(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-15
(45)【発行日】2022-03-24
(54)【発明の名称】通信ケーブル設置方法
(51)【国際特許分類】
E21D 11/10 20060101AFI20220316BHJP
C04B 28/02 20060101ALI20220316BHJP
C04B 24/26 20060101ALI20220316BHJP
C04B 24/38 20060101ALI20220316BHJP
E21D 9/06 20060101ALI20220316BHJP
【FI】
E21D11/10 Z
C04B28/02
C04B24/26 E
C04B24/38 D
E21D9/06 311Z
(21)【出願番号】P 2018008042
(22)【出願日】2018-01-22
【審査請求日】2020-11-20
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年7月24日にモルタル材及びそれを用いた長尺部材設置方法におけるモルタル材について、当該モルタル材の配合を記載した配合計画書が成田国際空港株式会社整備部門整備部舗装グループ主任監督員である山本裕に対して引き渡された。
(73)【特許権者】
【識別番号】000181354
【氏名又は名称】鹿島道路株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】313008113
【氏名又は名称】小幡建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000431
【氏名又は名称】特許業務法人高橋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼祥
(72)【発明者】
【氏名】秋本 利夫
(72)【発明者】
【氏名】竹内 太郎
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-182608(JP,A)
【文献】特開2003-120008(JP,A)
【文献】特開平11-209155(JP,A)
【文献】特開昭56-053510(JP,A)
【文献】実開昭53-040619(JP,U)
【文献】特開2000-092677(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/10
C04B 28/02
C04B 24/26
C04B 24/38
E21D 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
推進管を地中に埋設する工程と、
埋設された推進管の底部に上述したモルタル材を供給する
工程を含み、前記モルタル材は、水と、セメントと、骨材と、減水剤と、増粘剤を含み、
前記モルタル材を供給した後、前記モルタル材が推進管底部に均一に流動するのを待機する工程
と、
前記モルタル材が推進管底部に均一に流動してセルフレベリングにより推進管底部に基盤が造成された後、当該基盤の水平方向中央に推進管全長に亘ってガイドレールを配置する工程を有し、前記ガイドレールは、造成された基盤の水平方向中央に配置された基部と、上方に向かって突出した突出部を有する断面逆T字型に構成されており、
前記ガイドレールにより台車を案内して推進管内に進入させる工程を有し、前記台車は、多孔陶管を載置する台座部と、基盤2上を転動する車輪と、前記ガイドレールの突出部を挟み込むように配置された一対のL字状部材で構成されたガイド部材を有しており、
推進管埋設のために地上側から削孔された立坑の一方の底部に足場基礎を設置する工程と、
前記足場基礎で台車に多孔陶管を載置して固定する工程を有し、前記多孔陶管には通信ケーブルが挿通、設置される複数の孔が形成されており、
台車を推進管の長手方向に連結して、推進管の内部に進入させて、複数の台車を推進管の全長に亘って連結し、以て、多孔陶管を推進管の全長に亘って接続する工程と、
推進管の全長に亘って接続された多孔陶管の孔に通信ケーブルを挿通する工程と、
推進管の内部にモルタル材を再度供給して台車を固定する工程と、
推進管の両端部を通信ケーブルの出入口を除いて閉鎖する工程を有することを特徴とする
通信ケーブル設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば推進管の底面にコンクリートを打設して容易に基盤を設けることが出来るようなモルタル材と、それを用いた長尺部材設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空港の滑走路や誘導路の拡張等に伴い通信管路を増設する場合に、例えば滑走路等を地表側から開削(いわゆる「オープンカット」で開削)して作業を行うと、当該滑走路が運用できなくなり、空港施設の運用に支障を来す恐れがある。そのため、例えば滑走路等で通信管路を増設する場合には、推進工法により推進管を地中に埋設して、当該推進管内に多孔管(例えば多孔陶管)を設置し、当該多孔管中に(長尺部材である)通信ケーブルを挿通する手法が用いられる。
推進管内に多孔管(例えば多孔陶管)を設置するに際しては、台車に多孔管を載置し、当該台車を推進管内に走行させることにより行っている。ここで、台車が推進管内を走行可能であるためには、推進管の底部(底面近傍の領域)にコンクリートを打設して、敷き均し、整正して、推進管の全長に亘って底部に基盤を設ける必要がある。
推進管に基盤を設ければ、多孔管(例えば多孔陶管)を積んだ台車を連結しながら前記基盤上でけん引し、推進管全長に亘り多孔管を据え付けることができる。
【0003】
推進管の直径が2mを超えるのであれば、人力作業で推進管の底面にコンクリートを敷き均し、整正して基盤をつくることが比較的容易に施工できる。ここで、推進管の直径が大きくなると、推進速度が低下し作業が非効率となる。また、推進管の直径が大きいと推進工法の施工に際して残土が多量に発生し、当該残土の処分に多大な時間と費用が必要になる。そのため、推進管の直径は可能な限り小径であることが望ましい。その観点から、滑走路等で通信管路を増設する工事では、直径1mの推進管を用いることを前提に設計がされる場合が多い。
しかし、推進管の直径を小さく(例えば直径1mに)すると、推進管の底面にコンクリートを打設して基盤を設ける作業は、閉塞状態の狭隘な環境の中で、作業員を腹ばいの体勢にして実施しなければならず、作業員にとって負担の大きな作業となる。それに加えて、酸欠等の事故も懸念される。さらに、所定の品質(締固め度)が得られているか確認することが困難である、という問題が存在する。
【0004】
その他の従来技術として、例えば、飛行場の灯火の断線発生を予測してメンテナンス性を向上した技術が提案されている(特許文献1参照)。
しかし、この従来技術(特許文献1)は、上述した問題の解決を意図するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、径寸法の小さな推進管の底面にコンクリートを打設して容易に基盤を設けることが出来るようなモルタル材及びそれを用いた長尺部材設置方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
また本発明の通信ケーブル設置方法は、
推進管(1)を地中に埋設する工程と、
埋設された推進管(1)の底部に上述したモルタル材(M)を供給する工程を含み、前記モルタル材(M)は、水(W)と、セメント(C)と、骨材(S:例えば山砂)と、減水剤(例えば、高性能AE減水剤)と、増粘剤を含み、
前記モルタル材(M)を供給した後、前記モルタル材(M)が推進管(1)底部に均一に流動するのを待機する工程と、
前記モルタル材(M)が推進管(1)底部に均一に流動してセルフレベリングにより推進管(1)底部に基盤(2)が造成された後、当該基盤(2)の水平方向(円の弦方向)中央に推進管(1)全長に亘ってガイドレール(3)を配置する工程を有し、前記ガイドレール(3)は、造成された基盤(2)の水平方向(円の弦方向)中央に配置された基部と、上方に向かって突出した突出部を有する断面逆T字型に構成されており、
前記ガイドレール(3)により台車(5)を案内して推進管(1)内に進入させる工程を有し、前記台車(5)は、多孔陶管(4)を載置する台座部(5A)と、基盤2上を転動する車輪(5B)と、前記ガイドレール(3)の突出部を挟み込むように配置された一対のL字状部材で構成されたガイド部材(5C)を有しており、
