアルキレン基と同じものが挙げられ、好ましいものも同じである。
【0167】
一般式[14-5]記載のポリマーの好ましい具体例としては、下記一般式[14-01]~[14-04]記載のポリマー等が挙げられ、一般式[14-01]記載のポリマーが好ましい。
(式中、mは上記と同じ。)
【0168】
本発明に係る架橋剤としては、一般式[2]、[3]、[4]、[9]、[10]及び[11]記載の化合物並びに一般式[14]記載のポリマーが好ましく、一般式[2]、[3]、[4]及び[10]記載の化合物がより好ましく、一般式[2]及び[4]記載の化合物がさらに好ましく、一般式[2]記載の化合物が特に好ましい。上記架橋剤は、市販のものでも、自体公知の方法によって適宜合成したものでもよい。
【0169】
[本発明に係るコポリマーの製造方法]
本発明に係るコポリマーは、自体公知の方法に準じて重合反応を行い製造すればよい。例えば、アクリル酸と、一般式(I)又は一般式(II)で示される化合物1~2種とを、要すれば重合開始剤の存在下で、重合反応させることにより製造し得る。
【0170】
上記重合反応は、自体公知の方法に準じて行えばよく、具体的には、適当な溶媒中、通常30~200℃、好ましくは70~180℃、より好ましくは80~150℃で、通常0.1~24時間、好ましくは1~10時間反応させればよい。
【0171】
上記重合開始剤としては、通常この分野で用いられるものであれば得に限定されず、例えば2,2'-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル等が挙げられ、中でも2,2'-アゾビス(イソブチロニトリル)が好ましい。これらはそれぞれ単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。該重合開始剤の使用量は、反応物の全量に対して通常0.01~30質量%である。
【0172】
上記溶媒としては、通常この分野で用いられるものであれば得に限定されず、例えばトルエン、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン、イソプロパノール、メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられ、中でもプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが好ましい。これらはそれぞれ単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。該溶媒の使用量は、反応物の総容量に対して1~10倍容量である。
【0173】
一般式(I)又は一般式(II)で示される化合物の使用量は、本発明に係るコポリマーにおける、アクリル酸由来のモノマー単位と、一般式(I)又は一般式(II)で示される化合物由来のモノマー単位の質量比となるように適宜設定されればよい。
【0174】
上記重合反応後に得られた生成物に対し、必要に応じて、通常この分野で行われる一般的な後処理操作及び精製操作を行ってもよい。具体的には例えば、ろ過、洗浄、抽出、減圧濃縮、再結晶、蒸留、カラムクロマトグラフィ-等を行ってもよい。
【0175】
本発明に係るコポリマーを中和する場合には、自体公知の方法に準じて中和すればよい。例えば、本発明に係るコポリマー中のカルボキシ基1molに対して水酸化ナトリウム等のアルカリ金属0.5~1molを添加し、中和すればよい。中和する本発明に係るコポリマーは架橋しているものであってもよく、中和後に架橋するものでもよい。中和する際に用いられる溶媒としては、上述した重合反応において用いられる溶媒と同じものが挙げられる。
【0176】
本発明に係るコポリマーを架橋する場合には、本発明に係る架橋剤を用いて、自体公知の方法に準じて架橋すればよい。
例えば、上述した重合反応においてさらに一般式[1]~[11]記載の化合物から選ばれる架橋剤を加えることにより、重合反応と架橋反応を同時に行えばよい。或いは、上述した重合反応の後に、得られた本発明に係るコポリマーと、一般式[12]もしくは[13]記載の化合物又は一般式[14]記載のポリマーとを、上述した重合反応と同様の反応条件(溶媒の種類及び使用量、反応温度、反応時間等)で架橋反応を行えばよい。
【0177】
一般式[1]~[11]記載の化合物の使用量は、使用するモノマー1molに対して、通常0.001~10mol%、好ましくは0.005~1mol%、より好ましくは0.01~0.5mol%である。
一般式[12]もしくは[13]記載の化合物又は一般式[14]記載のポリマーの使用量は、本発明に係るコポリマーの質量に対して、通常0.01~40質量%、好ましくは0.05~20質量%、より好ましくは0.1~10質量%である。
【0178】
架橋された本発明に係るコポリマーは、具体的には以下の如く調製される。
即ち、アクリル酸と、アクリル酸30~70質量部に対して70~30質量部の一般式(I)又は一般式(II)で示される化合物1~2種と、アクリル酸1molに対して0.01~0.5mol%の一般式[1]~[11]記載の化合物から選ばれる架橋剤とを、2,2'-アゾビス(イソブチロニトリル)等の重合開始剤の存在下、総容量に対して1~10倍容量のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の溶媒に、溶解又は分散させる。その後、80~150℃で0.1~10時間重合反応及び架橋反応させ、架橋された本発明に係るコポリマーを調製する。また、要すれば、得られた架橋された本発明に係るコポリマーのカルボキシ基1molに対して0.5~1molの水酸化ナトリウム等のアルカリ金属を添加し、架橋された本発明に係るコポリマー塩としてもよい。
或いは、アクリル酸と、アクリル酸30~70質量部に対して70~30質量部の一般式(I)又は一般式(II)で示される化合物1~2種とを、2,2'-アゾビス(イソブチロニトリル)等の重合開始剤の存在下、総容量に対して1~10倍容量のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の溶媒に、溶解又は分散させる。その後、80~150℃で0.1~10時間重合反応させ、本発明に係るコポリマーを調製する。次いで、得られた本発明に係るコポリマーと、コポリマーの質量に対して0.1~10質量%の一般式[12]もしくは[13]記載の化合物又は一般式[14]記載のポリマーとを、総容量に対して1~10倍容量のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の溶媒中に、溶解又は分散させる。その後、80~150℃で、0.1~10時間架橋反応させ、架橋された本発明に係るコポリマーを調製する。また、要すれば、得られた架橋された本発明に係るコポリマーのカルボキシ基1molに対して0.5~1molの水酸化ナトリウム等のアルカリ金属を添加し、架橋された本発明に係るコポリマー塩としてもよい。
