(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-15
(45)【発行日】2022-03-24
(54)【発明の名称】熱処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/26 20060101AFI20220316BHJP
【FI】
H01L21/26 T
(21)【出願番号】P 2018116647
(22)【出願日】2018-06-20
【審査請求日】2020-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】小野 行雄
【審査官】桑原 清
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/116685(WO,A1)
【文献】特開2017-092102(JP,A)
【文献】特表2015-522946(JP,A)
【文献】特表2008-541133(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置であって、
基板を収容するチャンバーと、
前記チャンバー内にて前記基板を載置して保持する石英のサセプタと、
前記サセプタに保持された前記基板に光を照射する光照射部と、
前記サセプタの温度を測定する第1放射温度計と、
前記サセプタに保持された前記基板の温度を測定する第2放射温度計と、
前記光照射部からの光照射を制御する制御部と、
を備え、
前記第1放射温度計は、4μmよりも長い波長の赤外光を受光して前記サセプタの温度を測定
し、
前記サセプタにダミー基板を保持させた状態で前記光照射部から光照射を行って前記サセプタを加熱するときに、前記制御部は、前記第1放射温度計が測定した前記サセプタの温度に基づいて、前記光照射部の出力を制御し、
前記制御部は、前記第2放射温度計が測定した前記ダミー基板の温度に基づいて前記光照射部の出力を制御した後、前記第1放射温度計が測定した前記サセプタの温度に基づいて前記光照射部の出力を制御することを特徴とする熱処理装置。
【請求項2】
請求項
1記載の熱処理装置において、
前記サセプタと前記第1放射温度計との間に設けられた偏光素子をさらに備え、
前記第1放射温度計は、前記サセプタの表面にブリュースター角で入射した光の反射光の進行方向に沿った位置に設けられ、
前記偏光素子は、p偏光のみを通過させることを特徴とする熱処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハー等の薄板状精密電子基板(以下、単に「基板」と称する)に光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセスにおいて、極めて短時間で半導体ウェハーを加熱するフラッシュランプアニール(FLA)が注目されている。フラッシュランプアニールは、キセノンフラッシュランプ(以下、単に「フラッシュランプ」とするときにはキセノンフラッシュランプを意味する)を使用して半導体ウェハーの表面にフラッシュ光を照射することにより、半導体ウェハーの表面のみを極めて短時間(数ミリ秒以下)に昇温させる熱処理技術である。
【0003】
キセノンフラッシュランプの放射分光分布は紫外域から近赤外域であり、従来のハロゲンランプよりも波長が短く、シリコンの半導体ウェハーの基礎吸収帯とほぼ一致している。よって、キセノンフラッシュランプから半導体ウェハーにフラッシュ光を照射したときには、透過光が少なく半導体ウェハーを急速に昇温することが可能である。また、数ミリ秒以下の極めて短時間のフラッシュ光照射であれば、半導体ウェハーの表面近傍のみを選択的に昇温できることも判明している。
【0004】
このようなフラッシュランプアニールは、極短時間の加熱が必要とされる処理、例えば典型的には半導体ウェハーに注入された不純物の活性化に利用される。イオン注入法によって不純物が注入された半導体ウェハーの表面にフラッシュランプからフラッシュ光を照射すれば、当該半導体ウェハーの表面を極短時間だけ活性化温度にまで昇温することができ、不純物を深く拡散させることなく、不純物活性化のみを実行することができるのである。
【0005】
特許文献1には、チャンバーの下方に配置されたハロゲンランプによって半導体ウェハーを予備加熱した後、チャンバーの上方に配置されたフラッシュランプから半導体ウェハーの表面にフラッシュ光を照射するフラッシュランプアニール装置が開示されている。また、特許文献1のフラッシュランプアニール装置においては、ウェハー間の温度履歴を均一にするために、ロットの最初の半導体ウェハーの処理を開始する前にハロゲンランプからの光照射によって半導体ウェハーを保持する石英のサセプタを予熱している。
【0006】
また、特許文献2には、サセプタにウェハーを保持させた状態で予熱を行うことが開示されている。このようにすれば、ウェハーからの熱伝導によってもサセプタが加熱されるため、サセプタを効率良く昇温することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-92102号公報
【文献】米国特許出願公開第2017/0194220号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1,2に開示の技術においては、サセプタの予熱を行うために、放射温度計によって非接触でサセプタの温度を測定している。しかし、特許文献2に開示されるように、サセプタにウェハーを保持させた状態で予熱を行うと、サセプタの加熱効率は向上するものの、サセプタの温度測定が困難になるという問題が生じる。すなわち、放射温度計は、測定対象物から放射された赤外光を受光し、その強度から測定対象物の温度を測定するものであるところ、サセプタにウェハーが保持されていると、放射温度計はサセプタから放射された赤外光に加えてウェハーから放射されてサセプタを透過した赤外光をも受光することとなり、サセプタの温度を正確に測定することが困難となるのである。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、サセプタに基板を保持しているか否かにかかわらず、サセプタの温度を正確に測定することができる熱処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、基板に光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置において、基板を収容するチャンバーと、前記チャンバー内にて前記基板を載置して保持する石英のサセプタと、前記サセプタに保持された前記基板に光を照射する光照射部と、前記サセプタの温度を測定する第1放射温度計と、前記サセプタに保持された前記基板の温度を測定する第2放射温度計と、前記光照射部からの光照射を制御する制御部と、を備え、前記第1放射温度計は、4μmよりも長い波長の赤外光を受光して前記サセプタの温度を測定し、前記サセプタにダミー基板を保持させた状態で前記光照射部から光照射を行って前記サセプタを加熱するときに、前記制御部は、前記第1放射温度計が測定した前記サセプタの温度に基づいて、前記光照射部の出力を制御し、前記制御部は、前記第2放射温度計が測定した前記ダミー基板の温度に基づいて前記光照射部の出力を制御した後、前記第1放射温度計が測定した前記サセプタの温度に基づいて前記光照射部の出力を制御することを特徴とする。
