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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-15
(45)【発行日】2022-03-24
(54)【発明の名称】鉄道車両洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   B60S 3/06 20060101AFI20220316BHJP
   B61K 13/00 20060101ALI20220316BHJP
【FI】
B60S3/06
B61K13/00 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021098972
(22)【出願日】2021-06-14
【審査請求日】2021-06-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】322000443
【氏名又は名称】株式会社JR西日本中国メンテック
(73)【特許権者】
【識別番号】516238533
【氏名又は名称】八祥産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100163267
【弁理士】
【氏名又は名称】今中 崇之
(72)【発明者】
【氏名】藤井 佳寛
(72)【発明者】
【氏名】原田 龍太郎
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-056427(JP,A)
【文献】中国実用新案第208745965(CN,U)
【文献】特開2015-168412(JP,A)
【文献】特開2018-184076(JP,A)
【文献】特開2010-006292(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109398322(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60S 3/06
B61K 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両が走行するレールよりも高い位置にある床面に敷設されたガイドレールの上を転がる車輪を備え、
前記鉄道車両に沿って移動しながら車体及び該車体の表面よりも奥まった位置にあるドアを洗浄する鉄道車両洗浄装置であって、
洗剤が付着した前記車体及び前記ドアを払拭する払拭体と、
前記ドアの位置を検出し検出信号を出力するセンサと、
前記払拭体を進退させる進退部と、
位置Y1と該位置Y1よりも前記車体の側にある位置Y2との間で進退し、該位置Y1及び該位置Y2にて前記進退部に接触して前記払拭体の進出量を制限する制限部と、
前記検出信号に基づいて、前記進退部及び前記制限部の動作を制御する制御器と、を備え
前記制限部が前記位置Y1にて前記進退部に接触している場合に、前記払拭体が前記車体を払拭し、
前記制限部が前記位置Y2にて前記進退部に接触している場合に、前記払拭体が前記ドアを払拭する鉄道車両洗浄装置。
【請求項2】
請求項記載の鉄道車両洗浄装置において、
前記制御器が、前記検出信号に基づいて、前記ドアの位置から前記車体の位置へと移動したと判断した場合、前記進退部を後退させ予め決められた時間が経過するまで、前記払拭体を前記ドア及び前記車体から離すように制御する鉄道車両洗浄装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の鉄道車両洗浄装置において、
前記洗剤を洗い流すための水を散布する水散布部と、
前記水が散布された前記車体を払拭する払拭部と、を更に備え、
記払拭部が、前記ドアよりも高い範囲を払拭する第1のブラシと、
前記第1のブラシを進退させる第1のブラシ進退機構と、
前記ドアに対応する上下方向の範囲を払拭する第2のブラシと、
前記第2のブラシを進退させる第2のブラシ進退機構と、を有する鉄道車両洗浄装置。
【請求項4】
請求項記載の鉄道車両洗浄装置において、
前記第1のブラシ及び前記第2のブラシが、それぞれ揺動する鉄道車両洗浄装置。
【請求項5】
