(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-15
(45)【発行日】2022-03-24
(54)【発明の名称】骨、骨髄、及び軟骨の誘導を提供する因子及び細胞
(51)【国際特許分類】
C12N 5/077 20100101AFI20220316BHJP
A61K 35/32 20150101ALI20220316BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20220316BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220316BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220316BHJP
A61L 27/38 20060101ALI20220316BHJP
A61L 27/40 20060101ALI20220316BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20220316BHJP
A61K 35/12 20150101ALN20220316BHJP
A61K 35/35 20150101ALN20220316BHJP
A61L 27/54 20060101ALN20220316BHJP
A61L 27/22 20060101ALN20220316BHJP
【FI】
C12N5/077
A61K35/32
A61P19/08
A61P43/00 121
A61K45/00
A61L27/38 111
A61L27/38 112
A61L27/40
A61K38/17
A61K35/12
A61K35/35
A61L27/54
A61L27/22
(21)【出願番号】P 2017536327
(86)(22)【出願日】2016-01-06
(86)【国際出願番号】 US2016012347
(87)【国際公開番号】W WO2016112111
(87)【国際公開日】2016-07-14
【審査請求日】2018-11-12
(32)【優先日】2015-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503115205
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】チャン,チャールズ ケイ.エフ.
(72)【発明者】
【氏名】ワイズマン,アーヴィング エル.
(72)【発明者】
【氏名】ロンゲイカー,マイケル ティー.
【審査官】長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0104230(US,A1)
【文献】JPN. J. ELECTROCARDIOLOGY,2008年,Vol.28, No.4,pp.328-332
【文献】Tissue Engineering,2010年,Vol.16, No.10,pp.3185-3197
【文献】Biomaterials,2011年,Vol.32,pp.6399-6411
【文献】Nature Medicine,1999年,Vol.5, No.6,pp.623-628
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00-35/768
C12N 5/00- 5/28
A61L 27/00-27/60
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟骨または骨を再生する方法に使用されるためのヒト骨格幹細胞であって、
前記方法は、骨または軟骨の再生が望ましい部位において、ヒト骨格幹細胞の有効用量を個体に投与することを含み、
前記細胞が、CD45、CD235、Tie2、及びCD31の発現に対して陰性の、ならびにポドプラニン(PDPN)の発現に陽性の表現型について骨組織から選択されている
ことを特徴とするヒト骨格幹細胞。
【請求項2】
前記細胞が、CD73及びCD164の発現についてさらに選択されることを特徴とする請求項1に記載のヒト骨格幹細胞。
【請求項3】
前記細胞は、[PDPN
+ CD146
- CD73
- CD164
- ]であり、軟骨を再生するために移植されることを特徴とする請求項2に記載のヒト骨格幹細胞。
【請求項4】
前記細胞は、[PDPN
+ CD146
- CD73
- CD164
+ ]であり、骨を再生するために移植されることを特徴とする請求項2に記載のヒト骨格幹細胞。
【請求項5】
前記細胞は、[PDPN
+ CD146
- CD73
+ CD164
+ ]であり、軟骨内再生のために移植されることを特徴とする請求項2に記載のヒト骨格幹細胞。
【請求項6】
前記細胞が、
(i)マトリックスで提供されるか、
(ii)前記個体に対して自己由来であるか、または、
(iii)前記個体に対して同種異系である
ことを特徴とする請求項1~
5のいずれか一項に記載のヒト骨格幹細
胞。
【請求項7】
前記骨組織は、骨髄を含み、任意には前記骨組織は、腰骨組織であることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のヒト骨格幹細胞。
【請求項8】
前記方法は、VEGF阻害薬、またはTGF-β阻害薬の有効用量を投与することをさらに含むことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載のヒト骨格幹細
胞。
【請求項9】
VEGF阻害薬の有効用量が、前記細胞における軟骨形成運命を誘導するために投与されることを特徴とする請求項
8に記載のヒト骨格幹細
胞。
【請求項10】
前記細胞が、スキャフォールド、ペーストまたはインプラントで提供され、軟骨または骨が前記インプラントの部位において形成されることを特徴とする請求項1~
9のいずれか一項に記載のヒト骨格幹細
胞。
【請求項11】
細胞が、CD45、CD235、Tie2、及びCD31の発現に対して陰性の、ならびにポドプラニン(PDPN)の発現に陽性の表現型について骨組織から選択されていることを特徴とする単離ヒト骨格幹細胞集団。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
合衆国において、ほとんど全ての家族が、骨格に関与する疾患に冒されている。変性、新生物性、外傷後、及び手術後病理を含める数多くの病因が、骨格を冒す。これらの病態は、全ての年齢、人種、民族及び経済階層の人々を冒す。米国医療費有効活用プロジェクト(U.S.Health Cost & Utilization Project)は、最近、筋骨格系の疾患に起因する生物医学の負担が年間470億ドルを超え、この金額は、年間8.5%の推定率で、ここ数年増加し続けていることを報告した。
【0002】
さらに、北アメリカ及び世界の両方の人口が高齢化するに連れて、筋骨格疾患の発生率の同時増加が予想される。この世代交代は、医療制度の現在の運用に対する最も強い圧力である。今日の尺度を増大させる及び/またはそれに取って代わるために、骨格疾患に対する代替的なアプローチが開発されねばならない。
【0003】
骨は、それが特定の範囲内で再生するための先天的な能力を有するという点で、特有である。加えて、ヒトの骨格は、幼児では毎年、成人では5~6年ごとに入れ替わり、出生後の骨格組織の成長、恒常性及び再生のために必須である新しい骨形成原細胞の供給源として利用される骨組織中の活性な幹細胞または前駆細胞の存在を支援する。骨格の臨床的問題は、骨格がどのように発生し、幹細胞から維持されるかの観点を理解することを通して対処され得る。
【0004】
組織特異的成体幹細胞は、最も主要な器官系に生息することができ、組織の宿主において最終的に特定されている。幹細胞の制御は、造血系と比べると、比較的探索されないままである。Friedensteinらによる先駆的な研究は、骨組織におけるコロニーを形成する骨片形成細胞の存在を確立したが、つい最近、厳密な機能的特性化のために骨、軟骨、及び間質前駆細胞を特定かつ単離することを開始したに過ぎない。加えて、骨髄は、前立腺癌及び乳癌の転移の好適部位でもあり、転移性幹細胞ニッチを支援する骨間質の起源及び正体は、大部分が特性化されていない。
【0005】
いくつかのグループによって特定された骨格前駆細胞の特性は、使用された単離の方法及び機能的アッセイのタイプに大きく依存する。組織再生における別の重要な課題は、多くの疾患(例えば、骨関節炎、結合組織障害)において欠乏している軟骨を生成(再生)するための自然状態における及び実験室における制限された容量である。
【0006】
骨格発達及び軟骨形成発達の両方に影響を及ぼす細胞及び因子の特定は、臨床及び研究用途にとって大変興味深いものである。本発明は、この問題に取り組む。
【0007】
注目した刊行物としては、Tevlin et al.(2014)J Vis Exp.(93),“Osteoclast derivation from mouse bone marrow”;McCardle et al.(2014)Tissue Eng Part A.20(21-22):3031-40,“Positive Selection for Bone Morphogenetic Protein Receptor Type-IB Promotes Differentiation and Specification of Human Adipose-Derived Stromal Cells Toward an Osteogenic Lineage”;Chan et al.(2013) Proc Natl Acad Sci U S A.110(31):12643-8,“Clonal precursor of bone, cartilage,and hematopoietic niche stromal sells”;及びLevi et al.(2012)Proc Natl Acad Sci U S A.109(50):20379-84,“In vivo directed differentiation of pluripotent stem cells for skeletal regeneration”、Chan et al.(2009)Nature Jan 22;457(7228):490-4.“Endochondral ossification is required for hematopoietic stem sell niche formation”が含まれる。
【発明の概要】
【0008】
機能的軟骨細胞、骨格細胞、骨髄間質細胞、及びそれらの前駆細胞を生成するための方法、組成物及びキットが提供される。これらの方法、組成物及びキットは、移植のための、実験的評価のための、系統ならびに細胞特異的産物の供給源としてなどの、軟骨細胞、骨芽細胞、間質細胞、及びそれらの前駆細胞を生成することでの利用、例えば、軟骨、骨及び造血系のヒトの障害を治療することでの利用、ならびに加齢により、ないしは別の形で損傷した軟骨及び骨の再生における利用を見出す。
【0009】
いくつかの実施形態において、組成物及び方法は、骨形成、軟骨形成、及び間質系統への分化を含める、哺乳動物の骨格幹細胞の分化を方向付けるために提供される。いくつかの実施形態において、組成物及び方法は、非骨格細胞、例えば、多能性幹細胞、間葉系幹細胞(MSC)、脂肪由来幹細胞(ASC)などへの分化を方向付けるために提供される。
【0010】
インビボでの使用については、初期化(reprogramming)因子(複数可)は、全身的にまたは局所的移植片として、例えば、マトリゲル(matrigel)または他の好適なマトリックス中で提供することができ、任意に、細胞、例えばASC、SSC、MSC、委託軟骨前駆細胞(CCP)などの有効量と共に提供される。このような方法のための細胞培養系も提供される。これらの細胞は、治療方法において、例えば、骨格または軟骨補充療法のために、スクリーニング方法において細胞を提供するためなどの利用を見出す。いくつかの実施形態において、これらの細胞は哺乳動物細胞である。いくつかの実施形態において、これらの細胞はヒトまたはマウス細胞である。
【0011】
いくつかの実施形態において、ヒトASCの有効用量は、骨及び/または軟骨の再生が望まれている部位において、BMP2が含まれ得るが、これに限定されない初期化因子の有効用量と共にインビボで送達される。ASCは、必要に応じて、処置される個体から単離される。他の実施形態において、ASCは同種異系であり、例えば、これらはバンクに凍結保存されてもよい。このような初期化因子の有効用量と、骨及び/または軟骨の再生のために、この因子がヒトASCの有効量と併せて患者に投与されるべきであることを指示する添付文書またはラベルとを含むパッケージ(例えば、箱、ボトル、またはボトルと箱)も提供される。パッケージは、必要に応じて、ヒトASCの単離のための好適な試薬をさらに含む。hASCは、吸引脂肪組織から新たに単離することができ、必要に応じて、吸引脂肪組織中に存在する造血細胞を枯渇させるために、造血細胞、例えばCD45、CD235などに特異的な抗体を備える。
【0012】
他の実施形態において、ヒトSSCの有効用量は、大腿骨骨頭が含まれるが、これに限定されない成人ヒト骨から単離され、このSSCは、本明細書に記載される移植及び他の治療目的で使用することができる。
【0013】
いくつかの実施形態において、タンパク質因子の特定の組み合わせが、非骨格細胞を骨、造血間質、及び軟骨細胞に初期化するために特定され、これらは、インビトロまたはインビボで提供されてもよい。BMP2は、インビトロ培養増殖などでSSC細胞を増殖させることができる。主要な骨格形成経路のBMP2トリガ活性化の局所的高濃度は、非骨格組織のSSCへの再特定(respecification)をもたらす。これらの初期化されたSSCは、骨から単離されたSSCと機能的に同一であり、骨、軟骨、及び間質への分化が可能である。
【0014】
本発明のいくつかの態様において、骨格または軟骨形成組織の細胞移植療法を必要とする対象を治療するための方法が提供される。いくつかのこのような実施形態において、本発明の方法及び組成物を用いて、対象は因子及び任意に細胞と接触される。ある特定の実施形態において、これらの細胞は対象に由来する。
【0015】
いくつかの細胞移植実施形態において、骨格幹細胞を軟骨形成の運命に方向付けるために、因子及び因子のカクテルが提供され、これらの因子(複数可)は、インビトロまたはインビボで提供されてもよい。VEGFシグナル伝達を阻害することが、SSCが軟骨組織への分化を受けるように促進することが示されている。TGF-βシグナル伝達の阻害が、SSCが軟骨組織への分化を受けるように促進することも示されている。いくつかの実施形態において、軟骨再生のために、VEGF阻害薬の有効用量が、SSCの有効用量と組み合わせて個体に提供される。他の実施形態において、VEGF阻害薬の有効用量が、軟骨の再生のために、脂肪幹細胞及びBMP2の有効用量途組み合わせて個体に提供される。
【0016】
他の細胞移植の実施形態において、骨格幹細胞を骨形成の運命に方向付けるために、因子及び因子のカクテルが提供され、これらの因子(複数可)は、インビトロまたはインビボで提供されてもよい。Wnt3及びWnt5タンパク質が含まれるが、これらに限定されないwntタンパク質への曝露は、SSCの骨への分化を向上させる。いくつかの実施形態において、例えば、ヒトWnt3、ヒトWnt3a、ヒトWnt5a、ヒトWnt5bタンパク質、またはこれらの模倣体及び誘導体が含まれるが、これらに限定されないWnt3またはWnt5作動薬は、骨再生のために、SSCの有効用量と組み合わせて個体に提供される。他の実施形態では、Wnt作動薬の有効用量が、骨の再生のために、脂肪幹細胞及びBMP2の有効用量と組み合わせて個体に提供される。
【0017】
いくつかの実施形態において、VEGF及び/またはTGFβの阻害薬の有効用量が、所望の部位における軟骨の誘導のために、個体に提供される。いくつかのこのような実施形態において、有効用量は、局所形態で、例えば、生体分解性インプラントが含まれるインプラント、マイクロニードル、デポー製剤または活性薬剤の局所送達用に当該技術分野において既知であるような剤形で提供される。いくつかの実施形態において、BMP2剤の有効用量が同時投与され、この用量は、間葉系幹細胞が含まれるがこれに限定されない非骨格細胞を骨格の運命に促進することで有効である。複合製剤は、内因性非骨格細胞からの軟骨の再生を可能にする。因子の組み合わせは、細胞、例えば、ASC、SSCなどの有効用量と共に送達され得る。注目した因子は、骨形成を促進する因子、例えばwntタンパク質も含む。注目した因子は、VEGFも含む。
【0018】
脂肪誘導MSCなどのMSCが含まれるがこれに限定されない再生細胞集団の有効用量もまた、軟骨形成または骨形成のために細胞の供給源として提供される。このような実施形態としては、細胞及び因子を局所化するように機能するマトリックス中の埋め込みが含まれる。いくつかのこのような実施形態において、マトリックスは、例えば、三次元配置で軟骨形成を支援することができるマトリゲル、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA)、コラーゲン、アルジネートなどから形成された生体適合性及び任意に生体分解性マトリックスまたは格子から構成される。
【0019】
いくつかのこのような実施形態において、因子は、必要に応じて再生細胞との組み合わせで、軟骨修復を必要とする組織に導入される。このような部位としては、分化細胞に関連する疾患状態及び、例えば前十字靭帯断裂、全層性関節軟骨欠損、中間層性関節軟骨欠損が含まれるがこれらに限定されない外傷性損傷が含まれるが、これらに限定されない。
【0020】
いくつかの実施形態において、哺乳動物骨格幹細胞(SSC)に関連する組成物及び方法が提供される。本発明のいくつかの実施形態において、哺乳動物骨格幹細胞が提供される。他の実施形態において、軟骨委託細胞が含まれる、骨格系統委託細胞が提供される。
【0021】
本発明の骨格幹細胞は、細胞表面マーカーの表現型分析によって細胞集団から特定、及び単離され、または非骨格細胞から誘導される。SSCの単離のために注目した細胞集団としては、骨試料を含み、これは一般的に骨髄を含み、これは、例えば大腿骨骨頭が含まれるがこれに限定されない成体の骨を含み、及び例えばBMP2の有効用量と接触させることによる、骨前駆細胞に分化するように誘導された間葉性幹細胞ならびに前駆細胞の供給源を含む。このようなより初期の前駆細胞の供給源としては、血液、脂肪組織、骨髄などが含まれる。
【0022】
本発明の前駆細胞は、
図2Gに示すように、系統で特性化されている。このような骨格系統細胞の分離及び特性化のための方法及び組成物が提供される。これらの細胞は、これらの特異的細胞表面マーカーの発現によって、他の細胞から分離されてもよい。これらの細胞は、移植において、実験的評価のために、ならびにこれらの細胞中で特異的に発現された遺伝子を特定するために有用なmRNA種が含まれる、系統及び細胞特異的産物の供給源として、またこれらに影響を及ぼし得る因子または分子の発見のための標的として有用である。ヒトSSC細胞集団は、通常、CD45、CD235、Tie2、及びCD31の発現に対して陰性であり、ポドプラニン(PDPN)を陽性的に発現する。細胞の集団、例えば、マーカーのこの組み合わせを有する骨組織から単離された細胞を[PDPN
+ /146
- ]細胞と称することができる。この[PDPN
+ /146
- ]集団は、3つの集団にさらに細分され、すなわち、軟骨形成が可能な単分化能部分集合[PDPN
+ CD146
- CD73
- CD164
- ]、骨形成が可能な単分化能細胞サブ集団[PDPN
+ CD146
- CD73
- CD164
+ ]、及び軟骨内(骨及び軟骨)骨化が可能な多能性[PDPN
+ CD146
- CD73
+ CD164
+ ]細胞である。
【0023】
マウス組織において、骨格系統は、CD45- 、Ter119- 、Tie2- 、αV インテグリン+ と特徴付けられる。SSCは、Thy1- 、6C3- 、CD105- 、CD200+ とさらに特徴付けられる。委託軟骨細胞前駆細胞は、Thy1+ 、6C3- 、CD105+ 、CD200+ とさらに特徴付けられる。
【0024】
骨格系統細胞の増殖及び分析、例えばクローン分析のために、インビトロ及びインビボ系が提供される。特に、インビボモデルにおいて、骨格系統細胞は、例えば、マトリックス中の埋め込むことによって局在化されることが可能であり、造血細胞機能を支援する機能的骨髄ニッチを形成するであろう。
【0025】
細胞を骨格細胞、軟骨細胞、及びこれらの前駆細胞へと変換する上での活性について、候補薬剤をスクリーニングするための方法、組成物及びキットも提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1-1】骨及び軟骨はクローン性系統限定前駆細胞に由来することを示す。(A)出生後3日目にタモキシフェンによる誘導後の6週齢のレインボーアクチン-Cre-ERTマウスの大腿骨の組織顕微鏡写真である。左側:大腿骨の成長板において存在するクローンを示す、パネルの中央に白い正方形で表された高倍率の斜めに角度を付けた長方形で表示される挿入図を備える蛍光顕微鏡法である。中央:大腿骨の成長板を示す、パネルの中央に白い正方形で表された高倍率の斜めに角度を付けた長方形の挿入図を備えるペンタクロム染色されたマウスの大腿骨の明視野像である。右側:マウス大腿骨の冠状断面の写真である。特に、黄色の破線は、大腿骨成長板を表し、紫色の破線は、骨マトリックスを表し、緑色の破線は骨髄を表す。全ての図のスケールバーは、500μMに相当する。(B)大腿骨成長板(最上部横型パネル)、剥離骨(中央パネル)及び骨(底部横型パネル)から機械的及び酵素消化によって単離された懸濁細胞の分布を示すFACSプロットである。大腿骨の3種の異なる部分のうちで、[アルファV+]集団は、成長板中で最も多く見られた(中央の最上部の横型パネル)。DNは二重陰性であり、すなわち、Thy及び6C3染色に対して陰性である;[CD45-Ter119-Tie2-アルファV+Thy-6C3-]。(C)実験のスキームである:アクチン-Cre-ERT遺伝子導入マウスを、レインボーリポーター遺伝子マウスと交配させた。子孫のCre組換えを、胚性15日目(E15)、出生後3日目(P3)及び出生後6週目にトモキシフェン注射で誘導した。(D)骨及び軟骨にわたって異なる数のクローンが存在することを示す結果のグラフ表現である。6週間の追跡期間後に、クローン領域は、単色の均一に標識付けされた領域として決定することができた(x軸上に「カラー1-7」によって示されたように、7個の特有に着色されたクローンが観察された)。我々は、造血、脂肪または筋肉組織とは全く区別できる骨、軟骨及び間質細胞を捕捉するクローン領域を観察しなかったために、これらはグラフでは表現されていない。
【
図1-2】骨及び軟骨はクローン性系統限定前駆細胞に由来することを示す。(E)4つのさらなる細胞表面マーカー;Thy、6C3、CD105、及びCD200の差次的発現に基づく、出生後3日目の野生型C57BI6マウスの長骨、肋骨及び胸骨から取得された[アルファV+]サブセットから得られた8種の明確に区別される骨格組織サブ集団の単離のためのFACSのゲーティング手法(gating strategy)である。FACSプロットで示される細胞集団(a~h)は、[アルファV+]サブセットから得られた8種の明確に区別される骨格組織サブ集団に相当する:a=BCSP、b=BLSP、c=6C3、d=HEC、e=mSSC、f=pre-BCSP、g=CCP、h=Thy。(F)(上部)モバットの(Movat’s)ペンタクロムで染色されたP3のマウス大腿骨の組織学的分析であり、これは、骨(黄色に染色)、軟骨(青色/緑色に染色)及び骨髄(赤色に染色)を含有する。スケールバーは200μMに相当する。(底部)腎被膜下の細胞サブ集団移植後に、組織切片をペンタクロムで染色し:P3での骨格組織の8種のサブ集団からの20,000個の高度に精製された細胞を、免疫抑制状態にあるマウスの腎被膜の下に注入し、移植から30日後に採取した(パネル「a」~「h」は、
図1EのFACSプロットに示した[アルファV+]サブセット内の8種の細胞サブ集団を表す)。各移植片のペンタクロム染色された横断面は、各前駆細胞サブ集団の骨、軟骨、及び骨髄間質に限定された細胞の運命を立証している。集団e[CD45-Ter119-Tie2-アルファV+Thy-6C3-CD105-CD200+](mSSC)、f[CD45-Ter119-Tie2-アルファV+CD105-Thy-6C3-CD200-]、(プレ-BCSP)及びa[CD45-Ter119-Tie2-アルファV+Thy-6C3-CD105+]、(BCSP)は、骨、軟骨及び機能的骨髄腔からなる骨環境全体を再構築することができる。集団b(BLSP)、c(6C3)、d(HEC)、及びh(Thy)は、骨のみを形成した。集団g(CCP)は、少量の骨に加えて、軟骨を形成した。スケールバーは200μMに相当する。(G)外植移植片のそれぞれの組織組成比率を示すグラフである(「a」~「h」は、
図1EのFACSプロット及び
図1Fの移植組織に相当する[アルファV+]サブセット内の8種の細胞サブ集団を表す):積み上げ縦棒グラフ内で、骨の比率は、黄色で表され、骨髄の比率は赤色で表され、また軟骨の比率は青色で表される。(H)実験のスキームである:機械的及び酵素的解離後に、[アルファV+]サブセット内の8種の細胞サブ集団の20,000個の細胞を、P3でのGFP標識マウスの長骨から単離した。細胞をその後、上で詳説したように、FACSによって8種の細胞サブ集団に分画した。精製GFP+細胞を、次いで受容マウスの腎被膜の下に移植した。移植から1ヶ月後に、移植片を分析用に外植した。
【
図2-1】mSSC(マウス骨格幹細胞)の特定である。(A)実験のスキームである:[CD45-Ter119-Tie2-アルファV+Thy-6C3-CD105-CD200+](概略的にCD200+TN、すなわちCD200+三重陰性で示される)細胞を、機械的及び酵素的解離、抗体染色ならびにFACS分画後に、P3のGFP+マウスの大腿骨から単離した。(i)精製[CD45-Ter119-Tie2-アルファV+Thy-6C3-CD105-CD200+](mSSC)細胞を、10%のウシ胎児血清を有するMEMα培地を含有する培養プレートに播種した。培養の0日目、11日目及び25日目に、培養した細胞をFACS分析用に採取し、選別して培養増殖後の[CD45-Ter119-Tie2-アルファV+Thy-6C3-CD105-CD200+](mSSC)細胞サブ集団の構成細胞を決定した。FACSによる細胞の再分画後25日目に、各サブセット(mSSC、BCSP、Thy、6C3)の20,000個の細胞を、受容マウスの腎被膜下に移植した。移植から1ヶ月後に、分析用に外植した。(ii)精製GFP標識[CD45-Ter119-Tie2-アルファV+Thy-6C3-CD105-CD200+](mSSC)細胞をまた、受容マウスの腎臓被膜下に直接移植した(先行する培養中の増殖無しに)。移植から1か月後に、移植片を、FACSによる分析または組織学的分析のいずれかのために外植した。(B)培養の0、11及び25日目の培養された[CD45-Ter119-Tie2-アルファV+Thy-6C3-CD105-CD200+](mSSC)のFACS分析である(i、ii)。25日目に、インビトロ培養物をFACS選別し、4種のサブ集団(mSSC[CD45-Ter119-Tie2-アルファV+Thy-6C3-CD105-CD200+]、BCSP[CD45-Ter119-Tie2-アルファV+Thy-6C3-CD105+]、Thy+[CD45-Ter119-Tie2-アルファV+Thy+6C3-CD105-]、及びC3+[CD45-Ter119-Tie2-アルファV+Thy-6C3+CD105+])を、腎被膜下に移植して、これらの固有の潜在能力を決定した。(iii)mSSCは、骨、軟骨、及び骨髄腔(赤色ボックス)を形成した。BCSP(緑色ボックス)、Thy細胞(青色ボックス)及び6C3細胞(橙色ボックス)は、骨髄腔のない、骨のみを形成した。スケールバー(iii、上部パネル)は500μmに相当し、(iii、下部パネル)は、200μmに相当する。(C)高度に精製されたGFP標識[CD45-Ter119-Tie2-アルファV+Thy-6C3-CD105-CD200+](mSSC)細胞が、腎被膜下に移植された移植から1ヶ月後の外殖された腎被膜移植片のFACS分析である。(i)、(ii)外植された移植片のFACS分析は、外植された移植片が、7種の下流側サブ集団(青色、赤色及び橙色のボックス)からなることを明らかにした。ペンタクロム染色された外植片の明視野顕微鏡写真((iii)左端、下部パネル)は、[CD45-Ter119-Tie2-アルファV+Thy-6C3-CD105-CD200+](mSSC)サブ集団が、骨、軟骨、及び骨髄を生成することができることを立証している。下部パネルの左端にあるペンタクロム染色されたパネルのより高倍率の蛍光画像が、図の右側に延びる紫色のボックス内に示されている。紫色のボックス内のパネルは、免疫組織化学法で観察されるように、mSSCがThy及び6C3を発現する細胞を生成することができることを示している((iii)中央パネル;ここではThy=赤色、6C3=白色で示す)。統合パネルは、底部右端にある(iii、底部右側パネル)。GFP+移植片の蛍光画像は、低倍率像(iii)の最上部左側パネルに示されている。スケールバーは、(iii、上部パネル)では500μmに相当し、(iii、下部パネル)では100μmに相当し、(iii、免疫蛍光画像)では50μmに相当する。
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図2-2】mSSC(マウス骨格幹細胞)の特定である。(D)実験のスキームである:機械的及び酵素的解離後に、RFP+のP3マウスの長骨からの細胞を単離した。これらの細胞は、FACSによって分画せず、フィーダー細胞として機能した。機械的及び酵素的解離後に、P3のGFP+マウスの長骨からの細胞を単離し、FACS後に[CD45-Ter119-Tie2-アルファV+Thy-6C3-CD105-CD200+](mSSC)細胞を得た。(i)単一GFP標識[CD45-Ter119-Tie2-アルファV+Thy-6C3-CD105-CD200+](mSSC)細胞を5,000個のRFP(+)フィーダー細胞と、免疫不全マウスの腎被膜下に同時移植した。(ii)単一の精製GFP標識[CD45-Ter119-Tie2-アルファV+Thy-6C3-CD105-CD200+](mSSC)を、96ウェルの培養皿のウェル毎に播種した。培養の14日後に、形成されたコロニーを計数し、採取し、FACSを用いて再選別して、単一の精製GFP標識[CD45-Ter119-Tie2-アルファV+Thy-6C3-CD105-CD200+](mSSC)を、96ウェルの培養皿のウェル毎に再度播種し、アッセイを繰り返した。(E)インビトロで、単一の[CD45-Ter119-Tie2-アルファV+Thy-6C3-CD105-CD200+](mSSC)細胞を96ウェル培養皿の各ウェルに播種することによって、コロニー形成アッセイを行った。(i)播種後14日目の一次コロニーの代表的位相顕微鏡像を示す。(ii)一次コロニーの継代培養は、一次コロニーと同様な形態を有する二次コロニーの形成をもたらした(位相顕微鏡法)。(iii)一次コロニーは、免疫蛍光染色法後に、抗コラーゲン2型(紫色)、抗オステオカルシン(緑色)、及びDAPI(青色)に対して陽染された(蛍光顕微鏡法)。(iv)最も右側の縦型パネルは、単離された元々の[CD45-Ter119-Tie2-アルファV+Thy-6C3-CD105-CD200+](mSSC)細胞(上部)、その後の一次コロニー(中央)、及び二次コロニー細胞(底部)のFACS分析を示す。スケールバーは、(i、ii)では500μmに相当し、(iii)では100μmに相当する。(F)腎被膜下からの外植された(
図2D(i)のように)移植片の顕微鏡法である。GFP標識[CD45-Ter119-Tie2-アルファV+Thy-6C3-CD105-CD200+](mSSC)細胞からのインビボでのコロニー形成の範囲を、(i)、(iii)、(v)では黄色の破線で輪郭を描かれ、(ii)、(iv)、(vi)では黒色の破線で輪郭を描かれている。クローン的に増殖された、GFP標識[CD45-Ter119-Tie2-アルファV+Thy-6C3-CD105-CD200+](mSSC)細胞は、(i)、(iii)、(iv)においては、蛍光顕微鏡法を用いて緑色の細胞として明らかである。対応する明視野顕微鏡写真を、パネル(ii)、(iv)、(vi)に示す。移植片の横断面の蛍光撮影画像をパネル(iii)及び(v)に示す。ペンタクロム染色された細胞辺の対応する明視野顕微鏡写真は、クローン増殖した細胞が、骨(黄色)及び軟骨(青色)に運命付けられていることを立証している(iv及びvi)。(vii)のグラフは、骨または軟骨形成に対するGFPまたはRFP細胞による代表的な寄与(移植された細胞毎の)である。スケールバーは、(i~vi)では200μmに相当する。
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図2-3】mSSC(マウス骨格幹細胞)の特定である。(G)骨格幹細胞系統樹の概略的表現である。mSSCは、この階層ツリーの頂点を占有し、多能性であり、自己再生可能であり、より系統に限定された前駆細胞(プレ-BCSP及びBCSP)に分化することが可能である。mSSC、プレ-BCSP及びBCSPは、骨、軟骨、及び造血支援間質を生じさせることが可能である。各細胞の免疫表現型を、細胞に隣接して表示している。我々が、VEGF拮抗作用性が、軟骨性の運命の促進をもたらし(赤色で表示)、一方Wnt作動性が、骨性の運命を促進し得る(緑色で表示)を観察することに留意されたい。
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図3-1】mSSCニッチェは、他の骨格系統細胞から構成されることを示す。(A)実験のスキームである:P3マウスの長骨を採取し、機械的及び酵素的解離によって細胞を単離した。細胞懸濁液をFACSによって選別し、mSSC、BCSP、Thy(+)(これはCCPを包含する)、THY及びBLSPサブセット、ならびに6C3(+)(これは6C3及びHECを包含する)を得た。次いで、細胞サブ集団をシングルセルRNAシークエンシング及び後続の分析用に調製した。(B)4種の骨格幹細胞/前駆細胞サブ集団からのシングルセルRNAシークエンシングデータの階層クラスタリングは、mSSC、BCSP、Thy(+)及び6C3(+)間の細胞転写発現の4種の分子的に特徴的なパターンを立証する。
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図3-2】mSSCニッチェは、他の骨格系統細胞から構成されることを示す。(C)次の集団:(左から右までの細胞の順序)mSSC、BCSP、Thy(+)、6C3(+)のシングルセルRNAシークエンシングに関するモルフォゲン、受容体または両者の転写発現の比率である。各列:BMP2/BMPR1a、WNT/FRZ、TGFβ3/TGFβR2の上から下までモルフォゲン及び同族受容体の順序で示す。ベン図は、モルフォゲンの発現率(各ベン図の左側の円)及び同族受容体の発現率(各ベン図の右側の円)を示す。モルフォゲン及びリガンドの共発現は、ベン図の重なった中央部分に示されている。これらの比率が、関連遺伝子配列を発現するアッセイされた各サブセット(mSSC、BCSP、Thy(+)、6C3(+))内の細胞の比率を示すことに留意されたい。表示されたパターンは、自己分泌シグナル伝達(左下の概略図)及びパラ分泌シグナル伝達(右下の概略図)の可能性を示す。
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図3-3】mSSCニッチェは、他の骨格系統細胞から構成されることを示す。(D)Gene Expression Commons(GEXC)解析プラットフォームを用いて決定された骨格集団中のWnt関連遺伝子の遺伝子発現レベルである(上から下まで次の順序:mSSC、BCSP、Thy、6C3、BLSP及びHECで示される)。これらの実験は、CD200によるさらなる精製に先立って行われ、試験された