推進管(1)埋設のために地上側から削孔された立坑(S1、S2)の一方(台車発信側の立坑S1)の底部に足場基礎(S1A)を設置する工程と、
前記足場基礎(S1A)で台車(5)に多孔陶管(4)を載置して固定する工程を有し[0019]、前記多孔陶管(4)には通信ケーブルが挿通、設置される複数の孔(中空部)が形成されており、
台車(5)を推進管(1)の長手方向に連結して、推進管(1)の内部に進入させて、複数の台車(5)を推進管(1)の全長に亘って(推進管1の両端部1A、1B間に亘って)連結し、以て、多孔陶管(4)を推進管(1)の全長に亘って接続する工程と、
推進管(1)の全長に亘って接続された多孔陶管(4)の孔(中空部)に通信ケーブルを挿通する工程と、
推進管(1)の内部にモルタル材(M)を再度供給して台車(5)を固定する工程と、
推進管(1)の両端部(1A、1B)を通信ケーブルの出入口を除いて閉鎖する工程を有することを特徴としている。
前記モルタル材(M)において、減水剤(高性能AE減水剤)はポリカルボン酸エーテル系化合物が好ましく、市販品(例えば、BASFジャパン株式会社の商品名「マスターグレニウムSP8SV/SP8RV」)を用いることが出来る。そして、増粘剤は水溶性セルロースエーテルが好ましく、市販品(例えば、信越化学工業株式会社の商品名「SFCA2000」)を用いることが出来る。
また、本発明では通信ケーブル(本明細書では単に「ケーブル」と表記する場合がある)の設置のみならず、光ファイバー、ガス管、水道管、電線、その他、地下に埋設される長尺の線状或いは管状の部材の設置にも適用できる。
【発明の効果】
【0010】
上述の構成を具備する本発明のモルタル材(M)は流動性に優れた性質を具備している。そのため、推進管(1)の底部に供給(充填)されたモルタル材(M)は、均一に流動して推進管(1)底部に残留し、作業者による整正(コテ押え)を行うことなく、基盤(2)を造成することが可能である。
そのため本発明によれば、推進管(1)の管径が小さくても(例えば1mであっても)、推進管(1)内に作業員が入る必要を無くすることが可能なので、閉塞状態の狭隘な環境の中で作業員を腹ばいの体勢にして整正その他の作業を省略することが可能である。そして、作業者が推進管(1)内に入る必要が無くなれば、従来技術において作業員に多大な負担を掛けていた作業を行わずに済み、酸欠等の事故も防止される。
そして、本発明のモルタル(M)は、整正する作業を行うことなく基盤(2)として所要の圧縮強度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】図示の実施形態に係る長尺部材(通信ケーブル)設置方法において、図示の実施形態に係るモルタル材を推進管の底部に打設する工程を示す工程図である。
【
図2】打設したモルタル材にガイドレールを設置する工程を示す工程図である。
【
図4】多孔陶管を載置した台車を連結して推進管内部に進入させる工程を示す工程図である。
【
図5】多孔陶管を推進管内に配置した状態を示す工程図である。
【
図6】本発明の実施形態に係るモルタル材の組成を表として示す図である。
【
図7】本発明の実施例に係るモルタル材の組成を表として示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
最初に
図1~
図5を参照して、本発明の実施形態に係る長尺部材設置方法を説明する。図示の実施形態では、長尺部材として通信ケーブルを設置している。
図示はされていないが、
図1に示す工程に先立って、ケーブルが配置されるべき地中の領域の両端部において、それぞれ地上側から立坑S1、S2を削孔する。そして、立坑S1、S2管のケーブルが配置されるべき領域を、例えば推進工法により推進管1を地下に埋設する。
図示の実施形態において用いられる推進管1は、作業効率が高く、各種コストを低く抑えることが出来る小径の推進管、例えば直径1mの推進管を用いている。
図1(A)で示す工程では、埋設された推進管1の底部に、実施形態に係るモルタル材Mを供給する。
【0013】
