(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-15
(45)【発行日】2022-03-24
(54)【発明の名称】濾過装置
(51)【国際特許分類】
B01D 29/11 20060101AFI20220316BHJP
B01D 27/08 20060101ALI20220316BHJP
【FI】
B01D29/10 501C
B01D29/10 510C
B01D27/08
(21)【出願番号】P 2018005226
(22)【出願日】2018-01-16
【審査請求日】2020-12-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000178675
【氏名又は名称】ヤマシンフィルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100170070
【氏名又は名称】坂田 ゆかり
(72)【発明者】
【氏名】岡本 美信
(72)【発明者】
【氏名】若林 正法
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 晋也
【審査官】瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-122917(JP,A)
【文献】国際公開第2016/174777(WO,A1)
【文献】実開昭60-168593(JP,U)
【文献】特開2017-042754(JP,A)
【文献】特表2005-521546(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 24/00-35/04、35/08-37/08
C02F 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端に開口を有する中空円筒形状の濾材と、前記濾材の上端の開口部を覆うように設けられる第1プレートと、前記濾材の下端の開口部を覆うように設けられる第2プレートと、を有するフィルタエレメントと、
前記フィルタエレメントが内部に設けられた有底略円筒形状のフィルタケースと、
前記フィルタケースの上端の開口部を覆うように設けられた蓋部材と、
を備え、
前記第1プレートは、前記フィルタエレメントが前記フィルタケースに挿入された状態で前記蓋部材に向けて突出する略円筒形状の第1筒状部を有し、
前記蓋部材は、前記第1筒状部の中空部に挿入される第2筒状部と、前記第2筒状部が前記第1筒状部に挿入されたときに前記第1筒状部の外周面に沿って設けられるリブと、を有し、
前記第1筒状部は、径方向外側に突出する第1突起を有し、
前記リブは、第1切り欠きを有し、
前記第1プレートに前記蓋部材が取り付けられた状態では、前記第2筒状部が前記第1筒状部に挿入されており、前記第1突起が前記第1切り欠きに挿入されている
ことを特徴とする濾過装置。
【請求項2】
請求項1に記載の濾過装置であって、
前記第1筒状部は、径方向外側に突出する第2突起を有し、
前記リブは、第2切り欠きを有し、
前記第2突起は、周方向において前記第1突起と異なる位置に設けられ、
前記第2切り欠きは、周方向において前記第1切り欠きと異なる位置に設けられ、
平面視において前記第1突起及び前記第2突起は均等に配置され、
平面視において前記第1切り欠き及び前記第2切り欠きは均等に配置され、
前記第1プレートに前記蓋部材が取り付けられた状態では、前記第2切り欠きに前記第2突起が挿入されている
ことを特徴とする濾過装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の濾過装置であって、
平面視において前記第1筒状部と前記リブとの位置が重なり、
前記リブと前記第1筒状部とが重なる部分を切り欠くように前記リブに凹部が形成され、
前記第1プレートに前記蓋部材が取り付けられた状態では、前記凹部の底面が前記第1筒状部の先端に隣接する
ことを特徴とする濾過装置。
【請求項4】
請求項3に記載の濾過装置であって、
前記第1筒状部は、先端側に設けられた小径部と、根元側に設けられた大径部と、を有し、
前記小径部は、前記大径部より外径が小さくなっており、
平面視において前記リブと前記小径部の位置とが重なり、前記リブと前記小径部とが重なる部分を切り欠くように前記リブに前記凹部が形成され、
前記第1プレートに前記蓋部材が取り付けられた状態では、前記リブは前記小径部の外周面に沿って設けられ、前記リブの先端は前記小径部と前記大径部との間に形成された平面部に隣接する