*mSSC集団は、三重陰性細胞集団[CD45-Ter119-Tie2-アルファV+Thy-CD105-6C3-]を表し、これはCD200+/-細胞集団の両方を含み、したがって、mSSC/プレ-BCSPの転写発現データを示す。GEXCを用いて算出された転写発現の範囲を、図の一番右よりに描写された色の変化によって示されている(すなわち、濃い紫色は非常に高い発現と相関関係付けされ、一方濃い青色は最小の発現に相関関係付けされる)。このヒートマップは、Wnt関連リガンド(Wnt3a、Wnt4、Wnt5a)及び受容体(Fzd5-9)の両方の高い発現を示し、Wntシグナル伝達経路が、骨格前駆細胞機能に能動的に関与し得ることを立証している。我々はまた、細胞集団全体を通してSFRP-2(分泌Fzd関連タンパク質2)の高発現も確認している。Fzdはフリッツルド(frizzled)受容体である。(E)リガンド-受容体相互作用マップである。骨格間質サブセットのマイクロアレイデータの遺伝子発現解析(上から下まで次の順序で示される:mSSC、BCSP、Thy、6C3、BLSP及びHEC)は、リガンドを左列に、同族受容体を右列に図示する。これらの実験が、CD200によるさらなる精製に先立って行われたために、試験された
*mSSC集団は、三重陰性細胞集団[CD45-Ter119-Tie2-アルファV+Thy-CD105-6C3-]を表し、これはCD200+/-細胞集団の両方を含み、したがって、mSSC/プレ-BCSPの転写発現データを示す。2つの最上部のリガンド-受容体相互作用マップは、BMP-2及びBMP-7が、重要な骨格形成遺伝子であり、これらの同族受容体が、骨格間質集団中で高度に発現されることを立証している。下の3つのリガンド-受容体相互作用マップは、TGFβ3、GDF5及びVCAM-1並びに対応する受容体の遺伝子発現を詳説する。これらのリガンド-受容体相互作用マップは、骨格間質細胞が、それら自体のニッチェとして作用し、互いにシグナル伝達して、骨格形成を促進することを立証している。連結する矢印は、可能なリガンド-受容体相互作用経路を示す。注釈:GDFは増殖及び分化因子であり、VCAM-1は、血管細胞接着分子-1である。(F)骨格幹細胞/前駆細胞の活性に影響を及ぼす可能性のあるシグナル伝達経路を示す図である。我々は、自己分泌及びパラ分泌シグナル伝達が、骨格幹細胞ニッチェ中で生じ、細胞活性及び維持を調節すると提議する。(G)5,000個の新たに単離されたmSSC(GFP標識マウスから取得)を、様々なモルフォゲン(BMP2、TGFβ、TNFα)と共培養した。右側の蛍光顕微鏡写真は、モルフォルゲン補充による培養後のコロニー形態を示し、左側のグラフは、異なる条件下(対照またはBMP2/TGFβ/TNFαの補充)の14日間の培養後に存在するmSSCの数を示す。ここで、我々は、rhBMP-2の補充によるmSSCの培養が、対照、すなわち、非補充の培地(蛍光顕微鏡写真の上部左側パネル)と比べて、インビトロでmSSC集団の有意な増幅と関連付けられたことを確認している(p<0.01、分散分析(ANOVA))。TGFβまたはTNFαの補充は、コロニー形態の変化をもたらした(蛍光顕微鏡写真の右側の上部及び下部パネル)。これらの結果は、ニッチェシグナル伝達が、mSSC増殖に影響を与え得ることを示している。スケールバーは200μmに相当する。
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図3-4】mSSCニッチェは、他の骨格系統細胞から構成されることを示す。(H)図の左側のグラフは、組換え増殖因子BMP2の滴定値の培養中のmSSC増殖に及ぼす効果を示す。ここでは、我々は、最大増殖効果が、50ng/mLの濃度で見られることを確認している。BMP-2の効果は、次の濃度:50ng/mL(p<0.001、ANOVA)、500ng/mL(p<0.01、ANOVA)のそれぞれにおいて対照よりも有意に大きかった。右側の位相画像は、mSSCに由来する細胞のコロニーを示す(対照、50pg/mL、500pg/mL、5ng/mLでは矢sirusi尻で表示され、50ng/mL及び500ng/mLでは破線で表示)。スケールバーは500μMに相当する。(I)Foxa2の遺伝子発現ヒートマップが、FOXa2遺伝子がmSSC中でアップレギュレートされることを示している。これらの実験が、CD200によるさらなる精製に先立って行われたために、試験された
*mSSC集団は、三重陰性細胞集団[CD45-Ter119-Tie2-アルファV+Thy-CD105-6C3-]を表し、これはCD200+/-細胞集団の両方を含み、したがって、mSSC/プレ-BCSPの転写発現データを示す。(J)抗Foxa2抗体(赤色)について染色された近位大腿骨成長板の蛍光顕微鏡写真は、成長板でのmSSCの位置を可視化し、これは白色の破線によって境界が画定されている。DAPIは青色である。スケールバーは500μMに相当する。(K)Foxa2を示す細胞内FACSシグナルは、mSSC中にタンパク質レベルで存在する。黒色ピークはmSSCシグナルであり、赤色ピークは、アイソタイプシグナルである。
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図3-5】mSSCニッチェは、他の骨格系統細胞から構成されることを示す。(L)(左側)mSSCの存在を示す、抗Foxa2抗体(赤色)について染色されたP3マウス近位大腿骨の蛍光顕微鏡写真である。抗6C3抗体(白色)及び抗THy1抗体(緑色)は、それぞれ6C3及びThy細胞の存在を示し、DAPI(青色)は、mSSCニッチェを示す。右側の統合された図は、mSSCを取り囲むニッチェ細胞、6C3細胞(白色)及びThy細胞(緑色)で明らかであるように、mSSCが、大部分が成長板に存在することを示す。スケールバーは、(左端)は200μmに相当し、(左端)は500μmに相当する。
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図4】軟骨細胞系統は、骨形成を受けるために骨芽細胞によって誘導され得ることを示す。(A)実験のスキームである:機械的及び酵素的解離、その後FACSによる分画後に、BCSPを、P3でのGFP+マウスの大腿骨から単離し、CCP(委託軟骨前駆細胞)細胞を、RFP+成体マウスの耳/胸骨から単離し、その後FACSによって分画化した。精製したGFP+BCSP及びRFP+CCPを、免疫抑制状態にある受容マウスの腎被膜の下に、分泌フリッツルド受容体2、SFRP-2を伴いまたこれを伴わずに同時移植した。RFP+CCP単独の移植は、対照として機能した。移植から1ヶ月後に、全ての移植片を分析用に取り出した。(B)CCP前駆細胞サブ集団の20,000個のRFP標識細胞が腎被膜中に移植され、1ヶ月後に外植された(
図4Aに詳説されたように)外植移植片の顕微鏡法である。白色の点線は、形成された移植片の範囲の輪郭を描いている。外植移植片の蛍光顕微鏡写真は、RFP+移植片の存在を立証している(上部左側)。対応する明視野顕微鏡写真が、上部右側パネルに示されている。モバットペンタクロム(骨を黄色で染色し、軟骨を青色で染色し、骨髄を赤色で染色する)で染色された横断面は、青色の染色で示されるように、RFP標識CCP細胞が軟骨を形成することを立証している。(蛍光顕微鏡写真:底部左側、明視野顕微鏡写真:底部右側)。スケールバーは、(上部パネル)では500μmに相当し、(下部パネル)では200μmに相当する。(C)20,000個のRFP標識CCP細胞が20,000個のGFP標識BCSP細胞と腎被膜下に同時移植され、1ヶ月後に外植された(
図4Aに詳説されたように)、外植移植片の顕微鏡法である。その後形成された移植片は、白色点線(移植片のRFP+部分を示す)及び黄色実線(移植片のGFP+部分を示す)によって輪郭が描かれている(上部左側)。対応する明視野顕微鏡写真は、上部右側パネルに示されている。モバットペンタクロムで染色された横断面は、黄色の染色で示されるように、RFP標識CCP細胞及びGFP標識BCSPの両方が軟骨を形成することを立証している。(蛍光顕微鏡写真:底部左側、明視野顕微鏡写真:底部右側)。スケールバーは、(上部パネル)は500μmに相当し、(下部パネル)は200μmに相当する。(D)108/109単位の可溶性フリッツルド関連タンパク質2(SFRP-2)をコードするアデノウイルスベクターで前処理された、20,000個のRFP標識CCP細胞が、20,000個のGFP標識BCSP細胞と腎被膜下に同時移植された(
図4Aに詳説されたように)、外植移植片の顕微鏡法である。1ヶ月後に採取された得られた移植片が示されている。蛍光顕微鏡写真(上部左側)は、GFP+集団(黄色実線の範囲内)及びRFP+集団(白色点線の範囲内)を輪郭で描いている。対応する明視野顕微鏡写真は、(上部右側パネル)に示されている。横断面の顕微鏡写真は、底部パネルに示されている。移植片の横断面の蛍光顕微鏡写真が示され(底部左側)及びもバットペンタクロムによる個の断面の染色を示す明視野顕微鏡写真(底部右側)は、青色の染色で示されるように、RFP標識CCP細胞は軟骨を形成したが、GFP標識BCSPは、黄色の染色で示されるように、骨を形成することを立証している。スケールバーは、(上部パネル)では500μmに相当し、(下部パネル)では200μmに相当する。
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図5-1】mSSCにおける軟骨の運命は、微小環境におけるVEGF/PIGFシグナル伝達の不在下で促進されることを示す。(A)実験のスキームである:機械的及び酵素的解離、その後FACSによる分画後に、mSSCをP3マウスから単離した。次いで、E14.5マウスから単離した無傷の前骨形成大腿骨または20,000個のmSSCのいずれかを、VEGF/PIGFシグナル伝達の全身的阻害を伴いまたそれを伴わず、免疫不全受容マウスの腎被膜の下に移植した。VEGF/PIGFシグナル伝達の阻害を試験するために、可溶性VEGFR1細胞外ドメインをコードするアデノウイルスベクター(Ad sVEGFR1)を、腎被膜移植の24時間前に、指定された受容マウスに静脈内送達し、このVEGF/PIGFシグナル伝達の強力な拮抗作用物質の循環系における全身放出をもたらした。陰性対照については、免疫グロブリンFc断片をコードするAd Fcを用いた。(B)VEGF/PIGFシグナル伝達の全身阻害は、無傷の前骨形成胎児骨またはmSSCのインビボでの軟骨形成分化をもたらす。無傷の胎児骨またはmSSCを、Ad sVEGFR1で前処理された免疫抑制状態にあるマウスの腎被膜の下に移植した。移植片を1ヶ月後に外植した。外植移植片の明視野顕微鏡写真が、上部パネルから第1及び第3列に示されている(対照、Ad Fcを左側パネルに、処理されたAd sVEGFR1を右側パネルに示す)もバットペンタクロム染色で染色された代表的断面が、上部パネルから第2及び第4列目に示されている(上2列:無傷の胎児骨、下2列:mSSC)。VEGF/PIGFシグナル伝達の阻害は、軟骨の形成(青色)(右側)をもたらし、同時にAd Fc群が骨を形成した(黄色)(左側)。スケールバーは、(無傷胎児骨、上部パネル)では500μmに相当し、(無傷胎児骨、底部パネル)では100μmに相当し、(mSSC、上部パネル)では500μmに相当し、(mSSC、下部パネル)では200μmに相当する。(C)(C)Ad sVEGFR1(VEGFシグナル伝達の拮抗作用)またはAd Fc対照の存在下でのmSSC/胎児骨移植の運命のグラフ表現である。ここでは、我々は、全身的VEGF拮抗作用の存在下での軟骨の運命の促進を確認している。(D)GEXCを用いて、VEGFシグナル伝達経路を、6種の骨格前駆細胞サブ集団で決定した(mSSC、BCSP、Thy、6C3、BLSP及びHECが上から下に列記される)。mSSC及びその下流の子孫の遺伝子発現解析は、Flt1、Kdr、及びFlt4などの従来のVEGF受容体をほとんど発現しないが、これとは対照的に、VEGF/PIGF受容体ホモログのNrp1及びNrp2の高発現を明らかにしている。骨格幹細胞/前駆細胞は、VEGFAまたはVEGFBを発現しないが、VEGFC及びPIGFを発現する。これらの実験が、CD200によるさらなる精製に先立って行われたために、試験された
*mSSC集団は、三重陰性細胞集団[CD45-Ter119-Tie2-アルファV+Thy-CD105-6C3-]を表し、これはCD200+/-細胞集団の両方を含み、したがって、mSSC/プレ-BCSPの転写発現データを示すことに留意されたい。
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図5-2】mSSCにおける軟骨の運命は、微小環境におけるVEGF/PIGFシグナル伝達の不在下で促進されることを示す。(E)実験のスキームである:mSSCを、P3のC57BL6野生型マウスの長骨から単離した。これらの細胞を、組換えタンパク質の存在下で培養した。4つの実験群と1つの対照が存在した。実験群は、次の可溶性組換えタンパク質:(I)NRP1、(II)PIGF、(III)VEGF及び(IV)VEGFR1で1週間にわたって処理され、その後、鼠径部脂肪体の皮下脂肪に移植された。移植片をその後、組織学的分析用に3週間にわたって外植した。(F)移植から3週間後に、
図5Eの説明文に記載されているように、組織学的分析用に外植した。試料は、対照(処理なし)、PIGF、sNRP1、VEGFA、sVEGFR1の順序で左から右に列記される。移植片のそれぞれの肉眼で見える外観の写真が上部パネルで示されており、これらの移植片のそれぞれは、赤味を帯びた外観を有することに留意されたい(同様に、試料は、対照、PIGF、sNRP1、VEGFA、sVEGFR1の順序で左から右に列記される)。モバットペンタクロムで染色された外植した移植片の明視野画像である(同様に、試料は、対照、PIGF、sNRP1、VEGFA、sVEGFR1の順序で左から右に列記される)。ここで、我々は、移植片の全てが、優勢に骨及び骨髄を生じさせることを確認している。PIGF、sNRP1、VEGF、sVEGFR1で処理されたmSSCは、少量の軟骨と共に、骨及び骨髄を生じさせる。スケールバーは、(上部パネル)では1mmに相当し、(底部パネル)では200μmに相当する。
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図6-1】BMP経路の巧みな操作が、骨外性領域におけるmSSCのデノボ(新規)形成を誘導し得ることを示す。(A)3μgの凍結乾燥組換えBMP2を含有するコラーゲンスポンジを、C57BL6野生型マウスの骨外性部位に、腎被膜の下または鼠径部脂肪体の皮下のいずれかに配置した。1ヶ月後に、移植片を分析用に外植した(左側パネル)。腎被膜移植を上部に示し、皮下移植を下部に示した外植片の明視野画像である(右側パネル)。モバットペンタクロムで染色された横断面は、誘導された骨質類骨が骨髄腔内に充満したこと(赤色染色によって示されるように)を立証した。スケールバーは、(左側パネル)では500μmに相当し、(右側パネル)では200μmに相当する。(B)骨外性部位におけるBMP2誘導によって形成された類骨内の存在する細胞のFACS分析は、マウスの「正常な」成体大腿骨におけるHSC生着の通常の頻度(右端のFACSプロット上の緑色集団によって表示)と同様な、循環SlamF1陽性HSCによる高レベルの生着(右端のFACSプロット上の緑色集団によって表示)を明らかにしている(上部横型パネル)。(C)(左側パネル)骨外性部位への配置後10日目でのBMP2添加コラーゲンスポンジの外植の後に、移植片中に存在する構成細胞集団のFACS分析は、mSSC(FACSプロット上の赤色ボックスによって表示)及びBCSP(FACSプロット上の緑色ボックスで表示)が、BMP2処理外植片中で容易に検出可能であることを明らかにしている。(右側パネル)これとは対照的に、BMP2不在下での脂肪組織のFACS分析は、mSSC(FACSプロット上の赤色ボックスによって表示)またはBCSP(FACSプロット上の緑色ボックスで表示)のいずれも検出しない。スケールバーは、500μmに相当する。
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図6-2】BMP経路の巧みな操作が、骨外性領域におけるmSSCのデノボ(新規)形成を誘導し得ることを示す。(D)異所性骨格前駆細胞がBMP2誘導骨格委託によって元の場所で形成されるかどうか、またはBMP2が骨組織によって動員された循環骨格前駆細胞の移動を促進するかどうかを決定するために、我々は、並列結合体(parabiont)モデルを実施し、BMP2移植片中の骨格前駆細胞の起源を決定した。GFP標識マウスを非蛍光の野生型マウスとペアリングし、その後外科的に融合させた。手術後2週間目に、野生型マウスの循環血液中に存在するGFP標識抹消血液細胞の一部を測定することによって、生理学的キメラ性を確認した。3μgの凍結乾燥組み換えBMP2を含有するコラーゲンスポンジを野生型マウスの鼠径部脂肪体に移植し、異所性骨形成を誘導した。移植から10日後に、我々は、組織を外植し、機械的及び化学的解離を実行して、異所性骨組織の構成細胞集団を単離した。次いで、我々は、FACS分析を描写する横型上部パネル(すなわち、GFP+=循環細胞、及び非蛍光=局所細胞)に示されるように、FAC分析によって、GFP標識細胞の非GFPマウスにおける異所性骨形成への寄与をアッセイした。我々は、採取時に移植編中に豊富なGFP標識細胞を検出したが、移植片に寄与するGFP標識細胞は、CD45(+)造血細胞のみであって(上部及び下部の左端パネル)、骨格前駆細胞集団と一致しなかった(横型パネル、mSSC集団は、右端の赤色ボックスで示される)。採取時に外植された組織中に存在する骨格前駆細胞集団は、完全にGFP陰性であって、これは、循環骨格前駆細胞が、BMP2誘導異所性骨に寄与しなかったことを示唆している[右端のFACSプロット中に存在する緑色細胞は、GFP標識細胞を代表しない]。
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図6-3】BMP経路の巧みな操作が、骨外性領域におけるmSSCのデノボ(新規)形成を誘導し得ることを示す。(E)(左側パネル)リポーター遺伝子のマウスモデルの図は、Tie2発現が、GFP発現をもたらすことを示している。その結果、Tie2+細胞は緑色に変わるが、Tie2-細胞は赤色のままである。(右側パネル)実験のスキームである:mSSCへのBMP-2仲介初期化を受けることができる細胞型を決定するために、我々は、Tie2Cre×MTMGリポーターマウスを実施し、3μgの凍結乾燥組み換えBMP2を含有するコラーゲンスポンジを鼠径部脂肪体の皮下脂肪中に配置した。1ヶ月後に、分析用に小骨を外植した。(F)組織切片の蛍光顕微鏡写真は、BMP-2誘導小骨(黄色の破線で表示)が、目に見える細管を有するGFP+Tie2+誘導骨細胞及びTie2陰性RFP標識骨細胞の両方を明確に組み込むことを示し、したがって、Tie2陽性及びTie2陰性系統が両方ともにBMP2誘導骨格初期化を受けることができたことを示唆している。白線で表示されるAreは、右端のボックス内に高倍率で示され、これは、(RFP+)Tie2-細胞の存在下での(GFP+)Tie2+細管の存在を示している。スケールバーは、(左パネル)では500μmに相当し、(右パネル)では50μmに相当する。
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図7-1】BMP2及びVEGF阻害物質の同時送達が、脂肪組織中の軟骨のデノボ形成を誘導するために十分であることを示す。(A)実験のスキームである:BMP2及び可溶性VEGFR1をその場で脂肪細胞に同時送達する。VEGF/PIGFシグナル伝達の阻害を加えたBMP2は、脂肪組織の軟骨形成分化をもたらす。BMP2単独(すなわち、VEGF/PIGFの阻害を含まない)は、骨形成分化をもたらす。(B)VEGFR遮断がない(左側パネル)またはVEGF遮断を備えた(右側パネル)BMP2を含有する皮下コラーゲンスポンジは、移植片の運命を示す。全身的/局所的VGFR遮断を含む/含まない3μgの凍結乾燥組み換えBMP2を含有するコラーゲンスポンジの配置後1ヶ月目に、移植片を分析用に外植した。移植片の明視野画像(左側)は、モバットペンタクロムで染色された代表的切片(右側)と並んで示されている。BMP2及びVEGFRの同時送達は、青色に染色される軟骨の形成をもたらした(上部及び下部の右端パネル)。VEGF遮断後の結果は、右側の上部連続図に示され、一方局所的VEGF遮断は、右側の底部連続図で示されている。スケールバーは、(パネルが右から左に移動して)、(右端)1mm、(右内側)200μm、(左内側)1mm、(左端)200μmに相当する。
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図7-2】BMP2及びVEGF阻害物質の同時送達が、脂肪組織中の軟骨のデノボ形成を誘導するために十分であることを示す。(C)誘導された軟骨(上部横型パネル)(
図7Aに示した実験スキーム)の構成細胞のFACSプロット分析の年齢適合FACSプロット分析したマウスの耳軟骨から新たに単離された細胞のFACSプロット分析(底部横型パネル)は、誘導された軟骨組織及び天然の軟骨組織の両方の大部分が、CCP(委託軟骨前駆細胞)サブ集団の範囲内にあることを立証している。(D)脂肪生成集団におけるBMP2及びVEGF/PIGEシグナル伝達経路に関連するリガンド及び受容体についての遺伝子発現である(上部:リガンド、下部:受容体)。(T+P+:CD45(-)Tie2(+)PDGFR<(+)、T-P+:CD45(-)Tie2(-)PDGFR<(+))。(E)脂肪生成集団におけるSox9(骨形成タンパク質-2誘導軟骨形成の転写因子)、Runx2(破骨細胞形成のための重要な転写因子)、Sp7(骨芽細胞分化及び骨形成に必要とされる骨特異的転写因子)、及びFoxa2遺伝子についての遺伝子発現である(右側)。(T+P+:CD45(-)Tie2(+)PDGFR<(+)、T-P+:CD45(-)Tie2(-)PDGFR<(+))。
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図8-1】出生後のクローン増殖が、骨、軟骨及び乾漆の運命に制限されることを示す。(A)レインボー定量化スキームである:示された蛍光画像は、P3マウスの大腿骨成長板のものである。クローン(>/=5個の単色の一致する細胞)が、白色破線で示されている。画像中で1~5の番号付けされた5色の組み合わせが示されている。クローンの定義は、下部右側に示される。スケールバーは100μmに相当する。(B)実験のスキームである:アクチン-Cre-ERT遺伝子導入マウスをレインボーリポーター遺伝子マウスと交配した。子孫のCre組み換えを、胚性15日目(E15)、出生後3日目(P3)及び出生後6週目にトモキシフェン注射で誘導させた。大腿骨組織を誘導後6週間で採取した。
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図8-2】出生後のクローン増殖が、骨、軟骨及び乾漆の運命に制限されることを示す。(C)誘導後異なる時点での大腿骨成長板の顕微鏡写真である(左側の縦型パネル(i)、(ii):E15での誘導;中央パネル(iii)、(iV):P3での誘導;右側の縦型パネル(v)、(vi):6週目での誘導)。矢尻は、クローンが存在することを立証している。クローン領域における緩やかな減少が誘導から6週後にあったことに留意されたい。白色の破線の長方形によって示された領域の高倍率の挿入図は、示された対応する図:(ii)、(vi)及び(iv)の挿入図で示されている。スケールバーは、500μmに相当する。
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図8-3】出生後のクローン増殖が、骨、軟骨及び乾漆の運命に制限されることを示す。(D)6週齢のアクチン-Cre/レインボーマウスを、出生後3日目(P3)においてタモキシフェンによって誘導し、6週目に殺処分した。(i)(a)成長板、(b)骨髄、(c)脂肪及び(d)血管系に対応する領域を有する、大腿骨の近位セグメントの低電力図である。代表的な高倍率パネルは、大腿骨成長板(ii)、(iii);骨髄(iv)、(v)、(vi);脂肪(vii)、(viii)、(ix);及び血管(x)、(xi)、(xii)を表示する。蛍光顕微鏡写真は、各クローンが同色の細胞の積層として出現する状態で、ただ1つの部位-すなわち成長板(ii)における細胞のクローン領域を立証している。骨髄間質(iv)、脂肪(vii)、及び血管系(x)で示される顕著なクローン領域(同色の細胞の積層として描かれるであろう)は存在しない。パネル(vi)、(xii)及び(ix)で示すように、組織切片中のHSC、血管及び脂肪を、それぞれ抗CD45、抗CD31、及び抗ペリリピンAで免疫染色した。注釈:画像(ii)、(iv)、(vii)、及び(x):蛍光顕微鏡法;画像(iii)、(v)、(viii)、(xi):ペンタクロム染色後の明視野顕微鏡法。スケールバーは、(i)500μmに相当し、(ii~ix)50μm、(x、xi、xii)200μmに相当する。
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図8-4】出生後のクローン増殖が、骨、軟骨及び乾漆の運命に制限されることを示す。(E)アクチンCre/レインボーマウスをP3で誘導し、6週間後に採取した。(i)胸骨の明視野画像である。(ii)蛍光顕微鏡写真は、同色の細胞の積層によって再度示されたクローンを有する胸骨を示す。(iii)白色ボックスによって表示された指の骨の高倍率挿入図である。スケールバーは、(i、ii)では500μmに相当し、(iii-v)では200μmに相当する。
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図8-5】出生後のクローン増殖が、骨、軟骨及び乾漆の運命に制限されることを示す。(F)アクチンCre/レインボーマウスをP3で誘導し、6週間後に採取した。(i)肋骨の明視野画像である。(ii)蛍光顕微鏡写真は、同色の細胞の積層によって再度示されたクローンを有する肋骨を示す。(iii)白色ボックスによって表示された指の骨の高倍率挿入図である。スケールバーは、(i、ii)では500μmに相当し、(iii)では50μmに相当する。
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図8-6】出生後のクローン増殖が、骨、軟骨及び乾漆の運命に制限されることを示す。(G)アクチンCre/レインボーマウスをP3で誘導し、6週間後に採取した。(i)足全体の明視野画像である。(ii)蛍光顕微鏡写真は、同色の細胞の積層によって再度示されたクローンを有する足を示す。(iii)白色ボックスによって表示された指の骨の高倍率挿入図である。スケールバーは、(i、ii)では1mmに相当し、(iii)では200μmに相当する。
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図9-1】損傷によって誘導された局所的mSSC増殖を示す。(A)実験のスキームである:8週齢の野生型マウスの下肢において安定化大腿骨横中骨幹部骨折を作り出した。その後、大腿骨カルスを3日目/1週目/3週目に採取し、機械的及び酵素的解離によって構成細胞を単離した。次いで、細胞を染色し、FACSによって分画化した。左側大腿骨は損傷されておらず、その代わりに非骨折対照として作用した。非損傷大腿骨及び損傷した大腿骨からのmSSCを、次いで免疫不全マウスの腎被膜下に移植し、1ヶ月後に、組織学的分析用に外植した。(B)非損傷の無傷の大腿骨及び大腿骨カルス中に存在するmSSCの異なる時点での数を示す棒グラフである。これは、1週目にmSSCの数の著しい増加、その後の骨折治癒の後期(3週目)における骨折カルス中のベースラインのmSSCの数の復帰を示している。この観察は、骨損傷に応答して生じるmSSCの積極的な増殖を支援する(p<0.01、t検定)。各試料の分析された100,000個の細胞当たりのmSSCの数が、x軸の下に表示されている。(C)(左側パネル)20,000個のmSSCを、骨折後1週目にカルスから(上部)及び非損傷の大腿骨から(底部)新たに単離した。細胞を骨形成分化培地の存在下で2週間培養し、次いでアリザリンレッド染色に曝した。ここで、我々は、非損傷の大腿骨から単離したものに比べて、骨折微小環境から得たmSSCの有意に強いアリザリンレッド染色を認め、これは、損傷後のmSSCの増強された骨形成能力を示唆している(p<0.01、t検定)。(右側パネル)増殖した移植片の明視野画像であり、(上部)骨折細胞から単離したmSSCの移植から得られた組織であり、(底部)非損傷大腿骨から単離したmSSCの移植から得た組織である。スケールバーは、(左側パネル、インビトロ)では500μmに相当し、(右側パネル、インビボ)では1mmに相当する。
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図9-2】損傷によって誘導された局所的mSSC増殖を示す。(D)次の試料:(i)骨折後1週目の非商社の大腿骨、(ii)骨折後1週目の照射された大腿骨、(iii)非照射の非損傷大腿骨、(iv)照射された非損傷大腿骨中に存在するmSSCの数を示す棒グラフである。これは、非照射の対照と比べて、照射後に骨折された後1週目で見られたmSSCの数の有意な減少を示している(p<0.01、t検定)。これはまた、非照射の対照と比べて、照射後に非損傷の大腿骨中のmSSCの数の有意な減少も示している(p<0.01、t検定)。これは、照射がmSSCの増殖を低減することを示している。
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図10】mSSC子孫が、全身的シグナルを親mSSCに変換することを示す。(A)mSSCの下流の前駆細胞サブ集団で、具体的にはThy及びBLSPサブ集団で発現されることが見出されているBMP拮抗作用物質のグレムリン-2及びノギン(それぞれ、右側上部及び底部)の遺伝子発現レベルを示すリガンド-受容体相互作用マップである。我々は、BMP2経路の拮抗作用物質を発現することが見出されている、前駆細胞の下流の同じサブ集団、Thy及びBLSP(左側上部及び底部パネル)上で全身的ホルモンのレプチン及びチロイド刺激ホルモン(TSH)に対する受容体の遺伝子発現の増加が存在することにも注目する。左側及び右側パネルをそろって見ると、リガンド-同族受容体相互作用のグラフは、全身的ホルモンのレプチン及びTSH受容体を通してのシグナル伝達が、BMP2拮抗作用による(グレムリン2、ノギンを介しての)mSSC増殖及び後続の骨格間質集団中の骨形成に対するシグナルの阻害を生じ得ることを立証している。これらの実験が、CD200によるさらなる精製に先立って行われたために、試験された
*mSSC集団は、三重陰性細胞集団[CD45-Ter119-Tie2-アルファV+Thy-CD105-6C3-]を表し、これはCD200+/-細胞集団の両方を含み、したがって、mSSC/プレ-BCSPの転写発現データを示すことに留意されたい。(B)10,000個のmSSCを、多種多様な条件下で培養した:通常の培地(対照)、組換えレプチンタンパク質で処理された、または処理されていないThyサブ集団からの調整培地(CM)(Thy CM+レプチン/Thy CM-レプチン)及び組換えレプチンタンパク質で処理された、または処理されていないBLSP集団からのCM(BLSP CM+レプチン/BLSP CM-レプチン)。ここで、我々は、レプチンなしで培養されたThy及びBLSPの両方からのCMが、対照と比較してmSSCの増殖を低減することに注目している。しかしながら、レプチンを含んで培養されたThy及びBLSPの両方からのCMは、対照またはレプチンで処理されない細胞からのThy/BLSPサブ集団CMと比較して、mSSCの増殖をさらに低減する。したがって、レプチンシグナル伝達は、インビボでのmSSCの増殖能力を低減する。(C)骨格間質集団中のレプチン(左側)及びその受容体(右側)遺伝子発現レベルである。リガンドの発現陰性、しかしその受容体の高発現は、レプチンが本質的に備わっていることを暗示する。これらの実験が、CD200によるさらなる精製に先立って行われたために、試験された
*mSSC集団は、三重陰性細胞集団[CD45-Ter119-Tie2-アルファV+Thy-CD105-6C3-]を表し、これはCD200+/-細胞集団の両方を含み、したがって、mSSC/プレ-BCSPの転写発現データを示すことに留意されたい。(D)10,000個の新たに単離したThy細胞を、インビトロで、組換えレプチン(1μg/mL)で補充したまた補充していない無血清培地中で培養し、その後、播種後14日目にqRTPCR用に採取した。組換えレプチンで処理したまたは処理していないThyサブセット中のノギン、グレムリン2及びレプチン受容体についての相対的遺伝子発現レベルをグラフに示す。このグラフは、レプチンの存在下で培養されたThyサブセットが、ノギン、グレムリン2及びレプチン受容体の転写
発現のアップレギュレーションをもたらすことを立証しており、したがって、全身循環と骨格前駆細胞サブ集団との間に関連が存在し得るという我々の仮説を強固なものにする。(ii)レプチンの補充なしで培養されたThy細胞の免疫組織化学法である。赤色染色は、グレムリン2の発現を示す。(iii)レプチンを補充されて培養されたThy細胞の免疫組織化学法である。赤色染色は、グレムリン2の発現を示す。ここで、我々は、培地のレプチン(1μg/mL)による補充後のグレムリン2の発現の増加を確認することができている。スケールバーは100μmに相当する。(E)mSSC機能に影響を及ぼす提案された経路の概略である。レプチンは、循環する全身的因子であり、Thy及びBLSP細胞上に存在するレプチン受容体を活性化し、これが、Thy及びBLSP細胞によるグレムリン2及びノギンの発現をもたらし(
図3Dを参照)、これが、BMP-2シグナル伝達及びその後のBMP2誘導mSSC増殖を拮抗作用する。これとは対照的に、mSSC増殖は、BMP-2を通して促進される。
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図11】mSSCにおけるTgfβ拮抗作用促進軟骨形成を示す。(A)実験のスキームである:mSSCをP3のC57BL6野生型マウスの長骨から単離した。これらの細胞を、組み換えタンパク質の存在下で培養した。2つの実験群及び1つの対照がある。実験群は、鼠径部脂肪体の皮下脂肪への移植前1週間にわたって以下の可溶性組換えタンパク質で処理された:(i)TGFβ、(ii)TGFβR。その後、移植片を、組織学的分析用に3週目に外植した。(B)(左側パネル)TGFβで前処理されたmSSCである。上部に、外植での移植片の写真を見ることができる。下部では、ペンタクロム染色された組織学的標本を見ることができ、これは全体の骨または軟骨形成を示していない。(右側パネル)TGFβRで前処理されたmSSCである。上部に、外植での移植片の写真を見ることができる。下部では、ペンタクロムで染色された外植組織の明視野画像を見ることができ、これは、わずかな骨形成を伴い、大部分が軟骨(青色)と一致する外植移植片を示す。スケールバーは(上部パネル)では1mmに相当し、(下部パネル)では200μmに相当する。
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図12】骨格サブセット上の遺伝子発現のヒートマップである。(A)造血を支援するために必須であるC-Kit、IL-3及びIL-9リガンドを骨格間質サブセット上で発現させる。グラフは、骨格間質と造血細胞との間のリガンド-同族受容体相互作用を立証している。(注釈:MEP=巨核球・赤血球前駆細胞、GMP=顆粒球マクロファージ前駆細胞、CLP=リンパ球系共通前駆細胞)。これらの実験が、CD200によるさらなる精製に先立って行われたために、試験された
