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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-15
(45)【発行日】2022-03-24
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   A01C 15/00 20060101AFI20220316BHJP
【FI】
A01C15/00 G
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2017221124
(22)【出願日】2017-11-16
(65)【公開番号】P2019088257
(43)【公開日】2019-06-13
【審査請求日】2020-07-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081673
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100141483
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 生吾
(74)【代理人】
【識別番号】100166659
【弁理士】
【氏名又は名称】楠 和也
(72)【発明者】
【氏名】前田 篤志
(72)【発明者】
【氏名】林田 淳一
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-077117(JP,A)
【文献】特開2016-198004(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0086295(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
施肥を行う作業車両であって、
機体(3)の走行速度に応じて生成された信号である制御信号の入力によって施肥量を変化させる施肥装置(22)と、
機体(3)の位置情報を取得する位置情報取得手段(18)と、
前記位置情報取得手段(18)によって取得された機体(3)の圃場における位置に応じた施肥量に関する情報である施肥情報を、ネットワークを介してサーバ(42)から取得するか、或いは記憶装置(43)から取得する施肥情報取得手段と、
前記施肥情報取得手段によって取得した施肥情報に応じて上記制御信号を疑似的に生成し、該生成した制御信号を前記施肥装置(22)に出力することにより、施肥量を制御する施肥量制御手段(36)とを備え
機体(3)の走行速度を検出する車速検出手段(46)を設け、
前記施肥量制御手段は、前記施肥情報に基づいて、機体(3)の現在位置での施肥量を多くする場合には、検出された走行速度を増加させた疑似走行速度を算出する一方で、機体(3)の現在位置での施肥量を少なくする場合には、検出された走行速度を減少させた疑似走行速度を算出し、算出された疑似走行速度に応じて生成した制御信号を前記施肥装置(22)に出力するように構成された
ことを特徴とする作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施肥量を制御できる施肥装置を備えた作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
肥料を散布する施肥装置と、該施肥装置内から肥料を繰出すローラを駆動させる駆動モータと、機体の位置情報を取得する位置情報取得手段と、車速検出手段と、車速に応じて前記駆動モータの駆動速度を増減速させるように構成された制御部とを備え、前記位置情報取得手段によって取得された位置情報に基づいて、車速を検出するように構成した特許文献1に記載の作業車両が従来公知である。
【0003】
上記文献の作業車両によれば、実際の走行距離に応じて施肥量を決定することができるため、圃場の状態によってスリップ等した場合であっても、施肥量が増えることなく、圃場面にムラなく肥料を散布することができる。
【0004】
しかし、該構成の作業車両では、例えば圃場の土質や状態、植える作物の種類に応じて圃場内のエリア毎に施肥量を調整する必要がある場合、車速に応じて施肥量を調整するだけでは施肥量の調整が十分でない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-77117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、施肥量を制御可能な施肥装置を備えた作業車両において、施肥作業をする対象となる圃場の施肥量に関する情報である施肥情報を取得して、取得された施肥情報に応じた施肥作業を行うことのできる作業車両を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、第1に、施肥を行う作業車両であって、機体3の走行速度に応じて生成された信号である制御信号の入力によって施肥量を変化させる施肥装置22と、機体3の位置情報を取得する位置情報取得手段18と、前記位置情報取得手段18によって取得された機体3の圃場における位置に応じた施肥量に関する情報である施肥情報を、ネットワークを介してサーバ42から取得するか、或いは記憶装置43から取得する施肥情報取得手段と、前記施肥情報取得手段によって取得した施肥情報に応じて上記制御信号を疑似的に生成し、該生成した制御信号を前記施肥装置22に出力することにより、施肥量を制御する施肥量制御手段36とを備え、機体3の走行速度を検出する車速検出手段46を設け、前記施肥量制御手段は、前記施肥情報に基づいて、機体3の現在位置での施肥量を多くする場合には、検出された走行速度を増加させた疑似走行速度を算出する一方で、機体3の現在位置での施肥量を少なくする場合には、検出された走行速度を減少させた疑似走行速度を算出し、算出された疑似走行速度に応じて生成した制御信号を前記施肥装置22に出力するように構成されたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
前記施肥量制御手段によれば、前記施肥装置は、施肥情報取得手段によって取得された施肥情報に応じて施肥量が制御可能に構成されたことにより、圃場面の各位置に応じた施肥量の調整をムラなく正確に行うことができるとともに、この精度の高い施肥量制御を作業者の技量を問わず容易且つスムーズに実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の作業車両を適用したトラクタを示した全体側面図である。
図2】作業車両を示した背面図である。
図3】施肥装置を示したモデル図である。
図4】施肥計画マップのイメージを示した概要図である。
図5】(A)は、単位面積あたりの施肥量Mと施肥装置による施肥流量mとの関係を示した図であり、(B)は、施肥装置の速度特性の例を示した図である。
図6】制御部のブロック図である。
図7】連係施肥制御を示したフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図示する例に基づき、本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の作業車両を適用したトラクタを示した全体側面図であり、図2は、トラクタを示した背面図であり、図3は、施肥装置を示したモデル図である。本トラクタは、左右一対の前輪1,1及び後輪2,2と、該前後輪1,2によって支持された走行機体3と、該走行機体3の後部に昇降リンク4を介して昇降自在に連結された耕運施肥作業機(施肥装置)6と、該耕耘施肥装置6による施肥量を制御する制御手段とを備え、該耕耘施肥装置6を駆動させた状態で走行機体3を前進走行させることにより、圃場の耕耘作業と施肥作業とを同時に行うことができる。
【0011】
前記走行機体3の後側半部にはキャビン7が立設され、該キャビン7の前方にはエンジン(図示しない)を開閉自在にカバーするボンネット8が上下回動自在に設けられ、エンジンで発生した動力は、キャビン7下方に配置されたミッションケース内のトランスミッションによって、前後輪1,2及び耕耘施肥作業機6側にそれぞれ変速伝動される。
【0012】
該キャビン7内には、オペレータが乗込む操縦部9が設置され、この操縦部9には、オペレータが着座する座席(図示しない)と、該座席の前方側に配置されたステアリングハンドル12と、該ステアリングハンドル12の左右側方側に配置された主変速レバー13とが設けられており、該ステアリングハンドル12と座席との間に形成されたフロアステップ14の前側には左右の走行輪となる後輪2を制動作動させるブレーキペダル16が設けられている。
【0013】
また、該ステアリングハンドル12の前方側には、後述する携帯通信端末41との間で双方向にデータの送受信を行うための送受信機17と、後述する制御部(車両側制御部)50とが設けられている。
【0014】
なお、該キャビン7外の後部側には、GPS等の衛生測位システムに用いられる信号を衛生から受信することにより、走行機体3の位置情報を取得するGPS受信アンテナ18が設けられている。
【0015】
前記耕耘施肥作業機6は、土壌の耕耘作業を行う耕耘装置21と、該耕耘装置21の上方側に着脱可能に取付け支持された施肥装置22とを備え、走行機体3後部に設けた耕耘装置21側と連結される作業昇降シリンダ(図示しない)と、施肥装置22側と連結される施肥昇降シリンダ24とにより、走行機体3に対して一体的に昇降作動されるように構成されている。
【0016】
上記耕耘装置21は、走行機体3側のPTO軸から動力が入力される入力軸26と、該入力軸26に入力された動力が伝動される左右方向の伝動軸(図示しない)が軸支される左右フレーム27と、該左右フレーム27内の伝動軸から動力が伝動される上下方向のチェーン機構が内装されたチェンケース28と、該チェーン機構を介して伝動された動力によって駆動軸回りに駆動するロータリ耕耘部29とを備えている。
【0017】
