(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-15
(45)【発行日】2022-03-24
(54)【発明の名称】計測値読取りシステム、計測値読取り装置及び計測値読取方法
(51)【国際特許分類】
G06T 5/00 20060101AFI20220316BHJP
G06K 7/14 20060101ALI20220316BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20220316BHJP
【FI】
G06T5/00 725
G06K7/14 017
G06T7/00 610
(21)【出願番号】P 2017216642
(22)【出願日】2017-11-09
【審査請求日】2020-02-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000153443
【氏名又は名称】株式会社 日立産業制御ソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】特許業務法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】那須 清
(72)【発明者】
【氏名】大橋 英和
【審査官】▲広▼島 明芳
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-056387(JP,A)
【文献】国際公開第2014/203403(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/069248(WO,A1)
【文献】特開2014-165866(JP,A)
【文献】特開2005-010998(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 1/00 - 7/90
G06K 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アナログメータでなる状態表示器の指針が示す計測値の値を読み取る計測値読取りシステムにおいて、
前記状態表示器の周囲に配置された少なくとも2つのマーカと、
可搬型の計測値読取り装置と
を有し、
前記計測値読取り装置は、
前記マーカ及び前記状態表示器を撮影するためのカメラ部と、
前記カメラ部から出力される撮影信号に基づく撮影画像内の各前記マーカに基づいて、当該撮影画像内の前記状態表示器の画像を、3次元的な傾きを補正して当該状態表示器を真正面から撮影した画像に変換する画像変換部と、
前記画像変換部により前記3次元的な傾きが補正された前記撮影画像内の前記状態表示器の画像に基づいて、当該状態表示器の指針が指し示す数値を読み取る計測値読取り部と、
前記画像変換部により前記3次元的な傾きが補正された前記状態表示器の画像における当該状態表示器の近傍に、当該状態表示器の計測対象が正常な場合における当該状態表示器の指針の変動範囲を表す第2のキャラクタを重畳する正常範囲重畳部と、
前記カメラ部から出力される前記撮影信号に基づく前記撮影画像と、前記画像変換部により前記3次元的な傾きが補正され、前記正常範囲重畳部により前記第2のキャラクタが重畳された前記状態表示器の画像とを2画面に合成した合成画像を生成する画像合成部と、
前記合成画像を表示する表示装置と
を備えることを特徴とする計測値読取りシステム。
【請求項2】
前記マーカは、それぞれ少なくとも3つの基準マークが設けられ、
前記画像変換部は、
各前記マーカの各前記基準マークに基づいて、前記撮影画像内の前記状態表示器の画像の前記3次元的な傾きを補正する
ことを特徴とする請求項1に記載の計測値読取りシステム。
【請求項3】
前記状態表示器の撮影位置を表す第1の枠体と、各前記マーカにそれぞれ対応して設けられ、各前記マーカの撮影位置をそれぞれ表す複数の第2の枠体とを有する第1のキャラクタを前記撮影画像に重畳する枠体重畳部を備え、
前記画像合成部は、
前記第1のキャラクタを重畳した前記撮影画像と、前記画像変換部により前記3次元的な傾きが補正された前記状態表示器の画像とを2画面に合成した前記合成画像を生成する
ことを特徴とする請求項1に記載の計測値読取りシステム。
【請求項4】
前記正常範囲重畳部は、
前記画像変換部により前記3次元的な傾きが補正された前記状態表示器の画像における当該状態表示器上に、当該状態表示器の計測対象が異常な場合における当該状態表示器の指針の変動範囲を表す半透明の第3のキャラクタを重畳し、
前記画像合成部は、
前記カメラ部から出力される前記撮影信号に基づく前記撮影画像と、前記画像変換部により前記3次元的な傾きが補正され、前記第2及び第3のキャラクタが重畳された前記状態表示器の画像とを2画面に合成した前記合成画像を生成する
ことを特徴とする請求項1に記載の計測値読取りシステム。
【請求項5】