ことを特徴とする濾過装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濾過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、フィルタエレメントの端面に向かって突出した蓋側凸部が蓋部材の下面に形成され、蓋側凸部と嵌合する形状のフィルタ側凹部がフィルタエレメントに形成されたフィルタ構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の発明では、蓋側凸部やフィルタ側凹部が形成された部品(いわゆる正規品)の蓋側凸部やフィルタ側凹部を切削加工することにより、蓋側凸部やフィルタ側凹部が形成されていない部品(いわゆる非正規品)が使用可能となってしまう。非正規品の使用により、濾過性能が低下したり、液体が漏れたりするおそれがある。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、正規品以外の部品(いわゆる非正規品の部品)の使用を防止することができる濾過装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る濾過装置は、例えば、両端に開口を有する中空円筒形状の濾材と、前記濾材の上端の開口部を覆うように設けられる第1プレートと、前記濾材の下端の開口部を覆うように設けられる第2プレートと、を有するフィルタエレメントと、前記フィルタエレメントが内部に設けられた有底略円筒形状のフィルタケースと、前記フィルタケースの上端の開口部を覆うように設けられた蓋部材と、を備え、前記第1プレートは、前記フィルタエレメントが前記フィルタケースに挿入された状態で前記蓋部材に向けて突出する略円筒形状の第1筒状部を有し、前記蓋部材は、前記第1筒状部の中空部に挿入される第2筒状部と、前記第2筒状部が前記第1筒状部に挿入されたときに前記第1筒状部の外周面に沿って設けられるリブと、を有し、前記第1筒状部は、径方向外側に突出する第1突起を有し、前記リブは、第1切り欠きを有し、前記第1プレートに前記蓋部材が取り付けられた状態では、前記第2筒状部が前記第1筒状部に挿入されており、前記第1突起が前記第1切り欠きに挿入されていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る濾過装置によれば、フィルタエレメントの第1プレートに蓋部材が取り付けられた状態では、フィルタエレメントがフィルタケースに挿入された状態で蓋部材に向けて突出する略円筒形状の第1筒状部に、蓋部材に形成された第2筒状部が挿入される。蓋部材には第1筒状部の外周面に沿って設けられるリブが形成され、リブには第1切り欠きが形成され、第1筒状部に径方向外側に突出するように形成された第1突起が第1切り欠きに挿入される。このような第1突起及び第1切り欠きを有する部品(正規品)に対し、第1突起や第1切り欠きが設けられていない部品(いわゆる非正規品)の場合には、第1突起と第1切り欠きが当たってしまい、フィルタケースと蓋部材とが完全に取り付けられず、濾過装置を使用することができない。このように、正規品に第1突起及び切り欠きを設けることで、正規品以外の部品(いわゆる非正規品の部品)の使用を防止することができる。
【0008】
ここで、前記第1筒状部は、径方向外側に突出する第2突起を有し、前記リブは、第2切り欠きを有し、前記第2突起は、周方向において前記第1突起と異なる位置に設けられ、前記第2切り欠きは、周方向において前記第1切り欠きと異なる位置に設けられ、平面視において前記第1突起及び前記第2突起は均等に配置され、平面視において前記第1切り欠き及び前記第2切り欠きは均等に配置され、前記第1プレートに前記蓋部材が取り付けられた状態では、前記第2切り欠きに前記第2突起が挿入されていてもよい。このような凸部及び凹部を有する正規品に対し、凸部や凹部が設けられていない非正規品の場合には、フィルタエレメントを正しい位置まで挿入できず、濾過装置1を使用することができない。このように、正規品に凸部及び凹部を設けることで、正規品以外の部品の使用を確実に防止することができる。また、凸部及び凹部を均等に配置することで、正規品以外の部品の使用を防止しつつ、組み立て性を向上させることができる。
【0009】
