(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-15
(45)【発行日】2022-03-24
(54)【発明の名称】情報記録媒体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B42D 25/425 20140101AFI20220316BHJP
G11B 7/0033 20060101ALI20220316BHJP
G11B 7/24012 20130101ALI20220316BHJP
B42D 25/324 20140101ALI20220316BHJP
B42D 25/41 20140101ALI20220316BHJP
【FI】
B42D25/425
G11B7/0033
G11B7/24012
B42D25/324
B42D25/41
(21)【出願番号】P 2018055898
(22)【出願日】2018-03-23
【審査請求日】2020-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000110217
【氏名又は名称】トッパン・フォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097560
【氏名又は名称】▲高▼橋 寛
(72)【発明者】
【氏名】外山 和典
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 秀樹
【審査官】稲荷 宗良
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-202580(JP,A)
【文献】特開2001-175838(JP,A)
【文献】特開2000-198288(JP,A)
【文献】特開2005-231238(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42D 25/425
G11B 7/0033
G11B 7/24012
B42D 25/324
B42D 25/41
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一面上に形成形態の異なる情報が形成された情報記録媒体であって、
樹脂基材の一方面上に層自体が発色する発色層が設けられ、当該樹脂基材の他方面から当該発色層側の方向に変形した状態で当該樹脂基材及び発色層に形成された浮彫形態の第1情報部と、
前記第1情報部に重ねられた位置の前記発色層が発色されることで形成された第2情報部と、
前記樹脂基材の他方面上に層自体が発色する第2発色層が設けられ、前記第1情報部の形成にあたって生じた第1情報凹部に重ねられた位置の当該第2発色層が発色されて形成された第3情報部
と、
を有することを特徴とする情報記録媒体。
【請求項2】
同一面上に形成形態の異なる情報が形成された情報記録媒体の製造方法であって、
樹脂基材の一方面上に層自体が発色する発色層が設けられ、当該樹脂基材の他方面から当該樹脂基材及び発色層を型押しして浮彫形態の第1情報部を形成する工程と、
前記第1情報部に重ねられた位置の前記発色層にレーザ光照射により発色させて第2情報部を形成する工程と、
記樹脂基材の他方面上に層自体が発色する第2発色層が設けられ、前記第1情報部の形成にあたって生じた第1情報凹部に重ねられた位置の当該第2発色層にレーザ光照射により発色させて第3情報部を形成する工程
と、
を含むことを特徴とする情報記録媒体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体に浮彫形態の情報が形成された情報記録媒体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えばクレジットカードなどでは、カード情報(所有者情報)がいわゆるエンボス加工による浮彫形態で形成されているものが普及しており、これらカードのカード情報をインターネットなどでデータ入力することでカード自体を所有しなくとも利用可能となっている一方で、店舗での利用に際しては所有者本人以外の人に渡るために当該カード情報が漏れやすい状況にあることから情報漏れを極力防ぐ必要がある。
【0003】
従来、カード情報がエンボス加工されたクレジットカードなどのカードの構成は種々知られている。例えば、特許文献1には、コアシートの表面上のエンボス加工する領域に形成された着色層を介してシート全面に表保護シートが設けられると共に、裏面に裏保護シートが設けられたカード基材であって、表保護シート上に表図柄印刷層が形成されてエンボス加工が施されてカード情報が形成され、当該エンボス加工による浮き彫りの上面にエンボス文字部着色層が形成された構成として知られている。
【0004】
一方で、上記のようなカード情報が少なくともエンボス加工されたカードに対してカード情報を読み取る技術として、例えば特許文献2記載の技術が知られている。特許文献2は、カード情報が磁気情報と共にエンボス加工された情報記録媒体に対し、所定領域中でセンサセルが配列された圧力センサを備え、磁気情報を磁気ヘッドで読み取る一方で、カードを圧力センサに押し付け、エンボス加工部分を検知することでエンボス加工によるカード情報を読み取ることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許5141260号公報