アナログメータでなる状態表示器の指針が示す計測値の値を読み取る計測値読取り装置において、
前記状態表示器の周囲に少なくとも2つのマーカが配置され、
前記マーカ及び前記状態表示器を撮影するためのカメラ部と、
前記カメラ部から出力される撮影信号に基づく撮影画像内の各前記マーカに基づいて、当該撮影画像内の前記状態表示器の画像を、3次元的な傾きを補正して当該状態表示器を真正面から撮影した画像に変換する画像変換部と、
前記画像変換部により前記3次元的な傾きの補正が施された前記撮影画像内の前記状態表示器の画像に基づいて、当該状態表示器の指針が指し示す数値を読み取る計測値読取り部と、
前記画像変換部により前記3次元的な傾きが補正された前記状態表示器の画像における当該状態表示器の近傍に、当該状態表示器の計測対象が正常な場合における当該状態表示器の指針の変動範囲を表す第2のキャラクタを重畳する正常範囲重畳部と、
前記カメラ部から出力される前記撮影信号に基づく前記撮影画像と、前記画像変換部により前記3次元的な傾きが補正され、前記正常範囲重畳部により前記第2のキャラクタが重畳された前記状態表示器の画像とを2画面に合成した合成画像を生成する画像合成部と、
前記合成画像を表示する表示装置と
を備えることを特徴とする計測値読取り装置。
【請求項6】
アナログメータでなる状態表示器の指針が示す計測値の値を読み取る計測値読取り装置において実行される計測値読取り方法であって、
前記状態表示器の周囲に少なくとも2つのマーカが配置され、
前記マーカ及び前記状態表示器を撮影することにより得られた撮影信号に基づく撮影画像内の各前記マーカに基づいて、当該撮影画像内の前記状態表示器の画像を、3次元的な傾きを補正して当該状態表示器を真正面から撮影した画像に変換する第1のステップと、
前記3次元的な傾きを補正した前記撮影画像内の前記状態表示器の画像に基づいて、当該状態表示器の指針が指し示す数値を読み取る第2のステップと
を備え、
前記第2のステップでは、
前記撮影信号に基づく前記撮影画像と、前記3次元的な傾きを補正した前記状態表示器の画像における当該状態表示器の近傍に、当該状態表示器の計測対象が正常な場合における当該状態表示器の指針の変動範囲を表す第2のキャラクタを重畳した前記状態表示器の画像とを2画面に合成した合成画像を生成し、生成した前記合成画像を表示する
ことを特徴とする計測値読取り方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は計測値読取りシステム、計測値読取り装置及び計測値読取方法に関し、指針により電流、電圧又は電力量等のプラント設備の計量値や状態を表示する状態表示器、特に、指針回転式のアナログメータでなる状態表示器の計測値を読み取る計測値読取り装置に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、工場や火力発電所などの大規模施設では、プラント設備の状態を表示する状態表示器をビデオカメラ等の撮影装置により撮影し、撮影された状態表示器の状態に基づいてそのプラント設備の状態を監視する方法が広く行われている。
【0003】
このような監視方法に関連して、例えば、特許文献1には、状態表示器の周辺にマーカを配置し、このマーカに基づいて撮影画像内の状態表示器の表示領域を抽出する方法が開示されている。
【0004】
また非特許文献2には、設備ごとに専用の固定カメラを設置し、撮影環境を設定及び固定することにより同じアングルの撮影を行い、アナログ指示計の値をディジタル値に変換する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【文献】“FUJITSU Software Imagepower Analog Meter Recognizer V2(V02L02)”、[online]、富士通株式会社、[平成29年10月30日検索]、インターネット〈https://www.fujitsu.com/jp/Images/AnalogMeterRecognizerV2.pdf〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1では、撮影装置に対して状態表示器が3次元的に傾いた状態にある場合については何らの考慮もされていない。しかしながら、撮影装置に対して状態表示器が3次元的に傾いた状態にあると、撮影画像内の状態表示器の指針が指し示す計測値を正確に読み取ることができないという問題がある。
【0008】
また非特許文献1に開示された発明によると、状態表示器ごとに固定カメラを設置する必要があり、その分、多くの設置必要を要する問題がある。