*mSSC集団は、三重陰性細胞集団[CD45-Ter119-Tie2-アルファV+Thy-CD105-6C3-]を表し、これはCD200+/-細胞集団の両方を含み、したがって、mSSC/プレ-BCSPの転写発現データを示すことに留意されたい。(B)骨格ニッチェと造血ニッチェとの間の提案された相互作用の図は、骨格間質細胞が調節分子及びサイトカインを、それぞれ局部ニッチェ及び造血ニッチェに分泌することを示している。これらのシグナル伝達分子は、mSSC及びHCSの両方の増殖及び分化に関与する。
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図13】Mx1のCre標識細胞がmSSC集団を包含することを示す。(A)実験のスキームである:Mx1-Cre-ERTマウスをE15において誘導させた。P3において、大腿骨を採取し、機械的及び酵素的解離、その後のFACS分画化後に、細胞を単離した。(B)FACSゲーティング戦略は、mSSCが、Mx1-Cre発現細胞中に存在することを示している。これは、Mx1標識細胞が、間葉系前駆細胞に対する非特異的マーカーであることを立証している。Mx1発現細胞(GFP+)は、CD45+、Tie2+、及び[アルファV+]サブセット内で特定される。[CD45(-)Ter119(-)Tie2(-)アルファV(+)Thy(-)6C3(-)]集団(mSSCを含む)の細胞の12.6%がMx1-Cre陽性であって、これは、図の右端からの第2のFACSプロットでの底部パネルで立証される。
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図14-1】mSSC異種性が、骨格構造における差を反映することを示す。(A)マウス骨格構造の図は、骨の異なる形状及び寸法を例示する。番号付けされた骨を採取し、機械的及び酵素的に解離し、FACS分析用に染色し、各骨サブセットから単離された100万個の細胞中に存在するmSSCの数を特定した。(B)棒グラフは、各々の単離された骨からの100万個の細胞中に存在するmSSCの数を立証する。mSSCの相対的数は、全ての骨サブタイプにわたって均一ではなく、附属肢骨格の遠位構成要素で増加する傾向性が高い。(C)表は、異なるマウスの骨から単離されたmSSCのコロニー形成単位(CFU)の計数を示す。各骨サブセットから500個の二重選別されたmSSCを、10%のFBSを補充されたMEMα培地を含む10cmの組織培養皿に播種し、CFUを14日後に計数した。ここで、我々は、異なる骨サブタイプにわたるコロニー形成に対する異種性収容能力を再度確認している。
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図14-2】mSSC異種性が、骨格構造における差を反映することを示す。(D)培養後14日目に40×で示す形成されたコロニーの位相顕微鏡画像である。異なる骨によって形成されたコロニーの携帯において全体的異種性の証拠がある。スケールバーは200μmに相当する。(E)播種後14日目にCFUを計数した後に、細胞を染色し、FACSによって分析し、構成細胞がコロニー中に存在することを決定した。各骨サブセットから形成されたコロニーの分析は、それが単離された骨のタイプに応じて、mSSCについての差異的潜在能力における異種性を立証している。(F)2つの時点における各骨サブセットからの4種のサブ集団(アルファV+、Thy、6C3及び二重陰性(DN)=Thy-6C3-)の細胞計数は、各サブ集団の増殖速度もまた、細胞の起源に応じて変化することを暗示している。
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図15-1】提案されたシグナル伝達経路がmSSC及び子孫に影響を及ぼすことを示す。(A)3種の異なる実験条件下(通常の培地のBMP2(0.1μg/mL)/ノギン(1μg/mL)/グレムリン2(1μg/mL)の補充)の培養後1週間目のmSSC(FACS後に初期播種された10,000個のmSSC)または対照(通常の培地:<MEM、10%のFBS、1%のペニシリン-ストレプトマイシン)の位相顕微鏡画像である。これらの条件下で、我々は以下を認識している:培養基のノギン及びグレムリン2の補充が、対照またはBMP2補充(肥大軟骨細胞領域の増殖)と比べて、インビトロでの未処理mSSC培養に特有である肥大軟骨細胞の増殖の減少をもたらす。スケールバーは、500μmに相当する。
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図15-2】提案されたシグナル伝達経路がmSSC及び子孫に影響を及ぼすことを示す。(B)(i)10,000個のmSSCを新たに選別し、通常の培地中(FACSプロットの上部列)またはWnt3aを補充した(2μg/mL)通常の培地中(FACSプロットの下部列)で培養した。1週間後に、細胞を再単離し、抗体で染色し、FACS分画化を実施した。ここで、我々は、プロ骨形成である、Thyサブ集団(赤色ボックスで表示)の増加を認識している。(ii)1ヶ月間にわたって腎被膜に移植されたwnt未処理のSSCに対比するwntで処理されたSSCの5000個の細胞から形成された小骨のペンタクロム染色切片を示す。Wntによる処理は、Wnt処理資料における骨髄腔の形成の減少でも分かるように、SSCによる軟骨内骨化を阻害するように見える。スケールバーは200μmに相当する。(C)mSSC及び下流の前駆細胞(BCSP、Thy、6C3、BLSP、CCP)によるアキシン1発現の遺伝子発現データである。ここで、我々は、他の幹細胞/前駆細胞と比べて、CCPによるアキシン1の発現の減少を認識している。これらの実験が、CD200によるさらなる精製に先立って行われたために、試験された
*mSSC集団は、三重陰性細胞集団[CD45-Ter119-Tie2-アルファV+Thy-CD105-6C3-]を表し、これはCD200+/-細胞集団の両方を含み、したがって、mSSC/プレ-BCSPの転写発現データを示すことに留意されたい。
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図15-3】提案されたシグナル伝達経路がmSSC及び子孫に影響を及ぼすことを示す。(D)[CD45+Ter119+]または[Tie2+]サブ集団が、高頻度の骨格形成細胞のサブ集団を含有しなかったことを確かなものにするために、我々は、P3のGFP標識マウスから長骨[CD45+Ter 119+]及び[Tie2+]細胞集団(我々は、FACS分画化の際に前に除外したもの)を、機械的及び酵素的解離、その後のFACS分画化によって単離した。次いで、これらの固有の骨格形成潜在能力を評価するために、サブセットのそれぞれの20,000個の細胞を免疫不全RAG-2/ガンマ(c)KOマウスの腎被膜下に移植した。[アルファV+]の8種のサブ集団とは異なり、CD45/Ter119+及びTie2+サブセットは、移植から4週後に、骨、軟骨または間質を形成することが見出されなかった。移植から4週後に存在する組織の明視野顕微鏡写真が、左側のパネルに示され、これとともに蛍光画像が右側に示されている。移植された集団は、両方の列で以下の順序で(上から下に向かって)示されている:上部[CD45+Ter119+アルファV-]、中間[Tie2-アルファV+]、底部[Tie2+アルファV-]。黄色の破線は、自己蛍光スポンジスキャフォールドを表し、緑色の破線は、真のGFP+組織を表す。[CD45+Ter119+アルファV-]移植細胞の移植後に、真の緑色の蛍光は存在せず、したがって、真の組織移植はないが、スポンジ中に存在する自己蛍光(黄色の破線)はある。[Tie2-アルファV+]集団の移植後に(赤色ボックス)、我々は、緑色の破線で表される骨組織の形成があることを確認している。Tie2+アルファV-集団の移植後には、いくつかの緑色蛍光組織が存在するが、これは、骨組織とは一致せず、線維組織の形成(高倍率挿入図)の代わりに、管状構造(おそらくは、高倍率挿入図において白色の矢印によって描写された血管を表す)が存在する。左右のパネル:スケールバーは1mmに相当する。
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図15-4】提案されたシグナル伝達経路がmSSC及び子孫に影響を及ぼすことを示す。(E)(i)骨格間質集団中のレプチン(左側)及びその受容体(右側)の遺伝子発現レベルである。Thyサブセット中のリガンドが陰性発現、しかしながら受容体の高発現は、レプチンが外来的に提供されることに起因する。これらの実験が、CD200によるさらなる精製に先立って行われたために、試験された
*mSSC集団は、三重陰性細胞集団[CD45-Ter119-Tie2-アルファV+Thy-CD105-6C3-]を表し、これはCD200+/-細胞集団の両方を含み、したがって、mSSC/プレ-BCSPの転写発現データを示すことに留意されたい。FPKMは、マップされた百万個の読み取り当たりの転写物の1キロベース当たりの断片である。(E)(ii)以下の細胞群のシングルセルRNAシークエンシングである:6C3(+)(6C3及びHECサブ集団を包含する)、Thy(+)(CCP、THY及びBLSPサブ集団を包含する)、mSSCならびにBCSP。グラフは、mSSC及び下流側の子孫によるレプチン受容体の発現を示す。これは、下流側子孫(6C3-紫色、Thy-赤色)に比べて、mSSC(緑色)及びBCSP(ターコイズ)集団によるレプチン受容体の発現がないことを示している。(F)(i)骨格間質集団におけるFoxA2の遺伝子発現レベルである。ここで、我々は、下流側の子孫に比べてmSSC中のFoxA2の顕著な発現を確認している。これらの実験が、CD200によるさらなる精製に先立って行われたために、試験された
*mSSC集団は、三重陰性細胞集団[CD45-Ter119-Tie2-アルファV+Thy-CD105-6C3-]を表し、これはCD200+/-細胞集団の両方を含み、したがって、mSSC/プレ-BCSPの転写発現データを示すことに留意されたい。(ii)以下の細胞集団のシングルセルRNAシークエンシングである:6C3(+)(6C3及びHECサブ集団を包含する)、Thy(+)(CCP、THY及びBLSPサブ集団を包含する)、mSSCならびにBCSP。グラフは、単一細胞レベルでのFoxA2の発現を示す。(i)と一致して、我々は、Foxa2が、CSP中よりの非常に低いレベルでmSSCにおいて著しくアップレギュレートされ、また下流側の子孫ではほとんど存在しないことを観察した。
【
図15-5】提案されたシグナル伝達経路がmSSC及び子孫に影響を及ぼすことを示す。G(i)骨格間質集団におけるRunx2の遺伝子発現レベルである。これらの実験が、CD200によるさらなる精製に先立って行われたために、試験された
*mSSC集団は、三重陰性細胞集団[CD45-Ter119-Tie2-アルファV+Thy-CD105-6C3-]を表し、これはCD200+/-細胞集団の両方を含み、したがって、mSSC/プレ-BCSPの転写発現データを示すことに留意されたい。(ii)以下の細胞集団のシングルセルRNAシークエンシングである:6C3(+)(6C3及びHECサブ集団を包含する)、Thy(+)(CCP、THY及びBLSPサブ集団を包含する)、mSSCならびにBCSP。グラフはRunx2の発現を示す。H(i)骨格間質集団におけるコラーゲン2Aの遺伝子発現レベルである。これらの実験が、CD200によるさらなる精製に先立って行われたために、試験された
*mSSC集団は、三重陰性細胞集団[CD45-Ter119-Tie2-アルファV+Thy-CD105-6C3-]を表し、これはCD200+/-細胞集団の両方を含み、したがって、mSSC/プレ-BCSPの転写発現データを示すことに留意されたい。(ii)以下の細胞集団のシングルセルRNAシークエンシングである:6C3(+)(6C3及びHECサブ集団を包含する)、Thy(+)(CCP、THY及びBLSPサブ集団を包含する)、mSSCならびにBCSP。グラフは、コラーゲン2Aの発現を示す。
【
図15-6】提案されたシグナル伝達経路がmSSC及び子孫に影響を及ぼすことを示す。I(i)骨格間質集団におけるコラーゲン10Aの遺伝子発現レベルである。これらの実験が、CD200によるさらなる精製に先立って行われたために、試験された
*mSSC集団は、三重陰性細胞集団[CD45-Ter119-Tie2-アルファV+Thy-CD105-6C3-]を表し、これはCD200+/-細胞集団の両方を含み、したがって、mSSC/プレ-BCSPの転写発現データを示すことに留意されたい。(ii)以下の細胞集団のシングルセルRNAシークエンシングである:6C3(+)(6C3及びHECサブ集団を包含する)、Thy(+)(CCP、THY及びBLSPサブ集団を包含する)、mSSCならびにBCSP。グラフは、コラーゲン10Aの発現を示す。J(i)骨格間質集団におけるSox9の遺伝子発現レベルである。これらの実験が、CD200によるさらなる精製に先立って行われたために、試験された
*mSSC集団は、三重陰性細胞集団[CD45-Ter119-Tie2-アルファV+Thy-CD105-6C3-]を表し、これはCD200+/-細胞集団の両方を含み、したがって、mSSC/プレ-BCSPの転写発現データを示すことに留意されたい。(ii)以下の細胞集団のシングルセルRNAシークエンシングである:6C3(+)(6C3及びHECサブ集団を包含する)、Thy(+)(CCP、THY及びBLSPサブ集団を包含する)、mSSCならびにBCSP。グラフは、Sox9の発現を示す。
【
図16】(A)軟骨(青色)、及び骨(黄色)領域を示す、モバットペンタクロムで染色された17週齢のヒト胎児大腿骨の断面である。挿入図は、成長板領域を示し、ここでは我々は、高SSC頻度を見出している。(B)インビボでのヒト骨格幹細胞/前駆細胞の予測単離及び二次表現型特性化についての実験スキームである。(C)17週齢のヒト胎児大腿骨からのヒト骨格幹細胞/前駆細胞サブセットFACSゲーティング戦略であり、軟骨、軟骨を備える骨、または骨髄を備える骨を生じさせる画定された集団を示す。色のついた矢印は、腎臓中の外植されたヒト前駆細胞由来の組織のペンタクロム染色された切片を示す(青色=軟骨;緑色=骨+軟骨;黄色=骨)。(D)ヒト骨格幹細胞/前駆細胞サブセットが単離され得る大腿骨骨頭領域を示す図及び成体大腿骨骨頭領域の写真である。(E)成体大腿骨骨頭組織から単離されたヒト骨格幹細胞/前駆細胞サブセットのFACSゲーティング戦略である。
【
図17】(A)hSSC及びヒト骨格前駆細胞サブセットによる系統進行のインビトロ分析についてのスキームである。(B)(上部及び中間パネル)FACSによってアッセイされた培養hSSCの系統限定されたサブセットへの分化である。(下部パネル)アリザリンレッド染色によって決定される個々のヒト骨格前駆細胞の分化骨形成能力である(hSSC=ヒト骨格幹細胞;BCSP=骨、軟骨及び間質前駆細胞;hCP=ヒト軟骨形成前駆細胞;hOP=ヒト骨形成前駆細胞)。最も強いアリザリンレッドは、hOPで示されている。(C)RGBウイルス標識付け及びレンチウイルス標識付けヒト骨格幹細胞(hSSC)のインビボクローン発現の実験スキームである。(D)レンチウイルス標識付けEGFP及びRFP hSSCのクローンは、hSSC由来腎臓移植片のペンタクロム染色切片で示されるように、骨(黄色)及び軟骨(青色)に分化する。(E)(上部パネル)hSSC、BCSP、hOP、及びhCPの培養物のそれぞれに由来するコロニーの顕微鏡写真である。(下部パネル)4種のヒト骨格幹細胞/前駆細胞サブセットのFACSプロットである。
【
図18】hSSC(左側)のmSSC(右側)と対比する系統マップである。(プレ)BCSP=(プレ)骨、軟骨及び間質前駆細胞;hCP=ヒト軟骨形成前駆細胞;hOP=ヒト骨形成前駆細胞。
【
図19】(A)(左側パネル)骨格ニッチェ因子の範囲を描写する図と一緒に、骨の発生におけるヒト骨格前駆細胞サブセットの局在化を示す図である(hSSC=ヒト骨格幹細胞;BCSP=骨、軟骨及び間質前駆細胞;hCP=ヒト軟骨及び間質前駆細胞;hOP=ヒト骨形成前駆細胞)。(B)hSSCニッチェ相互作用の図である。(C)代表的mSSCニッチェ因子による処理からのhSSCの増殖である。(D)GEXCアルゴリズムによるヒト骨格集団の間のニッチェ因子/同族受容体相互作用の予測である。(E)ヒト骨格前駆体細胞サブセット中の代表的SSCニッチェ因子BMP2、VEGF、WNT1、WNT3の正規化された発現である。(F)(左側パネル)単一細胞mRNA配列決定からの4種のヒト骨格前駆体細胞のヒートマップである。(右側パネル)BMP2またはWNTリガンド及び受容体の共発現を単一細胞レベルで示すベン図である。
【
図20】(A)(上部FACSプロット)hASCは、BMPシグナル伝達に対する応答性を示唆するBMPR1Bの発現を示す。(下部FACSプロット)BMP2によるhASCからのhSSC形成の誘導である。(B)hASCの初期化BMP2との同時送達についてのスキームである。(C)(左側パネル)hASCとBMP2との同時送達に由来するその後誘導された小骨の顕微鏡写真である。下のパネルは上のパネルの長方形を3倍に拡大したものである。モバットクロムで染色した、導入された小骨の顕微鏡写真(骨=黄色;軟骨=青緑色)。(D)BMP2及び可溶性VEGF受容体の組み合わせを用いる、マウス脂肪組織からのその場での骨の誘導、または軟骨形成の図である。(E)VEGFシグナル伝達は、BMP2誘導mSSCを骨(左側)または軟骨の運命(右側)に向けて切り替えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本方法及び組成物を説明する前に、本発明が、記載される特定の方法または組成物に限定されるものではなく、したがって、当然のことながら変化してもよいことを理解するべきである。本発明の範囲では、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的のものにすぎず、添付の請求項によってのみ限定されるであろうことから、限定されることを意図するものではないことも理解するべきである。
【0028】
値の範囲が提供される場合、それぞれの介在する値は、文脈上、そうでないとする明確な指示がない限り、その範囲の上限と下限との間で下限の単位の10分の1までが具体的に開示される。任意の表示された値もしくは表示された範囲中の介在する値とその表示された範囲中の任意の他の表示されたもしくは介在する値との間のより小さな範囲が、本発明の範囲内に包含される。これらのより小さい範囲の上限値及び下限値は、独立してその範囲内に含まれてもまたは除外されてもよく、そのより小さな範囲内にいずれかの限界値が含まれるか、どちらも含まれないかまたは両限界値が含まれる各々の範囲も本発明の範囲内に包含され、表示された範囲において任意の具体的に除外される限界値の対象になる。表示された範囲が、限界値のうちの一方または双方を含む場合、これらの含まれる限界値のいずれかまたは双方を除外する範囲もまた、本発明に含まれる。
【0029】
別途定義のない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって通常理解されているものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様なまたは同等な任意の方法及び材料を、本発明の実施及び試験において使用することができるが、いくつかの可能かつ好ましい方法及び材料がここで記載される。本明細書で言及される全ての刊行物は、引用しているものに関連付けて方法及び/または材料を開示かつ説明するように参照によって本明細書に組み込まれる。本開示は、矛盾が存在する限りにおいては、組み込まれた刊行物の任意の開示に優先することが理解される。
【0030】
本明細書及び添付の請求項において使用されるとき、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上、そうでないとする明確な指示がない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば「a cell」への言及は、複数のこのような細胞を含み、「the peptide」への言及は、1つ以上のペプチド及びそれらの等価物、例えば、当業者に既知のポリペプチドなどに対する言及を含む。
【0031】
本明細書で論議される刊行物は、ただ単にそれらの開示が本出願の出願日よりも前であるために提供されている。本明細書に記載されるいかなる内容も、本発明が、先行発明という事実のために、このような刊行物に先行する権利がないという承認として解釈されるべきではない。さらに、提供される刊行物の日付は、実際の刊行日付と異なっている場合もあり、個々に確認される必要があり得る。
【0032】
定義
機能的軟骨細胞、骨格細胞、骨髄間質細胞、及びそれらの前駆細胞を生成するための方法、組成物及びキットが提供される。これらの方法、組成物及びキットは、軟骨細胞、骨芽細胞、間質細胞、及びこれらの前駆細胞を、移植のために、実験的評価のために、系統特異的及び細胞特異的な製品の供給源として生成することでの使用、例えば、軟骨、骨及び造血系のヒトの障害を治療することでの使用を見出す。細胞を骨格細胞、アストロサイト、希突起神経膠細胞、及びこれらの前駆細胞に変換することでの活性について候補薬剤をスクリーニングするための方法、組成物及びキットも提供される。
【0033】
いくつかの実施形態において、骨形成、軟骨形成、及び間質系統への分化を含む骨格幹細胞の哺乳動物の分化を方向付けるために組成物及び方法が提供される。いくつかの実施形態において、非骨格細胞、例えば多能性幹細胞、間葉系幹細胞(MSC)などの骨格幹細胞の分化を方向付けるために提供される。インビボでの使用については、初期化因子(複数可)は全身的にまたは局在化インプラントとして提供することができ、任意に、細胞、例えば、SSC、MSC、委託軟骨前駆細胞(CCP)などとともに提供される。このような方法のための細胞培養系も提供される。これらの細胞は、治療方法における、例えば、骨格または軟骨形成補充療法のために細胞を提供するために、スクリーニング法においてなどの使用を見出す。いくつかの実施形態において、これらの細胞は哺乳動物細胞である。いくつかの実施形態において、これらの細胞は、ヒトまたはマウス細胞である。
【0034】
本発明のこれらの及び他の目的、利点、及び特徴は、以下により完全に記載されている主題の方法及び組成物の詳細を読み取る際に、当業者には明らかになるであろう。
【0035】
分子及び細胞生化学における一般的方法は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd Ed.(Sambrook et al.,Harbor Laboratory Press 2001);Short Protocols in Molecular Biology,4th Ed.(Ausubel et al.eds.,John Wiley & Sons 1999);Protein Methods(Bollag et al.,John Wiley & Sons 1996);Nonviral Vectors for Gene Therapy(Wagner et al.eds.,Academic Press 1999);Viral Vectors(Kaplift & Loewy eds.,Academic Press 1995);Immunology Methods Manual(I.Lefkovits ed.,Academic Press 1997);及び Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures in Biotechnology(Doyle & Griffiths,John Wiley & Sons 1998)などの標準テキストで見出すことができ、これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。本開示に言及される遺伝子操作用の試薬、クローニングベクター、及びキットは、BioRad、Stratagene、Invitrogen、Sigma-Aldrich、及びClonTechなどの商業ベンダーから入手可能である。
【0036】
「増殖する」とは、有糸分裂によって分割する、すなわち、有糸分裂を受けることを意味する。「増殖集団」は、増殖した、すなわち有糸分裂を受けた細胞の集団であり、これにより、増殖集団は、増大した細胞数を有し、すなわち、最初の集団よりも多数の細胞を有する。
【0037】
用語「外植」とは、身体から採取され、人工培地で培養される器官またはその組織の一部を指す。「エクスビボ」で増殖される細胞は、このような方法で身体から採取され、インビトロで一時的に培養され、身体に戻される。
【0038】
用語「一次培養」は、期間または期間内の組織からの細胞の混合細胞集団を表す。単語「一次」は、組織培養の技術分野におけるその通常の意味を取る。
【0039】
用語「組織」とは、ある特定の特殊な機能を一緒に実行する類似して特殊化された細胞の群または層を指す。
【0040】
用語「器官」とは、組織の2つ以上の隣接する層を指し、組織のこれらの層は、微細構造を形成するために、細胞間及び/または細胞-マトリックス間相互作用のいくつかの形態を維持する。
【0041】
用語「個体」、「対象」、「宿主」、及び「患者」は、本明細書で互換的に使用され、診断、治療、または療法が望ましい任意の哺乳動物対象、特にヒトを指す。
【0042】
用語「治療」、「治療すること」、「治療する」等は、一般的には所望の薬理学的及び/または生理学的効果を得ることを指すように本明細書で使用される。この効果は、疾患またはそれらの症状を完全にまたは部分的に防止する点から予防的であってもよく、及び/もしくは疾患ならびに/または疾患に寄与する有害作用に対する部分的もしくは完全な安定化または治癒する点から治療的であってもよい。本明細書で使用される「治療」は、哺乳動物、とくにヒトにおける疾患のあらゆる治療にまで及び、(a)疾患または症状にかかりやすい素因を有し得るが、それを有しているとまだ診断されていない対象において、疾患または症状を発症することを防止すること、(b)疾患症状を抑制すること、すなわち、その進行を阻止すること、または(c)疾患症状を緩和すること、すなわち、疾患または症状の後退を引き起こすことが含まれる。
【0043】
「同時投与する」とは、互いに連携して、一緒に、協調的に投与することを意味し、2つ以上の薬剤の同時投与または逐次投与が含まれる。
【0044】
「comprising(含む)」は、必然的に、他に何が含まれ得るかの制限または除外なく、他の制限なしに指示対象を含むことを意味する。例えば、「x及びyを含む組成物」は、たとえ他の構成成分が組成物中に存在する場合があろうと、x及びyを含有する任意の組成物を包含する。同様に、「xのステップを含む方法」は、たとえどんなに多くの他のステップが存在する場合であってもまたたとえxがそれらに比べてどんなに単純または複雑であっても、この方法における唯一のステップであろうとまたはこれがステップのうちの1つにすぎないとしても、xがその中で実行される任意の方法を包含する。「comprised of(からなる)」及び「comprise」の語源を用いる同様な成句は、「comprising」の同義語として本明細書で使用され、同様な意味を有する。本発明の方法はまた、所望の因子からなるまたは本質的になる因子の組み合わせの使用を含む。
【0045】
「有効量」は、一般的に、所望の局所的または全身的効果をもたらす量を意味する。例えば、有効量は、有益なまたは所望の臨床結果を達成するために十分な量である。有効量は、単回投与で全て同時に提供することができるか、または数回の投与で有効量をもたらす分割された量で提供することができる。有効量とみなされる量の正確な決定は、各対象に対して特有な因子に基づくことができ、これらとして、そのサイズ、年齢、損傷、及び/または治療される疾患もしくは損傷、損傷が生じたもしくは疾患が発症してからの時間量が含まれる。当業者は、当該技術分野において慣例的であるこれらの考慮事項に基づいて所定の対象にとっての有効量を決定することができるであろう。本明細書で使用される「有効用量」は、「有効量」と同じ意味である。
【0046】
軟骨は、その重量の70%~80%を構成する水を含む超水和構造である。残りの20%~30%は、II型コラーゲン及びプロテオグリカンを含む。コラーゲンは、通常、軟骨の乾燥重量の70%を占める。プロテオグリカンは、多糖類の長鎖がそこから延びる中心タンパク質コアから構成される。これらの多糖類は、グリコサミノグリカンと呼ばれ、コンドロイチン-4-硫酸、コンドロイチン-6-硫酸、及びケラタン硫酸が含まれる。軟骨は、内因性に生成かつ分泌される細胞外マトリックス内に分散された軟骨形成細胞からなる特徴的な構造組織を有する。軟骨細胞を収容するマトリックス内の腔は、軟骨小腔と呼ばれる。骨とは異なり、軟骨は神経支配もされず、血管またはリンパ系のいずれによっても貫通もされない。
【0047】
3つの種類の軟骨が哺乳類で存在し、これらには、硝子軟骨、線維軟骨、及び弾性軟骨が含まれる。硝子軟骨は、強固な弾力のある均一性を有する軟骨質塊からなり、半透明であり、色はパールがかった青色である。硝子軟骨は、関節接合部の関節面上に優勢に見出される。これは、骨端軟骨板、肋軟骨、気管軟骨、気管支軟骨、及び鼻軟骨においても見出される。線維軟骨は、軟骨に引張強さを付加するI型コラーゲンの線維を含有する以外は硝子軟骨と本質的に同様である。線維軟骨は、一般的に、椎間板の線維輪、健ならびに靭帯の挿入部、半月板、恥骨結合、及び関節包の挿入部において見出される。弾性軟骨もまた、これがエラスチンの線維を含有すること以外は硝子軟骨と同様である。これは、硝子軟骨よりも不透明であり、より可撓性かつ柔軟である。これらの特性は、一部分においては、軟骨マトリックス内に埋め込まれた弾性線維によって画定される。典型的には、弾性軟骨は、耳介、喉頭蓋、及び喉頭中に存在する。
【0048】
哺乳類関節における関節骨の表面は、関節軟骨に覆われている。関節軟骨は、対向する骨表面の直接接触を防止し、関節骨の互いに対するほぼ摩擦がない動きを可能にする。2種類の関節軟骨欠損が哺乳動物において一般的に観察され、これらは全層欠損及び中間層欠損が含まれる。2種類の欠損は、物理的損傷の程度のみならず、各種類の病変部が誘導する修復応答の性質も異なる。
【0049】
全層関節軟骨欠損は、関節軟骨、下層の軟骨下骨組織、関節軟骨と軟骨下骨との間に位置する軟骨の石灰化層に至る損傷を含む。全層欠損は、通常、関節の重度の外傷中に、または変形性関節疾患中に、例えば骨関節炎中に発生する。軟骨下骨組織は、神経支配及び血管形成の両方が行われているために、この組織への損傷は痛みを伴う。軟骨下骨への損傷によって誘導される修復反応は、通常、全層欠損の部位における線維軟骨の形成をもたらす。しかしながら、線維軟骨は、関節軟骨の生化学的特性を欠如し、長期にわたって関節内に留まることができない。
【0050】
中間層関節軟骨欠損は、軟骨組織それ自体に制限される。これらの欠損は、通常、軟骨の関節表面における亀裂または裂け目を含む。中間層欠損は、関節の機械的配置によって引き起こされ、これは、次には、関節内の軟骨組織の摩耗を誘導する。神経支配及び血管形成の不在下では、中間層欠損は修復応答を誘導せず、したがって、治癒しない傾向がある。痛みはないが、中間層欠損は、多くの場合、全層欠損へと悪化する。
【0051】
用語「骨格幹細胞」とは、骨髄間質細胞、骨格細胞、及び軟骨形成細胞を生成することができる複能性及び自己再生細胞を指す。自己再生とは、これらが有糸分裂を受けるとき、これらが骨格幹細胞である少なくとも1つの娘細胞を生じることを意味する。複能性とは、これが、骨格系の全ての細胞の種類を生じさせる前駆細胞(骨格前駆細胞)を生じることができることを意味する。これらは、多能性ではなく、すなわち、これらは、インビボでの他の器官の全ての細胞の種類を生じさせることはできない。
【0052】
骨格幹細胞はまた、間葉系幹細胞、及びこのような細胞を含有する脂肪組織があげられるがこれらに限定されない非骨格細胞から初期化される。初期化細胞は、誘導骨格幹細胞、またはiSSCと称されてもよい。「iSSC」は、実験的操作によって非骨格細胞から生じる。誘導骨格細胞は、自然界に由来する機能的SSCの特性を有し、すなわち、これらは同じ系統から生じさせることができる。
【0053】
ヒトSSC細胞集団は、CD45、CD235、Tie2、及びCD31の発現に対して陰性であり、ポドプラニン(PDPN)を陽性発現する。細胞の集団、例えば、このマーカーの組み合わせを有する骨組織から単離された細胞は、[PDPN+ /146- ]細胞と称することができる。[PDPN+ /146- ]集団は、3つの集団:軟骨形成が可能な単能サブセット[PDPN+ CD146- CD73- CD164- ]、骨形成が可能な単能細胞サブ集団[PDPN+ CD146- CD73- CD164+ ]及び軟骨内(骨及び軟骨)骨化が可能な多能性[PDPN+ CD146- CD73+ CD164+ ]細胞にさらに細分することができる。本発明の方法で使用するために着目した細胞の集団は、CD45、CD235、Tie2、及びCD31ならびにPDPNに対して骨から単離され得る。着目した他の細胞集団は、[PDPN+ CD146- CD73- CD164- ]細胞、[PDPN+ CD146- CD73- CD164+ ]細胞、及び[PDPN+ CD146- CD73+ CD164+ ]細胞である。
【0054】
マウス骨格系統は、CD45- 、Ter119- 、Tie2- 、αV インテグリン+ として特徴付けられる。SSCは、Thy1- 6C3- CD105- CD200+ としてさらに特徴付けられる。
【0055】
脂肪由来幹細胞。脂肪由来幹細胞または「脂肪由来間質細胞」とは、脂肪組織が起源である細胞を指す。「adipose(脂肪)」とは、任意の脂肪(fat)組織を意味する。脂肪組織は、皮下、大網/内臓、乳房、生殖腺、または他の脂肪組織部位に由来する褐色または白色脂肪組織であってもよい。好ましくは、脂肪は皮下白色脂肪細胞である。このような細胞は、初代細胞培養または不死化細胞株として提供されてもよい。脂肪組織は、脂肪組織を有する任意の器官からのものであってもよい。好ましくは、脂肪組織は哺乳動物組織であり、より好ましくは、脂肪組織はヒトの組織である。脂肪組織の便利な供給源は、脂肪吸引手術からのものであるが、脂肪組織の供給源または脂肪組織の単離の方法は、本発明にとって重要ではない。
【0056】
脂肪組織は、再生医療用途に多くの実用上の利点を提供する。これは豊富であり、患者に対して最小限のリスクの方法で採集するようアクセス可能である。脂肪組織1グラム当たり104 個超の幹細胞があり(Sen et al 2001,Journal of Cellular Biochemistry 81:312-319)、これらの細胞は、即座に使用することができるか、またはさらなる自己または同種用途のために凍結保存することができる。
【0057】
ヒト脂肪組織由来細胞の単離、増殖、及び分化のための方法が報告されている。例えば、Burris et al 1999,Mol Endocrinol 13:410-7;Erickson et al 2002,Biochem Biophys Res Commun. Jan. 18, 2002;290(2):763-9;Gronthos et al 2001,Journal of Cellular Physiology,189:54-63;Halvorsen et al 2001,Metabolism 50:407-413;Halvorsen et al 2001,Tissue Eng. 7(6):729-41;Harp et al 2001,Biochem Biophys Res Commun 281:907-912;Saladin et al 1999,Cell Growth & Diff 10:43-48;Sen et al 2001, Journal of Cellular Biochemistry 81:312-319;Zhou et al 1999,Biotechnol.Techniques 13:513-517を参照されたい。脂肪組織由来間質細胞は、細かく刻んだヒト脂肪組織から、コラーゲナーゼ消化及び分画遠心分離によって得ることができる[Halvorsen et al 2001,Metabolism 50:407-413;Hauner et al 1989,J Clin Invest 84:1663-1670;Rodbell et al 1966,J Biol Chem 241:130-139]。