ここで、平面視において前記第1筒状部と前記リブとの位置が重なり、前記リブと前記第1筒状部とが重なる部分を切り欠くように前記リブに凹部が形成され、前記第1プレートに前記蓋部材が取り付けられた状態では、前記凹部の底面が前記第1筒状部の先端に隣接してもよい。このように、このような凹部を有する正規品に対し、凹部が設けられていない非正規品の場合には、リブの先端と第1筒状部の先端とが当接してしまい、フィルタエレメントを正しい位置まで挿入できず、濾過装置を使用することができない。したがって、非正規品の部品の使用を防止することができる。
【0010】
ここで、前記第1筒状部は、先端側に設けられた小径部と、根元側に設けられた大径部と、を有し、前記小径部は、前記大径部より外径が小さくなっており、平面視において前記リブと前記小径部の位置とが重なり、前記リブと前記小径部とが重なる部分を切り欠くように前記リブに前記凹部が形成され、前記第1プレートに前記蓋部材が取り付けられた状態では、前記リブは前記小径部の外周面に沿って設けられ、前記リブの先端は前記小径部と前記大径部との間に形成された平面部に隣接していてもよい。このような凹部を有する正規品に対し、凹部が設けられていない非正規品の場合には、リブの先端と小径部の先端とが当接してしまい、フィルタエレメントを正しい位置まで挿入できず、濾過装置を使用することができない。したがって、非正規品の部品の使用を防止することができる。
【0011】
ここで、前記フィルタエレメントは、前記濾材の中空部に挿入される内筒を有し、前記第2プレートには、前記内筒が挿入される孔が形成され、前記内筒は、前記第2プレートの下側に配置される略円板形状のフランジ部と、前記フランジ部から上方に突出するように前記フランジ部に形成された凸部と、を有し、前記第2プレートの下側の面には、前記凸部が挿入される第2凹部が形成されてもよい。このような凸部及び第2凹部を有する正規品に対し、凸部や第2凹部が設けられていない非正規品の場合には、フィルタエレメントを正しい位置まで挿入できず、濾過装置を使用することができない。このように、正規品に凸部及び第2凹部を設けることで、正規品以外の部品の使用を防止することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、正規品以外の部品(いわゆる非正規品の部品)の使用を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1の実施の形態にかかる濾過装置1の概略を示す斜視図である。
【
図3】濾過装置1の部分拡大図であり、一部を切断した図である。
【
図6】濾過装置1の断面斜視図であり、一部を拡大表示した図である
【
図7】フィルタケース10及び内筒31の断面斜視図であり、一部を拡大表示した図である
【
図8】フィルタエレメント30の斜視図であり、一部を拡大表示した図である。
【
図9】濾過装置2が有する第1模倣品取付防止構造50Aの概略を示す図である。
【
図11】小径部34gを用いない変形例の概略を示す図である。
【
図12】濾過装置3が有する第3模倣品取付防止構造52の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
<第1の実施の形態>
図1は、濾過装置1の概略を示す斜視図である。濾過装置1は、油、水等の液体に含まれる塵埃等を、フィルタを用いて除去するものであり、主として、フィルタケース10と、蓋部材20と、フィルタエレメント30(
図2等参照)と、を有する。
【0016】
蓋部材20には、フィルタケース10と蓋部材20とにより形成される内部空間に濾過前の液体を流入させる流入口21と、濾過後の液体を流出させる流出口22と、が形成される。
【0017】
蓋部材20には、インジケータ40が設けられる。インジケータ40は、内部に設けられたリードスイッチ(図示せず)を用いてフィルタケース10内部の圧力差を測定し、測定結果をランプ(図示せず)の点灯・消灯によって表示する。なお、測定結果の表示は、ランプの点灯・消灯に限られず、例えば、表示部(例えば液晶パネル)に測定結果を表示するようにしてもよい。
【0018】
図2は、濾過装置1の概略を示す断面図である。フィルタケース10は、一端(ここでは、下端)が略閉塞され、他端が開口する略有底円筒形状の部材であり、金属又は樹脂により形成される。フィルタケース10の略閉塞された下端は、底面11である。
【0019】
フィルタケース10の底面11には孔12が形成され、孔12にはドレン(図示省略)が設けられる。なお、ドレンを設けることは必須ではない。
【0020】