【0009】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、アナログメータでなる状態表示器の指針が指し示す計測値を精度良く読み取り得る安価な計測値読取りシステム、計測値読取り装置及び計測値読取方法を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる課題を解決するため本発明においては、アナログメータでなる状態表示器の指針が示す計測値の値を読み取る計測値読取りシステムにおいて、前記状態表示器の周囲に配置された少なくとも2つのマーカと、可搬型の計測値読取り装置とを設け、前記計測値読取り装置に、前記マーカ及び前記状態表示器を撮影するためのカメラ部と、前記カメラ部から出力される撮影信号に基づく撮影画像内の各前記マーカに基づいて、当該撮影画像内の前記状態表示器の画像を、3次元的な傾きを補正して当該状態表示器を真正面から撮影した画像に変換する画像変換部と、前記画像変換部により前記3次元的な傾きが補正された前記撮影画像内の前記状態表示器の画像に基づいて、当該状態表示器の指針が指し示す数値を読み取る計測値読取り部と、前記画像変換部により前記3次元的な傾きが補正された前記状態表示器の画像における当該状態表示器の近傍に、当該状態表示器の計測対象が正常な場合における当該状態表示器の指針の変動範囲を表す第2のキャラクタを重畳する正常範囲重畳部と、前記カメラ部から出力される前記撮影信号に基づく前記撮影画像と、前記画像変換部により前記3次元的な傾きが補正され、前記正常範囲重畳部により前記第2のキャラクタが重畳された前記状態表示器の画像とを2画面に合成した合成画像を生成する画像合成部と、前記合成画像を表示する表示装置とを設けるようにした。
【0011】
また本発明においては、アナログメータでなる状態表示器の指針が示す計測値の値を読み取る計測値読取り装置において、前記状態表示器の周囲に少なくとも2つのマーカが配置され、前記マーカ及び前記状態表示器を撮影するためのカメラ部と、前記カメラ部から出力される撮影信号に基づく撮影画像内の各前記マーカに基づいて、当該撮影画像内の前記状態表示器の画像を、3次元的な傾きを補正して当該状態表示器を真正面から撮影した画像に変換する画像変換部と、前記画像変換部により前記3次元的な傾きの補正が施された前記撮影画像内の前記状態表示器の画像に基づいて、当該状態表示器の指針が指し示す数値を読み取る計測値読取り部と、前記画像変換部により前記3次元的な傾きが補正された前記状態表示器の画像における当該状態表示器の近傍に、当該状態表示器の計測対象が正常な場合における当該状態表示器の指針の変動範囲を表す第2のキャラクタを重畳する正常範囲重畳部と、前記カメラ部から出力される前記撮影信号に基づく前記撮影画像と、前記画像変換部により前記3次元的な傾きが補正され、前記正常範囲重畳部により前記第2のキャラクタが重畳された前記状態表示器の画像とを2画面に合成した合成画像を生成する画像合成部と、前記合成画像を表示する表示装置とを設けるようにした。
【0012】
さらに本発明においては、アナログメータでなる状態表示器の指針が示す計測値の値を読み取る計測値読取り装置において実行される計測値読取り方法であって、前記状態表示器の周囲に少なくとも2つのマーカが配置され、前記マーカ及び前記状態表示器を撮影することにより得られた撮影信号に基づく撮影画像内の各前記マーカに基づいて、当該撮影画像内の前記状態表示器の画像を、3次元的な傾きを補正して当該状態表示器を真正面から撮影した画像に変換する第1のステップと、前記3次元的な傾きを補正した前記撮影画像内の前記状態表示器の画像に基づいて、当該状態表示器の指針が指し示す数値を読み取る第2のステップとを設け、前記第2のステップでは、前記カメラ部から出力される前記撮影信号に基づく前記撮影画像と、前記3次元的な傾きを補正した前記状態表示器の画像における当該状態表示器の近傍に、当該状態表示器の計測対象が正常な場合における当該状態表示器の指針の変動範囲を表す第2のキャラクタを重畳した前記状態表示器の画像とを2画面に合成した合成画像を生成し、生成した前記合成画像を表示するようにした。
【0013】
本計測値読取りシステム、計測値読取り装置及び計測値読取方法によれば、状態表示器ごとに本読取り装置を用意する必要がなく、また撮影方向に対する状態表示器の3次元的な傾きを補正した上で当該状態表示器の指針が指し示す数値を読み取るため、当該数値を精度良く読み取ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、状態表示器の指針が指し示す計測値を精度良く読み取り得る安価な計測値読取りシステム、計測値読取り装置及び計測値読取方法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施の形態による計測値読取り装置の簡略的なハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図2】状態表示器及びマーカの説明に供する正面図である。
【
図3】本実施の形態による計測値読取り装置の論理構成を示すブロック図である。
【
図4】第1のキャラクタの説明に供する略線図である。
【