【0058】
脂肪組織由来幹細胞は、CD13、CD29、CD44、CD63、CD73、CD90、CD166、アルデヒド脱水素酵素(ALDH)、及びABCG2を含むマーカーを発現することが報告されている。脂肪組織由来幹細胞は、1ヶ月間超にわたって培養中で増殖することが可能な脂肪組織から抽出された精製単核細胞の集団であり得る。
【0059】
細胞の組織からの単離については、適切な溶液を分散または懸濁用に使用することができる。このような溶液は、一般的には、低濃度、一般的には5~25mMでの許容できる緩衝液とともに、ウシ胎児血清または他の天然起源の因子で適宜補充された、平衡塩類溶液、例えば、通常生理食塩溶液、PBS、ハンクス平衡塩類溶液などである。便利な緩衝液としては、HEPES、リン酸塩緩衝液、乳酸塩緩衝液等が挙げられる。
【0060】
細胞集団は、すぐに使用されてもよい。あるいは、細胞集団は、液体窒素温度で凍結され、長期間にわたって保存され、解凍され、再利用可能である。このような場合、細胞は、通常、10%のDMSO、50%の結成、40%の緩衝培地、または当該技術分野で一般的に使用されるようないくつかの他の溶液中で凍結され、このような凍結温度において細胞を保存し、凍結培養細胞についての当該技術分野において一般的に既知の方法で解凍される。
【0061】
脂肪細胞は、様々な培養条件下においてインビトロで培養されてもよい。培養基は、液体であっても、または、例えば、寒天、メチルセルロースなどを含有する半固体であってもよい。細胞集団は、一般的に、ウシ胎児血清(約5~10%)、L-グルタミン、チオール、特に2-メルカプトエタノール、及び抗生物質、例えば、ペニシリン及びストレプトマイシンで補充された、イスコフ改変DMEMまたはPRMI-1640などの適切な栄養培地中に適宜懸濁され得る。本発明の一実施形態において、脂肪細胞は、フィーダー層細胞の不在下で、すなわち、血清などの不在下で、培養中に維持される。培養は、細胞が応答する増殖因子を含有してもよい。本明細書で定義される増殖因子は、播く貫通受容体に及ぼす特異的効果を通して、培養中または無傷組織中のいずれかにおいて細胞の生存、増殖及び/または分化を促進することを可能にする分子である。増殖因子は、ポリペプチド及び非ポリペプチド因子を含む。
【0062】
用語「初期化の効率」、「初期化効率」、「転換の効率」、または「転換効率」は、本明細書では互換的に使用され、適切な初期化系と接触させるとき、1つの細胞系統の細胞の別の細胞系統の誘導細胞を生じさせるための能力を指し、例えば、BMP2の高用量と接触させるとき、iSSCを生じさせるための脂肪組織の能力を指す。言い換えると、これらの細胞は、非接触集団の約1.5倍、約2倍、約3倍、約4倍、約6倍、約8倍、約10倍、約20倍、約30倍、約50倍、約100倍、約200倍の誘導細胞(例えば、iSSC)の数、またはそれ以上を生じる。
【0063】
初期化に加えて、細胞は、特定の経路に沿って分化するように方向付けられてもよい。例えば、インビボにおける介入不在下において、SSCはインビボでほとんど軟骨細胞を生じさせないが、本明細書では軟骨形成因子と称する分化因子によって軟骨形成に方向づけることができる。
【0064】
本明細書で使用される場合、「BMP-2」とは、任意の種に由来する2型骨形成タンパク質のファミリーを指し、それらの模倣体及び変異体を含んでもよい。本明細書でのBMP-2への言及は、BMP-2A及びBMP-2Bを含む現在特定されている形態のいずれか1つへの、並びに将来的に特定されるBMP-2種への言及であることが理解される。用語「BMP-2」もまた、その成熟配列が、成熟ヒトBMP-と少なくとも約75%騒動である任意の既知のBMP-2の配列に由来するポリペプチドを含み、この参照配列は、Genbankにおいて、受け入れ番号NP_001191で見出すことができる。
【0065】
BMP-2は、細胞表面においてホモマー複合体ならびにヘテロマー複合体として発現される2つの種類の受容体(BRI及びBRII)を介してシグナル伝達する。リガンド結合に先立って、低いレベルであるが測定可能なレベルのBMP-受容体が、あらかじめ形成されたヘテロ-オリゴマー複合体中で見出される。受容体の主要分画は、リガンド添加後のみにヘテロ-オリゴマー複合体中に動員される。このため、BMP-2は、初めに高親和性受容体BRIに結合し、次いでBRIIをシグナル伝達複合体中に動員する。しかしながら、BRII及びBRIから構成されるあらかじめ形成された複合体は、シグナル伝達を必要とし、これが配座転移を活性化することを仲介し得ることを示唆している。BMP-2のあらかじめ形成された受容体複合体への結合によって誘起されたシグナルは、Smad経路を活性化するのに対して、受容体のBMP-2誘導動員は、異なるSmad独立経路を活性化し、p38MARKを介してのアルカリホスファターゼ活性の誘導をもたらす。
【0066】
いくつかの実施形態において、BMP2の一定用量がインプラント、例えば、因子の局在化送達のためのマトリックスまたはスキャフォールド中に提供され、ここではBMP2は、BMP2タンパク質またはその活性断片として提供される。有効用量は、特定の組織、インプラントからの放出の速度、インプラントのサイズなどに基づいて決定することができ、当業者によって経験的に決定され得る。用量は、1μgのBMP2タンパク質、10μg、100μg、1mg、5mg、10mg、25mg、50mg、75mg、100mg、250mg、500mg、750mg、1gのBMP2タンパク質に相当する生理活性を提供することができる。用量は、1つの時点で、例えば1つのインプラントとして投与されてもよく、または分割されて、例えばマイクロニードルの形態で送達されてもよい。用量は、適宜、所望の効果を得るために、1回、2回、3回、4回、5回、10回またはそれ以上投与されてもよく、投与は、毎日、2日毎、3日毎、4日毎、毎週、隔週、毎月、またはそれ以上であってもよい。
【0067】
「BMP2模倣体」は、上述したその受容体に結合しまたそれを活性化することによってBMP2に類似して機能する分子を含む。BMP2模倣体として有用な分子としては、天然起源のBMP2の誘導体、変異体、及び生理活性断片が含まれる。「変異体」ポリペプチドとは、天然配列ポリペプチドと100%未満の配列同一性を有する、以下に定義される生理活性断片を意味する。このような変異体としては、1つ以上のアミノ酸残基が、天然配列のN-もしくはC-末端において、またはその内部に付加されている、約1~40個のアミノ酸残基が欠失されている、及び1つ以上のアミノ酸残基によって任意に置換されているポリペプチド、ならびに得られる生成物が非天然起源のアミノ酸を有するように、アミノ酸残基が共有結合的に修飾された上記ポリペプチドの誘導体が含まれる。通常、生理活性変異体は、天然配列ポリペプチドと少なくとも約90%の、好ましくは少なくとも約95%の、より好ましくは、少なくとも約99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。変異体ポリペプチドは、天然にまたは非天然にグリコシル化されることができ、すなわち、このポリペプチドは、対応する天然起源のタンパク質において見出されるグリコシル化パターンとは異なるグリコシル化パターンを有する。変異体ポリペプチドは、天然のBMP2タンパク質においては見いだされない翻訳後修飾を有することができる。
【0068】
可溶性BMP2の断片、特に生理活性断片及び/または機能的ドメインに対応する断片が着目される。着目された断片は、典型的には、少なくとも約10個のaa~少なくとも約15個のaaの長さ、通常は少なくとも約50個のaaの長さであるだろうが、通常、約142個のaaの長さを超えることはないと思われ、この断片は、BMP2と等しいアミノ酸の伸長を有するであろう。例えば、「少なくとも20個のaaの長さの」断片は、例えば、BMP2についてcDNAによってコードされたポリペプチドからの20個またはそれ以上の連続アミノ酸を含むように意図される。この文脈では、「約」は、具体的に列記された値または数個の(5、4、3、2、または1個の)アミノ酸まで大きいかもしくは小さい値を含む。本明細書に記載されるタンパク質変異体は、本発明の範囲内であるポリヌクレオチドによってコードされる。遺伝子コードは、適切なコドンを選択し、対応する変異体を構築するために用いることができる。これらのポリヌクレオチドは、ポリペプチドを生成するために用いることができ、これらのポリペプチドは、既知の方法によって抗体を生成するために用いることができる。
【0069】
「融合」ポリペプチドは、異種ポリペプチドに融合または結合されたポリペプチドまたはそれらの一部(例えば、1つ以上のドメイン)を含むポリペプチドである。例えば、融合BMP2タンパク質は、天然BMP2ポリペプチドと共通する少なくとも1つの生物学的性質を共有するであろう。融合ポリペプチドの例としては、BMP2ポリペプチドの一部をイムノグロブリン配列に結び付ける上述したイムノアドヘシン、及び「タグポリペプチド」に融合されたBMP2ポリペプチドまたはその一部を含むエピトープタグポリペプチドが含まれる。タグポリペプチドは、抗体がそれに対して作成され得るエピトープを提供するために十分な残基を有し、またこれがBMP2ポリペプチドの生理活性に干渉することがないように十分に短い。好適なタグポリペプチドは、一般的に、少なくとも6個のアミノ酸残基を有し、通常は、約6~60個のアミノ酸残基を有する。
【0070】
天然配列ポリペプチドの「機能的誘導体」は、天然配列ポリペプチドと共通の定性的な生物学的性質を有する化合物である。「機能的誘導体」としては、天然配列の断片及び天然配列ポリペプチドの誘導体ならびにその断片(但し、これらが、対応する天然配列ポリペプチドと共通の生理活性を有するという条件で)が含まれるが、これらに限定されない。用語「誘導体」は、ポリペプチドのアミノ酸配列変異体及びそれらの共有結合修飾物の両方を包含する。可溶性BMP2の誘導体及び融合体は、BMP2模倣分子としての使用を見出す。
【0071】
安定な血漿タンパク質は、典型的には、それらの天然環境において、循環において半減期の延長(すなわち、約20時間を超える)を呈する約30~2,000個の残基を有するタンパク質である。好適な安定血漿タンパク質の例は、イムノグロブリン、アルブミン、リポタンパク質、アポリポタンパク質及びトランスフェリンである。BMP2の細胞外領域は、典型的には、血漿タンパク質またはその断片のN末端において血漿タンパク質に融合されており、これが可溶性BMP2に半減期の延長を付与することが可能である。可溶性BMP2の結晶半減期に約100%を超える増加が満足な状態である。
【0072】
好適なBMP2模倣体及び/または融合タンパク質は、例えば、非骨格細胞上の集団における骨格幹細胞の数を増加させる(例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、100倍またはそれ以上まで)ことでのBMP2の生理活性を模倣するための薬剤の能力を検出することによって、化合物スクリーニングにより特定されてもよい。
【0073】
VEGFは、血小板由来増殖因子(「PDGF」)に関連する、二量体のジスルフィド結合された46KDaの糖タンパク質である。これは、正常な細胞株及び腫瘍細胞株によって生成され、内皮細胞選択的有糸分裂促進因子であり、インビボ試験系(例えば、ウサギ角膜)において血管新生活性を示し、内皮細胞及び単球に対して走化性であり、毛細血管の形成中の細胞外マトリックスのタンパク質分解に関与する内皮細胞中でプラスミノーゲン活性化因子を誘導する。多数のVEGFのアイソフォームが知られており、これらは類似の生理活性を示すが、これらを分泌する細胞の種類及びこれらのヘパリン結合能力に違いがある。加えて、胎盤増殖因子(「PGF」)及びVEGF-CなどのVEGFファミリーの他のメンバーが存在する。
【0074】
VEGFの細胞受容体(VEGFR)は、播く貫通性受容体チロシンキナーゼである。これらは、7つのイムノグロブリン様ドメインを備えた細胞外ドメイン及び細胞内チロシンキナーゼドメインによって特徴付けられる。様々な種類のVEGF受容体が特性化されており、例えば、VEGFR-1(fit-1として知られる)、VEGFR-2(KDRとして知られる)、及びVEGFR-3がそれである。
【0075】
本明細書で使用される「VEGF阻害薬」は、VEGF-VEGFR経路によるシグナル伝達を減少させる任意の物質である。VEGF阻害薬は、2~3例を挙げると、小分子、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質とすることができ、より具体的には、抗VEGF抗体、抗VEGFR抗体、細胞内抗体、マキシボディ、ミニボディ、二重特異性抗体を含む抗体、ペプチボディ、レセプチボディなどのFc融合タンパク質抗体、陽性VEGF受容体タンパク質ならびに断片、及びその他さまざまなものが含まれる。多くのVEGF阻害薬は、VEGFにまたはVEGF受容体に結合することによって働く。他のものは、VEGFにまたはVEGF受容体にもしくはVEGFシグナル伝達経路の他の成分に結合する因子に結合することによってより間接的に働く。さらに他のVEGF阻害薬は、VEGFシグナル伝達経路を調節する制御翻訳後修飾を変更することによって作用する。本発明によるVEGF阻害薬もまた、より間接的な機構を通して作用することができる。本明細書で使用される場合、どんな機構が関与しても、VEGF阻害薬は、所定の状況におけるVEGFシグナル伝達の有効な活性を、阻害薬の不在下での同じ状況において予想されるものを超えて減少させる。
【0076】
いくつかの実施形態において、VEGF阻害薬の一定用量がインプラント、例えば、因子の局在化送達のためのマトリックスまたはスキャフォールド中に提供される。有効用量は、特定の組織、インプラントからの放出の速度、インプラントのサイズなどに基づいて決定することができ、当業者によって経験的に決定され得る。用量は、1μgのVEGF受容体、10μg、100μg、1mg、5mg、10mg、25mg、50mg、75mg、100mg、250mg、500mg、750mg、1gの可能性VEGF受容体に相当する生理活性を提供することができる。用量は、1つの時点で、例えば1つのインプラントとして投与されてもよく、または分割されて、例えばマイクロニードルの形態で送達されてもよい。用量は、適宜、所望の効果を得るために、1回、2回、3回、4回、5回、10回またはそれ以上投与されてもよく、投与は、毎日、2日毎、3日毎、4日毎、毎週、隔週、毎月、またはそれ以上であってもよい。
【0077】
非常に多くのVEGF阻害薬が、文献に記述されている。以下にさらに詳細に記載されるものに加えて、VEGF阻害薬は、以下の特許文献にVEGF阻害薬に関連する部分で記述されている:US 2003/0105091、US 2006/0241115、US 5,521,184、US 5,770,599、US 5,990,141、US 6,235,764、US 6,258,812、US 6,515,004、US 6,630,500、US 6,713,485、WO2005/070891、WO 01/32651、WO 02/68406、WO 02/66470、WO 02/55501、WO 04/05279、WO 04/07481、WO 04/07458、WO 04/09784、WO 02/59110、WO 99/450029、WO 00/59509、WO 99/61422、WO 00/12089、WO 00/02871、及びWO 01/37820。
【0078】
以下はとりわけ特異的なVEGF阻害薬である:経口投与用の製剤を含めるABT-869(Abbott)ならびに近縁のVEGF阻害薬;経口投与用の製剤を含めるAEE-788(Novartis)(AE-788及びNVP-AEE-788などとも呼ばれる)及び近縁のVEGF阻害薬;経口投与用の製剤を含めるAG-13736(Pfizer)(AG-013736とも呼ばれる)ならびに近縁のVEGF阻害薬;AG-028262 (Pfizer)及び近縁のVEGF阻害薬;アンジオスタチン(EntreMed)(CAS登録番号86090-08-6、K1-4、及びrhuアンジオスタチンなどとも呼ばれる)ならびに近縁のVEGF阻害薬(とりわけ、米国特許第5,792,825号及び同第6,025,688号に記載され、具体的には、アンジオスタチン及び近縁のVEGF阻害薬、それらの構造及び特性、ならびにそれらの作製及び使用のための方法に関係する部分に記載されたもの);アバスチン(登録商標)(Genentech)(ベバシズマブ、R-435、rhuMAB-VEGF、及びCAS登録番号216974-75-3などとも呼ばれる)ならびに近縁のVEGF阻害薬;AVE-8062(Ajinomoto Co.及びSanofi-aventis)(AC-7700及びコンブレタスタチンA4類似体などとも呼ばれる)、ならびに近縁のVEGF阻害薬;AZD-2171(AstraZeneca)及び近縁のVEGF阻害薬;Nexavar(登録商標)(Bayer AG and Onyx)(CAS登録番号284461-73-0、BAY-43-9006、rafキナーゼ阻害薬、ソラフェニブ、ソラフェニブ類似体、及びIDDBCP150446などとも呼ばれる)ならびに近縁のVEGF阻害薬;BMS-387032(Sunesis及びBristol-Myers Squibb)(SNS-032及びCAS登録番号345627-80-7などとも呼ばれる)ならびに近縁のVEGF阻害薬;CEP-7055(Cephalon及びSanofi-aventis)(CEP-11981及びSSR-106462などとも呼ばれる)ならびに近縁のVEGF阻害薬;CHIR-258(Chiron)(CAS登録番号405169-16-6、GFKI、及びGFKI-258などとも呼ばれる)ならびに近縁のVEGF阻害薬;CP-547632(OSI Pharmaceuticals及びPfizer)(CAS登録番号252003-65-9などとも呼ばれる)ならびに、例えば、CP-564959などの近縁のVEGF阻害薬;E-7080(Eisai Co.)(CAS登録番号417716-92-8及びER-203492-00などとも呼ばれる)ならびに近縁のVEGF阻害薬;786034(GlaxoSmithKline)ならびに近縁のVEGF阻害薬;GW-654652(GlaxoSmithKline)ならびに近縁のインダゾリルピリミジンKdr阻害薬;IMC-1C11(ImClone)(DC-101及びc-p1C11などとも呼ばれる)ならびに近縁のVEGF阻害薬;KRN-951(Kirin Brewery Co.)ならびに他の近縁のキノリン-尿素VEGF阻害薬;PKC-412(Novartis)(CAS登録番号120685-11-2、ベンゾイルスタウロスポリン、CGP-41251、ミドスタウリン、及びSTI-412などとも呼ばれる)ならびに近縁のVEGF阻害薬;PTK-787(Novartis及びSchering)(CAS登録番号212141-54-3及び212142-18-2、PTK/ZK、PTK-787/ZK-222584、ZK-22584、VEGF-TKI、VEGF-RKI、PTK-787A、DE-00268、CGP-79787、CGP-79787D、バタラニブ、ZK-222584などとも呼ばれる)ならびに近縁のアニリノフタラジン誘導体VEGF阻害薬;SU11248(Sugen及びPfizer)(SU-11248、SU-011248、SU-11248J、スーテント(登録商標)及びリンゴ酸スニチニブなどとも呼ばれる)ならびに近縁のVEGF阻害薬;SU-5416(Sugen及びPfizer/Pharmacia)(CAS登録番号194413-58-6、セマクサニブ、204005-46-9などとも呼ばれる)ならびに近縁のVEGF阻害薬;SU-6668(Sugen及びTaiho)(CAS登録番号252916-29-3、SU-006668、及びTSU-68などとも呼ばれる)ならびに近縁のVEGF阻害薬(具体的には、とりわけWO-09948868、WO-09961422、及びWO-00038519において、SU-6668及び近縁のVEGF阻害薬、それらの構造及び特性、ならびにそれらの作製及び使用のための方法に関連する部分に記載されたもの);VEGFトラップ(Regeneron及びSanofi-aventis)(AVE-0005及び全身的VEGFトラップなどとも呼ばれる)ならびに近縁のVEGF阻害薬(具体的には「VEGF Trap and closely related VEGF inhibitors,their structures and properties,and methods for making and using them」に関連する部分において、とりわけWO-2004110490に記載されたもの);サリドマイド(Celgene)(CAS登録番号50-35-1、シノビール、サリドマイドファルミオン、及びサロミドなどとも呼ばれる)ならびに近縁のVEGF阻害薬;XL-647(Exelixis)(EXEL-7647などとも呼ばれる)ならびに近縁のVEGF阻害薬;XL-999(Exelixis)(EXEL-0999などとも呼ばれる)ならびに近縁のVEGF阻害薬;XL-880(Exelixis)(EXEL-2880などとも呼ばれる)ならびに近縁のVEGF阻害薬;ZD-6474(AstraZeneca)(CAS登録番号443913-73-3、ザクティマ、及びAZD-6474などとも呼ばれる)ならびに近縁のアニリノキナゾリンVEGF阻害薬;及びZK-304709(Schering)(CDK阻害薬(インジルビン誘導体)、ZK-CDK、MTGI、及びマルチターゲット腫瘍増殖阻害薬などとも呼ばれる)ならびにインジルビン誘導体VEGF阻害薬を含む他の近縁のVEGF阻害薬(WO-00234717、WO-02074742、WO-02100401、WO-00244148、WO-02096888、WO-03029223、WO-02092079、及びWO-02094814において、具体的にはこれらならびに近縁のVEGF阻害薬、それらの構造及び特性、ならびにそれらを作製及び使用するための方法に関係する部分に記載される)。
【0079】
VEGF阻害薬は、阻害薬の性質に適した方法で、例えば、限定されるものではないが、必要に応じて適切なビヒクル及びベクターを含む、タンパク質、小分子、核酸などとして送達されてもよい。
【0080】
形質転換増殖因子-ベータ(TGF-β)は、タンパク質のファミリー、TGF-β1、TGB-β2、及びTGF-β3を表し、細胞増殖ならびに分化、胚ならびに骨の発生、細胞外マトリックスの形成、造血、免疫ならびに炎症反応の多面的調節因子である(Roberts and Sporn Handbook of Experimental Pharmacology(1990)95:419-58;Massague et al.Ann Rev Cell Biol(1990)6:597-646)。TGF-βは、最終的に細胞周期を調節する遺伝子の発現をもたらす細胞内シグナル伝達経路を開始させ、増殖応答を制御し、またはアウトサイド-イン細胞シグナル伝達、細胞接着、遊走、及び細胞間通信を仲介する細胞外マトリックスタンパク質に関連する。
【0081】
TGF-βは、その生理活性を、細胞内セリン-スレオニンキナーゼドメインを有するI型及びII型の単一膜貫通TGF-β受容体(受容体サブユニットとも称される)を含む受容体系を通して及ぼし、これが、転写調節因子のSmad ファミリーを通してシグナル伝達する。TGF-βのII型受容体の細胞外ドメインへの結合は、II型受容体(TGFβ-R2)によるI型受容体(TGFβ-R1)のリン酸化及び活性化を誘導する。
【0082】
TGFβ阻害薬は、天然TGF-β分子の生物学的機能を阻害する能力を有するTGFβ-R1受容体に特異的に結合する分子、例えば、デコイ受容体、抗体またはその誘導体、非ペプチド小分子などを指す。
【0083】
Wntタンパク質は、胚形成中に細胞間相互作用を調節する高度に保存された分泌シグナル伝達分子の1ファミリーを形成する。用語「Wnt」または「Wnt遺伝子産物」または「Wntタンパク質」または「Wntポリペプチド」は、互換的に使用され、天然配列Wntポリペプチド、Wntポリペプチド変異体、Wntポリペプチド断片及びキメラWntポリペプチドを包含する。これらのポリペプチドは、wnt作動薬であり、この用語はまた、当該技術分野において既知であるように、小分子、模倣体、例えば、ペプチド模倣体、作動薬抗体、及びwnt機能を刺激するタンパク質を含む。「天然配列」ポリペプチドは、その生成のために使用された方法に無関係に、天然に由来するWntポリペプチドと同じアミノ酸配列を有するポリペプチドである。このような天然配列ポリペプチドは、内因性ポリペプチドを産生する細胞から単離することができるか、または組換えもしくは合成手段によって生成することができる。したがって、天然配列ポリペプチドは、例えば、天然起源のヒトポリペプチド、ネズミポリペプチド、または任意の他の哺乳動物種からの、もしくは非哺乳動物種、例えば、ショウジョウバエ(Drosophila)、エレガンス線虫(カエノラブディティス・エレガンス、C.elegans)などからのポリペプチドのアミノ酸配列を有することができる。
【0084】
好適なWntポリペプチド(すなわち、Wntタンパク質)としては、ヒトWntポリペプチドが含まれるが、これに決して限定されない。本出願において注目したヒトWntタンパク質は、以下が含まれる(受け入れ番号は、関連するWntタンパク質をコードするmRNAについてのものである):Wnt-1(GenBank受け入れ番号NM_005430);Wnt-2(GenBank受け入れ番号NM_003391);Wnt-2B(Wnt-13)(GenBank受け入れ番号NM_004185(アイソフォーム1)、NM_024494.2(アイソフォーム2))、Wnt-3(RefSeq.:NM_030753)、Wnt3a(GenBank受け入れ番号NM_033131)、Wnt-4(GenBank受け入れ番号NM_030761)、Wnt-5A(GenBank受け入れ番号NM_003392)、Wnt-5B(GenBank受け入れ番号NM_032642)、Wnt-6(GenBank受け入れ番号NM_006522)、Wnt-7A(GenBank受け入れ番号NM_004625)、Wnt-7B(GenBank受け入れ番号NM_058238)、Wnt-8A(GenBank受け入れ番号NM_058244)、Wnt-8B(GenBank受け入れ番号NM_003393)、Wnt-9A(Wnt-14)(GenBank受け入れ番号NM_003395)、Wnt-9B(Wnt-15)(GenBank受け入れ番号NM_003396)、Wnt-10A(GenBank受け入れ番号NM_025216)、Wnt-10B(GenBank受け入れ番号NM_003394)、Wnt-11(GenBank受け入れ番号NM_004626)、Wnt-16(GenBank受け入れ番号NM_016087))。各メンバーは、このファイミリーと異なる程度の配列同一性を有するが、全てが、その間隔が高度に保存されている23~24個の保存されたシステイン残基を含有する、小さい(すなわち、39~46kD)のアシル化され、パルミトイル化された分泌タンパク質をコードする(McMahon,A P et al.,Trends Genet.1992;8:236-242;Miller,J R.Genome Biol.2002;3(1):3001.1-3001.15)。本発明で注目した他のWntポリペプチドとしては、飼育及び家畜動物、ならびに動物園、実験室またはペット動物、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、羊、ブタ、ヤギ、ウサギ、ラット、マウス、カエル、ゼブラフィッシュ、ショウジョウバエ、線虫などが含まれる任意の哺乳動物からの上記のオーソログを含む。
【0085】
用語「天然配列Wntポリペプチド」としては、ヒト及びネズミWntポリペプチドが含まれるが、これらに限定されない。ヒトWntタンパク質は、以下を含む:Wnt1、GenBankリファレンスNP005421.1;Wnt2、GenBankリファレンスNP003382.1(脳、視床、胎児及び成人の肺、ならびに胎盤中で発現される);Wnt2Bの2つのアイソフォーム、GenBankリファレンスNP004176.2及びNP078613.1。アイソフォーム1は、成人の心臓、脳、胎盤、肺、前立腺、精巣、卵巣、小腸及び大腸で発現される。成人の脳では、これは、主として尾状核、視床下核及び視床で見出される。また胎児の脳、肺及び腎臓でも検出される。アイソフォーム2は、胎児の脳、胎児の肺、胎児の腎臓、尾状核、精巣及び癌細胞株において発現される。Wnt3及びWnt3Aは、神経管の発生の形態形成中の細胞間シグナル伝達において異なった役割を果たし、それぞれGenBankリファレンスNP11 0380.1及びX56842(Swiss-Prot P56704)を有する。
【0086】
天然ヒトWnt3Aアミノ酸配列は、GenBankリファレンスNP_149122.1を有する。Wnt4は、GenBankリファレンスNP11 0388.2を有する。Wnt5A及びWnt5Bは、GenBankリファレンスNP003383.1及びAK013218を有する。Wnt6は、GenBankリファレンスNP006513.1を有し;Wnt7AはGenBankリファレンスNP004616.2を有する。Wnt7Bは、GenBankリファレンスNP478679.1を有する。Wnt8Aは、2つの代替え的な転写物、GenBankリファレンスNP114139.1及びNP490645.1を有する。Wnt8Bは、GenBankリファレンスNP003384.1を有する。Wnt10Aは、GenBankリファレンスNP079492.2を有する。Wnt10Bは、GenBankリファレンスNP003385.2を有する。Wnt11は、GenBankリファレンスNP004617.2を有する。Wnt14は、GenBankリファレンスNP003386.1を有する。Wnt15は、GenBankリファレンスNP003387.1を有する。Wnt16は、代替的なスプライシングによって生成された2つのアイソフォームWnt-16a及びWnt-16bを有し、GenBankリファレンスは、NP057171.2及びNP476509.1である。列記される全てのGenBank、SwissProt及び他のデータベース配列は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0087】
Wntタンパク質の有効用量は、供給源、純度、調製方法などに応じて変化してもよい。本発明の目的のために、骨格幹細胞による骨形成の増強のためには、注目したWntタンパク質は、ヒトWnt3及びWnt 5タンパク質を含む。Wntタンパク質が、Wnt3、Wnt3A、Wnt5A、Wnt5B、例えば、これらのタンパク質のヒトの同等物である場合、有効用量は、通常、少なくとも0.1μg/ml、少なくとも0.5μg/ml、少なくとも1μg/ml、少なくとも2.5μg/ml、少なくとも5μg/ml、少なくとも7.5μg/ml、少なくとも10μg/ml、少なくとも15μg/mlであり、少なくとも25μg/ml、少なくとも50μg/ml、または少なくとも100μg/mlであってもよい。
【0088】
Wnt作動薬は、Wntシグナル伝達経路からの産出の増加(すなわち、標的遺伝子発現の増加)をもたらす任意の分子(例えば、化学化合物;非コード核酸、例えば、非コードRNA;ポリペプチド;ポリペプチドをコードする核酸など)である。例えば、Wnt作動薬は、経路の能動的調節成分の機能を安定化し、その発現を向上させ、またはその機能を向上させることによって、もしくは経路の受動的調節成分を不安定にし、その発現を減少させ、またはその機能を阻害することによって機能することができる。したがって、Wnt作動薬は、経路の能動的調節成分(例えば、Wntタンパク質)、または経路の1つ以上の能動的調節成分をコードする核酸とすることができる。Wnt作動薬はまた、mRNAまたはタンパク質のレベルのいずれかで、経路の能動的調節成分を安定化する小分子または核酸とすることもできる。
【0089】
いくつかの実施形態において、Wnt作動薬は、β-カテニンを安定化することによって機能し、したがって、β-カテニンの核レベルを上昇させる。β-カテニンは、複数の異なる方法によって活性化することができる。Wntシグナル伝達経路の複数の異なる受動的調節成分は、β-カテニンの分解を促進することによって機能するために、Wnt作動薬は、経路の受動的調節成分の(mRNAまたはタンパク質のレベルにおいて機能する)小分子または核酸阻害薬(例えば、マイクロRNA、shRNAなど)とすることができる。例えば、いくつかの実施形態において、Wnt作動薬は、GSK-3βの阻害薬である。いくつかのこのような実施形態において、GSK-3βの阻害薬は、小分子キメラ化合物(例えば、TWS119、BIO、CHIR-99021、SB 216763、SB 415286、CHIR-98014など)である。
【0090】
TWS119:3-(6-(3-アミノフェニル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イルオキシ)フェノールは、Ding et. al,Proc Natl Acad Sci U S A.2003 Jun 24;100(13):7632-7に記載されている。BIO:6-ブロモ-3-[(3E)-1,3-ジヒドロ-3-(ヒドロキシイミノ)-2H-インドール-2-イルイデン]-1,3-ジヒドロ-(3Z)-2H-インドール-2-オンまたは(2’Z,3’E)-6-ブロモインジルビン-3’-オキシムは、Meijer et. al,Chem Biol.2003 Dec;10(12):1255-66に記載されている。CHIR-99021:6-[[2-[[4-(2,4-ジクロロフェニル)-5-(5-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-2-ピリミジニル]アミノ]エチル]アミノ]-3-ピリジンカルボニトリルは、Bennett et al.,J Biol Chem.2002 Aug 23;277(34):30998-1004に記載されている。SB 216763:3-(2,4-軸ロロフェニル)-4-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)-1H-ピロール-2,5-ジオンは、Cross et al.,J Neurochem.2001 Apr;77(1):94-102に記載されている。SB 415286:3-(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニルアミノ)-4-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2,5-ジオンは、Cross et al.,J Neurochem.2001 Apr;77(1):94-102に記載されている。CHIR-98014:N2-(2-(4-(2,4-ジクロロフェニル)-5-(1H-イミダゾール-1-イル)ピリミジン-2-イルアミノ)エチル)-5ニトロピリジン-2,6-ジアミンは、Ring et al.,Diabetes.2003 Mar;52(3):588-95に記載されている。各参考文献は、参照により本明細書に具体的に組み込まれる。
【0091】
Wnt作動薬の有効用量は、少なくとも0.1μM、少なくとも1μM、少なくとも2.5μM、少なくとも5μMとすることができ、通常、500μM、250μM以下、100μM以下、または50μM以下である。
【0092】
再生医療は、生物学的機能を改善または置き換えるための細胞、工学及び材料方法、ならびに好適な生化学及び物理化学因子の組み合わせの使用である。細胞は、三次元の組織形成を支援することができる人工的構造中に移植または「播種」されてもよい。これらの構造は、本明細書ではマトリックスまたはスキャフォールドと称し、細胞付着及び遊走を可能にし、細胞及び生化学因子を送達かつ保持し、生細胞栄養及び発現された産物の拡散を可能にする。高い多孔率及び適切な孔径は、細胞及び栄養の構造全体にわたる細胞播種及び拡散を容易にするために必要である。スキャフォールドが、外科的切除の必要なく周辺組織によって吸収され得るために、生分解性は多くの場合、1つの因子である。分解が発生する速度は、組織形成の速度と可能な限り一致させねばならず、これは、細胞がそれら自体の天然マトリックス構造をそれらの周囲に組み立てている間に、スキャフォールドは、体内の構造一体性を提供することができ、最終的にこれは、機械的負荷を引き受けることになる新たに形成された組織のネオティッシュを残したまま崩壊するであろう。
