(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-15
(45)【発行日】2022-03-24
(54)【発明の名称】目土散布機
(51)【国際特許分類】
A01C 15/00 20060101AFI20220316BHJP
A01B 45/00 20060101ALI20220316BHJP
A01G 20/18 20180101ALI20220316BHJP
【FI】
A01C15/00 E
A01B45/00
A01G20/18
(21)【出願番号】P 2015188050
(22)【出願日】2015-09-25
【審査請求日】2018-06-21
【審判番号】
【審判請求日】2020-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】304065879
【氏名又は名称】株式会社 マルナカ
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【氏名又は名称】赤澤 一博
(72)【発明者】
【氏名】山内 啓司
【合議体】
【審判長】長井 真一
【審判官】土屋 真理子
【審判官】奈良田 新一
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-210934(JP,A)
【文献】登録実用新案第3053482(JP,U)
【文献】実公平4-8738(JP,Y2)
【文献】特開2002-193425(JP,A)
【文献】特開2010-154812(JP,A)
【文献】特開2007-30908(JP,A)
【文献】実開平5-46256(JP,U)
【文献】登録実用新案第3128987(JP,U)
【文献】特開平11-21845(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B45/00,A01C15/00-23/04,A01G20/00-20/47
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側面に芝生面に散布するための目土を収容する目土収容部及びこの目土収容部の下方から外部へ目土を排出する目土排出口を有するホッパと、
前記目土排出口から排出された目土を地面へ散布する散布装置と、
この散布装置の動作中に前記ホッパの内側面を振動させてホッパの内壁に付着した目土を落下させる振動装置と
を具備する目土散布機であって、
前記目土収
容部が平板状の前傾斜板及び後傾斜板間且つ両側板間に設けられた空間内に目土を収
容するためのものであり、
前記ホッパのすぐ前側に使用者が着座する運転席が設けられ、
前記振動装置が、前記ホッパの目土収容部における前側の上向傾斜面を構成する前傾斜板の下端近傍に設けられ、前記目土収容部における斜め上方に向いた上向傾斜面を振動させるものであり、
且つ、前記振動装置が、回転軸を回転させる複数のモータと、このモータの回転軸に重心以外の箇所が取り付けられ当該回転軸の回転により振動する振動子とを有しているとともに、振動装置を前傾斜板に止着するために用いられる止着具であるナットが前傾斜板から目土収
容部内部に突出しており、
前記複数のモータが、前傾斜板の下端前側に位置するオーバーハング形状をなした箇所に互いに幅方向に離間させて間欠的に取り付けられていることを特徴とする目土散布機。
【請求項2】
前記振動装置が、ホッパ内面において対向する一対の前記上向傾斜面のうち前側又は両方の上向傾斜面を振動させるものである請求項1記載の目土散布機。
【請求項3】
前記振動装置が、前記ホッパの複数の箇所を振動させるとともに前記上向傾斜面の全面を振動させるものである請求項1又は2記載の目土散布機。
【請求項4】
自走可能な台車に搭載されるものであり、当該台車の駆動源を利用して動作する請求項1、2又は3記載の目土散布機。
【請求項5】
前記振動装置が、前記台車に搭載されたバッテリを駆動源としている請求項4記載の目土散布機。
【請求項6】
前記散布装置が、前記ホッパの底部において前方から後方へと前記目土を移動させ得るベルトコンベアと、このベルトコンベアにより運搬された前記目土を分散させるロールブラシとを有し、