図5】(A)及び(B)は、撮影画像の3次元的な傾きの説明に供する斜視図及び正面図である。
【
図6】(A)は第2及び第3のキャラクタの説明に供する正面図、(B)は変形例の説明に供する正面図である。
【
図7】(A)は正常範囲重畳部の説明に供するxy座標であり、(B)は正常範囲管理テーブルを示す図表である。
【
図9】(A)は計測値読取り部の説明に供するxy座標であり、(B)は読取り基準管理テーブル示す図表である。
【
図10】(A)及び(B)は、撮影位置算出部の説明に供する概念図及びxy座標である。
【
図11】画像変換処理の処理手順を示すフローチャートである。
【
図12】画像変換処理の処理内容の説明に供する正面図である。
【
図13】画像変換処理の処理内容の説明に供する正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
【0017】
(1)本実施の形態による計測値読取り装置の構成
図1において、1は全体として本実施の形態による計測値読取り装置を示す。この計測値読取り装置1は、作業員がプラント設備に設置された状態表示器の指針が指し示す計測値を読み取るために利用する機器であり、例えば、タブレット又はスマートフォンなどの撮影機能を有する可搬型のコンピュータ装置から構成される。
【0018】
計測値読取り装置1は、CPU(Central Processing Unit)2、メモリ3、カメラモジュール4、入力装置5及び表示装置6などのハードウェアを備える。CPU2は、本計測値読取り装置1全体の動作制御を司るプロセッサである。またメモリ3は、例えば、不揮発性の半導体メモリから構成され、各種プログラムや各種データを保持するために利用される。メモリ3に格納されたプログラムをCPU2が実行することにより、後述のような計測値読取り装置1全体としての各種処理が実行される。
【0019】
カメラモジュール4は、図示しないレンズと、CCD(Charge Coupled Device)センサ又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサ等の光学センサとが一体化されたモジュールであり、外部からレンズを介して光学センサの受光面に入力した被写体の投影像を電気信号に変換し、これを撮影信号として出力する。
【0020】
入力装置5は、例えば、タッチパネルやボタンなどから構成され、利用者が各種操作を入力するために利用される。また表示装置6は、例えば、液晶パネルや、有機EL(Electro-Luminescence)パネルから構成され、カメラモジュール4から出力された撮影信号に基づく動画像又は静止画像や必要な情報を表示するために利用される。
【0021】
(2)計測値読取り機能
次に、計測値読取り装置1に搭載された計測値読取り機能について説明する。なお、以下においては、対象とする状態表示器が指針回転式のアナログメータであり、その状態表示器を真正面から見た外形形状が円形であるものとする。
【0022】
この計測値読取り機能は、プラント設備等に設置された状態表示器を作業員が本計測値読取り装置1により撮影することによって、その状態表示器の指針が指し示す計測値を画像処理によりディジタル値として取得し、このディジタル値を表示装置6に表示したり、当該ディジタル値をその状態表示器と対応付けてメモリ3に保存する機能である。なお、このとき作業員が撮影する画像は動画像及び静止画像のいずれであってもよいが、以下においては動画像として説明する。
【0023】
ここで、状態表示器の指針が指し示す計測値を精度良く取得するためには、本計測値読取り装置1をその状態表示器の真正面に正対するように位置させた上で撮影を行う必要がある。
【0024】
しかしながら、本計測値読取り装置1は作業員が手に持って撮影を行うように用いられる。このため作業員の癖や周囲の状況によっては、状態表示器をその真正面から正対する状態で撮影を行うことができず、本計測値読取り装置1の撮影方向(カメラモジュール4のレンズの中心軸方向)に対して状態表示器が3次元的に傾いた状態で撮影が行われることがある。このような場合、状態表示器の指針が指し示す正確な計測値を本計測値読取り装置1が取得できない。
【0025】
そこで、本実施の形態の計測値読取り装置1には、作業員により撮影された状態表示器の撮影画像の3次元的な傾きを補正し、状態表示器を真正面から撮影したように撮影画像を補正する機能がかかる計測値読取り機能の一部として実装されている。
【0026】
このような計測値読取り機能を実現するための手段として、本実施の形態の場合、
図2に示すように、対象とする各状態表示器10は、それぞれ正方形状の板(以下、これをテンプレートと呼ぶ)11に所定状態に固定されている。
【0027】
具体的には、状態表示器10は種類ごとに大きさが規格により決まっているため、当該状態表示器10の外寸と同じ大きさ及び同じ形状の図示しない開口部がテンプレート11の中央に設けられ、この開口部に、テンプレート11の上下左右方向及びその上下左右方向と、テンプレート11の法線方向及びその法線方向とを高精度に一致させた状態で状態表示器10が嵌め込まれて固定されている。
