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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-15
(45)【発行日】2022-03-24
(54)【発明の名称】プリント配線板とその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20220316BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20220316BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20220316BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20220316BHJP
【FI】
H05K1/02 C
H05K3/46 U
H05K1/02 F
H05K3/46 B
H01L23/36 C
H01L23/12 J
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018014820
(22)【出願日】2018-01-31
(65)【公開番号】P2019134060
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2020-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000228833
【氏名又は名称】日本シイエムケイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新井 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 紀之
(72)【発明者】
【氏名】塩原 正幸
【審査官】ゆずりは 広行
(56)【参考文献】
【文献】特許第5351563(JP,B2)
【文献】特開2017-220647(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/02
H05K 3/46
H01L 23/12
H01L 23/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品からの発熱を、当該電子部品の直下に配置した金属片によって、電子部品実装側面と反対の面側に配置された放熱体へと伝熱させるプリント配線板であって、少なくとも、絶縁基板と、当該絶縁基板上に形成された配線パターンと、当該絶縁基板を貫通する金属片収容孔と、当該金属片収容孔内に塑性変形されて配置固定された金属片とを有し、且つ、当該金属片収容孔の周囲の配線パターンに、当該絶縁基板を貫通する複数のクラック伸展防止用孔が列状に形成されていることを特徴とするプリント配線板。
【請求項2】
当該クラック伸展防止用孔は、隣合う列において千鳥足状に位置するように、当該金属片収容孔3の周囲の配線パターンに複数列形成されていることを特徴とする請求項1記載のプリント配線板。
【請求項3】
電子部品からの発熱を、当該電子部品の直下に配置した金属片によって、当該電子部品実装側面と反対の面側に配置された放熱体へと伝熱させるプリント配線板の製造方法であって、少なくとも、絶縁基板に当該絶縁基板を貫通する金属片収容孔を形成する工程と、当該金属片収容孔の周囲に列状に位置し、且つ、当該絶縁基板を貫通する複数のクラック伸展防止用孔を形成する工程と、当該金属片収容孔とクラック伸展防止用孔を含む絶縁基板の全体にめっき膜を析出させる工程と、当該金属片収容孔の高さより高い長さと当該金属片収容孔の孔径より短い直径を有する金属片素材を当該金属片収容孔内に挿入する工程と、当該金属片収容孔から突出している金属片素材の突出上面に荷重をかけ、当該荷重により塑性変形した金属片を金属片収容孔に配置固定する工程と、当該絶縁基板上に配線パターンを形成し、当該クラック伸展防止用孔が金属片収容孔の周囲の配線パターンに形成されたプリント配線板を得る工程とを有することを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項4】
