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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-15
(45)【発行日】2022-03-24
(54)【発明の名称】トイレ補助装置
(51)【国際特許分類】
   A47K 17/02 20060101AFI20220316BHJP
【FI】
A47K17/02 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017216424
(22)【出願日】2017-11-09
(65)【公開番号】P2019084220
(43)【公開日】2019-06-06
【審査請求日】2020-10-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000110479
【氏名又は名称】ナカ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093986
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 雅男
(72)【発明者】
【氏名】飛川 哲生
【審査官】中村 百合子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-022058(JP,A)
【文献】特開2013-169348(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0143494(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 13/00-17/02
A61G 9/00-15/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置基部に固定される支持体ベース部に身体支持部を移動操作可能に保持した身体支持具と、
スイッチおよびロック体を前記設置基部に固定されるケース内に収納したロック操作部とを有し、
前記身体支持具は、便器の前に横たわり、便座への着座者を支える身体支持位置と着座者の離座を許容する退避位置との間で移動自在な身体支持部を備え、
前記ロック体は、着座姿勢でロック位置とロック解除位置との間で操作可能で、ロック位置において前記身体支持部の退避位置への移動を規制し、かつ、前記身体支持具内に進入し、ロック状態において前記身体支持部の退避位置への移動を規制し、
前記スイッチは、前記ロック体の状態遷移に伴って断接状態間を遷移する、トイレ補助装置。
【請求項2】
前記スイッチはロック体に形成される押動部によりアクチュエータ部が押動されて断接操作される請求項1記載のトイレ補助装置。
【請求項3】
前記ロック体は、ロック位置とロック解除位置との間をスライド操作可能に形成されるとともに、
前記身体支持部には、該身体支持部の退避位置側への移動経路がロック位置における前記ロック体により閉塞される干渉部と、前記ロック体がロック解除位置にあるときに前記移動経路が開放される非干渉部とが形成される請求項1または2記載のトイレ補助装置。
【請求項4】
前記身体支持部は身体支持位置と退避位置との間を回転操作可能な請求項1、2または3のいずれかに記載のトイレ補助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトイレ補助装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
要介助者の使用を考慮したトイレ補助装置としては、特許文献1に記載のものが知られている。この従来例において、トイレ補助装置は、使用姿勢において便器の前方に横設された姿勢を取り、利用者は、トイレ補助装置に両肘を乗せることにより身体のバランスを取ることができる。
【0003】
また、トイレ補助装置は、便器からの離座、あるいは便座への着座のために便器の前方から退避する退避位置に移動操作することが可能であるが、介助者がいない状態でトイレ補助装置を退避位置に移動させて自分で起立しようとした際の不慮の事故を防止するために、利用者の離座を検出した際にはナースコール信号を出力するように構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5079314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した従来例において、ナースセンター等の介助者とトイレとの距離にも影響するが、要介助者が離座したタイミングでは、既に自力で起立動作をしてしまっている状態なので、転倒等を確実に防止できないという問題がある。