【0179】
[2価~10価のアルコール]
本発明の結着剤組成物における2価~10価のアルコール(以下、本発明に係るアルコールと略記する場合がある)としては、通常この分野で用いられる従来公知のアルコールであればよく、2価~6価のものが好ましく、2価~4価のものがより好ましい。
【0180】
本発明に係るアルコールの具体例としては、例えば下記一般式(B1)で示される化合物が挙げられる。
(式中、R71は、炭素数1~6のアルキレン基を表し、R72は、ヒドロキシ基又は炭素数1~6のヒドロキシアルキル基を表し、R73は、水素原子、炭素数1~6のアルキル基又は炭素数1~6のヒドロキシアルキル基を表し、R74は、-O-を鎖中に有していてもよい炭素数1~6のアルキレン基を表し、rは0~4の整数を表す。ただし、複数のR72、複数のR73及び複数のR74は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【0181】
一般式(B1)のR71における炭素数1~6のアルキレン基としては、rが0の場合、炭素数3~6のものが好ましく、rが1~4の整数の場合、炭素数1~4のものが好ましい。また、直鎖状、分枝状及び環状のうちいずれであってもよく、直鎖状及び分枝状のものが好ましく、直鎖状のものがより好ましい。具体的には例えば、メチレン基、エチレン基、メチルメチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、ジメチルメチレン基、エチルメチレン基、テトラメチレン基、1-メチルトリメチレン基、2-メチルトリメチレン基、1,2-ジメチルエチレン基、1,1-ジメチルエチレン基、エチルエチレン基、エチルメチルメチレン基、プロピルメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、シクロプロピレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基等が挙げられ、中でもメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基が好ましい。rが0の場合、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基がより好ましく、rが1~4の整数の場合、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基がより好ましい。
【0182】
一般式(B1)のR72及びR73における炭素数1~6のヒドロキシアルキル基としては、一般式(II)のR13における炭素数1~6のヒドロキシアルキル基と同じものが挙げられ、中でもヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基が好ましく、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基がより好ましい。
【0183】
一般式(B1)のR73における炭素数1~6のアルキル基としては、一般式(IV)のR4における炭素数1~6のアルキル基と同じものが挙げられ、中でもメチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましい。
【0184】
一般式(B1)のR74における-O-を鎖中に有さない炭素数1~6のアルキレン基としては、一般式(B1)のR71における炭素数1~6のアルキレン基と同じものが挙げられ、中でもメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基が好ましく、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基がより好ましく、メチレン基、エチレン基が特に好ましい。
【0185】
一般式(B1)のR74における-O-を鎖中に有する炭素数1~6のアルキレン基としては、例えば下記一般式(B1-1)で示される基等が挙げられる。
【0186】
-(R75-O-)-R76- (B1-1)
(式中、R75及びR76はそれぞれ独立して、直鎖状又は分枝状の炭素数1~5のアルキレン基を表し、tは、1~5の整数を表す。ただし、式中の炭素数の総数は2~6であり、t個のR75はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【0187】
一般式(B1-1)のR75及びR76における炭素数1~5のアルキレン基としては、炭素数1~3のものが好ましい。また、直鎖状又は分枝状のいずれであってもよく、直鎖状のものがより好ましい。具体的には例えば、メチレン基、エチレン基、メチルメチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、ジメチルメチレン基、エチルメチレン基、テトラメチレン基、1-メチルトリメチレン基、2-メチルトリメチレン基、1,2-ジメチルエチレン基、1,1-ジメチルエチレン基、エチルエチレン基、エチルメチルメチレン基、プロピルメチレン基、ペンタメチレン基等が挙げられ、中でもメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基が好ましく、メチレン基、エチレン基がより好ましい。
【0188】
一般式(B1-1)のtとしては、1又は2が好ましく、1がより好ましい。
【0189】
一般式(B1-1)で示される基の好ましい具体例としては、下記一般式(B1-2)で示される基が挙げられる。
【0190】
-R75'-O-R76'- (B1-2)
(式中、R75'及びR76'はそれぞれ独立して、直鎖状の炭素数1~5のアルキレン基を表す。ただし、式中の炭素数の総数は2~6である。)
【0191】
一般式(B1-2)のR75'及びR76'における直鎖状の炭素数1~5のアルキレン基としては、具体的にはメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基が挙げられ、中でもメチレン基、エチレン基が好ましい。
【0192】
一般式(B1-2)で示される基としては、具体的には例えば
-CH2-O-CH2-、-CH2-O-CH2CH2-、-CH2-O-CH2CH2CH2-、
-CH2-O-CH2CH2CH2CH2-、-CH2-O-CH2CH2CH2CH2CH2-、
-CH2CH2-O-CH2-、-CH2CH2-O-CH2CH2-、-CH2CH2-O-CH2CH2CH2-、-CH2CH2-O-CH2CH2CH2CH2-、
-CH2CH2CH2-O-CH2-、-CH2CH2CH2-O-CH2CH2-、-CH2CH2CH2-O-CH2CH2CH2-、