【0013】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明に係る熱処理装置において、前記サセプタと前記第1放射温度計との間に設けられた偏光素子をさらに備え、前記第1放射温度計は、前記サセプタの表面にブリュースター角で入射した光の反射光の進行方向に沿った位置に設けられ、前記偏光素子は、p偏光のみを通過させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1および請求項2の発明によれば、第1放射温度計は、石英を透過しない4μmよりも長い波長の赤外光を受光して石英のサセプタの温度を測定するため、基板から放射された赤外光はサセプタによって遮光され、サセプタに基板を保持しているか否かにかかわらず、サセプタの温度を正確に測定することができる。また、制御部は、先行して昇温するダミー基板の温度に基づいて光照射部の出力を制御した後、サセプタの温度に基づいて光照射部の出力を制御するため、光照射部の出力を適正に制御することができる。
【0016】
特に、請求項2の発明によれば、サセプタの表面にブリュースター角で入射した光の反射光の進行方向に沿った位置に第1放射温度計が設けられ、サセプタと第1放射温度計との間にp偏光のみを通過させる偏光素子が設けられるため、当該反射光を遮光してサセプタ自体から放射された赤外光のみを放射温度計に受光させることができ、反射光の影響を排除してサセプタの温度をより正確に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る熱処理装置の構成を示す縦断面図である。
【
図7】複数のハロゲンランプの配置を示す平面図である。
【
図8】サセプタの予熱の手順を示すフローチャートである。
【
図10】放射温度計によるサセプタの温度測定を模式的に示す図である。
【
図11】角度調整機構による偏光素子の角度調整を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0019】
<第1実施形態>
図1は、本発明に係る熱処理装置1の構成を示す縦断面図である。
図1の熱処理装置1は、基板として円板形状の半導体ウェハーWに対してフラッシュ光照射を行うことによってその半導体ウェハーWを加熱するフラッシュランプアニール装置である。処理対象となる半導体ウェハーWのサイズは特に限定されるものではないが、例えばφ300mmやφ450mmである(本実施形態ではφ300mm)。熱処理装置1に搬入される前の半導体ウェハーWには不純物が注入されており、熱処理装置1による加熱処理によって注入された不純物の活性化処理が実行される。なお、
図1および以降の各図においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。
【0020】
熱処理装置1は、半導体ウェハーWを収容するチャンバー6と、複数のフラッシュランプFLを内蔵するフラッシュ加熱部5と、複数のハロゲンランプHLを内蔵するハロゲン加熱部4と、を備える。チャンバー6の上側にフラッシュ加熱部5が設けられるとともに、下側にハロゲン加熱部4が設けられている。また、熱処理装置1は、チャンバー6の内部に、半導体ウェハーWを水平姿勢に保持する保持部7と、保持部7と装置外部との間で半導体ウェハーWの受け渡しを行う移載機構10と、を備える。さらに、熱処理装置1は、ハロゲン加熱部4、フラッシュ加熱部5およびチャンバー6に設けられた各動作機構を制御して半導体ウェハーWの熱処理を実行させる制御部3を備える。
【0021】
チャンバー6は、筒状のチャンバー側部61の上下に石英製のチャンバー窓を装着して構成されている。チャンバー側部61は上下が開口された概略筒形状を有しており、上側開口には上側チャンバー窓63が装着されて閉塞され、下側開口には下側チャンバー窓64が装着されて閉塞されている。チャンバー6の天井部を構成する上側チャンバー窓63は、石英により形成された円板形状部材であり、フラッシュ加熱部5から出射されたフラッシュ光をチャンバー6内に透過する石英窓として機能する。また、チャンバー6の床部を構成する下側チャンバー窓64も、石英により形成された円板形状部材であり、ハロゲン加熱部4からの光をチャンバー6内に透過する石英窓として機能する。
【0022】
また、チャンバー側部61の内側の壁面の上部には反射リング68が装着され、下部には反射リング69が装着されている。反射リング68,69は、ともに円環状に形成されている。上側の反射リング68は、チャンバー側部61の上側から嵌め込むことによって装着される。一方、下側の反射リング69は、チャンバー側部61の下側から嵌め込んで図示省略のビスで留めることによって装着される。すなわち、反射リング68,69は、ともに着脱自在にチャンバー側部61に装着されるものである。チャンバー6の内側空間、すなわち上側チャンバー窓63、下側チャンバー窓64、チャンバー側部61および反射リング68,69によって囲まれる空間が熱処理空間65として規定される。
【0023】
チャンバー側部61に反射リング68,69が装着されることによって、チャンバー6の内壁面に凹部62が形成される。すなわち、チャンバー側部61の内壁面のうち反射リング68,69が装着されていない中央部分と、反射リング68の下端面と、反射リング69の上端面とで囲まれた凹部62が形成される。凹部62は、チャンバー6の内壁面に水平方向に沿って円環状に形成され、半導体ウェハーWを保持する保持部7を囲繞する。チャンバー側部61および反射リング68,69は、強度と耐熱性に優れた金属材料(例えば、ステンレススチール)にて形成されている。
【0024】
また、チャンバー側部61には、チャンバー6に対して半導体ウェハーWの搬入および搬出を行うための搬送開口部(炉口)66が形設されている。搬送開口部66は、ゲートバルブ185によって開閉可能とされている。搬送開口部66は凹部62の外周面に連通接続されている。このため、ゲートバルブ185が搬送開口部66を開放しているときには、搬送開口部66から凹部62を通過して熱処理空間65への半導体ウェハーWの搬入および熱処理空間65からの半導体ウェハーWの搬出を行うことができる。また、ゲートバルブ185が搬送開口部66を閉鎖するとチャンバー6内の熱処理空間65が密閉空間とされる。
【0025】
また、チャンバー6の内壁上部には熱処理空間65に処理ガスを供給するガス供給孔81が形設されている。ガス供給孔81は、凹部62よりも上側位置に形設されており、反射リング68に設けられていても良い。ガス供給孔81はチャンバー6の側壁内部に円環状に形成された緩衝空間82を介してガス供給管83に連通接続されている。ガス供給管83は処理ガス供給源85に接続されている。また、ガス供給管83の経路途中にはバルブ84が介挿されている。バルブ84が開放されると、処理ガス供給源85から緩衝空間82に処理ガスが送給される。緩衝空間82に流入した処理ガスは、ガス供給孔81よりも流体抵抗の小さい緩衝空間82内を拡がるように流れてガス供給孔81から熱処理空間65内へと供給される。処理ガスとしては、例えば窒素(N2)等の不活性ガス、または、水素(H2)、アンモニア(NH3)等の反応性ガス、或いはそれらを混合した混合ガスを用いることができる(本実施形態では窒素ガス)。
【0026】
一方、チャンバー6の内壁下部には熱処理空間65内の気体を排気するガス排気孔86が形設されている。ガス排気孔86は、凹部62よりも下側位置に形設されており、反射リング69に設けられていても良い。ガス排気孔86はチャンバー6の側壁内部に円環状に形成された緩衝空間87を介してガス排気管88に連通接続されている。ガス排気管88は排気部190に接続されている。また、ガス排気管88の経路途中にはバルブ89が介挿されている。バルブ89が開放されると、熱処理空間65の気体がガス排気孔86から緩衝空間87を経てガス排気管88へと排出される。なお、ガス供給孔81およびガス排気孔86は、チャンバー6の周方向に沿って複数設けられていても良いし、スリット状のものであっても良い。