当該クラック伸展防止用孔を、隣合う列において千鳥足状に位置するように、当該金属片収容孔3の周囲に複数列形成することを特徴とする請求項記載のプリント配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品からの発熱を、当該電子部品の直下に配置した金属片によって、当該電子部品実装側面と反対の面側に配置された放熱体へと伝熱させるプリント配線板とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子部品(例えば、「FET」や「MOSFET」などの、発熱量の多い表面実装型電子部品)からの発熱を効率よく外部に放熱させる手段として、プリント配線板に実装する電子部品の直下に、貫通めっきスルーホールからなるサーマルビアを複数設け、当該プリント配線板の裏面側に配置された放熱体(放熱パターンやヒートシンク)などを介して外部に放熱させるという手段が、従来、一般的に利用されてきた。
【0003】
しかし、機器の高機能化、高性能化の進展により、電子部品からの発熱量が、従来の物とは比べ物にならないほど多くなってきたため、上記貫通めっきスルーホールからなるサーマルビアでは、処理しきれなくなってきた(即ち、電子部品を正常に動作させるだけの放熱処理ができなくなってきた)。
そこで近年では、上記サーマルビアに代えて、熱容量の大きい金属片(例えば「銅片」)を埋め込むという手段が種々検討されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
上記「金属片」を埋め込むプリント配線板の製造例(ここでは、配線パターンを形成する前の段階の「中間基板pw2」の製造例)を、図6に示した概略断面工程図を用いて説明する。
まず、表裏面に導体層2bが形成され、且つ、後に金属片6を配置固定するための金属片収容孔3が形成された絶縁基板1を用意し、次いで、当該絶縁基板1を治具12上に配置した後、当該金属片収容孔3の高さHよりも高く、且つ、当該金属片収容孔3の孔径Dよりも小さい径からなる円柱形状の金属片素材6aを、当該金属片収容孔3内に挿入する(図6(a)参照)。
【0005】
次に、金属片収容孔3から突出している金属片素材6aの突出上面6bにプレスピン13で荷重をかけ、当該金属片素材6aを塑性変形させることによって、図6(b)に示した金属片6が金属片収容孔3内に配置固定された中間基板pw2を得る、というものである。
なお、図中に示した符号「A」は「電子部品実装側面」、符号「B」は「放熱体配置側面」を示したものであるが、プレス加工によって金属片収容孔3内に配置固定された金属片6は、当該金属片6の電子部品接続側露出面7と放熱体接続側露出面8が、中間基板pw2の電子部品実装側面Aと放熱体配置側面Bのそれぞれの面に形成されている導体層2bの外側面18とほぼ平滑となるように埋め込まれる。
【0006】
ところで、金属片素材6aを塑性変形させることで、金属片6を金属片収容孔3内に配置固定する上記の工法は、プリント配線板業界で「圧入方式」と呼ばれ、広く採用されている工法であるが、金属片素材6aの塑性変形は、金属片6の中央部C付近(図7に示した一点鎖線)が矢印aの方向に膨らむ、いわゆる「樽型状」に変形するため、絶縁基板1にクラック14が発生し易いという問題があった(図6(b)参照)。
【0007】
そこで、図8に示したように、孔の内壁に突起15を備えた貫通孔16を形成し、当該突起15を金属片の圧入時のクッション材として利用することによって、絶縁基板に過度の負荷が掛からないようにする手段が提案されている(特許文献2参照)。
【0008】
しかし、当該突起15は、複数のドリル孔をそれぞれ一部が重なるようにドリル加工することによって形成されるため、突出長さにバラツキが発生しやすく、以下のような問題を有していた。
【0009】
即ち、突起15の突出長さが長すぎる箇所が多数出てしまうと、クッション材としての機能は確保できるものの、金属片を圧入した際の固定強度が確保できなくなる場合があり、逆に、突起15の突出長さが短すぎる箇所が多数出てしまうと、金属片の固定強度は確保できても、クッション材としての機能が果たせなくなる場合があるため、結局、クラックの大きな伸展による絶縁不良や断線不良などの懸念が払拭できないのが実状であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2010-263003号公報
【文献】特許第5351563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記の如き従来の問題と実状に鑑みなされたものであり、金属片を金属片収容孔内に配置固定する手段として「圧入方式」を採用した場合においても、金属片の固定強度を確保しつつ、クラックの大きな伸展による絶縁不良や断線不良の発生を抑制することができるプリント配線板と、当該プリント配線板が容易に得られる製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記の課題を解決すべく種々研究を重ねた結果、金属片収容孔の周囲に、絶縁基板を貫通する複数の孔を列状に形成すれば極めて良い結果が得られることを見い出し、本発明を完成した。