該耕耘装置21は、エンジンからの動力によって前記ロータリ耕耘部29が回転駆動されることによって圃場の耕耘作業が行われ、該ロータリ耕耘部29の後方に配置された畝成形部31によって、耕耘された土によって畝が成形されるように構成されている。
【0018】
上記施肥装置22は、耕耘装置21の上方側に支持されてペースト肥料が貯蔵される左右一対の肥料タンク32と、該肥料タンク32内のペースト肥料を前記畝成形部31によって成形された畝側まで案内して吐出する施肥ノズル33と、肥料タンク32内のペースト肥料を吸引して前記施肥ノズル33側に圧送する施肥ポンプ34と、ギヤポンプやネジポンプ等からなる施肥ポンプ34を駆動させる駆動モータ(施肥量制御手段)36とを備え、圃場面側にペースト肥料を吐出することができるように構成されている(図3参照)。
【0019】
また、該施肥装置22は、耕耘装置21の上方側に着脱可能な構成で取付支持されているため、前記耕耘施肥作業機6は、施肥装置22を取外すことによって耕耘装置21のみを単独で使用することもできる。言い換えると、前記耕耘施肥作業機6は、従来使用していた耕耘装置21に施肥装置22を後付けすることによって構成することができるため、耕耘施肥作業機6のすべてを専用品として製造する必要がなく、製造コストを低く抑えることができる。
【0020】
なお、該施肥装置22は、後述する制御部(車体側制御部)50によって、制御信号として走行機体3の車速が入力されることによって前記駆動モータ36の駆動速度が制御可能に構成されており、該施肥装置22は、検出された走行機体3の車速に応じてペースト肥料の吐出量を制御する車速連動制御を実行することができる。これにより、該施肥装置21は、走行機体3の車速に関わらず圃場(畝)にムラなく施肥することができる。詳しくは後述する。
【0021】
ちなみに、該施肥装置22によるペースト肥料の吐出量を制御する前記駆動モータ36は、一般的なDCモータを用いるとともに、車速に応じてデューティー比を制御するPWM制御によって、該DCモータの回転数(肥料の吐出量)を制御することができる。また、前記駆動モータ36は、ステッピングモータを用いるとともに、該ステッピングモータの制御回路に出力するパルス信号を車速に応じて制御する構成であっても良い。
【0022】
前記制御手段は、詳しくは後述する制御部50,60と、トラクタ側と双方向に通信可能なスマートフォンやタブレットPC等の携帯通信端末41と、該携帯通信端末41にインターネット等のグローバルなネットワーク10を介して接続された情報管理サーバ42とから構成されている(図1参照)。
【0023】
上記情報管理サーバ42は、前記施肥装置22によって施肥作業を行う対象となる圃場面のGPSデータと、該圃場面各所に施肥する施肥量を予め設定した計画施肥量Mとからなる施肥計画マップ(施肥情報)が格納されており、該施肥計画マップのデータが、インターネット等のグローバルなネットワークを介して前記携帯通信端末から取得(ダウンロード)可能に構成されている。
【0024】
上記携帯通信端末41は、前記情報管理サーバ42からインターネット回線を通じて取得された施肥計画マップを保存するROMやRAM等の記憶装置43と、該記憶装置43にインストールされたアプリケーションの操作や情報入力操作を行うことのできるタッチパネル若しくは押ボタン等である操作部44と、詳しくは後述する制御部(端末側制御部)60とを有している。
【0025】
該携帯通信端末41は、情報管理サーバ42から取得した施肥計画マップと、トラクタのGPSデータとを連係させることによって、前記施肥装置22による肥料の散布量を予め計画した施肥計画マップに沿って制御する連係施肥制御が実行可能に構成されている。該連係施肥制御は、携帯通信端末41にインストールされたアプリケーション等によって実行できるように構成されている。該連係施肥制御の詳細については後述する。
【0026】
なお、該携帯通信端末41は、必要となる施肥計画マップのデータをCD-ROM等の記憶媒体から記憶装置43に直接コピーし、前記施肥計画マップを前記記憶装置43から直接取得するように構成しても良い。
【0027】
さらに、該携帯通信端末41には、前記トラクタ側に搭載されたGPS受信アンテナ18を、携帯通信端末41側に搭載しても良い。該構成によれば、作業者は、携帯通信端末41を保持した状態でトラクタの操縦部9で作業を行うため、走行機体3のGPS位置座標データをほぼ正確に取得することができる。これにより、走行機体3側にGPS受信アンテナ18が搭載されていない場合であっても、スマートフォン等の携帯通信端末41に搭載されているGPS受信アンテナ18で代用できるため、システム全体のコストをより低く抑えることができる。
【0028】
次に、図4乃至図7に基づき、連係施肥制御ついて説明する。図4は、施肥計画マップのイメージを示した概要図であり、図5(A)は、単位面積あたりの施肥量Mと施肥装置による施肥流量mとの関係を示した図であり、図5(B)は、施肥装置の速度特性の例を示した図であり、図6は、制御部のブロック図である。図6に示されるように、前記制御部は、車体側に搭載された車体側制御部50と、携帯通信端末41側に搭載された端末側制御部60とを有している。