【0027】
また、搬送開口部66の先端にも熱処理空間65内の気体を排出するガス排気管191が接続されている。ガス排気管191はバルブ192を介して排気部190に接続されている。バルブ192を開放することによって、搬送開口部66を介してチャンバー6内の気体が排気される。
【0028】
排気部190としては、真空ポンプや熱処理装置1が設置される工場の排気ユーティリティを用いることができる。排気部190として真空ポンプを採用し、バルブ84を閉止してガス供給孔81から何らのガス供給を行うことなく密閉空間である熱処理空間65の雰囲気を排気すると、チャンバー6内を真空雰囲気にまで減圧することができる。また、排気部190として真空ポンプを用いていない場合であっても、ガス供給孔81からガス供給を行うことなく排気を行うことにより、チャンバー6内を大気圧未満の気圧に減圧することができる。
【0029】
図2は、保持部7の全体外観を示す斜視図である。保持部7は、基台リング71、連結部72およびサセプタ74を備えて構成される。基台リング71、連結部72およびサセプタ74はいずれも石英にて形成されている。すなわち、保持部7の全体が石英にて形成されている。
【0030】
基台リング71は円環形状から一部が欠落した円弧形状の石英部材である。この欠落部分は、後述する移載機構10の移載アーム11と基台リング71との干渉を防ぐために設けられている。基台リング71は凹部62の底面に載置されることによって、チャンバー6の壁面に支持されることとなる(
図1参照)。基台リング71の上面に、その円環形状の周方向に沿って複数の連結部72(本実施形態では4個)が立設される。連結部72も石英の部材であり、溶接によって基台リング71に固着される。
【0031】
サセプタ74は基台リング71に設けられた4個の連結部72によって支持される。
図3は、サセプタ74の平面図である。また、
図4は、サセプタ74の断面図である。サセプタ74は、保持プレート75、ガイドリング76および複数の基板支持ピン77を備える。保持プレート75は、石英にて形成された略円形の平板状部材である。保持プレート75の直径は半導体ウェハーWの直径よりも大きい。すなわち、保持プレート75は、半導体ウェハーWよりも大きな平面サイズを有する。
【0032】
保持プレート75の上面周縁部にガイドリング76が設置されている。ガイドリング76は、半導体ウェハーWの直径よりも大きな内径を有する円環形状の部材である。例えば、半導体ウェハーWの直径がφ300mmの場合、ガイドリング76の内径はφ320mmである。ガイドリング76の内周は、保持プレート75から上方に向けて広くなるようなテーパ面とされている。ガイドリング76は、保持プレート75と同様の石英にて形成される。ガイドリング76は、保持プレート75の上面に溶着するようにしても良いし、別途加工したピンなどによって保持プレート75に固定するようにしても良い。或いは、保持プレート75とガイドリング76とを一体の部材として加工するようにしても良い。
【0033】
保持プレート75の上面のうちガイドリング76よりも内側の領域が半導体ウェハーWを保持する平面状の保持面75aとされる。保持プレート75の保持面75aには、複数の基板支持ピン77が立設されている。本実施形態においては、保持面75aの外周円(ガイドリング76の内周円)と同心円の周上に沿って30°毎に計12個の基板支持ピン77が立設されている。12個の基板支持ピン77を配置した円の径(対向する基板支持ピン77間の距離)は半導体ウェハーWの径よりも小さく、半導体ウェハーWの径がφ300mmであればφ270mm~φ280mm(本実施形態ではφ270mm)である。それぞれの基板支持ピン77は石英にて形成されている。複数の基板支持ピン77は、保持プレート75の上面に溶接によって設けるようにしても良いし、保持プレート75と一体に加工するようにしても良い。
【0034】
図2に戻り、基台リング71に立設された4個の連結部72とサセプタ74の保持プレート75の周縁部とが溶接によって固着される。すなわち、サセプタ74と基台リング71とは連結部72によって固定的に連結されている。このような保持部7の基台リング71がチャンバー6の壁面に支持されることによって、保持部7がチャンバー6に装着される。保持部7がチャンバー6に装着された状態においては、サセプタ74の保持プレート75は水平姿勢(法線が鉛直方向と一致する姿勢)となる。すなわち、保持プレート75の保持面75aは水平面となる。
【0035】
チャンバー6に搬入された半導体ウェハーWは、チャンバー6に装着された保持部7のサセプタ74の上に水平姿勢にて載置されて保持される。このとき、半導体ウェハーWは保持プレート75上に立設された12個の基板支持ピン77によって支持されてサセプタ74に保持される。より厳密には、12個の基板支持ピン77の上端部が半導体ウェハーWの下面に接触して当該半導体ウェハーWを支持する。12個の基板支持ピン77の高さ(基板支持ピン77の上端から保持プレート75の保持面75aまでの距離)は均一であるため、12個の基板支持ピン77によって半導体ウェハーWを水平姿勢に支持することができる。
【0036】
また、半導体ウェハーWは複数の基板支持ピン77によって保持プレート75の保持面75aから所定の間隔を隔てて支持されることとなる。基板支持ピン77の高さよりもガイドリング76の厚さの方が大きい。従って、複数の基板支持ピン77によって支持された半導体ウェハーWの水平方向の位置ずれはガイドリング76によって防止される。
【0037】
また、
図2および
図3に示すように、サセプタ74の保持プレート75には、上下に貫通して開口部78が形成されている。開口部78は、放射温度計120(
図1参照)が半導体ウェハーWの下面から放射される放射光(赤外光)を受光するために設けられている。すなわち、放射温度計120が開口部78を介して半導体ウェハーWの下面から放射された光を受光し、別置のディテクタによってその半導体ウェハーWの温度が測定される。さらに、サセプタ74の保持プレート75には、後述する移載機構10のリフトピン12が半導体ウェハーWの受け渡しのために貫通する4個の貫通孔79が穿設されている。
【0038】
図5は、移載機構10の平面図である。また、
図6は、移載機構10の側面図である。移載機構10は、2本の移載アーム11を備える。移載アーム11は、概ね円環状の凹部62に沿うような円弧形状とされている。それぞれの移載アーム11には2本のリフトピン12が立設されている。移載アーム11およびリフトピン12は石英にて形成されている。各移載アーム11は水平移動機構13によって回動可能とされている。水平移動機構13は、一対の移載アーム11を保持部7に対して半導体ウェハーWの移載を行う移載動作位置(
図5の実線位置)と保持部7に保持された半導体ウェハーWと平面視で重ならない退避位置(
図5の二点鎖線位置)との間で水平移動させる。水平移動機構13としては、個別のモータによって各移載アーム11をそれぞれ回動させるものであっても良いし、リンク機構を用いて1個のモータによって一対の移載アーム11を連動させて回動させるものであっても良い。
【0039】
また、一対の移載アーム11は、昇降機構14によって水平移動機構13とともに昇降移動される。昇降機構14が一対の移載アーム11を移載動作位置にて上昇させると、計4本のリフトピン12がサセプタ74に穿設された貫通孔79(