フィルタケース10は、略円筒形状の側面13を有する。側面13の下端は底面11に連結している。側面13の上端は開口端14である。開口端14近傍において、側面13の内周面には雌ねじ部15が形成される。
【0021】
蓋部材20は、略有底円筒形状の部材であり、金属により形成される。蓋部材20は、底面から下側(-z側)に突出するように形成された略円筒形状の取付部23を有する。取付部23の外周面には、雄ねじ部24が形成される。
【0022】
フィルタケース10の開口端14は、蓋部材20に取り付けられる。雄ねじ部24を雌ねじ部15に螺合させると、蓋部材20がフィルタケース10に取り付けられる。このようにして、フィルタケース10の開口端14を覆うように蓋部材20が設けられる。なお、蓋部材20は、底面が上側(+z側)に位置するように設けられる。
【0023】
このように、蓋部材20の開口端と、フィルタケース10の開口端とが連結されることで、フィルタエレメント30が挿入される空間が濾過装置1の内部に形成される。
【0024】
フィルタケース10と蓋部材20との間には、図示しないシール部材(例えば、Oリング)が設けられる。シール部材により、フィルタケース10と蓋部材20との間から液体が外部に漏れないようにシールされる。
【0025】
蓋部材20は、底面から下側(-z側)に突出するように形成された略円筒形状の嵌合筒25を有する。嵌合筒25は、取付部23の内側に形成される。嵌合筒25は、プレート34(後に詳述)の筒状部34c(後に詳述)の内部に挿入される。嵌合筒25は、模倣品取付防止用の構造(第1模倣品取付防止構造、後に詳述)を構成する。
【0026】
フィルタケース10の内部には、フィルタエレメント30と、内筒31とが設けられる。フィルタエレメント30は、主として、濾材32と、濾材32の両端に設けられるプレート33、34と、を有する。
【0027】
フィルタケース10に蓋部材20が取り付けられると、フィルタエレメント30と、内筒31がフィルタケース10と蓋部材20とにより形成された内部空間に保持される。
【0028】
内筒31は、耐腐食性の高い材料(本実施の形態では、樹脂)を用いて形成された略中空円筒形状の部材である。内筒31は、フィルタケース10の内部に設けられ、濾材32の内周面に挿入される。濾材32の内周面に挿入される略円筒部分を筒状部31aとする。筒状部31aの全面には、作動油が通過する孔31dが多数形成される。
【0029】
濾材32は、径方向に厚みを有する略中空円筒形状である。濾材32は、合成樹脂や紙等を用いたシート状の濾紙をひだ折りにし、ひだ折りにした濾紙の両端を連結して円筒状に丸めることによって形成される。濾材32は、内筒31の外側に設けられる。
【0030】
プレート33、34は、略板状の部材であり、耐腐食性の高い材料(本実施の形態では、樹脂)を用いて形成される。プレート33は濾材32の下側に設けられ、プレート34は濾材32の上側に設けられる。
【0031】
プレート33、34は、濾材32の端面を覆う略円板形状の板状部33a、34aを有する。板状部33a、34aには、それぞれ、内筒31が挿入される孔33b、34bが形成される。平面視において(z方向から見て)、孔33b、34bの大きさは、濾材32の中空部の大きさと略同一である。
【0032】
内筒31は、板状部33aの下側に配置される略円板形状のフランジ部31bと、フランジ部31bから上方に突出するように形成された凸部31cと、を有する。板状部33aの下側の面には、凸部31cが挿入される凹部33cが形成される。凸部31c及び凹部33cは、模倣品取付防止用の構造(第2模倣品取付防止構造、後に詳述)を構成する。
【0033】
板状部34aには、略円筒形状の筒状部34cが形成される。筒状部34cは、プレート34が濾材32に設けられたときに濾材32とは反対側に突出する。言い換えれば、筒状部34cは、フィルタエレメント30がフィルタケース10に挿入された状態で蓋部材20に向けて突出する。
【0034】
筒状部34cの先端34e近傍には、突起34dが形成される。突起34dは、模倣品取付防止用の構造(第1模倣品取付防止構造、後に詳述)を構成する。
【0035】
筒状部34cには、嵌合筒25が挿入される。筒状部34cの先端34e近傍には、嵌合筒25が挿入されたときに嵌合筒25と対向する内周面34fを有する。嵌合筒25が筒状部34cに挿入されると、内周面34fに設けられたシール部材41が弾性変形して嵌合筒25と筒状部34cとに密着する。これにより、フィルタエレメント30が蓋部材20に設けられる。