【0006】
本発明は、かかる問題を解決すべくなされたものであって、転倒等の事故を効果的に防止することのできるトイレ補助装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば上記目的は、
設置基部7に固定される支持体ベース部8に身体支持部2を移動操作可能に保持した身体支持具9と、
スイッチ4およびロック体3を前記設置基部7に固定されるケース10内に収納したロック操作部11とを有し、
前記身体支持具9は、便器の前に横たわり、便座への着座者を支える身体支持位置と着座者の離座を許容する退避位置との間で移動自在な身体支持部2を備え、
前記ロック体3は、着座姿勢でロック位置とロック解除位置との間で操作可能で、ロック位置において前記身体支持部2の退避位置への移動を規制し、かつ、前記身体支持具9内に進入し、ロック状態において前記身体支持部2の退避位置への移動を規制し、
前記スイッチ4は、前記ロック体3の状態遷移に伴って断接状態間を遷移する、トイレ補助装置を提供することにより達成される。
【0008】
本発明において、トイレ補助装置は、身体支持部2とロック体3とスイッチ4とを備えており、身体支持部2は身体支持位置において着座者の身体を支え、不用意な離座による事故を防止するために便座の前に横たわる姿勢に保持される。この状態から離座するには一旦身体支持部2を退避位置に移動させる必要があり、ロック体3がロック状態のときには身体支持位置から退避位置への移動が規制される。
【0009】
ロック体3は着座者への過度の拘束とならないように着座位置から操作可能であり、該ロック体3をロック解除状態に移行させることにより身体支持部2を退避位置に移動させることができる。
【0010】
ロック体3のロック解除状態への遷移に伴って断接するスイッチ4を備える本発明において、要介助者の起立動作を前もって知ることができるために、例えば、スイッチ4をナースコールのトリガーとすることによって、転倒等による不慮の事故を未然に防ぐことが可能になる。
【0011】
スイッチ4は、ロック体3の状態遷移に伴ってON、OFFが切り替われば適宜に構成することができるが、
前記スイッチ4はロック体3に形成される押動部5によりアクチュエータ部6が押動されて断接操作されるトイレ補助装置を構成すると、ロック体3の操作にスイッチ4の断接動作を直接連動させることができるために、動作信頼性が高まる上に、構造も簡単になる。
【0012】
さらに、本発明は、
設置基部7に固定される支持体ベース部8に前記身体支持部2を移動操作可能に保持した身体支持具9と、
前記スイッチ4およびロック体3を前記設置基部7に固定されるケース10内に収納したロック操作部11とを有し、
前記ロック体3は、身体支持具9内に進入し、ロック状態において身体支持部2の退避位置への移動を規制するように構成される。
【0013】
支持体ベース部8に身体支持部2を保持した身体支持具9と、ロック体3およびスイッチ4をケース10に収容したロック操作部11とを各々独自に設置基部7に固定するように構成される本発明において、ロック操作部11を有しない身体支持具9のみのトイレ補助装置にロック操作部11を別途設置するだけで身体支持具9の進退支持部にロック機能、およびスイッチ4による監視機能を付加でき、製品バラエティーを増やすことが可能になる。
【0014】
また、本発明の他の態様として、
前記ロック体3は、ロック位置とロック解除位置との間をスライド操作可能に形成されるとともに、
前記身体支持部2には、該身体支持部2の退避位置側への移動経路がロック位置における前記ロック体3により閉塞される干渉部12と、前記ロック体3がロック解除位置にあるときに前記移動経路が開放される非干渉部13とが形成されるトイレ補助装置を構成することができる。
【0015】
身体支持部2の身体支持位置から退避位置までの移動経路は、並進移動によることも可能であるが、回転操作により行うと、操作、構造ともに簡単にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明を示す図で、(a)は身体支持部が身体支持位置にある状態を示す斜視図、(b)は身体支持部が退避位置にある状態を示す斜視図である。
図2】本発明の要部を示す身体支持部を破断した状態の正面図である。
図3図2の3A-3A線断面図である。
図4】身体支持部を退避位置に移動させた状態を示す側面図である。
図5】本発明の分解斜視図である。