図2,3参照)を通過し、リフトピン12の上端がサセプタ74の上面から突き出る。一方、昇降機構14が一対の移載アーム11を移載動作位置にて下降させてリフトピン12を貫通孔79から抜き取り、水平移動機構13が一対の移載アーム11を開くように移動させると各移載アーム11が退避位置に移動する。一対の移載アーム11の退避位置は、保持部7の基台リング71の直上である。基台リング71は凹部62の底面に載置されているため、移載アーム11の退避位置は凹部62の内側となる。なお、移載機構10の駆動部(水平移動機構13および昇降機構14)が設けられている部位の近傍にも図示省略の排気機構が設けられており、移載機構10の駆動部周辺の雰囲気がチャンバー6の外部に排出されるように構成されている。
【0040】
図1に示すように、熱処理装置1は3つの放射温度計120,130,140を有する。上述した通り、放射温度計120は、サセプタ74に設けられた開口部78を介して半導体ウェハーWの温度を測定する。放射温度計130は、石英のサセプタ74から放射された赤外光を検知してサセプタ74の温度を測定する。一方、放射温度計140は、下側チャンバー窓64から放射された赤外光を検知して下側チャンバー窓64の温度を測定する。放射温度計120,130,140は、それぞれ測定対象物である半導体ウェハーW、サセプタ74および下側チャンバー窓64の斜め下方に設けられている。すなわち、放射温度計120,130,140のそれぞれの光軸と測定対象物とのなす角度は90°よりも小さい。これは、放射温度計120,130,140がハロゲンランプHLおよびフラッシュランプFLからの光照射を遮光しないようにするためである。
【0041】
チャンバー6の上方に設けられたフラッシュ加熱部5は、筐体51の内側に、複数本(本実施形態では30本)のキセノンフラッシュランプFLからなる光源と、その光源の上方を覆うように設けられたリフレクタ52と、を備えて構成される。また、フラッシュ加熱部5の筐体51の底部にはランプ光放射窓53が装着されている。フラッシュ加熱部5の床部を構成するランプ光放射窓53は、石英により形成された板状の石英窓である。フラッシュ加熱部5がチャンバー6の上方に設置されることにより、ランプ光放射窓53が上側チャンバー窓63と対向することとなる。フラッシュランプFLはチャンバー6の上方からランプ光放射窓53および上側チャンバー窓63を介して熱処理空間65にフラッシュ光を照射する。
【0042】
複数のフラッシュランプFLは、それぞれが長尺の円筒形状を有する棒状ランプであり、それぞれの長手方向が保持部7に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように平面状に配列されている。よって、フラッシュランプFLの配列によって形成される平面も水平面である。
【0043】
キセノンフラッシュランプFLは、その内部にキセノンガスが封入されその両端部にコンデンサーに接続された陽極および陰極が配設された棒状のガラス管(放電管)と、該ガラス管の外周面上に付設されたトリガー電極とを備える。キセノンガスは電気的には絶縁体であることから、コンデンサーに電荷が蓄積されていたとしても通常の状態ではガラス管内に電気は流れない。しかしながら、トリガー電極に高電圧を印加して絶縁を破壊した場合には、コンデンサーに蓄えられた電気がガラス管内に瞬時に流れ、そのときのキセノンの原子あるいは分子の励起によって光が放出される。このようなキセノンフラッシュランプFLにおいては、予めコンデンサーに蓄えられていた静電エネルギーが0.1ミリセカンドないし100ミリセカンドという極めて短い光パルスに変換されることから、ハロゲンランプHLの如き連続点灯の光源に比べて極めて強い光を照射し得るという特徴を有する。すなわち、フラッシュランプFLは、1秒未満の極めて短い時間で瞬間的に発光するパルス発光ランプである。なお、フラッシュランプFLの発光時間は、フラッシュランプFLに電力供給を行うランプ電源のコイル定数によって調整することができる。
【0044】
また、リフレクタ52は、複数のフラッシュランプFLの上方にそれら全体を覆うように設けられている。リフレクタ52の基本的な機能は、複数のフラッシュランプFLから出射されたフラッシュ光を熱処理空間65の側に反射するというものである。リフレクタ52はアルミニウム合金板にて形成されており、その表面(フラッシュランプFLに臨む側の面)はブラスト処理により粗面化加工が施されている。
【0045】
チャンバー6の下方に設けられたハロゲン加熱部4は、筐体41の内側に複数本(本実施形態では40本)のハロゲンランプHLを内蔵している。ハロゲン加熱部4は、複数のハロゲンランプHLによってチャンバー6の下方から下側チャンバー窓64を介して熱処理空間65への光照射を行って半導体ウェハーWを加熱する光照射部である。
【0046】
図7は、複数のハロゲンランプHLの配置を示す平面図である。40本のハロゲンランプHLは上下2段に分けて配置されている。保持部7に近い上段に20本のハロゲンランプHLが配設されるとともに、上段よりも保持部7から遠い下段にも20本のハロゲンランプHLが配設されている。各ハロゲンランプHLは、長尺の円筒形状を有する棒状ランプである。上段、下段ともに20本のハロゲンランプHLは、それぞれの長手方向が保持部7に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように配列されている。よって、上段、下段ともにハロゲンランプHLの配列によって形成される平面は水平面である。
【0047】
また、
図7に示すように、上段、下段ともに保持部7に保持される半導体ウェハーWの中央部に対向する領域よりも周縁部に対向する領域におけるハロゲンランプHLの配設密度が高くなっている。すなわち、上下段ともに、ランプ配列の中央部よりも周縁部の方がハロゲンランプHLの配設ピッチが短い。このため、ハロゲン加熱部4からの光照射による加熱時に温度低下が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部により多い光量の照射を行うことができる。
【0048】
また、上段のハロゲンランプHLからなるランプ群と下段のハロゲンランプHLからなるランプ群とが格子状に交差するように配列されている。すなわち、上段に配置された20本のハロゲンランプHLの長手方向と下段に配置された20本のハロゲンランプHLの長手方向とが互いに直交するように計40本のハロゲンランプHLが配設されている。
【0049】
ハロゲンランプHLは、ガラス管内部に配設されたフィラメントに通電することでフィラメントを白熱化させて発光させるフィラメント方式の光源である。ガラス管の内部には、窒素やアルゴン等の不活性ガスにハロゲン元素(ヨウ素、臭素等)を微量導入した気体が封入されている。ハロゲン元素を導入することによって、フィラメントの折損を抑制しつつフィラメントの温度を高温に設定することが可能となる。したがって、ハロゲンランプHLは、通常の白熱電球に比べて寿命が長くかつ強い光を連続的に照射できるという特性を有する。すなわち、ハロゲンランプHLは少なくとも1秒以上連続して発光する連続点灯ランプである。また、ハロゲンランプHLは棒状ランプであるため長寿命であり、ハロゲンランプHLを水平方向に沿わせて配置することにより上方の半導体ウェハーWへの放射効率が優れたものとなる。
【0050】
また、ハロゲン加熱部4の筐体41内にも、2段のハロゲンランプHLの下側にリフレクタ43が設けられている(