-CH2CH2CH2CH2-O-CH2-、-CH2CH2CH2CH2-O-CH2CH2-、-CH2CH2CH2CH2CH2-O-CH2-、
等が挙げられ、中でも
-CH2-O-CH2-、-CH2-O-CH2CH2-、-CH2CH2-O-CH2-、-CH2CH2-O-CH2CH2-
が好ましく、
-CH2-O-CH2-、-CH2CH2-O-CH2CH2-がより好ましく、-CH2-O-CH2-が特に好ましい。
【0193】
一般式(B1)のR72としては、ヒドロキシ基及び直鎖状の炭素数1~6のヒドロキシアルキル基が好ましく、ヒドロキシ基及び末端部分の1個の水素がヒドロキシ基で置換された直鎖状の炭素数1~6のヒドロキシアルキル基がより好ましく、末端部分の1個の水素がヒドロキシ基で置換された直鎖状の炭素数1~6のヒドロキシアルキル基が特に好ましい。具体的にはヒドロキシ基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基が好ましく、ヒドロキシ基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基がより好ましく、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基が特に好ましい。
【0194】
一般式(B1)のR73としては、水素原子、直鎖状の炭素数1~6のアルキル基及び直鎖状の炭素数1~6のヒドロキシアルキル基が好ましく、水素原子、直鎖状の炭素数1~6のアルキル基及び末端部分の1個の水素がヒドロキシ基で置換された直鎖状の炭素数1~6のヒドロキシアルキル基がより好ましく、末端部分の1個の水素がヒドロキシ基で置換された直鎖状の炭素数1~6のヒドロキシアルキル基が特に好ましい。具体的には水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基が好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基がより好ましく、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基が特に好ましい。
【0195】
一般式(B1)のR74としては、直鎖状又は分枝状の炭素数1~6のアルキレン基及び一般式(B1-1)で示される基が好ましく、直鎖状の炭素数1~6のアルキレン基及び一般式(B1-2)で示される基がより好ましく、直鎖状の炭素数1~6のアルキレン基が特に好ましい。具体的にはメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、
-CH2-O-CH2-、-CH2-O-CH2CH2-、-CH2CH2-O-CH2-、-CH2CH2-O-CH2CH2-
が好ましく、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、
-CH2-O-CH2-、-CH2CH2-O-CH2CH2-
がより好ましく、メチレン基、エチレン基、-CH2-O-CH2-がさらに好ましく、メチレン基、エチレン基が特に好ましい。
【0196】
一般式(B1)のrとしては、0~2の整数が好ましく、0又は1がより好ましい。
【0197】
一般式(B1)で示される化合物の好ましい具体例としては、下記一般式(B2)で示される化合物が挙げられる。
(式中、R71~R73、R75、R76及びtは、上記と同じであり、R77は、直鎖状又は分枝状の炭素数1~6のアルキレン基を表し、r2は0又は1を表し、r2が0のときr1は0を表し、r2が1のときr1は0~3の整数を表す。ただし、複数のR72、R73、R75、R76及びtは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【0198】
一般式(B2)のR77における直鎖状又は分枝状の炭素数1~6のアルキレン基としては、一般式(B1)のR71における炭素数1~6のアルキレン基の具体例のうち直鎖状又は分枝状のものが挙げられ、中でもメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基が好ましく、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基がより好ましく、メチレン基、エチレン基が特に好ましい。
【0199】
一般式(B2)のr2としては、0又は1が好ましい。
【0200】
一般式(B2)で示される化合物の好ましい具体例としては、下記一般式(B3)~(B5)で示される化合物が挙げられる。
(式中、R75'及びR76'は、上記と同じであり、R71'及びR77'は、直鎖状の炭素数1~6のアルキレン基を表し、R72'は、ヒドロキシ基又は末端部分の1個の水素がヒドロキシ基で置換された直鎖状の炭素数1~6のヒドロキシアルキル基を表し、R73'は、水素原子、直鎖状の炭素数1~6のアルキル基又は末端部分の1個の水素がヒドロキシ基で置換された直鎖状の炭素数1~6のヒドロキシアルキル基を表し、r3は、1~3の整数を表す。ただし、R75'及びR76'の炭素数の総数は2~6であり、複数のR72'、R73'、R75'及びR76'はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【0201】
一般式(B3)~(B5)のR71'における直鎖状の炭素数1~6のアルキレン基としては、具体的にはメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基が挙げられる。一般式(B3)においては、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基が好ましく、一般式(B4)においては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基が好ましく、一般式(B5)においては、メチレン基、エチレン基が好ましい。
【0202】
一般式(B4)及び(B5)のR77'における直鎖状の炭素数1~6のアルキレン基としては、具体的にはメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基が挙げられ、中でもメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基が好ましく、メチレン基、エチレン基がより好ましい。
【0203】
一般式(B4)及び(B5)のR72'及びR73'における末端部分の1個の水素がヒドロキシ基で置換された直鎖状の炭素数1~6のヒドロキシアルキル基としては、具体的にはヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、ヒドロキシペンチル基、ヒドロキシヘキシル基が挙げられ、中でもヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基が好ましく、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基がより好ましい。