図1(A)のモルタル材Mを供給する工程において、地上のコンクリートポンプ車Pに接続されたモルタル材用ホースHの供給口を、一方の立坑S1を介して、推進管1の一方の端部1Aから推進管1の中に進入させる。
図1に明確に示されないが、モルタル材用ホースHを推進管1の中央部1C(推進管1の全長の半分)まで進入させた後、モルタル材用ホースHの供給口から推進管1の底部にモルタル材Mを供給(打設)しつつ、モルタル用ホースHを、推進管1の中央部1Cから推進管1の一方の端部1Aに向かって引き出す。
次に、上述のモルタル材Mを推進管1の底部に供給する作業を、モルタル材用ホースHを他方の立坑S2を介して、推進管1の他端1Bから推進管1の中に進入させて行う。以て、推進管1の全長に亘って、底部にモルタル材Mを供給(打設)する。
【0014】
推進管1の内部を示す
図1(B)は
図1(A)のA-A矢視断面を示し、推進管1の底部にモルタル材Mが打設されている状態が表示されている。モルタル材Mが打設された推進管1の底部は、台車5(
図3、
図4参照)が走行可能な基盤2を構成する。
ここで、上述した様に、モルタル材用ホースHを立坑S1、S2の各々から推進管1の中央部まで進入させることに代えて、モルタル材用ホースHを推進管1の一方の端部1Aから他端部1Bまで進入させて、モルタル材用ホースHを端部1Aに向かって引き出しつつ、モルタル材用ホースHから推進管1の底部にモルタル材Mを供給(打設)することも可能である。
なお、
図1(A)において、符号MXはミキサー車(アジテーター車)を示している。
【0015】
詳細は後述するが、
図1におけるモルタル材Mは、(打設後に特段の作業を行わなくても平滑で且つ所要の強度を有する基盤2が造成出来る様に)自然流動性に優れる流動化モルタルが用いられる。換言すれば、モルタル材Mは、平坦且つ平滑とするべき基板2の表面を、作業者による整正を行うことなく、推進管1にモルタル材M(流動化モルタル)を供給することのみで仕上げることが出来る程度のセルフレベリング性を有している。
係る流動化モルタルを用いることにより、基盤2を構成するために供給されたモルタル材M(流動化モルタル)は、その後の作業を行わなくても敷き均され、整正する作業を行う必要が無くすることを可能にしつつ、基盤2として所要の圧縮強度を確保することができる。
【0016】
図1において、推進管1の底部にモルタル材M(流動化モルタル)を供給した後、モルタル材Mが推進管1底部に均一に流動するのを待機する。
当該待機する工程の間に、前記モルタル材の流動性に優れた性質により、推進管1内に供給(充填)されたモルタル材Mは、推進管1の底部において均一に流動して残留し、作業者により整正する作業を省略することが可能となり、台車5が走行を可能な基盤2を造成することが可能である。
そして、
図2で示す工程が施工される。
【0017】
図2は、ガイドレール3を配置する工程を示している。ガイドレール3は、(供給された)モルタル材Mのセルフレベリングにより造成された基盤2において、水平方向(円の弦方向)中央に配置される。明確には図示されていないが、当該工程に際して、ガイドレール3は、例えば断面逆T字型の部材を用い、ガイドレール3の基部を、モルタル材を打設した基盤2の表面に例えば接着材で固定する。ガイドレール3は、推進管1の基盤2の全長に亘って配置される。
図2(A)において、符号7は、ガイドレール3を推進管1内の配置箇所に移動する移動器具を示している。
推進管1の基盤2にガイドレール3が配置された状態が、
図2(B)において、推進管1の断面として示されている。
【0018】
図3は台車5を示しており、台車5は基盤2上に載置されている。
図3において、台車5は、台座部5A、車輪5B、ガイド部材5Cを備えている。
台車5は、左右のガイド部材5Cでガイドレール3を挟み込んで水平方向(
図3では左右方向)について位置決めされており、車輪5Bが基盤2上を転動することにより、台車5は推進管1の基盤2中央を走行する。
図3において、ガイド部材5Cは一対のL字状部材として表現されているが、垂直方向に延在する回転軸を有する一対の車輪により構成することも出来る。