請求項記載の鉄道車両洗浄装置において、
前記水散布部が、前記第1のブラシが前記車体と接触する接触箇所の前方側及び後方側の第1の散布範囲並びに前記第2のブラシが前記車体と接触する接触箇所の前方側及び後方側の第2の散布範囲にそれぞれ水を散布する鉄道車両洗浄装置。
【請求項6】
請求項記載の鉄道車両洗浄装置において、
前記水散布部が、第1のブラシ進退機構に設けられ、前記第1の散布範囲に水を散布するノズルを有し、
前記ノズルが、前記第1のブラシとともに進退する鉄道車両洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、安全柵の外側に停車した鉄道車両の車体を洗浄する鉄道車両洗浄システムが記載されている。この鉄道車両洗浄システムは、安全柵の内側を移動し、車体に洗剤を塗布する洗剤塗布装置と、車体に沿って延びるガイドレールに案内されて移動する摩擦装置と、を備え、ガイドレールが、車体と安全柵との間に配置され、摩擦装置が、車体の側面に沿って車体の長手方向と交差する方向に延び、洗剤が塗布された車体を擦る摩擦部を有し、摩擦部が、姿勢を維持しながら車体の方向に延びる回転軸回りに回転する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6197205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、車体表面よりも奥まった位置にあるドアを洗浄できる鉄道車両洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、鉄道車両が走行するレールよりも高い位置にある床面に敷設されたガイドレールの上を転がる車輪を備え、前記鉄道車両に沿って移動しながら車体及び該車体の表面よりも奥まった位置にあるドアを洗浄する鉄道車両洗浄装置であって、洗剤が付着した前記車体及び前記ドアを払拭する払拭体と、前記ドアの位置を検出し検出信号を出力するセンサと、前記払拭体を進退させる進退部と、位置Y1と該位置Y1よりも前記車体の側にある位置Y2との間で進退し、該位置Y1及び該位置Y2にて前記進退部に接触して前記払拭体の進出量を制限する制限部と、前記検出信号に基づいて、前記進退部及び前記制限部の動作を制御する制御器と、を備え、前記制限部が前記位置Y1にて前記進退部に接触している場合に、前記払拭体が前記車体を払拭し、前記制限部が前記位置Y2にて前記進退部に接触している場合に、前記払拭体が前記ドアを払拭する鉄道車両洗浄装置である。
【0006】
【0007】
【0008】
請求項に記載の発明は、請求項記載の鉄道車両洗浄装置において、前記制御器が、前記検出信号に基づいて、前記ドアの位置から前記車体の位置へと移動したと判断した場合、前記進退部を後退させ予め決められた時間が経過するまで、前記払拭体を前記ドア及び前記車体から離すように制御する制御器を更に備える。
【0009】
請求項に記載の発明は、請求項1又は2記載の鉄道車両洗浄装置において、前記洗剤を洗い流すための水を散布する水散布部と、前記水が散布された前記車体を払拭する払拭部と、を更に備え、記払拭部が、前記ドアよりも高い範囲を払拭する第1のブラシと、前記第1のブラシを進退させる第1のブラシ進退機構と、前記ドアに対応する上下方向の範囲を払拭する第2のブラシと、前記第2のブラシを進退させる第2のブラシ進退機構と、を有する。
【0010】
請求項に記載の発明は、請求項記載の鉄道車両洗浄装置において、前記第1のブラシ及び前記第2のブラシが、それぞれ揺動する。
【0011】
請求項に記載の発明は、請求項記載の鉄道車両洗浄装置において、前記水散布部が、前記第1のブラシが前記車体と接触する接触箇所の前方側及び後方側の第1の散布範囲並びに前記第2のブラシが前記車体と接触する接触箇所の前方側及び後方側の第2の散布範囲にそれぞれ水を散布する。
【0012】
請求項に記載の発明は、請求項記載の鉄道車両洗浄装置において、前記水散布部が、第1のブラシ進退機構に設けられ、前記第1の散布範囲に水を散布するノズルを有し、前記ノズルが、前記第1のブラシとともに進退する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、車体表面よりも奥まった位置にあるドアを洗浄できる鉄道車両洗浄装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施の形態に係る鉄道車両洗浄装置の説明図である。