【0029】
前記車両側制御部50の入力側には、回転センサ等であって走行機体3の車速を検出する車速検出手段46と、前記GPS受信アンテナ18とが接続される一方で、該車両側制御部50の出力側には、前記駆動モータ36が接続されている(図6参照)。
【0030】
該車両側制御部50は、前記施肥装置22によって単位時間あたりに吐出されるペースト肥料の量である施肥流量m(kg/s)、言い換えると、前記施肥ポンプ34を駆動させる前記駆動モータ36の駆動速度を車速に応じて制御する車速連動制御を実行することができる。
【0031】
該車速連動制御は、図5(A)に示されるように、車速V0が早くなれば施肥流量mを多くし、車速V0が遅くなれば施肥流量mが少なくすることにより、単位面積あたりの肥料の散布量(施肥量)M(kg/平方メートル)がトラクタの車速に関わらずムラなく一定になるように構成されている。
【0032】
より具体的に説明すると、該車速連動制御は、前記施肥装置22による施肥流量m(kg/s)を、車速検出手段46により検出された車速V0(m/s)と、トラクタの工程幅H0(m)と、設定された単位面積あたりの施肥量M(kg/平方メートル)とを乗算することにより算出し、算出された施肥流量m(kg/s)に応じて前記駆動モータ36の駆動速度を制御することにより、施肥装置22によって施肥される単位面積あたりの施肥量Mが一定となるように構成されている。
【0033】
また、該車両側制御部50は、前記携帯通信端末41と双方向に通信する送受信機17を介して、前記車速検出手段46により検出された車速と、GPS受信アンテナにより検出されたGPSデータとを端末側制御部60に送信するとともに、前記携帯通信端末41側から後述する疑似走行速度が受信されるように構成されている(図1及び図6参照)。
【0034】
前記端末側制御部60の入力側には、前記車速検出手段46と、GPS受信アンテナ18とが前記送受信機17を介して接続されるとともに、インターネット等を介して前記施肥計画マップデータが取得される情報管理サーバ42と、前記記憶装置43と、施肥装置22の流量を操作するタッチパネルやボタン等の操作具からなる操作部44とが接続されている。その一方で、端末側制御部60の出力側には、前記送受信機17を介して、前記駆動モータ36が接続されている(図6参照)。
【0035】
該端末側制御部60は、前記情報管理サーバ42から取得した前記施肥計画マップと、前記トラクタ(施肥装置22)のGPSデータとを連係させることにより、予め定めた施肥計画マップに乗っ取った施肥作業を自動的に行う連係施肥制御が実行可能に構成されている。
【0036】
該連係施肥制御は、まず、前記施肥計画マップのデータと、走行機体3のGPSデータとを照合して、走行機体3の現在位置において施肥すべき計画施肥量Mを検出するとともに、検出された計画施肥量Mを散布するために必要な施肥流量mを決定する(図5(A)参照)。次に、前記施肥装置22が決定した施肥流量mで肥料を吐出させるために前記駆動モータ36に入力する制御信号である疑似的な車速(以下、疑似走行速度)を算出し(図5(B)参照)、算出された疑似走行速度に基づいて前記駆動モータ36を駆動させるように構成されている。これにより、施肥計画マップに沿った施肥作業を行うことができる。以下、具体例に沿って説明する。
【0037】
より具体的に説明すると、図4で示される例の場合では、施肥計画マップで設定された圃場面が複数のエリア(図示する例では4×4の計16エリア)に分割されて、各エリアで施肥する施肥量Mが図示されている。この場合、圃場面の外周側の各エリアでの施肥量をM0(kg/平方メートル)とした場合に、圃場面の中央4エリアへの施肥量が外周側の各エリアの2倍にあたる2M0(kg/平方メートル)となるように設定されている。
【0038】
また、図4に示した例では、前記施肥計画マップ上でのGPSデータと、前記GPS受信アンテナ18によって取得された走行機体3のGPSデータとを照合することにより、走行機体3の現在位置が、圃場面中央の施肥量が2M0となるエリア上に来たことが検出されていることが示されている。
【0039】
このとき、図5(A)に示されるように、単位面積あたりの施肥量を2倍にするには、単位時間あたりの施肥流量m(kg/s)を2倍にする必要があるところ、図5(B)に示される例の場合、前記施肥装置の施肥流量m(kg/s)を2倍にするためには、車速連動する前記駆動モータ36に入力される疑似走行速度を、検出される車速V0の2倍にすると、施肥流量m(kg/s)も2倍になることがわかる。この特性(直線の傾きa)については施肥装置22の仕様によって異なるため、前記記憶装置43に予め施肥装置22毎に特性値が記録されている(図5(B)の点線を参照)。
【0040】