図1)。リフレクタ43は、複数のハロゲンランプHLから出射された光を熱処理空間65の側に反射する。
【0051】
制御部3は、熱処理装置1に設けられた上記の種々の動作機構を制御する。制御部3のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部3は、各種演算処理を行う回路であるCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAMおよび制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく磁気ディスクを備えている。制御部3のCPUが所定の処理プログラムを実行することによって熱処理装置1における処理が進行する。
【0052】
上記の構成以外にも熱処理装置1は、半導体ウェハーWの熱処理時にハロゲンランプHLおよびフラッシュランプFLから発生する熱エネルギーによるハロゲン加熱部4、フラッシュ加熱部5およびチャンバー6の過剰な温度上昇を防止するため、様々な冷却用の構造を備えている。例えば、チャンバー6の壁体には水冷管(図示省略)が設けられている。また、ハロゲン加熱部4およびフラッシュ加熱部5は、内部に気体流を形成して排熱する空冷構造とされている。また、上側チャンバー窓63とランプ光放射窓53との間隙にも空気が供給され、フラッシュ加熱部5および上側チャンバー窓63を冷却する。
【0053】
次に、熱処理装置1における処理動作について説明する。まず、処理対象となる半導体ウェハーWに対する熱処理の手順について説明する。ここで処理対象となる半導体ウェハーWはイオン注入法により不純物(イオン)が添加された半導体基板である。その不純物の活性化が熱処理装置1によるフラッシュ光照射加熱処理(アニール)により実行される。以下に説明する半導体ウェハーWの処理手順は、制御部3が熱処理装置1の各動作機構を制御することにより進行する。
【0054】
まず、給気のためのバルブ84が開放されるとともに、排気用のバルブ89,192が開放されてチャンバー6内に対する給排気が開始される。バルブ84が開放されると、ガス供給孔81から熱処理空間65に窒素ガスが供給される。また、バルブ89が開放されると、ガス排気孔86からチャンバー6内の気体が排気される。これにより、チャンバー6内の熱処理空間65の上部から供給された窒素ガスが下方へと流れ、熱処理空間65の下部から排気される。
【0055】
また、バルブ192が開放されることによって、搬送開口部66からもチャンバー6内の気体が排気される。さらに、図示省略の排気機構によって移載機構10の駆動部周辺の雰囲気も排気される。なお、熱処理装置1における半導体ウェハーWの熱処理時には窒素ガスが熱処理空間65に継続的に供給されており、その供給量は処理工程に応じて適宜変更される。
【0056】
続いて、ゲートバルブ185が開いて搬送開口部66が開放され、装置外部の搬送ロボットにより搬送開口部66を介して処理対象となる半導体ウェハーWがチャンバー6内の熱処理空間65に搬入される。このときには、半導体ウェハーWの搬入にともなって装置外部の雰囲気を巻き込むおそれがあるが、チャンバー6には窒素ガスが供給され続けているため、搬送開口部66から窒素ガスが流出して、そのような外部雰囲気の巻き込みを最小限に抑制することができる。
【0057】
搬送ロボットによって搬入された半導体ウェハーWは保持部7の直上位置まで進出して停止する。そして、移載機構10の一対の移載アーム11が退避位置から移載動作位置に水平移動して上昇することにより、リフトピン12が貫通孔79を通ってサセプタ74の保持プレート75の上面から突き出て半導体ウェハーWを受け取る。このとき、リフトピン12は基板支持ピン77の上端よりも上方にまで上昇する。
【0058】
半導体ウェハーWがリフトピン12に載置された後、搬送ロボットが熱処理空間65から退出し、ゲートバルブ185によって搬送開口部66が閉鎖される。そして、一対の移載アーム11が下降することにより、半導体ウェハーWは移載機構10から保持部7のサセプタ74に受け渡されて水平姿勢にて下方より保持される。半導体ウェハーWは、保持プレート75上に立設された複数の基板支持ピン77によって支持されてサセプタ74に保持される。また、半導体ウェハーWは、パターン形成がなされて不純物が注入された表面を上面として保持部7に保持される。複数の基板支持ピン77によって支持された半導体ウェハーWの裏面(表面とは反対側の主面)と保持プレート75の保持面75aとの間には所定の間隔が形成される。サセプタ74の下方にまで下降した一対の移載アーム11は水平移動機構13によって退避位置、すなわち凹部62の内側に退避する。
【0059】
半導体ウェハーWが石英にて形成された保持部7のサセプタ74によって水平姿勢にて下方より保持された後、ハロゲン加熱部4の40本のハロゲンランプHLが一斉に点灯して予備加熱(アシスト加熱)が開始される。ハロゲンランプHLから出射されたハロゲン光は、石英にて形成された下側チャンバー窓64およびサセプタ74を透過して半導体ウェハーWの下面に照射される。ハロゲンランプHLからの光照射を受けることによって半導体ウェハーWが予備加熱されて温度が上昇する。なお、移載機構10の移載アーム11は凹部62の内側に退避しているため、ハロゲンランプHLによる加熱の障害となることは無い。
【0060】
ハロゲンランプHLによる予備加熱を行うときには、半導体ウェハーWの温度が放射温度計120によって測定されている。すなわち、サセプタ74に保持された半導体ウェハーWの下面から開口部78を介して放射された赤外光を放射温度計120が受光して昇温中のウェハー温度を測定する。測定された半導体ウェハーWの温度は制御部3に伝達される。制御部3は、ハロゲンランプHLからの光照射によって昇温する半導体ウェハーWの温度が所定の予備加熱温度T1に到達したか否かを監視しつつ、ハロゲンランプHLの出力を制御する。すなわち、制御部3は、放射温度計120による測定値に基づいて、半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1となるようにハロゲンランプHLの出力をフィードバック制御する。予備加熱温度T1は、半導体ウェハーWに添加された不純物が熱により拡散する恐れのない、200℃ないし800℃程度、好ましくは350℃ないし600℃程度とされる(本実施の形態では600℃)。
【0061】
半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達した後、制御部3は半導体ウェハーWをその予備加熱温度T1に暫時維持する。具体的には、放射温度計120によって測定される半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達した時点にて制御部3がハロゲンランプHLの出力を調整し、半導体ウェハーWの温度をほぼ予備加熱温度T1に維持している。
【0062】
半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達して所定時間が経過した時点にてフラッシュ加熱部5のフラッシュランプFLがサセプタ74に保持された半導体ウェハーWの表面にフラッシュ光照射を行う。このとき、フラッシュランプFLから放射されるフラッシュ光の一部は直接にチャンバー6内へと向かい、他の一部は一旦リフレクタ52により反射されてからチャンバー6内へと向かい、これらのフラッシュ光の照射により半導体ウェハーWのフラッシュ加熱が行われる。
【0063】