【0036】
図3は、濾過装置1の部分拡大図であり、一部を切断した図である。第1模倣品取付防止構造50は、主として、嵌合筒25に形成されたリブ25aと、筒状部34cに形成された突起34dとを有する。
【0037】
図4は、蓋部材20の斜視図である。嵌合筒25(
図3参照)の下端近傍には、径方向外側に突出するように略円板形状のフランジ部25bが設けられる。嵌合筒25のフランジ部25bより先端側は挿入部25cであり、筒状部34c(
図3参照)の中空部に挿入される。
【0038】
フランジ部25bには、挿入部25cと略平行なリブ25aが複数形成される。リブ25aは、略板状の部材であり、挿入部25cと同じ方向に突出する。複数のリブ25aは、それぞれ、略円筒形状のリブの一部であり、離間して設けられる。隣接するリブ25aとリブ25aとの間は、突起34dが挿入される切り欠き25dである。平面視において、複数のリブ25a及び切り欠き25dは、均等に配置される。
【0039】
図5は、フィルタエレメント30の斜視図である。筒状部34cには、径方向外側に突出する略板状の突起34dが複数形成される。複数の突起34dは、それぞれ、略円板形状のフランジの一部であり、離間して設けられる。平面視において、複数の突起34dは、均等に配置される。
【0040】
本実施形態では、突起34dは先端34eに沿って設けられているが、突起34dは先端34eの近傍に設けられていればよく、例えば突起34dが先端34eより多少下方に設けられていてもよい。ただし、突起34dの高さ方向の位置が内周面34fと重なることが望ましい。
【0041】
図3の説明に戻る。挿入部25c(
図4参照)が筒状部34cに挿入され、プレート34に蓋部材20が取り付けられると、リブ25aは、筒状部34cの外周面に沿って設けられる。また、挿入部25c(
図4参照)が筒状部34cに挿入され、プレート34に蓋部材20が取り付けられると、リブ25aとリブ25aとの間に突起34dが挿入される。
【0042】
このように、リブ25a及び突起34dを配置することで、突起34dとリブ25aとが干渉せず、筒状部34cの先端34e(
図5参照)がフランジ部25bに当接するまで、プレート34に対して蓋部材20を押し込むことができる。
【0043】
図6は、濾過装置1の断面斜視図であり、一部を拡大表示した図である。第2模倣品取付防止構造51は、主として、内筒31に形成された凸部31cと、プレート33に形成された凹部33cと、を有する。
【0044】
図7は、フィルタケース10及び内筒31の断面斜視図であり、一部を拡大表示した図である。内筒31は、略円板形状のフランジ部31bから下方向(-z方向)に突出するように凸部31eが形成されている。凸部31eの外周面に形成された雄ねじ31fを、孔12に形成された雌ねじ部12aに螺合させると、内筒31がフィルタケース10に取り付けられる。内筒31がフィルタケース10に取り付けられた状態では、フランジ部31bは、底面11と当接する。
【0045】
フランジ部31bには、フランジ部31bから上方向(+z方向)に突出する凸部31cが形成される。ここでは、凸部31cは、単純な形状とし、製造を容易にするため、略円筒形状のリブである。
【0046】
図8は、フィルタエレメント30の斜視図であり、一部を拡大表示した図である。プレート33は、板状部33aの下側に形成された筒状部33dを有する。筒状部33dの下側の面33eには、凹部33cが形成される。ここでは、凹部33cは、略円形の溝である。
【0047】
図6の説明に戻る。フィルタエレメント30は、濾材32の中空部に内筒31が挿入されるように、フィルタケース10内に挿入される。凸部31cが凹部33cに挿入されるため、フィルタエレメント30は、面33eがフランジ部31bの上面に当接するまで挿入される。
【0048】
面33eがフランジ部31bの上面に当接するまで挿入されると、孔33bに設けられたシール部材42が弾性変形して内筒31の外周面31gと筒状部33dの内周面に密着する。これにより、フィルタエレメント30が内筒31に設けられる。
【0049】
次に、濾過装置1の動作について説明する。
図2の矢印は、液体の流れを示す。流入口21から流入した液体は、フィルタケース10とフィルタエレメント30との間に導かれる。その後、液体は、濾材32を外側から内側へ通過し、その過程で液体中の不純物が除去される。濾材32の内側へ通過した液体は、内筒31に形成された孔31dを通過して内筒31の内部へ流出する。