図6】ロック操作部の動作を示す図で、(a)はロック解除状態を示す図、(b)はロック状態を示す図である。
図7】ロック状態を示す図で、(a)は図6(b)の7A方向矢視図、(b)は図7(a)の7B-7B線断面図である。
図8】ロック解除状態を示す図で、(a)は図6(a)の8A方向矢視図、(b)は図8(a)の8B-8B線断面図である。
図9】本発明の変形例を示す図で、(a)は身体支持部が身体支持位置にある状態を示す斜視図、(b)は身体支持部が退避位置にある状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1以下に示すように、トイレ補助装置は設置基部7としての壁面に身体支持具9とロック操作部11とを固定して形成される。
【0018】
身体支持具9は、壁面7に固定される支持体ベース部8に身体支持部2を連結して形成され、支持体ベース部8にはカバー体14が装着される。
【0019】
身体支持部2は、肘を載せることができ、さらにこの状態で身体を支えるに十分な強度を有する平板直杆形状に形成される。この身体支持部2は、図1(a)に示すように、便器1の前に水平姿勢で横たわる身体支持位置と、図1(b)に示すように、身体支持位置から上方に回転して壁面7に沿う退避位置との間で移動可能で、着座姿勢で身体支持部2を身体支持位置に保持すると、着座者が肘を載せることができる程度の高さに設置される。
【0020】
また、身体支持部2は、身体支持位置にあるとき、着座者の立ち上がりを規制する程度に便器1に接近して配置される。
【0021】
身体支持部2を壁面7に連結するために、支持体ベース部8には図5に示すように、対向する一対のヒンジ片8aが設けられ、身体支持部2の回転基端には回転軸となり、ナット15bにより締結されてヒンジ片8a間に架設されるボルト15の挿通孔8bが開設される。
【0022】
さらに、図3、5に示すように、身体支持部2の回転基端には幅方向全長にわたってストッパ突部2aが形成されており、該ストッパ突部2aを支持体ベース部8のストッパ開口8cに係止させることにより水平な身体支持位置に保持される。
【0023】
一方、ロック操作部11は、図5に示すように、ロックベース部16にスライドカバー部17を連結したケース10内にロック体3、スイッチ4、クリック用板バネ11aを収容して形成され、ロックベース部16に開設したスクリュー挿通孔16aに挿通する図外のスクリューにより壁面7に固定される。
【0024】
スライドカバー部17はロックベース部16に対して側方に移動自在であり、後述するように、ロック位置とロック解除位置との間を移動する。このスライドカバー部17の上端部には、表示孔17aが開設された表示片17bが上方に向けて突設されており、スライドカバー部17のロック位置とロック解除位置間の移動に伴って表示孔17aには、ロックベース部16に施された2色の識別カラー16b、16cのいずれかが表示される(図6参照)。
【0025】
クリック用板バネ11aは中心部を下方に向けてV字形状に屈曲させた板バネであり、スライドカバー部17をロック位置とロック解除位置のいずれかに節度停止させるために設けられる。節度感を発生させるために、ロックベース部16には乗り越え突部16dが設けられており、図5に示すように、スライドカバー部17を側方に移動させるとクリック用板バネ11aの屈曲部が乗り越え突部16dを乗り越えて節度感(クリック感)が発生し、同時に反対方向への不用意な移動が規制される。
【0026】
スイッチ4は、下端部にアクチュエータ部6が配置されたマイクロスイッチ4であり(図5(b)参照)、ロックベース部16に固定される。このスイッチ4の出力端子4aへの配線は、ロックベース部16に開設された通線開口16e、および壁面7に開設された図外の通線開口を通って壁面7に固定された配線ボックス18、あるいは制御ボックス等に結線される(図3参照)。
【0027】
スイッチ4のアクチュエータ部6をスライドカバー部17への操作により断接操作するために、スライドカバー部17には押動部5が形成される。本例において、図6(a)に示すロック解除位置において押動部5はスイッチ4のアクチュエータ部6を押下しないために、スイッチ4はOFF状態となっており、スライドカバー部17を図6(b)に示すように、ロック位置にスライドさせると押動部5によりアクチュエータ部6が押下され、スイッチ4はON状態に遷移する。
【0028】
また、ロック操作部11のロック体3は図5に示すように、ケース固定部3aからストッパ突部3bを突設して形成される。本例においてロック体3は、平板状のケース固定部3aの側縁に側面視三角形状のストッパ突部3bを立ち上げて形成され、ケース固定部3aにおいてスライドカバー部17に固定される。