台車5の台座部5Aには多孔陶管4が載置される。図示の実施形態では、推進管1の内部空間に通信ケーブルを挿通、配置するため、漏電や短絡を生じない多孔陶菅4を採用している。図示の実施形態では、台車5には、4孔を有する多孔陶菅と6孔を有する多孔陶菅(共に符号4で示す)がそれぞれ3個ずつ、台座部5Aに載置されている。
さらに、台座部5Aの推進管1方向(
図3で紙面に垂直な方向)の長さ寸法を確保してあれば、多孔陶菅4を複数連結させて台座部5Aに載置することも可能である。
図4を参照して後述する様に、図示の実施形態では、多孔陶菅4を推進管1方向に例えば2個連結させて台座部5Aに載置している。なお、多孔陶菅4を台座部5Aに固定する手段の図示は省略している。
【0019】
図4で示す工程では、台車5に多孔陶管4を載置して、台車5を推進管1の長手方向に連結して、推進管1の内部に進入させている。
図4の工程に先立って、例えばガイドレール3を配置する工程(
図2)の後に、台車発信側の立坑S1(一方の立坑)の底部に、足場基礎S1Aを設置している。そして当該足場基礎S1Aにおいて、台車5に多孔陶菅4を載置する等の作業が行われる。
図4において、例えば、4孔の多孔陶菅4が3個、6孔の多孔陶菅4が3個、計6つの多孔陶菅4が多孔陶菅グループ4Gとして、
図4で示されている。ここで、
図4においては、4孔の多孔陶菅と6孔の多孔陶菅が、共に符号4で示されている。
図4で示す様に、推進管1の長手方向に2つの多孔陶菅グループ4Gを接続して1台の台車5に載置し、さらに2台の台車5を連結している。
先頭の台車5(
図4で右端の台車)は、台車発信側(立坑S1側)と反対側の立坑S2(他方の立坑)に設置したウインチ6とワイヤ6Aで連結され、ウインチ6によりワイヤ6Aを巻き取ることにより牽引され、推進管1内に進入する。
【0020】
2つの多孔陶菅グループ4Gを載置した台車5は、
図4に示す工程の後も順次連結され(3台以上の台車5が連結され)、ウインチ6により牽引され、推進管1内に進入する。そして、複数の台車5が、推進管1の全長に亘って(推進管1の両端部1A、1B間に亘って)連結された状態となる。
図5は、推進管1の全長に亘って、多孔陶管4を載置した台車5が連結された状態を示している。
推進管1の全長に亘って、多孔陶管4を載置した台車5が連結された結果、多孔陶菅4は推進管1の全長に亘って接続される。その際、相互に隣接する多孔陶菅4同士は、従来公知の方法で接続される。図示はしないが、隣接する多孔陶菅4同士の連結箇所の一部に、可撓性を有する管材を介在させることにより、多孔陶菅4接続に際して自由度を持たせることが出来る。
図1~
図5で示す工程が終了した後、図示しない後工程において、推進管1の全長に亘って接続された多孔陶管4の孔(中空部)に、図示しない通信ケーブルが挿通、設置される。
施工に際して、
図1~
図5で示す工程の後、図示しない後工程において、推進管1の内部にモルタル材Mを再度供給して台車5を固定し、推進管1の両端部1A、1Bを通信ケーブルの出入口を除いて閉鎖する。
【0021】
次に、
図1の工程で打設されたモルタル材M(流動化モルタル)について説明する。
図1の実施形態で用いられたモルタル材M(流動化モルタル)は、水と、セメントと、骨材(例えば砂)と、高性能AE減水剤であるポリカルボン酸エーテル系化合物と、増粘剤である水溶性セルロースエーテルを含有している。
高性能AE減水剤はポリカルボン酸エーテル系化合物が好ましく、市販品(例えば、BASFジャパン株式会社の商品名「マスターグレニウムSP8SV/SP8RV」)を用いることが出来る。
増粘剤である水溶性セルロースエーテルは、市販の増粘剤(例えば、信越化学工業株式会社の商品名「SFCA2000」)を用いることが出来る。
【0022】
実施形態に係るモルタル材(流動化モルタル)の組成は、
図6の表で示す通りである。
水WとセメントCの比率W/C(質量%)が30%~50%、セメントCと骨材Sとの比率(セメントCと骨材Sとの質量比)が1:1.3~1:1.7である。
また、モルタル材1m
3中のポリカルボン酸エーテル系化合物の含有量は6.0kg~9.0kg、水溶性セルロースエーテルの含有量は0.25kg~0.3kgである。
【0023】
各種実験例を参照して後述するが、W/Cが50質量%より大きいとモルタル材の粘性が低下して、セメントペースト(水+セメント)と骨材が分離し易くなってしまう。