フラッシュ加熱は、フラッシュランプFLからのフラッシュ光(閃光)照射により行われるため、半導体ウェハーWの表面温度を短時間で上昇することができる。すなわち、フラッシュランプFLから照射されるフラッシュ光は、予めコンデンサーに蓄えられていた静電エネルギーが極めて短い光パルスに変換された、照射時間が0.1ミリセカンド以上100ミリセカンド以下程度の極めて短く強い閃光である。そして、フラッシュランプFLからのフラッシュ光照射によりフラッシュ加熱される半導体ウェハーWの表面温度は、瞬間的に1000℃以上の処理温度T2まで上昇し、半導体ウェハーWに注入された不純物が活性化された後、表面温度が急速に下降する。このように、熱処理装置1では、半導体ウェハーWの表面温度を極めて短時間で昇降することができるため、半導体ウェハーWに注入された不純物の熱による拡散を抑制しつつ不純物の活性化を行うことができる。なお、不純物の活性化に必要な時間はその熱拡散に必要な時間に比較して極めて短いため、0.1ミリセカンドないし100ミリセカンド程度の拡散が生じない短時間であっても活性化は完了する。
【0064】
フラッシュ加熱処理が終了した後、所定時間経過後にハロゲンランプHLが消灯する。これにより、半導体ウェハーWが予備加熱温度T1から急速に降温する。降温中の半導体ウェハーWの温度は放射温度計120によって測定され、その測定結果は制御部3に伝達される。制御部3は、放射温度計120の測定結果より半導体ウェハーWの温度が所定温度まで降温したか否かを監視する。そして、半導体ウェハーWの温度が所定以下にまで降温した後、移載機構10の一対の移載アーム11が再び退避位置から移載動作位置に水平移動して上昇することにより、リフトピン12がサセプタ74の上面から突き出て熱処理後の半導体ウェハーWをサセプタ74から受け取る。続いて、ゲートバルブ185により閉鎖されていた搬送開口部66が開放され、リフトピン12上に載置された半導体ウェハーWが装置外部の搬送ロボットにより搬出され、熱処理装置1における半導体ウェハーWの加熱処理が完了する。
【0065】
ところで、典型的には、半導体ウェハーWの処理はロット単位で行われる。ロットとは、同一条件にて同一内容の処理を行う対象となる1組の半導体ウェハーWである。本実施形態の熱処理装置1においても、ロットを構成する複数枚(例えば、25枚)の半導体ウェハーWが1枚ずつ順次にチャンバー6に搬入されて加熱処理が行われる。
【0066】
ここで、しばらく処理を行っていなかった熱処理装置1にてロットの処理を開始する場合、概ね室温のチャンバー6にロットの最初の半導体ウェハーWが搬入されてフラッシュ加熱処理が行われることとなる。このような場合は、例えばメンテナンス後に熱処理装置1が起動されてから最初のロットを処理する場合や先のロットを処理した後に長時間が経過した場合などである。加熱処理時には、昇温した半導体ウェハーWからサセプタ74等のチャンバー内構造物に熱伝導が生じるため、初期には室温であったサセプタ74が半導体ウェハーWの処理枚数が増えるにつれて徐々に蓄熱により昇温することとなる。また、ハロゲンランプHLから出射された赤外光の一部は下側チャンバー窓64に吸収されるため、半導体ウェハーWの処理枚数が増えるにつれて下側チャンバー窓64の温度も徐々に昇温することとなる。
【0067】
そして、約10枚の半導体ウェハーWの加熱処理が行われたときにサセプタ74および下側チャンバー窓64の温度が一定の安定温度に到達する。安定温度に到達したサセプタ74では、半導体ウェハーWからサセプタ74への伝熱量とサセプタ74からの放熱量とが均衡する。サセプタ74の温度が安定温度に到達するまでは、半導体ウェハーWからの伝熱量がサセプタ74からの放熱量よりも多いため、半導体ウェハーWの処理枚数が増えるにつれてサセプタ74の温度が徐々に蓄熱により上昇する。これに対して、サセプタ74の温度が安定温度に到達した後は、半導体ウェハーWからの伝熱量とサセプタ74からの放熱量とが均衡するため、サセプタ74の温度は一定の安定温度に維持されることとなる。また、下側チャンバー窓64の温度が安定温度に到達した後は、下側チャンバー窓64がハロゲンランプHLの照射光から吸収する熱量と下側チャンバー窓64から放出される熱量とが均衡するため、下側チャンバー窓64の温度も一定の安定温度に維持されることとなる。
【0068】
このように室温のチャンバー6にて処理を開始すると、ロットの初期の半導体ウェハーWと途中からの半導体ウェハーWとでチャンバー6の構造物の温度が異なることに起因して温度履歴が不均一になるという問題があった。また、初期の半導体ウェハーWについては低温のサセプタ74に支持されてフラッシュ加熱処理が行われるためにウェハー反りが生じることもあった。このため、従来では、ロットの処理を開始する前に、処理対象ではないダミーウェハーをチャンバー6内に搬入して処理対象の半導体ウェハーWと同様の予備加熱およびフラッシュ加熱処理を行ってサセプタ74および下側チャンバー窓64等のチャンバー内構造物を安定温度に昇温するダミーランニングが実施されていた。このようなダミーランニングは、処理とは無関係なダミーウェハーを消費するだけでなく、10枚程度のダミーウェハーにフラッシュ加熱処理を行うのに相当の時間を要するため、熱処理装置1の効率的な運用が妨げられる。
【0069】
そこで、第1実施形態においては、ロットの最初の半導体ウェハーWをチャンバー6に搬入する前に、サセプタ74等のチャンバー6内の構造物の予熱を行う。
図8は、サセプタ74の予熱の手順を示すフローチャートである。
図9は、サセプタ74の予熱を模式的に示す図である。
【0070】
まず、チャンバー6内にダミーウェハーDWを搬入してサセプタ74に載置する(ステップS1)。ダミーウェハーDWは、処理対象となる半導体ウェハーWと同様の円板形状のシリコンウェハーであり、半導体ウェハーWと同様のサイズおよび形状を有する。但し、ダミーウェハーDWには、パターン形成やイオン注入はなされていない。ダミーウェハーDWのチャンバー6への搬入手順は、上述した半導体ウェハーWの搬入手順と同じである。すなわち、装置外部の搬送ロボットによってダミーウェハーDWがチャンバー6内に搬入され、移載機構10のリフトピン12がダミーウェハーDWを受け取る。そして、リフトピン12が下降することにより、ダミーウェハーDWがサセプタ74に載置されて保持される。
【0071】
ダミーウェハーDWがサセプタ74に保持された後、ハロゲン加熱部4のハロゲンランプHLが点灯する(ステップS2)。ハロゲンランプHLから出射された光の一部は石英の下側チャンバー窓64およびサセプタ74によって吸収されるものの、大部分はダミーウェハーDWに吸収される。従って、ハロゲンランプHLからの光照射によって、サセプタ74よりも先行してダミーウェハーDWが昇温する。そして、ダミーウェハーDWからの熱伝導によってサセプタ74が予熱される。仮に、ダミーウェハーDWが存在していなければ、ハロゲンランプHLから照射される光の吸収のみによって石英のサセプタ74が加熱されることとなるため、昇温速度は著しく遅くなる。すなわち、サセプタ74にダミーウェハーDWを保持させた状態でハロゲンランプHLから光照射を行うことにより、先行して昇温するダミーウェハーDWからの熱伝導によって石英のサセプタ74を効率良く迅速に予熱することができるのである。
【0072】
ダミーウェハーDWを保持したサセプタ74の予熱を行うときには、放射温度計120によってダミーウェハーDWの温度が測定されている。また、放射温度計130によってサセプタ74の温度が測定されるとともに、放射温度計140によって下側チャンバー窓64の温度が測定される。
【0073】