【文献】特許4729169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のようなカード情報がエンボス加工されたカードは、例えばクレジットカードのようなカード利用に際して他人に手渡して使用される場合には、エンボス加工部分のカード情報が目に触れやすく、それが瞬時であっても情報が読み取りやすいために情報漏れを来す恐れが多分にあるという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は上記課題に鑑みなされたもので、エンボス加工された情報を視認による読み取り難い形態として情報漏れのリスクを低減させる情報記録媒体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1の発明では、樹脂基材の一方面上に層自体が発色する発色層が設けられ、当該樹脂基材の他方面から当該発色層側の方向に変形した状態で当該樹脂基材及び発色層に浮彫形態の第1情報部が形成され、当該第1情報部に重ねられた位置の発色層が発色されることで第2情報部が形成され、前記樹脂基材の他方面上に層自体が発色する第2発色層が設けられ、前記第1情報部の形成にあたって生じた第1情報凹部に重ねられた位置の当該第2発色層が発色されて形成された第3情報部と、を有する構成とする。
【0011】
請求項2の発明では、同一面上に形成形態の異なる情報が形成された情報記録媒体の製造方法であって、樹脂基材の一方面上に層自体が発色する発色層が設けられ、当該樹脂基材の他方面から当該樹脂基材及び発色層を型押しして浮彫形態の第1情報部を形成する工程と、前記第1情報部に重ねられた位置の前記発色層にレーザ光照射により発色させて第2情報部を形成する工程と、前記第1情報部の形成にあたって生じた第1情報凹部に重ねられた位置の当該第2発色層にレーザ光照射により発色させて第3情報部を形成する工程とを含む構成とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、樹脂基材の一方面上に層自体が発色する発色層が設けられ、当該樹脂基材の他方面から当該発色層側の方向に変形した状態で当該樹脂基材及び発色層に浮彫形態の第1情報部が形成され、当該第1情報部に重ねられた位置の発色層が発色されることで第2情報部が形成され、樹脂基材の他方面上に層自体が発色する第2発色層が設けられ、第1情報部の形成にあたって生じた第1情報凹部に重ねられた位置で第2発色層を発色させて第3情報部を形成させた構成とすることにより、第1情報部と鑑文字関係にある第1情報凹部から当該第1情報部を視認による読み取り難い形態とさせることができ、使用の際の情報漏れのリスクを低減させることができるものである。
【0015】
請求項2の発明によれば、樹脂基材の一方面上に層自体が発色する発色層が設けられ、当該樹脂基材の他方面から当該樹脂基材及び発色層を型押しして浮彫形態の第1情報部を形成し、第1情報部に重ねられた位置の発色層にレーザ光照射により発色させて第2情報部を形成させ、樹脂基材の他方面上に層自体が発色する第2発色層が設けられ、第1情報部の形成にあたって生じた第1情報凹部に重ねられた位置で第2発色層を発色させて第3情報部を形成させる構成とすることにより、第1情報部と鑑文字関係にある第1情報凹部の位置上にレーザ光を容易に位置決め可能であり、第1情報凹部上に重ねて第3情報部を容易に形成させることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る情報記録媒体の第1実施形態の構成図である。
【
図2】
図1の情報記録媒体の製造方法の工程図である。
【
図3】本発明に係る情報記録媒体の第2実施形態の構成図である。
【
図4】本発明に係る情報記録媒体の第3実施形態の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図により説明する。なお、図に示す断面図は、理解しやすいように寸法を無視している。
図1に、本発明に係る情報記録媒体の第1実施形態の構成図を示す。
図1(A)~(C)において、情報記録媒体11は、樹脂基材12の一方面上に層自体が発色する発色層13が設けられ、当該樹脂基材12の他方面(裏面とする)12Aから当該発色層側の方向に変形した状態で当該樹脂基材12及び発色層13に浮彫形態の第1情報部21が形成されている。この第1情報部21は、樹脂基材12の裏面12Aには、
図1(B)に示すように、鑑文字状となって形成される。また、当該第1情報部21に重ねられた位置の発色層13が発色されることで第2情報部22が形成されたものである。
【0018】
上記樹脂基材12は、隠蔽性を有する樹脂を主成分とし、例えば厚さ560μmで、例えばポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレートグリコール(PET-G)、ポリカーボネート(PC)などが使用される。