【0013】
即ち、本発明は、電子部品からの発熱を、当該電子部品の直下に配置した金属片によって、電子部品実装側面と反対の面側に配置された放熱体へと伝熱させるプリント配線板であって、少なくとも、絶縁基板と、当該絶縁基板上に形成された配線パターンと、当該絶縁基板を貫通する金属片収容孔と、当該金属片収容孔内に塑性変形されて配置固定された金属片とを有し、且つ、当該金属片収容孔の周囲の配線パターンに、当該絶縁基板を貫通する複数のクラック伸展防止用孔が列状に形成されていることを特徴とするプリント配線板により上記課題を解決したものである。
【0014】
また、本発明は、電子部品からの発熱を、当該電子部品の直下に配置した金属片によって、当該電子部品実装側面と反対の面側に配置された放熱体へと伝熱させるプリント配線板の製造方法であって、少なくとも、絶縁基板に当該絶縁基板を貫通する金属片収容孔を形成する工程と、当該金属片収容孔の周囲に列状に位置し、且つ、当該絶縁基板を貫通する複数のクラック伸展防止用孔を形成する工程と、当該金属片収容孔とクラック伸展防止用孔を含む絶縁基板の全体にめっき膜を析出させる工程と、当該金属片収容孔の高さより高い長さと当該金属片収容孔の孔径より短い直径を有する金属片素材を当該金属片収容孔内に挿入する工程と、当該金属片収容孔から突出している金属片素材の突出上面に荷重をかけ、当該荷重により塑性変形した金属片を金属片収容孔に配置固定する工程と、当該絶縁基板上に配線パターンを形成し、当該クラック伸展防止用孔が金属片収容孔の周囲の配線パターンに形成されたプリント配線板を得る工程とを有することを特徴とするプリント配線板の製造方法により上記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明のプリント配線板によれば、絶縁基板を貫通する金属片収容孔に金属片を配置固定する手段として「圧入方式」を採用し、絶縁基板にクラックが発生した場合においても、金属片収容孔の周囲に列状に位置する当該絶縁基板を貫通する複数のクラック伸展防止用孔により、クラックの伸展を食い止めることができるため、クラックの大きな伸展による絶縁不良や断線不良の発生を抑制することができる。
また、本発明のプリント配線板の製造方法によれば、上記効果が得られるプリント配線板を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明プリント配線板の構成を示したもので、(a)は概略断面図、(b)、(c)は概略平面図。
図2】(a)~(b)は、本発明プリント配線板の製造例を示す概略断面工程図。
図3】(c)~(e)は、図2に続く概略断面工程図。
図4】(f)~(g)は、図3に続く概略断面工程図。
図5】本発明プリント配線板の他の構成を説明するための概略断面図。
図6】従来の「圧入方式」によるプリント配線板(中間基板)の製造例を説明するための概略断面工程図で、(a)は、金属片素材を金属片収容孔に挿入した状態を示した概略断面図、(b)は、金属片素材を塑性変形させた金属片を、金属片収容孔内に配置固定した状態を示した概略断面図。
図7】「圧入方式」で金属片収容孔内に配置固定された金属片の要部拡大断面図。
図8】貫通孔の内壁に設けた突起を、金属片を圧入する際のクッション材として利用する従来のプリント配線板の構成を説明するための要部拡大平面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下本発明プリント配線板の実施の形態を図1(a)~(c)を用いて説明する。
なお、説明の便宜上、金属片収容孔内に金属片を配置固定する前の段階のものを「絶縁基板」、配置固定した後のものを「プリント配線板」として説明を進めていく。
また説明において、プリント配線板に実装される電子部品や放熱体は、図示を省略しているが、前記従来技術の説明と同様に、プリント配線板(絶縁基板)の上面側を「電子部品実装側面A」、下面側を「放熱体配置側面B」と仮定し、また、金属片収容孔内の金属片の上面側を「電子部品接続側露出面7」、下面側を「放熱体接続側露出面8」と仮定して説明を進めて行く。
【0018】
図1において、PW1はプリント配線板であり、電子部品実装側面A及び放熱体配置側面Bに配線パターン2が形成された絶縁基板1と、当該絶縁基板1を貫通し、且つ、電子部品が実装される直下の位置に形成された金属片収容孔3と、当該金属片収容孔3の周囲に列状に位置し、且つ、当該絶縁基板を貫通する複数のクラック伸展防止用孔4と、当該金属片収容孔3内に配置固定された金属片6と、一部の領域を除いて形成された配線パターン2を保護するためのソルダーレジスト9とから構成されている。