図2】同鉄道車両洗浄装置の斜視図である。
図3】同鉄道車両洗浄装置の正面図である。
図4】同鉄道車両洗浄装置が備える払拭体の払拭位置を示す説明図であって、(A)は車体側面を正面に見た図であり、(B)~(D)はドア部分の断面を示す図である。
図5】同鉄道車両洗浄装置の走行に伴う払拭体の進退動作を上方から見た図であって、(A)はドア手前側の位置、(B)はドア後端部を通過した後の位置、(C)はドア前端部の位置、(D)はドアを通過した後の位置における進退動作を模式的に示した説明図である。
図6】同鉄道車両洗浄装置が備える払拭体の払拭動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。なお、図において、説明に関連しない部分は図示を省略する場合がある。
【0016】
本発明の一実施の形態に係る鉄道車両洗浄装置10は、図1に示すように、整備工場内にて、新幹線車両(鉄道車両の一例)が走行するレールよりも高い位置にある床面(プラットフォーム)40の上で使用され、停止した新幹線車両に沿って移動しながら車体30を洗浄できる。なお、新幹線車両の車体30には、車体30の表面よりも寸法L(図5参照)だけ内側に奥まった位置に乗降用の側引戸であるドア302(図4(A)参照)が設けられている。この寸法Lは、例えば50mmである。従って、車体30の表面には、ドア302の部分にて段差が存在する。
【0017】
床面40には、作業員が車体30に接触することを防止するための安全柵42が設置されている。安全柵42は、車体30に沿って設置されており、新幹線車両は安全柵42の外側に停車する。付言すると、安全柵42は、間隔を空けて床面40から上下方向に延びる複数の支柱(不図示)と、上下方向に間隔を空けて各支柱によって支持され床面40と平行に延びる複数の棒状部材(不図示)と、により構成されている。
また、床面40には、車体30に沿って延びる1本のガイドレール44が敷設されている。ガイドレール44は、車体30と安全柵42との間に配置されている。
【0018】
鉄道車両洗浄装置10は、モータによって駆動輪184(図2参照)が駆動され、作業者の操作に基づいて、安全柵42を跨いだ状態で床面40の上を車体30に沿って走行できる。
以下、鉄道車両洗浄装置10の進行方向を基準として、進行方向前方側の面を正面、進行方向後方側の面を背面として説明する場合がある。また、図1図5に示すように、ガイドレール44が延びる鉄道車両洗浄装置10の走行方向をX方向、X方向と直交し車体30に向かう方向をY方向、X方向及びY方向と直交する上方向をZ方向として説明する場合がある。
【0019】
鉄道車両洗浄装置10は、図2及び図3に示すように、外側走行部120、内側走行部180及び連結部190を有している。
【0020】
外側走行部120は、支持部材122、第1の払拭部、第2の払拭部、水散布部(不図示)を有し、安全柵42の外側を移動できる。
支持部材122は、それぞれX方向に間隔を空けて上下方向に延びる複数の支柱を有している。支持部材122の下部には、床面40の上を転がる車輪128及びガイドレール44(図1参照)の上を転がるガイドレール受用車輪130が設けられている。ガイドレール受用車輪130は、上下方向に移動可能となっている。従って、ガイドレール受用車輪130をガイドレール44から浮かすことで、鉄道車両洗浄装置10の全体が、安全柵42の内側を移動することも可能である。
【0021】
第1の払拭部は、払拭体124a及び進退機構132a、払拭体124b及び進退機構132b、払拭体124c、進退機構132c、並びに払拭体124d及び進退機構132dを有し、洗剤が付着した車体30及びドア302を払拭できる。
【0022】
払拭体124aは、車体30の上側の角部の曲面に沿って湾曲した形状をしており、図4(A)及び図4(B)に示すように、車体30の上側の角部を払拭できる。