【0028】
またテンプレート11の左上端部及び右下端部には、それぞれそのテンプレート11に固定された状態表示器10の識別番号をQRコード(登録商標)化したQRコード(登録商標)がマーカ12として配置されている。この場合、かかるマーカ12の配置方法としては、テンプレート11にそのマーカ12を直接印刷する方法や、かかるマーカ12が印刷されたシールを貼着する方法などを適用することができる。
【0029】
そして、これらマーカ12は、当該マーカ12の一辺の長さと、状態表示器10の直径との比が1:3となるようにその大きさが選定されている。ただし、マーカ12の一辺の長さと、状態表示器10の直径との比は1:3以外の比率であってもよい。この場合においても、マーカ12の一辺の長さと、状態表示器10の直径との比を整数比とすることにより、状態表示器10に対するマーカ12の大きさの計算を容易化することができる。
【0030】
さらにテンプレート11の左上端部のマーカ12の下側や、右下端部のマーカ12の上側には、そのマーカ12が配置されたテンプレート11に固定された状態表示器10の識別番号(マーカ12を構成するQRコード(登録商標)に記録された識別番号と同じ番号)13が印刷又は当該識別番号13が印刷されたシールを貼着するなどの方法により表示されている。これにより作業員等がこの識別番号13に基づいて目視により状態表示器10を識別することができるようになされている。
【0031】
一方、
図3は、本実施の形態による計測値読取り装置1の論理構成を示す。この
図3に示すように、本計測値読取り装置1は、カメラモジュール4及び表示装置6に加えて、枠体重畳部20、画像変換部21、正常範囲重畳部22、画像合成部23、計測値読取り部24及び撮影位置算出部25を備える。
【0032】
なお以下においては、これら枠体重畳部20、画像変換部21、正常範囲重畳部22、画像合成部23、計測値読取り部24及び撮影位置算出部25は、メモリ3(
図1)に格納された対応するプログラム(図示せず)をCPU2が実行することにより具現化される機能部であるものとして説明するが、これら枠体重畳部20、画像変換部21、正常範囲重畳部22、画像合成部23、計測値読取り部24及び撮影位置算出部25がハードウェアとして構成されていてもよい。
【0033】
枠体重畳部20は、カメラモジュール4から出力された撮影信号に基づく撮影画像上に、
図4に示すように、当該撮影画像において状態表示器10の画像を表示させるべき位置(状態表示器10の撮影位置)を表す状態表示器用枠体31と、当該撮影画像において各マーカ12をそれぞれ表示させるべき位置(各マーカ12の撮影位置)をそれぞれ表す2つのマーカ用枠体32とからなる第1のキャラクタ30を表示させるための信号処理を行う機能を有する機能部である。
【0034】
実際上、枠体重畳部20は、カメラモジュール4から出力された撮影信号に対して、当該撮影信号に基づく撮影画像上に上述の第1のキャラクタ30を重畳表示するためのキャラクタ信号を重畳し、かくして得られたかかるキャラクタ信号が重畳された撮影信号(以下、これを枠体重畳撮影信号と呼ぶ)を画像合成部23に送信する。
【0035】
なお、本計測値読取り装置1の場合、後述のように枠体重畳撮影信号に基づく撮影画像が表示装置6に表示される。これにより本計測値読取り装置1においては、作業者が、
図4の右側に示すように、撮影画像内において、状態表示器用枠体31内の領域(以下、これを状態表示器領域と呼ぶ)に状態表示器10が位置し、かつ各マーカ用枠体32内の領域(以下、これをマーカ領域と呼ぶ)に対応するマーカ12がそれぞれ位置するように状態表示器10を撮影することにより、状態表示器10を常に一定の状態に撮影することができる。
【0036】
また本計測値読取り装置1の場合、枠体重畳部20は、初期時には第1のキャラクタ30を赤色で表示させるが、上述のように状態表示器用枠体31内の状態表示器領域に状態表示器10が位置し、かつ各マーカ用枠体32内のマーカ領域にそれぞれ対応するマーカ12が位置するように撮影画像上で状態表示器10の撮影位置が位置決めされた段階で、第1のキャラクタ30の表示色を赤色から緑色に切り替える。これにより、状態表示器10を撮影する作業員が第1のキャラクタ30の表示色に基づいてその状態表示器10の撮影状態が適切か否かを判別することができるようになされている。
【0037】
画像変換部21は、撮影画像における状態表示器10及びマーカ12の各画像が
図5(A)のように3次元的に傾いている場合に、撮影画像全体を、
図5(B)のように状態表示器10をその真正面から正対するように撮影した画像に変換する画像変換機能を有する。このような画像変換部21の具体的な処理内容については後述する。そして画像変換部21は、このようにして得られた画像変換処理後の撮影画像の画像データを変換撮影信号として正常範囲重畳部22及び撮影位置算出部25にそれぞれ出力する。