前記ホッパが、目土収容部における斜め上方に向いた上向傾斜面を前後に対向させて対をなして有するものであり、前記ロールブラシを後側の前記上向傾斜面近傍に設けるとともに前記振動装置を前側の前記上向傾斜面に設けている請求項1、2、3、4又は5記載の目土散布機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフ場や公園において、主に芝生に目土を散布する目土散布機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴルフ場や公園、或いは河川敷等といった芝生が養生されている箇所において、当該芝生の育成のために目土を散布するといった作業が行われる。このような作業は通常、目土散布機により行われる(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0003】
そして現在では、特許文献1に記載のもののように目土を正確に散布し得るように散布位置が調整されているものや、特許文献2記載のもののように、ホッパの底部から安定して目土を取り出し得るように、ホッパ底部に螺旋板を配した回転軸を前後方向に配し、当該回転軸の回転により目土を積極的にホッパから取り出すといったものも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-152106号公報
【文献】特開2006-115814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような目土散布機においては、散布する目土が必ずしも円滑にホッパ内を移動し当該ホッパから落下し得るような流動性が高い態様をなしているとは限らない。すなわち、目土が不要に水分を含んでいる場合等では、ホッパの底部よりも上側を構成する、対向する壁面間に梁状に目土が固着してしまうといった事が起こるときがある。そのとき、ホッパの底部及びその付近には空間が形成されてしまった状態で目土散布機が目土を散布しないまま動作してしまうという不具合が発生する。そうなると、目土を散布中の使用者が予期しない箇所で目土の散布が中断されてしまい、目土の散布にムラが生じてしまう。加えて、このように生じた散布ムラを是正するために、ホッパに固着した目土を落下させる作業に加え当該中断により散布し得なかった箇所へ再度目土散布機を移動させて再び散布するといったやり直し作業を行わなければならない。すなわち、作業効率の著しい低下が起こってしまう。
【0006】
本発明は、このような不具合に着目したものであり、作動中目土の散布を絶え間なく安定して継続させることができる目土散布機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0008】
すなわち本発明に係る目土散布機は、内側面に芝生面に散布するための目土を収容する目土収容部及びこの目土収容部の下方から外部へ目土を排出する目土排出口を有するホッパと、前記目土排出口から排出された目土を地面へ散布する散布装置と、この散布装置の動作中に前記ホッパの内側面を振動させてホッパの内壁に付着した目土を落下させる振動装置とを具備する目土散布機であって、前記目土収容部が平板状の前傾斜板及び後傾斜板間且つ両側板間に設けられた空間内に目土を収納するためのものであり、前記ホッパのすぐ前側に使用者が着座する運転席が設けられ、前記振動装置が、前記ホッパの目土収容部における前側の上向傾斜面を構成する前傾斜板の下端近傍に設けられ、前記目土収容部における斜め上方に向いた上向傾斜面を振動させるものであり、且つ、前記振動装置が、回転軸を回転させる複数のモータと、このモータの回転軸に重心以外の箇所が取り付けられ当該回転軸の回転により振動する振動子とを有しているとともに、振動装置を前傾斜板に止着するために用いられる止着具であるナットが前傾斜板から目土収容部内部に突出しており、前記複数のモータが、前傾斜板の下端前側に位置するオーバーハング形状をなした箇所に互いに幅方向に離間させて間欠的に取り付けられていることを特徴とする。
【0009】
このようなものであれば、ホッパに収容する目土が水を多く含んでいるときであってもホッパの内側面に目土がこびりついてという不具合を有効に回避することができる。これにより目土がホッパの上部から落下できないという不具合を有効に回避することができる。その結果、作動中目土の散布を絶え間なく安定して継続させることができる目土散布機を提供することが可能となる。
【0010】