【0019】
斯かるプリント配線板PW1において、金属片収容孔3内に配置固定されている金属片6の上面、すなわち電子部品接続側露出面7は、絶縁基板1における電子部品実装側面Aに形成された配線パターン2の外側面17と略面一の位置にあるか、若しくは、電子部品の実装に影響が出ない範囲(例えば、配線パターン2の外側面17から50μm以内の高さ)で突出している。この配線パターン2の外側面17と略面一の位置或いは外側面17からの突出量が50μm以内という高さであれば、電子部品の実装時に当該電子部品が傾くことを防ぐことができる。
一方、金属片6の下面、すなわち放熱体接続側露出面8は、絶縁基板1における放熱体配置側面Bに形成されている配線パターン2の外側面17と略面一の位置にある。
【0020】
当該金属片6は、金属片収容孔3内で中央部C付近が膨らんだ樽型状になっており、金属片収容孔3との間にできる摩擦力によって、当該金属片収容孔3内に強固に配置固定されている。
【0021】
この実施の形態では、図1(b)に示したように、当該金属片6が配置固定された当該金属片収容孔3の周囲を1周するように、当該絶縁基板1を貫通するクラック伸展防止用孔4が計20個、列状に間隔を空けて形成されているが、その個数は特に限定されない。当該クラック伸展防止用孔4は、当該金属片収容孔3の周囲に均等間隔で形成されていることが好ましい。
また、当該クラック伸展防止用孔4は、金属片収容孔3の周囲に複数列形成されていてもよい。図1(c)に示したように、当該クラック伸展防止用孔4を当該金属片収容孔3の周囲に複数列形成する場合は、隣合う列において千鳥足状に位置するようにクラック伸展防止用孔4を形成することが、より確実にクラックの伸展を抑制する上で望ましい。
クラック伸展防止用孔4の孔径としては、0.15~0.30mmの範囲とすることが好ましい。その理由は、0.15mmよりも小さい径の場合、クッラクの伸展を食い止める機能が果たせなくなる懸念があり、0.30mmよりも大きい径とした場合には、電子部品を実装する際の半田が、放熱体配置側面Bに流れ出る懸念があるためである(半田が放熱体配置側面Bに流れ出た場合、放熱体の取り付けに支障が出てしまう)。
なお、クラック伸展防止用孔4の形状自体は、円形状に限らず、正方形状、長方形状、楕円形状等任意に選択することができる。
【0022】
続いて、上記プリント配線板PW1の製造方法を図2図4を用いて説明する。
【0023】
まず、図2(a)に示したように、表裏面に金属箔2aが積層された絶縁基板1を用意し、当該絶縁基板1の所望の位置に、ドリルやパンチング、レーザー加工などによって、金属片収容孔3(例えば、切径がφ3.1~6.1mm)と当該金属片収容孔3の周囲に、列状に間隔を空けて、複数のクラック伸展防止用孔4(例えば、切径がφ0.15~0.30mm)を穿孔する(図2(b)参照)。
【0024】
ここで、絶縁基板1としては、一般的に用いられるガラスクロスなどの補強繊維にエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を含浸させたものが、耐熱性や汎用性、コスト的な面で好ましく利用できる。また、金属箔としても、一般的な銅箔を用いるのが、導電性や加工性、コスト的な面で望ましい。
【0025】
絶縁基板1の厚みに関しては、一概にその厚みを示すことはできないが、単層や多層のいずれの形態であっても、全体的な厚みとしては、例えば1.0~1.6mm程度である。また、金属箔の厚みに関しては、18~70μm程度のものが一般的に用いられる。
【0026】
次に、図3(c)に示したように、金属片収容孔3とクラック伸展防止用孔4が形成された絶縁基板1に対して、無電解めっき処理(例えば、無電解銅めっき処理)、電解めっき処理(例えば、電解銅めっき処理)を順次行うことによって、当該金属片収容孔3とクラック伸展防止用孔4を含む絶縁基板1の全体にめっき膜5(例えば、厚さが約25μmの銅めっき膜)を析出させる。
【0027】
続いて、金属片収容孔3の高さHより高い長さ(例えば、1.1~1.8mm)と金属片収容孔3の孔径Dより短い直径(例えば、2.90~5.90mm)を有する焼き鈍し済みの金属片素材6aを用意する。
【0028】