一方、W/Cが30質量%より小さいと、モルタル材の粘性が増加し、流動性が悪くなり、セルフレベリングがし難くなる。
また、セメントCと骨材Sとの比率C:S(セメント:骨材)については、1:1.3よりも骨材が増加すると、モルタル材の粘性が増加して流動性が低下する。
一方、1:1.7よりも骨材が少ないと、流動性は増加するが、粘性が低下して骨材がモルタルから分離(沈降)し易くなる。
【0024】
高性能AE減水剤(ポリカルボン酸エーテル系化合物、例えば、BASFジャパン株式会社の商品名「マスターグレニウムSP8SV/SP8RV」)は、(適正量)添加することにより、モルタル材が材料分離することなくセルフレベリング性能が向上する(セルフレベリングし易くなる)。
モルタル材1m3中の高性能AE減水剤(ポリカルボン酸エーテル系化合物)が9.0kgよりも多いと、モルタル材の流動性が過剰になり、セメントペーストと骨材(例えば砂)とが分離し易くなる。
一方、モルタル材1m3中の高性能AE減水剤(ポリカルボン酸エーテル系化合物)が6.0kgよりも少ないと、モルタル材の流動性の改善効果が期待できず、セルフレベリング性が低下し、流動性が改善する継続時間が短くなってしまう。
【0025】
増粘剤(水溶性セルロースエーテル、例えば、信越化学工業株式会社の商品名「SFCA2000」)は、(適正量)添加することにより、モルタル材の粘性が増し、材料分離を防止する。
しかし、モルタル材1m3中の増粘剤(水溶性セルロースエーテル)が多過ぎると(0.3kgよりも多いと)、モルタル材の粘性が過剰に増加する。
一方、モルタル材1m3中の増粘剤(水溶性セルロースエーテル)が少な過ぎると(0.25kgよりも少ないと)、モルタル材の粘性の改善効果が期待できなくなり、材料分離し易くなる。
【0026】
[実施例]
本発明の実施例に係るモルタル材の組成は、
図7の表で示す通りである。
図7において、水WとセメントCの割合W/C(質量%)が40%、骨材S(山砂)とセメントCとの比率(セメントと骨材との質量比)が1:1.5である。
また、モルタル材1m
3中の水Wの量は300kg、セメントCの量は750kg、骨材S(山砂)の量は1160kgである。
さらに、モルタル材1m
3中の高性能AE減水剤(ポリカルボン酸エーテル系化合物)である商品名「マスターグレニウムSP8RV」(BASFジャパン株式会社)の含有量は7.5kg、増粘剤(水溶性セルロースエーテル)である商品名「SFCA2000」(信越化学工業株式会社)の含有量は0.25kgである。
実施例に係るモルタル材によれば、モルタル材の粘性は低下せず、骨材が分離(沈降)することも無く、セルフレベリングにより推進管1の底部に基盤2が造成される程度の流動性が確保されることが、発明者の実験で確認できた。
また、流動性や粘性が過剰に増加することは無く、材料分離が生じることも無かった。
【0027】
[実験例1]
組成は実施例で示す通りであるが、水WとセメントCの割合W/C(質量%)のみを2%ずつ変動して、モルタル材の粘性、流動性について実験を行った。
実験例1の結果、W/C(質量%)が50質量%より大きいと、モルタル材の粘性が低下して小さくなり過ぎ、セメントペースト(水+セメント)と骨材(例えば砂)が分離し易くなってしまった。
一方、W/Cが30質量%より小さいと、モルタル材の粘性が増加して大きくなり過ぎ、流動性が悪くなり、セルフレベリングがし難くなった。
実験例1により、W/C(質量%)の範囲は30%~50%とするべきことが明らかになった。
【0028】
[実験例2]
組成は実施例で示す通りであるが、セメントと骨材との比率C:S(セメントと骨材との質量比)のみを0.1ずつ変動して(例えば、1:1.6、1:1.7、1:1.8の様に変動して)、モルタル材の粘性、流動性について実験を行った。
実験の結果、セメントと骨材との比率C:S(質量比)について、1:1.3よりも骨材が多いと、モルタル材の粘性が増加して大きくなり過ぎ、流動性が低下した。
一方、セメントと骨材との比率C:S(質量比)について、1:1.7よりも骨材が少ないと、モルタル材の流動性は増加するが、粘性が低下して小さくなり過ぎ、骨材がモルタル材から分離(沈降)し易くなった。