払拭体124aは、車体30の上側の角部からドア302の上端部までの高さの範囲に少なくとも接触し、車体30の方向に延びる回転軸まわりに姿勢を維持しながら偏心して回転することで、車体30を摩擦しながら汚れを落とすことができる。
進退機構132aは、エアシリンダを有し、払拭体124aを車体30の上側の角部に向かって斜め上方に進出させることができる。
【0023】
払拭体124bは、図4(A)及び図4(C)に示すように、払拭体124aよりも走行方向後方側に配置され、ドア302の上側の部分に対応する高さの範囲を払拭できる。
払拭体124bは、車体30及びドア302に接触し、車体30の方向に延びる回転軸まわりに姿勢を維持しながら偏心して回転することで、車体30を摩擦しながら汚れを落とすことができる。
【0024】
進退機構132bは、図5に示すように、リミットスイッチ134b、エアシリンダ136及びエアシリンダ138を有し、払拭体124bを車体30又はドア302に対して進退させることができる。
リミットスイッチ(センサの一例)134bは、エアシリンダ140によって車体30に向かって進出し、車体30又はドア302に接触することで、ドア302の位置とドア302以外の位置とを検出し、位置に応じた検出信号を出力できる。リミットスイッチ134bの検出信号は、制御器(不図示)に入力される。
【0025】
エアシリンダ(進退部の一例)136は、払拭体124bを進退させることができる。
なお、図5においては、エアシリンダ136の本体から進退するロッドの先端部のみが示されている。ロッドの先端部は、払拭体124bを固定する固定部材142に固定され、固定部材142には、間隔を空けてロッドが延びる方向に延びる一対の棒状部材144を介して板状の接触部材146が固定されている。
エアシリンダ136の動作は、制御器(不図示)によって制御される。
【0026】
エアシリンダ(制限部の一例)138は、位置Y1と、位置Y1よりも車体30の側にある位置Y2と、の間で進退し、位置Y1又は位置Y2にて接触部材146を介してエアシリンダ136に接触してエアシリンダ136の進出量を制限できる。
エアシリンダ138の動作は、制御器(不図示)によって制御される。
従って、リミットスイッチ134bがドア302の位置に応じて出力する検出信号に基づいて、制御器(不図示)がエアシリンダ136及びエアシリンダ138の進退を制御することにより、ドア302の位置に応じて適切な位置に払拭体124bが進退する。
【0027】
払拭体124cは、図4(A)及び図4(B)に示すように、払拭体124aの下方の位置に配置され、ドア302の中央部及び窓304に対応する高さの範囲を払拭できる。
払拭体124cは、車体30及びドア302に接触し、車体30の方向に延びる回転軸まわりに姿勢を維持しながら偏心して回転することで、車体30を摩擦しながら汚れを落とすことができる。
進退機構132cは、払拭体124cを車体30又はドア302に対して進退させることができる。進退機構132cは、図2に示すように、リミットスイッチ134bよりも進行方向前方側かつ低い位置に設けられたリミットスイッチ134cを有している。進退機構132cは、払拭体124bを進退させる進退機構132bと本質的に同様の機構であるため、その詳細な説明は省略する。
【0028】
払拭体124dは、図4(A)及び図4(C)に示すように、払拭体124bの下方の位置に配置され、ドア302の下側の部分に対応する高さの範囲を払拭できる。
払拭体124dは、車体30及びドア302に接触し、車体30の方向に延びる回転軸まわりに姿勢を維持しながら偏心して回転することで、車体30を摩擦しながら汚れを落とすことができる。
進退機構132dは、払拭体124dを車体30又はドア302に対して進退させることができる。進退機構132dは、払拭体124bを進退させる進退機構132bと本質的に同様の機構であるため、その詳細な説明は省略する。ただし、払拭体124dと払拭体124bは、それぞれ上下に位置し、X方向に対して同じ位置にあるので、進退機構132dが有するリミットスイッチは、進退機構132bが有するリミットスイッチ134bとなっている。すなわち、リミットスイッチ134bは、進退機構132dと進退機構132bについて共通している。
【0029】