【0093】
多くの異なる材料(天然ならびに合成、生分解性ならびに永続性)が検討されており、例えば、ピュラマトリックス、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)及びポリカプロラクトン(PCL)、ならびにこれらの組み合わせである。スキャフォールドはまた、天然材料、例えばコラーゲン、フィブリン等、などのタンパク質;キトサンなどの多糖類材料;アルギン酸塩、ヒアルロン酸等、などのグリコサミノグリカン(GAG)から構築されてもよい。スキャフォールドの官能化基は、小分子(薬剤)の特異的組織への送達で有用であり得る。検討中のスキャフォールドの別の形態は、脱細胞化組織抽出物であり、これにより残った細胞残余物/細胞外マトリックスがスキャフォールドとして作用する。
【0094】
医薬用途のための系、すなわち、細胞及び/または因子を伴うスキャフォールドもしくはインプラントは、望まれる製剤に応じて、医薬的に許容できる、非毒性の希釈剤の担体を含むことができ、これらは、一般的に、動物またはヒトへの投与のための医薬組成物を製剤化するビヒクルと定義される。希釈剤は、配合物の生理活性に影響を及ぼさないように選択される。このような希釈剤の例は、蒸留水、緩衝用水、生理食塩水、PBS、リンガー溶液、デキストロース溶液、及びハンクス溶液である。加えて、NR医薬組成物または製剤は、他の担体、アジュバント、または非毒性、非治療的、非免疫原性安定剤、賦形剤などを含むことができる。組成物はまた、pH調節及び緩衝剤、毒性調節剤、湿潤剤並びに洗浄剤などの生理的条件に接近させるための追加の物質を含むことができる。
【0095】
組成物はまた、例えば、抗酸化剤などの様々な安定剤のいずれかを含むことができる。医薬組成物がポリペプチドを含むとき、ポリペプチドは、インビボでのポリペプチドの安定性を向上させるか、ないしは別の方法でその薬理学的特性を向上させる(例えば、ポリペプチドの半減期を増大させる、その毒性を低減する、溶解度または取り込みを向上させる)様々な周知の化合物と複合体を形成することができる。このような修飾または錯化剤としては、硫酸塩、グルコン酸塩、クエン酸塩及びリン酸塩が含まれる。組成物のポリペプチドはまた、それらのインビボ属性を向上させる分子と複合体を形成することができる。このような分子としては、例えば、炭水化物、ポリアミン、アミノ酸、他のペプチド、イオン(例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン)、及び脂質が含まれる。
【0096】
様々な種類の投与に好適である製剤に関するさらなる手引きは、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mace Publishing Company,Philadelphia,Pa.,17th ed.(1985)で見出すことができる。薬物送達のための方法に関する簡潔な説明については、Langer,Science 249:1527-1533(1990)を参照されたい。
【0097】
医薬生成物、すなわち、因子及び/または細胞の配合物は、予防的及び/または治療的処置のために投与することができる。活性成分の毒性及び治療有効性は、細胞培養及び/または実験動物における標準医薬的手順に従って決定することができ、これらとしては、例えば、LD50(集団の50%に対する致死量)及びED50(集団の50%において治療的に有効な用量)が含まれる。毒性と治療効果との間の用量比は治療指数であり、これは比LD50/ED50として表すことができる。大きな治療指数を示す化合物が好ましい。
【0098】
細胞培養及び/または動物試験から得られるデータは、ヒトに対する投与量の範囲を策定することで使用することができる。活性成分の投与量は、通常、低毒性でED50を含む循環濃度の範囲内で線を引く。投与量は、使用される剤形及び利用される投与の経路に応じてこの範囲内で変化することができる。
【0099】
医薬組成物を製剤化するために用いられる成分は、高純度のものが好ましく、潜在的に有害な汚染物質を実質的に含まない(例えば、少なくとも国際食品(NF)グレード、一般的には、少なくとも分析グレード、及びより典型的には少なくとも医薬品グレード)。さらには、インビボでの使用を意図する組成物は、通常は無菌である。所定の化合物が使用の前に合成されねばならない限り、得られた生成物は、通常、合成または精製プロセス中に存在する可能性があるいかなる潜在的に毒性の薬剤、具体的には、あらゆるエンドトキシンも実質的に含まない。非経口投与用の組成物も無菌であり、実質的に等張であり、GMP条件下で作製される。
【0100】
特定の患者に与えられる治療用組成物の有効量は、様々な因子に応じるであろうし、これらの因子のいくつかは患者間で異なるであろう。有能な臨床医であれば、要求に応じて疾患状態の進行を停止または逆転させるように患者に投与するために、治療薬の有効量を決定することができるであろう。LD50動物データ、及び薬剤に対して利用可能な他の情報を利用することによって、臨床医は、投与の経路に応じて個体のための最大安全用量を決定することが可能である。例えば、静脈内投与される用量は、治療用組成物が投与される体液がより多くあることを考えれば、髄腔内投与される用量よりも多い。同様に、体内から迅速に除去される組成物は、治療濃度を維持するために、より高い用量で、または反復投与で投与されてもよい。通常の技術を利用することによって、有能な臨床医であれば、日常的な臨床試験の過程において特定に治療薬の投与量を最適化することができるであろう。
【0101】
本方法で治療され得る哺乳動物種としては、イヌ科ならびにネコ科、ウマ科、ウシ科、ヒツジ科など、及び霊長類、特にヒトが含まれる。動物モデル、特に小型哺乳動物、例えば、ネズミ科、ウサギ目などが、実験的検討に使用されてもよい。
【0102】
より具体的には、本発明は、骨または軟骨の補充療法を必要としているヒト患者などの対象の治療での使用を見出す。このような対象の例は、骨関節炎、遺伝子欠損、疾患などからの軟骨の損失に関連する病態に冒されている対象であるだろう。このような病態によって特徴付けられる疾患及び障害を有する患者は、出願係属中の発明の治療プロトコールによって大いに恩恵を受けるであろう。
【0103】
本発明の医薬組成物の有効量は、インプラントの部位での軟骨細胞、骨格細胞、軟骨または骨質量の数の増加をもたらすと思われる、及び/またはインビボでの疾患進行の速度における測定可能な減少をもたらすと思われる量である。例えば、医薬組成物の有効量は、骨または軟骨質量を、適切な対照(この対照は、典型的には、この組成物で処置されていない対象である)と比べて、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%まで、好ましくは約20%~約50%、さらにより好ましくは50%超まで(例えば、約50%~約100%)増加させるであろう。
【0104】
本発明の方法はまた、前述した疾患、障害及び病態に関連する症状からの緩和を提供するために、例えば、当該技術分野において既に知られている療法との併用療法における使用も見出す。本発明の医薬組成物とこれらの他の薬剤との併用使用は、個々の薬剤に対して必要とされる投与量がより低く、異なる薬剤の効果が相補的であるという利点を有し得る。
【0105】
いくつかの実施形態において、脂肪間質細胞、好ましくは脂肪由来幹細胞の有効量が、骨格または軟骨組織の再生のために、インプラントまたはスキャフォールド内に提供される。有効細胞用量は、集団の純度に依存し得る。いくつかの実施形態において、有効用量は、少なくとも約102 、約103 、約104 、約105 、約106 、約107 、約108 、約109 個またはそれ以上の細胞の脂肪由来幹細胞の用量を送達し、この幹細胞は、約1%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%またはそれ以上の濃度で細胞集団中に存在し得る。
【0106】
本発明は、脂肪組織由来間質細胞を含む非骨格細胞の分化のための方法及び組成物を提供する。本発明の方法によって生成される細胞は、ヒトの疾患ならびに外傷性損傷修復の治療のための研究、移植、及び再生医療製品の開発用に完全分化かつ機能的な細胞の供給源を提供する上で有用である。
【0107】
「軟骨細胞(chondrocytes)(軟骨の細胞(cartilage cell))」とは、コラーゲンII型、硫酸コンドロイチン、硫酸ケラチンが含まれるがこれらに限定されない軟骨細胞の特徴的な生化学マーカー及び培養中の丸みを帯びた形態が含まれるがこれに限定されない平滑筋の特徴的な形態的マーカーを発現することができ、インビトロでの軟骨の血流力学的特性を備えた組織またはマトリックスの生成が含まれるがこれらに限定されないコラーゲンII型を分泌することができる細胞を指す。
【0108】
本発明の方法
対象の発明は、一部分において、細胞を初期化し、所望の骨格系統細胞への分化に方向付けする方法を目的とする。特定の実施形態は、骨格幹細胞から軟骨細胞への分化にそらすことと、脂肪組織間質細胞、または脂肪組織由来幹細胞が含まれるがこれらに限定されない脂肪組織細胞の骨格幹細胞への初期化を含む。いくつかの実施形態において、これら2つの方法は組み合わされ、軟骨の供給源を提供する。いくつかの実施形態において、非骨格細胞集団が、初期化及び/または軟骨形成因子に含まれる。
【0109】
いくつかの実施形態において、以下の記述は、初期化、すなわち、非骨格体細胞をBMP2またはその変異体もしくは模倣体の有効量と接触させることによって、非骨格細胞をSSCに変換することに焦点を当てる。他の実施形態において、記述は、VEGF阻害薬及びTGFβ阻害薬の一方または双方の有効量と接触させることによって、SSCを軟骨へと分化するようにそらす方法、ならびに組織修復におけるそれらの使用を含む。本発明の方法によって生成することができる骨格細胞の他の例としては、骨格幹細胞(SSC)前骨軟骨及び間質前駆細胞(プレ-BCSP)、BCSP、委託軟骨前駆細胞(CCP)、骨前駆細胞、B細胞リンパ球間質前駆細胞(BLSP)、6C3間質、肝白血病因子発現間質細胞(HEC)、及びこれらの子孫が含まれる。
【0110】
ポリペプチドとして提供される場合、軟骨形成及び初期化を誘導する因子は、当該技術分野において既知の従来法を用いて、インビトロ合成によって調製することができる。様々な市販の合成装置、例えば、Applied Biosystems,Inc.、Beckmanなどによる自動合成装置が利用可能である。合成装置を使用することによって、天然起源のアミノ酸は、非天然のアミノ酸で置き換えることができる。特定の配列及び調製の方法は、便宜性、経済性、必要な純度などによって決定されるであろう。無細胞系においてポリペプチドを調製する他の方法としては、例えば、米国特許出願第61/271,000で教示される方法が含まれ、これは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0111】
ポリペプチドはまた、組換え合成の従来の方法に従って単離かつ精製することができる。発現宿主から溶解物を調製することができ、溶解物は、HPLC、サイズ排除クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、親和性クロマトグラフィー、または他の精製技術を用いて精製される。通例では、使用される組成物は、生成物の調製及びその精製の方法に関連する汚染物質に関して、少なくとも20重量%、より一般的には少なくとも約75重量%、好ましくは少なくとも約95重量%の所望の生成物を含み、治療目的では、通常、少なくとも約99.5重量%を含む。通常、このパーセントは、総タンパク質に基づくであろう。ポリペプチドは、直接的のみならず、異種ポリペプチドとの融合ポリペプチドとしても、例えば成熟タンパク質またはポリペプチドのN末端において特異的切断部位を有するポリペプチドとしても組換え技術により生成されてもよい。
【0112】
他の実施形態において、初期化するまたは軟骨形成を誘導するための因子は、ポリペプチドをコードする核酸として提供される。このような核酸を対象の細胞に提供するためのベクターは、通常、発現を駆動させるための、すなわち、核酸の転写活性を駆動させるための好適なプロモーターを含むであろう。これは、遍在的に作用するプロモーター、例えば、CMV-β-アクチンプロモーター、または誘導性プロモーター、例えば、特定の細胞集団で活性であるプロモーターもしくはテトラサイクリンなどの薬剤の存在に対して応答するプロモーターが含まれ得る。転写活性化とは、転写が、標的細胞中の基礎レベル以上に少なくとも約10倍まで、少なくとも約100倍まで、より一般的には少なくとも約1000倍まで増加されるであろうことを意図する。核酸は、当該技術分野において既知であるように、直接的にまたはベクター中に、例えばウイルス中に、例えば、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスなどに提供されてもよい。
【0113】
複数の因子が提供されるとき、例えばBMP2の有効用量がVEGF阻害薬、wntポリペプチドなどの有効用量と組み合わされるとき、これらの因子は、個々に、または単一組成物として、すなわち、因子のあらかじめ混合された組成物として提供されてもよい。これら因子は、対照の細胞に同時に、または異なる時間に逐次的に添加されてもよい。これらの因子は、同じモル比でまたは異なるモル比で提供されてもよい。これらの因子は、治療過程において1回または複数回提供されてもよい。例えば、細胞及び因子を含むインプラントが、個体に提供され、追加の因子及び/または細胞が治療過程中に提供されてもよい。
【0114】
対象の前駆細胞及び/または因子の組み合わせは、細胞溶液中でのインビボでの使用に提供されてもよく、この細胞溶液は、骨または軟骨への分化を可能にする骨前駆細胞または因子を含有する水和溶液、懸濁液、または他の流体である。
【0115】
骨または軟骨移植片装置及び組成物は、組成、生活性、多孔性、孔径、タンパク質結合能力、分解性、または荷重負荷の及び非荷重負荷の軟骨もしくは骨移植用途の両方で使用するための強度のうちの1つ以上に関して最適化されるように提供されてもよい。好ましくは、移植片材料は、これらが単一の移植片材料の適用によって生じ得る骨または軟骨治癒に関与する1つ以上のプロセス:軟骨形成、骨形成、骨誘導、及び骨伝導化を促進するように配合される。軟骨形成は、新しい軟骨構造の形成である。骨形成は、移植片中に含まれる細胞による新しい骨の形成である。骨誘導は、移植片中に含まれる分子(例えば、骨形態形成タンパク質及びTGF-ベータ)が患者のまたは他の骨前駆細胞を、骨を形成することできる細胞に変換する化学プロセスである。骨伝導化は、グラフトのマトリックスが、受容者の骨形成細胞がそのうえで新しい骨を形成することができるスキャフォールドを形成することによる物理的効果である。
【0116】
本発明の因子及び/または細胞の含有物は、既存の構造内及びその周囲の軟骨もしくは骨材料の置き換え及び充填を容易にするために使用することができる。いくつかの実施形態において、細胞は初めに軟骨細胞を生成し、その後細胞外マトリックスの付着及び骨形成を行う。骨移植片は、移植された前駆細胞及び局所的な骨細胞に骨組みを提供し、骨形成細胞に分化させまた新しい骨を付着させるリン酸カルシウム系セラミックスを含む骨伝導化スキャフォールドを提供することができる。リン酸カルシウム系セラミックスの使用は、セラミックのゆっくりとした分解を提供することができ、その結果、骨形成のためのカルシウム及びリン酸塩の局所的供給源をもたらす。したがって、新しい骨は、欠損部位周辺の宿主骨からのカルシウム及びリン酸塩の損失なく形成することができる。リン酸カルシウム系セラミックスは、骨組織の鉱物成分のものと科学的に匹敵する。このようなリン酸カルシウム系セラミックスの例としては、リン酸カルシウム化合物及び塩、ならびにこれらの組み合わせが含まれる。
【0117】
いくつかの実施形態において、細胞及び/または因子は、注入可能なペーストとして調製される。細胞懸濁液を1つ以上の粉末状前駆体細胞に添加し、注入可能な水和型ペーストを形成することができる。このペーストは、インプラント部位に注入することが可能である。いくつかの実施形態において、このペーストは移植前に調製することができ及び/または必要になるまでペーストを周囲温度以下で注射器内に保存することができる。いくつかの実施形態において、注入による複合材の適用は、骨片を接合し、また定位置に保持するために、または例えば、関節内の損傷した軟骨の置換のために人工股関節の接着を改善するためなどに使用することができる骨セメントに似ている可能性がある。非切開手術設定での移植も実施することができる。
【0118】
他の実施形態において、細胞及び/または因子は、成形可能なパテとして調製される。細胞懸濁液を、1つ以上の粉末状鉱物に添加し、パテ様水和型移植片を形成することができる。水和型移植片パテは、任意のインプラントの形状に近づくように調製かつ成形することができる。次いでパテは、軟骨、骨、歯槽または他の部位の空隙を埋める場所に押し込めることができる。いくつかの実施形態において、移植片パテは、癒合不全の骨において、または埋められる破砕部、穴または空隙が大きく、隙間を埋めるため及びその形状を保持するための両方でインプラント材料におけるある程度の機械的一体性が必要である他の状況において、欠損を修復するために使用することができる。
【0119】
本発明は、セメント、因子、ゲルなどと組み合わせて提供されてもよい、本発明の細胞及び/または因子を含む組成物をこの部位に適用することを含む、ヒトまたは他の動物における軟骨もしくは骨病変、または損傷を治療する方法を提供する。本明細書で言及される病変部とは、生理学的または美容的目的に不適切である、骨格(軟骨を含める)、組織に関与するあらゆる病態を含む。このような欠損は、先天的であるもの、疾患もしくは外傷から生じた結果、及び手術もしくは他の医療処置の結果として生じたものが含まれる。このような欠損は、例えば、損傷から生じた欠損、手術の過程でもたらされた欠損、骨関節炎、骨粗鬆症、感染、悪性腫瘍、発育異常、及び単純骨折、複雑骨折、横骨折、病的骨折、剥離骨折、若木骨折ならびに粉砕骨折などの骨折が含まれる。いくつかの実施形態において、骨欠損は、骨前駆細胞組成物で埋める必要がある骨の空隙である。
【0120】
本発明の細胞はまた、組織再生に関与するそれらの能力を向上させるために、または治療用遺伝子を投与の部位に送達させるために、遺伝子改変することができる。分化した細胞型において汎特異的または特異的に活性のいずれかであるプロモーターに作動可能に連結された、所望の遺伝子に関する既知のコード配列を用いてベクターが設計される。BMP-2またはBMP-4などの骨形態形成タンパク質を発現するように遺伝子改変される細胞が特に興味深い。WO99/39724を参照されたい。これらのまたは他の増殖因子の投与部位での産生は、投与された細胞の有益な効果を向上させるか、または治療部位に隣接する宿主細胞の増殖もしくは活性を増加させることができる。
【0121】
インビトロ変換法及びインビトロで変換された細胞の使用
いくつかの実施形態において、細胞、例えば、脂肪組織幹細胞、造血幹細胞、誘導多能性幹細胞など、または本明細書で定義された骨格幹細胞及び前駆細胞は、初期化及び/または軟骨形成因子とインビトロで接触される。対象の細胞は、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、羊、ブタ、ヤギ、ウサギ、ラット、マウスなどのヒト、霊長類、飼育ならびに家畜動物、及び動物園、実験室またはペット動物が含まれる任意の哺乳動物からのものであり得る。これらは、確立された細胞株であってもよく、またはこれらは初代細胞であってもよく、この「初代細胞」、「初代細胞株」、及び「初代培養」は、本明細書では互換的に使用され、対象に由来し、限られた継代数の間にインビトロで増殖することを可能にした細胞及び細胞培養を指す。
【0122】
対象の細胞は、新の採取されたまたは凍結された細胞から単離することができ、これは、新生児、幼体、または成体からのものであってもよく、皮膚、筋肉、骨髄、末梢血、臍帯血、脾臓、肝臓、すい臓、肺、腸、胃、脂肪組織、及び他の分化組織を含む組織からのものであってもよい。この組織は、生ドナーから生検またはアフェレーシスによって採取してもよく、または死亡したもしくは瀕死のドナーから死後48時間以内に採取してもよく、あるいは新たに凍結された組織、死後約12時間以内に凍結され、約-20℃以下で、通常はおよそ液体窒素温度(-190℃)で無期限に維持された組織であってもよい。細胞の組織からの単離については、適切な溶液が、分散または懸濁のために使用されてもよい。このような溶液は、一般的には、低濃度、一般的には5~25mMでの許容できる緩衝液とともに、ウシ胎児血清または他の天然起源の因子で適宜補充された、平衡塩類溶液、例えば、通常生理食塩溶液、PBS、ハンクス平衡塩類溶液などである。使いやすい緩衝液としては、HEPES、リン酸塩緩衝液、乳酸塩緩衝液などが含まれる。
【0123】
本明細書で定義された因子、すなわち、初期化を促進し、及び/または軟骨細胞などの増殖ならびに/もしくは分化を促進する因子でインビトロにて接触された細胞は、試薬(複数可)の存在下で、約30分間~約24時間、例えば、1時間、1.5時間、2時間、2.5時間、3時間、3.5時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、12時間、16時間、18時間、20時間、または約30分間~約24時間のいずれか他の時間でインキュベートすることができ、これは、およそ毎日~およそ4日毎、例えば、1.5日毎、2日毎、3日毎の頻度で、またはおよそ毎日~およそ4日毎のいずれか他の頻度で繰り返されてもよい。薬剤(複数可)は、対象の細胞に1回以上、例えば、1回、2回、3回、または3回を超えて提供されてもよく、細胞は、各接触事象後のある程度の時間にわたって、例えば16~24時間薬剤(複数可)とインキュベートさせ、その後、培地が新しい培地と交換され、細胞はさらに培養される。
【0124】
細胞を因子と接触させた後に、接触させた細胞は、本明細書で定義された骨格幹細胞、軟骨細胞、または前駆細胞集団の生存及び分化を促進するように培養することができる。細胞を培養するための方法及び試薬は、当該技術分野において既知であり、これらのいずれかは、細胞を増殖させかつ単離するために本発明で使用されてもよい。例えば、細胞(因子と接触前または接触後のいずれかの)は、マトリゲルまたは当該技術分野で既知の他の基材上に播種することができる。細胞は、因子で補充した培地中で培養されてもよい。あるいは、接触された細胞は、液体窒素温度で凍結され、長期にわたって保存され、解凍して使用されてもよい。凍結される場合、細胞は、通常、10%のDMSO、50%のFCS、40%のRPMI 1640培地中で保存されるであろう。解凍されると、細胞は、増殖因子及び/または骨格生存ならびに分化に関連する間質細胞の使用によって増殖することができる。
【0125】
上記インビトロ法によって生成された誘導骨格または軟骨形成細胞は、疾患を治療するために細胞補充または細胞移植療法で使用することができる。具体的には、細胞は、骨格または軟骨成分での広範囲にわたる疾患または障害に冒されている対象に移入することができる。
【0126】
場合によっては、注目された細胞または細胞のサブ集団は、対象に移入する前に、細胞培養の残部から精製または単離されてもよい。言い換えると、細胞または細胞のサブ集団を富化するために、すなわち、富化された細胞の集団または細胞のサブ集団を提供するために、1つ以上のステップが実行されてもよい。場合によっては、骨格/軟骨形成系統の細胞のマーカーに、または骨格系統の細胞のサブ集団のマーカーに特異的な1つ以上の抗体が、細胞集団とともにインキュベートされ、これらに結合した細胞が単離される。他の場合では、細胞または細胞のサブ集団は、特異的プロモーターの制御下にあるレポーター遺伝子、例えば、EGFP、dsRED、laczなどであるマーカーを発現し、次いで、これが細胞またはそれらのサブ集団を精製または単離するために使用される。
【0127】
マーカーとは、骨格/軟骨形成細胞になるように初期化されている細胞を含む培養物において、マーカーが、骨格/軟骨形成細胞を発生することになる、発生している、及び/または発生した培養物の細胞のみによって発現されることを意味する。指定された発現レベルが、細胞上のまたは細胞中のマーカータンパク質の検出可能な量を反映することを当業者であれば理解されるであろう。染色に対して陰性である細胞(マーカーに特異的な試薬の結合のレベルは、アイソタイプ適合対照とは、検出できるほど異なっていない)であっても、なお少量のマーカーを発現することができる。そして、特定のマーカーに対して細胞が「陽性」または「陰性」と呼ばれることは当該技術分野において普通のことであるが、実際の発現レベルは、定量的形質である。細胞表面上の分子の数は、いくつかのログによって変化することができ、さらになお「陽性」として特徴付けられる。
【0128】
注目した細胞、すなわち、最適なマーカーを発現する細胞は、富化されることができ、すなわち、当該技術分野において既知の多くの方法によって、細胞集団の残部から分離される。例えば、フローサイトメトリー、例えば活性化セルソーティング(FACS)は、マーカーの固有の蛍光、または特異的蛍光試薬、例えばフルオロフォア結合抗体へのマーカーの結合、ならびに細胞サイズ及び光散乱などの他のパラメータに基づいて細胞集団を分離するために使用されてもよい。言い換えると、細胞の選択は、フローサイトメトリーで達成することができる。染色の絶対レベルは、特定の蛍光色素及び試薬調製物で異なる場合があるが、データは対照に対して正規化することができる。分布を対照に対して正規化するために、各細胞は、染色の特定の強度を有するデータ点として記録される。これらのデータ点は、ログスケールに従って表示することができ、この測定単位は、任意の染色強度である。一例において、試料中で最も明るく染色された細胞は、未染色の細胞よりも4ログだけ多いとすることができる。この方法で表示されるとき、染色強度の最も高いログ値と一致する細胞は明るく、一方最低強度のものが陰性であることが明らかである。「低い」が陽性染色された細胞は、アイソタイプ適合対照の明るさよりも高い染色のレベルを有するが、集団中に一般的に見られる最も明るく染色された細胞ほど強くない。代替え的な対照は、マーカーの定義された密度をその表面に有する基材、例えば、強度に対する陽性対照を提供する組み立てられたビーズまたは細胞株を利用してもよい。
【0129】
分離の他の方法、すなわち、マーカーに基づいて、細胞の選択をそれによって達成することができる方法としては、例えば、次期活性化セルソーティング(MACS)、イムノパニング(immunopanning)、及びレーザーキャプチャーマイクロダイセクション(laser capture microdissection)が含まれる。
【0130】
細胞集団の富化は、細胞を本発明の因子と接触させた約3日後以降、例えば、体細胞を因子と接触させた3日後、4日後、5日後、6日後、7日後、10日後、14日後、または21日後に実行することができる。1つ以上のマーカーの発現に対して選択することによって富化される集団は、通常、少なくとも約80%の選択された表現型の細胞、より一般的には、少なくとも90%の、おそらくは95%以上の選択された表現型の細胞を有するであろう。
【0131】
上述された移植法に加えて、組織から単離された、またはインビトロで上述された方法によって誘導された細胞は、基礎研究または薬剤発見ツールとして、例えば、遺伝性疾患の表現型を評価するために(例えば疾患の病院をより深く理解するために)、治療的処置のための標的タンパク質を特定するために、疾患調節活性を有する候補薬剤を特定するために(例えば、対象を治療する上で有効であると思われる薬剤を特定するために)使用されてもよい。例えば、候補薬剤は、対象の非骨格細胞に由来するiSSC、または本明細書に記載される骨格及び軟骨形成前駆細胞のいずれかを含む細胞培養に添加され、候補薬剤の効果を、本明細書及び当該技術分野において記述されている方法により、生存、骨または軟骨を形成する能力などの出力パラメータを監視することによって評価されてもよい。
【0132】
パラメータは、細胞の定量可能な成分であり、特に、望ましくは高い処理システムで正確に測定することができる成分である。パラメータは、細胞表面決定子、受容体、タンパク質もしくはそれらの構造変化物または翻訳後修飾物、脂質、炭水化物、有機もしくは無機分子、核酸、例えばmRNA、DNAなど、あるいはこのような細胞成分に由来する部分、またはこれらの組み合わせが含まれる任意の細胞成分または細胞産物とすることができる。大部分のパラメータは定量的な読み出しを提供するであろうが、ある場合には、半定量的または定性的結果も許容可能であろう。読み出しは、単一の決定値を含んでもよく、または平均値、中央値、または分散値などを含んでもよい。特徴的には、パラメータ読み出し値の範囲は、各パラメータについて非常に多数の同じアッセイから得られるであろう。変動が予想され、試験パラメータのセットのそれぞれについての値の範囲は、単一値を提供するために用いられる慣用統計的手法とともに標準統計的手法を用いて得られるであろう。
【0133】
スクリーニング用に注目した候補薬剤としては、非常に多くの化学部類で、主として有機分子を包含する既知及び無知の化合物が含まれ、これらは、有機金属分子、無機分子、遺伝子配列などを含んでもよい。本発明の重要な態様は、毒性試験などを含めて候補薬剤を評価することである。
【0134】
候補薬剤は、構造的相互作用、特に水素結合に必要な官能基を含む有機分子を含み、典型的には、少なくともアミン、カルボニル、ヒドロキシルまたはカルボキシル基、頻繁には化学官能基の少なくとも2つを含む。候補薬剤は、多くの場合、上記の官能基の1つ以上で置換された環状炭素または複素環式構造及び/または芳香族もしくは多環芳香族構造を含む。候補薬剤はまた、ペプチド、ポリヌクレオチド、糖類、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、これらの誘導体、構造類似体または組み合わせが含まれる生体分子の中で見られる。薬学的に活性な薬剤、ホルモンまたはホルモン拮抗作用薬なども含まれる。本明細書に好適な例示的な医薬品は、“The Pharmacological Basis of Therapeutics,”Goodman and Gilman,McGraw-Hill,New York,N.Y.,(1996),Ninth editionに記載されているものである。
【0135】
候補薬剤を含める化合物は、合成または天然化合物のライブラリーを含む多種多様な供給源から得られる。例えば、非常に多くの手段が、生体分子を含める多種多様な有機化合物のランダムまたは指向性合成に利用可能であり、例えば、ランダム化オリゴヌクレオチド及びオリゴペプチドの発現である。あるいは、細菌、真菌、植物及び動物抽出物の形態の天然化合物のライブラリーが、利用可能または容易に生成される。さらに、天然のまたは合成的に生成されたライブラリー及び化合物は、従来の化学的、物理的及び生化学的手段を通して容易に修飾され、コンビナトリアルライブラリー(combinatorial libraries)を生成するために使用することができる。既知の薬理学的物質は、例えばアシル化、アルキル化、エステル化、アミド化などの、指向性またはランダム化学修飾を受けて、構造類似体を生成してもよい。
【0136】
候補薬剤は、この薬剤を1つまたは複数の細胞試料に添加することによって、通常この薬剤を欠如する細胞と併せて、生理活性についてスクリーニングされる。薬剤に応答するパラメータの変化が測定され、その結果が、例えば、薬剤の存在下及び不在下で、他の薬剤から得られる等の基準培養物と比較することによって評価される。
【0137】
これらの薬剤は、好都合に溶液中に添加されるか、細胞培養の培地に対して容易に可溶型となる。これらの薬剤は、フロースルーシステムに、断続的なまたは連続的な流れとして添加されてもよく、あるいは、化合物のボーラスを、どちらかといえば静的溶液に単独でまたは増加的に添加する。フロースルーシステムにおいては、2つの流体が使用され、その一方は生理的に中性の溶液であり、他方は試験化合物が添加された同じ溶液である。第1の流体を細胞の上を通過させ、続いて第2の流体を通過させる。単一の溶液の方法においては、試験化合物のボーラスが、細胞を取り囲む培地の容量に添加される。培養基の化合物の全体的な濃度は、ボーラスの添加によって、またはフロースルー法においては2つの溶液間でそれほど大きく変化するべきではない。
【0138】
複数のアッセイは、様々な濃度における反応差を得るために、異なる薬剤濃度で並行して行われてもよい。当該技術分野において既知であるように、薬剤の有効濃度を決定することは、通常、1:10の、または他のログスケールの希釈から得られた濃度の範囲を使用する。濃度は、必要に応じて、第2の段階希釈によってさらに精錬されてもよい。通常、これらの濃度のうちの1つが、すなわち、ゼロ濃度または薬剤の検出のレベルよりも低い濃度で、または表現型における検出可能な変化を与えることがない薬剤の濃度でまたはそれよりも低い濃度で、陰性対照として役立つ。
【0139】
本明細書に記載される方法はまた、骨格または軟骨形成系統の細胞、例えば、軟骨細胞、骨芽細胞、またはそれらの前駆細胞への細胞変換を調節することでの活性について候補薬剤をスクリーニングするための有用なシステムを提供する。生理活性薬剤についてのスクリーニングアッセイにおいて、細胞、通常、細胞の培養物は、当該技術分野において既知であるように、細胞初期化もしくは分化系、または不完全な細胞初期化もしくは分化系の存在下で注目した候補薬剤と接触され、候補薬剤の効果が、当該技術分野において既知であるように、所望の細胞型に対して特異的な遺伝子の発現のレベル、または所望の細胞型と同様に機能するように誘導される細胞の能力などの出力パラメータを監視することによって評価される。
【0140】
骨/軟骨形成/間質前駆細胞の単離
本発明の対象の骨前駆細胞は、記載されたような特性を有する細胞を富化する技術によって、細胞の複合混合物から分離される。本発明の前駆細胞は、
図2Gに記述されるような系統に特徴付けられている。初期特性化がマウス細胞で行われたが、ヒト細胞が、マーカーの機能的ホモログ、例えば、CD200、6C3、PDPN、CD105、CD90、CD45、Tie2及びα
V インテグリンで特性化されてもよい。このような骨前駆細胞の分離ならびに特性化のために方法及び組成物が提供される。これらの細胞は、これらの特異的細胞表面マーカーの発現によって、他の細胞から分離することができる。
【0141】
細胞の組織からの分離については、適切な溶液が分散または懸濁のために用いられてもよい。このような溶液は、一般的には、低濃度、一般的には5~25mMでの許容できる緩衝液とともに、ウシ胎児血清または他の天然起源の因子で適宜補充された、平衡塩類溶液、例えば、通常生理食塩溶液、PBS、ハンクス平衡塩類溶液などであるだろう。使いやすい緩衝液としては、HEPES、リン酸塩緩衝液、乳酸塩緩衝液などが含まれる。組織は、酵素的及び/または機械的に解離されてもよい。いくつかの実施形態において、骨組織は、穏やかなプロテアーゼ、例えばディスパーゼなどで、細胞を解離させるために十分な時間にわたって処理され、次いで、仇やカニ機械的に解離される。
【0142】
初期分離は、湿式分級法(elutriation)、フィコール・ハイパーク法(Ficoll-Hypaque)または前方並びに鈍角散乱のパラメータを使用するフローサイトメトリーが含まれる当該技術分野において既知の様々な方法によって細胞を選択することができる。
【0143】