ハロゲンランプHLが点灯してから暫く、つまりサセプタ74の予熱の初期段階では、ダミーウェハーDWの測定温度に基づいて制御部3がハロゲンランプHLの出力を制御している(ステップS3)。ステップS3ではサセプタ74に保持されたダミーウェハーDWの下面から開口部78を介して放射された赤外光を放射温度計120が受光してダミーウェハーDWの温度を測定する。測定されたダミーウェハーDWの温度は制御部3に伝達される。制御部3は、ダミーウェハーDWの温度が所定の設定温度に到達したか否かを監視しつつ、ハロゲンランプHLの出力を制御する。すなわち、制御部3は、放射温度計120によって測定されたダミーウェハーDWの温度に基づいてハロゲンランプHLの出力をフィードバック制御する。
【0074】
ダミーウェハーDWの温度が所定の設定温度に到達した後、サセプタ74の測定温度に基づいて制御部3がハロゲンランプHLの出力を制御する(ステップS4)。ステップS4では予熱中のサセプタ74から放射された赤外光を放射温度計130が受光してサセプタ74の温度を測定する。放射温度計130は、4μmよりも長い波長の赤外光を受光してサセプタ74の温度を測定する。具体的には、例えば、波長4μm以下の光を遮光するフィルターを放射温度計130に設けるようにすれば良い。或いは、検出波長域が4μmよりも長い検出素子を放射温度計130に備えるようにしても良い。
【0075】
石英は、4μm以下の波長域では高い透過率を有する一方で、4μmよりも長い波長域では透過率が顕著に低くなる性質を有する。つまり、石英は、4μm以下の波長域では透明であるものの、4μmよりも長い波長域では不透明となるのである。従って、4μm以下の波長域で石英のサセプタ74の温度測定を行うと、放射温度計はサセプタ74から放射された赤外光に加えてダミーウェハーDWから放射されてサセプタ74を透過した赤外光をも受光することとなり、サセプタ74の温度を正確に測定することができない。第1実施形態では、放射温度計130は、4μmよりも長い波長の赤外光を受光してサセプタ74の温度を測定している。石英は4μmよりも長い波長域では不透明であるため、ダミーウェハーDWから放射された4μmよりも長い波長の赤外光はサセプタ74によって遮光される。その結果、放射温度計130は、サセプタ74から放射された赤外光のみを受光することができ、サセプタ74の温度を正確に測定することができる。
【0076】
放射温度計130によって測定されたサセプタ74の温度は制御部3に伝達される。制御部3は、サセプタ74の温度が安定温度に到達したか否かを監視しつつ、ハロゲンランプHLの出力を制御する。すなわち、制御部3は、放射温度計130によって取得されたサセプタ74の測定温度に基づいて、サセプタ74の温度が安定温度となるようにハロゲンランプHLの出力をフィードバック制御する。安定温度とは、サセプタ74を予熱することなく、チャンバー6内にてロットの複数の半導体ウェハーWに連続して光照射加熱を行うことによりサセプタ74の温度が上昇して一定となったときの当該サセプタ74の温度である。
【0077】
サセプタ74が安定温度に到達した後、チャンバー6からダミーウェハーDWを搬出し、ロットの最初の処理対象となる半導体ウェハーWをチャンバー6に搬入して上述の熱処理を実行する。ロットの最初の処理対象となる半導体ウェハーWがチャンバー6内に搬入されたときには、サセプタ74等が安定温度に加熱されているため、ロットを構成する全ての半導体ウェハーWにわたって温度履歴を均一にすることができる。また、ロットの初期の半導体ウェハーWについても、安定温度に昇温したサセプタ74によって保持されるため、サセプタ74と半導体ウェハーWとの温度差に起因したウェハー反りを防止することができる。
【0078】
第1実施形態においては、放射温度計130は、4μmよりも長い波長の赤外光を受光して石英のサセプタ74の温度を測定する。4μmよりも長い波長域では石英が不透明となるため、サセプタ74にウェハーを保持しているか否かにかかわらず、放射温度計130は、サセプタ74から放射された赤外光のみを受光してサセプタ74の温度を正確に測定することができる。
【0079】
また、第1実施形態においては、制御部3は、サセプタ74の予熱の初期段階では放射温度計120が測定したダミーウェハーDWの温度に基づいてハロゲンランプHLの出力を制御し、その後放射温度計130が測定したサセプタ74の温度に基づいてハロゲンランプHLの出力を制御している。予熱の初期段階ではダミーウェハーDWが先行して昇温し、サセプタ74はほとんど昇温しないため、サセプタ74の測定温度に基づいて制御部3がハロゲンランプHLの出力を制御すると、その出力が過度に強くなりすぎるおそれがある。このため、サセプタ74の予熱の初期段階では、ダミーウェハーDWの測定温度に基づいて制御部3がハロゲンランプHLの出力を制御するのが好ましい。
【0080】
その一方、制御部3がダミーウェハーDWの測定温度に基づいてハロゲンランプHLの出力を制御するのみでは、サセプタ74を正確に安定温度に昇温するのは困難である。このため、先行して昇温するダミーウェハーDWからの熱伝導によってサセプタ74の温度がある程度昇温した後は、サセプタ74の測定温度に基づいて制御部3がハロゲンランプHLの出力を制御するのが好ましい。すなわち、第1実施形態のようにすることによって、ハロゲンランプHLの出力を適正に制御することができる。
【0081】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態の熱処理装置1の構成および半導体ウェハーWの処理手順は第1実施形態と概ね同様である。第1実施形態では、予熱時のハロゲンランプHLの出力を制御するために放射温度計130によってサセプタ74の温度を測定していた。また、半導体ウェハーWの熱処理のハロゲンランプHLの出力を制御するために放射温度計120によって半導体ウェハーWの温度を測定していた。さらに、放射温度計140によって下側チャンバー窓64の温度も測定される。
【0082】
放射温度計120,130,140は、それぞれ半導体ウェハーW、サセプタ74および下側チャンバー窓64から放射された赤外光を受光し、その強度から測定対象物の温度を測定する。ところが、半導体ウェハーWの主面や石英部材の表面は鏡面とされているため、周辺から放射された赤外光を反射し、その反射光は放射温度計120,130,140に到達する。すなわち、放射温度計120,130,140は、測定対象物から放射される赤外光に加えて、測定対象物で反射された反射光をも受光することとなるため、測定誤差が生じるのである。例えば、放射温度計130は、サセプタ74から放射される赤外光に加えて、チャンバー6の内壁面等から放射されてサセプタ74の表面で反射された赤外光をも受光することとなるため、サセプタ74の正確な温度測定に支障が生じるのである。
【0083】
このため、第2実施形態では、以下のようにして放射温度計による温度測定を行っている。
図10は、放射温度計130によるサセプタ74の温度測定を模式的に示す図である。放射温度計130は、石英のサセプタ74の斜め下方に設けられている。より正確には、放射温度計130は、サセプタ74の表面にブリュースター角θ
Bで入射した光の反射光の進行方向に沿った位置に設けられている。ブリュースター角θ
Bは、屈折率の異なる物質の界面においてp偏光の反射率が0となる入射角である。入射角と反射角とは等しいため、ブリュースター角θ
Bで入射した光の反射角もブリュースター角θ
Bとなる。換言すれば、放射温度計130の光軸とサセプタ74の法線とのなす角度がブリュースター角θ
Bとなるように放射温度計130は設置されている。