第2の払拭部は、払拭体126a及び進退機構150a並びに払拭体126b及び進退機構150bを有し、水が散布された車体30及びドア302を払拭できる。
【0030】
払拭体(第1のブラシの一例)126aは、図4(A)及び図4(D)に示すように、払拭体124bよりも進行方向後方側に配置され、車体30の上側の角部からドア302の上端部までの高さの範囲、すなわちドア302よりも高い範囲を払拭できる。
払拭体126aは、毛足の長さが例えば100~200mmのブラシであり、図2に示すように、ブラシの先端面の形状が、車体30の上側の角部の曲面に沿って湾曲している。
払拭体126aは、斜め上方(X方向かつZ方向)に延びる揺動軸AX1の回りに揺動できる。払拭体126aの揺動角度θは、図6に示すように、車体30への毛先の接触範囲Lが、例えば150~250mmとなるように設定されている。
進退機構150a(第1のブラシ進退機構の一例)は、エアシリンダを有し、払拭体126aを払拭箇所(車体30の上側の角部)に向かって斜め上方に進出させることができる。
【0031】
払拭体126b(第2のブラシの一例)は、図4(A)及び図4(D)に示すように、払拭体126aよりも進行方向後方側に配置され、ドア302の上端から下端までの高さ範囲、すなわちドア302に対応する上下方向の範囲を払拭できる。
払拭体126bは、図2に示すように、上下方向に延びており、その毛足の長さが、ドア302の位置に応じて払拭体126b自身が進退しなくとも車体30及びドア302を払拭できるように設定されている。
払拭体126bは、上下方向(Z方向)に延びる揺動軸AX2回りに揺動できる。払拭体126bの揺動角度θは、図6に示すように、車体30への毛先の接触範囲Lが、例えば300~400mmとなるように設定されている。
進退機構150b(第2のブラシ進退機構の一例)は、エアシリンダ(不図示)を有し、払拭体126bを払拭箇所(車体30の側面)に対して進退させることができる。
【0032】
水散布部(不図示)は、車体30に向かって洗剤を洗い流すための水を散布する第1~第4のノズル(不図示)を有している。
第1のノズル及び第2のノズルは、それぞれ払拭体126aの先端よりも高い位置に配置され、進退機構150aに設けられることで払拭体126aとともに進退する。
第3のノズル及び第4のノズルは、それぞれ取付部材(不図示)を介して支持部材122(図3参照)の支柱に固定されている。
【0033】
第1~第4のノズルは、それぞれ、図4(A)に示す散布範囲A1、A2、B1、B2に向かって水を散布できる。
第1のノズルによる水の散布範囲A1は、払拭体126aの車体30との接触箇所に対して進行方向前方側である。
第2のノズルによる水の散布範囲A2は、払拭体126aの車体30との接触箇所に対して進行方向後方側である。
第3のノズルによる水の散布範囲B1は、払拭体126bの車体30との接触箇所に対して進行方向前方側かつ払拭体126aの下側である。
第4のノズルによる水の散布範囲B2は、払拭体126bの車体30との接触箇所に対して進行方向後方側である。
【0034】
内側走行部180は、図2に示すように、下部に床面40を転がる車輪182及び駆動輪184が設けられ、背面側の上部に作業者が操作する操作スイッチが配置された操作パネルが設けられている。
内側走行部180の内部には、電源を供給するバッテリ(不図示)、空圧を供給するコンプレッサ(不図示)及び各進退機構132a、132b、132c、132d、150a、150b、水散布部その他の各部を制御する制御器(不図示)が設けられている。
【0035】
連結部190は、図3に示すように、安全柵42のよりも高い位置にて、平面視してガイドレール44が延びる方向と交差する方向に延びる一対の部材であり、外側走行部120及び内側走行部180を互いに連結できる。
従って、鉄道車両洗浄装置10は、安全柵42に跨るような状態でガイドレール44が延びるX方向に移動できる。
【0036】
次に、鉄道車両洗浄装置10を用いた新幹線車両の車体30の洗浄方法について説明する。新幹線車両の車体30は、以下の工程P1~P5に従って洗浄される。なお、各工程P1~P5は、可能な場合は、順番が入れ替わって実行されてもよいし、並行して実行されてもよい。
【0037】