【0204】
一般式(B4)及び(B5)のR73'における直鎖状の炭素数1~6のアルキル基としては、具体的にはメチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基が挙げられ、中でもメチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましい。
【0205】
一般式(B4)のR72'としては、ヒドロキシ基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基が好ましく、ヒドロキシ基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基がより好ましく、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基が特に好ましい。
【0206】
一般式(B4)のR73'としては、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基が好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基がより好ましく、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基が特に好ましい。
【0207】
一般式(B5)のR72'及びR73'としては、末端部分の1個の水素がヒドロキシ基で置換された直鎖状の炭素数1~6のヒドロキシアルキル基が好ましく、具体的にはヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基が好ましい。
【0208】
一般式(B5)のr3としては、1が好ましい。
【0209】
一般式(B3)で示される化合物の好ましい具体例としては、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオールが挙げられ、1,4-ブタンジオールが好ましい。
【0210】
一般式(B4)で示される化合物の好ましい具体例としては、下記式で示される化合物が挙げられる。
【0211】
下記具体例の中でも、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、1,2,6-ヘキサントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが好ましく、1,2,6-ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールがより好ましく、ペンタエリスリトールが特に好ましい。
【0212】
一般式(B5)で示される化合物の好ましい具体例としては、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、テトラペンタエリスリトールが挙げられ、ジペンタエリスリトールが好ましい。
【0213】
本発明に係るアルコールとしては、一般式(B3)~(B5)で示される化合物の好ましい具体例の中でも、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2,6-ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールが好ましく、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2,6-ヘキサントリオール、ペンタエリスリトールがより好ましく、1,4-ブタンジオール、ペンタエリスリトールがさらに好ましく、ペンタエリスリトールが特に好ましい。本発明に係るアルコールは、市販のものでも、自体公知の方法によって適宜合成したものでもよい。
【0214】
[本発明の結着剤組成物]
本発明の結着剤組成物は、本発明に係るコポリマー、本発明に係るアルコール及び水を含んでなるものである。尚、本発明に係るコポリマー及び本発明に係るアルコールはそれぞれ、1種のみ用いても2種以上を組み合わせて用いてもよく、1種のみ用いるのが好ましい。
【0215】
本発明の結着剤組成物における本発明に係るコポリマーの含有量は、本発明に係るコポリマーと本発明に係るアルコールの総質量に対して70~99質量%、好ましくは75~99質量%、より好ましくは80~99質量%である。尚、本発明に係るコポリマーを2種以上組み合わせて用いる場合には、それらの総質量が上記含有量になればよい。
【0216】
本発明の結着剤組成物における本発明に係るアルコールの含有量は、本発明に係るコポリマーと本発明に係るアルコールの総質量に対して1~30質量%、好ましくは1~25質量%、より好ましくは1~20質量%である。尚、本発明に係るアルコールを2種以上組み合わせて用いる場合には、それらの総質量が上記含有量になればよい。
【0217】
本発明の結着剤組成物における水の含有量は、本発明に係るコポリマーと本発明に係るアルコールの総質量が全体の1~50質量%、好ましくは1~20質量%となる量である。この時、本発明の結着剤組成物中の本発明に係るコポリマーの濃度は、電極調製に用いられる濃度に合わせて適宜設定されればよいが、通常1~30%、好ましくは1~20%である。
【0218】
本発明の結着剤組成物は、本発明に係るコポリマー、本発明に係るアルコール及び水を、それぞれ上記含有量となるように混合することにより製造し得る。このとき、本発明に係るコポリマーの製造方法における重合反応、中和処理及び架橋反応は、本発明の結着剤組成物を製造する前に予め行う必要がある。すなわち、上述した重合反応、並びに、要すれば中和処理及び/又は架橋反応を行い、所望の本発明に係るコポリマーを製造した上で、該コポリマーを本発明に係るアルコール及び水と混合し、本発明の結着剤組成物を製造する必要がある。なぜなら、例えば上述した本発明に係るコポリマーの製造方法において、本発明に係るアルコールを加えて重合反応を行った場合、得られたコポリマーが水を始めとする種々の溶媒に溶解しないという問題が生じ、該コポリマーを電極作製に用いることが出来ないためである。
【0219】
本発明の結着剤組成物は、電極作製時に本発明に係るコポリマー同士が本発明に係るアルコールを介して結合することにより(該アルコールが連結剤として働くことにより)、本発明に係るコポリマーが電極に均等に配置されて活物質表面を包み込むと考えられる。そのため、本発明の結着剤組成物を用いて電極を作製すれば、活物質表面のほとんどを充放電に活用できるサイクル特性に優れた電極を得ることが出来る。
【0220】
[炭素を含有する活物質]