ここで、上述したような目土の落下不良は、ホッパ底部よりも上側において目土が対向する内側面間を架け渡すような概略アーチ形状を形成するというケースが多い。そして当該アーチ形状の形成は内側面において、特に斜め上方に面した上向傾斜面に多くみられることが分かった。すなわち、本発明に係る目土散布機の構成であれば、振動装置が、目土収容部における斜め上方に向いた上向傾斜面を振動させるものであるので、振動装置による目土の移動をより有効に促すことができる。
さらに、前記振動装置が、回転軸を回転させる複数のモータと、このモータの回転軸に重心以外の箇所が取り付けられ当該回転軸の回転により振動する振動子とを有しているとともに、振動装置を前傾斜板に止着するために用いられる止着具であるナットが前傾斜板から目土収容部内部に突出しているので、簡素な構成で且つ有効に目土の安定した落下を促すことができる。
【0011】
ここで、上向傾斜面を振動させるという構成は、必ずしも振動装置を上向傾斜面が設けられている箇所に直接取り付ける態様のみに限られない。すなわち、振動装置により発生する振動が上向傾斜面に伝播し得る種々の態様を含む概念である。
【0012】
そして、目土による上記アーチ形状の形成をより有効に回避するための構成として、振動装置が、ホッパ内面において対向する一対の上向傾斜面のうち前側又は両方の上向傾斜面を振動させるものである態様を挙げることができる。
【0013】
さらに、より目土の好適な落下に資する態様の一例として、振動装置が、ホッパの複数の箇所を振動させるとともに上向傾斜面の全面を振動させる態様を挙げることができる。
【0015】
ここで、より簡便に利用し易い目土散布機の構成として、自走可能な台車に搭載されるものであり、当該台車の駆動源を利用して動作する態様を挙げることができる。
【0016】
また斯かる目土散布機においては、振動装置が、台車に搭載されたバッテリを駆動源とすれば、所要のときにのみ振動装置を容易に作動させ得るものとすることができる。
【0017】
そして、振動装置を有効に作動させることにより、ホッパ全体において目土を安定して落下させるための具体的な構成として、散布装置が、ホッパの底部において前方から後方へと目土を移動させ得るベルトコンベアと、このベルトコンベアにより運搬された目土を分散させるロールブラシとを有したものであり、ホッパが、目土収容部における斜め上方に向いた上向傾斜面を前後に対向させて対をなして有するものであり、ロールブラシを後側の上向傾斜面近傍に設けるとともに振動装置を前側の上向傾斜面に設けている態様を挙げることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、作動中目土の散布を絶え間なく安定して継続させることができる目土散布機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0021】
本実施形態に係る目土散布機Aは、例えばゴルフ場にて好適に利用されるものであり、フェアウェイやグリーン上のように芝生が育成されている地面上に均一に目土Sと称される砂を散布するためのものである。
【0022】
この目土散布機Aは、本実施形態では図示しない運転者によって運転される自走可能な台車Dに一体に設けられたものである。しかし勿論、当該目土散布機Aは台車Dに対し着脱可能に搭載されるものであっても良い。
【0023】
台車Dは、
図1に示すように、エンジンDEによって駆動される後輪DR及びハンドルDHにより旋回可能に操作され得る前輪DFに支持されたシャーシDS上に、運転席DCと当該運転席DCの後方に目土散布機Aを搭載した、通常の態様をなすものである。そして本実施形態では、当該台車Dを駆動する駆動原であるエンジンDEの動力を利用して目土散布機Aにおける目土Sの散布に係る動作を行わせるとともに、エンジンDEの動力によって蓄電するバッテリDB(
図4)の電力を利用し、後述する振動装置3を任意に作動させ得る構成をなす。なお本実施形態では、台車Dを運転するためのブレーキやライトの態様や、エンジンDEを駆動するための燃料を貯留する燃料タンクといった、台車Dに必須である既存の態様ついての説明を省略する。
【0024】
ここで、本実施形態に係る目土散布機Aは、目土Sを収容するホッパ1と、このホッパ1から排出された目土Sを地面へ散布する散布装置2と、この散布装置2の動作中に前記ホッパ1の内側面を振動させてホッパ1の内壁に付着した目土Sを落下させる振動装置3とを具備することを特徴とする。なお本実施形態においては、ホッパ1の直下に設けられるシャッタ装置4の具体的な構成、すなわち当該シャッタの開度を調整して時間当たりの目土Sの散布量を調整するための開度調整機構、並びにエンジンDEの動力を散布装置2へと伝達する既存の動力伝達機構の図示を説明の便宜上省略しており、さらに同図並びに