次に、金属片収容孔3に当該金属片素材6aを配置する工程であるが、「圧入方式」により行うことができる。すなわち、めっき膜5が析出された絶縁基板1を治具12上に配置した後、金属片素材6aを当該金属片収容孔3内に挿入し(図3(d)参照)、次いで、当該金属片素材6aの突出上面6bにプレスピン13で荷重をかけ、当該金属片素材6aを塑性変形させることによって、図3(e)に示した金属片収容孔3内に金属片6が配置固定された中間基板pw1を得る。
【0029】
ここで、金属片収容孔3内に配置固定された金属片6は、中央部C付近が膨らんだ樽型状に変形することによって、金属片収容孔3内に強固に配置固定されるわけだが(図7参照)、この際に、過度の負荷が絶縁基板1に掛かってしまうと、図3(e)に示したようなクラック14が発生することになる。
絶縁基板1に過度の負荷が掛かってしまう要因としては、プリント配線板が、通常、大判のワークボードに複数面付けして形成されるためだと考えられる。
つまり、ワークボードの面内の板厚バラツキが大きいところで発生してしまうと考えられるため、どの部分に発生するかは予測がつかないのだが、本発明においては、仮に絶縁基板1にクッラク14が発生したとしても、金属片収容孔3の周囲に列状に位置する当該絶縁基板1を貫通する複数のクラック伸展防止用孔4により当該クラック14の大きな伸展を食い止めることができ、もって、絶縁不良や隣接する配線パターンの断線不良の発生を抑制することができる。
【0030】
次に、治具12を外し、絶縁基板1の電子部品実装側面A及び放熱体配置側面Bに積層されている導体層2bに、周知のフォトエッチングプロセス(導体層上に感光性のエッチングレジスト膜をラミネートし、露光・現像処理によって、エッチングレジストパターンを形成した後、当該エッチングレジストパターンから露出している導体層をエッチング処理によって除去する。その後、不要になったエッチングレジストパターンを剥離することによって、所望の配線パターンを形成するという配線パターンの形成方法)を施すことによって、当該絶縁基板1の電子部品実装側面A及び放熱体配置側面Bに配線パターン2を形成し(図4(f)参照)、次いで、配線パターン2を保護するためのソルダーレジスト9を、一部の配線パターン2が露出する形で形成することによって、図4(g)に示した金属片収容孔3内に金属片6が配置固定されたプリント配線板PW1を得る。
【0031】
本発明を説明するに当たって、金属片収容孔3の内壁にめっき膜5が形成された例を用いて説明したが、図6に示した従来技術の構成のように、めっき膜を設けない構成とすることも勿論可能である。
【0032】
また、説明の便宜上、図面においては、単層の絶縁基板1の表裏面に導体層(後に配線パターン2となる層)が形成された両面プリント配線板の形態を用いて説明してきたが、絶縁基板1の一方の面にのみ導体層を設ける片面プリント配線板や絶縁基板1と導体層とを交互に複数積層してなる多層プリント配線板の形態においても、本発明は利用可能である。また、層間接続用のスルーホールを設けるための貫通穴も勿論形成される。
【0033】
絶縁基板1をコア基板として、その表裏面に絶縁樹脂層と導体層とを交互に積層したビルドアップ多層プリント配線板に本発明を適用する場合は、図4(g)と同様に、ビルドアップ多層プリント配線板を貫通するクラック伸展防止用孔を設ければよいが、例えば、図5に示したビルドアップ多層プリント配線板PW2のように、内層にクラック伸展防止用孔4を設ける構成、つまりコア基板11を貫通するが、絶縁樹脂層と導体層とから成るビルドアップ層11aは貫通しないクラック伸展防止用孔4を設ける構成とすれば、外層にクラック伸展防止用孔4が存在しない分、ビルドアップ多層プリント配線板を小型化することができる(図中の符号10は、クラック伸展防止用孔4内に充填された穴埋め樹脂を示したものであり、例示した図面では、コア基板11の製造段階で埋める例を示したが、コア基板11の表裏面にビルドアップ層11aを積層した際に流れ出るプリプレグの樹脂で埋めることも、もちろん可能である)。
【符号の説明】
【0034】
1:絶縁基板
2:配線パターン
2a:金属箔
2b:導体層
3:金属片収容孔
4:クラック伸展防止用孔
5:めっき膜
6:金属片
6a:金属片素材
6b:突出上面
7:電子部品接続側露出面
8:放熱体接続側露出面
9:ソルダーレジスト
10:穴埋め樹脂
11:コア基板
11a:ビルドアップ層
12:治具
13:プレスピン
14:クラック
15:突起
16:貫通孔
17:配線パターンの外側面
18:導体層の外側面
A:電子部品実装側面
B:放熱体配置側面
C:金属片の中央部
D:金属片収容孔の孔径
H:金属片収容孔の高さ
PW1、PW2:プリント配線板
pw1、pw2:中間基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8