【0084】
また、サセプタ74と放射温度計130との間には偏光素子135が設けられている。偏光素子135は、特定の方向に偏光した光のみを通過させる素子である。偏光素子135としては、例えば多数のアルミニウムワイヤーを平行に配列したワイヤーグリッド偏光素子を用いることができる。偏光素子135は、選択的にp偏光の光のみを透過し、s偏光の光を反射する。なお、p偏光は入射面内で電界が振動する偏光であり、s偏光は入射面と垂直に電界が振動する偏光である。
【0085】
さらに、サセプタ74の表面にブリュースター角θ
Bで入射して放射温度計130に向かう反射光の光軸に対する偏光素子135の回転角度を調整する角度調整機構137が設けられている。
図11は、角度調整機構137による偏光素子135の角度調整を示す図である。
図11において、サセプタ74の表面にブリュースター角θ
Bで入射した光の反射光の光軸は紙面に垂直である。熱処理装置1のオペレータは、角度調整機構137を用いて
図11の矢印AR11に示す方向に偏光素子135の回転角度を調整する。このような偏光素子135の角度調整は、機差を是正するための微調整として行う。
【0086】
図10に戻り、サセプタ74の表面にブリュースター角θ
Bで入射した光の反射光(
図10にてサセプタ74から放射温度計130に向かう直線で示す光)にはp偏光が含まれていない。一方、サセプタ74自体から放射された赤外光(
図10にて波線で示す光)はp偏光とs偏光との合成光として捉えることができる。すなわち、サセプタ74から放射された赤外光には、p偏光とs偏光とが混在している。
【0087】
サセプタ74と放射温度計130との間には、p偏光のみを選択的に通過させる偏光素子135が設けられている。サセプタ74の表面にブリュースター角θBで入射した光の反射光およびサセプタ74自体から放射された赤外光は、ともに偏光素子135に入射する。このとき、サセプタ74の表面にブリュースター角θBで入射した光の反射光にはp偏光が含まれていないため、当該反射光はp偏光のみを通過させる偏光素子135を通過することはできない。つまり、サセプタ74からの反射光は偏光素子135によって遮光されるのである。一方、サセプタ74自体から放射された赤外光にはp偏光とs偏光とが混在しているため、そのp偏光は偏光素子135を通過して放射温度計130に到達することができる。すなわち、放射温度計130は、サセプタ74自体から放射されて偏光素子135を通過した赤外光を受光することができるのである。
【0088】
このように、サセプタ74の表面にブリュースター角θBで入射した光の反射光の進行方向に沿った位置に放射温度計130を設けるとともに、サセプタ74と放射温度計130との間にp偏光のみを通過させる偏光素子135を設けることにより、当該反射光をカットしてサセプタ74自体から放射された赤外光のみを放射温度計130に受光させることができる。その結果、放射温度計130は、反射光の影響を排除して測定対象物であるサセプタ74の温度をより正確に測定することができる。
【0089】
以上は、放射温度計130によるサセプタ74の温度測定についての説明であったが、放射温度計120,140による温度測定も同様である。すなわち、サセプタ74に保持された半導体ウェハーWの主面にブリュースター角θBで入射した光の反射光の進行方向に沿った位置に放射温度計120を設けるとともに、半導体ウェハーWと放射温度計120との間にp偏光のみを通過させる偏光素子を設けることにより、当該反射光をカットして半導体ウェハーW自体から放射された赤外光のみを放射温度計120に受光させることができる。これにより、放射温度計120は、反射光の影響を排除して測定対象物である半導体ウェハーWの温度を正確に測定することができる。
【0090】
また、石英窓である下側チャンバー窓64の表面にブリュースター角θBで入射した光の反射光の進行方向に沿った位置に放射温度計140を設けるとともに、下側チャンバー窓64と放射温度計140との間にp偏光のみを通過させる偏光素子を設けることにより、当該反射光をカットして下側チャンバー窓64自体から放射された赤外光のみを放射温度計140に受光させることができる。これにより、放射温度計140は、反射光の影響を排除して測定対象物である下側チャンバー窓64の温度を正確に測定することができる。
【0091】
<変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、第1実施形態において、制御部3は、ダミーウェハーDWの温度に基づいてハロゲンランプHLの出力を制御した後、放射温度計140が測定した下側チャンバー窓64の温度に基づいてハロゲンランプHLの出力を制御するようにしても良い。さらにその後、制御部3は、放射温度計130が測定したサセプタ74の温度に基づいてハロゲンランプHLの出力を制御するようにしても良い。
【0092】
また、上側チャンバー窓63等のサセプタ74および下側チャンバー窓64以外のチャンバー6に設けられた構造物の温度を放射温度計によって測定し、その測定結果に基づいて制御部3がサセプタ74の予熱時のハロゲンランプHLの出力を制御するようにしても良い。この場合も、石英窓である上側チャンバー窓63の表面にブリュースター角θBで入射した光の反射光の進行方向に沿った位置に放射温度計を設けるとともに、上側チャンバー窓63と放射温度計との間にp偏光のみを通過させる偏光素子を設けることにより、当該反射光をカットして上側チャンバー窓63自体から放射された赤外光のみを放射温度計に受光させることができる。これにより、放射温度計は、反射光の影響を排除して測定対象物の温度を正確に測定することができる。
【0093】
また、上記実施形態においては、フラッシュ加熱部5に30本のフラッシュランプFLを備えるようにしていたが、これに限定されるものではなく、フラッシュランプFLの本数は任意の数とすることができる。また、フラッシュランプFLはキセノンフラッシュランプに限定されるものではなく、クリプトンフラッシュランプであっても良い。また、ハロゲン加熱部4に備えるハロゲンランプHLの本数も40本に限定されるものではなく、任意の数とすることができる。
【0094】
また、上記実施形態においては、1秒以上連続して発光する連続点灯ランプとしてフィラメント方式のハロゲンランプHLを用いて半導体ウェハーWの予備加熱を行っていたが、これに限定されるものではなく、ハロゲンランプHLに代えて放電型のアークランプ(例えば、キセノンアークランプ)を連続点灯ランプとして用いて予備加熱を行うようにしても良い。この場合、アークランプからの光照射によってサセプタ74が予熱されることとなる。
【0095】
また、熱処理装置1によって処理対象となる基板は半導体ウェハーに限定されるものではなく、液晶表示装置などのフラットパネルディスプレイに用いるガラス基板や太陽電池用の基板であっても良い。この場合、本発明に係る技術を用いてガラス基板等の温度を放射温度計によって測定するようにしても良い。また、熱処理装置1では、高誘電率ゲート絶縁膜(High-k膜)の熱処理、金属とシリコンとの接合、或いはポリシリコンの結晶化を行うようにしても良い。
【符号の説明】
【0096】
1 熱処理装置
3 制御部
4 ハロゲン加熱部
5 フラッシュ加熱部
6 チャンバー
7 保持部
10 移載機構
63 上側チャンバー窓
64 下側チャンバー窓
65 熱処理空間
74 サセプタ
75 保持プレート
77 基板支持ピン
120,130,140 放射温度計
135 偏光素子
137 角度調整機構
FL フラッシュランプ
HL ハロゲンランプ
W 半導体ウェハー