【0029】
ロック体3をスライドカバー部17に固定した状態でロック体3は前方に向けて突設され、図6(b)、図7に示すようにロック位置においてストッパ突部3bは身体支持部2の回転基端部の幅方向中間部に位置する。
【0030】
身体支持部2の回転基端部には、ロック体3がロック位置にある状態で身体支持部2を支持位置から退避位置まで回転させる際に上記ストッパ突部3bに干渉する干渉部12が設けられる。図7(b)に示すように、本例において干渉部12は、身体支持部2の回転基端に凹設される凹部として形成される。
【0031】
また、身体支持部2の回転基端部には、ロック体3がロック解除位置にある状態で身体支持部2を支持位置から退避位置まで回転させる際に上記ストッパ突部3bに干渉しない非干渉部13が設けられる。
【0032】
図8に示すように、本例において非干渉部13としては身体支持部2の側壁が利用されており、スライドカバー部17のロック解除位置までの移動に伴ってロック体3のストッパ突部3bは身体支持部2の側壁と支持体ベース部8のヒンジ片8aとにより形成される間隙に位置する。
【0033】
したがって本例において、スライドカバー部17がロック位置にあるときには、身体支持位置にある身体支持部2の干渉部12が退避位置まで移動する際の移動経路はストッパ突部3bにより閉塞された状態となるために、退避位置への移動が規制される。
【0034】
この状態からスライドカバーをロック解除位置までスライド操作すると、ストッパ突部3bは身体支持部2の非干渉部13に対応し、身体支持部2の退避位置への移動が許容される。
【0035】
なお、以上においては身体支持部2の側壁部を非干渉部13とした場合を示したが、ロック解除位置におけるストッパ突部3bを身体支持部2の幅方向中間部に設定し、かつ、例えば、対応する領域を身体支持部2の回転中心を中心とする円筒形状にする等、ストッパ突部3bが身体支持部2の回転操作に干渉しない形状にしてもよい。
【0036】
以上の構成の下、要介助者が便器1を使用する際、介助者は便器1への着座を確認した後、身体支持部2を身体支持位置まで垂直回転操作してスライドカバー部17をロック位置までスライド操作する。上述したように、ロック位置へのスライド操作によりスライドカバー部17の表示孔17aには、ロックベース部16に施された2色の識別カラー16b、16cのいずれか一方、例えば赤色が表示され、利用者にロック状態であることを知らせる。
【0037】
身体支持部2はロック状態で便器1の前で水平姿勢を保持しているために、身体支持部2に肘等を乗せて身体を支えることが可能であり、さらに、身体の揺れ等による転倒を確実に防止することができる。
【0038】
便器1の利用を終了した際には、図外のナースコールボタン等を操作して介助者を呼び出すことができ、介助者はロック操作部11をロック解除操作に移行させた後、身体支持部2を上方に回転させて退避位置に移行、保持させて要介助者を離座させることができる。
【0039】
要介助者がナースコールボタン等を操作することなく自らロック操作部11をロック解除状態に移行させると、スライドカバー部17の押動部5によりスイッチ4のアクチュエータ部6が操作されてスイッチ4はON状態に遷移し、ナースセンター等への通知がなされる。
【0040】
この結果、要介助者の具体的な離座行動に先立って介助者が知ることができるために、より早期の離座、あるいは離座後の行動に対する介助が可能になり、不慮の事故を効率的に防止することができる。
【0041】
なお、スイッチ4のON遷移によりナースセンター等への通知に加え、介助者の到着を待つような要介助者への音声出力をする等、適宜の操作を行うようにすることも可能である。
【0042】
また、以上においては身体支持部2を垂直回転させて身体支持位置と退避位置との間を移動させる場合を示したが、図9に示すように、水平回転させることにより位置変換したり、あるいは身体支持位置から水平並進移動して退避位置に移動させ、さらには、一旦並進移動させた後、回転させて位置変換するなど、適宜変更が可能である。
【0043】
図9において上述した実施の形態と実質的に同一の構成要素は図中に同一の符号を付して説明を省略する。
【符号の説明】
【0044】
1 便器
2 身体支持部
3 ロック体
4 スイッチ
5 押動部
6 アクチュエータ部
7 設置基部
8 支持体ベース部
9 身体支持具
10 ケース
11 ロック操作部
12 干渉部
13 非干渉部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9