次に、図7に基づき、連係施肥制御の処理フローについて説明する。図7は、連係施肥制御を示したフロー図である。前記携帯通信端末41にインストールされた連係施肥制御の実行を操作するアプリケーションを介して、前記連係施肥制御の処理フローが開始されると、ステップS1に進む。ステップS1では、前記操作部44によって、前記アプリケーションが連係施肥制御を実行する連係実行状態に操作されたか否かが検出され、連係施肥制御の連係実行状態が検出された場合には、ステップS2に進む。なお、ステップS1において、前記アプリケーションの連係実行状態が検出されなかった場合は、その後、リターンする。
【0041】
ステップS2では、前記送受信機17を介して携帯通信端末41とトラクタ間の通信が開始され、ステップS3に進む。
【0042】
ステップS3では、予め設定した所定時間であるサンプリング間隔Tのカウントを開始して、ステップS4に進む。ステップS4では、前記走行機体3側において、前記車速検出手段46により検出された走行機体3の車速と、前記GPS受信アンテナ18によって取得された走行機体3のGPSデータとが、携帯通信端末41側の端末側制御部60が取得し、ステップS5に進む。
【0043】
ステップS5では、前記施肥計画マップにあるGPSデータと、前記GPS受信機18で取得された走行機体3のGPSデータとを照合することにより、走行機体3の現在位置における施肥計画マップに基づいた施肥量である施肥計画値Mを取得し(図4参照)、ステップS6に進む。
【0044】
ステップS6では、現在位置の施肥計画値Mと、前記施肥装置22の施肥流量の速度特性とから、前記施肥装置22が施肥計画値Mを達成するための施肥流量m(kg/s)を算出し(図5(A)参照)、算出された施肥流量m(kg/s)で肥料を吐出させるために前記駆動モータ36に入力する制御信号である疑似走行速度V0´(制御信号)を算出し(図5(B)参照)、ステップS7に進む。
【0045】
ステップS7では、前記駆動モータ36の駆動速度を制御する制御信号として、携帯側制御部60から受信した前記疑似走行速度V0´を入力し、ステップS8に進む。これにより、前記施肥装置22は、トラクタの車速に関わらず、施肥計画マップの施肥計画値Mに沿った量のペースト肥料を自動的に散布することができる。
【0046】
ちなみに、ステップS3~ステップS6は、携帯通信端末41側の携帯側制御部60によって実行され、ステップS7は、走行機体3側の車体側制御部50によって実行されている。
【0047】
ステップS8では、サンプリング間隔Tのカウントが、予め定めた所定時間T1を超えているか否かが確認され、サンプリング間隔TのカウントがT1を超えていた場合にはステップS9に進む。ステップS9では、サンプリング間隔Tのカウントをリセットし、ステップS10に進む。
【0048】
なお、ステップS8において、サンプリング間隔Tのカウントが所定時間T1未満であった場合には、該カウントが所定時間T1を超えるまでの間、ステップS8を繰り返す。
【0049】
ステップS10では、前記操作部44によって連係施肥制御の連係実行状態を終了する終了操作がなかったか否かが確認され、終了操作がなかった場合にはステップS11に進む。ステップS11では、連係施肥制御の連係実行状態が継続され、その後、処理を戻す。
【0050】
なお、ステップS10において、前記操作部44による連係実行状態の終了操作が検出された場合には、ステップS12に進む。
【0051】
ステップS12では、前記施肥装置22(駆動モータ36)に入力される制御信号を疑似走行速度V0´から車速検出手段46により検出された車速に戻し、前記送受信機17を介した携帯通信端末41とトラクタとの間の通信を停止し、連係施肥制御の連係実行状態を終了し、その後、リターンする。
【0052】
なお、ステップS1において、前記アプリケーションによる連係施肥制御の連係実行状態が検出されなかった場合には、その後、リターンする。
【0053】
該構成の連係施肥制御によれば、前記施肥装置22は、走行機体3の走行速度に応じて施肥量を連続的に変化させることができる他、予めエリア毎に計画施肥量Mを設定した施肥計画マップに沿って、自動的に施肥量が制御することができる。これにより、施肥作業を行う圃場内で、エリア毎に肥料の必要な量を適宜自動的に変更するより高度な施肥作業をよりスムーズ且つ容易に実行することができる。
【0054】
なお、上述の前記制御手段は、前記携帯通信端末41や情報管理サーバ42を省略し、前記連係施肥制御の実行に用いる施肥計画マップが記憶された記憶装置43と、前記GPS受信アンテナ18とを、アプリケーションを操作する操作部44とをすべてトラクタ側に搭載するとともに、前記車両側制御部50で前記連係施肥制御の処理のすべてが実行されるように構成しても良い。
【符号の説明】
【0055】
3 走行機体(機体)
18 受信アンテナ(位置情報取得手段)
22 施肥装置
36 駆動モータ(施肥量制御手段)
42 情報管理サーバ(サーバ)
43 記憶装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7