本発明のスラリー組成物における炭素を含有する活物質は、炭素;或いはその表面に炭素を被覆した炭素以外の活物質材料(以下、炭素を被覆した活物質材料と略記する場合がある)を少なくとも1種含有するものであればよく、炭素のみからなるもの;炭素を被覆した活物質材料のみからなるもの;炭素と炭素を被覆した活物質材料との組合せからなるもの;炭素及び/又は炭素を被覆した活物質材料と炭素以外の活物質材料との組合せからなるもののいずれであってもよい。
【0221】
上記炭素としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛等の黒鉛系炭素材料(黒鉛)、カーボンブラック、活性炭、カーボンファイバー、コークス、ソフトカーボン、ハードカーボン等が挙げられる。中でも天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛等の黒鉛が好ましい。該天然黒鉛としては、鱗片状黒鉛、塊状黒鉛等が挙げられる。該人造黒鉛としては、塊状黒鉛、気相成長黒鉛、鱗片状黒鉛、繊維状黒鉛等が挙げられる。
【0222】
上記炭素以外の活物質材料としては、シリコン、ゲルマニウム、錫、鉛、亜鉛、アルミニウム、インジウム、アンチモン、ビスマスなどが挙げられ、中でもシリコンが好ましい。該シリコンとしては、シリコンの他に、SiO、SiO等のシリコン酸化物、金属と結合したシリコン(SiM:Mはマグネシウム、鉄、カルシウム、コバルト、ニッケル、ホウ素、銅、マンガン、銀、バナジウム、セリウム、亜鉛等の金属)等が挙げられる。
【0223】
上記炭素を被覆した活物質材料としては、具体的には例えば、表面に炭素を被覆したシリコン、表面に炭素を被覆したシリコン酸化物、表面に炭素を被覆した金属と結合したシリコン等が挙げられ、表面に炭素を被覆したシリコン、表面に炭素を被覆したシリコン酸化物が好ましく、表面に炭素を被覆したシリコン酸化物がより好ましい。尚、炭素を被覆した活物質材料は、その表面の全部が炭素に被覆されたものであっても、その表面の一部が被覆されたものであってもいずれでもよい。
【0224】
本発明のスラリー組成物における炭素を含有する活物質としては、炭素、表面に炭素を被覆したシリコン、表面に炭素を被覆したシリコン酸化物、又は表面に炭素を被覆した金属と結合したシリコンを少なくとも1種含有する活物質が挙げられる。より具体的には、炭素;表面に炭素を被覆したシリコン;表面に炭素を被覆したシリコン酸化物;表面に炭素を被覆した金属と結合したシリコン;これらから選ばれる2種以上を混合したもの;或いはこれらのうち少なくとも1種と、シリコン、ゲルマニウム、錫、鉛、亜鉛、アルミニウム、インジウム、アンチモン、ビスマスから選ばれる1種以上を混合したものを含有する活物質が挙げられる。中でも、炭素;表面に炭素を被覆したシリコン;表面に炭素を被覆したシリコン酸化物;表面に炭素を被覆した金属と結合したシリコン;これらから選ばれる2種以上を混合したもの;或いはこれらのうち少なくとも1種と、シリコン、シリコン酸化物又は金属と結合したシリコンから選ばれる1種以上を混合したものを含有する活物質が好ましく、炭素;表面に炭素を被覆したシリコン;表面に炭素を被覆したシリコン酸化物;表面に炭素を被覆した金属と結合したシリコン;或いはこれらから選ばれる2種以上を混合したものを含有する活物質がより好ましく、炭素;表面に炭素を被覆したシリコン;表面に炭素を被覆したシリコン酸化物;或いはこれらから選ばれる2種以上を混合したものを含有する活物質がさらに好ましく、炭素及び表面に炭素を被覆したシリコン酸化物を含有する活物質がさらにより好ましく、炭素及び表面に炭素を被覆した一酸化シリコンを含有する活物質が特に好ましい。
【0225】
本発明のスラリー組成物における炭素を含有する活物質の平均粒子径は、活物質の種類により異なるが、通常1nm~100μmであり、好ましくは1nm~50μmであり、より好ましくは1nm~20μmである。
【0226】
本発明のスラリー組成物における炭素を含有する活物質中の炭素の含量は、通常10~100質量%であり、好ましくは40~100質量%であり、より好ましくは50~100質量%である。
【0227】
[導電助剤]
本発明のスラリー組成物における導電助剤は、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック等のカーボンブラックが挙げられ、中でもアセチレンブラック、ケッチェンブラックが好ましく、アセチレンブラックがより好ましい。
【0228】
[本発明のスラリー組成物]
本発明のスラリー組成物は、1)炭素を含有する活物質、2)導電助剤、及び3)本発明の結着剤組成物を含んでなる、電極作製用の組成物である。本発明のスラリー組成物は、陽極作製用であっても負極作製用であってもよいが、負極作製用として用いられるのが好ましい。
【0229】
本発明のスラリー組成物における炭素を含有する活物質の含有量は、溶媒を含まないスラリー組成物の質量に対して1~98質量%、好ましくは10~98質量%である。
【0230】
本発明のスラリー組成物における導電助剤の含有量は、溶媒を含まないスラリー組成物の質量に対して1~40質量%、好ましくは1~30質量%、より好ましくは1~20質量%である。
【0231】
本発明のスラリー組成物における本発明の結着剤組成物の含有量は、溶媒を含まないスラリー組成物の質量に対して1~30質量%、より好ましくは1~25質量%、さらに好ましくは1~20質量%である。この範囲で本発明の結着剤組成物を含有させることにより、電極作製時に活物質及び導電助剤を集電体上に均一に分散させ、且つ、活物質膨張時であっても電極構造を維持することができる。
【0232】
本発明のスラリー組成物は、1)炭素を含有する活物質、2)導電助剤、及び3)本発明の結着剤組成物以外に、例えば、支持塩、イオン伝導性ポリマー、バインダーポリマー等を含んでいてもよい(ただし、本発明に係るコポリマーを除く)。該支持塩としては、例えばLi(C2F5SO2)2N(LiBETI)、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiCF3SO3等が挙げられる。該イオン伝導性ポリマーとしては、例えばポリエチレンオキシド(PEO)系のポリマー、ポリプロピレンオキシド(PPO)系のポリマー等が挙げられる。該バインダーポリマーとしては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、スチレンブタジエン共重合体(SBR)、アクリロニトリルブタジエン共重合体(NBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリビニルエーテル、ポリイミド等が挙げられる。これら支持塩、イオン伝導性ポリマー及びバインダーポリマーの含有量は、通常この分野で用いられる量に準じて設定されればよい。