対象細胞集団の分離は、次いで、親和性分離を用いて、実質的に純粋な集団を提供するであろう。親和性分離に関する技術としては、抗体被覆磁気ビーズを用いる磁気分離、親和性クロマトグラッフィー、モノクローナル抗体に結合されるか、モノクローナル抗体と併せて使用される細胞傷害性剤、例えば、補体及びサイトトキシン、及び個体マトリックス、例えばプレートに取り付けられた抗体による「パンニング」、または他の便利な技術が含まれ得る。正確な分離を提供する技術としては、蛍光活性化セルソーターが含まれ、これは、例えば複数のカラーチャネル、低角度ならびに鈍角光散乱検出チャネル、インピーダンスチャネルなどの様々な洗練の段階を有することができる。細胞は、死細胞に関連する染色剤(ヨウ化プロピジウム、7-AAD)を使用することによって、死細胞に対して選択されてもよい。
【0144】
親和性試薬は、前述した細胞表面分子に対して特異的な受容体またはリガンドであることができる。特に関心があることは、抗体の親和性試薬として使用である。抗体の調製及びそれらの特異的結合メンバーとして使用するための好適性の詳細は、当業者には周知である。選択される細胞の特定の集団に応じて、CD105及びCD90に対する特異性を有する抗体が、細胞の出発集団と接触される。任意に、CD45、Tie2及びαV インテグリンに特異的な試薬も含まれる。
【0145】
当該技術分野において既知であるように、抗体は、関連する種に対して特異性を有するように選択されることになり、すなわち、ヒトマーカーに特異的な抗体が、ヒト細胞の選択用に使用され、マウスマーカーに特異的な抗体が、マウス細胞の選択において使用されるなどである。
【0146】
好都合には、これらの抗体は、分離で使用するために標識と結合される。標識としては、特定の細胞型の分離の容易さを提供するために、直接分離を可能にする磁気ビーズ、支持体に結合されたアビジンまたはストレプトアビジンから除去され得るビオチン、蛍光活性化セルソーターで使用することができる蛍光色素などが含まれる。用いられる蛍光色素としては、フィコビリタンパク質、例えば、フィコエリスリン及びアロフィコシアニン、フルオロセイン及びテキサスレッドが含まれる。頻繁に、各抗体は、異なる蛍光色素で標識付けされ、各マーカーについての独立した選別を可能にする。
【0147】
これらの抗体は、細胞の懸濁液に添加され、利用可能な細胞表面抗原に結合するために十分な時間にわたってインキュベートされる。インキュベーションは、通常、少なくとも約5分、通常約30分未満であるだろう。反応混合物中に十分な濃度の抗体を有することが望ましく、これにより、分離の効率は抗体の欠乏に制限されない。適切な濃度は、滴定によって決定される。細胞がその中で分離される培地は、細胞の生存性を維持する任意の培地であるだろう。好ましい培地は、0.1~0.5%のBSAを含有するリン酸緩衝生理食塩水である。様々な培地が市販されており、細胞の性質に従って使用することができ、ダルベッコ変法イーグル培地(dMEM)、ハンクス基本塩類溶液(HBSS)、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(dPBS)、RPMI、イシコフ培地、5mMのEDTAを含むPBSなどが含まれ、これらは、頻繁に、ウシ胎児血清、BSA、HSAなどで補充される。
【0148】
標識細胞は、次いで、上述した表現型に関して分離される。分離された細胞は、細胞の生存能力を維持し、通常、採集管の底に血清のクッションを有する、任意の適切な培地内に採集され得る。様々な培地が市販されており、細胞の性質に従って使用されてもよく、頻繁にウシ胎児血清で補充される、dMEM、HBSS、dPBS、RPMI、イシコフ培地などが含まれる。
【0149】
骨前駆細胞活性について高度に富化された組成物は、この方法で得られる。対象の集団は、細胞組成物の50%以上または約50%以上で、通常は、細胞組成物の90%以上または約90%で存在するであろうし、生細胞集団の約95%以上ほどの多さで存在してもよい。富化細胞集団は、すぐに使用されてもよく、または液体窒素温度で凍結され、長期にわたって保存されてもよく、解凍されて再利用が可能である。細胞は、通常、10%のDMSO、50%のFCS、40%のRPMI 1640培地中に保存される。解凍されると、細胞は、増殖もしくは分化のために、増殖因子及び/または間質細胞の使用によって増殖することができる。
【0150】
本方法は、骨機能のためのインビトロまたはインビボモデルの開発において有用であり、遺伝子療法及び人工器官構築のための実験においても有用である。骨を開発することは、新規増殖因子及び医薬品の貴重な供給源として、ウイルスまたはワクチンの製造のために、薬剤及び工業用化合物のインビトロ毒性ならびに代謝試験のために、遺伝子療法の実験のために、移植可能な人工骨の構築のために、及び骨突然変異誘発ならびに発癌現象のために役立つ。
【0151】
本発明の特徴及び利点は、以下の実施例を参照することによって、より明確に理解されるであろうが、以下の実施例は、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0152】
実施例1:複能性骨格幹細胞の包括的系統マッピングによって明らかになった骨形成及び軟骨形成前駆細胞の互換性がある運命
骨、軟骨、及び骨髄間質は、骨格の主構成成分であるが、出生後の骨格組織の起源はいまだに不明のままである。ここでは、我々は、高度に純粋な、出生後骨格幹細胞(マウス骨格幹細胞、mSSC)の集団及びその下流側の骨、軟骨及び間質組織の別個の前駆細胞からの骨及び軟骨発生をマッピングする。我々は、mSSCの分化をその子孫と決めた。我々は、mSSCの分化系統決定の潜在的な内因性及び外因性調節因子を示す、特徴的な遺伝子発現パターンについての幹/前駆細胞のトランスクリプトームを検討した。これらの分析は、mSSCから発生した支持間質が、mSSCの分化を反射的に調節し、造血も調節することを明らかにしている。我々は、いくつかのmSSCニッチェ因子が、骨格再生の強力な誘導因子であり得ること、及び組換えmSSCニッチェ因子のいくつかの特定の組み合わせが、非骨格組織内であっても、mSSCの遺伝的プログラムを活性化することができ、軟骨または骨及び骨髄間質のデノボ形成をもたらすことを立証している。
【0153】
「レインボーマウス」系を実現することによって、我々は、骨組織のクローン原性領域から非造血間質細胞を系統的に単離し、異所性移植設定において、それらのインビボでの骨格組織へ分化する能力をアッセイした。次いで、我々は、FACS分画化及び転写分析によって、8種の前駆細胞のサブ集団を特定した。これらのサブ集団の中で、我々は、骨、軟骨、及び骨髄を発生することができるマウス骨格幹細胞(mSSC)を見出した。続いて、我々は、このmSSCと他の7種のサブ集団との間の直系関連性を特定し、骨格形成前駆細胞の系統マップを展開した。次に、我々は、特異的な系統に向かう、特に軟骨の発生に向かうmSSC増殖及び分化を調節するニッチェにおける機構及び/または因子に着眼した。骨格ニッチェ微小環境を維持することで重要な特定されたモルフォゲンの操作によって、我々は、脂肪組織中で異所性骨形成を誘導することができた。我々はまた、骨格幹細胞及び前駆細胞の運命を決定することに関与する特定されたニッチェ因子のさらなる操作によって、系統決定を骨組織から軟骨形成組織までそらすことができた。したがって、我々は、治療的骨格再生に転換され得る特異的骨格形成ニッチェ因子を識別することによって、この系統マップの有用性、及びmSSCとその子孫との間の特定された関連性を立証する。
【0154】
骨格幹細胞、その子孫、及びそれらの系統関連性の特定
骨及び軟骨を、クローン性系統限定前駆細胞から誘導する。新規組織前駆細胞を精製する上での主な課題は、これらの稀な細胞をそれらの環境から正確に識別することができる分子マーカーを特定することである。研究は、骨格形成前駆細胞の選択集団が、ネスチン(Nestin)またはMx1などの特異的遺伝子の発現を促進するプロモーターの調節制御下で、GFP、またはCre-リコンビナーゼを発現するように操作された遺伝子導入マウスにおいて遺伝的に追跡することができることを示している。しかしながら、ネスチン及びMx1は、様々な組織及び細胞型で広範に発現されるために、異なる細胞中のこれらのマーカーの発現は、これらが共通の系統を共有することを必ずしも意味するものではない場合がある。したがって、我々は、インビボでのクローン性系統の関連性を評価するために「レインボーマウス」モデルを用いて、骨における間葉組織-間質、脂肪、骨、軟骨、及び筋肉を含む-が共通の前駆細胞を共有するかどうかを決定した。
【0155】
レインボーマウス系は、4つのカラーレポーター構築物(赤色、黄色、緑色、青色:実験方法項を参照されたい)を持つ多色のCre依存性マーカー系である。全ての組織内のクローンパターンを可視化するために、我々は、「レインボー」マウスを、アクチン遺伝子のプロモーター下でタモキシフェン誘導性の遍在的に発現されたCreを持つマウス(アクチン-Cre-ERT)と交配させた(
図1C)。次いで、我々は、別々の発生時点(胎生期15日目(E15)、出生後3日目(P3)及び6週目(前成体期)など)において、タモキシフェンの注入によって、子孫でCre発現を誘導した(
図1C)。Cre-リコンビナーゼ活性の誘導は、幹細胞を含めるすべての細胞において、RFP、GFP、CFP、及びYFPの最大16個の別個のランダムな配置の構成的発現を誘発する。このリコンビナーゼ活性化の6週間後に、クローン領域は、鮮明な色の均一に標識付けされた領域として検出することができた(
図8A、B)。
【0156】
この系を用いて、我々は、骨におけるクローン領域、特に、全ての時点で(E15、P3及び出生後6週目における誘導)骨、軟骨、及び間質組織を包含するが、造血、脂肪、または筋組織を包含しない成長板におけるものを観察している(
図1A、C、D、
図8D)。これらのデータは、少なくとも検討された時点(E15~出生後6週目)において、骨、軟骨、及び間質組織が、筋肉及び脂肪も生じさせない系統限定された幹細胞及び前駆細胞からインビボでクローン的に派生することを示唆している(
図8D)。
【0157】
出生後6週目に誘導されたマウスの大腿骨成長板において骨格クローン活性でわずかな減少があり、これは、出生後に成長が徐々に減少してく傾向にあることを反映している可能性が高い(
図8Cにおいて、矢尻は、(ii)~(iv)の挿入図中のクローン領域を示している)。我々はまた、中手骨ならびに中足骨中及び軸骨格の骨、すなわち、胸骨ならびに肋骨中のクローン領域も観察している(
図8E~G)。精製された軟骨、骨及び間質前駆細胞は、異種性かつ系統限定されている。
【0158】
骨、軟骨、及び間質組織が、インビボで系統限定された幹細胞及び前駆細胞からクローン的に派生されることを決定した後に、我々は、蛍光活性化セルソーティング(FACS)を用いる予見的単離によって特定のクローン骨格形成集団を精製しようとした。我々の『レインボーマウス』クローン解析中に高頻度のクローン領域を観察していたために、我々は、酵素的及び機械的解離によって大腿骨の成長板から細胞を単離し、これらをFACSによって、CD45、Ter119、Tie2、及びアルファVインテグリンの差次的発現について解析した。これらの表面マーカーは、造血細胞上(CD45、Ter119)、血管並びに造血細胞(Tie2)、及び骨芽細胞(アルファVインテグリン)に存在するものに相当する。
【0159】
我々は、成長板が、CD45-Ter119-Tie2-アルファV+である細胞を高頻度に有することを見出し、これらは、以降[アルファV+]細胞と称される。CD105、Thy、6C3、及びCD200の差次的発現を示す[アルファV+]集団のその後のマイクロアレイ解析に基づいて、我々は、これらの集団を8種のサブ集団に分割した(
図1B及びE)。この8種のサブ集団の骨格組織を生じさせる固有の能力を評価するために、我々は、GFP+マウスの長骨(大腿骨、脛骨、上腕骨、橈骨)、肋骨及び胸骨から各サブ集団の20,000個の細胞を単離し(
図1E)、それらを免疫抑制状態にあるRAG-2/ガンマ(c)KOマウスの腎被膜の下に移植した(
図1H)。
【0160】
我々は、以前に、腎臓の被膜下の位置が、移植された骨格形成細胞の生着にとって理想的な骨外性部位であることを決定している。移植から4週後に、我々は、GFP標識腎臓移植片を外植し、組織を組織学的分析用に処理し、それらの発生結果を決定した(
図1F)。8種のサブ集団は、異なる発生運命を呈した(
図1F~G):3種は、骨、軟骨及び骨髄からなる移植片を生じさせる軟骨内骨化のパターンに従い(
図1F~Gの集団a、e、f);4種は、主として、最小の軟骨を伴いかつ骨髄を含まない骨を生じさせ(
図1F~Gの集団b、c、d、h);及び1種は、大部分が最小の骨及び骨髄を伴って軟骨組織を生じさせた(
図1F~Gの集団g)。これらの結果は、骨格形成前駆細胞が、様々な最終的に分化された血液細胞を生成する多様な造血前駆細胞と同様に、明確に異なる細胞表面マーカープロファイル及び骨格組織の運命を有して多様性であることを示唆している。[CD45+Ter 119+]または[Tie2+]サブ集団が骨格形成細胞のサブ集団を含有しなかったことを確認するために、我々は、[CD45+Ter 119+]及び[Tie2+]細胞集団を、機械的及び酵素的消化ならびにその後のFACS分画化によって、P3のGFP標識マウスの長骨から単離した(これは、我々が以前にFACS分画化で除外したものである)。
【0161】
我々は、次いで、免疫不全RAG-2/ガンマ(c)KOマウスの腎被膜下のサブセットのそれぞれの20,000個の細胞を移植し、それらの固有の骨格形成潜在能力を評価した。[アルファV+]分画の8種のサブ集団とは異なり、CD45/Ter119+及びTie2+サブセットは、移植後4週間にわたって骨、軟骨または間質を形成することが見出されず(
図15D)、マウス骨格における骨、軟骨及び間質組織の別個の前駆細胞の存在をさらに強調している。
【0162】
出生後骨格幹細胞の特定
我々は、骨格形成が、もっとも完全に研究されている器官形成の系である造血で見られるような系統限定前駆細胞の発生階層を通して進行し得ると仮定した。したがって、我々は、[アルファV+]集団中のCD105、CD200、Thy、及び6C3細胞表面マーカーの差次的発現に基づいて、大腿骨成長板から8種の細胞サブ集団を再度単離した。
【0163】
次に、我々は、各サブ集団の分化能力を決定し、またサブ集団の中に存在し得る系統関連性を特定することを試みた。我々は、[CD45-Ter119-Tie2-アルファV+Thy-6C3-CD105-CD200+]サブ集団が、2つの複能性前駆細胞型の発生:最初に、[CD45-Ter119-Tie2-アルファV+Thy-6C3-CD105-CD200-]細胞集団(以降プレ-BCSP(前骨軟骨及び間質前駆細胞に向かう)と称される);及び[CD45-Ter119-Tie2-アルファV+Thy-6C3-CD105+]細胞集団(我々が前に、骨、軟骨、及び間質前駆細胞に向かうBCSPとして記述)から始まるインビトロ及びインビボの双方での一連の段階を通して他の(7種の)サブ集団の全てを直系的に発生させることを観察した。
【0164】
[CD45-Ter119-Tie2-アルファV+Thy-6C3-CD105-CD200+]サブ集団は、インビトロ及びインビボで、他の(7種の)サブ集団の全てを直系様式で発生する。インビトロでは、新たに選別された細胞を25日間の期間にわたって培養し、この時点で、これらを、FACSによって再分画し(
図2A(i)、
図2B(i)、(ii))、その後、腎被膜下に移植した(
図2A(i)、
図2B(iii))。インビボでは、精製細胞を、腎被膜下に移植し、1ヶ月後に解離及びFACS解析用に(
図2A(ii)、
図2C(i)、(ii))または免疫組織化学検査用に(
図2C(iii))外植した。
【0165】
これらのデータは、[CD45-Ter119-Tie2-アルファV+Thy-6C3-CD105-CD200+]サブ集団が、インビトロ及びインビボの両方で直系的様式にて他の(7種の)サブ集団の全てを発生することを立証している。[CD45-Ter119-アルファV+Thy-6C3-CD105-CD200+]サブ集団からの単一選別細胞もまた、インビトロ及びインビボの両方で直系様式にて他の集団の全てを発生した(
図2D、
図2E)。
【0166】
インビトロ
個々の[CD45-Ter119-Tie2-アルファV+Thy-6C3-CD105-CD200+]細胞を、播種し、14日間にわたって培養した(
図2D(ii))。得られた一次コロニーのFACS解析は、これらが[アルファV+]集団の原細胞及び全ての他の(7種の)サブ集団のクローンを含有することを示唆した(
図2E(iv):中央パネルのFACSプロット)。免疫組織化学法によって検査されるとき、これらのコロニーは、コラーゲン2(+)軟骨及びオステオカルシン(+)骨組織の両方を含んだ(
図2E(iii))。さらに、一次コロニーから単離された単一の新たに選別された[CD45-Ter119-Tie2-アルファV+Thy-6C3-CD105-CD200+]細胞を再度播種し、14日間培養したときに、得られた二次コロニーは、FACS解析で(
図2E(ii))原細胞及びさらに全ての他のサブ集団のクローンを含有した(
図2E(iv):下部パネルのFACSプロット)。これらの結果は、単一の[CD45-Ter119-Tie2-アルファV+Thy-6C3-CD105-CD200+]細胞のインビトロの自己再生が、新たに単離された[CD45-Ter119-Tie2-アルファV+Thy-6C3-CD105-CD200+]細胞の骨格形成特性を維持したことを立証している。
【0167】
インビボ
個別に移植されるとき、[CD45-Ter119-Tie2-アルファV+Thy-6C3-CD105-CD200+]細胞は、腎被膜下に十分に生着せず、これはおそらくは、これらが支持的微小環境-すなわち、骨格幹細胞ニッチェを必要とすることを反映している。したがって、我々は、個々のGFP標識[CD45-Ter119-Tie2-アルファV+Thy-6C3-CD105-CD200+]細胞を、P3マウスの長骨から単離された5,000個の未選別のRFP標識細胞とともに同時移植し、骨格幹細胞ニッチェの形成を刺激した(
図2D(i))。移植から2週後に、我々は、移植片を一連のセクショニング及び免疫組織化学分析用に外植した。GFP標識移植細胞は、それらのインビトロ特性(
図2E(iii))と一致して、インビボにおいてアルシアンブルー染色された軟骨細胞及びサフラン染色された骨細胞の両方に分化した(
図2F(iv)、(vi))。これらのデータは、[CD45-Ter119-Tie2-アルファV+Thy-6C3-CD105-CD200+]集団が、自己再生及び複能性の成体型幹細胞に似た特性を有することを示唆している。したがって、我々は、[CD45-Ter119-Tie2-アルファV+Thy-6C3-CD105-CD200+]細胞集団が、出生後の骨格組織におけるマウス骨格幹細胞(mSSC)集団を表すこと(
図2G)、及び[アルファV+]集団の7種の他のサブ集団が、mSSCの子孫であることを結論付ける。
【0168】
これらの基準によって特定されたmSSCは、尾骨、脊椎、肋骨、骨盤、神経頭蓋、下顎骨、及び指骨を含める骨格の他の領域においても検出され、このことは、mSSCが、これらの骨の出生後の管理に重要であることも示唆している(
図14)。mSSCの潜在的再生能力を強調するために、我々は、mSSCの数が、骨折した大腿骨のカルスにおいて反対側の無傷の大腿骨よりも著しく高く、この差が、骨折後7日目に最大であることを立証した(
図9A~B)。
【0169】
加えて、我々は、mSSCの損傷後の再生における役割を強調する3つのさらなる現象を見出した。第1に、我々は、骨折カルスから単離されたmSSCが、骨形成分化培地中でインビトロにて培養されるとき、向上された骨形成能力を有すること(非損傷の大腿骨から単離された細胞のものと比べて)を観察し、これは、非損傷の大腿骨から単離されたmSSCと比べてアリザリンレッド染色の非常に大きな取り込みを立証している(
図9C:左側パネル)。第2に、骨折カルスまたは非損傷の骨のいずれかから単離された10,000個のmSSCを腎被膜下に移植し、1ヶ月後に外植した場合に、我々は、細胞の両グループが、骨及び骨髄と一致する移植片を生成したが、骨折環境から得られたmSSCによって生成された移植片が、非損傷の骨から単離されたmSSCによって生成されたものよりも際立って大きな移植片をもたらしたことを確認し、このことは、損傷の存在下でのmSSCの活性の本来備わっている変更作用を強調している(
図9C:右側パネル)。最後に、放射線照射が骨質減少及び骨折治癒の低下をもたらすことが周知であるために、我々は、次に、照射後の損傷に応答するmSSC活性を検討した。ここでは、骨折を誘導する前に、マウスを12時間照射したときに、骨折後1週間の非照射大腿骨と比べて、骨折後1週目でmSSC増殖の著しい減少があることを見出したことを我々は確認している(
図9D)。
【0170】
したがって、これらのデータは、mSSCの機能的再生能力を強調している。上述した解析に基づいて、我々は、幹細胞/前駆細胞の系統樹を定義した(
図2G)。mSSCは、HSCのものと同様に、運命限定前駆細胞が増大する階層を生成することによって骨格形成を開始する。複能性及び自己再生mSSCは、初めに、複能性前駆細胞、前骨軟骨間質前駆細胞(プレ-BCSP)、及び骨軟骨間質前駆細胞(BCSP)を生じさせる。次いで、これら細胞型の両方ともに、以下のオリゴ系統前駆細胞を生成する:委託軟骨前駆細胞(CCP)[CD45-Ter119-Tie2-アルファV+Thy+6C3-CD105+CD200+];Thyサブ集団、以降Thyと称する[CD45-Ter119-Tie2-アルファV+Thy+6C3-CD105+];B細胞リンパ球間質前駆細胞、BLSP[CD45-Ter119-アルファV+Thy+6C3-CD105-];6C3サブ集団、以降6C3と称する[CD45-Ter119-アルファV+Thy-6C3+CD105-];及び肝白血病因子発現細胞、HEC[CD45-Ter119-アルファV+Thy-6C3+CD105-](
図2G)。mSSC由来系統は、我々が前にThy、BLSP、及び6C3サブ集団として特性化した細胞型を含み、これらは、別個の造血支援能力を有する(
図12A、B)。
【0171】
骨格幹細胞及び前駆細胞活性ならびに分化を調節する因子の特定
mSSCニッチェは、mSSC活性を調節する他の骨格系統の細胞から構成される。初期実験において、我々は、胎児四肢からの最も初期の骨格形成集団が、Thy、6C3、及びCD105に対して三重陰性([CD45-Ter119-Tie2-アルファV+Thy-6C3-CD105-]、以降総じてTN、三重陰性細胞と示される)であることを指摘した。このTN細胞は、インビトロ及びインビボでCD105+、Thy+及び6C3+/-細胞を生じさせ、TN細胞はまた、インビトロで自己再生することもできた。したがって、TN細胞は、mSSCが富化された集団の我々の最も初期のバージョンであった。これは、我々のマイクロアレイ解析を行ったときに使用されたものと同じ集団である(
図3で
*mSSCとして記載)。
【0172】
*mSSC集団のマイクロアレイ解析は、mSSCをさらにもっと富化する可能性があり得るマーカーのセットを明らかにした。いくつかの可能な候補物質の中で、我々は、CD200が、TN細胞のコロニー形成単位活性を著しく向上させるように見えることを観察した。したがって、細菌のシングルセルRNAシークエンシングを含める構造の実験の全ては、
図2Gに記載された免疫表現型([CD45-Ter119-Tie2-アルファV+Thy-6C3-CD105-CD200+])を有するmSSCで行った。同様に、委託軟骨前駆細胞(CCP)の免疫表現型を、骨格差幹細胞/前駆細胞のさらなる再分画においてCD200の重要性の観察によってさらに洗練させた(
図2G)。
【0173】
一旦mSSCを単離したら、我々は、mSSCニッチェ(幹細胞活性を支援活調節する微小環境)を作り上げている細胞型を特定することに目を移した。我々は、初めに、mSSCの新たに選別された純粋な集団及び5種のその前駆細胞集団(i)BCSP、(ii)Thy、(iii)6C3、(iv)BLSP、ならびに(v)HECのマイクロアレイ遺伝子発現解析を行った。これらの遺伝子発現解析の目的は、mSSC及びその子孫の活性を調節し得るシグナル伝達経路に対する受容体を特定することであった(
図3D~E)。
【0174】
これらの細胞の遺伝子発現プロファイルを解釈するために、我々は、国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information)遺伝子発現情報データベース(Gene Expression Omnibus)(NCBI GEO)から公開されているマイクロアレイデータの大量のコレクション(n=11,939)に対してマイクロアレイデータを正規化するプラットフォームであるGene Expression Commonsを用いた。その結果、我々は、遺伝子発現の変化倍率を表すヒートマップを生成し、Ingenuty Pathway Analysis Softoware(QIAGEN Redwood City)を用いて経路統計的分析を行った。
【0175】
*mSSC及びその子孫は、形質転換増殖因子(TGF)ベータ(骨形態形質タンパク質(BMP)に特異的な)及びWNTシグナル伝達経路に関与する多くの受容体、ならびにBMP2、TGF-β3及びWnt3aが含まれるこれらの経路の同族モルフォゲンを差次的に発現する(
図3D~E)。これらの結果は、
*mSSC及びそれらの子孫の間での自己分泌ならびに/またはパラ分泌シグナル伝達が、それら自体の増殖を能動的に調節し得ることを示唆している(
図3F)。さらには、シングルセルRNAシークエンシングは、mSSC中のBMP2及びその受容体(BMPR1a)の共発現が(
図3A~C)、mSSC中の自己分泌シグナル伝達に対する潜在性を示していることを明らかにした。
【0176】
転写データの支援において、外因性の組換えBMP2の培養基への添加は、単離されたmSSCの増殖を迅速に誘導したが、一方外因性組換えTGFβまたはTNFαのいずれかでの培地の補充は、誘導しなかった(
図3G、3H)。加えて、インビトロでのmSSCの増殖は、BMP2シグナル伝達の拮抗作用薬である組換えグレムリン2タンパク質の培養基への添加によって、対照と対比して著しく阻害された(
図15A)。mSSCの子孫は、グレムリン2及びノギンなどのBMP2シグナル伝達経路の拮抗作用薬を発現し(
図10A、右側パネル)、このことは、より分化した骨格系統によるmSSCの増殖を制御するための潜在的に負のフィードバック機構の存在を示唆している。具体的には、Thyはグレムリン2を発現し、Thy及びBLSPの両方ともにノギンを発現する。したがって、我々は、Thy及びBLSPサブ集団が、mSSCのBMP-2誘導増殖を阻害するように負のフィードバックループにおいて作用し得ることを推測し、自己分泌及びパラ分泌シグナル伝達が、mSSC及びそれらの子孫間で起こる可能性があり、これがそれら自体の増殖を調節し得ることをさらに示唆している。我々は、全身的な内分泌の調節、ならびに自己分泌及びパラ分泌の調節が、mSSC及びそれらの子孫を調節する上で重要であり得ると仮定した。全身的ホルモンのレプチン及び甲状腺刺激ホルモン(TSH)に対する同族受容体の転写発現は、P3マウスから単離された成熟Thy及びBLSPサブセットでは選択的にアップレギュレートされたが、BCSPまたは
*mSSC集団ではアップレギュレートされなかった(
図10A)。さらに、シングルセルRNAシークエンシングは、レプチン受容体がP3マウスから単離されたThy/BLSPサブセットデノミ単一細胞レベルで発現されることを示した(
図15E(ii))。これとは対照的に、これらサブ集団の全ては、これらのレプチンまたはTSH受容体の対応するリガンドの最小の転写発現を有した(
図10C)。これらの所見は、下流側の子孫が、全身的内分泌シグナルとmSSCとの間の仲介物として機能し得ることを示唆している(
図10A、E)。我々は、Thyサブセットを組換えレプチン成長ホルモン(1μg/mL)と一緒に培養することが、ノギン及びグレムリン-2、すなわちBMP-2シグナル伝達経路の拮抗作用薬のアップレギュレーションと関連付けられるというこの仮説に対するさらなる支援を見出した(
図10D)。対応して、レプチン処理Thyサブセットからの調製培地は、mSSCの増殖を阻害した(
図10B)。加えて、Thy細胞を組換えレプチン成長ホルモン(1μg/mL)で補充した培地中で培養することは、免疫蛍光染色法によって観察されるように、グレムリン2の発現の増加をもたらした(
図10D(ii)~(iii))。この所見は、下流側の子孫が、内分泌シグナルをパラ分泌信号に転換する全身的内分泌シグナルとmSSCとの間の仲介物として作用し得ることをさらに示している(
図10E)。Thy及び6C3細胞は互いに共存し、Foxa2という記号のついたmSSCに対するニッチェに寄与することができる。Thy及び6C3サブセットがmSSC活性を調節するシグナル伝達環境の構成成分を発現することを我々が証拠をつかんだために、我々は、Thy及び6C3サブセットがmSSCの子孫としてのみ機能するばかりでなく、ニッチェ支援細胞としても機能すると仮定した。
【0177】
この仮説を試験するために、我々は、Thy及び6C3サブセットがインビボでmSSCと共存するかどうかを決定しようとした。しかしながら、これには、mSSCをこれらのサブ集団から免疫蛍光組織法によって識別することができる特有のマーカーを必要とした。したがって、我々は、上述したGene Expression Commonsプラットフォームを使用して、mSSCによって際立って高く発現され、CSPによって非常に低く発現されるが、下流側の骨格前駆細胞(
図3I)、造血細胞、または内皮細胞のいずれによっても発現されない細胞内因子としてFoxa2を特定した。矛盾なく、シングルセルRNAシークエンシングによって、我々は、Foxa2が、mSSCで著しくアップレギュレートされ、BCSPでは非常に低いレベルでアップレギュレートされ、下流側の子孫ではほぼ存在しないことを観察した(
図15F(ii))。Foxa2のmSSC発現をタンパク質レベルで実証するために、我々は、透過性mSSCにおいてFoxa2に対して特異的な抗体を用いて細胞内FACSを行い、その結果、mSSCサブセットによるFoxa2の高発現を再度確認した(
図3K)。大腿骨骨片の免疫蛍光染色は、これら小区域からの解離組織のFACS解析によるこれらの領域でのmSSCの検出(
図1B)と一致して、Fox2+細胞が成長板に対して局在化されることを示した。大腿骨成長板において、免疫蛍光法によって染色されたThy及び6C3サブ集団は、Foxa2+細胞に隣接して局在化され、これは、Thy及び6C3サブ集団のmSSCに対するニッチェ支援細胞としての潜在的役割を示唆している(
図3J、L)。軟骨の運命は、骨形成に向かってそらすことができる。mSSCの前駆細胞が一貫してmSSCのための支援間質ニッチェの一部を形成することを決定したために、我々は、mSSC由来の間質が骨格前駆細胞の運命委託に影響を及ぼし得るかどうかを求めた(
図2G)。
【0178】
我々は、RFP+マウスから単離されたCD200(+)骨格サブセット[CD45-Ter119-アルファV+Thy+6C3-CD105+CD200+](
図1F、集団g)が、非蛍光性受容マウスの腎被膜下から離れて移植されるとき、主として軟骨形成に向けられることを観察したために、我々は、この細胞を委託軟骨前駆細胞(CCP)と表した(
図4A及びB)。しかしながら、RFP標識CCP細胞(
図2G)が、GFP標識BCSPと同時移植されるとき、これらは、骨組織に分化するが、軟骨には分化しない(
図4C)。mSSC由来系統(BCSP、Thy、6C3、BLSP及びHECが含まれる)の遺伝子発現解析は、mSSC及びその子孫の大部分が、高レベルのWNT3A、WNT4及びENT5aを発現することを示している(
図3D)。
【0179】
これとは対照的に、CCPは、これが単独で軟骨形成分化を受けるように移植されるとき、抑制されたWNTシグナル伝達の指標である低レベルのアキシン1を発現する。したがって、我々は、活性化されたWNTシグナル伝達が、軟骨形成前駆細胞を骨芽運命に向かうようにシフトさせることに関与する可能性があると仮定した。この可能性を試験するために、我々は、再度、20,000個のRFP標識CCP細胞を、(分泌フリッツルド受容体2[SFRP-2]をコードするレンチウイルスベクターの108~109 MOI単位での事前の形質導入によって)阻害された局所的Wnt-フリッツルド受容体仲介古典的WNTシグナルを有する20,000個のGFP標識BCSPと同時移植した(
図4A)。CCP細胞は、これらが単独で移植されたとき、骨形成を抑制する軟骨形成分化を受け、したがって、BCSPによる骨形成作用は、WNTに仲介される(
図4D)。これらの結果は、WNT関連シグナル伝達活性の勾配は、骨格前駆細胞における運命委託を決定する上での推定機序であることを示唆する(
図2G)。
【0180】
骨運命は、VEGFの遮断によって軟骨形成に向かってそらすことができる。BCSP及びWNTシグナル伝達が、軟骨の運命の細胞を骨形成に向かって転換させることができることを観察したので、我々は、次に、mSSCを骨運命よりはむしろ軟骨形成へと変換的に、選択的に促進することができる因子を特定しようとした。以下の結果に基づいて、我々は、VEGFシグナル伝達がこの運命決定において重要であると仮定した。精製されたmSSCの転写物と委託骨格前駆細胞のものとを比較することによって、我々は、mSSCが軟骨形成に関連する多くの重要な遺伝子-Runx2、Sox9、コラーゲン2、及びコラーゲン10を発現することを見出し、このことは、mSSCが軟骨の運命に向かってすでに準備ができていることを示唆している。Sox9及びコラーゲン2の高発現レベルならびにRunx2及びコラーゲン10の低発現レベルを示すシングルセルRNAシークエンシングは、このmSSCにおける所見を確認した。精製mSSCはまた、移植時に、軟骨内骨化を通しての骨及び骨髄形成に向かって進む前に、初期に肥大軟骨を形成する。
【0181】
骨関節炎のモデルにおいて、VEGF発現の増加をもたらすHIF2シグナル伝達の異常調節が、残りの軟骨細胞が肥大状態に再突入し、軟骨内骨化を再び続けることを刺激し得るという新たな証拠が出てきている。インビトロにおいて間葉系幹細胞をVEGFで処理することもまた、培養された骨髄由来の間葉系間質細胞の骨化及びアルカリホスファターゼなどの初期骨形成マーカーの発現を促進する。したがって、VEGF依存性骨化を遮断することによって、VEGFシグナル伝達の阻害が移植されたmSSCの軟骨形成分化を促進することができるかどうかを決定した(
図5A)。これらの実験において、我々は、胎児(E14.5)及び出生後の両方のmSSCを使用した。前者を含めることによって、VEGFシグナル伝達が、軟骨を骨化させて骨を形成することを可能にする血管新生において重要な役割を果たす胚性骨格発生の期間に我々が焦点を当てることを可能にする。我々は、VEGFR1受容体の可溶性リガンド結合細胞外ドメイン(ECD)をコードするアデノウイルスベクター(Ad cVEGFR1)の10
9 個のプラーク形成単位(pfu)を静脈内注射によって投与し、可溶性VEGFR1の肝臓形質導入及び循環系への肝臓分泌をもたらし、強力な全身的VEGF拮抗作用性を生じさせた。対照のイムノ黒グリンIgG2<Fcドメインをコードするアデノウイルスは、対照処置として働いた。1日後に、無傷のE14.5の前骨形成胎児大腿骨をこれらのマウスの腎被膜下に移植し、次いで3週間後に組織を外植した(
図5A)。
【0182】
Ad sVEGFR1処置マウスからの移植片は、存続可能なように見えたが、青白く見え(全体的に)、主として軟骨組織を含有した(
図5B:右側の最上部の2つのパネル;
図5C)。これと対比して、対照Ad Fc動物からの移植片は、全体的に赤味がかっており、組織学的検査では、軟骨内骨化及び皮質骨によって包囲された髄腔の形成を明示した(
図5B:左側の最上部の2つのパネル;
図5C)。これらの結果は、VEGF遮断が、おそらくはmSSC委託のレベルで、骨形成を犠牲にして軟骨形成を促進することができることを示している。
【0183】
VEGF阻害が、mSSC系統委託のレベルで、骨形成を犠牲にして軟骨形成を促進するかどうかを試験するために、我々は、前に述べたように、mSSCを新生児P3マウスの四肢から単離し、これらの20,000個をAd sVEGFR1処理マウスの腎被膜下に移植した(