【0050】
濾過後の液体は、内筒31の内側から流出口22を介して濾過装置1の外部へ流出する。なお、フィルタエレメント30と内筒31との間、フィルタエレメント30と蓋部材20との間は、それぞれシール部材41、42によって液密に閉塞されている。このため、濾過前の液体が内筒31の内部へ侵入することはない。
【0051】
濾材32は、液体を濾過することにより次第に濾過能力が低下していく。したがって、定期的に又は必要に応じてフィルタエレメント30の交換を行う。以下、交換の手順について説明する。
【0052】
まず、雄ねじ部24と雌ねじ部15との螺合を解除して、フィルタケース10と蓋部材20とを分解する。その結果、フィルタエレメント30のプレート34が露出するため、プレート34を上へ引き上げることでフィルタエレメント30を内筒31から取り外す。このとき、突起34dを把持部として用いることで、フィルタエレメント30の取り扱いが容易となる。
【0053】
その後、新しいフィルタエレメント30をフィルタケース10へ挿入する。内筒31には凸部31cが形成されているため、凹部33cが形成されたフィルタエレメント30を挿入することで、凸部31cが凹部33cに挿入され、面33eがフランジ部31bの上面に当接するまでフィルタエレメント30が押し込まれる。
【0054】
フィルタエレメント30をフィルタケース10へ挿入したら、雄ねじ部24と雌ねじ部15とを螺合してフィルタケース10と蓋部材20とを結合する。雄ねじ部24と雌ねじ部15とを螺合する過程で、嵌合筒25が筒状部34cに挿入され、リブ25aとリブ25aとの間に突起34dが挿入される。そのまま雄ねじ部24と雌ねじ部15との螺合を継続すると、リブ25aが突起34dを押すことで、蓋部材20及びフィルタエレメント30が内筒31に対して回転しつつ、嵌合筒25が筒状部34cの内部に挿入されていく。
【0055】
リブ25aとリブ25aとの間の切り欠き25dに突起34dが挿入されているため、筒状部34cの先端34eがフランジ部25bに当接するまで、雄ねじ部24と雌ねじ部15とを螺合することができる。これにより、フィルタエレメント30の交換が終了する。
【0056】
ここで、正規品であるフィルタエレメント30以外の非正規品であるフィルタエレメントをフィルタケース10及び蓋部材20に取り付ける場合を考える。例えば、非正規品のフィルタエレメントに凹部33cが形成されていない場合には、面33eが凸部31cと当接してしまい、非正規品のフィルタエレメントを正しい位置まで挿入できない。その結果、雄ねじ部24と雌ねじ部15とを螺合することができず、濾過装置1を使用することができない。
【0057】
また例えば、非正規品のフィルタエレメントに形成された凹部33cの深さが不十分である場合や、非正規品のフィルタエレメントに突起34dが形成されていない場合は、雄ねじ部24と雌ねじ部15とを途中までしか螺合することができず、濾過装置1を使用することができない。
【0058】
また例えば、正規品であるフィルタエレメント30の突起34dの代わりに、非正規品であるフィルタエレメントに略円板形状のフランジが設けられている場合を考える。このような非正規品のフィルタエレメントをフィルタケース10に挿入した場合には、雄ねじ部24と雌ねじ部15とを螺合する過程でリブ25aがフランジに当たってしまい、雄ねじ部24と雌ねじ部15とを螺合することができず、濾過装置1を組み立てることができない。また、正規品ではない蓋部材に切り欠き25dが形成されていない(略円筒形状のリブが形成されている)場合についても、略円筒形状のリブと突起34dが当たってしまい、雄ねじ部24と雌ねじ部15とを螺合することができず、濾過装置1を組み立てることができない。
【0059】
本実施の形態によれば、正規品であるフィルタエレメント30以外のフィルタエレメント、つまり非正規品のフィルタエレメントの使用を確実に防止することができる。
【0060】
なお、本実施の形態では、濾過装置1は第1模倣品取付防止構造50及び第2模倣品取付防止構造51を備えたが、濾過装置1は第1模倣品取付防止構造50又は第2模倣品取付防止構造51を備えていればよい。
【0061】