【0038】
正常範囲重畳部22は、画像変換部21から与えられる変換撮影信号に基づく撮影画像内の状態表示器10に対応させて、
図6(A)に示すような第2及び第3のキャラクタ33,34を表示するためのキャラクタ信号を生成する。
【0039】
ここで、第2のキャラクタ33は、その状態表示器10に対応する計測対象(電流値、電圧値、圧力又は温度など)の計測値が正常なときの指針10Aの変動範囲を表す円弧状の形状を有し、その状態表示器10の周囲に沿って対応する位置に対応する長さで表示される。また第3のキャラクタ34は、撮影画像内の状態表示器10の計測対象が異常状態のときの指針の変動範囲を示す半透明かつ当該状態表示器10と同じ半径を有する扇状のもので、その状態表示器10と重ね合わせて表示される。
【0040】
このため正常範囲重畳部22には、撮影対象となる状態表示器10ごとに、
図7(A)に示すように、その状態表示器10の計測値が正常である場合における指針10Aの変動範囲がxy平面上のx軸(水平方向)の正方向を基準とした角度の範囲(θ
1~θ
2)としてそれぞれ予め与えられる。そして正常範囲重畳部22は、これら状態表示器10ごとの角度範囲をメモリ3(
図1)に格納された
図7(B)に示す正常範囲管理テーブル26に登録して管理している。
【0041】
そして正常範囲重畳部22は、変換撮影信号が与えられた場合に、その変換撮影信号に基づく撮影画像内のマーカ12(QRコード(登録商標))に記録されている識別番号を読み取り、読み取った識別番号に対して設定されている正常な角度範囲を正常範囲管理テーブル26から読み出して、読み出した角度範囲に応じた第2及び第3のキャラクタ33,34を表示するための第2のキャラクタ信号を生成する。そして正常範囲重畳部22は、生成した第2のキャラクタ信号を変換撮影信号に重畳し、第2のキャラクタ信号が重畳された変換撮影信号のうちの状態表示器10の部分だけを切り取って、その画像データを正常範囲重畳変換撮影信号として画像合成部23に送信する。
【0042】
画像合成部23は、枠体重畳部20から与えられる枠体重畳撮影信号に基づく画像と、正常範囲重畳部22から与えられる正常範囲重畳変換撮影信号に基づく画像とを合成した合成画像を生成する機能を有する機能部である。
【0043】
実際上、画像合成部23は、
図8に示すように、枠体重畳撮影信号に基づき得られる第1の撮影画像(撮影画像上に第1のキャラクタ30(
図4)を重畳表示した画像)を画面左側に配置し、正常範囲重畳変換撮影信号に基づき得られる第2の撮影画像(状態表示器10を真正面から正対するように撮影したように撮影画像)を画面右側に配置した合成画像40を生成する。そして画像合成部23は、このようにして生成した合成画像40の画像データを表示装置6に送信する。これにより、この画像データに基づいて、かかる合成画像40が表示装置6に表示される。
【0044】
なお、画像合成部23が正常範囲重畳変換撮影信号に基づく第2の撮影画像の画像データを一定の時間間隔(例えば、0.5秒間隔)で記憶しておき、
図6(A)のような状態表示器10の画像に代えて、記憶した第2の撮影画像の各画像データに基づく状態表示器10の画像をすべて重ね合わせた
図6(B)に示すような状態表示器10の画像を合成画像の右側に表示するようにしてもよい。このようにすることにより、状態表示器10の指針10Aが激しく振れる場合であっても、その状態表示器10の計測値が正常範囲内にあるか否かを容易に確認することができる。
【0045】
一方、計測値読取り部24は、画像変換部21から与えられる変換撮影信号に基づく撮影画像内の状態表示器10の指針10Aの位置に基づいて、当該状態表示器10による計測対象の計測値の値を読み取ってディジタル値化する機能を有する機能部である。
【0046】
このため計測値読取り部24には、撮影対象となる状態表示器10ごとに、
図9(A)に示すように、その状態表示器10の計測値が「0」である場合における指針10Aのxy平面上のx軸(水平方向)の正方向を基準とした角度θ
3と、その角度(以下、これを基準角度と呼ぶ)θ
3から指針10Aが反時計回り方向に1°回転した場合における計測対象の計測値の変動量(+1°当りの変動量)とがそれぞれ予め与えられる。そして計測値読取り部24は、これらの情報をメモリ3(
図1)に格納された
図9(B)に示す読取り基準管理テーブル27に登録して管理している。
【0047】
そして計測値読取り部24は、変換撮影信号が与えられた場合に、その変換撮影信号に基づく撮影画像内のマーカ12(QRコード(登録商標))に記録されている識別番号を読み取り、読み取った識別番号に対して設定されている基準角度θ3と、指針10Aが反時計回り方向に1°回転した場合における計測対象の計測値の変動量とを読取り基準管理テーブル27から読み出す。