図5A)。移植から3週後に、我々は、腎臓を外植し、モバットペンタクロムで染色された切片化mSSC由来組織の組織学的分析を行った。この場合もやはり、胎児の全体の大腿骨移植設定と同様に、VEGFが封鎖された状態で処置されたマウスにおけるmSSCは、軟骨を形成したが、骨または骨髄を形成しなかった(
図5B:右側の最下部の2つのパネル、
図5C)。これと対比して、対照マウスに移植されたmSSCは、軟骨内骨化を受け、骨及び骨髄を形成した(
図5B:左側の最下部の2つのパネル;
図5C)。
【0184】
胎児大腿骨及びmSSC移植アッセイの両方の骨形成に及ぼすVEGF封鎖の劇的な効果を考慮すると、VEGF受容体(VEGFR;VEGFR1、2、3を含める)及びリガンドVEGFAならびにVEGFBの発現が、mSSC及びそれらの子孫(BCSP、Thy、6C3、BLSP、HECサブセット)中で検出不能であるまで極端に低いことに驚く(
図5D:左側パネル)。しかしながら、VEGFCは、前駆細胞サブ集団において高レベルで発現された(
図5D:左側パネル)。加えて、mSSC及びその派生する系統は、胎盤増殖因子(PIGF)を含めるVEGFの一部の型の受容体として機能するニューロピリン1及び2を高レベルで発現し、可溶性VEGFR1がPIGFによるNRP1の活性を拮抗作用する(
図5D:右側パネル)。したがって、VEGFの封鎖は、VEGFシグナル伝達の直接的な阻害の代わりにNRP1の拮抗作用を通して、mSSC及びそれらの子孫に影響を及ぼし得る(骨の代わりに軟骨形成をもたらす)(
図5A~C)。
【0185】
全身的VEGF封鎖が、移植された胎児原基及びmSSCにおいて軟骨形成を劇的に刺激するので、我々は、軟骨形成が、mSSCにおけるVEGF拮抗作用の間接的または直接的な影響によって仲介されるかどうかの疑問を投げかけた。したがって、我々は、NRP1/VEGFR1の(直接的)外因性活性化または不活性化後にどの運命(軟骨または骨形成)が促進されるかを探索した。我々は、sVEGFR1-Fc融合タンパク質(5μg/mL)、可溶性NRP1細胞外ドメイン(2.5μg/mL)及びPIGF(0.5μg/mL)でのインビトロ処置のために、GPF標識マウスから新たに単離されたmSSCを播種した。インビトロでの処置後1週間目に、20,000個のmSSCを、免疫不全マウスの腎被膜下に移植した(
図5E)。移植から3週後に、移植片を外植し、インビトロのVEGF及びPIGFシグナル伝達の作動作用または拮抗作用のいずれも、インビボで骨に分化するためのmSSC能力を大幅に変更させないことを確認し、このことは、軟骨形成運命の促進をもたらすVEGFR拮抗作用の機構が、mSSCに対する直接的影響よりはむしろ、環境を通して間接的に起こることを示唆している(
図5F)。
【0186】
次に、我々は、軟骨形成の促進が、出生後の軟骨内骨形成に関与することが報告されているTGFβシグナル伝達の活性化または阻害の後に起こり得るかどうかの疑問を投げかけた。我々は、機械的及び酵素的解離ならびにその後のFACSによってGFP標識マウスからmSSCを単離した。次いで、免疫不全マウスの腎被膜下の移植前1週間にわたって、TGFβ受容体(250ng/mL)または可溶性のTGFβ受容体(5μg/mL)のいずれかの存在下で播種した。移植から3週後に、これらの移植片を組織学的分析用に外植した。TGFβの直接的阻害後に、我々は、これらの移植片が、軟骨を形成するが、骨をほとんど形成しないことを見出し、このことは、TGFβシグナル伝達の直接的拮抗作用が、mSSCにおける軟骨運命をもたらすことを示唆している。
【0187】
BMP経路の操作は、骨外性位置におけるmSSCのデノボ形成を誘導することができる。骨格組織の骨、軟骨及び間質集団が、mSSC及びそれらの子孫から派生することを確立したので、次に、我々は、他の組織型が、骨形成を受けるように活性化され得る、骨誘導性または潜伏休止状態のmSSCである細胞を含有するかどうかを検討した。BMP2の骨形成前駆細胞は既知であり、これが骨形成を刺激するための臨床的整形外科処置で承認されているが、BMP2仲介発形成誘導の作用機序はまだ決定されていない。我々は、上記に詳説したように、BMP2がインビトロでmSSCを増殖させ得ることを観察した(
図3G、H)。
【0188】
BMP2の骨形成作用を十分に理解するために、我々は、3μgの凍結乾燥組換えBMP2を含有するコラーゲンスポンジを、鼠径部脂肪体の皮下に、または腎被膜下に配置した。コラーゲンスポンジを配置後4週目に採取したところ、腎臓及び皮下組織の部位からの骨髄で満たされた豊富な骨に似た類骨を見せた(
図6A~C)。さらに、類骨の骨髄内の細胞のFACS解析は、「正常な」成体大腿骨で見られるものと同様なHSCの頻度を明らかにした(
図6B、上部パネル)。これらのデータは、BMP2に誘導された骨が、正常な骨と機能的に同様であることを示している(
図6B)。FACS解析によって、我々は、mSSCが、皮下脂肪組織において、通常は検出可能できないか、または極めてまれであることを決定した(
図6C、右側パネル)。これと対比して、移植から10日後に、骨化がなお進行しながら、mSSCは、BMP2誘導類骨中で多数見出される(
図6C、左側パネル)。
【0189】
mSSC及び下流側の骨格前駆細胞が、「正常な」皮下脂肪組織中で極めてまれであることを確立したので、我々は、BMP2誘導異所性骨形成に寄与する骨格前駆細胞の起源に疑問を投げかけた。BMP2が、原位置の細胞の骨格形質転換を誘導するか、または骨組織から動員された循環骨格前駆細胞の移動を誘導するかどうかを決定するために、並体結合体モデルを使用した(
図6D)。我々は、アクチン-GFP遺伝子導入マウスを非GFP類遺伝子性マウスに融合させて、これにより、これらが接合領域における血管の発芽及び吻合によって共有された循環系を確立した。並体結合後2週目、並体結合体間の共通の循環系がFACS解析によって確認された後に、3μgの凍結乾燥組換えBMP2を含有するコラーゲンスポンジ(上述されたもの)を、非GFP並体結合体の鼠径部脂肪体中に配置した。移植後1日目に、このスポンジ及び周辺組織を外植し、機械的及び化学的解離を行い、構成細胞集団を単離した。
【0190】
我々は、非GFPマウスにおける異所性骨形成へのGFP標識細胞の寄与をFACS解析によって圧制し、循環細胞が、異所性骨の発生に寄与するかどうかを決定した。外植の組織は、採取時に豊富なGFP標識細胞を含有したが、FACS解析は、移植片中のGFP標識細胞が、もっぱらCD45(+)造血細胞にすぎず(
図6D、上部及び下部の左側パネル)、骨格前駆細胞ではないことを明らかにした(
図6D、FACSプロット、右端に示したmSSC細胞集団)。外植組織中に存在する骨格前駆細胞集団は、全てGFP陰性であり、このことは、循環骨格前駆細胞が、BMP2誘導異所性骨には寄与しなかったことを示唆している(
図6D、FACSプロット、右端に示したmSSC細胞集団)。
【0191】
これらのデータは、BMP2誘導骨形成が、造血を支援することができる異所性骨の形成をもたらす、皮下脂肪体中の未発達のmSSC骨格前駆細胞の形成を誘導するために十分である局所的細胞応答に関与することを示唆している。BMP2が異所性骨形成を皮下においてもまた腎被膜下のどちらにおいても誘導しないことを確立したので、我々は、これらの骨外性部位において、どの細胞型がmSSCへのBMP2仲介初期化を受けるかを決定したいと望んだ。したがって、腎臓及び皮下脂肪組織から単離した懸濁細胞のFACS解析を実行し、これらの骨外性器官の両方に共通した細胞型を識別することができるマーカーを探した。我々は、腎臓及び脂肪組織の両方ともに、多数のTie2及びPDGFRα発現細胞を含有することを見出した。Tie2の発現は、内皮細胞、周皮細胞及び造血幹細胞サブセット中で検出されており、一方PDGFR<は、様々な組織中で発現される。Tie2を発現する細胞をGFPで、また他の細胞をRFPで遺伝的に標識付けする、特定のTie2Cre×MTMGリポーターマウスを用いて、3μgの凍結乾燥組換えBMP2を含有するコラーゲンスポンジを鼠径部脂肪体に再度挿入し、32日後に移植した組織を採取した(
図6E)。FACS解析は、BMP2誘導小骨が、目に見える細管を備えたGFP陽性のTie2誘導骨細胞(
図6F、高倍率挿入図)及びTie2陰性のRFP標識骨細胞(
図6F)の両方を組み込むことを明らかにした。この所見は、Tie2陽性及びTie2陰性系統の両方がBMP誘導骨格初期化を受けたことを示唆している。これらの観察と一致して、皮下Tie2(+)PDGFR<(+)及びTie2(+)PDGFR<(+)細胞は、BMP2シグナル伝達のための主な受容体であるBMPR1aを高レベルで発現した(
図7D)。
【0192】
これらのデータは、mSSCの形成を開始するために、様々な細胞型がBMP2によって誘導され得ることを示唆している。BMP2及びVEGF阻害薬の同時送達は、脂肪組織における関節軟骨のデノボ形成を誘導するためには十分である。骨それ自体は再生能力を有するが、軟骨などの他の種類の骨格組織における再生のための能力は非常に低い。上述したように、VEGFの封鎖は、mSSCが軟骨を形成するように間接的に刺激する(
図5A~C)。BMP2誘導がmSSCの増殖及び形成を刺激することができたので(
図3G~H、
図6C)、我々は、BMP2の能力を誘導するmSSCが、VEGFの封鎖と結びつき、デノボ軟骨形成に向かわせることができると推測した。
【0193】
この可能性を試験するために、BMP2処理コラーゲンスポンジを、
図5のようにAd sVEGFR1の静脈内送達脂肪組織、またはコラーゲンスポンジ中に可溶性VEGFR1 ECD(50μg)を直接封入するかのいずれかで24時間前に処置されたマウスの脂肪組織中に移植した(
図7A)。1ヶ月後に、スポンジ及び周辺組織を外植した。BMP2単独では、造血活性を有する骨組織を発生させた(
図7B:左側パネル)。しかしながら、全身的または局所的のいずれかのVEGF阻害を伴うBMP2は、優勢な軟骨形成をもたらした(
図7B:右側パネル)。マウスの耳の天然軟骨のように、これは、FACSによって検出された高頻度のCCPを含有する軟骨を誘導した(
図7C)。この軟骨は、天然脂肪組織が、通常、Sox9またはRunx2などの軟骨形成に関連する遺伝子の非常に低いレベルから検出不能なレベルまで発現するために、脂肪組織の軟骨形成運命へのデノボ初期化に由来する可能性が高い(
図7E)。
【0194】
骨格組織の後胚期幹細胞/前駆細胞の管理に必要な遺伝経路及びこれらが骨格成長及び再生中に骨格型形成を維持するために幹細胞のレベルでどのように連動するかは、ほとんど理解されていない。骨格前駆細胞の起源ならびに正体及び骨、筋肉、軟骨及び脂肪が含まれる多様な間葉系組織型に対する遍在的な前駆細胞として提案されているプロトタイプ間葉系幹細胞に対するそれらの系統関連性に関してかなりの不確定要素がそのままであることが、さらに物事を複雑にしている。遺伝子導入「レインボーマウス」モデルを、クローン的に誘導された組織のインビボの遺伝子追跡法に使用することによって、我々は、骨、軟骨、及び間質組織が、実際にクローン的に関連することを見出した。逆に、我々は、これらが脂肪、血管、または骨格筋と同じクローン起源を共有するという証拠をほとんど見出しておらず、これらの組織が、胚形成後にそれら独自の幹細胞/前駆細胞を生じさせる可能性が高いことを暗示している。
【0195】
出生後骨格幹細胞/前駆細胞を特定し、骨格幹細胞系統樹を画定する:骨格(骨、軟骨及び間質)組織を生じさせるクローン集団の存在を特定した後に、骨格幹細胞と前駆細胞との間の系統関連性に関する不確実要素を解明する助けとするために、予測的に単離された、骨格形成能力を有する幹細胞/前駆細胞の系統マップを編集した(
図2G)。この系統マップは、別個の骨格形成特性を有する8種の異なる細胞サブ集団からなる。これらのサブ集団のいくつかは、遺伝子追跡法によって特定された最近記述された骨格形成細胞型の特性を有する(Park et al.(2012)Cell stem cell 10,259-272;Mendez-Ferrer et al.(1998)Radiographics:a review publication of the Radiological Society of North America,Inc 18,1125-1136;Zhou et al.(2014) Cell stem cell 15,154-168を参照されたい)。
【0196】
例えば、Thyサブタイプは、高レベルのCXCL12、レプチン受容体、及びネスチンを選択的に発現し、これらは、それぞれCXCL12高発現細網細胞、レプチン受容体発現細胞(LepR+)、及びネスチン発現間葉系幹細胞の特徴である。成体骨髄中のLepR+細胞が、出生後の骨及び脂肪組織の主たる供給源であるとの最近の報告とは対照的に、我々の結果は、新生児mSSCがLepRを発現しないことを示している。さらに、我々は、mSSC及びその子孫が骨格組織のみを生じさせて、脂肪組織を生じさせないことを指摘している。我々はまた、ネスチン-cre及びMX1-cre標識集団の両方が、mSSC集団と重なり合うことも見出している。
【0197】
この研究は、出生後の骨格幹細胞及びその下流側の前駆細胞の初報告を意味する。機構的に、mSSCの増殖及び自己再生は、ヘッジホッグ、BMP、FGF、TGF、Notchなどが含まれる既知のシグナル伝達経路の大部分に属するシグナル伝達分子に対する多数の同族受容体の発現によって表されて、厳密に制御されねばならない。BMP2は、培養中でmSSCを増殖させるためには十分である。BMP2及びBMP4の両方ともに、mSSC及び大部分のmSSC由来のサブセットによって発現され、ここで、これらは、自己分泌及びパラ分泌ループの両方を介して生存ならびに増殖を仲介する可能性が高い。逆に、Thy及びBLSP集団などのmSSCの下流側子孫もまた、BMPシグナル伝達を拮抗作用するノギン及び/またはグレムリン-2を発現する。これは、mSSC及びそれらの子孫のいくつかが、それら自体のニッチェの一部を形成し、BMP2などの生存促進性因子の臨界レベルを維持するだけではなく、BMPシグナル伝達を拮抗作用することによって骨格成長も阻止する。これらの阻害シグナルは、損傷後に抑制される可能性があり、例えば、我々は、大腿骨骨折の誘導後にSSC数の著しい増幅があり、これは、骨折治癒の初期段階で最も顕著であることを観察している。
【0198】
mSSC運命決定を骨から軟骨へ方向付けること:mSSC由来骨格サブセット間の拮抗作用的シグナル伝達もまた、特に骨または軟骨運命のいずれかへの骨格サブセットの系統委託において重要な機構であると思われる。我々が、初期骨格前駆細胞においてVEGFシグナル伝達に拮抗作用を及ぼしたとき、骨運命は、軟骨運命を支持して阻害された。さらに、我々は、mSSCまたは下流側骨格サブセットにおいてVEGFもしくはVEGF受容体の顕著な発現を観察しなかった。その代わりに、我々は、これらが、それぞれVEGFならびにVEGFRホモログのPIGF及びニューロピリンを発現することを確認している。
【0199】
骨格前駆細胞運命決定を軟骨から骨に方向づけること:WNTシグナル伝達はまた、骨対軟骨形成を、特に骨を支持するように決定することで役割を果たし得る。特定のサブ集団においてWNTシグナル伝達を変更することは、微小環境における他のサブ集団の骨格運命を方向付けることができる。例えば、我々は、CCP(すなわち、委託軟骨前駆細胞)と同時移植されたBCSPにおけるWNTシグナル伝達が、腎被膜下に配置されるとき、後者に軟骨よりもむしろ骨を形成させたという証拠を見出している。軟骨運命は、WNT拮抗作用によって促進されることが可能であり、これは、mSSC、BCSP及び6C3+サブ集団(これは高レベルのSFRP-2を発現し、古典的WNTシグナル伝達の内因性拮抗薬である)によって仲介され得る(
図3D)。
【0200】
変形性関節炎などの軟骨組織の骨化に関与する病態は、おそらくはWNTシグナル伝達の活性化及び結果として生じる骨形成の促進に起因する、mSSCニッチェにおける欠損から生じる可能性がある。
【0201】
我々は、複数の高度に精製された造血幹細胞ならびにHSCを含める前駆細胞サブセット、及び主要な造血系統の委託前駆細胞の遺伝子発現を行い、造血前駆細胞が、BMP2、BMP7、TGFb1、及びWnt3aが含まれる骨格形成に関連する数多くの因子を発現することを見出した(表1)。
【0202】
【0203】
これらの因子の同族受容体は、mSSC及び骨格由来前駆細胞によって高度に発現される(
図3D~E)。興味深いことに、mSSCが発生させた子孫、Thy及びBLSPなどは、レプチン、テストステロン、グレリン及び甲状腺刺激ホルモンなどの循環全身的ホルモンに対する受容体を選択的に発現するが、これらの受容体は、HSCまたは造血サブセット中では高度に発現されない(表2)。
【0204】
【0205】
したがって、我々は、mSSC由来間質細胞が、骨格及び造血系の両方に対する全身的内分泌調節に結合する細胞状界面を構成することを確認した。
【0206】
mSSCの活性及び運命決定は、骨格の起源に依存する。我々の解析は、幹細胞レベルでの出生後の骨格の発生に誘導する遺伝回路を問い質すための枠組みを確立した。mSSCは、損傷後の成長及びその回復中の骨格系の形状を維持することを任されている。mSSC活性における差異は、骨格計上における多くの差異が根底にあり得る。この可能性に合致して、我々は、mSSCが機能的に不均一であり、mSSCの頻度、コロニー形成能、及びこれらが採取された骨の型に応じる系統潜在力において実質的差異があることを確認している(
図14)。
【0207】
骨形成及び軟骨形成を誘導するように骨外性ニッチェシグナル伝達を変更すること:大部分の器官は、複数の組織型の複合体であるために、幹細胞ニッチェは、異なる組織特異的常在前駆細胞の活性と連動する。ニッチェシグナル伝達を調節することは、我々がここで、骨格幹細胞で観察し、また造血系で記述したように、幹細胞の増殖を誘導することによって組織成長を刺激することができる。ニッチェ相互作用はまた、系統委託を維持する上で重要な役割を果たすことができ、例えば、高レベルのBMP2シグナル伝達は、局所的脂肪微小環境シグナル伝達を支配し、常在するTie2(+)及びTie2(-)サブセットが骨形成を受けるように再指定することができる。ニッチェ相互作用はまた、mSSCの運命も決定することができる。BMP-2処理コラーゲンスポンジを可溶性VEGF受容体の全身的または局所的適用と共同して移植することによって、我々は、骨外性組織における局所的シグナル伝達経路の操作により、軟骨を完全に形成されるよう誘導することができることを立証している。
【0208】
可溶性因子によりmSSC形成を誘導し、その後mSSCニッチェを、その分化が骨、軟骨、または間質細胞に向かうように調節することは、骨格組織の再生治療におけるパラダイムシフトを意味する。この治療法はまた、内因性mSSCの常在レベルが疾患または加齢によって枯渇されている場合であっても、共依存の造血系まで拡大することができる。
【0209】
実験手順:全ての実験は、特に指定のない限り、3回繰り返して行われた。動物実験は、各実験群の少なくとも3匹の動物と、少なくとも3匹の対照群のコホートを含んだ。移植実験については、7~10匹のP3マウスが、各mSSC/前駆細胞移植用に得られた(例えば、以下に詳説するように、後続の移植用に20,000個の幹細胞/前駆細胞を取得するように7~10匹のマウスが得られた)。
【0210】
マウス:マウスは、スタンフォード大学実験動物委員会及び国立衛生研究所のガイドラインに従って、スタンフォード大学の実験動物施設において管理された。C57BL/Ka-Thy1.1-CD45.1(HZ)、C57BL/Ka-Thy1.1-CD45.1(BA)、C57BL/Ka-Thy1.2-CD45.1(Ly5.2)及びC57BL/Ka-Thy1.2-CD45.1(B6)、Rag-2/ガンマ(c)KO、C57BL/6-Tg(CAGEGFP)1Osb/J、Mx1Creは、我々の研究室で誘導し、かつ管理した。Rosa-Tomato Red RFP及びTie2Creマウスは、ジャクソン研究所から得て、繁殖コロニーを確立した。mTmGマウスは、Liqun Luoから賜った。マウスを、無菌マイクロインスレーターにおいて飼育し、水及び齧歯類用の餌を随意に与えた。
【0211】
レインボーマウス系:我々は、間質、脂肪、骨、軟骨、及び筋肉が含まれる骨における間葉系組織が共通の前駆細胞を共有するかを決定するために、「レインボーマウス」モデルを、インビボクローン系列関連性を評価する手段として利用した。我々が四肢における骨格組織の個々の細胞をインビボで長期にわたって追跡することを可能にするレインボーリポーター(R26VT2/GK3)マウスは、ROSA遺伝子座内に4色(緑色、青色、黄色、赤色)リポーター構築物を持つ多色Cre依存性マーカー系である。組換え後に、各細胞をランダムかつ恒久的に(遺伝的に)4色のうちの1色でマークし、組織内にモザイクの蛍光パターンをもたらす。娘細胞は、起源細胞と同じ色を維持し、これにより、クローン分裂の産物が淡色の拡張領域として可視化され得る。レインボーマウスを、遍在的アクチンCreERドライバーと交配させ、これによりタモキシフェンの投与後に骨格組織内の全ての細胞を全般的にマークし、かつクローン的に追跡した。2つの隣接する細胞が同じ色で着色される機会があるにもかかわらず、我々の研究室及び他のグループは、長期にわたる系統追跡が、組織特異的または幹細胞特異的リポーターを用いて観察されたものに対する忠実な細胞読み出しを明らかにすることを見出した。さらに、このアッセイは、全ての細胞型を追跡するように広範に使用することができるために、これは、既存の幹細胞リポーターを用いては明らかにされないと思われる胚/出生後発生中に活性化され得る稀で未確認状態の組織幹細胞でもクローン解析を可能にする。
【0212】
クローンを正確に計数するために、我々は、Image Jソフトウェア解析プラットフォーム(国立衛生研究所、Bethesda)を利用した。蛍光活性化セルソーティング(FACS)フローサイトメトリーを、ロッキー幹細胞研究所の共有FACS施設内のFACS Aria IIで行い、選別プロファイルの詳細は、以下に詳説され、
図1B、
図1E、
図6B、
図6D、
図7C及び
図13に例示されている。
【0213】
成体及び胎児骨格前駆細胞の単離ならびに移植:P3のGFP標識マウスから骨格組織を細かく切り分け、機械的及び酵素的解離によって解離した。具体的には、組織を、DNアーゼで補充したコラーゲナーゼ消化緩衝液中に配置し、一定の攪拌下で37℃にて40分間インキュベートした。コラーゲナーゼ消化及び中和後に、未消化物質を、ピペット操作を繰り返すことで穏やかに粉砕した。解離された細胞全体を40μmのナイロンメッシュを通して濾過し、4℃で200gにてペレット状にし、染色培地(PBS中、2%のウシ胎児血清)中に再懸濁させて、ラットIgGでブロックし、蛍光活性化セルソーティングによる分画用に、CD45、Tie2、アルファVインテグリン、CD105、Thy1.1、Thy1.2、6C3及びCD200に対するフルオロクロム結合抗体で染色した。
【0214】
選別及び未選別の骨格前駆細胞をペレット状にし、2mlのマトリゲル中に再懸濁させ、次いで、8~12週齢の麻酔をかけた免疫抑制状態にあるRag-2/ガンマ(c)KOマウスの腎被膜下に注入した。GFP標識の6週齢の成体マウスの骨を細かく切り分け、乳鉢と乳棒で穏やかに粉砕し、その後DNアーゼを含むコラーゲナーゼ緩衝液中で、一定の攪拌下で37℃にて40分間消化した。コラーゲナーゼ処理後に、未消化物質を、ピペット操作を繰り返すことにより穏やかに粉砕した。解離された細胞全体を40μmのナイロンメッシュを通して濾過し、4℃で200gにてペレット状にし、染色培地(PBS中、2%のウシ胎児血清)中に再懸濁させて、ラットIgGでブロックし、フローサイトメトリーソーティングによる精製用に、CD45(Biolegend、San Diego,CA)、Tie2(eBioscience,San Diego,CA)、アルファVインテグリン(eBioscience,San Diego,CA)、CD105(eBioscience,San Diego,CA)、Thy1.1(eBioscience,San Diego,CA)、Thy1.2(eBioscience)、6C3(Biolegend、San Diego,CA)及びCD200(Biolegend、San Diego,CA)に対するフルオロクロム結合抗体で染色した。
【0215】
BCSP同時移植実験用のCCPを、これらが高頻度で存在する胸骨及び耳から単離した。これらの実験の大部分で、CCPを富化するためにCD200を使用した。選別及び未選別の骨格幹細胞をペレット状にし、2mlのマトリゲル中に再懸濁させ、次いで、8~12週齢の麻酔をかけたRag-2/ガンマ(c)KOマウスの腎被膜下に注入した。初期実験において、我々は、胎児四肢からのもっとも初期の骨格形成集団が、Thy、6C3、及びCD105に対して三重陰性であることを確認した。「三重陰性」(TN)細胞は、インビトロ及びインビボでCD105+、及びTHYならびに6C3+/-細胞を生じさせ、また少なくともインビトロで自己再生する。したがって、このTN集団は、mSSCについての我々の最も早期の命名用語であり、これらの結果がマイクロアレイ転写データに示されている。我々は、CD200がTNのコロニー形成単位活性を精錬するように見えることを観察し、したがって、シングルセルRNAシークエンシングを含める最近の実験は、
図2Gに記載した免疫表現型を有するmSSCで行った。同様に、委託軟骨前駆細胞(CCP)の免疫表現型は、骨格形成幹細胞/前駆細胞のさらなる細分化におけるCD200の重要性の観察によって精錬された。
【0216】
転写発現プロファイリング:我々は、マイクロアレイ解析を、mSSC、BCSP、Thy(+)、6C3(+)、HECの高度に精製され二重選別された集団、及び骨髄間葉系間質細胞のリンパ球刺激集団(BLSP)、ならびにHSC、MEP、GMP及びCLPで行った。各集団を出生後3日目のマウスから単離した細胞を用いて、独立した種類で選別した。RNAをRNeasy Micro Kit(Qiagen,Germantown,MD)で、製造元の使用説明書に従って単離した。RNAを、RiboAmp RNA増幅キット(Arcturus Engineering、Mountain View,CA)で2回増幅させた。増幅cRNAを、ストレプトアビジン標識し、断片化し、Affymetrix 430-2.0アレイに、製造元(Affymetrix,Santa Clara)が推奨する通りにハイブリダイズした。アレイを、GCOS1.1.1.ソフトウェアを実行するGene Chip Scanner 3000(Affymetrix)でスキャンした。マイクロアレイの生データをGene Expression Commonsに送信し、ここで、データ正規化を、国立生物工学情報センター遺伝子発現情報データベース(NCBI GEO)からの公開されているマイクロアレイデータの大量の(n=11,939)コレクションである共通参照(Common Reference)に対して計算された。共通参照のメタアナリシスはまた、アレイ上の各プローブセットのダイナミックレンジも提供し、同じ遺伝子に対して複数のプローブセットが存在する状況において、最も広いダイナミックレンジを有するプローブセットが解析用に使用された。Affymetrixマウスゲノム430 2.0アレイは、45,101個のプローブセットを含み、そのうちの17,872個のアノテーションされた遺伝子が測定可能である。遺伝子発現の変化倍率を表すヒートマップを、Gene Expression Commonsで生成した。経路レベルの統計比較を、Ingenuity Pasthway Analysisソフトウェア(IPA、Ingenuity Systems,Qiqagen,Redwood City,CA)を用いて行った。
【0217】
軟骨内骨化の組織学的分析:細かく切り分けられた検体を、2%のPFA中に4℃で一晩固定化し、次いでPBS(pH7.2)中、0.4MのEDTA中で4℃にて2週間脱灰した。次いで、検体をパラフィン中(アルコールまたはキシレン中で脱水することによって)またはOCT中(スクロース中での低温保護)に埋め込むように処理し、切片化した。代表的な切片を、個々の実験に応じて、新たに調製されたヘマトキキシリン-エオジン、改変モバットペンタクロム、またはアリザリンレッド染色剤で染色した。
【0218】
免疫蛍光法:凍結保存された異所性骨検体での免疫蛍光法を、M.O.M.免疫検出キット(Vector Laborarories,Burlingame,CA)を用いて、製造元の使用説明書に従って行った。簡単に言うと、検体を遮断剤で処理し、次いでモノクローナル抗体で4℃にて一晩プローブした。次に検体をPBSで洗浄し、アレクサ染料結合抗体でプローブし、洗浄し、カバーガラスで覆い、Leica DMI6000B倒立顕微鏡システムで撮像した。組織培養された細胞検体での免疫蛍光法を、M.O.M.免疫検出キット(Vector Laborarories,Burlingame,CA)を用いて、製造元の使用説明書に従って、凍結保存された検体と同様に行った。簡単に言うと、6ウェル~96ウェル培養プレートで培養された細胞を、PBSで洗浄し、2%のPFA中に4℃で一晩固定化した。検体を遮断剤で処理し、次いでモノクローナル抗体で4℃にて一晩プローブした。次に検体をPBSで洗浄し、アレクサ染料結合抗体でプローブし、洗浄し、PBS中に浸漬させて、Leica DMI6000B倒立顕微鏡システムで撮像した。
【0219】
以下のマウス抗原に対するモノクローナル抗体を、様々な供給元から得た(各々の対応の供給元が、抗原の後ろの括弧内に列記されている):マウスコラーゲンII(Abcam,Cambridge,MA)、オステオカルシン(Abcam,Cambridge,MA)、ペリリピンA(Chemicon/EMD Millipore,Billerica,MA,USA)、CD31(Abcam,Cambridge,MA)、CD45(Biolegend,San Diego,CA)、レプチン受容体(R&D,Minneapolis,MN)、グレムリン2(Biorbyt LLC,San Francisco,CA)、Foxa2(Abcam,Cambridge,MA)、6C3(Abcam,Cambridge,MA、Thy(Abcam,Cambridge,MA)、DAPI(Abcam,Cambridge,MA)及びCD31(Abcam, Cambridge,MA)。アレクサ染料結合二次抗体は、Molecular Probes(Molecular Probes,Eugene,Oregon)から購入した。
【0220】
細胞培養:骨格前駆細胞は、低O2 条件(2%の大気酸素、7.5%のCO2 )下で、10%のFCS、1%のペニシリン-ストレプトマイシンを含むMEMアルファ培地中でインビトロにおいて培養される。培養容器は、初めに、0.1%のゼラチンで被覆された。培養細胞は、2mg/mlのコラーゲナーゼIIを含むM199(Sigma-Aldrich,St.Louis,Missouri)とインキュベートすることによって解析または継代用に採取される。mSSCコロニー形成アッセイについては、単一細胞を、96ウェルプレートの各ウェルに仕分けし、2週間にわたって培養した。この時点で、検体を位相差顕微鏡で検査し、クローニングリングを定量化に用いた。その後細胞を、FACSによる染色及び解析用に採取した。
【0221】
並体結合:並体結合を、記述される通りに行った。簡単に言うと、同一のB6/Ka経歴のGFP及び非GFPマウスの年齢及び性別を一致させたマウスを並体結合用に選択する。マウスに吸入麻酔で麻酔をかける。並体結合体の右側及びパートナーの左側の前肢の根元から後肢の根元まで皮膚を切開する。前肢及び後肢を関節において一緒に縫合し、一方、皮膚フラップの背側間及び腹側間の折り重なりを一緒にステープル止めする。鎮痛剤を手術後に投与する。並体結合から2週間後に、周辺試料を尾から採集し、並体結合体の血液のキメラ現象をFACSによって評価した。末梢血キメラ現象が、並体結合体間の循環系の完全融合を示す1:1の比に達してから3週間目に、BMP2-コラーゲンインプラントを鼠径部脂肪体の皮下脂肪中に移植した。
【0222】
BMP2によるインビボ骨誘導:10μgのrhBMP2(R&D Systems,Minneapolis,MN)を、30μlの無菌濾過した緩衝液(30mMのグルタミン酸ナトリウム、2.5%のグリシン、0.5%のスクロース、0.01%のツイーン80、pH4.5)中に再懸濁させ、次いで3×1.5×1.5cmの寸法のコラーゲンスポンジ(Helistat,Integra Life Sciences,Plainsboro、NJ)に塗布した。スポンジを凍結乾燥地、麻酔処理したマウスの皮膚の下に、腎被膜に、または大腿後部の筋肉に移植した。
【0223】
インビトロ培養(TGFβ、BMP-2、TNFα)補充アッセイ:5,000個のmSSC(GFP標識マウスに由来)を、低O2 条件(2%の大気酸素、7.5%のCO2 )下で、通常の培地[10%のFCS、1%のペニシリン-ストレプトマイシンを含むMEMアルファ培地]、またはTGFβ(5ng/mL)、BMP-2(100ng/mL)もしくはTNFα(10ng/mL)のいずれかで補充した通常の培地のいずれかと共培養した。培養後14日目に、コラーゲナーゼ消化緩衝液(前述したような)を用いて、FACSによる染色及び解析用に細胞を採取した。
【0224】
レプチン処理Thy(+)、BLSP集団からの調整培地の生成:10,000個の新たに単離したThy(+)及びBLSP細胞を、80%の細胞集密度に達するまで、通常の培地で3日間培養した。この段階で、培地を以下の3種の組換え成長因子:(組換えレプチン(1μg/mL)を含むかまたは含まない)IGF(125ng/mL)、FGF2(100ng/mL)及び硫酸ヘパリン(10U/mL)で補充された無血清培地に交換した。その後、細胞を14日間培養し、この時点で調整培地を採集した。10,000個の新たに選別されたmSSCを、次いで、異なる条件下で:(i)対象の通常の培地、(ii)レプチンで処理されたThy(+)サブセットからの調整培地、(iii)無血清培地で処理されたThy(+)サブセットからの調整培地、(iv)レプチンで処理されたBLSPサブセットからの調整培地、及び(v)無血清培地で処理されたBLSPサブセットからの調整培地で播種した。次いで、これらの細胞をFACS解析用に採集し、実験/対照培地中での培養後に存在するmSSCの数を決定した。
【0225】
定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応:RNAを、RNeasy Mini Kit(Qiagen,Valencia,CA)を用いて、製造元のプロトコールに従って培養細胞株から抽出した。逆転写を行い、遺伝子発現を、Applied Biosystems Prism 7900HT配列検出システム(Applied Biosystems,Foster City,CA)及びSYBR Green PCR Master Mix(Applied Biosystems)を使用する定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(qRT-PCR)によって検討した。外GAPDH標準曲線及びLightCyclerソフトウェアを用いて、PCR産物の量を計算した。全ての値を、対応する試料中のGAPDH発現に基づいて正規化した。検討された遺伝子(ノギン、グレムリン2、レプチン受容体)に対する特異的プライマーは、それらのPrimerBank配列に基づいた。
【0226】
VEGFシグナル伝達の阻害:(i)全身的VEGF阻害。VEGFシグナル伝達の全身的阻害を研究するために、可溶性ネズミVEGFR1細胞外ドメインをコードするアデノウイルスベクター(Ad sVEGFR1)の109 pfu単位を、移植前24時間に指定された受容マウスに静脈内注射し、肝臓感染及びVEGF/PIGFシグナル伝達のこの強力な拮抗薬の循環系への分泌をもたらした。負の対照については、ネズミIgG2<Fcイムノグロブリン断片をコードするアデノウイルス(Ad Fc)を用いた。これらの試薬は、別の個所で記述される。(ii)局所的VEGF阻害。VEGFシグナル伝達の局所的阻害を研究するために、50μgの可溶性VEGFR1(R&D Systems,Minneapolis,MN)を、3μgの凍結乾燥組換えBMP2を含有するコラーゲンスポンジと共に、マウスの鼠径部脂肪体の皮下脂肪中に配置した。