また、本実施の形態では、濾過装置1は4個のリブ25aと4個の突起34dを備えたが、突起34dは少なくとも1つ設けられていればよい。突起34dが1つの場合には、2つのリブ25aが突起34dを挟む位置に設けられ、2つのリブ25aの間の切り欠き25dに突起34dが挿入されればよい。また突起34dが1つの場合には、2つのリブ25aの代わりに、突起34dが嵌合する切り欠き25dを有する略円筒形状の1本のリブが設けられていてもよい。ただし、非正規品の製造を困難にし、正規品以外の部品の使用を確実に防止するためには、リブ25a、切り欠き25d及び突起34dを複数設けることが望ましい。また、複数のリブ25a、切り欠き25d及び突起34dは、均等に設けることが望ましい。例えば、リブ25a、切り欠き25d及び突起34dをそれぞれ6個ずつ、略60度おきに設けてもよい。このように、リブ25a、切り欠き25d及び突起34dをそれぞれ複数設け、これらを均等に配置することで、正規品以外の部品の使用を防止しつつ、組み立て性を向上させることができる。
【0062】
<第2の実施の形態>
本実施の形態では、第1模倣品取付防止構造50がリブ25a及び突起34dを有し、リブ25aが筒状部34cの外周面に沿って設けられるが、リブ25a、筒状部34c及び突起34dの形態はこれに限られない。
【0063】
図9は、濾過装置2が有する第1模倣品取付防止構造50Aの概略を示す図である。第1模倣品取付防止構造50Aは、リブ25a-1、筒状部34c-1及び突起34dを有する。リブ25a-1とリブ25a-1との間は、突起34dが挿入される切り欠き25d-1である。突起34dは、小径部34gの先端に設けられる。小径部34gは、筒状部34c-1の先端側に設けられており、筒状部34c-1の根元側に設けられた大径部34iより外径が小さくなっている。
【0064】
筒状部34c-1は平面部34hを有し、平面部34hは小径部34gと大径部34iとの間に形成される。プレート34Aに蓋部材20Aが取り付けられると、突起34dが切り欠き25d-1に挿入され、リブ25a-1が小径部34gの外周面に沿って設けられ、リブ25a-1の先端が平面部34hに隣接する。
【0065】
図10は、
図9の面Pにおける断面図である。
図10では、
図9の紙面手前側から見た様子を示す。平面視において、リブ25a-1の位置と、筒状部34c-1の位置とが重なる。また、平面視において、リブ25a-1の位置と、小径部34gの位置とが重なり、リブ25a-1と小径部34gとが重なる部分を切り欠くようにリブ25a-1に凹部25eが形成されている。したがって、プレート34Aに蓋部材20Aが取り付けられると、凹部25eの底面25fが小径部34gの先端に隣接し、リブ25a-1の先端が平面部34hに隣接する位置まで、プレート34Aに対して蓋部材20Aが押し込まれる。
【0066】
ここで、リブ25a-1に凹部25eが設けられていない非正規品をフィルタケース10(
図9参照)に取り付ける場合を考える。凹部25eが設けられていない場合には、リブ25a-1の先端と小径部34gの先端とが当接してしまい、リブ25a-1の先端が平面部34hに隣接する位置まで蓋部材20Aを押し込むことができず、フィルタケース10に蓋部材20Aを取り付けることができない。それに対し、濾過装置2では、平面視におけるリブ25a-1の位置と筒状部34c-1の位置とが重なるようにリブ25a-1及び筒状部34c-1を形成し、リブ25a-1と小径部34gとが当たらないように凹部25eを設けることで、リブ25a-1の先端が平面部34hに隣接する位置まで蓋部材20Aを押し込むことが可能となる。
【0067】
このように本実施の形態によれば、非正規品のフィルタエレメントや蓋部材の使用を確実に防止することができる。また、構成部品が増えないため、組み立て性が低下しない。
【0068】
なお、本実施の形態では、第2模倣品取付防止構造51は必須ではない。濾過装置2は、第1模倣品取付防止構造50Aのみを有していても良いし、第1模倣品取付防止構造50A及び第2模倣品取付防止構造51を有していても良い。
【0069】
<第2の実施の形態の変形例>
第2の実施の形態では、先端に小径部34gが形成された筒状部34c-1を用いたが、小径部34gは必須ではない。
図11は、小径部34gを用いない変形例の概略を示す図である。平面視において、リブ25a-2の位置と、筒状部34cの位置とが重なり、リブ25a-2と筒状部34cとが重なる部分を切り欠くようにリブ25a-2に凹部25gが形成されている。したがって、プレート34に蓋部材20Bが取り付けられると、凹部25gの底面25hが筒状部34cの先端に隣接し、リブ25a-2の先端が板状部34aに隣接する位置まで、プレート34に対して蓋部材20Bが押し込まれる。