図2、
図3及び
図5においては、ホッパ1の一部を破断して示している。以下、目土散布機Aの構成について、具体的に説明する。
【0025】
目土散布機Aは上述したとおり、ホッパ1と、シャッタ装置4と、散布装置2と、振動装置3とを有している。
【0026】
ホッパ1は、内側面に芝生面に散布するための目土Sを収容する目土収容部11と、この目土収容部11の下方から外部へ目土Sを排出する目土排出口12とを有する。目土収容部11は、平面視矩形状をなすとともに側面視概略逆三角形状をなすように鋼板を曲げや溶接等により成形したものである。そして当該形状とすることにより前傾斜板13及び後傾斜板14間且つ両側板15間に設けられた空間内に目土Sを収容するためのものである。この目土収容部11に収容された目土Sは、前傾斜板13及び後傾斜板14の内面である上向傾斜面たる前傾斜面16及び後傾斜面17を滑り落ちるようにして常に下方に案内される。目土排出口12は、目土収容部11に収容され且つ下方に案内される目土Sをシャッタ装置4へ導くための開口である。そして本実施形態では前後に設けられた上向傾斜面のうち、前傾斜面16の全域を振動させるべく前傾斜板13の下端前側に位置するオーバーハング形状をなした箇所の幅方向両側及び中央にモータ取付部18が設けられている。また当該モータ取付部18を外方から隠蔽するためのモータカバー19がさらに設けられている。
【0027】
シャッタ装置4は、
図1において破線で示す位置に設けられたもので、目土排出口12から下方へ落下する目土Sの量を調整すべく開度を調整可能に設けられた既存のものである。このシャッタ装置4は例えば、目土収容部11の周囲に設けられた図示しないレバーの角度を調整して目土Sの時間当たりの落下量を決定する開度を調整することができるものである。このシャッタ装置4の具体的な構成並びに操作方法等は既存の種々の態様を利用し得るため、その説明を省略する。
【0028】
散布装置2は、本実施形態では、所謂ベルトコンベア式と称される機構を利用したものである。具体的には、ホッパ1の底部において前方から後方へと前記目土Sを移動させ得るベルトコンベア21と、このベルトコンベア21の後端から落下する前記目土Sを分散させるロールブラシ22とを有している。ベルトコンベア21は、シャッタ装置4を通過し単位時間当たり所要量だけ落下してくる目土Sを後方へ移動させるためのものである。このベルトコンベア21は、台車DのエンジンDEの動力によって駆動するものであり、前側の前ローラ23及び後側の後ローラ24の外周にベルト25を掛け回した態様をなす。エンジンDEの動力を当該ベルトコンベア21へ伝達するための動力伝達機構の構成は既存のものであるために省略する。ロールブラシ22は、前方から運搬されてくるベルト25の上面である運搬面28の後端たる散布部20の箇所に先端が触れながら回転動作する例えば樹脂製のブラシ部26と、このブラシ部26の回転する軸心である回転軸部27とを有している。回転軸部27はその軸心方向を前ローラ23及び後ローラ24に等しく構成することにより、運搬面28上の目土Sを台車DのシャーシDS後端に位置付けられた散布部20から斜め下方向へ均一に散布することができる。このロールブラシ22もまた、台車DのエンジンDEの駆動力を利用して駆動されるべく、図示しない動力伝達機構を介してエンジンDEに接続されている。しかし勿論、このロールブラシ22の回転動作は上記ベルトコンベア21とは独立して制御し得るものであっても良い。また、当該散布装置2は台車DのエンジンDEとは別体の駆動源により駆動されるものであってもよい。
【0029】
しかして本実施形態に係る目土散布機Aは、ホッパ1の前傾斜面16の略全域及び目土排出口12近傍における両側板15並びに後傾斜板14をも振動させるべく、前傾斜板13の下端近傍に振動装置3を取り付けている。
【0030】
振動装置3は、
図2~
図5、特に
図4に模式的に示すように、台車Dに搭載されたバッテリDB(