【0048】
また計測値読取り部24は、読み出したこれらの情報に基づいて、その状態表示器10の指針10Aがその基準角度から反時計回り方向に何度傾いているかを画像処理により算出し、算出結果に基づいて、その状態表示器10による測定対象の測定値をディジタル値として取得する。そして計測値読取り部24は、このようにして取得したディジタル値をその状態表示器10の識別番号と対応付けてメモリ3(
図1)に格納されている計測結果管理テーブル28(
図3)に格納する。
【0049】
他方、撮影位置算出部25は、そのとき撮影されている状態表示器10に対するその撮影を行っている作業者の位置を推定する機能を有する機能部である。実際上、本実施の形態の場合、撮影位置算出部25には、
図10(A)に示すように、上述のように画像変換部21が撮影画像を、状態表示器10をその真正面から正対するように撮影した画像に変換する画像変換処理を実行した際に算出した、このとき作業者がその状態表示器10を撮影した撮影方向の当該状態表示器10の法線n
1からの傾き角θ
4が撮影位置算出部25に与えられる。また撮影位置算出部25には、カメラモジュール4(
図3)から出力された撮影信号も与えられる。
【0050】
そして撮影位置算出部25は、かかるカメラモジュール4からの撮影信号に基づく撮影画像に含まれる状態表示器10の大きさに基づいて、
図10(B)に示すように、その撮影を行っている作業者のその状態表示器10からの距離L
1を算出すると共に、算出した距離と、画像変換部から与えられるかかる傾き角θ
4とに基づいて、その状態表示器10の表示面の中心を原点Oとするxy平面上でのその作業者の撮影位置(
図10(B)の(x
1,y
1))を算出する。そして撮影位置算出部25は、このようにして算出したその作業者の撮影位置をその状態表示器10の識別番号と対応付けて計測結果管理テーブル28(
図3)に格納する。
【0051】
(3)画像変換部の処理
図11は、上述した画像変換部21(
図3)により実行される画像変換処理の流れを示す。この場合、画像変換部21は、まず、作業員による状態表示器10の撮影時、状態表示器用枠体31(
図4)内の状態表示器領域に状態表示器10が位置し、かつ各マーカ用枠体32(
図4)内のマーカ領域にそれぞれ対応するマーカ12が位置するように計測値読取り装置1の撮像方向が位置決めされた段階で、アフィン法や投影法などの既知の方法を利用して、2つのマーカ領域内にそれぞれ表示された各マーカ12の撮影画像をこれらのマーカ12を真正面から見た画像に変換する(S1)。
【0052】
具体的に、画像変換部21は、
図12に示すように、上述した2つのマーカ用枠体32内にそれぞれ表示されている各マーカ12について、その3隅にそれぞれ表示される切出しシンボル(ファインダパターン)12A~12Cを利用して、右上及び左上の各切出しシンボル12A,12B間の長さL
2と、左上及び左下の各切出しシンボル12B,12C間の長さL
3とが同じ長さとなるように、かつ右上及び左上の各切出しシンボル12A,12B間を結ぶ仮想的な線分K1と、左上及び左下の各切出しシンボル12B,12C間を結ぶ仮想的な線分K
2とが成す角θ
10が直角になるように撮像信号に基づく撮像画像を補正する。
【0053】
これにより各マーカ用枠体32内のマーカ領域にそれぞれ表示された各マーカ12の撮影画像が、
図13(A)に示すように、本計測値読取り装置1を用いた撮影方向D
1(カメラモジュール4のレンズの中心軸方向)に対してその法線n
2の向きが3次元的に傾いた状態から
図13(B)に示すように、かかる法線n
2の向きがかかる撮影方向D
1と平行となるよう補正された画像に変換される。
【0054】
なお、画像変換部21は、撮影画像上に重畳表示されるマーカ用枠体32を認識することはできないが、状態表示器用枠体31(
図4)内の状態表示器領域に状態表示器10の画像が位置し、かつ各マーカ用枠体32(
図4)内のマーカ領域にそれぞれ対応するマーカ12の画像が位置するように計測値読取り装置1の撮像方向が位置決めされた場合に、撮影画面内のどの位置に上述の2つのマーカ用枠体32がそれぞれ表示されるかは予め与えられて認識している。また画像変換部21には、上述のように状態表示器用枠体31及び2つのマーカ用枠体32の表示色が赤色から緑色に切り替えられたタイミングでその旨のマーカ表示色切替え信号が枠体重畳部20から与えられる(
図3参照)。
【0055】
かくして画像変換部21は、かかるマーカ表示色切替え信号が与えられたタイミングで、撮影画像内の各マーカ用枠体32がそれぞれ表示されているであろう各領域(各マーカ領域)の画像情報をそれぞれ取得し、取得した画像情報に基づいて各マーカ12について3つの切出しシンボル12A~12Cをそれぞれ抽出し、抽出したマーカ12ごとの3つの切出しシンボル12A~12Cに基づいて上述のような画像変換処理を実行する。
【0056】