【0233】
本発明のスラリー組成物は、1)炭素を含有する活物質、2)導電助剤、及び3)本発明の結着剤組成物を適当な溶媒中でそれぞれ上記濃度範囲となるように混合することにより得られる。該溶媒としては、例えば、水、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、γ-ブチロラクトン、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、ジオキサン等が挙げられ、水が好ましい。
【0234】
[集電体]
本発明に係る集電体は、ニッケル、銅、ステンレス(SUS)などの導電性の材料を用いた箔、メッシュ、エキスパンドグリッド(エキスパンドメタル)、パンチドメタル等から構成される。メッシュの目開き、線径、メッシュ数等は特に制限されず、従来公知のものが使用できる。集電体の好ましい厚さは、5~30μmである。ただし、この範囲を外れる厚さの集電体を用いてもよい。
【0235】
集電体の大きさは、電池の使用用途に応じて決定される。大型の電池に用いられる大型の電極を作製するのであれば、面積の大きな集電体が用いられる。小型の電極を作製するのであれば、面積の小さな集電体が用いられる。
【0236】
[本発明の電極]
本発明の電極は、1)炭素を含有する活物質、2)導電助剤、3)本発明の結着剤組成物由来の結着剤、及び4)集電体を有するものである。具体的には、集電体と、その表面に形成された、炭素を含有する活物質、導電助剤及び本発明の結着剤組成物由来の結着剤を含む活物質層とを有するものである。本発明の電極は、負極としても陽極としても用いることができるが、負極として用いるのが好ましい。
【0237】
上記活物質層においては、本発明の結着剤組成物由来の結着剤が、炭素を含有する活物質と導電助剤とを集電体上に均一に分散し、且つ、良好な被覆性を保つため、本発明の電極は可逆性に優れる。
【0238】
上記活物質層の厚さ(塗布層の厚さ)は、通常1~500μmであり、好ましくは1~300μmであり、より好ましくは1~150μmである。
【0239】
本発明の電極の作製方法は、本発明のスラリー組成物〔1)炭素を含有する活物質、2)導電助剤及び3)本発明の結着剤組成物を含む組成物〕を集電体上に塗布し、乾燥させることを特徴とする。該作製方法において本発明のスラリー組成物を乾燥させることにより、本発明の結着剤組成物中の本発明に係るポリマーが2~10価のアルコールを介して結合し、本発明の結着剤組成物由来の結着剤を形成する。
該作製方法において、本発明のスラリー組成物の使用量は、乾燥後に活物質層の厚さが上記範囲になるよう適宜設定すればよい。
【0240】
本発明の電極の作製方法における本発明のスラリー組成物を集電体に塗布する方法としては、例えば、自走型コータ、インクジェット法、ドクターブレード法、スプレー法、またはこれらの組み合わせを用いることができる。中でも、薄い層を形成できるドクターブレード法やインクジェット法が好ましく、ドクターブレード法がより好ましい。
【0241】
本発明の電極の作製方法における乾燥方法としては、自体公知の方法に準じてなされればよく、通常加熱処理によりなされる。加熱時の乾燥条件(真空の要否、乾燥時間、乾燥温度)は、本発明のスラリー組成物の塗布量や揮発速度に応じて適宜設定されればよい。具体的には例えば、真空中、通常80~150℃、好ましくは120~150℃で、通常5~20時間、好ましくは6~12時間乾燥させればよい。
【0242】
本発明の電極の作製方法において、要すれば乾燥後にプレス処理を行ってもよい。該プレス方法としては、自体公知の方法に準じてなされればよく、例えばカレンダーロール法、平板プレス等が挙げられ、カレンダーロール法が好ましい。
【0243】
本発明の電極は、リチウム電池に用いることができるものであり、正極、電解質、負極で構成される通常の電池であれば何れにも用いることができる。
【0244】
該電解質としては、ビニレンカーボネート、フルオロビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、フルオロメチルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート、プロピルビニレンカーボネート、ブチルビニレンカーボンネード、ジプロピルビニレンカーボネート、4,5-ジメチルビニレンカーボネート、4,5-ジエチルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、ジビニルエチレンカーボネート、フェニルエチレンカーボネート、ジアリルカーボネート、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、カテコールカーボネート、1,3-プロパンスルトン及びブタンスルトン等の添加剤を有するものが好ましく、中でもフルオロエチレンカーボネート(FEC)を有するものがより好ましい。電解質中の添加剤の含有量は、通常0.5%~15%であり、0.5~5%が好ましい。
【0245】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【実施例
【0246】
合成例1 架橋コポリマー溶液E-1の調製
(1)架橋コポリマーの合成
攪拌装置、冷却管、温度計、窒素導入管及び滴下装置を備えた200mLの丸底フラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート70g(530mmol、和光純薬工業(株)製)を入れ、窒素気流下で内温が90℃になるまで加熱した。次いで、アクリル酸9.2g(128mmol、和光純薬工業(株)製)、アクリル酸-2-ヒドロキシエチル(HEA)9.2g(79mmol、和光純薬工業(株)製)、ポリエチレングリコールジアクリレート0.06g(0.2mmol、新中村化学工業(株)製)、2,2’-アゾビス(イソブチルニトリル)0.04g(0.2mmol、和光純薬工業(株)製)及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート30g(227mmol)を混合した溶液を、2時間かけて丸底フラスコに滴下した。その後、得られた溶液を90℃で5時間反応させた。反応後、室温まで冷却し、架橋されたコポリマーを得た。25mmHg(約33.3hPa)減圧下で得られたコポリマーからプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを除去して固形状物を得た後、さらに真空乾燥して、モノマー組成比がアクリル酸:HEA=1:1の固形分(架橋コポリマー)を得た。
【0247】
(2)架橋コポリマー溶液の調製