実験例2の結果、セメントと骨材との比率C:S(セメントと骨材との質量比)は、1:1.3~1:1.7の範囲が適当であることが明らかになった。
【0029】
[実験例3]
組成は実施例で示す通りであるが、モルタル材1m3中の高性能AE減水剤(BASFジャパン株式会社の商品名「マスターグレニウムSP8RV」)の量のみを0.2kgずつ変動して、モルタル材の流動性、材料分離性について実験を行った。
実験例3の結果、モルタル材1m3中の高性能AE減水剤が9.0kgよりも多いと、モルタル材の流動性が過剰になり過ぎてしまい、セメントペーストと砂(骨材)が分離し易くなった。
一方、モルタル材1m3中の高性能AE減水剤が6.0kgよりも少ないと、モルタル材の流動性の改善効果がなくなった。また、セルフレベリング性が低下し、モルタル材の流動性が改善する継続時間が短くなった。
実験例3の結果から、高性能AE減水剤の量を、6.0kg~9.0kgの範囲とした。
【0030】
[実験例4]
組成は実施例で示す通りであるが、モルタル材1m3中の増粘剤(信越化学工業株式会社の商品名「SFCA2000」)の量のみを0.01kgずつ変動して、モルタル材の粘性、材料分離性について実験を行った。
実験例4の結果、モルタル材1m3中の増粘剤が0.3kgよりも多いと、モルタル材の粘性が過剰に増加した。
一方、モルタル材1m3中の増粘剤が0.25kgよりも少ないと、モルタル材の粘性の改善効果がなくなり、材料分離し易くなった。
実験例4の結果から、増粘剤の量を、0.25kg~0.3kgの範囲とした。
【0031】
実施形態に係るモルタル材Mは、
図6に示す組成と数値範囲を有しており、流動性に優れた性質を具備している。そのため、推進管1の底部に供給(充填)されたモルタル材Mは、均一に流動して推進管1底部に残留して、作業者による整正を行うことなく、基盤2を造成することが可能である。
したがって実施形態によれば、推進管1の管径が小さくても(例えば1mであっても)、推進管1内に作業員が入る必要が無く、閉塞状態の狭隘な環境の中で作業員を腹ばいの体勢にして整正その他の作業を実施しないことが可能である。そのため、従来技術において、作業員に多大な負担を掛けていた作業である整正する作業を省略することが可能となり、狭い推進管1内で整正する作業を省略することも可能である。そして、作業員が推進管1内に入らなければ、酸欠等の事故も防止できる。
そして、実施形態のモルタルMを用いれば、整正する作業を省略することが可能であり、多孔陶菅4を搭載した台車5が走行可能な基盤2として、所要の圧縮強度を確保することができる。
【0032】
また、図示の実施形態によれば、地中に埋設した推進管1の底部に流動性に優れた性質を具備するモルタル材Mを流動して基盤2を造成した後、当該基盤2の水平方向中央にガイドレール3を配置し、前記ガイドレール3により多孔陶管4を載置した台車5を案内して推進管1内に進入させている。そして、推進管1の両端部間に亘って接続された多孔陶管4中に通信ケーブルが挿通、設置している。
そのため、推進管1内に入って整正する作業等、作業員に多大な負担をかける作業を省略することが可能となり、確実に推進管1内に多孔陶菅4を配置して、多孔陶管4中に通信ケーブルを設置することが出来る。
【0033】
そして、図示の実施形態のモルタル材Mにおける厚さ寸法は、一般的なセルフレベリング材料を用いた場合よりも遥かに厚くすることが出来て、例えば、150mmの厚さとすることも可能である。
上述されていない発明者の実験によれば、図示の実施形態のモルタル材Mは硬化した後、多孔陶管4を載置した台車5の走行に必要な圧縮強度及び靱性を確保できることが確認された。
【0034】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。
例えば、図示の実施形態では、通信ケーブルの設置について説明しているが、本発明は、光ファイバー、ガス管、水道管、電線、その他、地下に埋設される長尺の線状或いは管状の部材の設置について適用可能である。
【符号の説明】
【0035】
1・・・推進管
2・・・基盤
3・・・ガイドレール
4・・・多孔陶管
5・・・台車
C・・・セメント
M・・・モルタル材
S・・・骨材
W・・・水