【0070】
それに対し、凹部25gが設けられていない非正規品をフィルタケース10(
図9参照)に取り付ける場合を考える。凹部25gが設けられていない場合には、リブ25a-2の先端と筒状部34cの先端とが当接してしまい、リブ25a-2の先端が板状部34aに隣接する位置まで蓋部材20Bを押し込むことができない。このように本変形例では、第2の実施の形態と同様、非正規品のフィルタエレメントや蓋部材の使用を確実に防止することができる。
【0071】
ただし、第2の実施の形態は、本変形例より形状が複雑であり、非正規品の蓋部材やフィルタエレメントを加工して正規品のフィルタケースに取り付けようとするときに非正規品の加工が困難である。したがって、第2の実施の形態は、本変形例に比べて、非正規品のフィルタエレメントや蓋部材の使用をより確実に防止することができる。
【0072】
<第3の実施の形態の変形例>
第3の実施の形態は、第1模倣品取付防止構造50にかえて、第3模倣品取付防止構造52を有する形態である。
図12は、濾過装置3が有する第3模倣品取付防止構造52の概略を示す図である。
【0073】
第3模倣品取付防止構造52と第1模倣品取付防止構造50Aとの差異は、切り欠き25d-1の有無である。第3模倣品取付防止構造52は、リブ25a-2と、筒状部34c-2と、を有する。リブ25a-2は、挿入部25c(
図2参照)と略平行な略円筒形状のリブであり、切り欠きが形成されていない点以外はリブ25a-1と同様である。筒状部34c-2は、突起34dが形成されていない点以外は筒状部34c-1と同様である。
図12における面Pの断面形状は、
図10と同様である。
【0074】
本実施の形態によれば、濾過装置3が第3模倣品取付防止構造52を有することで、非正規品のフィルタエレメントや蓋部材をフィルタケース10に取り付けようとしても、雄ねじ部24及び雌ねじ部15(
図2参照)を螺合することができない。これにより、非正規品のフィルタエレメントや蓋部材の使用を確実に防止することができる。
【0075】
なお、濾過装置3は、第3模倣品取付防止構造52に加えて第2模倣品取付防止構造51を有していても良い。濾過装置3が第2模倣品取付防止構造51及び第3模倣品取付防止構造52を有することで、非正規品のフィルタエレメントや蓋部材の使用をより確実に防止することができる。また、
図12における面Pの断面形状は、
図11と同様でもよい。
【0076】
以上、この発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。当業者であれば、実施形態の各要素を、適宜、変更、追加、変換等することが可能である。
【0077】
また、本発明において、「略」とは、厳密に同一である場合のみでなく、同一性を失わない程度の誤差や変形を含む概念である。例えば、略同一とは、厳密に同一の場合には限られず、同一性を失わない程度の誤差を含む概念である。また、例えば、単に同一と表現する場合において、厳密に同一の場合のみでなく、略同一の場合を含むものとする。また、本発明において「近傍」とは、基準となる位置の近くのある範囲(任意に定めることができる)の領域を含むことを意味する。例えば、Aの近傍という場合に、Aの近くのある範囲の領域であって、Aを含んでもいても含んでいなくてもよいことを示す概念である。
【符号の説明】
【0078】
1 :濾過装置
10 :フィルタケース
11 :底面
12 :孔
12a :雌ねじ部
13 :側面
14 :開口端
15 :雌ねじ部
20 :蓋部材
21 :流入口
22 :流出口
23 :取付部
24 :雄ねじ部
25 :嵌合筒
25a、25a-1、25a-2:リブ
25b :フランジ部
25c :挿入部
25d、25d-1:切り欠き
25e、25g:凹部
25f :底面
30 :フィルタエレメント
31 :内筒
31a :筒状部
31b :フランジ部
31c :凸部
31d :孔
31e :凸部
31f :雄ねじ
31g :外周面
32 :濾材
33、34:プレート
33a :板状部
33b :孔
33c :凹部
33d :筒状部
33e :面
34a :板状部
34b :孔
34c、34c-1、34c-2:筒状部
34d :突起
34e :先端
34f :内周面
34g :小径部
34h :平面部
40 :インジケータ
41、42:シール部材
50、50A:第1模倣品取付防止構造
51 :第2模倣品取付防止構造
52 :第3模倣品取付防止構造