図4)の電力により回転駆動する複数すなわち3つのモータ31と、このモータ31の回転軸34に取り付けられた振動子32と、このモータ31をモータ取付部18に強固に取り付けるための取付板33と、モータ31への電力の供給を司るものでモータカバー19近傍に取り付けられた電源スイッチ35と、運転席DC近傍に設けられる作動スイッチ36とを有している。つまり、電源スイッチ35においてモータ31への電力供給が許容された所謂「ON」状態においてのみ、運転席DCにおける例えばサイドブレーキ近傍に設けられた作動スイッチ36を操作することでモータ31のON/OFFすなわち入切を切り替え得るようにしている。そして振動子32は、例えば円盤状をなす金属製のもので、中心とは異なる位置に設けられモータ31の回転軸34に取り付けられる偏心孔32aと、この偏心孔32aを中心として回転動作する本体32bとを有している。すなわち、モータ31の回転軸34の回転による振動子32の回転により、振動装置3の振動動作が生成される。この振動動作はモータ31及び取付板33を伝わり、前傾斜板13の略全域及び目土排出口12近傍における両側板15及び後傾斜面17を強く振動させることができる。
【0031】
続いて、振動装置3の作動によるホッパ1内に収容された目土Sの挙動について説明する。ここで通常、良く乾燥している目土Sをホッパ1に収容している場合では、振動装置3を作動させずともホッパ1内の目土Sは上向傾斜面である前傾斜面16及び後傾斜面17に案内され、目土排出口12へと順次案内されてゆく。しかしながら目土Sの保管状況や目土散布機Aの運転時の天候により、目土Sが水を含んでしまう場合がある。このとき目土Sは、
図3に模式的に示すように、ホッパ1内の、主に下部において、前傾斜面16及び後傾斜面17間に橋状に架け渡されるように固着してしまい、目土排出口12の上方に不要な空間SPが形成されてしまうことがある。そうなると台車D及び目土散布機Aが順調に動作していても目土Sの散布が途切れてしまい、その結果、いわゆる目土Sの散布ムラが生じてしまう。そこでこのような事態を招来し得るような状況において、振動装置3を作動させる。
【0032】
電源スイッチ35及び作動スイッチ36を操作、すなわちともに「ON」状態として振動装置3を作動させると、少なくとも前傾斜面16の略全面及び側板15の前側に振動が起こる。これにより
図3に示すように、水分を含んだ目土Sが傾斜面16、17を架け渡すように固着しシャッタ装置4との間に不要な空間SPができてしまうところ、
図5に示すように目土Sの斯かる固着した部分が前傾斜面16側から崩され空間SPが埋められていくことになる。その結果、水分を多分に含んだ目土Sであっても絶え間なく目土排出口12からシャッタ装置4を通過してベルトコンベア21に順調に運搬され、ひいては絶え間なくベルトコンベア21後端である散布部20からロールブラシ22により散布されていくことにより、継続して安定した目土Sの散布が実現される。
【0033】
特に本実施形態では、振動装置3を前傾斜面16の下端近傍といった、最も目土Sの固着、詳細には前傾斜面16の下端近傍から対面する後傾斜面17との距離が近いため、容易に目土Sの固着が起こり易いところ、斯かる位置の裏面側に振動装置3を組み付けているために当該位置に最も強い振動が起こる。その結果、目土Sの固着が殆ど起こらないものとなっている。
【0034】
また前傾斜板13の下端近傍という位置は目土散布機Aにおける、特にこれまで「デッドスペース」と称されていた箇所に相当する。換言すれば、ホッパ1の前側は目土を落下させ易いよう前傾斜面16を設けるためにオーバーハング形状とする反面、シャーシDS上のスペースを有効に利用するためにはホッパ1のすぐ前側に使用者が着座する運転席DCを設けなければならない。それ故に、ホッパ1の下端前側はこれまで利用し難い不要な隙間が形成されていた。しかし本実施形態では、斯かる「デッドスペース」を有効に利用しながら、目土Sの散布を絶え間なく行うという効果に寄与している。
【0035】
以上のような構成とすることにより、本実施形態に係る目土散布機Aは、ホッパ1に収容する目土Sが水を多く含んでいるときであってもホッパ1の内側面に目土Sがこびりついてという不具合を有効に回避せしめている。これにより、目土Sがホッパ1の上部から落下できないという不具合を有効に回避している。その結果、作動中目土Sの散布を絶え間なく安定して継続させることができる目土散布機Aが実現されている。
【0036】