100mLのガラス製ビーカーに、(1)で得られた架橋コポリマー4.6g、及びイオン交換水30mLを加え、2時間撹拌して分散させた。得られた分散液に50%水酸化ナトリウム溶液(和光純薬工業(株)製)を加えてpHを6.8に調整した後、イオン交換水で全量が50gになるように調整し、固形分が10wt%の中和した架橋コポリマーの溶液50gを得た(中和度80%)。これを、架橋コポリマー溶液E-1とした。
【0248】
合成例2 非架橋コポリマー溶液E-2の調製
ポリエチレングリコールジアクリレートを添加しない以外は合成例1(1)と同様の方法で重合反応に付し、非架橋コポリマーを得た。
架橋コポリマー4.6gの代わりに、上記で得られた非架橋コポリマー4.6gを用いた以外は、合成例1(2)と同様の方法により、中和した非架橋コポリマーの溶液を得た(中和度80%)。これを、非架橋コポリマー溶液E-2とした。
【0249】
実験例1 各種コポリマー溶液の粘度測定
合成例1で得られた架橋コポリマー溶液E-1及び合成例2で得られた非架橋コポリマー溶液E-2の粘度を、B型回転粘度計(商品名:B8L、株式会社東京計器社製)でローターNo.4を使用して、回転速度12rpm、測定温度20℃で測定した。
得られた結果を中和度と合わせて表1に示す。
【0250】
【表1】
【0251】
合成例3 バインダー溶液K-1の調整
テフロン(登録商標)製10mLのビーカーに架橋コポリマー溶液E-1 9.9g(固形分として0.99g)、ペンタエリスリトール0.01g(和光純薬工業(株)製)及びイオン交換水90μLを加えて、透明な溶液になるまで撹拌し、固形分が10wt%のバインダー溶液K-1を得た。
【0252】
合成例4 バインダー溶液K-2の調整
テフロン(登録商標)製10mLのビーカーに架橋コポリマー溶液E-1 9g(固形分として0.9g)、ペンタエリスリトール0.1g及びイオン交換水900μLを加えて、透明な溶液になるまで撹拌し、固形分が10wt%のバインダー溶液K-2を得た。
【0253】
合成例5~7 バインダー溶液K-3~5の調整
ペンタエリスリトール0.1gの代わりに、1,3-プロパンジオール(和光純薬工業(株)製)、1,4-ブタンジオール(和光純薬工業(株)製)又は1,6-ヘキサンジオール(和光純薬工業(株)製)をそれぞれ0.1g用いた以外は合成例4と同様の方法により、固形分が10wt%のバインダー溶液K-3~5を得た。
【0254】
合成例8 バインダー溶液K-6の調整
ペンタエリスリトール0.01gの代わりに、1,2,6-ヘキサントリオール0.01g(和光純薬工業(株)製)を用いた以外は合成例3と同様の方法により、固形分が10wt%のバインダー溶液K-6を得た。
【0255】
合成例9 バインダー溶液K-7の調整
架橋コポリマー溶液E-1 9gの代わりに、非架橋コポリマー溶液E-2 9g(固形分として0.9g)を用いた以外は合成例4と同様の方法により、固形分が10wt%のバインダー溶液K-7を得た。
【0256】
合成例10 バインダー溶液J-1の調整
ペンタエリスリトール0.1gの代わりにプロパンジアミン0.1g(和光純薬工業(株)製)を用いた以外は合成例4と同様の方法により、固形分が10wt%のバインダー溶液J-1を得た。
【0257】
合成例11 バインダー溶液J-2の調整
ペンタエリスリトール0.01gの代わりにシュウ酸ナトリウム0.01g(和光純薬工業(株)製)を用いた以外は合成例3と同様の方法により、固形分が10wt%のバインダー溶液J-2を得た。
【0258】
実施例1 本発明の電極を用いた電池の製造
(1)本発明のスラリー組成物の製造
炭素が被覆された一酸化ケイ素活物質(SiOC)2.1g(粒子サイズ:平均粒径5μm、商品名:SiO 1.3C、(株)大阪チタニウムテクノロロジーズ製)、黒鉛活物質11.2g(粒子サイズ:平均粒径10μm、商品名:SNO-10、SECカーボン(株)製)及びアセチレンブラック(AB)0.14g(商品名:デンカブラック、デンカ(株)製)を計りとり、自転公転泡攪拌機(商品名:泡とり練太郎、型式:AR-250、(株)シンキー製)を用いて回転速度2000rpmで10分間混合した。次いで、バインダー溶液K-1を5.6g加え、自転公転泡攪拌機を用いて2000rpmで3時間混合した。次いでイオン交換水6gを加え、自転公転泡攪拌機を用いて2000rpmで10分間混合した。次いで、自転公転泡攪拌機で5分間脱泡し、得られた混合物(固形分質量比でSiOC:黒鉛:AB:バインダー溶液の固形分=10:85:1:4)をスラリー組成物とした。該スラリー組成物は、集電体上に塗布した後に乾燥させることにより、SiOCを10wt%、黒鉛を85wt%、ABを1wt%、バインダーを4wt%含有する被膜となるものである。
【0259】
(2)本発明のリチウム電池用電極の作製
(1)で得られたスラリー組成物を、ドクターブレード(テスター産業(株)製)と塗工機(商品名:MINI-COATER MC-20、宝泉(株)製)を用いて、厚さ20μmの銅箔集電体上に活物質のSiOCと黒鉛の総質量が5mg/cm2になるように塗布した。その後、空気中にて80℃で乾燥し、次いで真空下にて150℃で12時間乾燥した。集電体上の膜の厚さは、ノギスで測定し、約80~50μmであった。
得られた集電体をロールプレス機(商品名:HSR-60150、宝泉(株)製)でプレスし、活物質密度1.5mg/cm3のリチウム電池用電極を作製した。
【0260】
(3)コイン型電池の製造
(2)で得られた電極、リチウム箔電極、1MのLiPF6を含む炭酸エチレン(EC)/炭酸ジメチル(DMC)(体積比で1:1)溶液及びセパレータからなるコイン型電池を、アルゴンで満たしたグローブボックス中で組み立てた。
【0261】
実施例2~7 本発明の電極を用いた電池の製造
バインダー溶液K-1 5.6gの代わりに、バインダー溶液K-2~7 5.6gをそれぞれ用いた以外は実施例1と同様の方法により、スラリー組成物、リチウム電池用電極及びコイン型電池を製造した。
【0262】
比較例1,2 電池の製造
バインダー溶液K-1 5.6gの代わりに、バインダー溶液J-1又はJ-2 5.6gをそれぞれ用いた以外は実施例1と同様の方法により、スラリー組成物、リチウム電池用電極及びコイン型電池を製造した。
【0263】
比較例3 電池の製造
バインダー溶液K-1 5.6gの代わりに、架橋コポリマー溶液E-1 5.6gを用いた以外は実施例1と同様の方法により、スラリー組成物、リチウム電池用電極及びコイン型電池を製造した。
【0264】
実験例2 各種スラリー組成物を用いたスラリー分散性の測定
ガラス製の目盛付き50mL遠沈管に実施例1~7及び比較例1~3において作製したスラリー組成物5gを加え、さらにイオン交換水20mLを加えた。10分間振とう機で撹拌した後、60分間静置し、遠沈管の背面に青い紙を設置した。遠沈管の目盛0~20mLの全て範囲において背景の青色が見えない場合を○(分散性が良好)、0~15mLの範囲においては背景の青色が見えないが、15~20mLの範囲においては背景の青色が見える場合を△(沈降物が僅かにある)、5~20mLの範囲において背景の青色が見える場合を×(分散性が悪い)とした。