【0227】
大腿骨骨折:切開を鼠径部皮線から右大腿骨の膝まで行った。手による膝蓋骨脱臼後に、麻酔処理した8週齢のC57BL6野生型マウスの大腿骨に髄釘を挿入した。両皮質(bicortical)横骨幹部骨折を、ストレートマイクロシザーズを用いて作り出した。膝蓋骨を手で再配置し、その後の脱臼を防止するために縫合糸を配置した。皮膚切開部をナイロン縫合糸で閉じ、マウスに術後の鎮痛剤を投与した。マウスを骨折の配置後3日目、7日目及び21日目に犠死させた。カルスを採取し、構成細胞を、上で詳説したように機械的及び酵素的解離、その後のFACS分画化によって単離した。非損傷の左大腿骨は対照の非損傷大腿骨として機能した。後肢照射する8週齢のC57BL6マウスを、後肢だけを放射線に暴露させるように放射線遮蔽板に配置した。マウスに800rad(8Gy)の単一線量を後肢の両側に施した。骨折の外科的配置(上述された)を、放射12時間後に行った。
【0228】
シングルセルRNAソーティング:シングルセルRNAソーティングを前に記述された通りに行った。
【0229】
実施例2:ヒトSSC
実施例1で説明したように、遺伝子導入「レインボーマウス」モデル(クローンに由来する組織のインビボ追跡のための)を用いて、我々は、骨、軟骨、及び間質組織が、マウスにおいてクローン的に関連することを見出した。逆に、我々は、これらが、脂肪、血管、または骨格筋組織と同じクローン起源を共有することの証拠を見出し、骨、軟骨及び間質組織が、胚形成後にそれら独自の幹細胞/前駆細胞を生じさせることを暗示している。我々のヒト骨格幹細胞/前駆細胞のデータは、胎児及び成体骨格組織の両方におけるhSSC及びその下流側子孫細胞の存在を立証している。
【0230】
解析は、胎児及び成人ヒト組織の両方から新たに単離された一次細胞で行われたゲノム研究、分化能力、系統追跡を含む。腎臓の被膜下位置は、移植された骨格形成細胞の生着のための新規な骨外性部位であることが決定された。この技術の組み込みは、マウス研究において幹細胞/前駆細胞の特異的な予見的に単離された細胞サブセットの運命の可能性を検討するための機能的アッセイを定義する。細胞の被膜下の腎被膜移植は、(i)成体HSCを支援するために必要な骨髄ニッチェの最低限の細胞構成成分、及び(ii)完全に機能的なHSCニッチェの形成を開始するための能力を有するマウス胎児四肢骨からの細胞サブセットの特定を以前に可能にした。ヒト細胞解析に不可欠である技術的専門知識であるノックダウン及び過剰発現の両方を使用する異種移植モデルにおける細胞サブセットの監視及び重要な遺伝経路の評価を可能にする、新たに単離された胎児及び成体骨格前駆細胞をレンチウイルスベクターにより導入するために条件が最適化された。
【0231】
ヒト骨格幹細胞(hSSC)及びその下流側の系統限定前駆体の特定:実施例1に記載された戦略を用いて、FACSを用いる予見的単離によって、ヒト骨格組織から特定の骨格形成集団を精製した。我々は、機械的及び酵素的解離によって、17週のヒト胎児大腿骨の成長板から細胞を単離し、血管及び造血系統に存在するものに対応する表面マーカー(CD45、CD235、Tie2、CD31)についてそれらを解析した(
図16a~c)。解離したヒト胎児骨格細胞を、免疫不全マウスのマウス腎被膜に移植することによって、我々は、インビボで移植されるとき、CD45、CD235、Tie2、及びCD31に対して陰性の細胞のみが固有の骨格形成活性を有することを確認した(
図16c、右側パネル)。
【0232】
[CD45(-)CD31(-)Tie2(-)CD235(-)]の解離された胎児骨格細胞での遺伝子発現解析は、CD146、PDPN、CD73及びCD164が含まれる追加のマーカーを特定し、これらがヒト胎児大腿骨細胞を別個の集団にさらに分離し、次いで我々は、これらを腎被膜に移植し、これらの固有の骨格形成能力を決定した(
図16b~c)。我々は、成長板が、[CD45-CD235-Tie2-CD31-PDPN+CD146-]細胞を高頻度で有することを見出し、これは、CD164及びCD73の差次的発現を示す[PDPN+/146-]と以降称される。これらのマーカーの差次的発現は、[PDPN+/146-]集団を3種の集団に細分化することを可能にし、1つは、軟骨形成が可能な単能性サブセット[PDPN+CD146-CD73-CD164-]であり、1つは骨形成が可能な単能性サブセット[PDPN+CD146-CD73-CD164+]であり、1つは軟骨内(骨及び軟骨)骨化が可能である複能性[PDPN+CD146-CD73+CD164+]細胞である。
【0233】
検討された別個の集団の中で、[PDPN+CD146-CD73+CD164+]サブセットが、高頻度のコロニー形成単位(CFU)を生じさせた。加えて、インビトロコロニー形成アッセイの後に、我々は、これらのコロニーから再単離された[PDPN+CD146-CD73+CD164+]細胞が、連続するCFU形成能力を有することを見出している。したがって、我々のデータは、[PDPN+CD146-CD73+CD164+]細胞が、インビトロで自己再生するために幹細胞の特徴的な能力を有することを示している。
【0234】
重要なことに、我々は、[PDPN+CD146-CD73+CD164+]細胞が、38~73歳の患者での人工股関節置換術後に採集された成人大腿骨骨頭の検体から単離され得ることを見出した。人工股関節置換術は、非常に一般的であり、世界中のほとんどの主要な医療センターにおいて日常的に実施されているために、大腿骨骨頭の検体は、SSCの研究に携わりまた臨床的使用のための材料として入手しやすい供給源である(
図16d及びe)。胎児及び成人由来の[PDPN+CD146-CD73+CD164+]細胞の双方ともに、インビトロにおいて全ての他の骨格サブ集団を生じさせることができる(
図17a~b)。
【0235】
我々は、[PDPN+CD146-CD73+CD164+]hSSCのインビボでのクローン骨格形成活性をさらに追跡した。赤色、緑色または青色(RGB)蛍光タンパク質をコードするレンチウイルス遺伝子オントロジー(ontology)(LeGO)ベクターによって形質導入されたhSSCからのインビボクローン形成を追った。加法的色モデルによれば、個々のRGBマーク細胞は、多種多様な特有かつ高度に特異的な色を表す。色コードは細胞分裂後にも安定であり、したがって、インビボ及びインビトロでのクローン追跡を容易にする(
図17c)。このデータは、レンチウイルス形質導入後のhSSCが、インビトロ及びインビボの両方でクローンを形成することができることを立証している(
図17d~e)。
【0236】
胎児及び成人組織の両方からのヒトデータは、次の免疫表現型[PDPN+CD146-CD73+CD164+]によって定義される、インビトロでの骨、軟骨及び間質(hSSC,hSSC)の自己再生クローン前駆細胞を示している。これらの結果は、ヒト骨格形成前駆細胞が、造血と同じように、別個の表面マーカープロファイル及び骨格運命を伴い、多様性であることを示唆している。成人及び胎児由来のhSSCは、それらの固有の骨格形成能力をアッセイするために腎被膜へ移植することによって、また正常な骨格形成微小環境に関するそれらの分化能力を再評価するために免疫不全マウスの大腿骨腔にも移植することによって、機能的解析用に予見的に単離される。
【0237】
Gene Expression Commonsプラットフォームは、RNAマイクロアレイデータを、国立生物工学情報センター遺伝子発現情報データベースから公開されているマイクロアレイデータの大量の(n=11,939)コレクションである共通参照に対して正規化する。これは、骨芽細胞、軟骨形成細胞、または線維芽細胞関連遺伝子を特異的表面マーカーと互いに関係付けるために、追加の細胞表面マーカーの特定を可能にする革新的なアルゴリズム的システムである。これらのマーカーは、特徴的なコロニー形成能力及び発生運命を有する別個の前駆細胞サブセットを解明することができる。ヒトSSC系統マップにおいて新たに解明される骨格形成前駆細胞のインビボにおいて骨格組織へと分化するための発生運命は、マウス異種移植モデルの腎被膜下にこれらを移植することによって決定される。新たに単離された骨格幹細胞/前駆細胞は、レンチウイルスベクターで形質導入され、各々の移植された細胞のクローン性がインビボで追跡された(
図17d)。
【0238】
hSSC[PDPN+CD146-CD73+CD164+]は、インビトロ及びインビボで一連の段階を通して、前駆細胞サブ集団の全てを系統的に発生させると予測される(
図18)。個々のヒト骨格前駆細胞サブセットの下流側のサブタイプを発生させるための比較による可能性を評価するために、妊娠17週での大腿骨及び成人大腿骨骨頭からの、FACS精製されレンチウイルスで標識付けされた幹細胞及び前駆細胞を、(i)インビトロ及び(ii)インビボの両方で試験する。
【0239】
インビトロ:個々のレンチウイルスで標識付けされ、新たに選別されたhSSCを、腎被膜中に14日間にわたって移植し(フィーダーとしての5,000個の非標識の解離された胎児骨細胞と共に)、この時点で、これらを外植し、FACSによって再分画し、その後、機能的読み出しのために、腎被膜下に再移植する。データは、hSSCが、連続的コロニー形成アッセイにおいて、自己再生及び分化の両方を行ったことを示唆している(
図17d及びe)。hSSCは、単一細胞播種後に、幹細胞特性を踏まえて、(i)下流側前駆細胞を直系的に発生させ、及び(ii)連続的コロニー形成アッセイで自己再生ならびに分化の両方を行うことが予測される。
【0240】
インビボ:2,000個の新たに単離された胎児及び成人hSSCを、RAGγマウスの腎被膜中に移植し、次いで生着された前駆細胞を、分析用に、移植から2/4/8週後、または6ヶ月後に外植する。データは、初期の異種移植されたヒト骨格前駆細胞が、腎被膜下に移植の4週間以内はHSCを支援することができる成熟した骨、軟骨、及び間質細胞を発生させることができることを示している。ヒト移植片の発生運命は、骨、軟骨、及び間質組織を識別するモバットペンタクロム染色を用いる組織学的分析によって示される(
図16c)。移植細胞の表現型の結果を、明らかにFACSで画定された骨格サブセットに良好に関係付けるために、外植下移植片組織を解離し、FACSにより解析する。
【0241】
実験方法:
蛍光活性化セルソーティング(FACS)を用いるヒト胎児骨格前駆細胞の単離:妊娠17週のヒト胎児組織は、StemExpress(Placerville,CA,USA)から購入する。ヒト胎児四肢骨を細かく切り分け、DNアーゼで補充したコラーゲナーゼ消化緩衝液中で、一定の攪拌下で37℃にて40分間、連続的に消化し、解離された細胞全体を40mmのナイロンメッシュを通して濾過し、4℃で200gにてペレット状にし、染色培地(PBS中、2%のウシ胎児血清)中に再懸濁させて、70μmのノズルを使用するFACS Aria II Instrument(BD Biosceiences,San Jose,CA)でのFACS解析用に、CD45、CD235ab、Tie2、CD31、CD146、PDPN、CD73、CD164についてフルオロクロム結合抗体で染色する。
【0242】
蛍光活性化セルソーティング(FACS)を用いる成人骨格前駆細胞の単離:人工股関節置換術で処分された大腿骨骨頭組織を、スタンフォード整形外科サービスから得る。骨格組織を、髄腔を含む大腿骨の異なる領域から機械的に除去し、次いで、DNアーゼで補充したコラーゲナーゼ消化緩衝液中で、一定の攪拌下で37℃にて40分間、連続的に消化し、解離された細胞全体を40mmのナイロンメッシュを通して濾過し、4℃で200gにてペレット状にし、染色培地(PBS中、2%のウシ胎児血清)中に再懸濁させて、100μmのノズルを使用するFACS Aria II Instrument(BD Biosceiences,San Jose,CA)でのFACS解析用に、CD45、CD235ab、Tie2、CD31、CD146、PDPN、CD73、CD164についてフルオロクロム結合抗体で染色する。
【0243】
細胞培養:骨格前駆細胞を、低O2 (2%の大気酸素、7.5%のCO2 )条件下で、20%のFCSを含むMEMα培地中で、プレコートされた(0.1%のゼラチンで)培養容器上でインビトロにて培養する。細胞を、コラーゲナーゼ消化緩衝液とインキュベーションし、その後の染色培地によるコラーゲナーゼ酵素活性の中和及び最終的遠心分離によって、解析/継代用に採取する。
【0244】
インビトロコロニー形成アッセイ:hSSCの集団を、シングルセルソーティングの前にFACSで選別する。hSSCコロニー形成単位を、倒立顕微鏡を用いて40倍の倍率下で特定する。コロニーを、サイズ及び細胞形態について評価する。
【0245】
ヒト骨格前駆細胞の高度に精製された集団のマイクロアレイ解析:マイクロアレイ解析用のRNA抽出のために、我々の研究室が公開した技術を用いて、また最大の精度を保証するために3回繰り返して(3つの異なる試料)、各細胞サブ集団を、妊娠17週のヒト胎児の四肢または成人大腿骨骨頭からFACSによって得る。RNAを、RNeasy Micro Kit(Qiagen)で、製造元の使用説明に従って単離する。mRNA増幅を、3’インビトロ転写用の2サイクル標的標識付けシステムを用いて実行し、ヒトゲノムU133プラス2.0アレイにハイブリダイズし、製造元のプロトコール(Affymetrix)に従ってスキャンする。バックグラウンド補正及びシグナル正規化を、標準マルチチップ平均アルゴリズムを用いて実施する。
【0246】
Gene Expression Commons(GEXC)を用いるマイクロアレイ解析:マイクロアレイ解析から得られた生データを、データセットを得るために我々の研究室で構築されたシステムであるGEXCにアップロードする。GEXCプラットフォームは、RNAマイクロアレイデータを、共通参照(国立生物工学情報センター遺伝子発現情報データベースから公開されているマイクロアレイデータの大量の(n=11,939)コレクションである)に対して正規化し、遺伝子発現の変化倍率を表すヒートマップを生成する。GEXC解析はまた、1つの集団ではなされるが別の集団ではなされない選択的にアップレギュレートされる遺伝子を特定するために、差次的発現解析を行うように直感的ユーザフレンドリインターフェースも提供する。
【0247】
胎児及び成人細胞の免疫不全マウスの腎被膜下の移植:腎被膜移植を、前に公開したように行う。簡単に言うと、全身麻酔下で、鈍的切開を行い、免疫抑制状態にあるRAGγマウスを特定する。RAGγマウスは、成熟B、T、及びNK細胞の形成に必須であるRag2ポリメラーゼ及びIL2受容体のホモ接合欠失のために免疫不全である。25ゲージの針を用いた小さな腎臓包切開により、カニューレの鈍い注射及びマトリゲルにかかる2,000個の細胞を腎被膜の下に位置することができる。腎実質と腎被膜との間の目に見える気腫性嚢胞の形成及び大量出血または注入細胞の腎臓外漏出の欠如が、良好な注入のための基準として用いられる。腎臓の上の組織と皮膚との重なりは閉鎖的に縫合される。次いで、腎臓の上の上層組織及び皮膚を縫合閉塞する。配置後2/4/8週目または6ヶ月目に、移植片を、解剖顕微鏡を用いて外植することになり、細胞の酵素的消化及びその後の機械的解離後のFACSもしくは組織学的分析によって解析される。
【0248】
インビトロ骨格前駆細胞分化アッセイ:新たに単離された骨格前駆細胞を、記述したようにレンチウイルスベクターで経口標識する。このプロセスは、赤色、緑色または青色(RGB)蛍光タンパク質をコードするレンチウイルス遺伝子オントロジー(LeGO)ベクターによる標的細胞の同時形質導入を利用する。加法的色モデルによれば、個々のRGBマーク細胞は、多種多様な特有かつ高度に特異的な色を表す。色コードは細胞分裂後にも安定であり、したがって、インビボ及びインビトロでのクローン追跡を容易にする(
図17c~d)。形質導入から8時間後に、明らかに形質導入された集団をFACSによって単離し、次いで、未選別/非標識の前駆細胞集団全体と、それら自体で、または別個にFACSで単離された分画のいずれかと共に、MEMα培地中で共培養する。
【0249】
インビボ骨格前駆細胞分化アッセイ:形質導入後に、FACSで単離された集団を、マトリゲル(Corning,NY)中に埋め込み、上記のように腎被膜下に移植する。移植から1ヶ月後に、移植片を受容マウスの腎臓から外植し、FACSによる解析用に解離する(酵素的及び機械的に)。外植された移植片の一部を、組織学的分析用に固定化かつ調製する。
【0250】
組織学的分析:細かく切り分けた検体を、切片化及びモバットペンタクロム染色を用いる軟骨内骨化についての染色のために、固定化し、脱灰し、パラフィンまたはOCT中に埋め込む。我々は、それぞれアジポネクチン及び平滑筋アクチンなどの脂肪細胞及び線維細胞に特異的な分化マーカーを用いて、移植され、免疫染色により精製された我々の集団によって生じた潜在的非骨格運命を評価する。
【0251】
実施例3:
幹細胞運命は、その中に細胞が存在する特殊化された微小環境または「ニッチェ」によって影響される(
図19a~b)。ニッチェシグナル伝達を調節することは、我々がmSSCで観察したように、幹細胞の増殖を誘導することによって組織成長を刺激することができる。ニッチェ相互作用はまた、系統委託を維持することで重要な役割を果たすことができ、例えば、局所的BMP2シグナル伝達の増加は、マウスSSCの増殖及び生存を促進することが可能である。hSSCに関するマイクロアレイデータは、我々が観察したBMP、WNT、及びVEGFシグナル伝達に関する遺伝子の保存が、mSSCの生存、増殖、及び分化に関与することを立証した(
図19c~e)。したがって、hSSCのニッチェ微小環境における自己分泌及びパラ分泌シグナル伝達の系は、それらの増殖、活性及び分化を調節する(
図19b)。BMP2、WNT及びVEGFAなどの特異的外因性モルフォゲンの適用は、最低限の条件におけるhSSCの生存、及び/または増殖をもたらすニッチェシグナル伝達を模倣することができる。あるいは、BMP2、WNTまたはVEGFの他の組み合わせが、骨、軟骨または間質などの特定の骨格運命に向かうSSCの分化を促進する場合もある。
【0252】
FACSで精製されたヒト骨格幹細胞/前駆細胞の比較マイクロアレイ解析は、hSSC及び粗前駆細胞集団中で明白にアップレギュレートされる特異的遺伝子を特定している。データは、我々のマウス研究において確認されたことを反映するhSSC中のBMP2の高転写発現を例証している(
図19d)。加えて、WNT及びVEGF依存的シグナル伝達経路に関与する遺伝子の高転写発現は、マウス骨格前駆細胞での我々の所見と同様に、hSSC及びそれらの下流由来の前駆細胞において見られる(
図19e)。逆に、我々は、hCP(ヒト軟骨形成前駆細胞サブセット)ではVEGFの発現の減少を観察した。これは、VEGF拮抗作用が、内因性及び誘導マウスSSCによる軟骨細胞分化を促進するとの観察と一致する(
図20e)。BMP2、WNT及びVEGF経路は、マウス及びヒトのSSCの増殖、形成、及び分化を調節することに大いに関与する(
図19f)。
【0253】
ヒト前駆細胞が、最低限の条件においてhSSCの生存及び増殖を維持することができるかどうかを決定する。インビトロ:レンチウイルス的に蛍光(例えば、GFP)標識された間質サブセットを新たに採取したhSSCと、異なる色で標識付けされた(例えば、RFP)無血清条件において共培養する。共培養から2週間後に、hSSCの相対的パーセントをFACSによって決定し、特定の間質サブセットが最低限の条件においてヒト骨格幹細胞/前駆細胞の生存及び増殖を維持する能力を決定する。インビボ:別個の間質分画のhSSC活性に影響を及ぼす能力を、100~200個の差次的に蛍光タンパク質標識されたhSSCを別個の間質サブセットとRAGγマウスの腎被膜下に同時移植することによって、次いで1ヶ月後に解離及びFACS/組織学による解析用に生着した組織を外植することによって直接的に試験する。我々は、このアッセイにおいて、100~200個のhSSCを移植した。別個の前駆細胞サブタイプの体系的プロファイリングが、ヒト幹細胞/前駆細胞の生存/増殖に必要とされる最低限のインビボ条件の特定を可能にする。別個のヒト骨格前駆細胞サブセットは、最低限の条件においてhSSCの生存及び増殖を維持する。
【0254】
BMP2、WNT3A、及びVEGFの、単独または組み合わせでの、インビボ及びインビトロでの最低限の条件においてヒト胎児及び成人骨格幹細胞/前駆細胞の管理、増殖及び分化を調節するための役割:別個のhSSCニッチェ経路の役割を、市販の精製組換え因子(BMP2、WNT及びVEGF)を用いて、それらを、単一の薬剤として、またはGEXCを通してのマイクロアレイ解析によって示されるようなhSSC上のそれらの特定の同族受容体特定の表現と一致する特定の組み合わせで、培養中(無血清培地での)のhSSCに投与することによって直接的に評価する。BMP2、WNT、及びVEGF経路に関する重要な遺伝子の発現を、シングルセルRNAシークエンシングを用いて検証する(
図19f)。
【0255】
インビトロ:これらの因子の組み合わせを、hSSCを、BMP2、WNT及びVEGF(複数可)のデポーとの直接の組み合わせで移植することによって、hSSCで試験する。BMP2、WNT及びVEGFの候補組み合わせの活性をその場で評価するために、また無傷のhSSC環境の骨格マトリックスの潜在的調節作用としての役割を評価するために、無傷の胎児四肢原基(例えば、指骨)の移植後に構築された無傷の異種移植されたヒト胎児の骨を、BMP2、WNT及びVEGFまたは溶媒/PBS対照を、速度制御された一定の毎日の送達で(モルフォゲン(複数可)のバースト放出をもたらし得る超生理的デポー剤送達よりはむしろ)投与する移植可能な浸透圧ポンプに連結された小型カテーテルを用いて皮下移植する。処置及び未処置のヒト胎児四肢を、全体的形態についてアッセイし、組織学検査によってまたはFACS用に解離し、hSSC及び下流側の骨格サブセットの相対的な存在量を決定する。
【0256】
特定のhSSC-ニッチェ相互作用における重要なシグナル伝達経路を、間質細胞中のシグナル伝達リガンド発現またはhSSC中のその対応する受容体のいずれかのレンチウイルスが仲介するサイレンシングを用いてさらに評価する。
【0257】
実験方法
間質サブセットとのインビトロ及びインビボ共培養のためのhSSCのレンチウイルス標識付け:(GFP、RFPまたはCFP)レンチウイルスによるトランスフェクションによって、hSSCを経口標識付けする。形質導入から8時間後に、明らかなGFP、RFPまたはCFP形質導入集団をFACSによって単離する。これは、インビトロ及びインビボの両方におけるhSSCと間質集団との間の機能的相互作用の観察を可能にする。
【0258】
ヒト骨格前駆細胞の高度に精製された集団のマイクロアレイ解析:この解析を行い、データを、GEXCを用いて解析する。GEXCを用いて、hSSCと骨格ニッチェの他の細胞構成成分との間の細胞間相互作用をマップする。リガンドを発現するか、またはBMP、WNT及びVEGFシグナル伝達に関与する間質細胞を特定する。
【0259】
シングルセルRNAシークエンシングによる単一細胞遺伝子発現解析:BMP2、WNT、及びVEGF経路の遺伝子の発現パターンを単一細胞レベルで決定するために、単離、精製したhSSCをC1マイクロ流体システム(Fluidigm)で利用して、ウェルごとに単一細胞を捕捉する。C1システムは、単一細胞を捕捉するためにマイクロ流体回路を使用し、その後、細胞溶解、RNA単離、cDNA調製、及びcDNAの増幅を完全自動様式で行う。ライブラリーを、Nextera-XTキット(Illumina)を用いて個々の細胞からの増幅されたcDNAを用いて調製し、Nextseq-500プラットフォーム(Illumina)を用いて配列決定し、細胞当たりおよそ1,000万~1,500万個の2×150の塩基対のペアエンド読み取りを得る。
【0260】
hSSCの間質サブセットとの共培養:レンチウイルス的に形質導入された差次的に蛍光標識付けされた間質サブセット及び新たに採取されたhSSCを、無血清条件において共培養する。共培養から1週間後に、hSSCの相対的パーセントをFACSによって決定し、特定の間質サブセットの最低限の条件においてhSSCの生存及び増殖を維持する能力を判定する。
【0261】
間質サブセット(複数可)の存在下でのhSSC挙動のFACS解析:(差次的に蛍光標識されたhSSC及び別個の間質前駆細胞との)共培養から1週間後に、hSSCの相対的パーセントをFACSによって決定し、次いで、再選別し、インビボで移植し、特定の間質細胞サブタイプ(複数可)が、インビボでhSSCを維持し、増幅させ、または特定の骨格系統に分化させることができるかを判定する。
【0262】
免疫不全マウスの腎被膜下の細胞の移植:直接同時移植アッセイ:100~200個のhSSCを、hSSCに影響を及ぼすことを見出されている間質サブセット(複数可)とインビボで直接的に同時移植する。移植片を外植し、FACSにより解析する。
【0263】
インビトロで遺伝子機能を評価し、またインビボで細胞の機能を操作するためのサイトカイン因子の使用:インビトロで遺伝子機能を評価しかつ特定された重要な調節遺伝子の役割を評価するために、hSSCをサイトカイン増殖因子(例えば、BMP2、WNT及びVEGF)の存在下で共培養する。これらのサイトカイン増殖因子の最適濃度を、増殖因子のバッチ毎に測定された活性による製造元の推奨の通りに決定する。コロニー形成アッセイは、hSSCの増殖、分化及び生存を調節するためのBMP2、WNT及びVEGFの特定の組み合わせの作用を測定することを可能にする。
【0264】
レンチウイルスを用いるhSSC及び間質サブセットにおける遺伝子サイレンシング:差次的に調節されhSSCとニッチェの細胞構成成分との間の相互作用でニッチェを調節するために必要とされる特定の遺伝子の役割を評価するために、BMP2、WNT及びVEGFシグナル伝達に関与する遺伝子を、遺伝子のshRNAレンチウイルス仲介抑制を用いて、遺伝子をサイレンシングさせる。特定のhSSCとニッチェとの相互作用において重要なシグナル伝達経路を、間質細胞中のシグナル伝達リガンドの発現またはhSSC中のその対応する受容体のいずれかのレンチウイルス仲介サイレンシングを用いて評価する。
【0265】
インビトロ及びインビボでの組換えモルフォゲンによるhSSCの操作:hSSC分化運命を制御する重要な調節経路を、上述したマイクロアレイ解析を用いて特定する。これは、hSSCを用いるインビトロ及びインビボ解析のためのBMP2、WNT及びVEGFなどのサイトカイン増殖因子の組み合わせの特定を可能にする。細胞を組換えBMP2、WNT及びVEGFと共培養し、2週間後に、細胞を、(i)FACSを用いて解析するか、または(ii)免疫不全マウスの腎被膜下に移植する。1ヶ月後に、これらの移植片を外植し、組織学的方法及び免疫蛍光法の組み合わせを用いて、これらのサイトカインのhSSC分化及び増殖に及ぼす役割を評価する。組換えモルフォゲン(複数可)の効果を、モルフォゲンデポーをhSSCと同時移植することによって、例えば、BMP2、WNT及びVEGFを持続放出するヒドロゲルを植え付けることによって、インビボでhSSCで試験する。
【0266】
胎児四肢原基の移植:胎児四肢原基を、妊娠10~12週のヒト胎児の指骨から単離する。麻酔下で、原基をRAGγマウスの背皮下空間に移植する。1ヶ月後に、原基を外植し、組織学的方法を用いて形態を評価する。
【0267】
インビボでの胎児原基へのサイトカイン送達:異種移植されたヒト胎児四肢原基のパターニング及び増殖を、皮下浸透圧ポンプを用いてサイトカイン増殖因子(例えば、BMP2、WNT及びVEGF)を局所的に送達させることによって操作する。ポンプは、Alzet(Cupertino,CA)から購入する。皮下ヒト胎児骨異種移植片を構築するために、ヒトの骨原基を、StemExpress(Placerville,CA,USA)から購入した妊娠後10~12週齢のヒト胎児組織から細かく切り分ける。切り分けた原基を皮下移植し、1本の縫合糸で定位置に固定する。浸透圧ポンプのカテーテルを移植片のそばに配置し、また1本の縫合糸で固定する。処置から1ヶ月後に、原基は、組織学及び免疫蛍光法による解析用に外植することになる。サイトカイン処置の効果を、サイトカインで処置されなかった原基と比較することによって機能的に評価する。
【0268】
組織学的&免疫蛍光法(IF):IFを凍結保存された異所性骨検体で、Vector Laboratories(CA)からのM.O.M.免疫検出キットで、前に述べた通りに行う。簡単に言うと、検体を遮断剤で処理し、モノクローナル抗体で4℃にて一晩プローブし、PBSで洗浄し、アレクサ染料結合抗体でプローブし、洗浄し、カバーガラスで覆って、Leica DMI6000B倒立顕微鏡システムで撮像する。IFを組織培養細胞検体で、凍結保存検体で使用されたものと同様に行う(画像解析:共焦点顕微鏡、Zeiss 780共焦点システム)。
【0269】
血管シグナル伝達の全身的阻害:骨格ニッチェ調節に及ぼす、具体的には軟骨形成運命の促進に及ぼすVEGF阻害の効果を研究するために、可溶性ネズミVEGFR1細胞外ドメインをコードするアデノウイルスベクター(Ad sVEGFR1)の109 pfu単位を、移植24時間前に指定された受容マウスに静脈内注射し、肝臓感染及びこの強力なVEGFシグナル伝達の拮抗薬の循環系への分泌をもたらす。負の対照として、ネズミIgG2αFcイムノグロブリン断片をコードするアデノウイルス(Ad Fc)を用いる。移植片を、移植から3週間後に外植する。
【0270】
実施例4:
ヒト脂肪組織の骨、軟骨、または骨髄間質への有効なその場での初期化のための条件:SSC形成を可溶性因子によって誘導し、その後にSSCニッチェを、その骨、軟骨、または間質細胞に向かう分化に特定するように調節することは、骨格組織の再生治療におけるパラダイムシフトを意味する。SSC形成のその場での誘導が、マウス脂肪組織において可能であり、BMP2は、ヒト脂肪組織におけるSSCのその場での誘導を誘発することができる(
図20a~c)。この治療法は、内因性mSSCの常在レベルが疾患または加齢によって枯渇されている場合であっても、骨格欠損また変性を治療するための能力を拡大する。脂肪は自然界に豊富にあり、骨格前駆細胞に初期化され得る間葉系細胞の容易に入手できる供給源を提供する。この戦略は、骨関節炎及び骨粗鬆症などの骨格疾患に対する莫大な技術移転の可能性を有する(
図21)。
【0271】
BMP2の特定の濃度は、マウスで見られるように、脂肪組織中に常在する非骨格間葉系細胞において骨格形成転写プログラムの活性化を誘発することができる。これらの脂肪由来誘導SSC(iSSC)は、次いで、その場での骨格組織再生治療のために、追加の因子(WNT、VEGF)により特定の骨格運命(例えば、骨、軟骨、または骨髄間質)に向かって方向付けされ得る。脂肪由来間質細胞の(WNT、及びVEGF)などのSSCを誘導するBMP2及びSSCを特定するニッチェ因子との組み合わせでの送達は、損傷部位での誘導骨格組織形成を最大化するであろう。
【0272】
ヒト脂肪由来間質は、BMPR1Bを発現し、このことは、これらがBMP2シグナル伝達に応答することを示唆している(
図20a、上部)。未選別の造血枯渇ヒト脂肪間質細胞(hASC)は、0.3mg/mlのBMP2と共にRagγマウスに皮下移植されるとき、効果的に骨を形成する(
図20c)。これらのデータは、BMP2のhSSCを脂肪由来細胞で誘導するための使用を支援する。
【0273】
RhBMP2タンパク質は、(i)マウスにおいてその場で、または(ii)hASCがBMP2と同時移植されるとき、脂肪組織においてSSC形成を誘導することができる(
図20c)。hASC中でhSSCの形成を誘導するために必要なBMP2の最適濃度を決定する:磁気活性化セルソーティングによる造血細胞枯渇後に、10
6 個の新たに単離されたhASCを、増大する濃度の(1μg/ml~1mg/ml)rhBMP2を含有するマトリゲル中に再懸濁させ、合計で20μlの容量を、RAGγアクチン-CFP遺伝子導入マウスに皮下移植する。移植片を、ヒト骨格前駆細胞のモバットペンタクロムによる組織学的分析及びFACS用に、1週間間隔で外植する。BMP2誘導mSSCは、第1週で軟骨形成をもたらし、第4週までに骨/骨髄形成をもたらす軟骨内骨化を受ける。アッセイされたBMP2の濃度当たりの誘導骨形成のペースを決定するために、移植片を1週間間隔で外植する。BMP2の骨を誘導するための最適濃度を決定した後に、バッチ毎の100×活性単位を他の骨格調節因子(例えば、VEGFR、WNT)と共に同時注入し、BMP2誘導軟骨形成または骨形成を続けるための能力を決定する(
図20a及びe)。
【0274】
脂肪組織における複数の相異なる細胞型が、BMP2誘導骨格形成を受ける可能性がある。ヒト脂肪組織におけるこれらの細胞型の正体を解明することは、BMP2仲介骨誘導の機構を明瞭にさせ、病気のまたは損傷した骨格組織を再生するようにこの応答を操作する新しい方向を明らかにすることができる。hASCの別個のサブセットはBMPRを発現し、このことは、これらがBMP仲介シグナル伝達に応答することを示唆している。培地をBMP2で補充した後に、hASCを、PDPN及びCD146が含まれるhSSC及び下流側の前駆細胞(hBCSP)サブセットで特定された特徴付けマーカーのいくつかを発現するように誘導する(
図20a)。BMPRが骨格形成を受ける能力がある細胞を画定するかどうかを決定するために、BMPR発現サブセットの別個の集団をFACSによって単離し、マトリゲル中でBMP2と共に、RAGγCFPマウスに皮下に同時移植する。移植片を、移植から4週後に外植し、この時点は、BMP2誘導骨格形成がインビボでそのピークに達する時間に相当する。試料をペンタクロム染色によって組織学的に分析する。ネズミ対ヒト組織は、CFPの発現を通して確認される。ヒト核抗原による染色は、適宜ヒト組織をマークするために陰性のCFP発現に取って代わる。BMP2誘導骨格形成が、BMPR発現の程度と相互に関連することが予測される。
【0275】
実験方法
hASCの単離:hASCは、前に述べたように、腹部、脇腹、及び/または大腿領域の選択的な脂肪吸引術を受けている健常者からの吸引脂肪組織から新たに単離される。
【0276】
磁気活性化セルソーティング:hASCを、磁気ビーズに結合されたCD45及びCD235抗体(Miltenyi Biotech,San Diego,CA)と共に、連続回転下で4℃にて20分間インキュベートする。造血細胞のhASCを枯渇させるために、細胞を磁石内に通過させる。この処置は、FACSによるさらなる分離の前に、新たに脂肪吸引された組織を間質細胞に対して富化させる。
【0277】
インビトロでのhASCのrhBMP2による補充:hASCを、上記のように単離し、rhBMP2の1μg/ml~1mg/mlの増加する濃度の存在下で培養する。
【0278】
rhBMP2の増加する濃度でのhASCの皮下移植:新たに枯渇されたhASC(106 個)を、rhBMP2の1μg/ml~1mg/mlの増加する濃度を含むマトリゲル中に再懸濁させ、合計で20μlの容量で、その後、RAGγアクチン-CFP遺伝子導入マウスの鼠径部脂肪体に皮下移植する。ヒト骨格前駆細胞についてのモバットペンタクロムによる組織学的分析及びFACS用に、移植片を1週間間隔で外植する。
【0279】
BMPR1a、BMPR1b、BMPR2を発現するhASCの単離:hASCを上記のように単離し、染色培地(PBS中、2%のウシ胎児血清)中に再懸濁させ、FACS Aria II Instrument(BD Biosceiences,San Jose,CA)でのFACS解析用に、BMPR1a/BMPR1b/BMPR2について蛍光色素結合抗体で染色する。
【0280】
関連出願の相互参照
本出願は、2015年1月8日に出願された米国仮特許出願第62/101,282号に対する優先権を主張するものであり、この出願の開示は、参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0281】
政府の権利
本発明は、国立衛生研究所によって授与された契約番号HL058770の下で、政府の支援を用いてなされたものである。政府は、本発明における特定の権利を有する。