(工程P1)
本工程P1は、作業者が洗浄作業の準備を行う工程である。
作業者が、操作スイッチを操作して駆動輪184を駆動させ、ガイドレール44がある位置まで鉄道車両洗浄装置10を移動させる。
次に、作業者が、ガイドレール受用車輪130を降ろしてガイドレール44に載せ、車体30の近傍までガイドレール44に沿って鉄道車両洗浄装置10を移動させる。
また、鉄道車両洗浄装置10の他に、洗剤を散布するための洗剤散布装置(不図示)が準備される。
【0038】
(工程P2)
本工程P2は、洗剤を散布する工程である。
作業者が、洗剤散布装置(不図示)を用いて洗剤を車体30に向かって散布する。散布された洗剤によって、車体30に付着した汚れが浮き上がる。
【0039】
(工程P3)
本工程P3は、車体30を水洗いする工程である。
まず、作業者が、鉄道車両洗浄装置10を車体30の洗剤が散布された箇所まで移動させる。
次に、作業者の操作により、払拭体124a、124b、124c、124d及び払拭体126a、126bが車体30に向かって進出し、それぞれ所定の払拭位置に接触する。払拭体126aの進出に伴って第1のノズル及び第2のノズルも進出する。また、リミットスイッチ134b、134cが進出し、それぞれ車体30の側面に接触する。
次に、作業者の操作により、水散布部(不図示)が、図4(A)に示した散布範囲A1、A2(第1の散布範囲の一例)及び散布範囲B1、B2(第2の散布範囲の一例)に向かって水を散布する。
続いて払拭体124a、124b、124c、124dが、洗剤が付着した車体30を払拭するとともに、払拭体126a、126bが車体30を払拭しながら水散布部が散布する水によって汚れを含んだ洗剤が洗い流される。一方で、鉄道車両洗浄装置10は駆動輪184によって駆動され、ガイドレール44に沿って走行する。
鉄道車両洗浄装置10は、ガイドレール44に沿って安定して移動するので、各払拭体124a、124b、124c、124d及び各払拭体126a、126bと車体30との接触状態が安定して維持される。
【0040】
(工程P4)
本工程P4は、ドア302を洗浄する工程である。
鉄道車両洗浄装置10の走行に伴ってリミットスイッチ134b、134cがドア302の位置を検出した場合には、制御器(不図示)によって進退機構132b、132c、132dが制御され、対応する払拭体124b、124c、124dが更に進出してドア302を払拭する。
【0041】
前述の通り、進退機構132b、132c、132dは、それぞれ本質的に同様の機構となっているため、以下、払拭体124bの進退機構132bの動作についてのみ、図5に基づいて詳述する。
進退機構132bは、鉄道車両洗浄装置10が図5に示す矢印の方向(X方向)に走行するに伴って、図5(A)~図5(D)の順に示すように動作する。
【0042】
図5(A)に示すように、払拭体124bがドア302の手前側の位置にある状態においては、リミットスイッチ134bが車体30の表面に接触しドア302の位置ではないことを検出し、制御器(不図示)の指令に基づいて、エアシリンダ138がY方向とは反対側に進出している。その結果、接触部材146が位置Y1に留まり、この接触部材146を介して払拭体124bを進出させるエアシリンダ136の進出量が制限されている。このような状態において、払拭体124bは、車体30の表面に接触し払拭動作を行う。
【0043】
図5(B)に示すように、鉄道車両洗浄装置10が更に移動し、払拭体124bがドア302の後端部(X方向の側の端部)を通過した位置にある状態においては、リミットスイッチ134bがドア302に接触しドア302の位置であることを検出すると、制御器(不図示)の指令に基づいて、エアシリンダ138がY方向に後退する。その結果、接触部材146が位置Y1よりも車体30の側にある位置Y2に移動することでエアシリンダ136が更に進出する。このような状態において、払拭体124bは、車体30の表面によりも奥まった位置にあるドア302の表面に接触し払拭動作を行う。
【0044】