得られた結果を表2に示す。
【0265】
実験例3 各種電極を用いた剥離強度の測定
実施例1~7及び比較例1~3において作製した電極を幅5mm・長さ約50mmの短冊状にカッターで切断し、電極端5mmを残すように、両面テープを貼ったガラス製スライドグラスに貼り付けた。残した電極端5mm部分にカプトンテープを貼り、該電極端とは反対側の端を、剥離角が90度になるように剥離試験機(商品名:FGS-TV、型番:デジタルフォースゲージ FGP-0.5、日本電産シンポ(株)製)にセットし、10mm/分の速さで引き上げた。得られたデータの30mm分の平均値を剥離強度(単位:N)とした。
得られた結果を表2に示す。
尚、ここで得られたデータは、主に活物質層を銅箔から剥がす時に必要な力を表している。従って、剥離強度が強い場合は、スラリー組成物(ここではSiOC、黒鉛、AB及びバインダー)からなる活物質層が集電体の銅箔と強く結着していることを意味する。
【0266】
実験例4 各種電池を用いた充放電試験
実施例1~7及び比較例1~3において作製したコイン型電池を用いて、下記条件で定電流充放電試験を行った。
充放電の条件を下記に示す。
・対極:Li箔
・電解液:1M LiPF EC/DMC混合溶液(体積比1:1)
・測定装置:ABE1024-5V 0.1A-4充放電試験装置(エレクトロフィールド社製)
・電位及び電流密度
電位範囲 2.0-0.0V(vs.Li/Li)
電流密度 初回50mA/g、2回以降50mA/g
各電池を用いて得られた初回充放電での負極の放電容量および5回目サイクル後の負極の放電容量の値から、下記式を用いて容量維持率(%)を算出した。
容量維持率(%)=5回サイクル後の放電容量÷初回の放電容量×100
得られた結果を表2に示す。
【0267】
【表2】
【0268】
表2より、実施例1~7の本発明のスラリー組成物はいずれもスラリー分散性が良好であったのに対し、比較例1~3のスラリー組成物はいずれもスラリー分散性が悪いことが分かった。活物質や導電助剤がスラリー中で均等に分散することは、電極を作製する上で重要な要素である。導電助剤であるABがスラリー中で分散せずに凝集を起こした場合、電極内の導電パスが形成されず、電池性能は低下する。従って、実施例1~7のスラリー組成物はそのスラリー分散性が良好であったため、これを用いて作製した電極は、電極内の導電パスが形成された結果、電池性能が向上したと考えられる。
【0269】
また、実施例1~7の本発明の電極はいずれも、比較例1~3の電極と同等以上の剥離強度を示すことが分かった。これは、本発明に係るアルコールが集電体との結着を向上させていることや、コポリマー同士が本発明に係るアルコールを介して結合することで電極に均等に配置され、集電体の銅や活物質同士の結着が高まったためと考えられる。
【0270】
さらに、本発明の電極を用いた実施例1~7の電池はいずれも、比較例1~3の電池よりも高い容量維持率を示すことが分かった。これは、コポリマー同士が本発明に係るアルコールを介して結合することで、電極に均等に配置されて活物質表面を包み込んだ結果、ポリマーが不均一な状態のミクロ層分離のような不具合が無いことにより、活物質表面のほとんどが充放電に活用されたためと考えられる。
【0271】
合成例12 架橋コポリマーC-1の合成
攪拌装置、冷却管、温度計、窒素導入管及び滴下装置を備えた200mLの丸底フラスコに、メチルエチルケトン(MEK)20mL(和光純薬工業(株)製)を入れ、次いで、アクリル酸2g(28mmol、和光純薬工業(株)製)、アクリル酸-2-ヒドロキシエチル(HEA)2g(17mmol、和光純薬工業(株)製)、ポリエチレングリコールジアクリレート0.014g(0.05mmol、新中村化学工業(株)製)及びジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)0.01g(0.04mmol、和光純薬工業(株)製)を加えて撹拌した。その後、窒素気流下、70℃で4時間反応させた。反応中、MEKがわずかに揮発するため、必要に応じてMEKを追加した。反応後、室温まで冷却し、白色固体を得た。得られた白色固体を真空乾燥して、モノマー組成比がアクリル酸:HEA=1:1の架橋されたコポリマーを得た。これを架橋コポリマーC-1とした。
【0272】
合成例13 架橋コポリマーC-2の合成
反応系中に、さらに1,4-ブタンジオール0.4g(和光純薬工業(株)製)を添加した以外、合成例12と同様の方法で重合反応に付し、架橋コポリマーC-2を得た。
【0273】
合成例14 架橋コポリマーC-3の合成
反応系中に、さらにペンタエリスリトール0.4g(和光純薬工業(株)製)を添加した以外、合成例12と同様の方法で重合反応に付し、架橋コポリマーC-3を得た。
【0274】
実験例5 各種ポリマーの溶解性試験
合成例12~14において得られた架橋コポリマーC-1~3について、下記(1)~(3)の溶解性試験を行った。溶媒に完全に溶解した場合を○、不溶であった場合を×とした。
得られた結果を、架橋コポリマーC-1~3のモノマー含有量及び2価~10価のアルコール含有量と合わせて、表3に示す。
(1)水に対する溶解性試験
架橋コポリマーC-1~3の濃度が5%となる量のイオン交換水(HO)を加え、室温にて溶解性試験を行った。
(2)水酸化ナトリウム水溶液に対する溶解性試験
架橋コポリマーC-1~3の中和度が80%となる量の水酸化ナトリウム水溶液(NaOH)(和光純薬工業(株)製)を加え、室温にて溶解性試験を行った。
(3)N-メチルピロリドンに対する溶解性試験
架橋コポリマーC-1~3の濃度が5%となる量のN-メチルピロリドン(NMP)(和光純薬工業(株)製)を加え、室温にて溶解性試験を行った。
【0275】
【表3】
【0276】
表3より、2価~10価のアルコール(1,4-ブタンジオール又はペンタエリスリトール)の共存下で重合反応を行ったコポリマー(架橋コポリマーC-2及び3)は、水、水酸化ナトリウム水溶液及びN-メチルピロリドンのいずれの溶媒にも溶解しないことが分かった。すなわち、本発明に係るコポリマーの製造において、2価~10価のアルコールを加えて重合反応を行った場合(言い換えれば、該コポリマーの重合反応と2価~10価のアルコールによる結合反応を同時に行った場合)、得られたコポリマーは水を始めとする種々の溶媒に溶解しないため、該コポリマーを電極作製に用いることが出来ないことが分かった。
従って、本発明の結着剤組成物は、重合反応、並びに、要すれば中和処理及び/又は架橋反応を行い、所望の本発明に係るコポリマーを製造した上で、該コポリマーを本発明に係るアルコール及び水と混合し、製造する必要があることが分かった。