続いて、画像変換部21は、上述にようにして変換した撮影映像内の各マーカ用枠体32内にそれぞれ表示されているであろう各マーカ12の記録内容をそれぞれ読み取り(S2)、これら2つのマーカ12の内容が同一であるか否かを判定する(S3)。
【0057】
そして、画像変換部21は、この判定で否定結果を得た場合には、所定のエラーメッセージを生成するよう画像合成部23(
図3)に指示(以下、これをエラーメッセージ表示指示と呼ぶ)を与える(S4)。かくして、かかるエラーメッセージ表示指示が与えられた画像合成部23は、
図8について上述した合成画像40上の所定位置にかかるエラーメッセージを表示する。そして画像変換部21は、この後、この画像変換処理を終了する。
【0058】
これに対して、画像変換部21は、ステップS3の判断で肯定結果を得た場合には、撮像画像内に存在する2つのマーカ12の表面と、状態表示器10の表示面(指針10Aが回動する面)との配置関係に基づいて、状態表示器10の画像が表示されている状態表示器用枠体31内の領域(以下、これを状態表示器領域と呼ぶ)に表示された撮影画像の3次元復元処理を実行する(S5)。具体的に画像変換部21は、
図13(B)に示すように、ステップS1で補正した2つのマーカ12の表面の法線n
2と、状態表示器10の表示面の法線n
1とが平行となるように状態表示器領域内の撮影画像を補正する(S5)。そして画像変換部21は、この後、この画像変換処理を終了する。
【0059】
(4)本実施の形態の効果
以上のように本計測値読取り装置1は、撮影画像に含まれる状態表示器10の3次元的な傾きを補正した上で当該状態表示器10の指針10Aが指し示す計測値を読み取る。従って、本計測値読取り装置1によれば、状態表示器10の指針10Aが指し示す計測値を精度良く読み取ることができる。また本計測値読取り装置1は可搬型に構成されているため状態表示器10ごとに本計測値読取り装置1を用意する必要がなく、その分、かかる計測値の読み取りを安価に行うことができる。
【0060】
従って、本計測値読取り装置1によれば、状態表示器10の指針10Aが指し示す計測値を精度良く、かつ安価に読み取り得る計測値読取り装置を実現できる。
【0061】
(5)他の実施の形態
なお上述の実施の形態においては、状態表示器10が固定されたテンプレート11(
図2)を正方形状に構成するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、テンプレート11を長方形状に構成するようにしてもよい。
【0062】
また上述の実施の形態においては、テンプレート11に2つのマーカ12を配置するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、3つ以上のマーカ12をテンプレート11に配置するようにしてもよい。
【0063】
さらに上述の実施の形態においては、マーカ12としてQRコード(登録商標)を適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、要は、QRコード(登録商標)の切出しシンボルに相当する基準マークを少なくとも3つ以上有する形態のものであれば、かかるマーカ12としてはこの他種々の形態のマーカを広く適用することができる。
【0064】
さらに上述の実施の形態においては、対応する状態表示器10の識別番号をマーカ12に記録するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、かかる状態表示器10の識別番号に代えて又は加えて、他の情報をマーカ12に記録するようにしてもよい。
【0065】
さらに上述の実施の形態においては、第1のキャラクタ30(
図4)を、初期時には赤色で表示する一方、撮影画像内における状態表示器10の撮影位置が所定状態に位置決めされた段階で表示色を赤色から緑色に切り替えるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、第1のキャラクタ30の表示色や表示形態としては、これ以外の表示色及び表示形態を広く適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、指針回転式のアナログメータでなる状態表示器の計測値を読み取る計測値読取り装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0067】
1……計測値読取り装置、2……CPU、3……メモリ、4……カメラモジュール、6……表示装置、10……状態表示器、10A……指針、11……テンプレート、12……マーカ、13……識別番号、20……枠体重畳部、21……画像変換部、22……正常範囲重畳部、23……画像合成部、24……計測値読取り部、25……撮影位置算出部、30……第1のキャラクタ、31……状態表示器用枠体、32……マーカ用枠体、33……第2のキャラクタ、34……第3のキャラクタ、40……合成画像。