図5(C)に示すように、鉄道車両洗浄装置10が更に移動し、払拭体124bがドア302の前端部(X方向とは反対の側の端部)の位置にある状態においては、リミットスイッチ134bが車体30の表面に接触しドア302の位置ではないことを検出すると、制御器(不図示)の指令に基づいて、エアシリンダ138がY方向とは反対側に進出するとともに、エアシリンダ136がエアシリンダ138の進出量よりも大きく後退し、接触部材146がエアシリンダ138から離れる。このような状態において、払拭体124bはドア302の表面から離れ、更に車体30の表面の位置からも離れる。ただし、ドア302から離れた払拭体124bの払拭動作は継続される。
リミットスイッチ134bが車体30の表面に接触しドア302の位置ではないことを検出してから予め決められた時間Tが経過すると、図5(D)に示すように、エアシリンダ136が車体30の側に進出する。ただし、その進出量は接触部材146がエアシリンダ138と接触する位置Y1にて制限される。その結果、払拭体124bが車体30の表面に接触する。なお、図5(D)に示す状態は、図5(A)に示した状態と同一である。
すなわち、制御器(不図示)が、リミットスイッチ134bが出力した検出信号に基づいて、ドア302の位置から車体30の位置へと移動したと判断した場合、エアシリンダ136を駆動し、予め決められた時間Tが経過するまで、払拭体124bを車体30から離すことにより、鉄道車両洗浄装置10は、車体30とドア302との間の段差を越えて移動できる。
【0045】
以降、ドア302を通過するたびに、図5(A)~図5(C)を繰り返し、車体30の表面のみならず奥まった位置に設けられたドア302についても洗浄される。
なお、洗浄作業中は、鉄道車両洗浄装置10に設けられたスピーカーから音が流れる。
ただし、流れる音は、リミットスイッチ134b、134cの検出信号に応じて異なるように設定されている。すなわち、払拭体124b、124c、124dが車体30を払拭している間とドア302を払拭している間とで異なる音が流れる。
【0046】
(工程P5)
本工程P5は、洗浄作業を終了する工程である。
作業者の操作により、水の散布が停止するとともに各払拭体124a、124b、124c、124d及び各払拭体126a、126bが後退する。
作業者が、ガイドレール受用車輪130を浮かした後、床面40を走行させて鉄道車両洗浄装置10を所定の位置に戻す。
【0047】
このように、本実施の形態に係る鉄道車両洗浄装置10は、洗剤が散布された車体30に沿って走行することで新幹線車両が洗浄されるので、作業効率が高い。
【0048】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
鉄道車両洗浄装置が洗浄できる車体は、新幹線車両に限定されるものではない。車体の形状に合わせて各払拭体の形状を変更することにより、在来線車両や特急形車両等、任意の鉄道車両の車体及びドアを洗浄できる。
また、ドアの形式も側引戸に代えて両引戸であってもよい。
【符号の説明】
【0049】
10 鉄道車両洗浄装置
30 車体
40 床面
42 安全柵
44 ガイドレール
120 外側走行部
122 支持部材
124a、124b、124c、124d 払拭体
126a、126b 払拭体
128 車輪
130 ガイドレール受用車輪
132a、132b、132c、132d 進退機構
134b、134c リミットスイッチ
136、138、140 エアシリンダ
142 固定部材
144 棒状部材
146 接触部材
150a、150b 進退機構
180 内側走行部
182 車輪
184 駆動輪
190 連結部
302 ドア
304 窓
【要約】
【課題】鉄道車両を洗浄する作業効率が高い鉄道車両洗浄装置を提供する。
【解決手段】鉄道車両洗浄装置10は、鉄道車両に沿って移動しながら車体30を洗浄する鉄道車両洗浄装置であって、洗剤が付着した車体30に接触する第1の払拭部と、洗剤を洗い流すための水を散布する水散布部と、水が散布された車体30に接触する第2の払拭部と、を備え、第1の払拭部が、ドア302を払拭する払拭体124b、124c、124dと、ドア302の位置に応じて払拭体124b、124c、124dを進退させる進退機構132b、132c、132dと、を有する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6