ここで、上述したような目土Sの落下不良は、ホッパ1底部よりも上側において目土Sが対向する内側面間を架け渡すような概略アーチ形状を形成するというケースが多い。そして当該アーチ形状の形成は内側面において、特に斜め上方に面した上向傾斜面に多くみられることから本実施形態では、振動装置3による目土Sの移動をより有効に促すべく、振動装置3を、目土収容部11における斜め上方に向いた上向傾斜面である前傾斜面16を振動させるものとしている。
【0037】
そして、目土Sによる上記アーチ形状の形成をより有効に回避するための構成として、振動装置3が、ホッパ1内面において対向する一対の上向傾斜面のうち、両方の上向傾斜面を振動させるべく、側面視逆三角形状をなすホッパ1の下端近傍に設けている。これにより前傾斜面16のみならず、目土排出口12近傍全体及び側板15の一部をも振動させることができ、順調な目土Sの落下を促している。
【0038】
そして、さらに目土Sの好適な落下に資するよう本実施形態では、振動装置3が、3つのモータ31を有する、つまりモータ31により振動する箇所を複数設けることで上向傾斜面である前傾斜面16の全面を振動させるものとしている。
【0039】
また、本実施形態では振動装置3が、回転軸34を回転させるモータ31と、このモータ31の回転軸34に重心以外の箇所が取り付けられ当該回転軸34の回転により振動する振動子32とを有している態様とすることで、簡素な構成であっても有効に目土Sの安定した落下を促している。詳細には、振動子32の回転動作により振動を発生させるときに、振動子32は他のものに何ら衝突することなく振動を発生させているので、振動装置3の作動時に不要な騒音が発生することや、ホッパ1や他の構成要素を不要に損傷させてしまうということもない。
【0040】
そして本実施形態では、自走可能な台車Dに搭載され当該台車Dの駆動源を利用して動作する目土散布機Aに対し、台車Dに搭載されたバッテリDBを駆動源とする振動装置3を設けることで、既存の目土散布機Aにおいて、容易に目土Sの散布効率の向上を実現せしめている。また台車DのバッテリDBにより振動装置3を駆動させるため、所要のときにのみ振動装置3を容易に作動させ得る。
【0041】
特に本実施形態では、所謂ベルトコンベア式の目土散布機Aの構成に対し、前傾斜面16を振動させるべく振動装置3を前傾斜板13の後端部分近傍に設けることで、ホッパ1全体において目土Sを安定して落下させる構成を実現している。加えて斯かる箇所はこれまでの当該ベルトコンベア式のものにおいて、いわゆる「デッドスペース」と認識された箇所であり、この箇所を有効利用することにより、台車DにおけるシャーシDS等の不要な仕様変更を招来することなく、振動装置3を搭載せしめている。
【0042】
以上、本発明の実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。例えば、上記実施形態では当該散布装置としてベルトコンベア式のものを説明したが勿論目土を地面に散布する態様により、例えばベルトコンベア及びロールブラシに代えて、水平方向に回転動作するファンにより目土を広範囲に散布し得る態様や、他の既存の種々の態様を利用し得る。加えて上記実施形態では台車に搭載されたバッテリからの電力により駆動するモータにより振動装置を構成したが勿論、エンジンの駆動力を利用することによって振動装置を構成しても良い。また上記実施形態では電力によって回転駆動するモータによって振動装置を構成したが勿論、振動装置が発生する振動は回転駆動によるものとは限られない。例えば、交流電流の通電により往復動作を行い得る、所謂リニアアクチュエータを利用することによって振動装置を構成しても良い。また、台車における芝生上を走行する車輪の形状やホッパやシャッタ装置の具体的な態様は上記実施形態のものに限定されることはなく、既存のものを含め、種々の態様のものを適用することができる。
【0043】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明はゴルフ場や公園において、主に芝生に目土を散布する目土散布機として利用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1…ホッパ
11…目土収容部
12…目土排出口
16…上向傾斜面(前傾斜面)
17…上向傾斜面(後傾斜面)
2…散布装置
21…ベルトコンベア
22…ロールブラシ
3…振動装置
31…モータ
32…振動子
34…回転軸
A…目土散布機
S…目土
D…台車
DE…台車の駆動源(エンジン)
DB…バッテリ