【0019】
上記発色層13は、例えば厚さ50μm以上(例えば50μm~100μm)で形成され、例えばポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレートグリコール(PET-G)、ポリカーボネート(PC)などが使用されるもので、具体的にはPET-Gを用いた太平化学製品株式会社製 CG030Mが使用される。なお、樹脂基材12と同種のものが好ましい。
【0020】
そこで、
図2に、
図1の情報記録媒体の製造方法の工程図を示す。
図2(A)において、樹脂基材12の一方面上の全面に発色層13が塗工により形成される。続いて、
図2(B)に示すように、樹脂基材12の所定位置に、他方面(裏面12A)から発色層13側の方向に型押しして変形させることで当該樹脂基材12及び発色層13に浮彫形態の第1情報部21が形成される。例えば、
図1(A)に示すような数字情報として形成する。
【0021】
続いて、
図2(C)に示すように、第1情報部21に重ねられた位置の発色層13部分に対し、レーザ照射部31よりレーザ光32を第2情報部22を形成する所望の可変情報に基づいて照射し、
図2(D)に示すように、照射部分で層自体を発色させた形態による第2情報部22を、例えば
図1(A)に示すような第1情報部21とは異なる数字による情報として形成する。
【0022】
レーザ照射部31は、基本波長1,064nmのYVO4(ネオジウム)レーザ光32を照射するものであり、出力7.8W、スキャン速度3,000mm/sec、繰り返し周波数75Hzの設定条件により第2情報部22を形成する。すなわち、当該第2情報部22は層自体が黒色発色された形態で形成されることとなる。
【0023】
なお、第2情報部22を形成するに当たり、YVO4レーザ光に限らず、発色層13の材質に応じてレーザ光の種類を設定すればよい。
【0024】
上記のように、情報記録媒体11は、浮彫形態の第1情報部21を視認による読み取ろうとしたときに発色状態の第2情報部22が印象付けられて当該第1情報部21を視認による読み取り難い形態とさせることができ、使用の際の情報漏れのリスクを低減させることができるものである。特に第2情報部22を第1情報部21が数字文字なら同じ数字文字(第1情報部21と異なる数字配列)のように同じ文字種とすることで印象付けを強くすることができる。
【0025】
また、このような情報記録媒体11の製造に際して、第1情報部21の位置上の発色層13にレーザ光32を容易に位置決め可能であり、浮彫形態の第1情報部21上に重ねて第2情報部22を容易に形成させることができるものである。
【0026】
次に、
図3に、本発明に係る情報記録媒体の第2実施形態の構成図を示す。
図3(A)~(C)に示す情報記録媒体11は、
図3(C)に示すように、樹脂基材12の他方面(裏面12A)上に層自体が発色する第2発色層13Aが設けられたもので、第1情報部21の形成にあたって第2発色層13A側より型押しで発色層13側に浮彫形態としている。
【0027】
この場合、
図3(B)に示すように、第2発色層13A側では第1情報部21の形成で生じた第1情報凹部21Aが当該第1情報部21と鑑文字関係で形成されることとなる。そして、形成された第1情報凹部21Aに重ねられた位置の第2発色層13Aに対して、
図2のようにレーザ光32を照射して発色させることで第3情報部23が形成されたものである。
【0028】
すなわち、第1情報部21を鑑文字関係にある第1情報凹部21Aであっても視認による読み取りが可能であることから、第1情報凹部21Aの部分に第3情報部23を形成することで、第1情報凹部21Aから第1情報部21を認識させ難くさせることができ、使用の際の情報漏れのリスクを低減させることができるものである。なお、第3情報部23は第2情報部22と同じ情報(数字配列)であってもよい。
【0029】
次に、
図4に、本発明に係る情報記録媒体の第3実施形態の構成図を示す。
図4(A)、(B)に示す情報記録媒体11は、上記の浮彫形態の第1情報部21が形成され、当該第1情報部21に重ねられた位置の発色層13上に第2情報部22を形成させることは上述と同様であり、ここでは、第1情報部21(第2情報部22)が形成された領域以外の領域に、例えば、文字、図形等の表示情報23を形成させた形態である。
【0030】
すなわち、第2情報部22以外の領域の発色層13に対してレーザ光32を照射させることにより表示情報23を形成させることができ、表示情報23を第2情報部22の形成と同一工程で形成させることができるものである。なお、このことは上記
図3の第2実施形態についても同様に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の情報記録媒体及びその製造方法は、クレジットカードやキャッシュカード等のカードの製造、販売、使用等の産業に利用可能である。
【符号の説明】
【0032】
11 情報記録媒体
12 樹脂基材
12A 樹脂基材裏面
13 発色層
13A 第2発色層
21 第1情報部
21A 第1情報凹部
22 第2情報部
23 第3情報部
31 レーザ照射部
32 レーザ光